疾患検出のための方法
【課題】疾患状態と流出した細胞物質におけるDNA完全性とを関連付けること。
【解決手段】一実施形態において、患者の疾患状態を決定するための方法が提供され、この方法は、以下:流出された細胞または細胞の破片を含む患者サンプルにおける核酸の完全性を決定する工程;およびインタクトな核酸がこのサンプル中に、予め決定された閾値よりも多い量で存在する場合、この患者を疾患を有するとして同定する工程、を包含する。別の実施形態において、疾患に関して患者をスクリーニングするための方法が提供され、この方法は、以下:流出された細胞の破片を含む患者サンプルにおける核酸の完全性を決定する工程;およびこの核酸の完全性が予め決定された閾値を超えるサンプルとして陽性スクリーンを同定する工程、を包含する。
【解決手段】一実施形態において、患者の疾患状態を決定するための方法が提供され、この方法は、以下:流出された細胞または細胞の破片を含む患者サンプルにおける核酸の完全性を決定する工程;およびインタクトな核酸がこのサンプル中に、予め決定された閾値よりも多い量で存在する場合、この患者を疾患を有するとして同定する工程、を包含する。別の実施形態において、疾患に関して患者をスクリーニングするための方法が提供され、この方法は、以下:流出された細胞の破片を含む患者サンプルにおける核酸の完全性を決定する工程;およびこの核酸の完全性が予め決定された閾値を超えるサンプルとして陽性スクリーンを同定する工程、を包含する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
多くの疾患がゲノムの不安定性に関連する。すなわち、変異のようなゲノム安定性の破壊は、特定の癌の発症または進行に連結する。従って、ゲノム不安定性の種々の局面が、疾患に関する信頼性のあるマーカーとして提案されている。例えば、BRCA遺伝子における変異は、乳癌のマーカーとして提案され、そしてp53細胞周期調節遺伝子における変異は、多数の癌(特に直腸結腸癌)と関連する。特定の変異が、特定の型の癌の初期段階に対する分子スクリーニングアッセイの基本であり得ることが示唆されている。例えば、非特許文献1を参照のこと。
【0002】
ゲノム疾患マーカーの検索は、癌検出の領域において特に熱心である。癌は、制御できない細胞増殖によって特徴付けられ、この増殖は、1つ以上の遺伝子変異と関連し得る。このような変異は、細胞死を回避するために発症した細胞を引き起こし得る。例えば、腫瘍抑制遺伝子における変異は、アポトーシス(直接的な遺伝子制御と考えられる細胞死の型)を回避するための細胞を生じ得る。アポトーシスの間、細胞は、その膜を失い、細胞質が凝縮し、そして核クロマチンは、特徴的に短い長さのオリゴヌクレオチドフラグメントをまき散らす。事実、これらの特徴的なDNA切断パターンは、アポトーシスのためのアッセイとして提案されている。
【0003】
癌の指標である核酸マーカーを同定し、そして使用するための試みがなされている。しかし、このようなマーカーが見出される場合でさえ、患者サンプル(特に異種サンプル)をスクリーニングするためにこれらを用いることは、十分なサンプル材料を得ることが不可能であることまたは単一マーカーのみを測定することから生じる低い感度のいずれかに起因して、失敗であることが明らかになった。妥当な量のヒトDNAを、1つの型の異種サンプル(便)から簡単に得ることは、困難であることが明らかになった。非特許文献2(全便検体のたった44.7%、および健康な個体由来の便のたった32.6%のみが、変異分析のための十分なDNAを産生したことを報告する)を参照のこと。妥当なDNAが得られた他の報告は、単一癌関連変異に基づく患者の疾患状態を同定する際の低い感度を報告した。非特許文献3(癌に関するマーカーとしてp53変異を用いる)を参照のこと。
【0004】
研究者達は、管腔領域(例えば、結腸、胆管、血管など)へ流出された腫瘍細胞のDNAにおける変異を分析することを試みている。このような試みは、既知の変異および比較的高い濃度の細胞材料が見出されている場合のみ、成功している。例えば、非特許文献4を参照のこと。疾患状態と流出した細胞物質におけるDNA完全性とを関連付ける試みは、なされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sidranskyら、Science、(1992)256:102−105
【非特許文献2】Villaら、Gastroenterol.、(1996)110:1346−1353
【非特許文献3】Eguchiら、Cancer、(1996)77:1707−1710
【非特許文献4】Mulcahyら、Ann.Oncol.(1999)10(補遺4):114−117
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、流出された細胞材料を含む生物学的サンプルにおける核酸の完全性が、サンプルが得られた患者の疾患状態の指標であることを提供する。本発明に従って、特定の組織サンプルまたは体液サンプル(特に以下に記載されるもの)は、周辺器官または周辺組織から流出された細胞由来の破片を含む。健康な患者において、このような破片は、正常な細胞周期の一部としてアポトーシスの結果である。アポトーシスは、核酸の完全性を減少し、その結果、小さいフラグメントの核酸のみが、健康な個体の剥離された細胞破片中に存在する。対照的に、細胞周期機構が破壊または欠損される癌のような疾患において、細胞の破片は、高い完全性の核酸(すなわち、アポトーシスによって分解されていない核酸)を含む。従って、本発明の方法は、核酸完全性を患者の疾患状態の測定として用いることを含む。完全性は、任意の簡便な手段によって測定され得る。好ましい手段としては、サンプル中の核酸の量、サンプル中の核酸の長さ、またはサンプル中の核酸の分子量が挙げられる。
【0007】
本発明は、患者から得られた検体またはサンプルに存在する患者の核酸の完全性に基づいて患者における疾患を検出するための方法を提供する。本発明の方法に従って、疾患を有する患者から得られた脱落した細胞破片を含む組織検体または体液検体は、健康な患者から得られたそのような検体中に予想されるよりも大きい量でインタクトな核酸の量を含む。従って、患者サンプル中のインタクトな核酸の測定は、患者の全疾患状態の指標である。本明細書中に使用される場合、「インタクト」は、アポトーシスの結果として存在することが予期されるよりも、より長い核酸をいう。本発明は、ヒト用途および獣医用途へ同等に適用可能である。従って、本明細書中に規定されるような「患者」は、ヒトまたは他の動物を意味する。
【0008】
健康な患者は、一般的に、正常なアポトーシス分解を介して細胞破片を生成し、管腔組織または管腔液由来のサンプル中に比較的短い核酸フラグメントを生じる。疾患を有する患者は、一般的に、細胞および細胞破片を生成し、この割合は、正常な細胞周期調節を防止し、比較的長い、インタクトな核酸フラグメントを生じる。理論に束縛されずに、本発明は、細胞が疾患(特に遺伝子異常(誘導性または遺伝性のいずれか)と関連する疾患)に応答するというこの方法に関連するこの洞察および他の洞察を上手く利用する。結果として、患者の疾患状態が、患者から得られた検体中に生成された患者の核酸の分析によって決定されることが発見された。より好ましくは、このような検体は、脱落した細胞破片をおそらく含むようである。このような検体としては、便、血液の血清もしくは血漿、痰、膿、初乳などが挙げられるが、これらに限定されない。ゲノム不安定性またはゲノム異常が正常な細胞周期調節で妨害される疾患(例えば、癌)において、上記に同定されるような検体は、比較的インタクトな核酸フラグメントを含む。そのようなフラグメントの存在は、疾患のための一般的な診断スクリーンである。
【0009】
従って、本発明の方法は、患者から得られた組織または体液の検体中の核酸の完全性を分析することによって疾患に対して患者をスクリーニングする工程を包含する。好ましい検体としては、流出された細胞または細胞破片を含む検体が挙げられる。従って、非常に好ましい検体は、多量のインタクト(非剥離)な細胞を含まない検体である。このような好ましい検体は、便、痰、尿、胆汁、膵液および血液の血清もしくは血漿を含み、これらは全て、流出された細胞または細胞破片を含む。本発明の方法は、癌をスクリーンする際に特に有用である。癌は、ゲノム不安定性、特に正常な細胞周期に対する制御の損失と関連すると考えられる疾患である。従って、腫瘍は、典型的にはインタクトであり、そして通常通りに、例えば、便、痰、尿、胆汁、膵液、および血液に流出される。このような流出された細胞および細胞破片は、健康な患者から得られた検体中に見出されるものと比較してより高い完全性の核酸を含む。患者検体中の核酸完全性が疾患のためのスクリーンとして測定される多数の方法が存在する。
【0010】
好ましい実施形態において、核酸完全性は、サンプル中の核酸を増幅する能力によって測定される。従って、好ましい方法は、組織サンプルまたは体液サンプル中で、サンプル中にあることが疑われる核酸遺伝子座をテンプレートとして用いる増幅反応を実施する工程を包含する。増幅産物(アンプリコン)の量が正常サンプル(例えば、スクリーニングされる疾患を有さないもの)中に存在する事が予測されるアンプリコンの量よりも多い場合、このサンプルは、陽性であると決定される。いくつかの場合、任意の増幅産物の存在は、疾患に関する陽性スクリーンを正当化するのに十分である。DNAの場合、増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、RNAの場合、増幅反応が逆転写酵素PCRであることが好ましい。プライマーは、分析のために選択される遺伝子座を増幅するために設計される。本発明の目的に関して、「ゲノム遺伝子座」は、任意の遺伝子エレメントであり、これには、遺伝子のコード領域、非コード核酸領域、遺伝子の調節エレメント、イントロンまたはRNAが挙げられるが、これらに限定されない。標的ゲノム遺伝子座が任意の特定の疾患と関連することは必要とされない。なぜなら、増幅可能な核酸における増加が、それ自身、診断的であるからである。
【0011】
1つの好ましい実施形態において、単一の高分子量アンプリコンの存在が、陽性スクリーンである。好ましくは、約1.3Kb以上のフラグメントが、患者サンプル中の高い完全性の核酸の指標として測定される。
【0012】
非常に好ましい実施形態において、異なる長さの核酸フラグメントの範囲にわたる増幅産物のプロフィールが、生成される。好ましい実施形態において、一連の増幅反応は、単一ゲノム遺伝子座で実行され、各々の反応は、特有の長さのフラグメントを増幅するために設計される。検出可能なアンプリコンが各反応中または健康な患者から得られたサンプル中で予想されるよりも多く多数の反応中で生成される場合、このサンプルは、陽性であると決定される。例えば、同じゲノム遺伝子座において200bp、400bp、800bp、1.3Kb、1.8Kb、および2.4Kbのフラグメントを増幅するための試みがなされている。健康な個体(「正常」サンプル)から得られたサンプルにおいて、ほとんどまたは全く増幅産物が観察されないこと(特に、比較的長い遺伝子座の一部がテンプレートとして使用される場合)が、予想される。対照的に、疾患患者から得られたサンプル中の細胞および細胞破片の少なくともいくらかの割合が、インタクトなフラグメントを含む。
【0013】
別の実施形態において、異なる長さの核酸フラグメントの範囲にわたる増幅産物のプロフィールが、一連の異なるゲノム遺伝子座上で実施される一連の増幅反応によって生成され、各反応は、特有の長さのフラグメントを増幅するために設計される。検出可能なアンプリコンが各反応中またはスクリーニングされる疾患を有さない患者から得られたサンプル中で予想されるよりも多く多数の反応中で生成される場合、このサンプルは、陽性であると決定される。
【0014】
本発明に従って、正常なサンプルは、代表的なアポトーシスフラグメント(約175bp)よりも有意により長い任意の長さで、有意な量の検出可能なアンプリコンを生成しない。従って、プライマーが所定のゲノム遺伝子座でたった1つの長さのフラグメントを増幅するために間隔を空けられようとそうでなかろうと、またはその遺伝子座で一連の増幅が実行されようとそうでなかろうと、差異は、正常サンプルおよび疾患サンプル間で容易に観察可能である。
【0015】
以下に詳述されるように、本発明の方法は、流出された細胞または細胞破片を含む生物学的サンプル中、疾患(好ましくは癌または前癌)を検出することに有用である。例えば、健康な患者に関する予め決定された閾値を超える核酸(好ましくはDNA)の患者の便サンプル中での存在量は、患者が癌を有することを示す。追跡分析が使用されて、疾患が存在する場所が決定される。しかし、一般的な疾患スクリーンは、疾患の遺伝子座および分析のために採取された検体に関係なく、有効である。従って、便中の核酸の分析は一般的に疾患に関して予測的であるが、疾患が胃腸管起源のものであることを示す必要はない。しかし、例えば、変異分析に基づく追跡スクリーニングは、疾患の遺伝子座を同定するのに妥当である。多数の変異分析が当該分野で公知であり、そして例えば、米国特許第5,670,325号(本明細書中に参考として援用される)が挙げられる。
【0016】
代替の実施形態において、サンプル中の核酸の量を検出することによる患者サンプルのスクリーニングは、アポトーシス細胞活性のためのアッセイと合わされる。このようなアッセイは、疾患状態に関するスクリーンとして患者サンプル中の核酸の量を検出することと合わされ得る。陽性スクリーンは、(1)正常サンプル(例えば、スクリーニングされる疾患を有さないもの)中に存在する予測された量よりも、多い量の核酸、および(2)正常なサンプル中に存在する予測される量よりも、少ない量のアポトーシス細胞活性の両方を生成するものである。非常に好ましい実施形態において、本発明の方法は、多数のゲノム遺伝子座を分析して、各遺伝子座に存在する増幅可能な核酸の量を決定する工程を包含する。本発明の方法を用いる複数の遺伝子座をにわたる分析は、スクリーニングアッセイの感度を増加し得る。
【0017】
以下に詳細に例示されるように、本発明の方法は、核酸中の異常に関して生物学的サンプルを、サンプル中であることが疑われるかまたは予想される核酸をテンプレートとして用いる増幅反応を実施することによってスクリーニングする工程;得られた増幅産物の量を決定する工程;得られたアンプリコンの量を増幅産物の標準量と比較する工程;ならびに増幅産物の量が標準量と異なる場合に、核酸中に異常を有するとしてサンプルを同定する工程を包含する。好ましい実施形態において、増幅産物の標準量は、既知の正常サンプル(スクリーニングされる疾患を有さないことが既知の個体から得られたもの)中でスクリーニングされる(例えば、インタクトな、野生型核酸)遺伝子座またはその一部の増幅によって決定される。また好ましい実施形態において、標準量は、当該分野を参照することによって決定される。本発明の特定の実施形態において、標準量は、サンプル中の高い完全性の核酸の欠如に起因して、必ずしも検出可能なアンプリコンではない。従って、患者サンプル中の任意の検出可能なアンプリコンが、陽性スクリーンの指標である。これは、特に大きい(例えば、1.8Kbまたは2.4Kb)のフラグメントがスクリーニングされる場合である。最後に、標準量は、例えば、電気泳動ゲル上の分子量マーカーであり得る。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、サンプルは、便、痰、血液、尿、脳脊髄液、精液、唾液、胸の乳頭の吸引液、および生検組織からなる群より選択される検体から調製される。しかし、任意の組織検体または体液検体が本発明の方法に従って使用され得る。特に好ましいのは、管腔液のサンプルである。なぜなら、このようなサンプルは、一般的に、インタクトな健康な細胞がないからである。このようなサンプルとしては、血液、尿、胆汁、膵液、便、痰、膿などが挙げられる。
