説明

病原体によるT細胞共刺激経路の調節を阻害するための方法および組成物

【課題】病原体によるT細胞共刺激経路の調節を阻害するための方法および組成物の提供。
【解決手段】免疫調節ペプチドを用いた、超抗原とCD28ファミリーメンバーの二量体界面内の特異的部位との間の直接的相互作用の阻害、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなる特定のアンタゴニスト免疫調節ペプチド。該ペプチドはT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含み、該ペプチドを含んでなる組成物および免疫関連疾患の処置のための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は病原体によるT細胞共刺激経路の調節を阻害するための方法および組成物に関する。より詳しくは、本発明は、超抗原とCD28ファミリーメンバーの二量体界面内の特異的部位との間の直接的相互作用を、前記二量体界面に由来するペプチドまたは前記二量体界面と特異的に結合するペプチドを用いて阻害することによる、発熱性外毒素によるT細胞共刺激経路、好ましくはCD28/B7経路の活性化の阻害に関する。本発明はさらに特異的アンタゴニスト免疫調節ペプチド、その組成物、および免疫関連疾患の処置のための方法も提供する。
【発明の背景】
【0002】
本願に記載される刊行物は総て、その中に挙げられている総ての参照文献も含め、引用することによりそのまま本明細書の一部とする。
【0003】
一連の発熱性外毒素は、超抗原毒素としても知られ、黄色ブドウ球菌(Staphylococu aureus)および化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)により産生される。黄色ブドウ球菌内毒素(SE)からなる外毒素は、摂取後の嘔吐および下痢によって現れる大多数のヒト食中毒症状の原因となる[Schlievert, J. Infect. Dis. 167:997 (1993)]。黄色ブドウ球菌は自然界に広く見られ、ヒトとの関連も多い。SEファミリー内の5種類の主な血清学的タイプ(SEA〜SEEおよびSEGと表示)、SEBが最も優勢である[Marrack and Kappler, Science 248:705 (1990)]である。SEBはまた、外科術的または傷害的創傷感染、ならびに特に子供が攻撃されやすい、インフルエンザ患者の気道のウイルス感染を伴うことがある、非月経性毒性ショック症候群のヒト症例の主因と認識されている[Schlievert (1993)同書; Tseng et al., Infect. Immun. 63:2880 (1995)]。最も重度の形態の毒性ショック症候群はショックおよび死の原因となる[Murray et al., ASM News 61:229 (1995); Schlievert (1993)同書]。より一般には、SEA〜SEEおよび毒性ショック症候群毒素1(TSST−1)を含むブドウ球菌外毒素ファミリーのメンバーは毒性ショック症候群、アトピー性皮膚炎[Schlievert (1993) 同書]および川崎症候群[Bohach et al., Crit. Rev. Microbiol. 17:251 (1990)]に関連づけられている。
【0004】
通常抗原の制限されている提示を迂回することにより、黄色ブドウ球菌および化膿連鎖球菌によって産生される超抗原はほとんどの主要組織適合性(MHC)クラスII分子と直接結合し、抗原提示細胞によるプロセシングの必要なく、T細胞受容体(TCR)のβ鎖の可変部分に特定のドメインを有する、事実上総てのT細胞を活性化させる[Scholl, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:4210-4214(1989); Fraser, J.D. Nature 339(6221):221-3 (1989); Choi, Y. W. et al., Nature 346(6283):471-3 (1990); Janeway, C.A. Jr. et al., Immunol. Rev. 107:61-88(1989)]。この結果、毒性ショックの伝達物質であるTヘルパー1(Th1)サイトカインインターロイキン−2(IL2)、インターフェロン−γ(IFN−γ)および腫瘍壊死因子βの過剰な誘導が起こる[Marrack, P. and Kappler, J. Science 248:705-711 (1990a); Marrack, P. et al., J. Exp. Med. 171(2):455-64 (1990b); Miethke, T. et al., J. Exp. Med. 175(1):91-8 (1992); Hackett, S. P. and Stevens, D. L. J. Infect. Dis. 168:232-235 (1993); Arad, G. et al., Nat. Med. 6(4):414-21 (2000)]。このように超抗原は通常抗原と同じリガンドを用いるのであるが、違った様式で用いる[Sundberg, E. J. et al., Structure (Camb) 10:687-699 (2002a); Sundberg, E. J. et al., Curr. Opin. Immunol. 14:36-44 (2002b)]。発散性の超抗原によるヒトTh1サイトカイン遺伝子発現の誘導がこれらの毒素の致死的作用からマウスを保護する超抗原ミメティックペプチドにより阻害される[Arad (2000) 同書]。これらのペプチドは、MHCクラスII分子とTCRの結合部位から相当離れた超抗原の間で構造的に保存されているβ鎖ヒンジαヘリックスドメインと相同性を示す。このペプチドのアンタゴニスト活性は、それらの作用にとって決定的な新規な超抗原ドメインを同定した[Arad (2000)同書]。この発見は、超抗原が第三の受容体と結合するためにこのドメインを用いるかもしれないという可能性を浮上させた。
【0005】
CD28およびB7−2は通常抗原の主要な共刺激リガンドとして機能する[Lenschow, D. J. et al., Annu. Rev. Immunol. 14:233-58 (1996); Salomon, B. and Bluestone, J. A. Annu. Rev. Immunol. 19: 225-52 (2001); Acuto, O. and Michel, F. Nat. Rev. Immunol. 3(12):939-51 (2003)により概説されている]。本発明者らは、Th1の活性化のシグナルを送達するには、超抗原がCD28と直接結合しなければならないことを示した[WO03/084995]。シグナル伝達は各リガンドの接触領域のペプチドミメティック、すなわち超抗原のβ鎖ヒンジαヘリックスドメイン[Arad (2000)同書]およびホモ二量体形成界面を形成するCD28の2つの非連続ドメインにより遮断される。
【0006】
CD28は、遺伝子、すなわち、CD28、細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)(CD152)および誘導性共刺激因子(ICOS)が強固に連鎖している共刺激リガンドのトリアッドに属す[Sharpe, A. H. and Freeman, G.J., Nat. Rev. Immunol. 2(2):116-26(2002); Carreno, B. M. and Collins, M. Annu. Rev. Immunol. 20:29-53 (2002)に概説されている]。B7ファミリー由来の、それらのコリガンドを介して、これらのタンパク質は通常抗原によるシグナル伝達を調節する共刺激受容体として機能する。CD28はICOSおよびCTLA4よってバランスがとられた生得的な免疫応答の重要な初期シグナルトランスデューサーとして作用する[Rudd, C. E. and Schneider H. Nat. Rev. Immunol. 3(7):544-56 (2003)に概説されている]。本発明は、そのβ鎖ヒンジαヘリックスドメインを介して、主要超抗原ブドウ球菌内毒素B(SEB)はこの保存された受容体ファミリーの各メンバーと高い親和性で結合する。CTLA4[Schwartz, J. C. et al., Nature 410:604-608 (2001); Stamper, C. C. et al., Nature 410 (6828):608-11(2001)]または配列アラインメントにより推定されるようなCD28およびICOSの二連二量体界面のいずれかの辺縁に由来するペプチドは、各共刺激受容体に独特ではあるが、ヒトTh1サイトカイン遺伝子発現の超抗原により媒介される誘導を遮断し、SEBによる致死的投与からマウスを保護する強力なアンタゴニストである。これらのペプチドの作用様式は超抗原において、その結合部位をめぐってCD28と競合する。SEBはTh1およびTh2サイトカイン遺伝子の活発な発現を誘導するが、Th1応答の誘導だけがCD28のシグナル伝達に依存する。
【0007】
CD28に対する直接的結合が超抗原の毒性の基礎にある。本発明の発見は、超抗原がその絶対的受容体としての使用のための宿主の共刺激リガンドを取り込む生得的な免疫応答の破壊機構を明らかにする。この戦略は病原体によってもっと広く用いられる可能性がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、それを必要とする被験体において、病原体によるT細胞共刺激経路、好ましくはCD28/B7経路の活性化を阻害する方法を提供することである。このような方法は、前記病原体に由来する成分と、T細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位、すなわち、前記T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来する部位の直接的相互作用を阻害する物質の使用を基にしている。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、前記病原体に由来する成分とT細胞共刺激経路メンバー、好ましくはCD28、CTLA4およびICOSの二量体界面内の結合部位の直接的相互作用を阻害する物質、好ましくはペプチドを提供することである。このようなペプチドが本発明により提供され、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなるペプチド、例えば配列番号9、11、12、14、15、16、17、57および58のペプチド、ならびにT細胞共刺激経路メンバー、例えば配列番号6、7、8および25〜56のペプチドの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列含んでなるペプチドを含む。
【0010】
本発明のもう1つの目的は、病原体、特に超抗原外毒素により引き起こされる免疫関連疾患の処置の組成物および方法を提供することである。
【0011】
本発明のこれら、およびその他の目的は説明が進めば明らかとなる。
【発明の概要】
【0012】
第1の態様において、本発明は、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなるか、またはT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる単離および精製されたペプチドに関する。
【0013】
1つの実施形態によれば、このT細胞共刺激経路はCD28/B7T細胞共刺激経路、CD40リガンド/CD40、CD2/CD58およびLFA−1(CD18)/ICAM−1(CD54)共刺激経路のいずれかであり得る。好ましくは、このT細胞共刺激経路はCD28/B7経路であり得、最も好ましくは、このCD28/B7経路メンバーはCD28、CTLA4、ICOSおよびPD−1、B7−1、B7−2、ICOSL、PD−L1およびPD−L2のいずれかであり得る。
【0014】
特に好ましい実施形態によれば、本発明のペプチドはT細胞共刺激経路を調節し得る免疫調節ペプチドである。
【0015】
1つの好ましい実施形態では、本発明のペプチドはT細胞共刺激経路メンバー、好ましくはCD28/B7ファミリーメンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなり得る。
【0016】
より具体的には、本発明のペプチドは、CD28、CTLA4およびICOSならびにPD−1中の対応するドメインのいずれかの二量体界面の総てまたは一部に由来するアミノ酸配列を含んでなる。
【0017】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明のペプチドは、CD28内分子内の二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなり、その二量体界面は配列番号19で示されるヒトCD28アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15および116〜121を含んでなる。より好ましくは、本発明のペプチドは配列番号9で示されるアミノ酸配列HVKGKHLCPおよび配列番号12で示されるアミノ酸配列SPMLVAYDまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体に由来するアミノ酸配列を含んでなる。
【0018】
本発明の特に好ましいペプチドはp1TAと呼ばれ、配列番号9で示されるアミノ酸配列HVKGKHLCPまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0019】
本発明のもう1つの特に好ましいペプチドはp2TAと呼ばれ、配列番号12で示されるアミノ酸配列SPMLVAYDまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0020】
あるいは、本発明のペプチドはCTLA4分子内の二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなり、その二量体界面は配列番号20で示されるヒトCTLA4アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と115〜120を含んでなってよい。
【0021】
より具体的には、このようなペプチドは配列番号14で示されるアミノ酸配列YVIDPEPCPおよび配列番号15で示されるアミノ酸配列PAVVLASS、またはそのいずれかの機能的断片および誘導体のいずれかに由来するアミノ酸配列を含んでなる。
【0022】
よって、1つの特定の好ましいペプチドはp1TBと呼ばれ、配列番号14で示されるアミノ酸配列YVIDPEPCPまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0023】
もう1つの好ましい特定のペプチドはp2TBと呼ばれ、配列番号15で示されるアミノ酸配列PAVVLASSまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0024】
さらにもう1つの選択肢では、本発明のペプチドはICOS分子内の二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなってよく、その二量体界面は配列番号21で示されるヒトICOSアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と119〜124総てまたは一部を含んでなる。
【0025】
より具体的には、本発明のペプチドは、配列番号16で示されるアミノ酸配列YESQLCCQLおよび配列番号17で示されるアミノ酸配列GEINGSAN、またはそのいずれかの機能的断片および誘導体のいずれかに由来するアミノ酸配列を含んでなってよい。
【0026】
1つの特定の例はp1TCと呼ばれるペプチドであり、配列番号16で示されるアミノ酸配列YESQLCCQLまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0027】
もう1つの特定の例はp2TCと呼ばれるペプチドであり、配列番号17で示されるアミノ酸配列GEINGSANまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0028】
もう1つの好ましい実施形態によれば、本発明のペプチドは、配列番号59で示されるヒトPD−1配列のアミノ酸残基8〜13および110〜116を含んでなる、CTLA4の二量体界面に相当するPD−1分子中のドメインに由来するアミノ酸配列を含んでなる[Zhang, X. et al., Immunity 20:337-347 (2004)]。
【0029】
より具体的には、本発明のペプチドはアミノ酸配列RVTERRAEV(配列番号57で示される)、PALLVVTE(配列番号58で示される)およびそのいずれかの機能的断片および誘導体のいずれかに由来するアミノ酸配列を含んでなってよい。
【0030】
本発明の特定の好ましいペプチドはとp1TD呼ばれ、配列番号57で示されるアミノ酸配列RVTERRAEVまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0031】
本発明のもう1つの特に好ましいペプチドはp2TDと呼ばれ、配列番号58で示されるアミノ酸配列PALLVVTEまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0032】
もう1つの特に好ましい実施形態によれば、本発明のペプチドは、CD28、CTLA4、ICOSおよびPD−1のいずれかの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる。
【0033】
特定の実施形態によれば、本発明のペプチドは、配列番号6、7および8、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および56のいずれかで示されるアミノ酸配列を含んでなる。
【0034】
特に好ましい実施形態によれば、本発明のペプチドはpe12と呼ばれ、配列番号6で示されるアミノ酸配列SHFTHNRHGHSTまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0035】
もう1つの特定のペプチドはpd7と呼ばれる。このペプチドは、配列番号7で示されるアミノ酸配列WHAHPHKKPVVAまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0036】
さらにもう1つの例では、本発明のペプチドはpc3と呼ばれ、配列番号8で示されるアミノ酸配列FHKHKNPGSPIIまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0037】
第二の態様によれば、本発明は、有効成分として本発明で定義されたような精製ペプチドまたはそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を含んでなり、所望により医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤をさらに含んでなる、T細胞共刺激経路の調節のための組成物に関する。
【0038】
本発明はさらに、それを必要とする被験体においてTh1−Th2応答の不均衡に関連する免疫疾患を処置するための医薬組成物であって、有効成分として本発明のいずれかのペプチドまたはそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を含んでなり、所望により医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0039】
好ましい実施形態によれば、本発明は、発熱性外毒素により媒介されるTリンパ球の活性化を阻害するための組成物であって、毒性ショックから防御し、所望により発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対して防御免疫を惹起する組成物を提供する。本発明のこの組成物は、有効成分として本発明のいずれかの精製免疫調節ペプチドまたはそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を含んでなり、所望により医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤をさらに含んでなる。
【0040】
1つの特に好ましい実施形態では、このような組成物は有効成分としてp1TA(配列番号9で示される)、p2TA(配列番号12で示される)、p1TB(配列番号14で示される)、p2TB(配列番号15で示される)、p1TC(配列番号16で示される)、p2TC(配列番号17で示される)、pe12(配列番号6で示される)、pd7(配列番号7で示される)、pc3(配列番号8で示される)、pa2(配列番号25で示される)、pb11(配列番号26で示される)、pc11(配列番号27で示される)、pf11(配列番号28で示される)、pg3(配列番号29で示される)、pb12(配列番号30で示される)、pa8.1(配列番号31で示される)、pb3(配列番号32で示される)、pb5(配列番号33で示される)、pb11(配列番号34で示される)、pf3(配列番号35で示される)、pf8(配列番号36で示される)、pe6(配列番号37で示される)、pf4(配列番号38で示される)、pa8.2(配列番号39で示される)、pb3(配列番号40で示される)、pb2(配列番号41で示される)、pc2(配列番号42で示される)、pc8(配列番号43で示される)、pc9(配列番号44で示される)、pf12(配列番号45で示される)、pc4(配列番号46で示される)、pe11(配列番号47で示される)、pb5(配列番号48で示される)、pe11(配列番号49で示される)、pg7(配列番号50で示される)、pa12(配列番号51で示される)、pb8(配列番号52で示される)、pb12(配列番号53で示される)、pc8(配列番号54で示される)、pd8(配列番号55で示される)、pg6(配列番号56で示される)、p1TD(配列番号57で示される)、p2TD(配列番号58で示される)からなる群から選択されるペプチドおよびそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を含んでなってよい。
【0041】
第三の態様では、本発明は、それを必要とする被験体においてT細胞共刺激経路を調節するための方法であって、前記被験体にT細胞共刺激経路を調節し得る有効量の免疫調節ペプチドを投与する工程を含み、そのペプチドが、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなるか、またはT細胞共刺激経路メンバーもしくはそれを含んでなる組成物の二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる方法に関する。
【0042】
本発明はさらに、それを必要とする被験体においてTh1−Th2応答の不均衡に関連する免疫疾患を処置するための方法であって、前記被験体に本発明により定義されたような有効量の免疫調節ペプチドを投与する工程を含む方法を提供する。
【0043】
特に好ましい実施形態によれば、本発明により定義されたいずれのペプチド、またはそのいずれかの組合せ、機能的断片、誘導体、コンジュゲートおよび組成物もこのような方法のために使用できる。
【0044】
より具体的には、本発明の方法はp12A(配列番号1で示される)、p12B(p14Aとも呼ばれる、配列番号3で示される)、pTA(配列番号11で示される)、p1TA(配列番号9で示される)、p2TA(配列番号12で示される)、p1TB(配列番号14で示される)、p2TB(配列番号15で示される)、p1TC(配列番号16で示される)、p2TC(配列番号17で示される)、pe12(配列番号6で示される)、pd7(配列番号7で示される)、pc3(配列番号8で示される)、pa2(配列番号25で示される)、pb11(配列番号26で示される)、pc11(配列番号27で示される)、pf11(配列番号28で示される)、pg3(配列番号29で示される)、pb12(配列番号30で示される)、pa8.1(配列番号31で示される)、pb3(配列番号32で示される)、pb5(配列番号33で示される)、pb11(配列番号34で示される)、pf3(配列番号35で示される)、pf8(配列番号36で示される)、pe6(配列番号37で示される)、pf4(配列番号38で示される)、pa8.2(配列番号39で示される)、pb3(配列番号40で示される)、pb2(配列番号41で示される)、pc2(配列番号42で示される)、pc8(配列番号43で示される)、pc9(配列番号44で示される)、pf12(配列番号45で示される)、pc4(配列番号46で示される)、pe11(配列番号47で示される)、pb5(配列番号48で示される)、pe11(配列番号49で示される)、pg7(配列番号50で示される)、pa12(配列番号51で示される)、pb8(配列番号52で示される)、pb12(配列番号53で示される)、pc8(配列番号54で示される)、pd8(配列番号55で示される)、pg6(配列番号56で示される)、p1TD(配列番号57で示される)、p2TD(配列番号58で示される)からなる群から選択され得るペプチドおよびそのいずれかの組合せ、機能的断片誘導体および組成物を使用できる。