【0019】
好ましい実施形態においてまた、検索される核酸は、DNAである。より詳細な実施形態において、分析される核酸は、遺伝子のコード領域もしくはその一部、非コード核酸領域もしくはその一部、遺伝子の調節エレメントもしくはその一部、およびゲノムDNAの未だ同定されていないフラグメントから選択される。好ましい実施形態においてまた、検索される核酸は、RNAである。当業者によって理解されるように、任意のゲノム遺伝子座が、本発明に従うスクリーニングを受けやすい。分析に選択される特定の遺伝子座は、ある部分、スクリーニングされる疾患および研究者の都合に依存する。分析に選択される遺伝子座が、任意の特定の疾患とかならずしも関連する必要はない。なぜなら、本発明の方法は、全疾患状態の指標としてサンプル中の全核酸もしくはサンプル中の増幅可能な核酸、またはサンプル中のアポトーシスの存在および/もしくは程度のいずれかを測定することを意図するからである。しかし、疾患関連遺伝子座(この中で変異は、疾患の指標であるか、原因であるか、さもなくば証拠である)が、使用され得る。好ましい疾患関連遺伝子座としては、p53、apc、MSH−2、dcc、scr、c−myc、B−catnenin、mlh−1、pms−1、pms−2、pol−デルタ、およびbaxが挙げられる。
【0020】
増幅産物の量は、任意の適切な手段または簡便な手段によって決定され得る。好ましくは、増幅産物の量は、ゲル電気泳動によって決定される。蛍光標識または放射性標識のような標識が使用され得る。生成された増幅産物の量は、任意の適切な手段または簡便な手段によって標準量に対して比較され得、これらとしては、視覚的比較、機械駆動の視覚的比較、デンシトメトリー、質量分光法、ハイブリッド捕獲、および他の公知の手段が挙げられるがこれらに限定されない。増幅反応それ自身は、核酸を増幅する任意の手段であり得、これらとしては、PCR、RT−PCR、OLA、ローリングサークル(rolling circle)、単一塩基伸長、および当該分野で公知の他のものが挙げられるがこれらに限定されない。増幅産物はまた、単一増幅技術(例えば、分岐鎖増幅(Chiron))によって測定され得る。本発明の方法は、核酸の同定、増幅、配列決定、または他の操作のための任意のプラットフォームを伴って有用である。例えば、本発明の方法は、リガーゼ鎖反応、鎖置換(Becton−Dickinson)などに適用され得る。
【0021】
本発明の好ましい実施形態においてまた、一連の増幅反応が、単一ゲノム遺伝子座に対して実施される。このシリーズ中の各増幅反応は、異なる長さのフラグメントを増幅するために設計される。好ましい実施形態において、標的フラグメントの長さは、200bp、400bp、800bp、1.3Kb、1.8Kb、および2.4Kbである。増幅のためのプライマーは、当該分野の知識に従って設計され、これは、所望の遺伝子座での所望の長さのテンプレート(存在する場合)を増幅するためである。陽性スクリーンは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの増幅反応シリーズでアンプリコンを生成するものである。上記のように、アポトーシスを引き起こしたかまたはアポトーシスを引き起こしている正常なサンプルは、代表的に、有意な長さのフラグメントをほとんどまたは全く含まない。従って、約200bp〜約2.4Kbおよびより長いフラグメントを標的化する一連の増幅反応は、大きなフラグメントの増幅によって証拠付けられるようにアポトーシスを回避した核酸を含むサンプルを明らかにする。
【0022】
本発明の好ましい方法はまた、一連の異なるゲノム遺伝子座上での増幅反応を実施する工程を包含する。好ましくは、約2〜約7の遺伝子が使用される。しかし、検索される遺伝子座の正確な数は、検出される疾患に基づくかまたは簡便性に基づいて個々の研究者によって決定される。本発明に従って、プライマーは、各選択された遺伝子座において核酸(好ましくはDNA)を増幅するために設計される。少なくとも1つの遺伝子座、好ましくは少なくとも2つの遺伝子座、および最も好ましくは少なくとも3つの遺伝子座が検出可能な増幅産物を生成するサンプルが、陽性サンプルとみなされる。このアッセイで増幅されるフラグメントの長さは、変化し得るが、好ましくは各長さが少なくとも約180bpである。同じ長さのフラグメントが各選択された遺伝子座において必ずしも増幅される必要はない。
【0023】
本発明の方法はまた、一連の増幅反応を一連の異なるゲノム遺伝子座で実施する工程を包含する。このシリーズにおける各増幅反応は、異なる長さのフラグメントを増幅するために設計される。好ましくは、約2〜約7の遺伝子座上で約2〜約7の増幅反応が使用される。しかし、検索される遺伝子座の正確な数は、検出される疾患に基づくかまたは簡便性に基づいて、個々の研究者によって決定される。好ましい実施形態において、標的フラグメントの長さは、200bp、400bp、800bp、1.3Kb、1.8Kb、および2.4Kbである。増幅のためのプライマーは、当該分野における認識に従って設計され、これは存在する場合、テンプレートを増幅するためである。同じ長さのフラグメントが各選択された遺伝子座において増幅されることは、好ましいが必ずしも必要ではない。陽性スクリーンは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのシリーズの増幅反応においてアンプリコンを生成するもの、ならびに、少なくとも1つの遺伝子座、好ましくは少なくとも2つの遺伝子座、および最も好ましくは少なくとも3つの遺伝子座が検出可能な増幅産物を生成するものである。上記のように、アポトーシスを引き起こしたかまたはアポトーシスを引き起こしている正常なサンプルは、代表的に、有意な長さのフラグメントをほとんどまたは全く含まない。従って、約200bp〜約2.4Kbおよびより長いフラグメントを標的化する一連の増幅反応は、大きなフラグメントの増幅によって証拠付けられるようにアポトーシスを回避した核酸を含むサンプルを明らかにする。
【0024】
本発明の方法はまた、生物学的サンプル中のDNAの完全性を評価するために使用され得る。このような方法は、テンプレートとしてサンプル中であることが疑われる少なくとも2つの遺伝子座を用いて増幅反応を実施する工程;どの遺伝子座が検出可能なアンプリコンを生成するかを決定する工程;およびアンプリコンを生成する遺伝子座の数の関数としてサンプル中のDNAの完全性を評価する工程を包含する。アンプリコンが1つ以上の増幅反応において生成される場合、サンプル中のDNAの完全性は高い。この方法は、異種サンプルが測定のための十分な核酸を有するか否かを決定することに特に有用である。従って、このような方法は、さらなる分析(例えば、遺伝子分析、生化学分析、細胞学的分析または他の分析)のためにサンプルをスクリーンまたは「限定」するために使用される。
【0025】
本発明の方法はまた、母親の血液中の核酸に対して増幅反応を実施することによって、胎児異常を評価するために使用され得る。すぐ上に記載されたように、有意な量の核酸を増幅する能力は、ゲノム不安定性の指標である。核酸増幅の程度の比較に関するべースラインは、既知の正常なサンプル由来の核酸の量であり得る。胎児サンプルから得られた増幅の量は、連続体上に配置され、そして研究者は、種々の疾患状態および正常なサンプルにおいて産生された胎児核酸の量に関して、任意の所定のサンプルを分析しなければならない。
【0026】
本発明の方法は、診断スクリーニング方法として有用である。疑われた疾患状態を確認するために患者に対して追跡試験を実行することが、しばしば望ましい。このような追跡手順は、検索される疾患状態に基づいて決定される。例えば、結腸鏡検査は、便サンプルが本発明の方法に従って陽性にスクリーニングされる場合、提案され得る。このような追跡手順は、本発明の一部として本明細書中に意図される。
【0027】
本発明の方法は、広範な疾患状態に関してスクリーニングする場合に有用である。結腸癌および腺腫に加えて、本発明の方法は、他の疾患をスクリーニングするために、例えば、リンパ腫、または胃癌、肺癌、肝癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、精巣癌、膀胱癌、子宮癌、または卵巣癌または腺腫をスクリーニングする場合に有用である。癌に加えて本発明の方法は、炎症性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病、およびゲノム不安定性が役割を果たすと考えられる他のものなどの疾患をスクリーニングする場合に、有用である。本発明の方法は、胃腸管系の正確な機能を損なった任意の疾患:最も特には、結腸の疾患をスクリーニングする場合に特に有用である。本発明の方法はまた、細胞サンプル中のアポトーシスに関してスクリーニングするために有用である。サンプル中の増幅可能なDNAのプロフィールは、疾患と関連しているタンパク質と関連する。例えば、アポトーシスタンパク質(サービビン(survivin))のアップレギュレーションは、Ras癌遺伝子、ならびに他の癌遺伝子およびこれらの遺伝子産物と同様に、増幅可能なDNAの増化した量と関連する。
【0028】
本発明の方法はまた、アポトーシスに関するアッセイとして有用である。サンプル中の高い完全性のフラグメントまたは大量の核酸の存在は、このサンプルが、アポトーシスを介して進行していない細胞由来であったことを示す。このようなフラグメントまたは量がないことは、このサンプルに寄与する細胞がアポトーシスを引き起こしたことを示唆する。従って、単独またはゲノム不安定性に関する他のアッセイと組み合わせた本発明のアポトーシス活性アッセイは、疾患をスクリーニングする場合有用である。
【0029】
最後に、本発明の方法は、ハイブリッド捕獲によって実行され得る。例えば、ハイブリッド捕獲および捕獲フラグメントの引き続く分析は、サンプルの核酸完全性を決定するために使用され得る。
【0030】
本発明はまた、疾患の指標である核酸フラグメントのプロフィールを提供する。好ましいプロフィールは、上記の方法を介して得られる。好ましいプロフィールは、本明細書中に記載の方法に従う、細胞破片を含む患者サンプルにおいて得られた約200bpと約2.4Kbとの間を有する核酸を含む。非常に好ましいプロフィールは、少なくとも1.3Kbの少なくとも1つの核酸を含む。
【0031】
本発明の他の物体および利点が、以下の図面およびその詳細な説明を考慮して明らかである。
【0032】
したがって、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1) 患者の疾患状態を決定するための方法であって、この方法は、以下:
流出された細胞または細胞の破片を含む患者サンプルにおける核酸の完全性を決定する工程;および
インタクトな核酸がこのサンプル中に、予め決定された閾値よりも多い量で存在する場合、この患者を疾患を有するとして同定する工程、
を包含する、方法。
【0033】
(項目2) 疾患に関して患者をスクリーニングするための方法であって、この方法は、以下:
流出された細胞の破片を含む患者サンプルにおける核酸の完全性を決定する工程;および
この核酸の完全性が予め決定された閾値を超えるサンプルとして陽性スクリーンを同定する工程、
を包含する、方法。
【0034】
(項目3) 患者中の疾患を検出するための方法であって、この方法は、以下:
患者サンプルに存在する患者の核酸の量を決定する工程;
この量を、疾患陰性サンプルに存在すると予想される標準的な核酸の量と比較する工程;および
この標準的な量よりも多い患者の核酸の量としてこの患者における疾患を検出する工程、
を包含する、方法。
【0035】
(項目4) 上記核酸が、少なくとも1.3kbの分子量を有するフラグメントである、項目3に記載の方法。
【0036】
(項目5) 上記疾患が癌または前癌である、項目1に記載の方法。
【0037】
(項目6) 項目3に記載の方法であって、ここで、上記癌が、結腸癌、肺癌、食道癌、前立腺癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、およびリンパ腫からなる群より選択される、方法。
【0038】
(項目7) 項目1に記載の方法であって、上記核酸が、K−ras、p53、apc、dcc、腫瘍抑制遺伝子、および癌遺伝子からなる群より選択される、方法。
【0039】
(項目8) 項目1に記載の方法であって、上記患者サンプルが、便、痰、膵液、胆汁、リンパ、血液、尿、脳脊髄液、精液、唾液、乳房の乳頭の吸引液、および膿からなる群より選択される、方法。
【0040】
(項目9) 患者の疾患状態を決定するための患者サンプルをスクリーニングするための方法であって、この方法は、以下:
(a)患者から得られたサンプル中の患者の核酸を増幅する工程;
(b)工程(a)で得られた増幅核酸の量を決定する工程;および
(c)この増幅された核酸の量が疾患陰性サンプル中で予想される増幅された核酸の量よりも多い場合、陽性スクリーンを同定する工程、
を包含する、方法。
【0041】
(項目10) 疾患に関して生物学的サンプルをスクリーニングするための方法であって、この方法は、以下:
複数のゲノム遺伝子座を選択する工程;
この各遺伝子座において増幅反応を実行する工程;
増幅産物を生成する遺伝子座の数が予め決定された閾値を超えるサンプルとして陽性スクリーンを同定する工程、
を包含する、方法。
【0042】
(項目11) 疾患に関して患者サンプルをスクリーニングするための方法であって、この方法は、以下:
複数のゲノム遺伝子座を選択する工程;
この各遺伝子座において増幅反応を実行する工程;
増幅が生じる各遺伝子座に対して第1の数値的なスコアを割り当てる工程;
増幅が生じない各遺伝子座に対して第2の数値的なスコアを割り当てる工程;
閾値の量によって、この第1の数値的なスコアの総数がこの第2の数値的なスコアの総数を超えるかどうかを決定し、これによって疾患に関してこのサンプルをスクリーンする工程、
を包含する、方法。
【0043】
(項目12) 患者サンプルから単離された核酸フラグメントであって、この核酸が、少なくとも1.3kbであり、そして癌と関連する核酸完全性を示す、核酸フラグメント。
【0044】
(項目13) 項目1に記載の方法によって得られた、単離された核酸。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたK−ras(エキソン1)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図2】図2は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたapc(エキソン15)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図3】図3は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたapc(エキソン15)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図4】図4は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたapc(エキソン15)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図5】図5は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたp53(エキソン5)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図6】図6は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたp53(エキソン7)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図7】図7は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたp53(エキソン8)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図8】図8は、「長い」産物を増幅および検出するための実験の結果を示す。
【図9】図9は、約1.8Kb離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便サンプルから単離されたDNAの増幅の結果のゲル写真である。バンド強度は、1.8Kb以上の産物の量を示す。レーン1、8、および9は、ネガティブコントロールであり、レーン2、3、および5は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン4、6、および7は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、そしてレーン10〜14は、分子量標準である。
【図10】図10は、約1.8Kb離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便サンプルから単離されたDNAの増幅の結果のゲル写真である。バンド強度は、1.8Kb以上の産物の量を示す。レーン1、8、および9は、ネガティブコントロールであり、レーン2、3、および5は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン4、6、および7は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、そしてレーン10〜14は、分子量標準である。
【図11A】図11Aは、合計30の患者およびコントロール由来の便中のDNAの増幅の結果のゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の増幅可能なDNAの量に関連する。レーンNは、ネガティブコントロールであり、レーン1、3、11、および18は、癌または腺腫の存在を示す患者からの結果であり、レーン2、4、5〜10、12〜17、および19〜30は、癌も腺腫も存在しないことを示す環はからの結果である。残りのレーンは、マーカーまたは標準である。
【図11B】図11Bは、合計30の患者およびコントロール由来の便中のDNAの増幅の結果のゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の増幅可能なDNAの量に関連する。レーンNは、ネガティブコントロールであり、レーン1、3、11、および18は、癌または腺腫の存在を示す患者からの結果であり、レーン2、4、5〜10、12〜17、および19〜30は、癌も腺腫も存在しないことを示す環はからの結果である。残りのレーンは、マーカーまたは標準である。
【図12】図12は、本発明の方法での増幅のためのプライマーの配置の概略図を示す。この方法において、単一の順方向プライマー(F1)を、標的の段階的により長い部分を増幅するために選択された一連の逆方向プライマー(R1〜R6)と結合させて使用する。
【図13】図13は、本発明の方法における増幅のためのプライマーの配置の概略図を示す。この方法において、一連の順方向プライマー逆方向プライマー対(F1,R1)〜(F3,R3)を、標的に沿った間隔で間隔を空けられた標的の部分を増幅するために選択する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(発明の詳細な説明)
本発明は、生物学的サンプルの分析方法を提供する。本発明の方法は、生物学的サンプル中の核酸の完全さに基づく、診断に関連した情報を提供する。正常な生物学的サンプル(スクリーニングされる疾患のしるしを有していないサンプル)、特に管腔組織および/または流体を含むサンプルは、代表的には、アポトーシスによる分解の結果である大量の短いフラグメント、低い完全性の核酸(特にDNA)を含む。変異がゲノム不安定性を引き起こす場合、正常の細胞周期は妨害され得、そしてアポトーシス分解は、正常なサンプルで期待される速度では起こらないかもしれない。本発明の方法は、このような妨害についてスクリーニングする。
【0047】
従って、本発明の好ましい方法は、生物学的サンプル中の増幅可能な核酸の量を決定すること、およびその量が正常サンプルにおいて期待される量と一致するか否かを決定することを包含する。多くの生物学的サンプル(特に不均質なサンプル)において、検出可能な増幅産物は存在し得ない。このことは、特に、より長いフラグメントが増幅のためのテンプレートとして使用される場合に当てはまる。一般的に、任意の所定の組のPCRプライマーがプライマーの距離を超える長さを有するDNAフラグメントを増幅する可能性は、以下:
増幅されたフラグメントの%=(FL−PD)/(FL+PD)
で表され、ここでFLは、フラグメント長(塩基対)であり、そしてPDは、プライマー距離(塩基対)である。この等式は、サンプルDNAフラグメント長が均一に分布している(すなわち、切断が起きる有利な位置は存在しない)と仮定する。
【0048】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、疾患または疾患についての傾向を示す増幅産物のプロフィールを作製するために、存在する場合、サンプル中の異なる長さの配列を増幅することを包含する。好ましい方法において、サンプルを、単一の順方向プライマー(これは、標的フラグメントを捕獲するために使用される捕獲プローブであり得る)、および複数の下流逆方向プライマー((存在する場合)サンプル中の連続的配列の部分にハイブリダイズする)を含む一組のPCRプライマーに曝露される。これらのプライマーを使用する増幅は、一連の増幅産物を生じ、連続的標的配列がサンプル中に存在する場合、これらの産物の各々は異なる長さを有する。増幅産物の長さは、順方向プライマーと各下流逆方向プライマーとの間の間隔により決定される。例を図12に示し、この図は、増幅のためのプライマーの配置を示す概略図である。
【0049】
標的配列またはその部分サンプル中に存在する場合、増幅は、一連のフラグメントを生じ、これらの長さは、プライマーの間隔により規定される。上記に提示される原理に従って、疾患の患者由来のサンプルは、上記のアッセイにおいて増幅産物のプロフィールを生じ、このプロフィールは、通常のアポトーシスの結果として生じることが期待されるより小さいフラグメントを含むサンプルから得られるプロフィールと異なる。好ましい実施形態において、順方向プライマーは、第1の逆方向プライマーの約200bp上流で、かつ最後の逆方向プライマーの約2.3Kb上流にハイブリダイズするように設計される。他の逆方向プライマーは、第1の逆方向プライマーと最後の逆方向プライマーとの間の種々の位置でハイブリダイズするように設計される。順方向プライマーと種々の逆方向プライマーとの間の好ましい間隔は、200bp(F1−R1)、400bp(F1−R2)、800bp(F1−R3)、1.3Kb(F1−R4)、1.8Kb(F1−R5)および2.3Kb(F1−R6)である。逆方向プライマーの数および間隔は、当業者の都合で選択される。
【0050】
また、好ましい実施形態において、ハイブリッド捕獲プローブは、標的配列を、好ましくは固体支持体(例えば、ビーズ)上に係留するために使用される。次いで、複数のプローブは、捕獲プローブの下流の種々の距離で配置される。これらのプローブは、上記で議論されるような順方向プライマーと逆方向プライマーの対であり得るか、またはこれらはシグナル増幅プローブ(例えば、リガーゼ連鎖反応(LCR)で使用されるプローブ)、および配列の同定において使用される他のプローブであり得る。標的がサンプル中に存在する場合、複数のプローブは、標的フラグメントの長さに沿ってハイブリダイズする。従って、プローブの存在についてサンプルに質問すること(interrogating)により、サンプル中に存在する配列の完全性を決定し得る。これは、多数の方法により行われ得、これらの方法としては、ハイブリッド捕獲、PCR、LCR、鎖置換、分岐鎖、または配列を同定もしくは定量するためにハイブリッドプローブもしくはプライマーを組み込む、当該分野で公知の他のアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。インタクトな(高い完全性の)核酸を含むサンプルは、本発明に従う陽性スクリーンを示す。1つの実施形態において、サンプルを、支持体担持捕獲プローブを含むウェル(例えば、96ウェルプレート上)内に入れる。捕獲プローブは、標的配列(サンプル中に存在する場合)を固定化する。捕獲プローブの下流の配列にハイブリダイズするプローブ(下流プローブ)を、各ウェルに入れて、その結果、各下流プローブは、共通の捕獲プローブから独特の距離だけ離れて間隔を空けられ、そして各ウェルはただ1つの型の下流プローブを含む。次いでシグナルは、例えば、増幅により、または標準的ELISA手順、次いで増幅により、またはLCRにより、または上述の他の方法により生成される。各ウェルにおけるシグナルの存在は、少なくとも捕獲プローブと下流プローブとの間の長さの配列の存在を示す。代替の実施形態において、各ウェルは複数の異なる下流プローブを受容し、これらは別々に標識され得、そして標識(単数または複数)の存在は、サンプル中に存在する配列の長さと相関する。
【0051】
例えば、癌を有する患者由来のサンプルは、(とりわけ、標的フラグメントの長さ、プライマーの間隔、および標的上のどこにプライマーが間隔を空けるかに依存して)ほとんどまたは全てのプライマー対の間のアンプリコン(amplicon)を産生する。このようなプロフィールは疾患または疾患の傾向についての陽性スクリーンを表す。疾患のしるしを有していない患者由来のサンプルは、上記のアッセイにおいて増幅産物をほとんどまたは全く生じない。ネガティブスクリーンにおいて、小さい(例えば、200bp)フラグメントの増幅はあり得るが、より大きいフラグメント(すなわち、順方向プライマーおよび間隔を空けられた逆方向プライマーとの間の増幅から生じるフラグメント)の増幅は全くない。癌の診断において、標的フラグメントは、必要に応じてオンコジーン、腫瘍サプレッサ、または癌に付随する任意の他のマーカーであり得る。しかし、本発明の方法においては、癌に付随するマーカーを使用する必要はない。なぜならば、このような方法は、疾患を示すサンプルが、より多量のインタクトな核酸およびより多量の長いフラグメント核酸を含むという一般認識に基づくからである。従って、任意の簡便な標的核酸位置は、本発明の方法において使用され得る。
【0052】
上記の増幅反応は、任意の適切なプロトコルまたは好都合なプロトコルに従って行われ得、そして生じた増幅産物(存在する場合)のフラグメントサイズは、任意の適切な手段または好都合な手段により決定され得る。
【0053】
代替の実施形態において、本発明の方法は、連続的な核酸標的フラグメントに対して一連の増幅反応を行うことを包含し、各増幅(application)反応は、1つの順方向プライマーおよび1つの逆方向プライマーを含み、その結果、順方向プライマー逆方向プライマー対は、サンプル中に存在すると推定される連続的フラグメントでの間隔で間隔を空けられる。この配置の例を、図13に示す。好ましくは、各対の順方向プライマーおよび逆方向プライマーの間の間隔は等しい。陽性スクリーンにおいて、上記のアッセイは、全てでなければ大部分のプライマー対について一連の同じサイズのフラグメントを生じる。このような増幅産物のアレイは、疾患を示す連続的標的配列を示す(上記を参照のこと)。疾患を有さない患者由来のサンプルは、増幅産物をほとんど産生しないかまたは全く産生しないが、任意の場合において、比較的インタクトな診断標的は配列を含むサンプルから推測される増幅産物の連続的アレイを生じる。
【0054】
上記の方法の各々は、サンプル中のインタクトな核酸、またはインタクトな核酸のセグメントが診断的であるという原理に基づく。従って、上記の方法に対するバリエーションが企図される。このようなバリエーションとしては、プライマーの配置、使用されるプライマーの数、標的配列、配列の同定方法などが挙げられる。例えば、図13に示される上記の方法において、順方向プライマーおよび逆方向プライマーの数が同じである必要はない。順方向プライマーを使用して、例えば、2つの逆方向プライマーの間のフラグメントを増幅し得る。プライマー対配置における他のバリエーションは、当該分野の技術範囲内であり、行われるべき増幅反応の詳細も同様である。最後に、図12および13に示されるように、捕獲プローブは、選択された標的配列を単離するために、本発明の方法において使用され得る。
【0055】
以下の実施例は、本発明に従う方法のさらなる詳細を提供する。例示の目的のために、以下の実施例は、結腸癌検出における本発明の方法の使用の詳細を提供する。従って、以下の様式で例示されるが、本発明は、限定されず、そして当業者は、それを考慮して、本発明の広範な適用を理解する。
【0056】
(結腸癌の検出のための例示的な方法)
以下の実施例は、排泄された便サンプルにおける結腸癌についてのスクリーニングに関する。本発明が基礎とする原理(上記を参照のこと)に基づいて、同じ分析が他のサンプル(例えば、上述のサンプル)に対して、本明細書中に示される結果と同じ結果を伴って行われ得る。
【0057】
便サンプルの分析のために、本発明の好ましい方法は、米国特許第5,741,650号、および同時継続中、共有の(co−owned)米国特許出願第09/059,718号(これらの両方は、本明細書中に参考として援用される)において教示されるように、排泄された便の少なくとも断面部分または周辺部分を得ることを包含する。便の断面部分または周辺部分が所望されるが、本明細書中に提供される方法は、排泄された便から得られる無作為のサンプル(スミアまたは切屑を含む)に対して行われる。一旦得られると、便標本は、均質化される。均質化に好ましい緩衝液は、少なくとも16mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む緩衝液である。しかし、同時継続中の、共有の米国特許出願第60/122,177号(本明細書中に参考として援用される)において教示されるように、少なくとも150mMのEDTAの使用が便からの核酸の収量を顕著に改善することが見出されている。従って、便均質化に好ましい緩衝液は、リン酸緩衝化生理食塩水、20〜100mMのNaClまたはKCl、少なくとも150mMのEDTA、および必要に応じて界面活性剤(例えば、SDS)およびプロテイナーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を含む。
【0058】