【0045】
なおさらに、本発明はそれを必要とする被験体においてT細胞共刺激経路を調節するための本発明の免疫調節ペプチドの使用を提供する。
【0046】
さらにもう1つの実施形態では、本発明は、それを必要とする被験体においてTh1−Th2応答の不均衡に関連する免疫疾患を処置するための医薬組成物の製造のための本発明の免疫調節ペプチドの使用に関する。
【0047】
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする被験体において病原体によるT細胞共刺激経路の活性化または調節を阻害するための方法に関する。本発明の本方法は、被験体に、前記病原体に由来する成分と、T細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位、すなわち、前記T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来する部位との直接的相互作用を阻害する阻害上有効な量の物質を投与する工程を含む。
【0048】
1つの好ましい実施形態では、前記病原体に由来する成分、好ましくは超抗原と、T細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位との間の直接的相互作用を阻害するために本発明の方法により用いられる物質は、本発明で定義されたようなペプチドであってよい。
【0049】
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする被験体において病原体により引き起こされるTh1−Th2応答の不均衡に関連する病理的疾患を処置するための方法に関する。このような方法は、被験体に、前記病原体に由来する成分と、T細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位、すなわち、前記T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来する部位との直接的相互作用を阻害する阻害上有効な量の物質、好ましくは本発明のいずれかのペプチドを投与する工程を含む。
【0050】
なおさらに、本発明は、T細胞共刺激経路メンバーと特異的に結合し、かつ、発熱性外毒素により媒介されるTh1リンパ球の活性化に拮抗することができ、所望により発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対する防御免疫を惹起することができる試験物質をスクリーニングする方法であって、a.T細胞共刺激経路メンバーと結合する候補アンタゴニスト物質を得る工程;b.工程(a)で得られた物質から、そのT細胞共刺激経路メンバーと超抗原との間の直接的相互作用を阻害する物質を選択する工程;およびc.超抗原により媒介されるTh1リンパ球の活性化に対する、工程(b)で得られた物質の拮抗作用を判定する工程を含む方法に関する。
【0051】
本発明を後記の図面を参照しながらさらに説明するが、これらは単に例であって、添付の特許請求項の範囲により定義されている本発明の範囲を限定するものではない。
【発明の具体的説明】
【0052】
CD28は通常抗原の共刺激リガンドとして働くことが知られている。本研究では、発明者らは、Th1の活性化のシグナルを送達するために、超抗原がCD28と結合しなければならない。よって、以下の実施例によって示されるように、CD28はMHCクラスII分子とTCRに加えて、第三の超抗原受容体として働く。
【0053】
図6Aは、CD28中の超抗原に対する結合部位がCTLA4とのアラインメントから推定される二連の二量体界面であることを示す。CD28と結びつく超抗原ドメインはMHCクラスII分子およびTCR双方に対する結合部位から離れており、CD28ファミリー分子との相互作用を受けやすくなっている(図1E)。このドメインは、細菌超抗原間で保存されているβ鎖ヒンジαヘリックスモチーフの少なくとも一部を含む[Arad (2000)同書]。
【0054】
本発明者らによって示されたように、SEBはTh1およびTh2サイトカイン遺伝子の活発な同時発現を誘導するが、Th1応答の誘導のみがCD28シグナル伝達に依存する。従って、超抗原が、それが直接結合するそれらの絶対的受容体として用いるための宿主の共刺激リガンドを取り込むものと思われる。この戦略は病原体では、より広く用いられている可能性がある。Toll−like受容体は微生物成分を認識し、それにより、生得的な免疫応答を活性化させる[Akira, S. et al. Nat. Immunol. 2:675-680 (2001); Janeway, C. A. Jr. and Medzhitov, R. Annu. Rev. Immunol. 20:197-216 (2002)により概説]。本研究では、本発明者らは、CD28は共刺激リガンドとして働くだけでなく、細菌超抗原のセンサーとしても働くことを示す。
【0055】
本発明は、超抗原とCD28の直接的結合が存在するという概念を支持するために独立した一連の証拠を提供する。SPR(表面プラズモン共鳴)平衡結合分析は、CD28がSEBに、28nMの親和性で直接結合することを示した(図4A)。可溶性CD28はSEBによるTh1サイトカインmRNAの誘導を遮断した(図2D)。SEBのβ鎖ヒンジαヘリックス「アンタゴニストドメイン」と相同な超抗原ミメティックペプチドp12B、およびCD28の推定ホモ二量体形成界面を形成する2つの非連続配列に相当するCD28ミメティックペプチドp1TAおよびp2TA(それぞれ配列番号9および12)は各々、 ヒトPBMCにおいて、超抗原により媒介されるIL2およびIFN−γ mRNAの誘導を遮断し(図1D、6Gおよび6H)、SEBによる致死的抗原刺激からマウスを保護した(図7Bおよび7C)。
【0056】
in vivoで有効なSEBの新規なペプチドアンタゴニストは、ランダムファージディスプレーライブラリーから、単にCD28中の超抗原結合部位に対するそれらの親和性によって選択されたものである(図5)。さらに、p12Bは単独で、またはαCD3との組合せで、αCD28によるTh1サイトカインmRNAの誘導を遮断した(図3Bおよび3C)。従って、このペプチドは超抗原の不在下でCD28により媒介されるTh1の活性化を遮断し、このことはそれがCD28と結合することを示唆する。実際、SPRの速度論では、CD28はSEBと同等の親和性でp12ペプチドと結合した(図4D)。従って、SEBはCD28との結合のためにそのアンタゴニストドメインを用いる。
【0057】
従って、第1の態様において、本発明は、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなる単離および精製されたペプチドに関する。あるいは、前記ペプチドは、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる。
【0058】
1つの実施形態によれば、このT細胞共刺激経路はCD28/B7T細胞共刺激経路、CD40リガンド/CD40、CD2/CD58およびLFA−1(CD18)/ICAM−1(CD54)共刺激経路のいずれかであり得る。
【0059】
好ましい実施形態では、このT細胞共刺激経路はCD28/B7経路であり得る。よって、このCD28/B7経路メンバーはCD28、CTLA−4、ICOSおよびPD−1、B7−1、B7−2、ICOSL、PD−L1およびPD−L2のいずれかであり得る。
【0060】
特に好ましい一実施形態によれば、この経路メンバーはCD28分子であってよく、CD28内の二量体界面は配列番号19で示されるヒトCD28アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と116〜121を含んでなる。
【0061】
もう1つの好ましい実施形態によれば、この経路メンバーはCTLA−4分子であってよく、CTLA−4の二量体界面は配列番号20で示されるヒトCTLA−4アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と115〜120を含んでなる。
【0062】
さらにもう1つの実施形態では、この経路メンバーはICOS分子であってよく、ICOS内の二量体界面は配列番号21で示されるヒトICOSアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と119〜124の総てまたは一部を含んでなる。
【0063】
なおさらに、この経路メンバーはPD−1分子であってよい。PD−1は単量体として知られているが、CTLA4の二量体界面と重複するPD−1中のこれらのドメインも同様に折りたたまれている。
【0064】
本明細書に記載のように、本発明のペプチドはT細胞共刺激経路を調節し得る免疫調節ペプチドである。
【0065】
1つの好ましい実施形態では、本発明のペプチドはT細胞共刺激経路メンバー、好ましくはCD28/B7ファミリーメンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなってよい。
【0066】
より具体的には、本発明のペプチドは、CD28、CTLA−4、ICOSおよびPD−1の二量体界面の総てまたは一部に由来するアミノ酸配列を含んでなる。
【0067】
CD28の構造はまだ解明されていないが、おそらくCTLA4の構造と類似している(図6A)[Schwartz (2001) 同書;Luhder (2003)同書]。CD28およびCTLA4は全体的な配列相同性を示し、それらのB7結合ドメインが同じであるが、おそらくはヘテロ二量体の形成を避けるために、CTLA4中の二量体界面を作り出す2つの配列が全く異なっいる[Schwartz (2001) 同書;Collins (2002)同書]。折りたたまれたCTLA4タンパク質では、これらの離れた配列は並置されている(図6A)。注目すべきは、実施例で示されるように、この対応するCD28ミメティックペプチドp1TAおよびp2TAは、SEBとほぼ等モル比で存在する場合、in vivoで防護効果があった。これらの結果は、本発明者らがCD28中の正確な超抗原結合部位を突き止め、この部位がp1TAおよびp2TAに見られる配列(それぞれ配列番号9および12)から形成されるコンポジットであるという有力な証拠となる。単にそのCTLA4とのアラインメントにのみ基づいてCD28に関して推定された二量体界面の各辺縁に由来するペプチドは、SEBおよびTSST−1と同様に広く異なる超抗原の作用を遮断したが、このことは両者が受容体としてCD28を用いていることを示す。
【0068】
CD28は共刺激リガンドのトリアッド:CD28、CTLA4およびICOSに属す。これらのタンパク質は最大33%の同一性を示し、強固にクラスターを形成した遺伝子によりコードされている[Carreno and Collins (2002) 同書]。本発明者らは、SEBはそれらの各々と、同様の親和性で直接結合することを示した(図4A、4Bおよび4C)。結合は各共刺激受容体の二量体界面において起こり、独特なものである。CTLA4における二連の二量体界面の各辺縁に由来する、またはアラインメントによりICOSに関して推定されたペプチド(図61)は、CD28ミメティックペプチドp1TAおよびp2TA同様、毒素に対して極めて低分子比率でSEBによる致死的抗原刺激からマウスを保護する強力な超抗原アンタゴニストである(図7)。CD28、CTLA4およびICOSは各々このドメインと実質的な親和性で直接結合する(図4D、4Eおよび4F)ことから、明らかに、これらのアンタゴニストの作用様式は、アンタゴニストドメイン、すなわち、超抗原中のその結合部位をめぐってCD28と競合することである。
【0069】
CTLA4の二連の二量体界面のアミノ酸配列、ならびにCD28[Schwartz (2001)同書]およびICOS(本研究)に関して推定されたものはヘテロ二量体の形成をおそらくは避けるために相同性を欠いている。本発明の機能分析は、各々超抗原との結合のためにこの界面を用いることを示す。明らかに、配列には違いがあるが、この3つの二量体界面は同様に折りたたまされている。超抗原のアンタゴニストドメインも同様に、配列が異なっているにもかかわらず、空間的な保存を示す。[Arad (2000) 同書]。従って、両セットのリガンド、受容体トリアッドおよび超抗原とも、構造的な特徴がこの接触面を作り出している。
【0070】
共刺激受容体programmed death−1(PD−1)の構造は解明されており、CTLA4の構造と重ね合わせることができ、それらのアミノ酸配列のアラインメントが可能である[Zhang (2004) 同書]。CTLA4の二量体界面に関連する配列YVIDPEPCP(p1TB、配列番号14)およびPAVVLASS(p2TB、配列番号15)が、それぞれPD−1配列RVTERRAEV(p1TD、配列番号57)およびPALLVVTE(p2TD、配列番号58)とともにアラインされている。PD−1は単量体であるが、p1TDおよびp2TDと重複するPD−1中のドメインは、p1TBおよびp2TBと重複するCTLA4中のドメインと同様に折りたたまされている[Zhang (2004) 同書]。従って、PD−1中のこれらの2つの非連続ドメインに由来するペプチドp1TDおよびp2TDは、超抗原中のCD28のための結合部位に関する潜在的競合因子であり、これは超抗原作用の阻害をもたらす。
【0071】
特に好ましい実施形態では、本発明のペプチドは、配列番号12で示されるヒトCD28アミノ酸配列の残基10〜15と116〜121を含んでなるCD28分子内の二量体界面に由来する。図6Aで示され、配列番号19で表されるヒトCD28アミノ酸配列は GenBank受託番号P10747のヒトCD28配列の細胞外部分のみに相当することに着目すべきである。図6Aで示されるように、推定CD28二量体界面は、配列的にではなく位置的にCTLA−4二量体界面に相当する(CTLA−4の10〜15番と115〜120番)。さらに、図6Aで示されるヒトCTLA−4アミノ酸配列がGenBank受託番号AAO17066のヒトCTLA−4配列の細胞外部分のみに相当することにも着目すべきである。好ましくは、本発明のペプチドはCD28二量体界面および付加的なフランキング残基、すなわち、CD28のアミノ酸残基8〜15と116〜124を含んでなる。
【0072】
本発明の特定の好ましいペプチドp1TAと呼ばれ、配列番号9で示されるアミノ酸配列HVKGKHLCPまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0073】
本発明のもう1つの特に好ましいペプチドはp2TAと呼ばれ、配列番号12で示されるアミノ酸配列SPMLVAYDまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0074】
あるいは、本発明のペプチドは、CTLA−4分子内の二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなってよく、その二量体界面は配列番号20で示されるヒトCTLA−4アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と115〜120を含んでなる。
【0075】
より具体的には、このようなペプチドは配列番号14で示されるアミノ酸配列YVIDPEPCP、配列番号15で示されるアミノ酸配列PAVVLASS、ならびにそのいずれかの機能的断片および誘導体のいずれかに由来するアミノ酸配列を含んでなる。
【0076】
従って、1つの特定の好ましいペプチドはp1TBと呼ばれ、配列番号14で示されるアミノ酸配列YVIDPEPCPまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0077】
もう1つの好ましい特定のペプチドはp2TBと呼ばれ、配列番号15で示されるアミノ酸配列PAVVLASSまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0078】
さらにもう1つの選択肢では、本発明のペプチドは、ICOS分子内の二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなってよく、その二量体界面は配列番号21で示されるヒトICOSアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と119〜124の総てまたは一部を 含んでなる。
【0079】
より具体的には、本発明のペプチドは、配列番号16で示されるアミノ酸配列YESQLCCQL、配列番号17で示されるアミノ酸配列GEINGSAN、ならびにそのいずれかの機能的断片および誘導体のいずれかに由来するアミノ酸配列を含んでなってよい。
【0080】
1つの特定の例としてのペプチドはp1TCと呼ばれ、配列番号16で示されるアミノ酸配列YESQLCCQLまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0081】
もう1つの特定の例はp2TCと呼ばれるペプチドであり、配列番号17で示されるアミノ酸配列GEINGSANまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0082】
もう1つの好ましい実施形態によれば、本発明のペプチドは、配列番号59で示されるヒトPD−1配列のアミノ酸残基8〜13および110〜116[Zhang (2000)同書]を含んでなる、CTLA4の二量体界面に相当するPD−1分子中のドメインに由来するアミノ酸配列を含んでなる。
【0083】
より具体的には、本発明のペプチドは、アミノ酸配列RVTERRAEV(配列番号57で示される)、PALLVVTE(配列番号58で示される)およびそのいずれかの機能的断片および誘導体のいずれかに由来するアミノ酸配列を含んでなってよい。
【0084】
本発明の特定の好ましいペプチドはとp1TD呼ばれ、配列番号57で示されるアミノ酸配列RVTERRAEVまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0085】
本発明のもう1つの特に好ましいペプチドはp2TDと呼ばれ、配列番号58で示されるアミノ酸配列PALLVVTEまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0086】
CD28ファミリー分子のいずれの二量体界面に由来するペプチドも、二量体界面辺縁のいずれのアミノ酸配列の総てまたは一部を含んでなってもよいことに着目すべきである。従って、本発明のいずれのペプチドとCD28分子内の、対応する二量体界面との間の相同性または類似性も10%〜100%の相同性、好ましくは20%〜90%の相同性、最も好ましくは30%〜80%の相同性の範囲であり得る。
【0087】
もう1つの特に好ましい実施形態によれば、本発明のペプチドは、CD28、CTLA4、ICOSおよびPD−1のいずれかの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる。
【0088】
1つの好ましい実施形態では、このようなペプチドは、CD28分子の二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合することができ、その二量体界面は配列番号19で示されるヒトCD28アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と116〜121を含んでなる。
【0089】
あるいは、本発明のペプチドは、CTLA−4分子の二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合することができ、その二量体界面は配列番号20で示されるヒトCTLA−4アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と115〜120を含んでなる。
【0090】
さらにもう1つの選択肢では、本発明のペプチドは、ICOS分子の二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合し、その二量体界面は配列番号21で示されるヒトICOSアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と119〜124の総てまたは一部を含んでなる。
【0091】
本発明のペプチドは、配列番号59で示されるヒトPD−1アミノ酸配列のアミノ酸残基8〜13と110〜116の総てまたは一部を含んでなり、CTLA4の二量体界面と同様に折りたたまれているPD−1分子内の配列と結合し得るということをさらに認識すべきである。
【0092】
SEBのドメイン番号に基づき、β鎖7内で始まる中央ターンを形成し、このβ鎖7を短いβ鎖8を介してαヘリックス4と接続し、αヘリックス4内で終わる発熱性外毒素の空間的に保存されているドメインに由来するペプチド、例えばp12Aおよびp12B(それぞれ配列番号1および3)はCD28ファミリー分子の二量体界面に特異的に結合するが、このようなペプチドは本願の範囲外である。しかしながら、これらのペプチドは以下に記載するように、本発明の方法のいくつかに用いることができる。
【0093】
従って、好ましい実施形態によれば、 本発明は、CD28ファミリーであるCD28、CTLA−4およびICOSの3つ総てのメンバーの二量体界面、ならびにPD−1と結合するペプチドに関するが、ただし、このペプチドは、SEBのドメイン番号に基づき、β鎖7内で始まる中央ターンを形成し、このβ鎖7を短いβ鎖8を介してαヘリックス4と接続し、αヘリックス4内で終わる発熱性外毒素の空間的に保存されているドメインに由来するものではない[Arad (2000)同書]。
【0094】
実施例8および図5Aに記載されているように、本発明者らは、CD28の二量体界面を含んでなり、結合したファージをSEBと置き換える、固定化CD28上でファージディスプレーライブラリーのスクリーニングを行った。このスクリーニングでは、種々のペプチドが単離され、それらのアンタゴニスト活性に関してさらに分析した。従って、本発明のペプチドは配列番号6、7および8、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および56のいずれかで示されるアミノ酸配列を含んでなる。
【0095】
特に好ましい実施形態によれば、本発明のペプチドはpe12と呼ばれ、配列番号で示されるアミノ酸配列SHFTHNRHGHSTまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0096】
もう1つの特定のペプチドはpd7と呼ばれる。このペプチドは配列番号7で示されるアミノ酸配列WHAHPHKKPVVAまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0097】
さらにもう1つの例では、本発明のペプチドはpc3と呼ばれ、配列番号8で示されるアミノ酸配列FHKHKNPGSPIIまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する。
【0098】
好ましい実施形態によれば、本発明のペプチドはいずれも、T細胞共刺激経路メンバー、好ましくはCD28分子と発熱性外毒素との間の直接的相互作用を阻害することができる。従って、これらのペプチドは毒素により媒介されるTリンパ球の活性化のアンタゴニストとして働き、発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックから保護する。
【0099】
本明細書において誘導体および機能的誘導体とは、T細胞共刺激経路メンバーと病原体の成分、好ましくは外毒素との間の相互作用を阻害するするか、その外毒素により引き起こされる毒性ショックに対して防御免疫を惹起し、かつ/または毒素により媒介されるT細胞の活性化と拮抗する能力、またはCD28と超抗原との間の相互作用を阻害す能力、またはT細胞共刺激経路、好ましくはCD28/B7経路を調節する能力を妨げない、そのペプチドに対する挿入、欠失、置換および修飾を伴う配列番号6、7、8、9、12、14、15、16、17および25〜58のいずれか1つのアミノ酸配列を含んでなるペプチドを意味する(以下、「誘導体」と呼ぶ)。誘導体は前記超抗原と最小、例えば30%未満といった相同性を維持していなければならない。
【0100】
本明細書において「挿入」とは、本発明のペプチドに対する1〜50アミノ酸残基の間、好ましくは20〜1アミノ酸残基の間、最も好ましくは1〜10アミノ酸残基の間の深を意味するものと理解すべきである。
【0101】
本発明はまた本発明のペプチドのアミノ酸配列の総てまたは一部を含んでなるか、または本発明のペプチドのいずれかの基本ペプチド配列が約2〜約100回繰り返されているより長いペプチドも含むと理解される。
【0102】
直鎖ペプチド構造がないと、小数の潜在的コンホメーションだけしか活性でないので、ヒト血清中でプロテアーゼに攻撃されやすくなり、標的部位に対するそれらの親和性を引き下げる働きをする。よって、例えば本発明の種々のペプチドの異なる誘導体を作出することでアンタゴニストペプチド構造を至適化することが望ましい。
【0103】
ペプチド構造を改良するためには、以下でさらに詳しく記載するが、本発明のペプチドをそれらのN末端からラウリル−システイン(LC)残基にわたって、および/またはそれらのC末端からシステイン(C)残基、もしくはそのペプチドを免疫用のアジュバントと結合するのに好適な他の残基にわたって結合させることができる。
【0104】
本発明のペプチドならびにその誘導体は総て、正電荷を有しても、負電荷を有しても、あるいは中性であってもよい。さらにまた、それらは二量体、多量体の形態、または拘束のあるコンホメーションの形態であってもよく、これらは内部架橋、短い範囲の環化、延長またはその他の化学修飾によって得ることができる。
【0105】
さらに、本発明のペプチドはそのN末端および/またはC末端において種々の同一または異なるアミノ酸残基で延長してもよい。このような延長の一例として、ペプチドをそのN末端および/またはC末端において、天然に存在するアミノ酸残基であっても合成アミノ酸残基であってもよい同一または異なる疎水性アミノ酸残基で延長してもよい。好ましい合成アミノ酸残基はD−アラニンである。
【0106】
このような延長のさらなる例は、そのN末端および/またはC末端の双方にシステイン残基を延長したペプチドにより示される。本来、このような延長は、ジスルフィド結合の形成によって起こるCys−Cys環化によるコンホメーションの拘束をもたらし得る。
【0107】
もう1つの例としては、N末端リシル−パルミトイルテールの組み込みが挙げられ、リシンがリンカーとして働き、パルミチン酸が疎水性アンカーとして働く。
【0108】
さらにまた、これらのペプチドは、天然に存在するアミノ酸残基であっても合成アミノ酸残基であってもよい芳香族アミノ酸残基により延長してもよい。好ましい芳香族アミノ酸残基はトリプトファンである。あるいは、これらのペプチドはそのN末端および/またはC末端において、天然に存在する発熱性外毒素のアミノ酸配列の対応する位置に存在するアミノ酸で延長することもできる。
【0109】
しかしながらやはり、本発明によれば、本発明のペプチドはそのN末端および/またはC末端において、天然に存在するアミノ酸残基でも合成アミノ酸残基でもない種々の同一または異なる有機部分で延長してもよい。このような延長の一例として、ペプチドをそのN末端および/またはC末端においてN−アセチル基で延長してもよい。
【0110】
本発明によって用いられる、または本明細書で開示される総ての単一ペプチド配列に関して、本発明はそのペプチド鎖の配向が逆転し、総てのアミノ酸がD型に属す、対応する逆転配列を含む。
【0111】
本発明はまた、配列番号6、7、8、9、12、14、15、16、17、25〜56、57および58で示されるアミノ酸配列の一部または総てを含んでなる基本エピトープ配列、またはこれらのペプチドのいずれかの基本ペプチド配列が約2〜約100回繰り返されている、より長いペプチドも包含するものと認識すべきである。
【0112】
第二の態様によれば、本発明は、有効成分として本発明で定義された精製ペプチドまたはまたはそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を含んでなり、所望により、医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤をさらに含んでなる、T細胞共刺激経路を調節するための組成物に関する。
【0113】
本発明はさらに、それを必要とする被験体においてTh1−Th2応答の不均衡に関連する免疫疾患を処置するための医薬組成物であって、有効成分として本発明のペプチドまたはそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を含んでなり、所望により、医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤をさらに含んでなる組成物を提供する。
【0114】
本発明の組成物はまた、さらなる有効剤、例えばプロテアーゼ阻害剤を含んでもよい。
より具体的には、Th1−Th2応答の不均衡に関連する免疫関連疾患に関連する免疫疾患は例えば、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症(MS)、1型糖尿病、狼瘡、グレーブス病および甲状腺炎)、悪性および非悪性増殖性疾患、移植片拒絶症および移植片対宿主病、ならびに発熱性外毒素、または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物に誘導される障害(毒性ショック、無能化および死、敗血性ショックおよび重度敗血症など)が挙げられる。
【0115】
好ましい実施形態によれば、本発明は、発熱性外毒素により媒介されるTリンパ球の活性化を阻害するための組成物を提供する。該組成物は発熱性外毒素、または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導され得る毒性ショックから保護する。本発明の組成物は有効成分として本発明の精製免疫調節ペプチドのいずれか、またはそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を、外毒素に誘導される、IL2および/またはIFN−γ遺伝子によりコードされているRNAの発現を阻害するのに有効な量で含んでなり、所望により、医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤をさらに含んでなる。
【0116】
1つの特に好ましい実施形態では、このような組成物は有効成分としてp1TA(配列番号9で示される)、p2TA(配列番号12で示される)、p1TB(配列番号14で示される)、p2TB(配列番号15で示される)、p1TC(配列番号16で示される)、p2TC(配列番号17で示される)、pe12(配列番号6で示される)、pd7(配列番号7で示される)、pc3(配列番号8で示される)、pa2(配列番号25で示される)、pb11(配列番号26で示される)、pc11(配列番号27で示される)、pf11(配列番号28で示される)、pg3(配列番号29で示される)、pb12(配列番号30で示される)、pa8.1(配列番号31で示される)、pb3(配列番号32で示される)、pb5(配列番号33で示される)、pb11(配列番号34で示される)、pf3(配列番号35で示される)、pf8(配列番号36で示される)、pe6(配列番号37で示される)、pf4(配列番号38で示される)、pa8.2(配列番号39で示される)、pb3(配列番号40で示される)、pb2(配列番号41で示される)、pc2(配列番号42で示される)、pc8(配列番号43で示される)、pc9(配列番号44で示される)、pf12(配列番号45で示される)、pc4(配列番号46で示される)、pe11(配列番号47で示される)、pb5(配列番号48で示される)、pe11(配列番号49で示される)、pg7(配列番号50で示される)、pa12(配列番号51で示される)、pb8(配列番号52で示される)、pb12(配列番号53で示される)、pc8(配列番号54で示される)、pd8(配列番号55で示される)、pg6(配列番号56で示される)、p1TD(配列番号57で示される)、p2TD(配列番号58で示される)からなる群から選択されるペプチドおよびそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を含んでなってよい。
【0117】
なおさらに、本発明は超抗原とCD28、CTLA4、ICOSおよびPD−1のいずれかにおける超抗原結合部位との間の直接的相互作用を阻害するための組成物に関する。この組成物は有効成分として単離および精製されたペプチドを、その相互作用を阻害するのに有効な量で含んでなる。
【0118】
本発明の医薬組成物は適切な医療に従って投与および投薬することができる。投与は静脈、筋肉または皮下注射をはじめとする種々の方法で行うことができる。しかしながら、経口、直腸および鼻腔内投与などのその他の投与方法も可能である。
【0119】
本発明の組成物は遊離形態で有効物質を含んでなってよく、処置する被験体にそのまま投与することができる。あるいは、有効分子の大きさにもよるが、投与前に担体と結合させるのが望ましい場合もある。治療用処方物は通常のいずれの投与処方物で投与してもよい。処方物は典型的には、上記で定義したような少なくとも一種の有効成分をその一種以上の許容される担体とともに含んでなる。
【0120】
各担体は他の成分と適合可能であり、かつ、患者に害がないという点で医薬および生理学の両面で許容されなければならない。処方物は経口、直腸、鼻腔、または非経口(皮下、筋肉内、腹腔内(IP)、静脈内(IV)および皮内を含む)投与に好適なものを含む。これらの処方物は通常、単位投与形で提供することができ、製薬分野で周知のいずれの方法によって製造してもよい。被験体において所望の作用をもたらすのに必要な有効量を含むこのような総ての化合物の性質、アベイラビリティー、および供給源および投与は当技術分野で周知であり、ここでさらに述べる必要はない。
【0121】
注射用に好適な医薬型としては、無菌水溶液または分散液、および無菌注射溶液もしくは分散液の即時調合用の無菌粉末が挙げられる。いずれの場合でも、形態は無菌でなければならず、シリンジでの取り扱いが簡単な程度の流動性がなければならない。これは製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の混入から守られなければならない。
【0122】
このような微生物作用の回避は種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含むのが好ましい。吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物として用いることで注射組成物の長期吸収が得られる。
【0123】
好適な注射溶液は、必要な量の有効化合物を、必要であれば、上記で列挙された種々の他の成分とともに好適な溶媒中に配合し、その後、濾過除菌することによって調製される。一般に、分散液は、種々の無菌有効成分を、基本分散媒と上記に列挙されたもののうち必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに配合することによって調製される。
【0124】
無菌注射溶液の調製用の無菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、予め濾過除菌したその溶液から、有効成分と任意の付加的な所望の成分の粉末が得られる。
【0125】
本発明の医薬組成物は一般に、緩衝剤、その浸透圧を調整する薬剤、および所望により当技術分野で公知の1以上の医薬上許容される担体、賦形剤および/または添加剤を福でなる。また、これらの本発明には補助的有効成分を配合することができる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その好適な混合物、ならびに植物油を含有する溶媒または分散媒であってよい。例えばレシチンなどの被覆材の使用、分散系の場合に必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用により適切な流動性を維持することができる。
【0126】
本明細書において「医薬上許容される担体」とは、溶媒、分散媒、被覆材、抗菌剤および抗真菌剤などのいずれか、および総てを含む。医薬上活性な物質のためのこのような媒体の使用は当技術分野で周知である。通常の媒体または薬剤が有効成分に不適合性ある場合を除き、治療組成物での使用が考えられる。
【0127】
医薬組成物の製造は当技術分野で周知であり、多くの文献およびテキストに記載されている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Gennaro A. R. ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990、特にその中の1521〜1712頁参照。
【0128】
自己および非自己を識別する能力はおそらく最も基本的に重要な免疫調節の態様である。この特性は免疫認識および感染性の侵入者破壊に翻訳されるが、正常な宿主組織は触れられないままである。この選択性の高い応答は10年来記載されてきた、複雑な一連のT細胞調節機構を特徴とする。
【0129】
免疫応答の適合性を維持するようデザインされたこのような機構の1つは抗原特異的T細胞の効率的な活性化に2つの異なるシグナル、すなわち、T細胞受容体を介する抗原特異的シグナル(シグナル1)および可溶性因子または抗原提示細胞(APC)上の細胞表面分子により提供される非同族共刺激シグナル(シグナル2)を必要とする。これらの2つのシグナルの組み込みは細胞分裂ならびに免疫応答のエフェクターおよびレギュレーターの分化を誘発する。共刺激の重要な生物学的意味合いはさておき、共刺激遮断の効果は、その抗原特異的受容体がすでに結びついているT細胞、すなわち、すでにシグナル1を受容しているT細胞だけに限定されることから、共刺激シグナルの同定は臨床的介入上重要な意味合いを有する。よって、基本的に、T細胞共刺激を遮断すれば、関与する特定の抗原に関する実際の知識がなくとも、抗原特定期免疫応答ターゲッティング様式が得られる。実際、いくつかの場合では、共刺激経路アンタゴニストは自己免疫疾患および臓器移植片拒絶の進行を防ぐ抗原特異的耐性を誘導することができる。
【0130】
よって、第三の態様では、本発明は、それを必要とする被験体においてT細胞共刺激経路を調節するための方法に関する。該方法は、被験体にT細胞共刺激経路を調節し得る有効量の免疫調節ペプチドを投与する工程を含み、このペプチドはT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなる。あるいは、該ペプチドは、T細胞共刺激経路メンバーの、またはそれを含んでなる組成物の二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる。
【0131】
T細胞活性化におけるCD28/B7共刺激の決定的な重要性は自己免疫疾患の試験モデルにおいて共刺激の役割を調べる複数の研究につながった。初期の研究では、免疫時のCD28/B7共刺激の破壊は常にこの病態の重篤度の軽減と、いくつかの場合では疾病の完全な予防と関連していることが示された。例えば、多発性硬化症、心筋炎、関節炎、甲状腺炎および重症性筋無力症のマウスモデルにおいて、CTLA−4Igによる、またはいくつかの場合では抗B7mAbによるCD28/B7の遮断は疾病の重篤度を軽減した。
【0132】
よって本発明はさらに、それを必要とする被験体においてTh1−Th2応答の不均衡に関連する免疫疾患を処置する方法を提供する。該方法は、被験体にT細胞共刺激経路を調節し得る有効量の免疫調節ペプチド、またはそれを含んでなる組成物組成物を投与する工程を含み、このペプチドはT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなる。あるいは、該ペプチドは、T細胞共刺激経路メンバーの、またはそれを含んでなる組成物の二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる。
【0133】
本明細書の目的で治療上「有効な量」とは、当技術分野で公知のような考慮により決定されるものである。この量は、CD28、CTLA−4、ICOSおよびPD−1分子などのT細胞共刺激経路メンバーと、発熱性外毒素などの病原体の成分との間の直接的相互作用を阻害して、毒素により媒介されるT細胞の活性化と拮抗するのに十分なものでなければならない。
【0134】
1つの実施形態によれば、本発明は、Th1−Th2応答の不均衡に関連する免疫疾患を処置するための方法に関する。該疾病の例は自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症(MS)、1型糖尿病、狼瘡、グレーブス病および甲状腺炎)、悪性および非悪性増殖性疾患、移植片拒絶症および移植片対宿主病である。
【0135】
本発明を記載するために本明細書に用いる「悪性増殖性疾患」、「癌」、「腫瘍」および「悪性腫瘍」とは総て等しく組織または器官の過形成に関するものである。この組織がリンパ系または免疫系の一部であれば、悪性細胞は循環細胞の非固形腫瘍を含み得る。他の組織または器官の悪性腫瘍は固形腫瘍を形成し得る。一般に、本発明の組成物ならびに方法は非固形腫瘍および固形腫瘍、例えば癌腫、黒色腫、白血病およびリンパ腫の処置に用い得る。
【0136】
よって、好ましい実施形態によれば、本発明の免疫調節ペプチドまたはそれを含んでなる組成物は非固形癌、例えば、造血系悪性疾患(例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、肥満細胞白血病、ヘアリー細胞白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫および多発性骨髄腫などのあらゆる種類の白血病)の治療または抑制、ならびに唇および口腔、咽頭、喉頭、副鼻腔、主唾液腺、甲状腺、食道、胃、小腸、結腸、直腸結腸、肛門管、肝臓、胆嚢、肝外胆管、ファーター乳頭部、外分泌膵臓、肺、胸膜中皮腫、骨、軟組織肉腫、皮膚の癌腫および悪性黒色腫、乳房、外陰部、膣、子宮頚、卵巣、卵管、妊娠期栄養膜腫瘍、陰茎、前立腺、精巣、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、尿道、眼瞼の癌腫、結膜の癌腫、結膜の悪性黒色腫、ブドウ膜の悪性黒色腫、網膜芽細胞腫、涙腺の癌腫、眼窩の肉腫、脳、脊髄、血管系、血管肉腫およびカポジ肉腫の腫瘍などの固形腫瘍の治療または抑制に使用できる。
【0137】
特に好ましい実施形態によれば、本発明により定義されるいずれのペプチド、またはそのいずれの組合せ、機能的断片、誘導体、コンジュゲートおよび組成物のこのような方法に使用できる。
【0138】
「アンタゴニストドメイン」(p12Aおよびp12B)に由来するペプチドもまた、本発明の方法によって使用できることに着目すべきである。
【0139】
より具体的には、本発明の方法はp12A(配列番号1で示される)、p12B(p14Aとも呼ばれる、配列番号3で示される)、pTA(配列番号11で示される)、p1TA(配列番号9で示される)、p2TA(配列番号12で示される)、p1TB(配列番号14で示される)、p2TB(配列番号15で示される)、p1TC(配列番号16で示される)、p2TC(配列番号17で示される)、pe12(配列番号6で示される)、pd7(配列番号7で示される)、pc3(配列番号8で示される)、pa2(配列番号25で示される)、pb11(配列番号26で示される)、pc11(配列番号27で示される)、pf11(配列番号28で示される)、pg3(配列番号29で示される)、pb12(配列番号30で示される)、pa8.1(配列番号31で示される)、pb3(配列番号32で示される)、pb5(配列番号33で示される)、pb11(配列番号34で示される)、pf3(配列番号35で示される)、pf8(配列番号36で示される)、pe6(配列番号37で示される)、pf4(配列番号38で示される)、pa8.2(配列番号39で示される)、pb3(配列番号40で示される)、pb2(配列番号41で示される)、pc2(配列番号42で示される)、pc8(配列番号43で示される)、pc9(配列番号44で示される)、pf12(配列番号45で示される)、pc4(配列番号46で示される)、pe11(配列番号47で示される)、pb5(配列番号48で示される)、pe11(配列番号49で示される)、pg7(配列番号50で示される)、pa12(配列番号51で示される)、pb8(配列番号52で示される)、pb12(配列番号53で示される)、pc8(配列番号54で示される)、pd8(配列番号55で示される)、pg6(配列番号56で示される)、p1TD(配列番号57で示される)、p2TD(配列番号58で示される)からなる群から選択され得るペプチドおよびそのいずれかの組合せ、機能的断片誘導体および組成物を使用できる。
【0140】
さらに、本発明は、それを必要とする被験体においてT細胞共刺激経路を調節するための組成物の製造を目的としす、T細胞共刺激経路を調節し得る免疫調節ペプチドの使用を提供し、そのペプチドは、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列またはT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる。
【0141】
さらにもう1つの実施形態では、本発明は、それを必要とする被験体においてTh1−Th2応答の不均衡に関連する免疫疾患の処置のための医薬組成物の製造を目的とする、T細胞共刺激経路を調節し得る免疫調節ペプチドの使用に関する。このような組成物として用いられるペプチドは、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列またはT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなってよい。
【0142】
特に好ましい実施形態によれば、このような組成物は、Th1−Th2応答の不均衡に関連する免疫疾患、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症(MS)、1型糖尿病、狼瘡、グレーブス病および甲状腺炎)、悪性および非悪性増殖性疾患、移植片拒絶症および移植片対宿主病の処置に有用であり得る。
【0143】
特の好ましい実施形態によれば、本明細書により定義されるいずれのペプチド、またはそのいずれの組合せ、機能的断片および誘導体も、このような組成物の製造に使用可能である。
【0144】
特定の実施形態によれば、これらの組成物の製造に用いられるペプチドはp12A(配列番号1で示される)、p12B(p14Aとも呼ばれる、配列番号3で示される)、pTA(配列番号11で示される)、p1TA(配列番号9で示される)、p2TA(配列番号12で示される)、p1TB(配列番号14で示される)、p2TB(配列番号15で示される)、p1TC(配列番号16で示される)、p2TC(配列番号17で示される)、pe12(配列番号6で示される)、pd7(配列番号7で示される)、pc3(配列番号8で示される)、pa2(配列番号25で示される)、pb11(配列番号26で示される)、pc11(配列番号27で示される)、pf11(配列番号28で示される)、pg3(配列番号29で示される)、pb12(配列番号30で示される)、pa8.1(配列番号31で示される)、pb3(配列番号32で示される)、pb5(配列番号33で示される)、pb11(配列番号34で示される)、pf3(配列番号35で示される)、pf8(配列番号36で示される)、pe6(配列番号37で示される)、pf4(配列番号38で示される)、pa8.2(配列番号39で示される)、pb3(配列番号40で示される)、pb2(配列番号41で示される)、pc2(配列番号42で示される)、pc8(配列番号43で示される)、pc9(配列番号44で示される)、pf12(配列番号45で示される)、pc4(配列番号46で示される)、pe11(配列番号47で示される)、pb5(配列番号48で示される)、pe11(配列番号49で示される)、pg7(配列番号50で示される)、pa12(配列番号51で示される)、pb8(配列番号52で示される)、pb12(配列番号53で示される)、pc8(配列番号54で示される)、pd8(配列番号55で示される)、pg6(配列番号56で示される)、p1TD(配列番号57で示される)、p2TD(配列番号58で示される)ならびにそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体からなる群から選択し得る。
【0145】
超抗原によるMHCクラスII分子およびTCRの結びつきは致死的毒性ショックを媒介するTh1サイトカインの誘導には十分なものではない。SPR親和性研究では、確かな言葉で、超抗原とMHCIIまたはTCRのいずれかとの相互作用が極めて弱いことが示されている[Seth (1994)同書; Redpath (1999) 同書]。これに対し、SEBのCD28に対する親和性ははるかに高く、この相互作用は安定な免疫シナプスの形成においての中枢的な役割を与える。この3つのリガンドを同時に結びつけることにより、超抗原はTh1細胞に活性化シグナルを送達できる。超抗原のCD28への結合を妨げるペプチドミメティックはシナプス形成を損ない、Th1応答の誘導を妨げる(図7J)。本発明の発見は、なぜこのアンタゴニストドメインの短いペプチドミメティックが有効な超抗原アンタゴニストであって、SEBのTCRおよび/またはMHCII結合部位のミメティックがTh1応答を阻害することができないのかを説明している[Arad (2000)同書]。
【0146】