均質化の後、核酸を、好ましくは便サンプルから単離する。核酸の単離または抽出は、本発明の全ての方法において必ずしも必要ではない。なぜならば、特定の検出技術が核酸を単離せずに均質化した便において適切に行われ得るからである。しかし、好ましい実施形態において、均質化された便は、核酸、タンパク質、脂質、および他の細胞破片を含有する上清を生成するために回転される。この上清を界面活性剤およびプロテイナーゼで処理して、タンパク質を分解し、そして核酸をフェノール−クロロホルム抽出する。次いで、抽出された核酸をアルコールで沈殿させる。他の技術がサンプルから核酸を単離するために使用され得る。このような技術としては、ハイブリッド捕獲、および均質化された便からの直接的な増幅が挙げられる。使用されるスクリーニングアッセイに必要な程度まで、核酸は、精製および/または単離され得る。全DNAは、当該分野で公知の技術を使用して単離される。
【0059】
(スクリーニングアッセイプロトコル)
上で得られたヒトDNAフラグメントのサイズは、多数の手段により決定され得る。例えば、ヒトDNAは、ゲル電気泳動を使用して分離され得る。3%アガロースゲルを当該分野で公知の技術を使用して調製する。Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sones,1195,2−23−2−24頁(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。次いで、ヒトDNAフラグメントのサイズを、既知の標準と比較することにより決定する。約200bpより大きなフラグメントは、陽性スクリーンを提供する。診断はスクリーンのみに基づいてなされ得るが、陽性スクリーンを提示する患者は、確認された診断を与えるために好ましくは追跡検査を求めるように助言される。
【0060】
ヒトDNAフラグメント長を決定するための好ましい手段は、PCRを使用する。PCRを実行するための方法は周知である。本発明において、ヒトDNAフラグメントは、ヒト特異的プライマーを使用して増幅される。PCRにより産生される約200bpより大きなアンプリコンは、陽性スクリーンを提示する。他の増幅反応およびPCRの改変(例えば、リガーゼ連鎖反応、逆相PCR、Q−PCR、およびその他)を使用して、検出可能なレベルのアンプリコンを産生し得る。アンプリコンは、レポーター(例えば、蛍光、放射性同位体など)へのカップリングにより、配列決定により、ゲル電気泳動により、質量分析により、またはアンプリコンの長さ、重量、もしくは他の特徴がそれらのアンプリコンをサイズで同定する限りは、当該分野で公知の任意の他の手段により検出され得る。
【実施例】
【0061】
実験を行って、便中の増幅可能なDNAの特徴が、便サンプルが得られた患者における癌または前癌状態を示すか否かを決定した。第1の実験において、増幅可能なDNAの量を、数個の便サンプルのぞれぞれにおいてPCR増幅を使用して測定して、少なくとも200塩基対長のサンプル中のDNAフラグメントを検出した。第2の実験は、同じサンプル中の長い(200塩基対より大きい)フラグメントの量を決定して、次いで長い産物対短い産物の比を決定した。第3の実験は、200bp、400bp、800bp、1.3Kb、1.8Kbおよび2.4Kbの核酸フラグメント長を有する増幅産物のプロフィールを決定した。第4および第5の実験は、患者の便サンプル中の核酸の完全性を患者の全体の疾患状態と相関させる臨床研究であった。
【0062】
(実施例1)
便サンプルを、結腸鏡検査が行われるべきであることを示した症状または病歴を示す9人の患者から採取した。各便サンプルを凍結した。便サンプルを提供した直後に、患者の疾患状態を決定するために、各患者に結腸鏡検査を行った。結腸鏡検査結果、および次の結腸鏡検査の間に採取した生検サンプルの組織学的分析に基づいて、個体を2つのグループ:正常または異常のうちの一方においた。異常群は、癌または少なくとも1cmの直径の腺腫を有する患者からなる。これらの結果に基づいて、9人の患者のうち4人を異常群にいれた。
【0063】
これらのサンプルを、ハイブリッド捕獲ヒトDNAによってスクリーニングし、そして少なくとも200塩基対を有する増幅可能なDNAの量を決定した。各凍結便被検物(7〜33グラムの重量)を解凍し、そして500mMのTris、16mM EDTA、および10mM NaCl(pH9.0)中で、3:1の容積対質量比でホモジナイズした。次いで、サンプルを、同じ緩衝液中で、20:1の最終の容積対質量まで再びホモジナイズし、そしてガラスマクロビーズに2356×gでスピンした。上清を収集し、そしてSDSおよびプロテイナーゼkで処理した。次いで、DNAをフェノール−クロロホルム抽出し、そしてアルコールで沈殿させた。沈殿物を10mM Trisおよび1mM EDTA(1×TE)(pH7.4)に懸濁した。最後に、DNAをRnアーゼで処理した。
【0064】
配列特異的ハイブリッド捕獲によって、沈殿物からヒトDNAを単離した。p53、K−rasおよびapc遺伝子のタンパク質に対するビオチン化プローブを使用した。
【0065】
K−rasプローブは、
【0066】
【化1】
【0067】
であった。
【0068】
2つのapcプローブがあり、apc−1309は、
【0069】
【化2】
【0070】
であり、そしてapc−1378は、
【0071】
【化3】
【0072】
であった。
【0073】
p53に対する4個のプローブがあり、第1のプローブ(エキソン5の部分にハイブリダイズしている)は、
【0074】
【化4】
【0075】
であり、第2のプローブ(エキソン7の部分にハイブリダイズしている)は、
【0076】
【化5】
【0077】
であり、第3のプローブ(これもまた、エキソン7の部分にハイブリダイズしている)は、
【0078】
【化6】
【0079】
であり、そして最後に、エキソン8に対するプローブは、以下の配列:
【0080】
【化7】
【0081】
を有した。
【0082】
各プローブの10μlのアリコート(20pmol/捕獲)を、室温で、2時間、310μlの6M GITC緩衝液の存在下、300μl DNAを含有する懸濁液に添加した。ハイブリッド複合体を、ストレプトアビジンをコーティングしたビーズ(Dynal)を使用して単離した。洗浄後、プローブ−ビーズ複合体を、25℃で1時間、0.1×TE緩衝液(pH7.4)に懸濁した。次いで、この懸濁液を85℃で4分間加熱し、そしてビーズを取り出した。
【0083】
捕獲されたDNAを、次いで、本質的に米国特許第4,683,202号(本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、PCRを使用して増幅した。各サンプルを、順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、二つ組中の7個の遺伝子座(Kras、エキソン1、APCエキソン15(3個の別個の遺伝子座)、p53、エキソン5,p53、エキソン7、およびp53、エキソン8)にわたって増幅した(各遺伝子座について全部で14個の増幅物)。7個の別個のPCR(それぞれ40サイクル)を、200塩基対以上を有するサンプル中のフラグメントを検出するように指向されたプライマーを使用して、二つ組において行った。増幅DNAを、4%Nusieve(FMC Biochemical)ゲル(3%Nusieve、1%アガロース)上に配置し、そしてエチジウムブロマイド(0.5μg/ml)で染色した。得られた増幅DNAを、染色されたゲルの相対強度に基づいて評価した。その結果を図1〜7に示す。各図は、増幅された7個の異なる遺伝子座についての9人全ての患者(標準を含む)の結果を表す。これらの図に示されるように、癌または腺腫を有する患者由来の各サンプルは、癌も前癌も有さない患者由来のサンプルに関連するバンドよりも有意に大きな強度を有するバンドとして検出された。結腸鏡検査を使用して同定された4人全ての癌/腺腫患者を、200塩基対以上の長さを有する増幅可能なDNAの量を決定することによって正確に同定した。図1〜7に示されるように、この結果は、遺伝子座が増幅された結果に関係なく同じである。従って、サンプル中の200bp以上のDNAの量は、患者の疾患状態を表した。
【0084】
(実施例2)
順方向または逆方向プライマーを、約1.8Kb以上のフラグメントが増幅されるように配置した以外は、上記の実施例1に記載される実験と本質的に同一の実験を行った。
【0085】
DNAを上記のように調製した。順方向プライマーおよび逆方向プライマーを、3つの異なる遺伝子座(Kras、エキソン1、APC、エキソン15、およびp53 エキソン5)上で約1.8Kb離れてハイブリダイズするように、間隔をあけた。33回の増幅を行い、そして得られたDNAを3%アガロースゲル上に配置した。その結果を図8〜10に示す。これらの図に示されるように(この図は、「長い」産物を増幅および検出するための3つの異なる実験の結果を示す)、癌または前癌を有する個体由来のサンプルは、多量の高分子量(この場合、1.8Kb以上)のDNAを産生し;一方、癌も前癌も有さない患者由来のサンプルは、約1.8Kb以上の範囲のDNAを産生しなかった。従って、高分子量DNAの存在は、患者の疾患状態を表した。
【0086】
(実施例3)
胃腸障害の疑いのある、Mayo Clinicに存在する30人の患者について、盲検試験の一部として収集および調製されたサンプル由来のDNAの分子量プロフィールを決定するために実験を行った。便サンプルを得、そしてDNAを上記のようにして単離した。
【0087】
増幅の前に、ハイブリッド捕獲によってDNAをサンプルから単離した。BRCA1、BRCA2、p53、APC遺伝子の部分に対するビオチン化プローブを使用した。
【0088】
BRCA1プローブは、
【0089】
【化8】
【0090】
であった。
【0091】
BRCA2プローブは、
【0092】
【化9】
【0093】
であった。
【0094】
APC1プローブは、
【0095】
【化10】
【0096】
であった。
【0097】
p53プローブ(これは、エキソン5の部分にハイブリダイズしている)は、
【0098】
【化11】
【0099】
であった。
【0100】
APC2プローブは、
【0101】
【化12】
【0102】
であった。
【0103】
300μlアリコートのサンプルを、300μlの6Mグアニジンイソチオシアネート緩衝液中に、10μlの各捕獲プローブと共に入れ、そして25℃で一晩インキュベートした。捕獲したDNAを、室温で1時間インキュベートした100μlの捕獲ビーズを使用して単離した。DNAをこのビーズから溶離し、そして標準的なPCR条件下でPCR増幅を行った。
【0104】
本発明の方法に従って、各サンプルについて順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、5個の遺伝子座にわたって増幅反応を行った。順方向プライマーおよび逆方向プライマーを、200bp、400bp、800bp、1.3Kb、1.8Kb、および2.4Kbのフラグメントするように、間隔をあけた。30回のPCR反応の各々を36サイクルごとに実行した。単位複製配列を3%Seakeamゲル上で実施し、そしてエチジウムブロミドで染色した。その結果を図11Aおよび11Bに示す。各図は、30人の患者のうち15人についての結果を表す。
【0105】
これらの図に示されるように、癌または腺腫を有する患者は、増幅可能なDNAの増加した収率を有する。これは,1.8Kbレベル以上において特に顕著である。従って、癌または腺腫を有する患者は、便においてより増幅可能なDNAを産生するだけでなく、癌を有さない患者の便において産生されるより大きなDNAフラグメントを産生する。従って、増幅可能なDNAの増加した収率および高分子量DNA(特に、1.8Kb以上)の存在の両方は、患者の疾患状態を示した。
【0106】
(実施例4)
この実施例において、結腸鏡検査を使用して診断された直腸結腸腺腫または直腸結腸癌を有する多数の患者、および直腸結腸癌も腺腫も有さないと診断された79人の患者における臨床的結果と、本発明の方法とを相関させた。便サンプルを、これらの患者の各々から得、そして上記のように調製した。上に示される5個の異なる遺伝子座のフラグメントを、上記の実施例3のプロトコルを使用して、200、400、800、1300、1800および2400塩基間隔をあけられたプライマーを使用して増幅した。各増幅物を、フラグメントの首尾良い増幅が1のスコアを付けられ、そして増幅していないものが0のスコアを付けられるようにスコア付けした。5個の遺伝子座は6個のプライマー対の各々を使用して問い合わせされるため、最大スコアは30であった(5個全ての遺伝子座において6個全てのフラグメントの首尾良い増幅)。溶性スクリーンのカットオフは、21に設定した。その結果を以下に示す。
表1
正常
【0107】
【表1】
【0108】
表2
腺腫
【0109】
【表2】
【0110】
表3
癌
【0111】
【表3】
【0112】
上記のように、本発明の方法は、結腸直腸癌および腺腫の存在についてのスクリーニングにおいて有用である。
【0113】
(実施例5)
この実施例において、本発明の方法を使用して、28人の患者における非結腸癌を検出した。
【0114】
28人の患者の各々から便サンプルを得た。このサンプルを上記のように調製した。上に示される5個の異なる遺伝子座のフラグメントを、上記の実施例3に記載されるプロトコルを使用して、200、400、800、1300、1800および2400塩基間隔のあいたプライマーを使用して増幅した。各増幅物を、フラグメントの首尾良い増幅が1のスコアを付けられ、そして増幅していないものが0のスコアを付けられるようにスコア付けした。5個の遺伝子座は6個のプライマー対の各々を使用して問い合わせされるため、最大スコアは30であった(5個全ての遺伝子座において6個全てのフラグメントの首尾良い増幅)。21のスコアは、疾患のある患者と疾患のない患者との間のカットオフとして使用した。この結果を以下に示す。
表4
上部結腸癌(supercolonic cancer)
【0115】
【表4】
【0116】
上記のように、本発明の方法は、非結腸癌を実際に有する27人の患者から18人を首尾良くスクリーニングした。ただ1人の患者のみが、その患者の有していなかった癌を有すると誤って診断された。従って、本発明の方法は、患者の非特異的な癌疾患状態の非侵襲的診断のために有用である。
【0117】
陽性スクリーンの21の閾値は、所望の感度および特異性と適合するように変えられ得る。例えば、18が誤りだった場合、表4に示される陰性結果が無効にされる。当業者は、患者(例えば、症状を示していない患者よりも低い、症状を有する患者の閾値)、診断される疾患、および感度および特異性の所望の程度に基づいてどのように閾値を設定するかを理解する。閾値とは関係なく、本発明の原理は、依然として、核酸の完全性が疾患、特に癌のための実行可能なマーカーであることにとどまる。
【0118】
さらに、疾患の性質は、本発明の方法を使用して測定され得る。例えば、本発明の方法に従う周期的な分子量探査を使用して、症状を示さないかまたは最小の症状を示す患者の疾患状態をモニタリングし得る。このような縦断的なモニタリングは、患者が高い完全性の核酸の量の増加を伴いつつ(これは追跡試験の望ましさを示す)進行しているか否かを決定する。
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