CD28細胞表面上のホモ二量体として存在するが、CD28の、またCTLA4の二量体形成はB7結合には必要なく、また、通常抗原によるシグナル伝達を誘発するのに十分なものでもない[Linsley, P. S. et al., J. Biol. Chem. 270(25):15417-24 (1995)]。唯一、単量体B7−2分子だけがCD28二量体と結びつくと考えられる[Collins (2002)同書]。SEBはCD28の細胞表面提示において一時的な変化を誘導し、それを推定CD28二量体界面の1つの辺縁に特異的なαCD28 mAbに接近可能とする(図3A、6Aおよび6B)。αCD28単独でTh1応答を誘発するという発見(図3B、3Cおよび6B)は、SEBによりシフト可能なCD28の接近性の状態の間に並行状態が存在することを示唆している(図3A)。本発明者らは、SEBがその二量体界面の両辺縁においてCD28と結びつくことを示した。それは1つのCD28単量体と相互作用する場合、その超抗原は他の単量体と置き換わり、この時にαCD28に接近可能となる。
【0147】
それらの収束進化の過程で、黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌由来の超抗原毒素は、TCRおよびMHCクラスII分子の中でも、それらの機能にとって重要なヒト免疫系の受容体を認識するようにデザインされた構造を獲得した。さらに、個々の超抗原は、それらがこれら2つのリガンドと相互作用するような様式での広い多様性を示す[Sundberg(2002a)同書; Sundberg(2002b)同書]。これに対して、超抗原と第三の受容体CD28との結合は親和性がより高いだけでなく、両分子において保存された構造を含み、TSST−1をこのアンタゴニストドメインのミメティック [Arad (2000) 同書]、およびCD28の二量体界面のミメティックに対するSEBと同様の感受性とする(図6Gおよび6H)。
【0148】
CD28は生得的な免疫性にとって初期のシグナルトランスデューサーとして独特の役割を有する。CD28は構成的に発現し、Th1応答の媒介に不可欠なものであるが、ICOSはその後にCD28に依存して誘導され、主としてTh2応答を促進する。その後の、これもまたCD28に依存的なCTLA4の誘導は、これらの初期応答をシャットアウトする働きをする[Rudd and Schneider (2003)同書に概説]。理論に縛られるものではないが、本発明者らは、SEBがCD28だけでなく、ICOSおよびCTLA4にも結合する可能性を有するので、それはCD28を介して誘導されたTh1応答を調節するために後者のリガンドを用い得るとの仮説を立てる。
【0149】
CD28コリガンドのB7−2は構成的に発現し、生得的な免疫応答の際に容易に誘導される[Sharpe and Freeman (2002)同書に概説]。SEBの作用は全面的にB7−2に依存する(図2Aおよび2B)。sB7−2はSPR動態分析においてSEBと、sCD28に対するものと類似の親和性で、しかし、低い結合力で直接結合する(図4)。超抗原によるB7−2およびCD28の同時結合はB7−2とCD28との結合を安定化させることから、大規模な共刺激を誘発することができる。本発明の結果は、MHCクラスII分子およびTCRに加えて、CD28およびB7−2と直接結びつくことにより、超抗原が通常でない様式で4つのリガンド(抗原提示細胞由来の2つとT細胞由来の2つ)を補充して過剰なTh1応答をもたらす、通常安定な免疫シナプスを作り出すという新規な概念につながる。
【0150】
TCRを介するシグナル伝達はCD28により、B7−2依存的な様式で増幅される[Acuto and Michel (2003)同書参照]。免疫シナプス形成を模倣するためのTCRとCD28を結びつける、B7−2またはαCD28と共同したαCD3によるIL2およびIFN−γ遺伝子発現の誘導は超抗原ミメティックペプチドp12Bにより遮断される(図3Cおよび3F)。明らかに、シグナル伝達は主としてCD28の超抗原結合部位を介して起こり、それをp12Bに対して感受性とする。ゆえに、CD28におけるこの部位、すなわち、B7−2結合部位とは異なる二量体界面(図6A)およびLuhder et al. [Luhder (2003)同書]により記載されたCD2860−65はTCRシグナル伝達にとって重要である。
【0151】
SEBによりTh1サイトカイン遺伝子の誘導はTh2サイトカインIL4およびIL10の同時誘導により著しく弱められる(図1)。しかしながら、Th1応答とは対照的に、超抗原によるTh2サイトカイン応答の誘導は、CD28を介するシグナル伝達を必要としない。αCD28またはsB7−2はIL10を誘導することはできなかった(図3Dおよび3G)。Th1応答が超抗原の、またはCD28、CTLA4およびICOSの可溶性リガンドまたはペプチドミメティックにより遮断された場合はいずれも、IL10またはIL4を介して測定されるTh2応答は依然として変わらなかった。従って、超抗原アンタゴニストペプチドによるCD28依存性のTh1応答の阻害はTh2応答を完全なまま残し、防御免疫の同時誘導を伴う(図IF;[Arad (2000)同書])。Th1サイトカイン 遺伝子発現におけるCD28シグナル伝達のこの選択的必要条件は、この応答を調節に対してより感受性とする。これに対し、Th2応答の活性化はこのCD28の必要条件を迂回するので、それほど厳格には制御されない。
【0152】
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする被験体において、病原体によるT細胞共刺激経路の活性化または調節を阻害するための方法に関する。本発明の方法は、被験体に、該病原体に由来する成分とT細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位、すなわち、該T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来する結合部位の直接的相互作用を阻害する、阻害上有効な量の物質を投与する工程を含む。
【0153】
好ましい実施形態によれば、このT細胞共刺激経路はCD28/B7、CD40リガンド/CD40、CD2/CD58およびLFA−1(CD18)/ICAM−1(CD54)共刺激経路のいずれかであり得る。好ましくは、このT細胞共刺激経路はCD28/B7経路であり得る。
【0154】
もう1つの実施形態によれば、本発明は病原体によるT細胞共刺激経路の活性化を阻害するための方法に関する。病原体としては原核微生物、低級真核微生物、複合真核生物、ウイルス、真菌、プリオン、寄生虫、酵母および毒液が挙げられる。
【0155】
原核微生物としては、グラム陽性菌、グラム陰性菌、およびグラム不定菌、および細胞内菌などの細菌が挙げられる。本明細書で意図される細菌の例としては、トレポネーマ(Treponema)種、ボレリア(Borrelia)種、ナイセリア(Neisseria)種、レジュネラ(Legionella)種、ボルデテラ(Bordetella)種、エシェリキア(Escherichia)種、サルモネラ種(Salmonella)種、赤痢菌(Shigella)種、クレブシエラ(Klebsiella)種、エリシニア(Yersinia)種、ビブリオ(Vibrio)種、ヘモフィルス(Hemophilus)種、リケッチア(Rickettsia)種、クラミジア(Chlamydia)種、マイコプラズマ(Mycoplasma)種、ブドウ状球菌(Staphylococcus)種、連鎖球菌(Streptococcus)種、バチルス(Bacillus)種、クロストリジウム(Clostridium)種、コリネバクテリア(Corynebacterim)種、プロプリオにバクテリア種(Proprionibacerium)種、マイコバクテリア(Mycobacterium)種、ウレアプラズマ(Ureaplasma)種、およびリステリア(Listeria)種が挙げられる。
【0156】
特定に好ましい種としては、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia Burgdorferi)、淋菌(Neisseria gonorrhea)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、シゲラ・ディセンテリエ(Shigella dysenteriae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、ペスト菌(Yersinia pestis)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、インフルエンザ菌(Hemophilus influenzae)、斑点熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、プロプリオニバクテリウム・アクネ(Proprionibacterium acnes)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、らい菌(Mycobacterium leprae)およびリステリア菌(Listeria monocytogenes)が挙げられる。
【0157】
低級真核生物としては、限定されるものではないが、ニューモシスティス・仮に(Pneumocystis carinii)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、コウジカビ属(Aspergillus)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、白癬菌属(Trichophyton)および小胞子菌(Microsporum)などの酵母または真菌が挙げられる。
【0158】
複合真核生物の例としては、蠕虫、昆虫、クモ類、線虫、エモーブ(aemobe)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、膣トコもナス(Trichomonas vaginalis)、ブルセイ・ガンビア・トリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)、クルーズ・トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、トキソブラズマ(Toxoplasma gondii)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)またはリーシュマニア(Leishmania)が挙げられる。
【0159】
「ウイルス」とは、アデノウイルス、パポーバウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹、エプスタイン−バーウイルス、CMV、ポックスウイルス:天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、B型肝炎ウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、風疹ウイルス、C型肝炎ウイルス、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、A型およびB型インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、HIV、HTLV IおよびII科のウイルスを含む、最も広い意味で用いる。
【0160】
「真菌」とは、例えば、白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、スポロトリクム症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症、およびカンジダ症などの疾病を引き起こす真菌が挙げられる。
【0161】
寄生虫としては、限定されるものではないが、体細胞条虫、血液吸虫、組織回虫、アメーバ、ならびにプラスモジウム、トリパノソーマ、リーシュマニアおよびトキソプラズマ種により引き起こされる感染体が挙げられる。
【0162】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、黄色ブドウ球菌および化膿連鎖球菌からなる群から選択される病原菌によるT細胞共刺激経路の活性化を阻害するのに特に有用である。
【0163】
さらにもう1つの好ましい実施形態では、前記細菌の成分が超抗原であり、これは発熱性外毒素であり得る。好ましくは、この発熱性外毒素は細菌外毒素であってよく、最も好ましくは、この外毒素は黄色ブドウ球菌および化膿連鎖球菌のいずれかによって産生されるものであり得る。本発明の方法によって処置し得る超抗原関連疾患は、特定の実施形態によれば、発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショック、無能化および死であり得る。
【0164】
よって、このような病原体の好ましい成分は超抗原、好ましくは発熱性外毒素であり得る。
【0165】
もう1つの好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、このような超抗原と、D28/B7経路に属す分子内の特定の部位との結合を阻害する物質の使用に基づく。このような分子の例としては、CD28、CTLA−4、ICOSおよびPD−1、B7−1、B7−2、ICOSL、PD−L1およびPD−L2が挙げられる。
【0166】
1つの特定の実施形態によれば、この超抗原結合部位は、配列番号19で示されるヒトCD28アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と116〜121を含んでなるCD28の二量体界面内にあってよい。
【0167】
もう1つの実施形態によれば、この超抗原結合部位は、配列番号20で示されるヒトCTLA−4アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と115〜120を含んでなるCTLA−4分子の二量体界面内にあってよい。
【0168】
あるいは、この超抗原結合部位は、配列番号21で示されるヒトICOSアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と119〜124の一部または総てを含んでなるICOS分子の二量体界面内であってよい。
【0169】
あるいは、この超抗原結合部位は、配列番号59で示されるヒトPD−1配列のアミノ酸残基8〜13と110〜116を含んでなるCTLA4内の二量体界面に相当するPD−1分子内のドメイン内にあってよい。
【0170】
実施例によって示されるように、超抗原はCD28、CTLA4およびICOSの二量体界面内のその結合部位に特異的に結合する。図4は、この超抗原がB7−2分子内の未確認部位と結合することをさらに示している。
【0171】
発明者らが示したように、CD28ファミリーメンバーの二量体界面は発熱性外毒素の空間的に保存されているドメインと特異的かつ直接結合する。好ましくは、この空間的に保存されているドメインはMHCクラスII分子およびTCRのいずれの結合にも関与しない。最も好ましくは、この発熱性外毒素の空間的に保存されているドメインは、SEBのドメイン番号に基づき、その内部にβ鎖7内で始まる中央ターンを形成し、このβ鎖7を短いβ鎖8を介してαヘリックス4と接続し、αヘリックス4内で終わる[Arad et al., (2000), (2001) 同書]。
【0172】
1つの好ましい実施形態では、病原体、好ましくは超抗原に由来する成分とT細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位との間の直接的相互作用を阻害するために本発明の方法により用いられる物質は、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するペプチド、あるいは、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するペプチドであってよい。
【0173】
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、超抗原とCD28ファミリーメンバー、すなわちT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するペプチドとの間の特異的相互作用を阻害するために使用できる。
【0174】
もう1つの実施形態では、超抗原とCD28ファミリー分子のいずれかの二量体界面内の特定部位との直接的結合の阻害は、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するペプチドを用いて達成できる。
【0175】
本方法によって用いられるペプチドは、CD28ファミリーメンバーの二量体界面と結合するペプチドであり、ただし、このペプチドは、SEBのドメイン番号に基づき、その内部にβ鎖7内で始まる中央ターンを形成し、このβ鎖7を短いβ鎖8を介してαヘリックス4と接続し、αヘリックス4内で終わる、発熱性外毒素の空間的に保存されているドメインに由来するものではないことに着目すべきである。
【0176】
特に好ましい実施形態によれば、本方法により用いられるペプチドは本発明で定義されたいずれのペプチドであってもよい。
【0177】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法により用いられるペプチドは、CD28/B7ファミリー分子と前記発熱性外毒素との間の直接的相互作用を阻害する。本発明のこの態様の好ましい実施形態によれば、該病原体成分(好ましくは該成分は発熱性外毒素である)の該T細胞共刺激経路メンバー(好ましくはCD28/B7ファミリーのもの)に対する結合阻害は、本発明の物質により、毒素により媒介されるTh1リンパ球の活性化との拮抗をもたらし、該発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対する防御免疫の間接的惹起ももたらし得る。より詳しくは、この結合は本発明で定義されたCD28内の超抗原結合部位により媒介される。
【0178】
従って、毒素により媒介されるTリンパ球の活性化のアンタゴニストは、発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックから保護し、また、発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対する防御免疫を間接的に惹起することもできる。毒性ショックをもたらす細胞免疫応答を誘導する毒素の能力を遮断することで、本発明のアンタゴニストペプチドは、超抗原にそれ自体に対して向けられた強い体液性免疫応答を誘導させる。よって、処置された被験体はさらなる毒素の攻撃に対して防御免疫を獲得することができ、防御的抗毒素抗体を発達させることができる。このように、本発明のアンタゴニストペプチドは、発熱性外毒素により誘導される急性毒性ショックおよび例えば偶発的食中毒によるものであり得る有害な作用の応急処置に使用できる。さらにまた、それは上記のような毒性ショックに対する長期免疫を間接的に付与することもできる。
【0179】
T細胞共刺激経路メンバー、例えばCD28と、病原体の成分、好ましくは超抗原との間の直接的相互作用を阻害するペプチドは例えば低い免疫原性と比較的急速なクリアランスを有するペプチドであるが、このようなアンタゴニストペプチドに対する抗体は検出されない。しかしながら、毒性ショックをもたらす細胞免疫応答を誘導する毒素の能力を遮断することで、このアンタゴニストペプチドはその超抗原にそれ自体に対して向けられる体液性免疫応答を誘導させる。これらの条件下で、超抗原はその固有のアジュバントとして働く。このように、超抗原に曝されている間、アンタゴニストペプチドにより致死的毒性ショックが妨げられる場合(CD28−超抗原相互作用を阻害することによる)、処置された被験体は、異なる毒素によるものであってさえ、さらなる毒素の攻撃に対して防御免疫を獲得し、防御的抗毒素抗体を発達させることができる。従って、CD28分子と超抗原毒素との間の直接的相互作用を阻害する本発明のペプチドの使用は、該発熱性外毒素により誘導される毒性ショックに防御免疫を間接的に惹起することができる。
【0180】
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする被験体において病原体によって引き起こされるTh1−Th2応答の不均衡に関連する病理的疾患を処置するための方法に関する。このような方法は、被験体に、その病原体に由来する成分とT細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位、すなわち、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来する部位との直接的相互作用を阻害する、阻害上で有効な量の物質を投与する工程を含む。
【0181】
一実施形態によれば、本発明の方法は、悪性および非悪性増殖性疾患、および免疫関連疾患、例えば、炎症、自己免疫疾患、ならびにまた外毒素関連疾患の処置のために意図される。
炎症はいずれの炎症症状も含み、その炎症症状は慢性関節リウマチ、成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流傷害、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸管炎症、硬変および炎症性腸疾患のいずれかであり得る。
【0182】
もう1つの実施形態によれば、このT細胞共刺激経路はCD28/B7T細胞共刺激経路、CD40リガンド/CD40、CD2/CD58およびLFA−1(CD18)/ICAM−1(CD54)共刺激経路、好ましくは、CD28/B7経路のいずれかであり得る。
【0183】
より詳しくは、このCD28/B7経路メンバーはCD28、CTLA−4、ICOSおよびPD−1、B7−1、B7−2、ICOSL、PD−L1およびPD−L2のいずれかであり得る。
【0184】
一実施形態では、この経路メンバーはCD28分子であってよく、CD28内の二量体界面は配列番号19で示されるヒトCD28アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と116〜121を含んでなる。
【0185】
もう1つの実施形態では、この経路メンバーはCTLA−4分子であってよく、CTLA−4の二量体界面は配列番号20で示されるヒトCTLA−4アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と115〜120を含んでなる。
【0186】
あるいは、この経路メンバーはICOS分子であってよく、ICOS内の二量体界面は配列番号21で示されるヒトICOSアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と119〜124の総てまたは一部を含んでなる。
【0187】
あるいは、この経路メンバーはPD−1分子であってよく、CTLA4内の二量体界面に相当するPD−1分子内のドメインは配列番号59で示されるアミノ酸残基8〜13と110〜116を含んでなる。
【0188】
さらにもう1つの実施形態では、本発明の方法は、細菌病原体、ウイルス、真菌、プリオン、寄生虫、酵母および毒液などの病原体によって引き起こされる病態の処置を意図する。
【0189】
特に好ましい実施形態では、このような病原体は黄色ブドウ球菌および化膿連鎖球菌からなる群から選択される病原菌であり得る。よって、T細胞共刺激経路メンバー内の特定の結合部位に特異的に結合する該細菌の成分は超抗原、好ましくは発熱性外毒素であってもよい。
【0190】
より詳しくは、T細胞共刺激経路メンバー、好ましくはCD28分子と発熱性外毒素との間の直接的相互作用の阻害は外毒素により媒介されるTh1リンパ球の活性化の阻害、毒性ショックからの保護をもたらし、また、発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対する防御免疫の間接的惹起も誘導する。
【0191】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショック、無能化および死の処置に特に有用である。
【0192】
「免疫学的に有効な量」とは、T細胞の活性化を遮断する抗体の産生、好ましくは発熱性外毒素により誘導されるTh1応答を高め、発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物 により誘導される毒性ショックに対する免疫を付与するのに十分な量を意味する。
【0193】
本願のいたるところで用いられている毒素により媒介される活性化とは、発熱性外毒素またはそのような毒素の混合物により媒介されるT細胞の活性化を意味する。
【0194】
本発明のアンタゴニストペプチドは、発熱性外毒素により誘導される急性毒性ショックおよび例えば偶発的食中毒によるものであり得る有害な作用の応急処置に使用できる。さらに、毒性ショックをもたらす細胞免疫応答を誘導する毒素の能力を遮断することで、このアンタゴニストペプチドはまた、超抗原にそれ自体に対して向けられた強い体液性免疫応答を誘導させ、従って、これらのペプチドはこのような毒性ショックに対する長期免疫を間接的に付与することもできる。
【0195】
ヒトでは例えば、発熱性外毒素暴露による毒性ショックは、2つの異なる成分、ずなわち、(1)無能化および(2)死を有する。致死濃度より数ログ低い濃度であっても、発熱性外毒素は著しく無能化を引き起こし、高い罹患率を生じる[USAMRIID Manual, (1998) Eitzen, E. Pavlin, J. Cieslak, T. Christopher, G. Culpepper, R. eds. Medical Management of Biological Casualties Handbook. 3rd ed. Fort Detrick, Maryland: United States Army Medical Research Institute of Infectious Diseases, 1998]。例えば食中毒(集団食中毒であり得る)において見られる無能化応答は多数の人々に影響を及ぼす。さらに、この無能化応答は軍事的脅威および国家保安的驚異であり得る。
【0196】
一実施形態によれば、本発明の方法は、病原体に由来する成分とT細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位との間の直接的相互作用を阻害する物質として、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するペプチド、あるいはまた、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するペプチドを用いる。
【0197】
特に好ましい実施形態によれば、発熱性外毒素などの病原体とCD28ファミリーメンバーとの相互作用の阻害は、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するペプチドによって実施可能である。
【0198】
より詳しくは、このようなペプチドは、本発明で定義されたペプチドのいずれであってもよい。
【0199】
よって、このような物質の1つの特定の例が本発明のさらなる態様により提供され、それは、T細胞共刺激経路メンバー、好ましくはCD28/B7経路分子の二量体界面に由来するアミノ酸配列を有する単離および精製されたペプチドに関する。
【0200】
もう1つの実施形態によれば、病原体の成分とT細胞共刺激経路メンバーとの間の直接的相互作用の阻害は、本発明の方法により、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するペプチドを用いることで実施可能である。具体的には、このようなペプチドは、本発明で定義されたペプチドのいずれであってもよい。
【0201】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の方法によって用いられるペプチドは、CD28分子と発熱性外毒素との間の直接的相互作用を阻害する。
【0202】
もう1つの好ましい実施形態では、本発明の方法により用いられるペプチドは、毒素により媒介されるTリンパ球の活性化のアンタゴニストであり、発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックから保護する。
【0203】
種々の投与方法は、本発明のペプチドまたは組成物を、それを必要とする被験体に送達するために使用できる。ペプチドは静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、腹腔内(i.p.)注射、経口(液体状、またはカプセル剤、丸剤、トローチ剤のような単位投与形として調製)で送達することができる。治療上有効とするには、ペプチドは、注射後、またはいっそうより好ましくは経口投与後に全身系でそれらの安定性を高めるように調製しなければならない。あるいは、本発明のペプチドはパッチ、軟膏またはクリームを用いた経皮送達によって送達してもよい。
【0204】
本発明の医薬組成物は、局所的処置が望ましいか全身処置が望ましいかにより、また処置する領域によりいくつかの方法で投与することができる。投与は局所投与(眼球送達、ならびに膣および直腸送達をはじめとする粘膜送達)、例えば、ネブライザーによるものを含む、粉末またはエアゾールの吸入または通気による肺投与、気管内投与、鼻腔内投与、上皮および経皮投与、経口または非経口投与であってよい。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射もしくは注入、あるいは頭蓋内、例えば髄腔内または脳室内投与が挙げられる。
【0205】
局所投与用の医薬組成物および処方物としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴剤、坐剤、スプレー、液体および粉末が挙げられる。通常の医薬担体、水性、粉末、または油性基剤、増粘剤などが必要である、または望ましい場合もある。が挙げられる。コーティングコンドーム、グローブなども有用である。
【0206】
経口投与用の組成物および処方物としては、粉末または顆粒、水性または非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル剤、サシェ剤、または錠剤が挙げられる。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましい場合もある。
【0207】
非経口、髄腔内、または脳室内投与用の組成物および処方物としては、緩衝剤、希釈剤、および限定されるものではないが、浸透促進剤などの他の好適な添加剤、担体化合物およびその他の医薬上許容される担体または賦形剤を含んでもよい無菌水溶液が挙げられる。
【0208】
本発明の医薬組成物としては、限定されるものではないが、溶液、エマルション、およびリポソーム含有処方物が挙げられる。これらの組成物は、限定されるものではないが、調製済み液体、自己乳化固体および自己乳化半固体をはじめとする種々の成分から作製できる。
【0209】
単位投与形で便宜に提供可能な本発明の医薬製剤は、製薬業で周知の常法に従って調製できる。このような技術としては、有効成分と医薬担体または賦形剤とを会合させる工程を含む。一般に、これらの処方物は、有効成分と液体担体または微粉固形担体またはその両者を均一かつ緊密に会合させた後、必要であればその生成物を成形することによって製造される。
【0210】
本発明の組成物は、限定されるものではないが、錠剤、カプセル剤、液体シロップ、ソフトゲル、坐剤、および浣腸などの多くの可能な投与形のいずれに処方してもよい。本発明の組成物はまた、水性、非水性または混合媒体中の懸濁液として処方してもよい。水性懸濁液は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランをはじめ、懸濁液の粘度を高める物質をさらに含んでもよい。懸濁液はまた、安定剤を含んでもよい。
【0211】
本発明の一実施形態では、これらの医薬組成物はフォームとして処方および使用してもよい。医薬フォームとしては、限定されるものではないが、エマルション、マイクロエマルション、クリーム、ゼリーおよびリポソームなどの処方物が挙げられる。これらの処方物は、本来、基本的に同じであっても、最終生成物の成分およびコンシステンシーが異なる。このような組成物および処方物の調製は一般に医薬分野および処方分野の熟練者に公知であり、本発明の組成物の処方に適用することができる。
【0212】
本発明により記載され、また、発明者らが最近示したように[WO03/084995]、超抗原の細胞内標的はCD28である。
【0213】
図4にて示されるように、本発明はさらに、CD28ファミリーの3つのメンバー総てがsAgと結合することを示す。この知見は、死および有毒な無能化(悪心、嘔吐および下痢によって現れる)など、超抗原により媒介される細胞免疫応答(特に、Th1応答)の過剰刺激の毒性ショックまたはその他の結果を阻害するアンタゴニストのをデザインするための細胞薬物標的を提供する。最も重要には、本発明は今や、本明細書で例示されているようなアンタゴニストペプチドによるものであれ、分子または酵素またはタンパク質によるものであれ、超抗原とCD28受容体との間の相互作用の新規なアンタゴニストのデザインが可能である。本発明は、アンタゴニスト分子の結合のためのおとりとしてのCD28、CTLA−4およびICOS分子内の二量体界面に由来する本発明のペプチドの使用によって毒性ショックアンタゴニストの発見のための新たな戦略を提供する。これは、例えばランダムまたは特定ペプチドライブラリー由来のファージディスプレー、ペプチドライブラリーまたは環状ペプチドミメティクスライブラリーからのポジショナルスキャニングを通じて選択可能である。
【0214】
よって、さらなる態様において、本発明は、T細胞共刺激経路メンバー、例えば、CD28、ICOS、PD−1およびCTLA−4分子のいずれかと特異的に結合し、かつ、発熱性外毒素により媒介されるTh1リンパ球の活性化と拮抗し得る試験物質のスクリーニング方法に関する。さらに、該試験物質は、発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対する防御免疫を特異的かつ間接的に惹起し得る可能性がある。本発明のスクリーニング方法は、(a)T細胞共刺激経路メンバーと結合する候補アンタゴニスト物質を得る工程;(b)工程(a)で得られた物質から、そのT細胞共刺激経路メンバーと超抗原との間の直接的相互作用を阻害する物質を選択する工程;および(c)超抗原により媒介されるTh1リンパ球の活性化に対する、工程(b)で得られた物質の拮抗作用を判定する工程を含む。
【0215】
ポジショナルスキャニングおよび環化化学によって作製されたアンタゴニストペプチドの高親和性結合のハイスループットスクリーニングの適用の鍵は高感度で便宜なスクリーニングアッセイの開発である。
【0216】
超抗原により認識されるドメイン中のCD28、CTLA−4、ICOSおよびPD−1のいずれかに対するそれらの親和性を介するアンタゴニスト物質の確固としたスクリーニングアッセイの開発がこのスクリーニング方法の第一工程となる。
【0217】
好ましい実施形態では、本発明のスクリーニング方法によって用いられる候補アンタゴニスト物質は、
(a)本発明で定義された単離ペプチドのいずれかを含んでなる混合物を準備する工程;(b)その混合物を結合にとって好適な条件下で試験物質と接触させる工程;および(c)終点指標に対する試験物質の作用を決定し、それにより、その終点の変更がその試験物質とペプチドの結合の指標となる工程により得ることができる。
【0218】
もう1つの実施形態によれば、本発明の方法によりスクリーニングされる候補物質は タンパク質に基づく、炭水化物に基づく、脂質に基づく、天然有機物に基づく、合成起源の有機物に基づく、無機物に基づく、およびペプチドミメティクスに基づく物質からなる群から選択される。
【0219】
もう1つの実施形態では、この物質は、ペプチドのコンビナトリアルライブラリー、環状ペプチドミメティクスのライブラリー、およびランダムまたは特定ファージディスプレーライブラリーのポジショナルスキャニングのいずれかの産物であり得る。
【0220】
もう1つの特に好ましい実施形態によれば、この候補アンタゴニスト物質は、毒素により媒介されるTh1リンパ球の活性化に拮抗するその物質の能力、および所望により発熱性外毒素またはそのような発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対する防御免疫を惹起するその能力を判定する方法により評価することができる。
【0221】
特定の実施形態によれば、この終点指標は、視覚的に検出可能なシグナルをもたらす、抗ペプチド抗体と本発明のペプチドとの結合である。この抗体とペプチドとの結合の変更はこのようなシグナルの阻害または増強をもたらし、試験物質が本発明のペプチドと結合することを示し得る。
【0222】
より詳しくは、各候補物質、または好ましくはペプチドをウェル中に置いてもよく、本発明のペプチドの直接的結合をそのペプチドに特異的な抗体によって検出するのが好ましい。プレート上での本発明のペプチドと候補アンタゴニストペプチドとの効率的な結合のための条件はpH、塩およびバッファーの組成、ならびにBSAなどの担体タンパク質の検討を含んで至適化できる。この確固としたスクリーニングにより、CTLA−4、ICOS、CD28およびPD−1のいずれかの二量体界面内の超抗原結合部位と結合する物質、好ましくはペプチドが得られる。
【0223】
本発明のペプチドと結合する物質(特にペプチド)をプールし、その後、下記のようにアッセイする。
【0224】
好ましい一実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法によって用いられるペプチドは、配列番号7で示されるアミノ酸配列を有するp1TAと呼ばれるペプチドである場合、検出に用いるべき抗体は、R & D Systems, Inc., Minneapolis, Minnesota, USAのクローン37407.111である、MAB342と呼ばれるマウス抗CD28モノクローナル 抗体であり得る。
【0225】
あるいは、本スクリーニング方法に用いられるペプチドが、配列番号12、14、15、16、17、57および58で示されるアミノ酸配列を有するp2TA、p1TB、p2TB、p1TC、p2TC、p1TDおよびp2TDである場合、特異的抗体、好ましくはモノクローナル抗体を検出に用いるべきである。
【0226】
本発明のスクリーニング方法のこの第一工程に用いられる抗ペプチド抗体はポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれかであり得る。タンパク質に対するポリクローナル抗体の作製は、例えば、Immunology, Wiley and Sons Inc.のCurrent Protocolsの第2章に記載されている。
【0227】
モノクローナル抗体は、免疫化動物、特にラットまたはマウスの脾臓またはリンパ節から採取したB細胞から、ハイブリッド細胞の増殖に好ましい条件下で不死化B細胞と融合させることで作製することができる。モノクローナル抗体を作製する技術は、上記ImmunologyのCurrent Protocolsの第2章など、多くの文献およびテキストに記載されている。
【0228】
「抗体」とは、完全な分子、ならびに抗原と結合可能な、例えば、FabおよびF(ab’)などのそのフラグメントを含むものとする[Wahl et al., J. Nucl. Med. 24:316-325 (1983)]。
【0229】
本発明において有用な抗体のFabおよびF(ab’)およびその他のフラグメントは、本明細書において完全抗体分子に関して開示された方法に従い、結合したCD28、CTLA−4、ICOSおよびPD−1分子の検出および定量に使用できることが分かるであろう。このようなフラグメントは通常、パパイン(Fabフラグメント作製のため)またはペプシン(F(ab’)フラグメントの作製のため)を用い、タンパク質分解切断により作製される。
【0230】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法によるスクリーニングに好適な候補物質は、タンパク質に基づく、炭水化物に基づく、脂質に基づく、天然有機物に基づく、合成起源の有機物に基づく、無機物に基づく、およびペプチドミメティクスに基づく物質からなる群から選択される。
【0231】
好ましくは、このような物質は、ペプチドのコンビナトリアルライブラリー、環状ペプチドミメティクスのライブラリー、およびランダムまたは特定ファージディスプレーライブラリーのポジショナルスキャニングのいずれかの産物であり得る。
【0232】
特に好ましい実施形態では、本発明のスクリーニング方法によって取得および選択される候補アンタゴニスト物質はペプチドであり得る。よって、コンビナトリアルファージライブラリーを用いてCD28、CTLA−4、ICOSおよびPD−1受容体のいずれかに対してナノモルの親和性を有する超抗原アンタゴニストペプチドをスクリーニングすることができる。特定の、非限定的な例において、England BiolabsのPhD−12ライブラリーが使用できる。
【0233】
パンニングは二工程で行ってもよく、第一工程では、マイクロプレートに結合させた本発明のp1TA、p2TA、p1TB、p2TB、p1TC、p2TC、p1TDおよびp2TDから、pH2.2での溶出を用いて結合したファージを溶出させる。
【0234】
これによりCD28の超抗原結合部位と結合する総てのファージが選択される。第二の工程では、上記のように選択されたファージをp1TA、p2TA、p1TB、p2TB、p1TC、p2TC、p1TDおよびp2TDに、またはsCD28、sICOS、sCTLA−4およびsPD−1に結合させ、過剰量の遊離SEBを用いて特異的に溶出させる。結合したファージを溶出させ、さらに2〜3回のパンニングを行う。次に、固定化したp1TA、p2TA、p1TB、p2TB、p1TC、p2TC、p1TD、p2TD、sCD28、sICOS、sCTLA−4、sPD−1に対する、または超抗原結合部位を含むそのフラグメントに対するファージの直接的結合はファージELISAにより検出し、プレート上のM13に関してスコアリングすることができる。陽性ファージクローンを増幅し、配列決定した後、直鎖型のペプチドを合成する。
【0235】
好ましくは上記のようにして得られた、本発明のペプチドと結合する、従って、CD28内の超抗原結合部位に結合する候補アンタゴニスト物質は、CD28、ICOS、CTLA−4、PD−1分子のいずれかと超抗原との間の相互作用を妨げるそれらの能力に関してさらに選択してもよい。
【0236】
超抗原とCD28、ICOS、CTLA−4、PD−1分子のいずれかとの間の相互作用を阻害する候補物質の能力を調べる1つの可能性のあるアプローチとして、ビオチニル化SEB(Toxin Technologies)を用い、プレート上のCD28、sICOS、sCTLA−4またはsPD−1との結合から標識SEBを解離させるペプチドの能力をアッセイするものがある。
【0237】
本発明のスクリーニング方法により取得および選択された候補アンタゴニストペプチドを、ポジショナルスキャニングによりさらに分析およbぎ改良してもよい。
【0238】
ペプスキャンポジショナルスキャンでは、開始時の親和性は10−3Mといった低いものであってよく、ペプチド長は15残基が容易である。リードペプチドは、所定のタンパク質配列に由来するランダムコンビナトリアルライブラリーまたはペプチドライブラリーをはじめ、いずれのタイプのペプチドライブラリーに由来するものであってもよい。信頼できるシグナル/ノイズ比により、特異的な低親和性相互作用が検出できる。それは固相支持体上で使用することもでき[Schroeijers et al., Cancer Res. 60:1104-1110 (2000)]、またはそれらのペプチドを支持体から切り離した後に可溶形態で用いることもできる[Kast et al., Cell 59:603-614 (1989); Kast et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 88:2283-2287 (1991); De Samblanx et al., Pept. Res. 9:262-268 (1996); Oosterom et al., J. Biol. Chem. 274:16853-16860 (1999)]。拘束あるポジショナルスキャニングでは、総ての候補ペプチドが非還元可能ループとして合成され、それを用いてリードペプチドの親和性がさらに改良される。従って、ペプチドを固相支持体に結合させるか(ペプスキャン−I)、または遊離の可溶性ペプチドとしてアッセイし(ペプスキャン−II)、リードペプチドの親和性を至適化する。
【0239】
候補アンタゴニストペプチドに対してアラニンスキャンを行って、受容体との結合にとって、またそれとは別にin vitroにおける超抗原アンタゴニスト活性にとって重要な残基を同定してもよい。in vitroアンタゴニスト活性は、下記の本発明のスクリーニング方法の評価工程に従って評価することができる。ペプチドはN末端アセチルおよびC末端CONHを用いて可溶形態で合成し、評価工程としてのPBMCを用いたin vitroアッセイにおいてのより高いプロテアーゼ耐性のためにフランキングD−アラニンを保持している。同定されたリードペプチドに対してさらに何回かのアラニンスキャンを行ってもよい。超抗原アンタゴニストドメインにおいてリシンも優勢であるので、同様にペプチドのリシンスキャンを行ってもよい。
【0240】
アラニンスキャンによってアンタゴニスト活性に重要な残基が同定されれば、そのような2点を20総てのアミノ酸の完全入れ替えペプスキャン(400ペプチド)のために選択し、その後、さらに2点を同様にスキャンする(400ペプチド)。ペプチドは最初は遊離可能な形態であるが、チップに固定する。sCD28、sICOS、sCTLA−4またはsPD−1のいずれかと各ペプチドとの結合をこの受容体に対する市販のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いたELISAによりスコアリングする。次に、陽性ペプチドを遊離させ、スクリーニングアッセイELISA形式(上記参照)における受容体の結合アッセイのため、また、PBMCアッセイ(下記に詳説)におけるin vitroアンタゴニスト活性のための群にプールした後、これらの群をデコンヴォルーションする。段階的に、得られた改良型リードに対してさらなるポジショナルスキャニングを行う。全部で4回のポジショナルスキャニングを行い、その受容体に対して最大の親和性を有するペプチドに対してさらなる拘束のあるポジショナルスキャニングを行う。
【0241】
環化スキャンでは、m−マレイミド安息香酸N−ヒドロキシ−スクシンイミド(MBS)エステルなどのリンカーを用い、その活性エステルを介して所定のペプチドのN末端と、およびそのマレイミド基を介してシステイン由来の遊離チオール基と反応させることができる。このシステインはこのペプチドの一部である。
【0242】
ループスキャンでは、各ペプチドのN末端を、MBSを用い、同じウェルの底に個別に結合させたシステイン由来の遊離のSH基と連結させればよい。このように、拘束されたループが形成される。
【0243】
環状ペプチドミメティクスを個々に合成し、PBMCでアンタゴニスト活性を評価する。
【0244】
実施例8で示された本発明のスクリーニング方法により選択および同定された候補アンタゴニストは、CD28、ICOS、CTLA−4またはPD−1のいずれか内の超抗原結合部位と結合する物質であり、毒素により媒介されるTh1リンパ球の活性化と拮抗するその能力、および所望により発熱性外毒素またはこのような発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショック対する防御免疫を惹起するその能力をさらに評価しなければならないことに着目すべきである。
【0245】
本発明のスクリーニング方法により単離された候補アンタゴニストを評価するために用いる試験系は、in vitro/ex vivo細胞培養、またはin vivo動物モデルであってよい。このような試験系は所望によりさらに、超抗原により誘導されるT細胞の活性化のため、また、候補アンタゴニストの拮抗作用を決定するため終点指標の検出のために好適な条件を提供する内因性および/または外因性の化合物を含んでなる。より具体的には、このT細胞はTh1リンパ球であり、この活性化はIL2および/またはIFN−γ遺伝子発現の誘導により決定される。
【0246】
一実施形態によれば、評価のために本発明のスクリーニング方法により用いられる試験系は、内因的に発現されるCD28、ICOS、CTLA−4またはPD−1分子を含んでなるin vitro/ex vivo細胞培養物であり得る。特定の例では、試験系として用いられる細胞培養物は哺乳類ドナーから単離されたPBMC培養物であってもよい。このような哺乳類は好ましくはヒトまたはアカゲザルのいずれかであり得る。
【0247】
従って、この特定の試験系における終点指標は、視覚的に検出可能なシグナルをもたらす、超抗原により誘導されるIL2および/またはIFN−γの発現であってもよい。よって、この終点の阻害または低下でさえも、超抗原とCD28分子との相互作用に特異的に拮抗および阻害する候補物質の能力の指標となる。このような阻害は毒素により媒介されるTh1リンパ球の活性化の拮抗をもたらす。超抗原により誘導されるIL2および/またはIFN−γの発現は、例えば、定量的ドットブロットハイブリダイゼーションおよびRNアーゼ保護アッセイによって検出することができる。
【0248】
以下の実施例により示すように、本発明者らは、細胞免疫応答に関与する総ての細胞サブセットを含む新たに単離された完全ヒトPBMC標本における超抗原により誘導されるTh1サイトカインmRNAの発現を阻害するアンタゴニストペプチドの能力に基づき、超抗原アンタゴニスト活性に関する有力なin vitroスクリーニング手段を開発した[Arad et al., (2000)同書]。本発明者らは、この系が、応答の調節不全を検出した種々の疾病におけるヒト免疫応答を密接に反映しており[Gerez et al., Clin. Immunol. Immunopathol. 58:152-266 (1991); Gerez et al., Kidney International 40:266-272 (1991); Gerez et al., Clin. Exp. Immunol. 109:296-303 (1997); Kaempfer et al., J. Clin. Oncol. 14:1778-1786 (1996)]、従って、優れたサロゲートマーカーとなることを示した。このPBMCアッセイは、本発明者らにより、アンタゴニストペプチドp12およびp14の発見において[Arad et al., (2000), (2001)同書]、また、毒素アゴニスト活性の欠如を示すために効率的であることが分かった[Arad et al., (2000)同書]。従って、この系は、本発明のスクリーニング方法によって得られた候補アンタゴニスト物質のアンタゴニスト活性を評価するために効果的に用いることができる。