多くの疾患がゲノムの不安定性に関連する。すなわち、変異のようなゲノム安定性の破壊は、特定の癌の発症または進行に連結する。従って、ゲノム不安定性の種々の局面が、疾患に関する信頼性のあるマーカーとして提案されている。例えば、BRCA遺伝子における変異は、乳癌のマーカーとして提案され、そしてp53細胞周期調節遺伝子における変異は、多数の癌(特に直腸結腸癌)と関連する。特定の変異が、特定の型の癌の初期段階に対する分子スクリーニングアッセイの基本であり得ることが示唆されている。例えば、非特許文献1を参照のこと。
【0002】
ゲノム疾患マーカーの検索は、癌検出の領域において特に熱心である。癌は、制御できない細胞増殖によって特徴付けられ、この増殖は、1つ以上の遺伝子変異と関連し得る。このような変異は、細胞死を回避するために発症した細胞を引き起こし得る。例えば、腫瘍抑制遺伝子における変異は、アポトーシス(直接的な遺伝子制御と考えられる細胞死の型)を回避するための細胞を生じ得る。アポトーシスの間、細胞は、その膜を失い、細胞質が凝縮し、そして核クロマチンは、特徴的に短い長さのオリゴヌクレオチドフラグメントをまき散らす。事実、これらの特徴的なDNA切断パターンは、アポトーシスのためのアッセイとして提案されている。
【0003】
癌の指標である核酸マーカーを同定し、そして使用するための試みがなされている。しかし、このようなマーカーが見出される場合でさえ、患者サンプル(特に異種サンプル)をスクリーニングするためにこれらを用いることは、十分なサンプル材料を得ることが不可能であることまたは単一マーカーのみを測定することから生じる低い感度のいずれかに起因して、失敗であることが明らかになった。妥当な量のヒトDNAを、1つの型の異種サンプル(便)から簡単に得ることは、困難であることが明らかになった。非特許文献2(全便検体のたった44.7%、および健康な個体由来の便のたった32.6%のみが、変異分析のための十分なDNAを産生したことを報告する)を参照のこと。妥当なDNAが得られた他の報告は、単一癌関連変異に基づく患者の疾患状態を同定する際の低い感度を報告した。非特許文献3(癌に関するマーカーとしてp53変異を用いる)を参照のこと。
【0004】
研究者達は、管腔領域(例えば、結腸、胆管、血管など)へ流出された腫瘍細胞のDNAにおける変異を分析することを試みている。このような試みは、既知の変異および比較的高い濃度の細胞材料が見出されている場合のみ、成功している。例えば、非特許文献4を参照のこと。疾患状態と流出した細胞物質におけるDNA完全性とを関連付ける試みは、なされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sidranskyら、Science、(1992)256:102−105
【非特許文献2】Villaら、Gastroenterol.、(1996)110:1346−1353
【非特許文献3】Eguchiら、Cancer、(1996)77:1707−1710
【非特許文献4】Mulcahyら、Ann.Oncol.(1999)10(補遺4):114−117
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、流出された細胞材料を含む生物学的サンプルにおける核酸の完全性が、サンプルが得られた患者の疾患状態の指標であることを提供する。本発明に従って、特定の組織サンプルまたは体液サンプル(特に以下に記載されるもの)は、周辺器官または周辺組織から流出された細胞由来の破片を含む。健康な患者において、このような破片は、正常な細胞周期の一部としてアポトーシスの結果である。アポトーシスは、核酸の完全性を減少し、その結果、小さいフラグメントの核酸のみが、健康な個体の剥離された細胞破片中に存在する。対照的に、細胞周期機構が破壊または欠損される癌のような疾患において、細胞の破片は、高い完全性の核酸(すなわち、アポトーシスによって分解されていない核酸)を含む。従って、本発明の方法は、核酸完全性を患者の疾患状態の測定として用いることを含む。完全性は、任意の簡便な手段によって測定され得る。好ましい手段としては、サンプル中の核酸の量、サンプル中の核酸の長さ、またはサンプル中の核酸の分子量が挙げられる。
【0007】
本発明は、患者から得られた検体またはサンプルに存在する患者の核酸の完全性に基づいて患者における疾患を検出するための方法を提供する。本発明の方法に従って、疾患を有する患者から得られた脱落した細胞破片を含む組織検体または体液検体は、健康な患者から得られたそのような検体中に予想されるよりも大きい量でインタクトな核酸の量を含む。従って、患者サンプル中のインタクトな核酸の測定は、患者の全疾患状態の指標である。本明細書中に使用される場合、「インタクト」は、アポトーシスの結果として存在することが予期されるよりも、より長い核酸をいう。本発明は、ヒト用途および獣医用途へ同等に適用可能である。従って、本明細書中に規定されるような「患者」は、ヒトまたは他の動物を意味する。
【0008】
健康な患者は、一般的に、正常なアポトーシス分解を介して細胞破片を生成し、管腔組織または管腔液由来のサンプル中に比較的短い核酸フラグメントを生じる。疾患を有する患者は、一般的に、細胞および細胞破片を生成し、この割合は、正常な細胞周期調節を防止し、比較的長い、インタクトな核酸フラグメントを生じる。理論に束縛されずに、本発明は、細胞が疾患(特に遺伝子異常(誘導性または遺伝性のいずれか)と関連する疾患)に応答するというこの方法に関連するこの洞察および他の洞察を上手く利用する。結果として、患者の疾患状態が、患者から得られた検体中に生成された患者の核酸の分析によって決定されることが発見された。より好ましくは、このような検体は、脱落した細胞破片をおそらく含むようである。このような検体としては、便、血液の血清もしくは血漿、痰、膿、初乳などが挙げられるが、これらに限定されない。ゲノム不安定性またはゲノム異常が正常な細胞周期調節で妨害される疾患(例えば、癌)において、上記に同定されるような検体は、比較的インタクトな核酸フラグメントを含む。そのようなフラグメントの存在は、疾患のための一般的な診断スクリーンである。
【0009】
従って、本発明の方法は、患者から得られた組織または体液の検体中の核酸の完全性を分析することによって疾患に対して患者をスクリーニングする工程を包含する。好ましい検体としては、流出された細胞または細胞破片を含む検体が挙げられる。従って、非常に好ましい検体は、多量のインタクト(非剥離)な細胞を含まない検体である。このような好ましい検体は、便、痰、尿、胆汁、膵液および血液の血清もしくは血漿を含み、これらは全て、流出された細胞または細胞破片を含む。本発明の方法は、癌をスクリーンする際に特に有用である。癌は、ゲノム不安定性、特に正常な細胞周期に対する制御の損失と関連すると考えられる疾患である。従って、腫瘍は、典型的にはインタクトであり、そして通常通りに、例えば、便、痰、尿、胆汁、膵液、および血液に流出される。このような流出された細胞および細胞破片は、健康な患者から得られた検体中に見出されるものと比較してより高い完全性の核酸を含む。患者検体中の核酸完全性が疾患のためのスクリーンとして測定される多数の方法が存在する。
【0010】
好ましい実施形態において、核酸完全性は、サンプル中の核酸を増幅する能力によって測定される。従って、好ましい方法は、組織サンプルまたは体液サンプル中で、サンプル中にあることが疑われる核酸遺伝子座をテンプレートとして用いる増幅反応を実施する工程を包含する。増幅産物(アンプリコン)の量が正常サンプル(例えば、スクリーニングされる疾患を有さないもの)中に存在する事が予測されるアンプリコンの量よりも多い場合、このサンプルは、陽性であると決定される。いくつかの場合、任意の増幅産物の存在は、疾患に関する陽性スクリーンを正当化するのに十分である。DNAの場合、増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、RNAの場合、増幅反応が逆転写酵素PCRであることが好ましい。プライマーは、分析のために選択される遺伝子座を増幅するために設計される。本発明の目的に関して、「ゲノム遺伝子座」は、任意の遺伝子エレメントであり、これには、遺伝子のコード領域、非コード核酸領域、遺伝子の調節エレメント、イントロンまたはRNAが挙げられるが、これらに限定されない。標的ゲノム遺伝子座が任意の特定の疾患と関連することは必要とされない。なぜなら、増幅可能な核酸における増加が、それ自身、診断的であるからである。
【0011】
1つの好ましい実施形態において、単一の高分子量アンプリコンの存在が、陽性スクリーンである。好ましくは、約1.3Kb以上のフラグメントが、患者サンプル中の高い完全性の核酸の指標として測定される。
【0012】
非常に好ましい実施形態において、異なる長さの核酸フラグメントの範囲にわたる増幅産物のプロフィールが、生成される。好ましい実施形態において、一連の増幅反応は、単一ゲノム遺伝子座で実行され、各々の反応は、特有の長さのフラグメントを増幅するために設計される。検出可能なアンプリコンが各反応中または健康な患者から得られたサンプル中で予想されるよりも多く多数の反応中で生成される場合、このサンプルは、陽性であると決定される。例えば、同じゲノム遺伝子座において200bp、400bp、800bp、1.3Kb、1.8Kb、および2.4Kbのフラグメントを増幅するための試みがなされている。健康な個体(「正常」サンプル)から得られたサンプルにおいて、ほとんどまたは全く増幅産物が観察されないこと(特に、比較的長い遺伝子座の一部がテンプレートとして使用される場合)が、予想される。対照的に、疾患患者から得られたサンプル中の細胞および細胞破片の少なくともいくらかの割合が、インタクトなフラグメントを含む。
【0013】
別の実施形態において、異なる長さの核酸フラグメントの範囲にわたる増幅産物のプロフィールが、一連の異なるゲノム遺伝子座上で実施される一連の増幅反応によって生成され、各反応は、特有の長さのフラグメントを増幅するために設計される。検出可能なアンプリコンが各反応中またはスクリーニングされる疾患を有さない患者から得られたサンプル中で予想されるよりも多く多数の反応中で生成される場合、このサンプルは、陽性であると決定される。
【0014】
本発明に従って、正常なサンプルは、代表的なアポトーシスフラグメント(約175bp)よりも有意により長い任意の長さで、有意な量の検出可能なアンプリコンを生成しない。従って、プライマーが所定のゲノム遺伝子座でたった1つの長さのフラグメントを増幅するために間隔を空けられようとそうでなかろうと、またはその遺伝子座で一連の増幅が実行されようとそうでなかろうと、差異は、正常サンプルおよび疾患サンプル間で容易に観察可能である。
【0015】
以下に詳述されるように、本発明の方法は、流出された細胞または細胞破片を含む生物学的サンプル中、疾患(好ましくは癌または前癌)を検出することに有用である。例えば、健康な患者に関する予め決定された閾値を超える核酸(好ましくはDNA)の患者の便サンプル中での存在量は、患者が癌を有することを示す。追跡分析が使用されて、疾患が存在する場所が決定される。しかし、一般的な疾患スクリーンは、疾患の遺伝子座および分析のために採取された検体に関係なく、有効である。従って、便中の核酸の分析は一般的に疾患に関して予測的であるが、疾患が胃腸管起源のものであることを示す必要はない。しかし、例えば、変異分析に基づく追跡スクリーニングは、疾患の遺伝子座を同定するのに妥当である。多数の変異分析が当該分野で公知であり、そして例えば、米国特許第5,670,325号(本明細書中に参考として援用される)が挙げられる。
【0016】
代替の実施形態において、サンプル中の核酸の量を検出することによる患者サンプルのスクリーニングは、アポトーシス細胞活性のためのアッセイと合わされる。このようなアッセイは、疾患状態に関するスクリーンとして患者サンプル中の核酸の量を検出することと合わされ得る。陽性スクリーンは、(1)正常サンプル(例えば、スクリーニングされる疾患を有さないもの)中に存在する予測された量よりも、多い量の核酸、および(2)正常なサンプル中に存在する予測される量よりも、少ない量のアポトーシス細胞活性の両方を生成するものである。非常に好ましい実施形態において、本発明の方法は、多数のゲノム遺伝子座を分析して、各遺伝子座に存在する増幅可能な核酸の量を決定する工程を包含する。本発明の方法を用いる複数の遺伝子座をにわたる分析は、スクリーニングアッセイの感度を増加し得る。
【0017】
以下に詳細に例示されるように、本発明の方法は、核酸中の異常に関して生物学的サンプルを、サンプル中であることが疑われるかまたは予想される核酸をテンプレートとして用いる増幅反応を実施することによってスクリーニングする工程;得られた増幅産物の量を決定する工程;得られたアンプリコンの量を増幅産物の標準量と比較する工程;ならびに増幅産物の量が標準量と異なる場合に、核酸中に異常を有するとしてサンプルを同定する工程を包含する。好ましい実施形態において、増幅産物の標準量は、既知の正常サンプル(スクリーニングされる疾患を有さないことが既知の個体から得られたもの)中でスクリーニングされる(例えば、インタクトな、野生型核酸)遺伝子座またはその一部の増幅によって決定される。また好ましい実施形態において、標準量は、当該分野を参照することによって決定される。本発明の特定の実施形態において、標準量は、サンプル中の高い完全性の核酸の欠如に起因して、必ずしも検出可能なアンプリコンではない。従って、患者サンプル中の任意の検出可能なアンプリコンが、陽性スクリーンの指標である。これは、特に大きい(例えば、1.8Kbまたは2.4Kb)のフラグメントがスクリーニングされる場合である。最後に、標準量は、例えば、電気泳動ゲル上の分子量マーカーであり得る。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、サンプルは、便、痰、血液、尿、脳脊髄液、精液、唾液、胸の乳頭の吸引液、および生検組織からなる群より選択される検体から調製される。しかし、任意の組織検体または体液検体が本発明の方法に従って使用され得る。特に好ましいのは、管腔液のサンプルである。なぜなら、このようなサンプルは、一般的に、インタクトな健康な細胞がないからである。このようなサンプルとしては、血液、尿、胆汁、膵液、便、痰、膿などが挙げられる。
【0019】
好ましい実施形態においてまた、検索される核酸は、DNAである。より詳細な実施形態において、分析される核酸は、遺伝子のコード領域もしくはその一部、非コード核酸領域もしくはその一部、遺伝子の調節エレメントもしくはその一部、およびゲノムDNAの未だ同定されていないフラグメントから選択される。好ましい実施形態においてまた、検索される核酸は、RNAである。当業者によって理解されるように、任意のゲノム遺伝子座が、本発明に従うスクリーニングを受けやすい。分析に選択される特定の遺伝子座は、ある部分、スクリーニングされる疾患および研究者の都合に依存する。分析に選択される遺伝子座が、任意の特定の疾患とかならずしも関連する必要はない。なぜなら、本発明の方法は、全疾患状態の指標としてサンプル中の全核酸もしくはサンプル中の増幅可能な核酸、またはサンプル中のアポトーシスの存在および/もしくは程度のいずれかを測定することを意図するからである。しかし、疾患関連遺伝子座(この中で変異は、疾患の指標であるか、原因であるか、さもなくば証拠である)が、使用され得る。好ましい疾患関連遺伝子座としては、p53、apc、MSH−2、dcc、scr、c−myc、B−catnenin、mlh−1、pms−1、pms−2、pol−デルタ、およびbaxが挙げられる。