【0249】
本発明者らは、少数の細胞において存在度の低いmRNA種を定量する、ヒトPBMCにおいて誘導されるIL2およびIFN−γ mRNAの発現を測定するための高感度定量法を考案した。この方法により、多数のサンプルの便宜な処理が見込め、それ自体、有効な毒素アンタゴニストをスクリーニングするのに好適である。さらに、これにより、何人かの異なるヒトドナーからのPBMCの応答を、多数のパラメータに関して一度に検討することが可能となる。これにより、再現性のある様式でアンタゴニスト活性を示すのに効果的な手段が作り出せる。IL2およびIFN−γタンパク質の測定はmRNAの測定より情報量が少ないが、これは、これらのタンパク質は誘導中に徐々にしか現れず、それらの細胞受容体に結合することによって隔離されるが、mRNAは即座に発現し、性格にアッセイできるためである。IL2およびIFN−γ mRNAを測定すれば、免疫刺激後数時間内でこれらの遺伝子の主要な応答に対する動的情報が得られる。これらのアッセイは広い範囲で直線的である。このような分析から得られた情報はRNアーゼ保護分析により確認される。
【0250】
所望のアンタゴニストペプチドの必須の特性は、Th2応答を完全なまま残すことである。これはまたバックアップのための必要条件でもあり、毒素により誘導されるTh1サイトカインmRNAの発現がアンタゴニストペプチドにより阻害されるPBMCからの培養培地を用い、IL10に関するELISAによって試験することができる。
【0251】
さらにもう1つの選択肢では、候補アンタゴニストを評価するために本発明のスクリーニング方法により用いられる試験系はin vivo系、特に動物モデルであり得る。
【0252】
1つの特定の実施形態によれば、この動物モデルは、超抗原、好ましくは発熱性外毒素で抗原刺激したガラクトサミン感作マウスであり得る。このような試験系の終点指標は致死的毒性ショックからのマウスの保護および救済であり得る。該終点の増強は、超抗原とCD28分子との間の相互作用と特異的に拮抗および阻害する、発熱性毒素により媒介されるTh1リンパ球の活性化と拮抗する、毒性ショックから保護する候補物質の能力の指標となるか、また、発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対する防御免疫を間接的に惹起する該候補の能力を示し得る。
【0253】
もう1つの動物モデルとして、発熱性外毒素で抗原刺激したブタが挙げられる。このようなモデルでは、終点指標は毒性ショックおよび無能化から該ブタを保護および救済し得る。このような終点の増強は、超抗原とCD28分子との間の相互作用と特異的に拮抗および阻害する、発熱性毒素により媒介されるTh1リンパ球の活性化と拮抗する、毒性ショックおよび無能化から保護する、および所望により発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対する防御免疫を惹起する該候補の能力の指標となる。
【0254】
本発明はさらに、哺乳類被験体における超抗原関連疾患の処置のための治療組成物を製造する方法を提供する。この方法は、
(a)超抗原により媒介されるTh1リンパ球の活性化に拮抗することができ、かつ、好ましくはさらに発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対する防御免疫を惹起することができるアンタゴニスト物質を同定する工程;および
(b)そのアンタゴニスト物質を少なくとも1種の医薬上許容される担体、希釈剤、賦形剤および/または添加剤と混合する工程
を含む。
【0255】
治療組成物を製造する方法によって用いられるアンタゴニスト物質は、好ましくは、実施例8によって例示されるような本発明のスクリーニング方法によって同定することができる。
【0256】
開示および記載されている本発明は、本明細書に開示されている特定の例、方法工程、および組成に限定されるものではなく、このような方法工程および組成はある程度可変であると理解すべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ限定されるので、本明細書で用いられる用語は、単に特定の実施形態を記載する目的で用いるものであって、限定を意図したものではないと理解すべきである。
【0257】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる単数形「a」、「an」および「the」は、そでないことが明示されない限り、複数の表現を含むことに注意しなければならない。
【0258】
本明細書、ならびに以下に実施例および特許請求の範囲を通じ、特に断りのない限り、「comprise」、ならびに「comprises」および「complising」などの活用形は、示されている整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群の包含するが、他のいずれかの工程、または整数群もしくは工程群は包含しないことを意味すると理解される。
【0259】
以下の実施例は本発明の態様を実施するにあたって本発明者らが採用した技術の代表例である。これらの技術は本発明の実施に好ましい実施形態の例であるが、当業者ならば、本開示に照らして、本発明の精神および意図される範囲を逸脱することなく、多くの改変をなし得ることが分かるものと思われる。
【実施例】
【0260】
実験手順
ペプチド
ペプチドはフルオロニル−メトキシカルボニル化学を用いて合成し、切断し、その側鎖をトリフルオロ酢酸で脱保護した。ペプチドは高速液体クロマトグラフィーによれば、純度>95%であり、それらの分子量をMALDI−TOF質量分析により確認した。p12CCを除く総てのペプチドに、プロテアーゼ耐性をより高くするため、D−Ala残基を隣接させた。真性乱数発生器(http://www.random.org/)を用いてスクランブル配列を得た。
【0261】
可溶性CD28、CTLA4、ICOSおよびB7−2
マウス骨髄腫NS0細胞で発現させたsCD28、sICOSおよびsB7−2(R & D Systems)は、C末端Hisタグ付きヒトIgG 1Fcと融合させた成熟ヒトリガンドのそれぞれ19〜152、21〜141および20〜239アミノ酸細胞外ドメインを含んでなるキメラジスルフィド結合ホモ二量体である。バキュロウイルスを用いてSf21細胞で発現させた担体フリーsCTLA4(R & D Systems)は、同様にヒトIgG 1Fcと融合させた成熟ヒトCTLA4の細胞外37〜162アミノ酸ドメインを含んでなるキメラジスルフィド結合ホモ二量体である。
【0262】
細胞培養およびサイトカイン遺伝子発現の誘導
健康なヒトドナー由来のPBMCをFicoll Paque(Pharmacia)上で分離し、50mlのRPMI1640培地で2回洗浄し、4×10細胞/mlの密度で再懸濁させ、2%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、10mM MEM非特定アミノ酸、100mMピルビンサンナトリウム、10mM Hepes pH7.2、5×10−5M2−メルカプトエタノール、100u/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび5μg/mlナイスタチンを添加したこの培地で培養した。SEB(Department of toxinology, U. S. Army Medical Research Institute of Infectious Diseases)およびTSST−1(Sigma)を100ng/mlまで加えた。
【0263】
mRNA分析
RNアーゼ保護分析(Arad et al., 2000)、全RNAをトリゾール試薬(Invitrogen)を用い、3×10ヒトPBMCアリコートから抽出し、pBS(Promega)に挿入したDNAからin vitroにおいてα−[32P]UTPを用いて転写したゲノムアンチセンスRNAプローブと、42℃で18時間ハイブリダイズさせた。T7プロモーターから転写した600−nt
【0264】
IL2プローブはIL2エキソン3およびイントロン3の一部と相補的であり、8M尿素−ポリアクリルアミドゲルにおいて、IL2 mRNAで保護された117ntのRNAが得られる。T3プロモーターから転写した274−nt IFN−γプローブはIFN−γエキソン3およびイントロン3の一部と相補的であり、IFN−γ mRNAで保護された183ntのRNAが得られる。18S rRNAおよびβ−アクチン mRNAに対するアンチセンスRNAプローブはそれぞれ90および415ntを保護する。IL2およびIFN−γ mRNAの定量的ドットブロットハイブリダイゼーションのため、4×10PBMCのアリコートを7.5Mグアニジウム−HCl中で溶解した。10×クエン酸ナトリウム溶液中、全RNAの4シリーズ二倍希釈液を、96穴ドットブロット器具中のニトロセルロースシートに適用した。各シートを32P標識アンチセンスRNAプローブとハイブリダイズさせた。ELISAリーダーにて、630nmでオートラジオグラムをスキャンした。一連の希釈液は広範囲にわたって直線的A630応答を示した[Arad (2000)同書]。
表面プラズモン共鳴分光法(SPR)
【0265】
SEB、sCD28およびp12CCを、10mM酢酸ナトリウムpH4.0中、100μg/mlまで希釈し、製造業者のキット(BIAcore)を用いたアミン−チオール結合によりCM5センサーチップ(BIAcore)上に固定化した。可溶性CD28、CTLA4、ICOS、B7−2またはヒトIgG(Jackson Laboratories)を、物質輸送制限を示さない条件下、25mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3.4mM EDTA、および0.005%界面活性剤P20中、10μl/分で注入した。親和性および動態分析は、BIAevaluation3.0ソフトを用い、BIAcore 3000装置にて25℃で行った。
【0266】
ファージディスプレー
エピトープマッピングのため、M13KE(New England Biolabs)中のPhD−12コンビナトリアルファージディスプレーライブラリーを、製造業者の説明書に従い、固定化αCD28 mAb(MAB342、クローン37407.111、R & D Systems)にてパンニングしたところ、sCD28との置換であった。4回目のパンニングからのファージをECL−plusメンブラン(Pharmacia)に固定化し、αCD28の結合をセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗マウスIgG(Jackson Laboratories)で検出した。19の異なるインサートの配列をギャップなしでCD28とともにアラインした。CD28親和性セクションについては、同じライブラリーを固定化sCD28上でパンニングしたところ、SEBとの置換であった。
【0267】
マウス致死率アッセイ
雌BALB/cマウス(10〜12終; Harlan)を、SEB(Sigma)および20mgD−ガラクトサミン(Sigma)の腹腔内注射によって抗原刺激した。存在すれば、抗原刺激の30分後にアンタゴニストペプチドを腹膜内注射した。生存率をモニタリングした。生存力は2週間といった長い間、72時間超で一定であった。マウスに関する実験は所内動物実験委員会により認可されたものである。
【0268】
実施例1
SEBによるTh1サイトカインmRNAの誘導はTh2サイトカインの同時誘導により弱められる
超抗原により媒介される致死的毒性ショックが超抗原ミメティックペプチドにより妨げられる場合、マウスはさらなる毒素刺激に対する免疫を迅速に獲得し、広範囲の保護的Abを生成した[Arad (2000)同書]。本発明者らは、このアンタゴニストペプチドが致死的ショックをもたらすTh1応答の誘導を遮断する時、それはTh2応答を完全なままとし、防御免疫の形成を可能とするものと推察した。実際、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)(図1D)において、SEBにより、IL4およびIL10はIL2およびIFN−γ mRNAの発現を強力に阻害するレベルまで、著しく阻害された。IL4またはIL10に対する中和Abが存在する場合、4〜6時間内に、誘導されたIL2 mRNAの増幅率が上昇したが、イソ型適用対照IgGには効果はなかった(図1A)。IFN−γ遺伝子はIL4またはIL10の枯渇に対して、誘導mRNA波の振幅および期間の増強ならびに早期発現を伴って、はるかに高く応答した(図1Bおよび1C)。このように、SEBなどの超抗原は過剰なTh1サイトカイン遺伝子発現を誘導するが、それはIL4およびIL10の同時誘導によって弱められるので、依然としてその全能力より低いままである。これらのTh2サイトカインの早期発現は、超抗原に対する一次応答の必須部分をなす。
【0269】
実施例2
超抗原ミメティックペプチドによるTh1応答の選択的阻害
ヒトPBMCにおけるTh1サイトカイン遺伝子の誘導は、SEB150〜161(TNKKKVTAQELD;「アンタゴニストドメイン」、配列番号2としても示される)に一部相同な超抗原ミメティックペプチドYNKKKATVQELD(p12A、配列番号1としても示される)によって遮断可能である[Arad (2000)同書]。本発明者らは関連ペプチドVQYNKKKATVQELD(p12B、配列番号3としても示される)を合成し、このVQはSEB148〜149と相同である。p12Bは、超抗原によるヒトTh1サイトカイン遺伝子の誘導を阻害し、SEBによる致死的抗原刺激からマウスを保護するその能力において、p12Aから区別できる[PCT IL03/00278]。p12BはSEBにより媒介されるIL2およびIFN−γ mRNAの誘導を遮断したが、IL4およびIL10の誘導は阻害しなかった(図ID)。この結果は再現性があり、SEBにより誘導されるTh1およびTh2応答の間の均衡がこのアンタゴニストペプチドによって調節されることを示している。
【0270】
SEBの、TCRおよびMHCクラスII分子との相互作用はアンタゴニストドメインを接近可能なままとする(図1E)。p12B(配列番号3)のTh1選択性を説明するため、本発明者らは、超抗原による、Th2細胞ではなくTh1細胞の活性化がさらなる受容体を必要とし、また、この受容体に対する超抗原の結合がこのアンタゴニストドメインを介して起こり、それをミメティックペプチドによる阻害に対して感受性とするという仮説を立てた(図1F)。
【0271】
実施例3
SEBによるTh1応答の誘導はB7−2に依存する
CD28欠損マウスを用いた研究では、CD28共刺激が超抗原の毒性に必要であることが示唆された[Saha, B. et al., J. Exp. Med. 183:2675-2680 (1996); Mittrucker, H. W. et al. J. Exp. Med. 183(6):2481-8 (1996)]。しかしながら、B7−1(CD80)、B7−2(CD86)またはその双方がコリガンドとして関与するかどうかは解明されていない[Muraille, E. et al., Immunology 89:245-249 (1996); Krummel, M. F. et al., Int. Immunol. 8(4):519-23 (1996)]。SEBによるIL2およびIFN−γ mRNAの誘導は抗B7−2によって遮断されたが、抗B7−1によっては遮断されなかった(図2Aおよび2B)。これに対し、IL10の同時誘導はいずれかのmAbに対して耐性があった(図2C)。これらの結果は再現性があり、通常抗原に関して[Carreno and Collins (2002)同書; Collins, A. V. et al., Immunity 17(2):201-10 (2002)に概説]、SEBによるTh1応答の誘導はB7−2/CD28を介したシグナル伝達に選択的に依存している。
【0272】
実施例4
可溶性CD28、CTLA4およびB7−2はSEBによるTh1応答の誘導を阻害する
Th1応答に対するp12B(配列番号3)の、また、抗B7−2の阻害効果の同様の選択性は、本発明者らに、SEBがそのアンタゴニストドメインを介してCD28またはB7−2と結びつく可能性を検討させるに至らせた。SEBによるIL2およびIFN−γ mRNAの誘導は、その152アミノ酸の細胞外ドメイン(sCD28)を含んでなる可溶型のヒトCD28により阻害された(図2D)。これに対し、同じ細胞培養物におけるSEBによるIL10の誘導は、本質的にsCD28によっては影響されなかった(図2E)。sCD28単独ではこれらの遺伝子を誘導しなかった。sCD28は用量依存的にIL2 mRNAの誘導を阻害した(図2F)。sCD28同様、sB7−2はSEBにより媒介されるIL2 mRNAの誘導を阻害した(図2Gおよび2H)が、IL10の誘導は阻害しなかった(図2I)。これらの結果は、SEBが共刺激リガンドとしてCD28およびB7−2を用いることを示唆し得るが、本発明者らは、Th1応答を惹起するために、SEBは一方または双方に直接結合し得るものと推測した。
【0273】
CTLA4およびCD28は構造的に相同で、同じB7コリガンドと相互作用して反対のシグナルを送達する[Collins (2002)同書; Sansom, D. M. et al., Trends Immunol. 24(6):314-9 (2003)に概説]。本発明者らは、SEBにより誘導されるIL2およびIFN−γ mRNAの発現に対するsCTLA4の作用を調べた。sCTLA4はこの発現を遮断した(図2J)が、sCD28とsB7−2については、IL10の誘導は完全なままであった(図2K)。sCTLA4はこれまでに示唆されているように[Zhou, T. et al., Eur. J. Immunol. 24(5):1019-25 (1994)]、B7−2をめぐって競合することでSEBの作用を阻害することができるが、本発明者らは、それがSEBと結合することで、細胞表面CD28および/またはB7−2を有する超抗原の相互作用を妨げるという可能性を考えた。
【0274】
実施例5
SEBはCD28の表面接近性に一時的変化を誘導する
本発明者らは、次に、CD28 mAb(αCD28)またはポリクローナルCD28 Ab(CD28 Ab)を用いて、SEBによる活性化の過程中のCD4富化ヒトPBMCを染色した。CD28に休止細胞および活性化細胞上のCD28 Abに接近可能であったが、SEBによる誘導後6時間まで一時的にだけαCD28に対して利用可能となった(図3A)。ゆえに、CD28は細胞表面上で構成的に発現されるが、それはSEBにより誘導されるエピトープ提示の一時的変化を受け、これはこれらのリガンドの間の機能的相互作用のさらなる証拠である。
【0275】
実施例6
超抗原ミメティックペプチドはCD28を介したシグナル伝達を遮断する
他のリガンドとは独立に、Th1サイトカイン遺伝子の活性化におけるCD28の役割を調べるため、本発明者らはαCD28単独でIL2およびIFN−γ mRNAを誘導した。この誘導は超抗原ミメティックペプチドp12B(配列番号3、図3B)によって遮断された。αCD28とαCD3の組合せは、いずれのmAb単独の場合よりも高い発現を惹起したが、この誘導はp12Bにより実質的に完全に消失された(図3C)。これに対し、αCD28/αCD3BによるIL10の誘導はp12Bに対して耐性を示した(図3D)。このように、超抗原の不在下では、このアンタゴニストペプチドはCD28により導入されたTh1応答に活性化を選択的に遮断した。予期されたようにαCD28はsCD28と結合したが、p12Bとは結合できず(図3E)、このことはこのペプチドがCD28をめぐってαCD28と競合することを示す。
【0276】
本発明者らは、次に、CD28を介したB7−2のシグナル伝達に対するp12Bの作用を調べた。sB7−2は早期に誘導され、IFN−γ mRNAの発現を維持したが、このp12Bにより阻害される誘導は20時間までだけであった(図3F)。超抗原ミメティックペプチドはαCD3による誘導を有意には阻害しなかったが、sB7−2とαCD3の組合せによる誘導を無効とし、これはいずれのリガンド単独の場合よりも大きかった。αCD28またはsB7−2はIL10を誘導することができず、αCD3によるIL10の誘導は、αCD28またはsB7−2によって増大せず、p12Bによって阻害もされなかった(図3Dおよび3G)。
【0277】
これらの機能的研究は、IL10の誘導はCD28には依存しないことを示す。これは、SEBにより媒介されるIL10の誘導が抗B7−2、sB7−2、sCD28およびsCTLA4に対して耐性であることの説明となる(図1Dおよび2)。CD28を介したシグナル伝達は超抗原に対するTh1応答に選択的に必要である。SEBの不在下であっても、この超抗原ミメティックペプチドはCD28により媒介されるTh1の活性化を遮断したという発見は、本発明者らを、超抗原がCD28との結合のために相同なアンタゴニストドメインを用いるのかどうかを検討するに至らせた。
【0278】
実施例7
SEBはそのアンタゴニストドメインを介してCD28、CTLA4およびICOSと結合する
表面プラズモン共鳴(SPR)平衡結合研究では、超抗原とTCRまたはMHCクラスII分子との相互作用は弱いもで、解離定数はマイクロモル範囲であることが示されている[Seth, A. et al., Nature 369: 324-327 (1994); Redpath, S. et al., J. Immunol 163:6-10 (1999)]。図4によって示されるように、SEBをBiacoreチップ上に固定化した場合、可溶性CD28、CTLA4またはICOSの直接的結合(K値はそれぞれ28、31および21nM)(図4A、4Bおよび4C)が検出されたが、免疫グロブリン超ファミリーであるヒトIgGの別のメンバーとの直接的結合は検出されなかった(示されていない)。このように、SEBは共刺激受容体CD28、CTLA4およびICOSのトリアッドの各メンバーと、TCRまたはMHCクラスII分子に対するものよりも十分に高い親和性で直接結合する。
【0279】
本発明者らは、次に、p12GCC(末端システインを隣接させたp12A)を固定化した。このペプチドは、ヒトPBMCにおいてSEBにより媒介されるIL2およびIFN−γ mRNAの誘導を遮断する際、p12と同等の活性であった(示されていない)。可溶性CD28、CTLA4およびICOSはp12CCと、それぞれ76、33および42nMのK値で直接結合した(図4D、4Eおよび4F)。p12B(配列番号3)を固定化した場合にも同様の結果が得られた(示されていない)。ヒトIgGに関しては結合は検出されなかった。p12ペプチドに対する親和性は完全なSEBに対する親和性とは有意に異なっていた、本発明者らは、SEBがCD28との結合のためにそのアンタゴニストドメインを用いる。このドメインの超抗原機能における重要な役割に一致して、αp12B Abは、頂抗原の致死性に関する確立されたモデルであるD−ガラクトサミン感作マウス[Arad (2000) 同書]においてSEBによる致死的抗原刺激に対して完全な保護を示した(図4G)。
【0280】
CD28コリガンドsB7−2はまたSEBとも、K値25nMで直接結合した(図4H)。この親和性はsCD28のSEBに対する親和性(図4A)およびsCD28のsB7−2に対する親和性(K値19nM;図41)と同等であったが、会合・解離率は大きく、結合力の低さを証明している。Collins et al., [Collins (2002)同書]は、sCD28のsB7−2に対するはるかに低い親和性を報告している(37℃でK値20μM)。もっともらしくは、この不一致は温度、sCD28の提示方法および用いる組換えsCD28調製物の活性によるものである。これに対し、αCD28は、2nMのK値で再現性よくsCD28と結合する。
【0281】
Th1サイトカイン遺伝子発現分析の結果(図1D、2および3)は、SEBがCD28と直接相互作用すること、およびこの結合が超抗原のアンタゴニストドメインを介して起こるという知見によって容易に合致される。
【0282】
実施例8
CD28に対する親和性によるSEBアンタゴニストペプチドの選択
超抗原とCD28の間の直接的相互作用に関する独立した証拠を得るため、本発明者らは、SEBを有する結合ファージを展示する、固定化sCD28上のランダムな12マーのファージディスプレーライブラリーを繰り返しパンニングした。選択したファージの10%を超えるものがsCD28と強固に結合し(図5A)、これらのファージから40を超えるペプチドを単離した(配列番号25〜56で示される)。4つのファージに由来するペプチドのアゴニスト活性を分析した。pe12(SHFTHNRHGHST、配列番号6でも示される)は、なお超抗原アゴニスト活性を欠いたSEBによるIL2およびIFN−γ mRNAの誘導を強く阻害し(図5B)、IL10の誘導を阻害することはできず(図5C);pd7(WHAHPHKKPWA、配列番号7でも示される)(図5E)およびpc3(FHKHKNPGSPII、配列番号8でも示される)も同様にTh1サイトカイン遺伝子の誘導を阻害したす(図5F)。これらのペプチドはin vivoでもSEBアンタゴニスト活性を示した。それぞれSEBの2倍および5倍モル過剰のみで、pe12およびpc3は、対照群では生存個体がなかった致死的抗原投与から8/10および7/10個体のマウスを保護した(図5D)。ペプチドpd7もまた、SEBによる致死的抗原刺激からマウスを保護した(図5G)。pe12、pc3およびpd7単独では検出可能な毒性はなかった(図5Dおよび5G)。