【0020】
増幅産物の量は、任意の適切な手段または簡便な手段によって決定され得る。好ましくは、増幅産物の量は、ゲル電気泳動によって決定される。蛍光標識または放射性標識のような標識が使用され得る。生成された増幅産物の量は、任意の適切な手段または簡便な手段によって標準量に対して比較され得、これらとしては、視覚的比較、機械駆動の視覚的比較、デンシトメトリー、質量分光法、ハイブリッド捕獲、および他の公知の手段が挙げられるがこれらに限定されない。増幅反応それ自身は、核酸を増幅する任意の手段であり得、これらとしては、PCR、RT−PCR、OLA、ローリングサークル(rolling circle)、単一塩基伸長、および当該分野で公知の他のものが挙げられるがこれらに限定されない。増幅産物はまた、単一増幅技術(例えば、分岐鎖増幅(Chiron))によって測定され得る。本発明の方法は、核酸の同定、増幅、配列決定、または他の操作のための任意のプラットフォームを伴って有用である。例えば、本発明の方法は、リガーゼ鎖反応、鎖置換(Becton−Dickinson)などに適用され得る。
【0021】
本発明の好ましい実施形態においてまた、一連の増幅反応が、単一ゲノム遺伝子座に対して実施される。このシリーズ中の各増幅反応は、異なる長さのフラグメントを増幅するために設計される。好ましい実施形態において、標的フラグメントの長さは、200bp、400bp、800bp、1.3Kb、1.8Kb、および2.4Kbである。増幅のためのプライマーは、当該分野の知識に従って設計され、これは、所望の遺伝子座での所望の長さのテンプレート(存在する場合)を増幅するためである。陽性スクリーンは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの増幅反応シリーズでアンプリコンを生成するものである。上記のように、アポトーシスを引き起こしたかまたはアポトーシスを引き起こしている正常なサンプルは、代表的に、有意な長さのフラグメントをほとんどまたは全く含まない。従って、約200bp〜約2.4Kbおよびより長いフラグメントを標的化する一連の増幅反応は、大きなフラグメントの増幅によって証拠付けられるようにアポトーシスを回避した核酸を含むサンプルを明らかにする。
【0022】
本発明の好ましい方法はまた、一連の異なるゲノム遺伝子座上での増幅反応を実施する工程を包含する。好ましくは、約2〜約7の遺伝子が使用される。しかし、検索される遺伝子座の正確な数は、検出される疾患に基づくかまたは簡便性に基づいて個々の研究者によって決定される。本発明に従って、プライマーは、各選択された遺伝子座において核酸(好ましくはDNA)を増幅するために設計される。少なくとも1つの遺伝子座、好ましくは少なくとも2つの遺伝子座、および最も好ましくは少なくとも3つの遺伝子座が検出可能な増幅産物を生成するサンプルが、陽性サンプルとみなされる。このアッセイで増幅されるフラグメントの長さは、変化し得るが、好ましくは各長さが少なくとも約180bpである。同じ長さのフラグメントが各選択された遺伝子座において必ずしも増幅される必要はない。
【0023】
本発明の方法はまた、一連の増幅反応を一連の異なるゲノム遺伝子座で実施する工程を包含する。このシリーズにおける各増幅反応は、異なる長さのフラグメントを増幅するために設計される。好ましくは、約2〜約7の遺伝子座上で約2〜約7の増幅反応が使用される。しかし、検索される遺伝子座の正確な数は、検出される疾患に基づくかまたは簡便性に基づいて、個々の研究者によって決定される。好ましい実施形態において、標的フラグメントの長さは、200bp、400bp、800bp、1.3Kb、1.8Kb、および2.4Kbである。増幅のためのプライマーは、当該分野における認識に従って設計され、これは存在する場合、テンプレートを増幅するためである。同じ長さのフラグメントが各選択された遺伝子座において増幅されることは、好ましいが必ずしも必要ではない。陽性スクリーンは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのシリーズの増幅反応においてアンプリコンを生成するもの、ならびに、少なくとも1つの遺伝子座、好ましくは少なくとも2つの遺伝子座、および最も好ましくは少なくとも3つの遺伝子座が検出可能な増幅産物を生成するものである。上記のように、アポトーシスを引き起こしたかまたはアポトーシスを引き起こしている正常なサンプルは、代表的に、有意な長さのフラグメントをほとんどまたは全く含まない。従って、約200bp〜約2.4Kbおよびより長いフラグメントを標的化する一連の増幅反応は、大きなフラグメントの増幅によって証拠付けられるようにアポトーシスを回避した核酸を含むサンプルを明らかにする。
【0024】
本発明の方法はまた、生物学的サンプル中のDNAの完全性を評価するために使用され得る。このような方法は、テンプレートとしてサンプル中であることが疑われる少なくとも2つの遺伝子座を用いて増幅反応を実施する工程;どの遺伝子座が検出可能なアンプリコンを生成するかを決定する工程;およびアンプリコンを生成する遺伝子座の数の関数としてサンプル中のDNAの完全性を評価する工程を包含する。アンプリコンが1つ以上の増幅反応において生成される場合、サンプル中のDNAの完全性は高い。この方法は、異種サンプルが測定のための十分な核酸を有するか否かを決定することに特に有用である。従って、このような方法は、さらなる分析(例えば、遺伝子分析、生化学分析、細胞学的分析または他の分析)のためにサンプルをスクリーンまたは「限定」するために使用される。
【0025】
本発明の方法はまた、母親の血液中の核酸に対して増幅反応を実施することによって、胎児異常を評価するために使用され得る。すぐ上に記載されたように、有意な量の核酸を増幅する能力は、ゲノム不安定性の指標である。核酸増幅の程度の比較に関するべースラインは、既知の正常なサンプル由来の核酸の量であり得る。胎児サンプルから得られた増幅の量は、連続体上に配置され、そして研究者は、種々の疾患状態および正常なサンプルにおいて産生された胎児核酸の量に関して、任意の所定のサンプルを分析しなければならない。
【0026】
本発明の方法は、診断スクリーニング方法として有用である。疑われた疾患状態を確認するために患者に対して追跡試験を実行することが、しばしば望ましい。このような追跡手順は、検索される疾患状態に基づいて決定される。例えば、結腸鏡検査は、便サンプルが本発明の方法に従って陽性にスクリーニングされる場合、提案され得る。このような追跡手順は、本発明の一部として本明細書中に意図される。
【0027】
本発明の方法は、広範な疾患状態に関してスクリーニングする場合に有用である。結腸癌および腺腫に加えて、本発明の方法は、他の疾患をスクリーニングするために、例えば、リンパ腫、または胃癌、肺癌、肝癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、精巣癌、膀胱癌、子宮癌、または卵巣癌または腺腫をスクリーニングする場合に有用である。癌に加えて本発明の方法は、炎症性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病、およびゲノム不安定性が役割を果たすと考えられる他のものなどの疾患をスクリーニングする場合に、有用である。本発明の方法は、胃腸管系の正確な機能を損なった任意の疾患:最も特には、結腸の疾患をスクリーニングする場合に特に有用である。本発明の方法はまた、細胞サンプル中のアポトーシスに関してスクリーニングするために有用である。サンプル中の増幅可能なDNAのプロフィールは、疾患と関連しているタンパク質と関連する。例えば、アポトーシスタンパク質(サービビン(survivin))のアップレギュレーションは、Ras癌遺伝子、ならびに他の癌遺伝子およびこれらの遺伝子産物と同様に、増幅可能なDNAの増化した量と関連する。
【0028】
本発明の方法はまた、アポトーシスに関するアッセイとして有用である。サンプル中の高い完全性のフラグメントまたは大量の核酸の存在は、このサンプルが、アポトーシスを介して進行していない細胞由来であったことを示す。このようなフラグメントまたは量がないことは、このサンプルに寄与する細胞がアポトーシスを引き起こしたことを示唆する。従って、単独またはゲノム不安定性に関する他のアッセイと組み合わせた本発明のアポトーシス活性アッセイは、疾患をスクリーニングする場合有用である。
【0029】
最後に、本発明の方法は、ハイブリッド捕獲によって実行され得る。例えば、ハイブリッド捕獲および捕獲フラグメントの引き続く分析は、サンプルの核酸完全性を決定するために使用され得る。
【0030】
本発明はまた、疾患の指標である核酸フラグメントのプロフィールを提供する。好ましいプロフィールは、上記の方法を介して得られる。好ましいプロフィールは、本明細書中に記載の方法に従う、細胞破片を含む患者サンプルにおいて得られた約200bpと約2.4Kbとの間を有する核酸を含む。非常に好ましいプロフィールは、少なくとも1.3Kbの少なくとも1つの核酸を含む。
【0031】
本発明の他の物体および利点が、以下の図面およびその詳細な説明を考慮して明らかである。
【0032】
したがって、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1) 患者の疾患状態を決定するための方法であって、この方法は、以下:
流出された細胞または細胞の破片を含む患者サンプルにおける核酸の完全性を決定する工程;および
インタクトな核酸がこのサンプル中に、予め決定された閾値よりも多い量で存在する場合、この患者を疾患を有するとして同定する工程、
を包含する、方法。
【0033】
(項目2) 疾患に関して患者をスクリーニングするための方法であって、この方法は、以下:
流出された細胞の破片を含む患者サンプルにおける核酸の完全性を決定する工程;および
この核酸の完全性が予め決定された閾値を超えるサンプルとして陽性スクリーンを同定する工程、
を包含する、方法。
【0034】
(項目3) 患者中の疾患を検出するための方法であって、この方法は、以下:
患者サンプルに存在する患者の核酸の量を決定する工程;
この量を、疾患陰性サンプルに存在すると予想される標準的な核酸の量と比較する工程;および
この標準的な量よりも多い患者の核酸の量としてこの患者における疾患を検出する工程、
を包含する、方法。
【0035】
(項目4) 上記核酸が、少なくとも1.3kbの分子量を有するフラグメントである、項目3に記載の方法。
【0036】
(項目5) 上記疾患が癌または前癌である、項目1に記載の方法。
【0037】
(項目6) 項目3に記載の方法であって、ここで、上記癌が、結腸癌、肺癌、食道癌、前立腺癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、およびリンパ腫からなる群より選択される、方法。
【0038】
(項目7) 項目1に記載の方法であって、上記核酸が、K−ras、p53、apc、dcc、腫瘍抑制遺伝子、および癌遺伝子からなる群より選択される、方法。
【0039】
(項目8) 項目1に記載の方法であって、上記患者サンプルが、便、痰、膵液、胆汁、リンパ、血液、尿、脳脊髄液、精液、唾液、乳房の乳頭の吸引液、および膿からなる群より選択される、方法。
【0040】
(項目9) 患者の疾患状態を決定するための患者サンプルをスクリーニングするための方法であって、この方法は、以下:
(a)患者から得られたサンプル中の患者の核酸を増幅する工程;
(b)工程(a)で得られた増幅核酸の量を決定する工程;および
(c)この増幅された核酸の量が疾患陰性サンプル中で予想される増幅された核酸の量よりも多い場合、陽性スクリーンを同定する工程、
を包含する、方法。
【0041】
(項目10) 疾患に関して生物学的サンプルをスクリーニングするための方法であって、この方法は、以下:
複数のゲノム遺伝子座を選択する工程;
この各遺伝子座において増幅反応を実行する工程;
増幅産物を生成する遺伝子座の数が予め決定された閾値を超えるサンプルとして陽性スクリーンを同定する工程、
を包含する、方法。
【0042】
(項目11) 疾患に関して患者サンプルをスクリーニングするための方法であって、この方法は、以下:
複数のゲノム遺伝子座を選択する工程;
この各遺伝子座において増幅反応を実行する工程;
増幅が生じる各遺伝子座に対して第1の数値的なスコアを割り当てる工程;
増幅が生じない各遺伝子座に対して第2の数値的なスコアを割り当てる工程;
閾値の量によって、この第1の数値的なスコアの総数がこの第2の数値的なスコアの総数を超えるかどうかを決定し、これによって疾患に関してこのサンプルをスクリーンする工程、
を包含する、方法。
【0043】
(項目12) 患者サンプルから単離された核酸フラグメントであって、この核酸が、少なくとも1.3kbであり、そして癌と関連する核酸完全性を示す、核酸フラグメント。
【0044】
(項目13) 項目1に記載の方法によって得られた、単離された核酸。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたK−ras(エキソン1)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図2】図2は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたapc(エキソン15)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図3】図3は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたapc(エキソン15)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図4】図4は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたapc(エキソン15)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図5】図5は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたp53(エキソン5)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図6】図6は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたp53(エキソン7)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図7】図7は、約200bp離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便から単離されたp53(エキソン8)DNAの増幅の結果を示すゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の200bp以上の産物の量に関連する。レーン1〜4は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン5は、ポジティブコントロールであり、レーン6〜10は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、レーン11〜12は、ネガティブコントロールであり、そしてレーン13〜18は、図に示されるおよその分子量における標準である。増幅をA〜Cに分類し、Aは最も強いバンドであり、Cは最も弱いバンドである。