【0283】
このように、新規な超抗原アンタゴニストは、単にCD28におけるSEB結合部位に関するそれらの親和性によってランダムペプチド配列から選択することができる。
【0284】
実施例9
二量体界面に対する、CD28/CTLA4マップにおけるSEBの結合部位
超抗原ミメティックペプチドp12はCD28と結合する(図4D)ことから、p12B(配列番号3)がTh1サイトカイン遺伝子発現に関するαCD28によるシグナル伝達を遮断したという知見(図3Hおよび31)から、このペプチドがCD28中のそのエピトープをめぐってこのmAbと競合することが示唆された。エピトープマッピングにより、配列番号9でも示される配列CD28116〜124、HVKGKHLCPが定義されたが、ここでHVKGKH(配列番号10)はCTLA4中の二量体形成ドメインYVIDPE(配列番号18でも示される)[Schwartz (2001)同書](図6A)に相当する。それらは相同性が高く、同様に折りたたまれていると考えられるが[Luhder, F. et al., J. Exp. Med. 197(8):955-66 (2003)]、CD28およびCTLA4配列はこのドメインならびに残基10〜15が異なり、この折りたたまれたCTLA4タンパク質においては、これら2つのドメインは並置していて二量体界面を作り出している(図6A、赤と緑)。残基97〜105において保存されているB7結合ドメインはCTLA4の反対側に位置し(図6A、黄色)二量体界面を接近可能なものとしている。
【0285】
このCD28エピトープマッピングを確認するため、本発明者らはペプチドAHVKGKHLCP(pTA、配列番号11でも示される)を合成した。sCD28同様、pTAはその誘導が初期に生じるものであれ後期に生じるものであれ、αCD28によるPBMCにおけるIFN−γ mRNAの誘導を排除した(図6B)。このことから、このmAbが、最も可能性の高いところではCD28二量体界面の一部を含むCD28116〜124ドメインと結びつくという機能的証拠が得られる。
【0286】
実施例10
CD28における推定二量体界面のペプチドミメティックは超抗原によるTh1応答の誘導を遮断する
上記の結果は、Th1応答を惹起するには、SEBはHVKGKHLCPモチーフ(配列番号9)と重複する部位においてCD28と結合しなければならないということを意味する。sCD28(図2)同様、pTAはSEBによるIL2およびIFN−γ mRNAの誘導を用量依存的に(図6F)遮断した(図6C)[WO03/084995によって示されているように]。これに対し、それはIL10およびIL4の誘導は完全なままとしたが(図6Dおよび6E)、これは超抗原ミメティックペプチドp12BのTh1特異性を反映している(図1および3)。本発明者らは次に、CD28ミメティックペプチドHVKGKHLCP(p1TA、配列番号9でも示される)およびSPMLVAYD(p2TA;CD288−15、配列番号12でも示される)を合成した[本発明者らのこれまでの出願に示されている、16824wo、非公開]。単にエピトープマッピングに基づけば、p2TAはSEBアンタゴニストとして機能するとは予測されなかった。本発明者らは、Th1応答を誘導するためにこの超抗原がCD28に関して推定される二量体界面の両辺縁と接しなければならないとすれば、p2TAはアンタゴニストではないかと仮定した(図6A)。実際、p1TA(配列番号9)およびp2TA(配列番号12)は各々SEBにより誘導されるIL2およびIFN−γ mRNAの発現と拮抗した(図6G)。このp1TAとp2TAの組合せは有意にはより有効でなかった。無作為にスクランブルされた順序でp1TAのアミノ酸を含むp1TAはアンタゴニスト活性を欠いていた(図7A)。これらの結果から、CD28中の超抗原に対する機能的結合部位はp1TAとp2TAの配列からなえう混成物であるという有力な証拠が得られる。
【0287】
細菌超抗原ファミリー内で、毒性ショック症候群毒素−1(TSST−1)は他のメンバーと最も著しく異なっており、SEBとの全配列相同性は6%に過ぎない。TSST−1はそのアンタゴニストドメインFDKKQLAISTLD(配列番号13でも示される)は、他の超抗原よりもSEBドメインTNKKKVTAQELD(配列番号2でも示される)に対してはるかに低い配列相同性を示すが、このドメインはそれにもかかわらずやはり空間的保存を示す[Arad (2000)同書]。実際に、p1TAおよびp2TAはTSST−1によるIL2およびIFN−γ mRNAの誘導を阻害した(図6H)。従って、p12A同様、p1TAおよびp2TAは超抗原アンタゴニストとして広域活性を示す。最も可能性の高いところでは、それらは超抗原中のアンタゴニストドメインをめぐって細胞表面CD28と競合することで働く。
【0288】
実施例11
二量体界面由来のCD28ミメティックペプチドは致死的ショックからマウスを保護する
本発明者らは、p1TA(配列番号9)およびp2TA(配列番号12)がin vivoにおいてSEBアンタゴニスト活性を阻害するかどうかを調べるためにマウスモデルを用いた。総ての対照(10/10)がSEBにより死滅したが、SEBの少し前に一回量のp1TAを投与した7/10のマウスは生存した(図7B)。p1TAはSEBの3.6倍過剰で存在する場合に70%の保護を示した。これに対し、p1TAscは保護を付与することができなかった。SEBの12倍モル過剰で、p12Bもまた70%の保護を与えた。p2TAは致死的ショックからマウスを保護したが、p2TAscは保護しなかった(図7C)。一回量のp2TAも投与したマウスでは8/10が生存したのに対し、SEB単独で抗原刺激した対照では3/10しか生存しなかった。p2TAは、in vivoにおいてSEBに対して0.8倍モル比の場合のみアンタゴニストとして効果的であった。これらの結果は再現性があった。p1TAおよびp2TA単独では、それぞれ保護に必要であったものより25倍および125倍高い濃度であっても検出可能な毒性がなかった(図7Bおよび7C)。
【0289】
p1TAおよびp2TAの、毒素に対して極めて低モル過剰でSEBにより誘導される致死的ショックからマウスを保護する能力およびTh1サイトカインmRNAの誘導を遮断する能力(図6Gおよび6H)は、推定CD28二量体界面の2つの辺縁の各々が超抗原による有害なTh1応答の活性化において重要な役割を果たすということを示している。
【0290】
実施例12
CTLA4またはICOSの二量体界面のペプチドミメティックはSEBアンタゴニストである
SEBはCD28に結合するだけでなく、関連の受容体CTLA4およびICOSにも結合する(図4)。本発明者らは、二量体界面でCTLA4との相互作用も起こるかどうかを調べた。実際に、CTLA4二量体界面の2つの辺縁の各々に由来するペプチド、YVIDPEPCP(p1TB、配列番号14でも示される)およびPAVVLASS(p2TB、配列番号15でも示される)は、IL2およびIFN−γ遺伝子の誘導を阻害したが、なお、IL10の誘導を完全なままとする有力なSEEアンタゴニストであった(図7Dおよび7E)。p1TBおよびp2TBは、SEBに対して2倍モル過剰で存在する場合のみ、致死的抗原刺激からマウスを保護した(図7F)。
【0291】
共受容体トリアッドの第三のメンバーであるICOS[Hutloff, A. et al., Nature 397(6716):263-6 (1999); Coyle, A. J. et al., Immunity 13(1):95-105 (2000)]は異なるコリガンドICOSL[Sharpe and Freeman, (2002) 同書に概説]を用い、従って、CD28およびCTLA4とは異なる働きをするのが明らかである。図6Iに示されているように、本発明者らはヒトICOSとCD28をアラインし、2つのペプチド、YESQLCCQL(p1TC、配列番号16でも示される)およびGEINGSAN(p2TC、配列番号17でも示される)を合成し、これらがCTLA4/CD28の二連の二量体界面に相当するのではないかという仮説を立てた。実際に、p1TCおよびp2TCはSEBに対するTh1サイトカイン応答を阻害したが、IL10の誘導は阻害せず(図7Gおよび7H)、超抗原による致死的抗原刺激からマウスを保護した(図7I)。
【0292】
本発明者らは、SEBはCD28の(推定)二量体界面と直接結合するだけでなく、CTLA4およびICOSの二量体界面と直接結合する能力を有すると結論付けた。CD28/CTLA4/ICOSトリアッドの二量体界面に由来するペプチドは、全体としては相同性を欠いてはいるが、Th1サイトカイン応答の誘導を遮断し、致死的毒性ショックから保護する有力な超抗原アンタゴニストである。このように、2つの異なるクラスのアンタゴニストペプチドは超抗原とCD28の直接的結合に関する重要な役割(すなわち、CD28をめぐって超抗原と競合する超抗原ミメティックと、超抗原をめぐってCD28と競合する共受容体トリアッドのミメティック)を定義する(図7J)。
【図面の簡単な説明】
【0293】
【図1】図1A〜1F:超抗原ミメティックペプチドによるTh1活性化の選択的阻害。図1A:IL4とIL10の同時誘導による、SEB誘導型のIL2遺伝子発現の阻害。ヒトPBMCをヒトIL4(αIL4;Genzyme)(□)またはIL10(αIL10;Pharmingen)(△)に対するラット中和Abを1:10倍希釈したものとともに、またはSEB(○)とともに、またはSEBおよびイソ型適合抗ヒトIgG(●)、αIL4(黒四角)もしくはαIL10(▲)とともにインキュベートした。IL2 mRNAは実験手順に記載のように、IL2アンチセンスRNAプローブとのハイブリダイゼーションにより定量した。なお、フィルムの黒化は630nmで読みとった。オートラジオグラムは6時間のデータを示す。図1B、1C:IL4とIL10の同時誘導によるSEB誘導型のIFN−γ遺伝子発現の阻害。PBMCを示されているようにSEBとともに、またはSEB(−)を伴わずに、αIL4またはαIL10とともにインキュベートし、IFN−γ mRNAを、読みとり対照としてはrRNAを用い、実験手順に記載のようにRNアーゼ保護分析により定量した。(B)と(C)は独立した実験を表す。図1D:p12BはSEBにより媒介されるIL2およびIFN−γ mRNAの誘導は阻害するが、IL4およびIL10の誘導は阻害しない。PBMCは10pg/mlのp12Bの不在下(○)または存在下(●)SEBで誘導した。IL2 mRNAおよびIFN−γ mRNAを、ロード対照としてアクチンmRNAを用い、RNアーゼ保護分析により定量した。培地中のIL4およびIL10はbyQuantikine ELISAキット(R & D Systems)により測定した。図1E:SEB中のアンタゴニストドメイン。RasMolで作製したSEB構造(pdb3seb.ent)において、150〜161ドメインはマゼンタのリボンとして示される。MHC IIと接しているアミノ酸側鎖を赤で示し、TCRと接しているものを緑で示してある[Papageorgiou, A. C. et al., J. Mol. Biol. 277:61-79(1998)]。図1F:検討仮説:新規な受容体は超抗原によるTh1細胞の活性化に選択的に用いられる。Th1細胞を活性化させるためには、超抗原をMHC IIおよびTCRと結びつける必要があるだけでなく、Th2細胞の活性化には重要でない新規な受容体とも結びつけなければならない。アンタゴニストペプチドとこの受容体とが結合すると、Th1細胞の活性化が選択的に遮断され、生存ならびにTh2により媒介される防御免疫がもたらされる。明瞭にするために、抗原提示細胞(APC)とMHC IIは除いた。略号:T(時間)、hr.(時間)、pg/ml(ピコグラム/ミリリットル)、sAg(超抗原)、Nov. Rec.(新規な受容体)、Dea.(死)、Surv.(生存)、Prot.Imm.(防御免疫)、Anta.(アンタゴニスト)。
【図2】図2A〜2K:CD28を介するSEBシグナル。図2A〜2C:抗B7−2 mAbはSEBにより誘導されるIL2およびIFN−γ mRNAの発現を阻害するが、IL10の発現は阻害しない。PBMCをSEBを伴わずに(□、△)または100ng/ml SEBとともに(○、黒四角、▲)、mAbを伴わずに(○)または1:10希釈した抗B7−1(□、黒四角)もしくは抗B7−2(△、▲)(R & D Systems)とともにインキュベートした。IL2 mRNAおよびIFN−γ mRNAは図1Aと同様に分析した(ドットは8時間目の値を示す)。培地中のIL10はELISAによりアッセイした。図2D〜2K:SEBによるIL2 mRNA、IFN−γ mRNAおよびIL10の誘導に対するCD28、sB7−2およびsCTLA4の作用。図2D〜2E:PBMCをSEB(○)、1μg/ml sCD28(R & D Systems)(△)または両者(●)で誘導し、IL2およびIFN−γ mRNAは、ロード対照としてアクチンmRNAを用い、RNアーゼ保護分析により測定し、IL10はELISAにより測定した。(図2F)PBMCを1ng/ml SEB単独とともに、またはsCD28(μg/ml)とともにインキュベートし、IL2 mRNAを測定した。図2G〜2I PBMCを1ng/ml SEB単独とともに(○)または100ng/ml sCD28(▲)もしくはsB7−2(黒四角)とともにインキュベートし、図2GにおいてIL2 mRNA(図2H)およびIL10を測定した。図2J〜2K:PBMCをSEB単独(○)、または10ng/ml sCD28(▲)もしくは1μg/ml sCTLA4(黒四角)で誘導し、IL2 mRNA、IFN−γ mRNAおよびIL10を測定した。略号:T(時間)、hr.(時間)、Un.(ユニット)、pg/ml(ピコグラム/ミリリットル)。
【図3】図3A〜3G:超抗原ミメティックペプチドp12BはCD28を介するシグナル伝達を阻害する。図3A:SEBはCD28の細胞表面提示に変化をもたらす。CD4細胞はRosetteSep(Stem Cell Technologies)を用いてPBMCから90%まで濃縮し、4×10細胞/mlの密度でSEBとともにインキュベートし、示された時間にαCD28 mAb(R & D Systems)(二次Ab:Cy−2、緑;Jackson Laboratories)またはポリクローナルCD28 Ab(二次Ab:Cy−3、赤;Jackson Laboratories)で染色した。共焦蛍光顕微鏡を示す。Mer.(辺縁)、両Abでの二重染色。図3B〜3E:p12はBαCD28 mAbによるTh1サイトカインの誘導を阻害する。図3B:PBMCを10μg/mlのp12Bの不在下または存在下で、2.5μg/mlのαCD28とともにインキュベートし、IL2およびIFN−γ mRNAを測定した。なお、アクチンmRNA(示されていない)をロード対照として用いた。図3C〜3E:PBMCを10μg/mlのp12Bの不在下(▲)または存在下(●)で、2.5μg/mlのαCD28(○)または0.1μg/mlのαCD3 mAb(R & D Systems)(D)(□)または両者(▲、●)とともにインキュベートした。IL2 mRNA、IFN−γ mRNAおよびIL10を測定した。なお、アクチンmRNA(示されていない)をロード対照として用いた。αCD28がp12Bとは結合しないことを示すため、sCD28またはp12Bを固定化し、αCD28の結合を、アルカリ性ホスファターゼ結合抗マウスIgG(Jackson Laboratories)を用い、ELISAによりアッセイした(図3E)。図3F、3G:p12BはsB7−2/αCD3によるIFN−γ mRNAの誘導を阻害する。PBMCを10μg/mlのp12Bの不在下(□、○、△)または存在下(黒四角、●、▲)で、0.1μg/mlのαCD3(□、黒四角)、1μg/mlのsB7−2(○、●)とともにインキュベートした。IFN−γ mRNA、アクチンmRNA およびIL10を測定した。略号:T(時間)、hr.(時間)、pg/ml(ピコグラム/ミリリットル)、mAb(モノクローナル抗体)、Ab(抗体)、Bo.(結合)。
【図4】図4A〜4I:SEBはそのアンタゴニストドメインを介してCD28、CTLA4およびICOSと結合する。図4A〜4C:0.25μMから二倍増までの範囲の濃度の可溶性CD28、CTLA4およびICOSの、固定化SEBに対する結合に関する相対的表面プラズモン共鳴応答の代表的特性を実験手順に記載のようにして求めた(695RU)。図4D〜4F:それぞれ0.125、0.063および0.063μMから二倍増までの濃度の可溶性CD28、CTLA4およびICOSの、固定化p1CCに対する結合に関する相対的表面プラズモン共鳴応答の代表的特性(1,950RU)。図4G:ポリクローナルウサギ抗p12B Ab(αp12B;Genemed Synthesis)は致死的なSEB免疫刺激からマウスを保護する。5個体のマウス群を、20μgのSEBで直接(○)、または200μlの非希釈αp12Bの腹腔内注射から30分後(●)に免疫刺激した。生存率が示されている。図4H:0.25μMから二倍増までの範囲の濃度のsB7−2の、固定化SEBに対する結合に関する相対的表面プラズモン共鳴応答の代表的特性(695RU)。図4I:31.25nMから二倍増までの範囲の濃度のsB7−2の、固定化sCD28に対する結合に関する相対的表面プラズモン共鳴応答の代表的特性(3,400RU)。略号:T(時間)、hr.(時間)、sec(秒)、Resp.diff.(応答差)、Surv.(生存率)。
【図5】図5A〜5F:新規なSEBアンタゴニストペプチドはCD28に対する親和性により選択される。図5A:sCD28と強固に結合するファージのスクリーニングアッセイ。sCD28に対するランダム12−merファージディスプレーライブラリーのパンニングとSEBによる置換を4回行った後、ファージをECLを含むメンブランに固定化し、sCD28の結合を、hHRP結合sCD28(R & D Systems)を用いて検出した。陽性対照はαCD28 mAb(hl2)。陰性対照は挿入部を欠くファージ(h5−h7)。図5B、5C:pe12のアンタゴニスト活性。PBMCを100ng/ml SEB(○)、1μg/ml pe12(A参照)または両者(●)で誘導した。IL2、IFN−γおよびアクチンmRNAおよびIL10を測定した。図5D:pe12およびpc3はSEBによる死滅からマウスを保護する。10個体のマウス群を、7.5μgのSEB単独(□)または0.2μgのpe12(●)もしくは0.5μgのpc3(△)(別のECLアッセイからのもの)で免疫刺激した。対照には、SEBを用いず、D−ガラクトサミンの注射30分前に1μgのpe12(○)またはpc3(△)を与えた。生存率をモニタリングした。図5E:pd7のアンタゴニスト活性。PBMCを100ng/ml SEB、示されたng/ml濃度のpd7、または両者で誘導した。IL2およびIFN−γ mRNAを測定した。図5F:pc3のアンタゴニスト活性。PBMCを100ng/ml SEB、示されたng/ml濃度のpc3、または両者で誘導した。IL2 mRNAを測定した。図5G:pd7はSEBにより死滅からマウスを保護する。10個体のマウス群を6μgのSEB単独(□)または0.5μgのpd7(▲)で抗原刺激した。対照には、SEBを用いず、D−ガラクトサミンの注射30分前に2.5μgのpd7(△)を与えた。生存率をモニタリングした。略号:T(時間)、hr.(時間)、pg/ml(ピコグラム/ミリリットル)、Surv.(生存率)。
【図6】図6A〜6I:CD28に関して推定される二量体界面のペプチドミメティックは超抗原アンタゴニスト。図6A:CTLA4/B7−2複合体およびCTLA4の二量体界面。RasMolで作製したCTLA4/B7−2複合体のリボンダイアグラム(1185.pdb;[Schwartz (2001)同書]において、下に示されているヒト(h)およびネズミ(m)CD28およびCTLA4の配列アラインメントのように、1つのB7−2モノマーはマゼンタ、他方はグレー、CTLA4は青、MYPPPY(配列番号22)は黄色、YVIDPE(配列番号18)(CD28のHVKGKH、配列番号10)は赤、VVLASS(配列番号23)(CD28のMLVAYD(配列番号24))は緑で示され、保存されている残基は太字で示される。図6B:αCD28によるIFN−γ mRNAの誘導に対するsCD28およびpTAの作用。ヒトPBMCを250ng/ml αCD28 mAb単独またはsCD28もしくはpTAで誘導した(μg/ml)。IFN−γおよびアクチンmRNAを測定した。図6C〜6F:pTAはSEBによるTh1サイトカインmRNAの誘導に拮抗する。PBMCをSEB単独(○)または0.1μg/mlのsCD28(●)または10μg/mlのpTA(▲)で誘導した。IL2、IFN−γおよびアクチンmRNA、IL10ならびにIL4を測定した。また別の試験では(F)、pTAを増加濃度(μg/ml)で加え、IFN−γおよびアクチンmRNAを測定した。6G、6H:p1TAおよびp2TAはSEBまたはTSST−1によるIL2およびIFN−γ mRNAの誘導に拮抗する。(G)PBMCを100ng/mlのSEB単独、または0.1μg/mlのp1TA、p2TAまたは両者で誘導した。(H)PBMCを100ng/mlのTSST−1(Sigma)単独、または示されているようなμg/ml濃度のp1TAまたはp2TAで誘導した。IL2およびIFN−γ mRNAえお測定した。なお、アクチンmRNA(示されていない)をロード対照として用いた。図6I:CD28およびCTLA4とのICOSの配列アラインメント。ヒト(h)ICOS(受託番号AAH28006)、ネズミ(m)ICOS(受託番号NP_059508)、CD28およびCTLA4の細胞外ドメインのアミノ酸配列が示されている。このCD28配列はナンバリングされている。hICOSとhCD28との間で保存されている残基は深青緑で示され、B7結合部位を黄色で示す。保存されている残基は太字で示されている。ICOSとのアラインメントに用いられるCD28中のギャップはマゼンタで示されている。シアン色のICOS中の配列はCD28およびCTLA4中の2つの二量体界面配列(赤および緑)と、対応するCOSペプチドp1TCはCD28ペプチドp1TAおよびCTLA4ペプチドp1TBと並べ、対応するICOSペプチドp2TCはCD28ペプチドp2TAとCTLA4ペプチドp2TBと並べてある。略号:T(時間)、hr.(時間)、pg/ml(ピコグラム/ミリリットル)。
【図7】図7A〜7J:CD28、CTLA4およびICOSミメティックペプチドは致死的ショックからマウスを保護する。図7A:p1TAのアンタゴニスト活性は配列特異的である。PBMをSEB単独または1μg/mlのp1TAもしくはそのスクランブル形態のp1TAsc(CHGHLVPKK;配列番号4でも示される)で誘導した。IFN−γおよびアクチンmRNAを測定した。図7B、7C:CD28ミメティックペプチドはSEBによる致死的抗原刺激からマウスを保護する。10個体のマウス群を6μgのSEB単独(□)またはp1TA(1μg)(▲)、p12B(5μg)(○)もしくはp1TAsc(1μg)(●)(図7B)、あるいは0.2μgのp2TA(▲)もしくはそのスクランブル型のp2TAsc(ASMDYPVL;配列番号5でも示される)(●)(図7C)で抗原刺激した。対照には、SEBを用いず(△)、D−ガラクトサミンの注射30分前に25μgのp1TA(図7B)またはp2TA(図7C)。図7D〜7F:CTLAミメティックペプチドのアンタゴニスト活性。PBMCを100ng/mlSEB単独(○)、または1μg/mlのp1TB(▲)もしくはp2TB(黒四角)で誘導した。IL2、IFN−γおよびアクチンmRNA、ならびにIL10を測定した。図7G〜7I:ICOSミメティックペプチドのアンタゴニスト活性。PBMCを100ng/mlのSEB単独(○)または1μg/mlのp1TC(▲)もしくは0.1μg/mlのp2TC(黒四角)で誘導した。IL2、IFN−γおよびアクチンmRNA、ならびにIL10を測定した。10個体のマウス群を5μgのSEB単独(○)、または2.5μgのp1TC(●)および6μgのSEB単独(△)または0.2μpの2TC(▲)で免疫刺激した。図7J:超抗原によるTh1細胞活性化のモデル。CD28に対する超抗原の直接的結合が活性化に必要であり、各リガンドの接触領域のペプチドミメティック、すなわち、超抗原のアンタゴニストドメインおよびCD28の推定二量体界面の2つの辺縁(赤および緑)により遮断することができる。略号:T(時間)、hr.(時間)、pg/ml(ピコグラム/ミリリットル)、Surv.(生存率)、sAg(超抗原)、mim.Pep.(ミメティックペプチド)、Ce.(細胞)、APC(抗原提示細胞)。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図2F】