【図8】図8は、「長い」産物を増幅および検出するための実験の結果を示す。
【図9】図9は、約1.8Kb離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便サンプルから単離されたDNAの増幅の結果のゲル写真である。バンド強度は、1.8Kb以上の産物の量を示す。レーン1、8、および9は、ネガティブコントロールであり、レーン2、3、および5は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン4、6、および7は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、そしてレーン10〜14は、分子量標準である。
【図10】図10は、約1.8Kb離れて間隔を空けられた順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する、便サンプルから単離されたDNAの増幅の結果のゲル写真である。バンド強度は、1.8Kb以上の産物の量を示す。レーン1、8、および9は、ネガティブコントロールであり、レーン2、3、および5は、癌または腺腫を有する患者からの結果であり、レーン4、6、および7は、癌も腺腫も有していなかった患者由来であり、そしてレーン10〜14は、分子量標準である。
【図11A】図11Aは、合計30の患者およびコントロール由来の便中のDNAの増幅の結果のゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の増幅可能なDNAの量に関連する。レーンNは、ネガティブコントロールであり、レーン1、3、11、および18は、癌または腺腫の存在を示す患者からの結果であり、レーン2、4、5〜10、12〜17、および19〜30は、癌も腺腫も存在しないことを示す環はからの結果である。残りのレーンは、マーカーまたは標準である。
【図11B】図11Bは、合計30の患者およびコントロール由来の便中のDNAの増幅の結果のゲル写真である。バンド強度は、サンプル中の増幅可能なDNAの量に関連する。レーンNは、ネガティブコントロールであり、レーン1、3、11、および18は、癌または腺腫の存在を示す患者からの結果であり、レーン2、4、5〜10、12〜17、および19〜30は、癌も腺腫も存在しないことを示す環はからの結果である。残りのレーンは、マーカーまたは標準である。
【図12】図12は、本発明の方法での増幅のためのプライマーの配置の概略図を示す。この方法において、単一の順方向プライマー(F1)を、標的の段階的により長い部分を増幅するために選択された一連の逆方向プライマー(R1〜R6)と結合させて使用する。
【図13】図13は、本発明の方法における増幅のためのプライマーの配置の概略図を示す。この方法において、一連の順方向プライマー逆方向プライマー対(F1,R1)〜(F3,R3)を、標的に沿った間隔で間隔を空けられた標的の部分を増幅するために選択する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(発明の詳細な説明)
本発明は、生物学的サンプルの分析方法を提供する。本発明の方法は、生物学的サンプル中の核酸の完全さに基づく、診断に関連した情報を提供する。正常な生物学的サンプル(スクリーニングされる疾患のしるしを有していないサンプル)、特に管腔組織および/または流体を含むサンプルは、代表的には、アポトーシスによる分解の結果である大量の短いフラグメント、低い完全性の核酸(特にDNA)を含む。変異がゲノム不安定性を引き起こす場合、正常の細胞周期は妨害され得、そしてアポトーシス分解は、正常なサンプルで期待される速度では起こらないかもしれない。本発明の方法は、このような妨害についてスクリーニングする。
【0047】
従って、本発明の好ましい方法は、生物学的サンプル中の増幅可能な核酸の量を決定すること、およびその量が正常サンプルにおいて期待される量と一致するか否かを決定することを包含する。多くの生物学的サンプル(特に不均質なサンプル)において、検出可能な増幅産物は存在し得ない。このことは、特に、より長いフラグメントが増幅のためのテンプレートとして使用される場合に当てはまる。一般的に、任意の所定の組のPCRプライマーがプライマーの距離を超える長さを有するDNAフラグメントを増幅する可能性は、以下:
増幅されたフラグメントの%=(FL−PD)/(FL+PD)
で表され、ここでFLは、フラグメント長(塩基対)であり、そしてPDは、プライマー距離(塩基対)である。この等式は、サンプルDNAフラグメント長が均一に分布している(すなわち、切断が起きる有利な位置は存在しない)と仮定する。
【0048】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、疾患または疾患についての傾向を示す増幅産物のプロフィールを作製するために、存在する場合、サンプル中の異なる長さの配列を増幅することを包含する。好ましい方法において、サンプルを、単一の順方向プライマー(これは、標的フラグメントを捕獲するために使用される捕獲プローブであり得る)、および複数の下流逆方向プライマー((存在する場合)サンプル中の連続的配列の部分にハイブリダイズする)を含む一組のPCRプライマーに曝露される。これらのプライマーを使用する増幅は、一連の増幅産物を生じ、連続的標的配列がサンプル中に存在する場合、これらの産物の各々は異なる長さを有する。増幅産物の長さは、順方向プライマーと各下流逆方向プライマーとの間の間隔により決定される。例を図12に示し、この図は、増幅のためのプライマーの配置を示す概略図である。
【0049】
標的配列またはその部分サンプル中に存在する場合、増幅は、一連のフラグメントを生じ、これらの長さは、プライマーの間隔により規定される。上記に提示される原理に従って、疾患の患者由来のサンプルは、上記のアッセイにおいて増幅産物のプロフィールを生じ、このプロフィールは、通常のアポトーシスの結果として生じることが期待されるより小さいフラグメントを含むサンプルから得られるプロフィールと異なる。好ましい実施形態において、順方向プライマーは、第1の逆方向プライマーの約200bp上流で、かつ最後の逆方向プライマーの約2.3Kb上流にハイブリダイズするように設計される。他の逆方向プライマーは、第1の逆方向プライマーと最後の逆方向プライマーとの間の種々の位置でハイブリダイズするように設計される。順方向プライマーと種々の逆方向プライマーとの間の好ましい間隔は、200bp(F1−R1)、400bp(F1−R2)、800bp(F1−R3)、1.3Kb(F1−R4)、1.8Kb(F1−R5)および2.3Kb(F1−R6)である。逆方向プライマーの数および間隔は、当業者の都合で選択される。
【0050】
また、好ましい実施形態において、ハイブリッド捕獲プローブは、標的配列を、好ましくは固体支持体(例えば、ビーズ)上に係留するために使用される。次いで、複数のプローブは、捕獲プローブの下流の種々の距離で配置される。これらのプローブは、上記で議論されるような順方向プライマーと逆方向プライマーの対であり得るか、またはこれらはシグナル増幅プローブ(例えば、リガーゼ連鎖反応(LCR)で使用されるプローブ)、および配列の同定において使用される他のプローブであり得る。標的がサンプル中に存在する場合、複数のプローブは、標的フラグメントの長さに沿ってハイブリダイズする。従って、プローブの存在についてサンプルに質問すること(interrogating)により、サンプル中に存在する配列の完全性を決定し得る。これは、多数の方法により行われ得、これらの方法としては、ハイブリッド捕獲、PCR、LCR、鎖置換、分岐鎖、または配列を同定もしくは定量するためにハイブリッドプローブもしくはプライマーを組み込む、当該分野で公知の他のアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。インタクトな(高い完全性の)核酸を含むサンプルは、本発明に従う陽性スクリーンを示す。1つの実施形態において、サンプルを、支持体担持捕獲プローブを含むウェル(例えば、96ウェルプレート上)内に入れる。捕獲プローブは、標的配列(サンプル中に存在する場合)を固定化する。捕獲プローブの下流の配列にハイブリダイズするプローブ(下流プローブ)を、各ウェルに入れて、その結果、各下流プローブは、共通の捕獲プローブから独特の距離だけ離れて間隔を空けられ、そして各ウェルはただ1つの型の下流プローブを含む。次いでシグナルは、例えば、増幅により、または標準的ELISA手順、次いで増幅により、またはLCRにより、または上述の他の方法により生成される。各ウェルにおけるシグナルの存在は、少なくとも捕獲プローブと下流プローブとの間の長さの配列の存在を示す。代替の実施形態において、各ウェルは複数の異なる下流プローブを受容し、これらは別々に標識され得、そして標識(単数または複数)の存在は、サンプル中に存在する配列の長さと相関する。
【0051】
例えば、癌を有する患者由来のサンプルは、(とりわけ、標的フラグメントの長さ、プライマーの間隔、および標的上のどこにプライマーが間隔を空けるかに依存して)ほとんどまたは全てのプライマー対の間のアンプリコン(amplicon)を産生する。このようなプロフィールは疾患または疾患の傾向についての陽性スクリーンを表す。疾患のしるしを有していない患者由来のサンプルは、上記のアッセイにおいて増幅産物をほとんどまたは全く生じない。ネガティブスクリーンにおいて、小さい(例えば、200bp)フラグメントの増幅はあり得るが、より大きいフラグメント(すなわち、順方向プライマーおよび間隔を空けられた逆方向プライマーとの間の増幅から生じるフラグメント)の増幅は全くない。癌の診断において、標的フラグメントは、必要に応じてオンコジーン、腫瘍サプレッサ、または癌に付随する任意の他のマーカーであり得る。しかし、本発明の方法においては、癌に付随するマーカーを使用する必要はない。なぜならば、このような方法は、疾患を示すサンプルが、より多量のインタクトな核酸およびより多量の長いフラグメント核酸を含むという一般認識に基づくからである。従って、任意の簡便な標的核酸位置は、本発明の方法において使用され得る。
【0052】
上記の増幅反応は、任意の適切なプロトコルまたは好都合なプロトコルに従って行われ得、そして生じた増幅産物(存在する場合)のフラグメントサイズは、任意の適切な手段または好都合な手段により決定され得る。
【0053】
代替の実施形態において、本発明の方法は、連続的な核酸標的フラグメントに対して一連の増幅反応を行うことを包含し、各増幅(application)反応は、1つの順方向プライマーおよび1つの逆方向プライマーを含み、その結果、順方向プライマー逆方向プライマー対は、サンプル中に存在すると推定される連続的フラグメントでの間隔で間隔を空けられる。この配置の例を、図13に示す。好ましくは、各対の順方向プライマーおよび逆方向プライマーの間の間隔は等しい。陽性スクリーンにおいて、上記のアッセイは、全てでなければ大部分のプライマー対について一連の同じサイズのフラグメントを生じる。このような増幅産物のアレイは、疾患を示す連続的標的配列を示す(上記を参照のこと)。疾患を有さない患者由来のサンプルは、増幅産物をほとんど産生しないかまたは全く産生しないが、任意の場合において、比較的インタクトな診断標的は配列を含むサンプルから推測される増幅産物の連続的アレイを生じる。
【0054】
上記の方法の各々は、サンプル中のインタクトな核酸、またはインタクトな核酸のセグメントが診断的であるという原理に基づく。従って、上記の方法に対するバリエーションが企図される。このようなバリエーションとしては、プライマーの配置、使用されるプライマーの数、標的配列、配列の同定方法などが挙げられる。例えば、図13に示される上記の方法において、順方向プライマーおよび逆方向プライマーの数が同じである必要はない。順方向プライマーを使用して、例えば、2つの逆方向プライマーの間のフラグメントを増幅し得る。プライマー対配置における他のバリエーションは、当該分野の技術範囲内であり、行われるべき増幅反応の詳細も同様である。最後に、図12および13に示されるように、捕獲プローブは、選択された標的配列を単離するために、本発明の方法において使用され得る。
【0055】
以下の実施例は、本発明に従う方法のさらなる詳細を提供する。例示の目的のために、以下の実施例は、結腸癌検出における本発明の方法の使用の詳細を提供する。従って、以下の様式で例示されるが、本発明は、限定されず、そして当業者は、それを考慮して、本発明の広範な適用を理解する。
【0056】
(結腸癌の検出のための例示的な方法)
以下の実施例は、排泄された便サンプルにおける結腸癌についてのスクリーニングに関する。本発明が基礎とする原理(上記を参照のこと)に基づいて、同じ分析が他のサンプル(例えば、上述のサンプル)に対して、本明細書中に示される結果と同じ結果を伴って行われ得る。
【0057】
便サンプルの分析のために、本発明の好ましい方法は、米国特許第5,741,650号、および同時継続中、共有の(co−owned)米国特許出願第09/059,718号(これらの両方は、本明細書中に参考として援用される)において教示されるように、排泄された便の少なくとも断面部分または周辺部分を得ることを包含する。便の断面部分または周辺部分が所望されるが、本明細書中に提供される方法は、排泄された便から得られる無作為のサンプル(スミアまたは切屑を含む)に対して行われる。一旦得られると、便標本は、均質化される。均質化に好ましい緩衝液は、少なくとも16mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む緩衝液である。しかし、同時継続中の、共有の米国特許出願第60/122,177号(本明細書中に参考として援用される)において教示されるように、少なくとも150mMのEDTAの使用が便からの核酸の収量を顕著に改善することが見出されている。従って、便均質化に好ましい緩衝液は、リン酸緩衝化生理食塩水、20〜100mMのNaClまたはKCl、少なくとも150mMのEDTA、および必要に応じて界面活性剤(例えば、SDS)およびプロテイナーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を含む。
【0058】
均質化の後、核酸を、好ましくは便サンプルから単離する。核酸の単離または抽出は、本発明の全ての方法において必ずしも必要ではない。なぜならば、特定の検出技術が核酸を単離せずに均質化した便において適切に行われ得るからである。しかし、好ましい実施形態において、均質化された便は、核酸、タンパク質、脂質、および他の細胞破片を含有する上清を生成するために回転される。この上清を界面活性剤およびプロテイナーゼで処理して、タンパク質を分解し、そして核酸をフェノール−クロロホルム抽出する。次いで、抽出された核酸をアルコールで沈殿させる。他の技術がサンプルから核酸を単離するために使用され得る。このような技術としては、ハイブリッド捕獲、および均質化された便からの直接的な増幅が挙げられる。使用されるスクリーニングアッセイに必要な程度まで、核酸は、精製および/または単離され得る。全DNAは、当該分野で公知の技術を使用して単離される。
【0059】
(スクリーニングアッセイプロトコル)
上で得られたヒトDNAフラグメントのサイズは、多数の手段により決定され得る。例えば、ヒトDNAは、ゲル電気泳動を使用して分離され得る。3%アガロースゲルを当該分野で公知の技術を使用して調製する。Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sones,1195,2−23−2−24頁(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。次いで、ヒトDNAフラグメントのサイズを、既知の標準と比較することにより決定する。約200bpより大きなフラグメントは、陽性スクリーンを提供する。診断はスクリーンのみに基づいてなされ得るが、陽性スクリーンを提示する患者は、確認された診断を与えるために好ましくは追跡検査を求めるように助言される。
【0060】
ヒトDNAフラグメント長を決定するための好ましい手段は、PCRを使用する。PCRを実行するための方法は周知である。本発明において、ヒトDNAフラグメントは、ヒト特異的プライマーを使用して増幅される。PCRにより産生される約200bpより大きなアンプリコンは、陽性スクリーンを提示する。他の増幅反応およびPCRの改変(例えば、リガーゼ連鎖反応、逆相PCR、Q−PCR、およびその他)を使用して、検出可能なレベルのアンプリコンを産生し得る。アンプリコンは、レポーター(例えば、蛍光、放射性同位体など)へのカップリングにより、配列決定により、ゲル電気泳動により、質量分析により、またはアンプリコンの長さ、重量、もしくは他の特徴がそれらのアンプリコンをサイズで同定する限りは、当該分野で公知の任意の他の手段により検出され得る。
【実施例】
【0061】
実験を行って、便中の増幅可能なDNAの特徴が、便サンプルが得られた患者における癌または前癌状態を示すか否かを決定した。第1の実験において、増幅可能なDNAの量を、数個の便サンプルのぞれぞれにおいてPCR増幅を使用して測定して、少なくとも200塩基対長のサンプル中のDNAフラグメントを検出した。第2の実験は、同じサンプル中の長い(200塩基対より大きい)フラグメントの量を決定して、次いで長い産物対短い産物の比を決定した。第3の実験は、200bp、400bp、800bp、1.3Kb、1.8Kbおよび2.4Kbの核酸フラグメント長を有する増幅産物のプロフィールを決定した。第4および第5の実験は、患者の便サンプル中の核酸の完全性を患者の全体の疾患状態と相関させる臨床研究であった。
【0062】
(実施例1)
便サンプルを、結腸鏡検査が行われるべきであることを示した症状または病歴を示す9人の患者から採取した。各便サンプルを凍結した。便サンプルを提供した直後に、患者の疾患状態を決定するために、各患者に結腸鏡検査を行った。結腸鏡検査結果、および次の結腸鏡検査の間に採取した生検サンプルの組織学的分析に基づいて、個体を2つのグループ:正常または異常のうちの一方においた。異常群は、癌または少なくとも1cmの直径の腺腫を有する患者からなる。これらの結果に基づいて、9人の患者のうち4人を異常群にいれた。
【0063】
これらのサンプルを、ハイブリッド捕獲ヒトDNAによってスクリーニングし、そして少なくとも200塩基対を有する増幅可能なDNAの量を決定した。各凍結便被検物(7〜33グラムの重量)を解凍し、そして500mMのTris、16mM EDTA、および10mM NaCl(pH9.0)中で、3:1の容積対質量比でホモジナイズした。次いで、サンプルを、同じ緩衝液中で、20:1の最終の容積対質量まで再びホモジナイズし、そしてガラスマクロビーズに2356×gでスピンした。上清を収集し、そしてSDSおよびプロテイナーゼkで処理した。次いで、DNAをフェノール−クロロホルム抽出し、そしてアルコールで沈殿させた。沈殿物を10mM Trisおよび1mM EDTA(1×TE)(pH7.4)に懸濁した。最後に、DNAをRnアーゼで処理した。
【0064】
配列特異的ハイブリッド捕獲によって、沈殿物からヒトDNAを単離した。p53、K−rasおよびapc遺伝子のタンパク質に対するビオチン化プローブを使用した。
【0065】
K−rasプローブは、
【0066】
【化1】
【0067】
であった。
【0068】
2つのapcプローブがあり、apc−1309は、
【0069】
【化2】
【0070】
であり、そしてapc−1378は、
【0071】
【化3】
【0072】
であった。
【0073】
p53に対する4個のプローブがあり、第1のプローブ(エキソン5の部分にハイブリダイズしている)は、
【0074】
【化4】
【0075】
であり、第2のプローブ(エキソン7の部分にハイブリダイズしている)は、
【0076】
【化5】
【0077】
であり、第3のプローブ(これもまた、エキソン7の部分にハイブリダイズしている)は、
【0078】
【化6】
【0079】
であり、そして最後に、エキソン8に対するプローブは、以下の配列:
【0080】
【化7】
【0081】
を有した。
【0082】
各プローブの10μlのアリコート(20pmol/捕獲)を、室温で、2時間、310μlの6M GITC緩衝液の存在下、300μl DNAを含有する懸濁液に添加した。ハイブリッド複合体を、ストレプトアビジンをコーティングしたビーズ(Dynal)を使用して単離した。洗浄後、プローブ−ビーズ複合体を、25℃で1時間、0.1×TE緩衝液(pH7.4)に懸濁した。次いで、この懸濁液を85℃で4分間加熱し、そしてビーズを取り出した。
【0083】
捕獲されたDNAを、次いで、本質的に米国特許第4,683,202号(本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、PCRを使用して増幅した。各サンプルを、順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、二つ組中の7個の遺伝子座(Kras、エキソン1、APCエキソン15(3個の別個の遺伝子座)、p53、エキソン5,p53、エキソン7、およびp53、エキソン8)にわたって増幅した(各遺伝子座について全部で14個の増幅物)。7個の別個のPCR(それぞれ40サイクル)を、200塩基対以上を有するサンプル中のフラグメントを検出するように指向されたプライマーを使用して、二つ組において行った。増幅DNAを、4%Nusieve(FMC Biochemical)ゲル(3%Nusieve、1%アガロース)上に配置し、そしてエチジウムブロマイド(0.5μg/ml)で染色した。得られた増幅DNAを、染色されたゲルの相対強度に基づいて評価した。その結果を図1〜7に示す。各図は、増幅された7個の異なる遺伝子座についての9人全ての患者(標準を含む)の結果を表す。これらの図に示されるように、癌または腺腫を有する患者由来の各サンプルは、癌も前癌も有さない患者由来のサンプルに関連するバンドよりも有意に大きな強度を有するバンドとして検出された。結腸鏡検査を使用して同定された4人全ての癌/腺腫患者を、200塩基対以上の長さを有する増幅可能なDNAの量を決定することによって正確に同定した。図1〜7に示されるように、この結果は、遺伝子座が増幅された結果に関係なく同じである。従って、サンプル中の200bp以上のDNAの量は、患者の疾患状態を表した。
【0084】
(実施例2)
順方向または逆方向プライマーを、約1.8Kb以上のフラグメントが増幅されるように配置した以外は、上記の実施例1に記載される実験と本質的に同一の実験を行った。
【0085】
DNAを上記のように調製した。順方向プライマーおよび逆方向プライマーを、3つの異なる遺伝子座(Kras、エキソン1、APC、エキソン15、およびp53 エキソン5)上で約1.8Kb離れてハイブリダイズするように、間隔をあけた。33回の増幅を行い、そして得られたDNAを3%アガロースゲル上に配置した。その結果を図8〜10に示す。これらの図に示されるように(この図は、「長い」産物を増幅および検出するための3つの異なる実験の結果を示す)、癌または前癌を有する個体由来のサンプルは、多量の高分子量(この場合、1.8Kb以上)のDNAを産生し;一方、癌も前癌も有さない患者由来のサンプルは、約1.8Kb以上の範囲のDNAを産生しなかった。従って、高分子量DNAの存在は、患者の疾患状態を表した。
【0086】
(実施例3)
胃腸障害の疑いのある、Mayo Clinicに存在する30人の患者について、盲検試験の一部として収集および調製されたサンプル由来のDNAの分子量プロフィールを決定するために実験を行った。便サンプルを得、そしてDNAを上記のようにして単離した。
【0087】
増幅の前に、ハイブリッド捕獲によってDNAをサンプルから単離した。BRCA1、BRCA2、p53、APC遺伝子の部分に対するビオチン化プローブを使用した。
【0088】
BRCA1プローブは、
【0089】
【化8】
【0090】
であった。
【0091】
BRCA2プローブは、
【0092】
【化9】
【0093】
であった。
【0094】
APC1プローブは、
【0095】
【化10】
【0096】
であった。
【0097】
p53プローブ(これは、エキソン5の部分にハイブリダイズしている)は、
【0098】
【化11】
【0099】
であった。
【0100】
APC2プローブは、
【0101】
【化12】
【0102】
であった。
【0103】
300μlアリコートのサンプルを、300μlの6Mグアニジンイソチオシアネート緩衝液中に、10μlの各捕獲プローブと共に入れ、そして25℃で一晩インキュベートした。捕獲したDNAを、室温で1時間インキュベートした100μlの捕獲ビーズを使用して単離した。DNAをこのビーズから溶離し、そして標準的なPCR条件下でPCR増幅を行った。
【0104】
本発明の方法に従って、各サンプルについて順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用して、5個の遺伝子座にわたって増幅反応を行った。順方向プライマーおよび逆方向プライマーを、200bp、400bp、800bp、1.3Kb、1.8Kb、および2.4Kbのフラグメントするように、間隔をあけた。30回のPCR反応の各々を36サイクルごとに実行した。単位複製配列を3%Seakeamゲル上で実施し、そしてエチジウムブロミドで染色した。その結果を図11Aおよび11Bに示す。各図は、30人の患者のうち15人についての結果を表す。
【0105】
これらの図に示されるように、癌または腺腫を有する患者は、増幅可能なDNAの増加した収率を有する。これは,1.8Kbレベル以上において特に顕著である。従って、癌または腺腫を有する患者は、便においてより増幅可能なDNAを産生するだけでなく、癌を有さない患者の便において産生されるより大きなDNAフラグメントを産生する。従って、増幅可能なDNAの増加した収率および高分子量DNA(特に、1.8Kb以上)の存在の両方は、患者の疾患状態を示した。
【0106】
(実施例4)
この実施例において、結腸鏡検査を使用して診断された直腸結腸腺腫または直腸結腸癌を有する多数の患者、および直腸結腸癌も腺腫も有さないと診断された79人の患者における臨床的結果と、本発明の方法とを相関させた。便サンプルを、これらの患者の各々から得、そして上記のように調製した。上に示される5個の異なる遺伝子座のフラグメントを、上記の実施例3のプロトコルを使用して、200、400、800、1300、1800および2400塩基間隔をあけられたプライマーを使用して増幅した。各増幅物を、フラグメントの首尾良い増幅が1のスコアを付けられ、そして増幅していないものが0のスコアを付けられるようにスコア付けした。5個の遺伝子座は6個のプライマー対の各々を使用して問い合わせされるため、最大スコアは30であった(5個全ての遺伝子座において6個全てのフラグメントの首尾良い増幅)。溶性スクリーンのカットオフは、21に設定した。その結果を以下に示す。
表1
正常
【0107】
【表1】
【0108】
表2
腺腫
【0109】
【表2】
【0110】
表3
癌
【0111】
【表3】
【0112】
上記のように、本発明の方法は、結腸直腸癌および腺腫の存在についてのスクリーニングにおいて有用である。
【0113】
(実施例5)
この実施例において、本発明の方法を使用して、28人の患者における非結腸癌を検出した。
【0114】
28人の患者の各々から便サンプルを得た。このサンプルを上記のように調製した。上に示される5個の異なる遺伝子座のフラグメントを、上記の実施例3に記載されるプロトコルを使用して、200、400、800、1300、1800および2400塩基間隔のあいたプライマーを使用して増幅した。各増幅物を、フラグメントの首尾良い増幅が1のスコアを付けられ、そして増幅していないものが0のスコアを付けられるようにスコア付けした。5個の遺伝子座は6個のプライマー対の各々を使用して問い合わせされるため、最大スコアは30であった(5個全ての遺伝子座において6個全てのフラグメントの首尾良い増幅)。21のスコアは、疾患のある患者と疾患のない患者との間のカットオフとして使用した。この結果を以下に示す。
表4
上部結腸癌(supercolonic cancer)
【0115】
【表4】
【0116】
上記のように、本発明の方法は、非結腸癌を実際に有する27人の患者から18人を首尾良くスクリーニングした。ただ1人の患者のみが、その患者の有していなかった癌を有すると誤って診断された。従って、本発明の方法は、患者の非特異的な癌疾患状態の非侵襲的診断のために有用である。
【0117】
陽性スクリーンの21の閾値は、所望の感度および特異性と適合するように変えられ得る。例えば、18が誤りだった場合、表4に示される陰性結果が無効にされる。当業者は、患者(例えば、症状を示していない患者よりも低い、症状を有する患者の閾値)、診断される疾患、および感度および特異性の所望の程度に基づいてどのように閾値を設定するかを理解する。閾値とは関係なく、本発明の原理は、依然として、核酸の完全性が疾患、特に癌のための実行可能なマーカーであることにとどまる。
【0118】
さらに、疾患の性質は、本発明の方法を使用して測定され得る。例えば、本発明の方法に従う周期的な分子量探査を使用して、症状を示さないかまたは最小の症状を示す患者の疾患状態をモニタリングし得る。このような縦断的なモニタリングは、患者が高い完全性の核酸の量の増加を伴いつつ(これは追跡試験の望ましさを示す)進行しているか否かを決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の方法。
【請求項1】
本明細書に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−279394(P2010−279394A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219841(P2010−219841)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【分割の表示】特願2001−521786(P2001−521786)の分割
【原出願日】平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願人】(500034653)ジェンザイム・コーポレーション (37)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【分割の表示】特願2001−521786(P2001−521786)の分割
【原出願日】平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願人】(500034653)ジェンザイム・コーポレーション (37)
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