【図2G】

【図2H】

【図2I】

【図2J】

【図2K】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図3E】

【図3F】

【図3G】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図4D】

【図4E】

【図4F】

【図4G】

【図4H】

【図4I】

【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図5D】

【図5E】

【図5F】

【図5G】

【図6A】

【図6B】

【図6C】

【図6D】

【図6E】

【図6F】

【図6G】

【図6H】

【図6I】

【図7A】

【図7B】

【図7C】

【図7D】

【図7E】

【図7F】

【図7G】

【図7H】

【図7I】

【図7J】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなるか、またはT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる単離および精製されたペプチド。
【請求項2】
前記T細胞共刺激経路がCD28/B7T細胞共刺激経路、CD40リガンド/CD40、CD2/CD58およびLFA−1(CD18)/ICAM−1(CD54)共刺激経路のいずれかである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記T細胞共刺激経路がCD28/B7経路である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記CD28/B7経路メンバーがCD28、CTLA4、ICOSおよびPD−1、B7−1、B7−2、ICOSL、PD−L1およびPD−L2のいずれかである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドがT細胞共刺激経路を調節し得る免疫調節ペプチドである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
前記経路メンバーがCD28分子であり、CD28内の二量体界面が配列番号19で示されるヒトCD28アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と116〜121を含んでなる、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
前記経路メンバーがCTLA4分子であり、CTLA4内の二量体界面が配列番号20で示されるヒトCTLA4アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と115〜120を含んでなる、請求項5に記載のペプチド。
【請求項8】
前記経路メンバーがICOS分子であり、ICOS内の二量体界面が配列番号21で示されるヒトICOSアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と119〜124の総てまたは一部を含んでなる、請求項5に記載のペプチド。
【請求項9】
前記経路メンバーがPD−1分子であり、二量体界面に相当するPD−1中のドメインが配列番号59で示されるヒトPD−1アミノ酸配列のアミノ酸残基8〜13と110〜116を含んでなる、請求項5に記載のペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドがT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項11】
前記T細胞共刺激経路メンバーがCD28/B7ファミリーメンバーである、請求項10に記載のペプチド。
【請求項12】
前記ペプチドがCD28、CTLA4およびICOSの二量体界面に由来するアミノ酸配列と二量体界面に相当するPD−1中のドメインを含んでなる、請求項11に記載のペプチド。
【請求項13】
前記ペプチドがCD28分子内の二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなり、その二量体界面が配列番号19で示されるヒトCD28アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と116〜121を含んでなる、請求項12に記載のペプチド。
【請求項14】
前記ペプチドが、配列番号9で示されるアミノ酸配列HVKGKHLCPおよび配列番号12で示されるアミノ酸配列SPMLVAYD、またはそのいずれかの機能的断片および誘導体のいずれかに由来するアミノ酸配列を含んでなる、請求項13に記載のペプチド。
【請求項15】
前記ペプチドがp1TAと呼ばれ、配列番号9で示されるアミノ酸配列HVKGKHLCP、またはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する、請求項14に記載のペプチド。
【請求項16】
前記ペプチドがp2TAと呼ばれ、配列番号12で示されるアミノ酸配列SPMLVAYD、またはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する、請求項14に記載のペプチド。
【請求項17】
前記ペプチドがCTLA4分子内の二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなり、その二量体界面が配列番号20で示されるヒトCTLA4アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15および115〜120を含んでなる、請求項12に記載のペプチド。
【請求項18】
前記ペプチドが、配列番号14で示されるアミノ酸配列YVIDPEPCPおよび配列番号15で示されるアミノ酸配列PAVVLASS、またはそのいずれかの機能的断片および誘導体のいずれかに由来するアミノ酸配列を含んでなる、請求項17に記載のペプチド。
【請求項19】
前記ペプチドがp1TBと呼ばれ、配列番号14で示されるアミノ酸配列YVIDPEPCPまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する、請求項18に記載のペプチド。
【請求項20】
前記ペプチドがp2TBと呼ばれ、配列番号15で示されるアミノ酸配列PAVVLASSまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する、請求項18に記載のペプチド。
【請求項21】
前記ペプチドがICOS分子内の二量体界面に由来するアミノ酸配列を含んでなり、その二量体界面が配列番号21で示されるヒトICOSアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と119〜124の総てまたは一部を含んでなる、請求項12に記載のペプチド。
【請求項22】
前記ペプチドが、配列番号16で示されるアミノ酸配列YESQLCCQLおよび配列番号17で示されるアミノ酸配列GEINGSAN、またはそのいずれかの機能的断片および誘導体のいずれかに由来するアミノ酸配列を含んでなる、請求項21に記載のペプチド。
【請求項23】
前記ペプチドがp1TCと呼ばれ、配列番号16で示されるアミノ酸配列YESQLCCQLまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する、請求項22に記載のペプチド。
【請求項24】
前記ペプチドがp2TCと呼ばれ、配列番号17で示されるアミノ酸配列GEINGSANまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する、請求項22に記載のペプチド。
【請求項25】
前記ペプチドが二量体界面に相当するPD−1分子内のドメインに由来するアミノ酸配列を含んでなり、そのドメインが配列番号59で示されるヒトPD−1アミノ酸配列のアミノ酸残基8〜13と110〜116を含んでなる、請求項12に記載のペプチド。
【請求項26】
前記ペプチドが、PD−1分子の、配列番号57で示されるアミノ酸配列RVTERRAEVおよび配列番号58で示されるアミノ酸配列PALLVVTE、またはそのいずれかの機能的断片および誘導体のいずれかに由来するアミノ酸配列を含んでなる、請求項25に記載のペプチド。
【請求項27】
前記ペプチドがp1TDと呼ばれ、配列番号57で示されるアミノ酸配列RVTERRAEVまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する、請求項26に記載のペプチド。
【請求項28】
前記ペプチドがp2TDと呼ばれ、配列番号58で示されるアミノ酸配列PALLVVTEまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する、請求項26に記載のペプチド。
【請求項29】
前記ペプチドが、CD28、CTLA4およびICOSのいずれかの二量体界面内のアミノ酸配列、ならびに二量体界面に相当するPD−1中のドメインと特異的に結合する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項30】
前記ペプチドがCD28分子の二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合し、その二量体界面が配列番号19で示されるヒトCD28アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と116〜121を含んでなる、請求項29に記載のペプチド。
【請求項31】
前記ペプチドがCTLA4分子の二量体界面内のアミノ酸配列を特異的に結合し、その二量体界面が配列番号20で示されるヒトCTLA4アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と115〜120を含んでなる、請求項29に記載のペプチド。
【請求項32】
前記ペプチドがICOS分子の二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合し、その二量体界面が配列番号21で示されるヒトICOSアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と119〜124を含んでなる、請求項29に記載のペプチド。
【請求項33】
前記ペプチドが二量体界面に相当するPD−1分子内のドメインに由来するアミノ酸配列と特異的に結合し、そのドメインが配列番号59で示されるヒトPD−1アミノ酸配列のアミノ酸残基8〜13および110〜116を含んでなる、請求項29に記載のペプチド。
【請求項34】
前記ペプチドが配列番号6、7および8、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および56のいずれかで示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項30に記載のペプチド。
【請求項35】
前記ペプチドがpe12と呼ばれ、配列番号6で示されるアミノ酸配列SHFTHNRHGHSTまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する、請求項34に記載のペプチド。
【請求項36】
前記ペプチドがpd7と呼ばれ、配列番号7で示されるアミノ酸配列WHAHPHKKPVVAまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する、請求項34に記載のペプチド。
【請求項37】
前記ペプチドがpc3と呼ばれ、配列番号8で示されるアミノ酸配列FHKHKNPGSPIIまたはそのいずれかの機能的断片および誘導体を有する、請求項34に記載のペプチド。
【請求項38】
有効成分として請求項1〜37のいずれか一項で定義されたような精製ペプチドまたはそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を含んでなり、所望により医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤をさらに含んでなる、T細胞共刺激経路の調節のための組成物。
【請求項39】
それを必要とする被験体においてTh1−Th2応答の不均衡に関連する免疫疾患を処置するための医薬組成物であって、有効成分として請求項1〜37のいずれか一項で定義されたような精製ペプチドまたはそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を含んでなり、所望により医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項40】
前記免疫疾患が自己免疫疾患、悪性および非悪性増殖性疾患、移植片拒絶症、ならびに発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物によって引き起こされる疾患のいずれかである、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
発熱性外毒素により媒介されるTリンパ球の活性化を阻害するための組成物であって、毒性ショックから防御し、所望により発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対して防御免疫を惹起し、有効成分として請求項1〜31のいずれか一項で定義されたような精製ペプチドまたはそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を含んでなり、所望により医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤をさらに含んでなる、組成物。
【請求項42】
前記ペプチドがp1TA(配列番号9で示される)、p2TA(配列番号12で示される)、p1TB(配列番号14で示される)、p2TB(配列番号15で示される)、p1TC(配列番号16で示される)、p2TC(配列番号17で示される)、pe12(配列番号6で示される)、pd7(配列番号7で示される)、pc3(配列番号8で示される)、pa2(配列番号25で示される)、pb11(配列番号26で示される)、pc11(配列番号27で示される)、pf11(配列番号28で示される)、pg3(配列番号29で示される)、pb12(配列番号30で示される)、pa8.1(配列番号31で示される)、pb3(配列番号32で示される)、pb5(配列番号33で示される)、pb11(配列番号34で示される)、pf3(配列番号35で示される)、pf8(配列番号36で示される)、pe6(配列番号37で示される)、pf4(配列番号38で示される)、pa8.2(配列番号39で示される)、pb3(配列番号40で示される)、pb2(配列番号41で示される)、pc2(配列番号42で示される)、pc8(配列番号43で示される)、pc9(配列番号44で示される)、pf12(配列番号45で示される)、pc4(配列番号46で示される)、pe11(配列番号47で示される)、pb5(配列番号48で示される)、pe11(配列番号49で示される)、pg7(配列番号50で示される)、pa12(配列番号51で示される)、pb8(配列番号52で示される)、pb12(配列番号53で示される)、pc8(配列番号54で示される)、pd8(配列番号55で示される)、pg6(配列番号56で示される)、p1TD(配列番号57で示される)、p2TD(配列番号58で示される)のいずれかにより示されるアミノ酸、ならびにそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体を含んでなる、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
それを必要とする被験体においてT細胞共刺激経路を調節するための方法であって、前記被験体にT細胞共刺激経路を調節し得る有効量の免疫調節ペプチドを投与する工程を含み、そのペプチドが、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列、またはT細胞共刺激経路メンバーもしくはそれを含んでなる組成物の二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる、方法。
【請求項44】
それを必要とする被験体においてTh1−Th2応答の不均衡に関連する免疫疾患を処置するための方法であって、前記被験体にT細胞共刺激経路を調節し得る有効量の免疫調節ペプチドを投与する工程を含み、そのペプチドが、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列、またはT細胞共刺激経路メンバーもしくはそれを含んでなる組成物の二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる、方法。
【請求項45】
前記免疫関連疾患が自己免疫疾患、悪性および非悪性増殖性疾患、ならびに移植片拒絶症のいずれかである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ペプチドが請求項1〜37のいずれか一項で定義されたもの、またはそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体である、請求項43および44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ペプチドがp12A(配列番号1で示される)、p12B(p14Aとも呼ばれる、配列番号3で示される)、pTA(配列番号11で示される)、p1TA(配列番号9で示される)、p2TA(配列番号12で示される)、p1TB(配列番号14で示される)、p2TB(配列番号15で示される)、p1TC(配列番号16で示される)、p2TC(配列番号17で示される)、pe12(配列番号6で示される)、pd7(配列番号7で示される)、pc3(配列番号8で示される)、pa2(配列番号25で示される)、pb11(配列番号26で示される)、pc11(配列番号27で示される)、pf11(配列番号28で示される)、pg3(配列番号29で示される)、pb12(配列番号30で示される)、pa8.1(配列番号31で示される)、pb3(配列番号32で示される)、pb5(配列番号33で示される)、pb11(配列番号34で示される)、pf3(配列番号35で示される)、pf8(配列番号36で示される)、pe6(配列番号37で示される)、pf4(配列番号38で示される)、pa8.2(配列番号39で示される)、pb3(配列番号40で示される)、pb2(配列番号41で示される)、pc2(配列番号42で示される)、pc8(配列番号43で示される)、pc9(配列番号44で示される)、pf12(配列番号45で示される)、pc4(配列番号46で示される)、pe11(配列番号47で示される)、pb5(配列番号48で示される)、pe11(配列番号49で示される)、pg7(配列番号50で示される)、pa12(配列番号51で示される)、pb8(配列番号52で示される)、pb12(配列番号53で示される)、pc8(配列番号54で示される)、pd8(配列番号55で示される)、pg6(配列番号56で示される)、p1TD(配列番号57で示される)、p2TD(配列番号58で示される)ならびにそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体からなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
それを必要とする被験体においてT細胞共刺激経路を調節するための組成物の製造を目的とする、T細胞共刺激経路を調節し得る免疫調節ペプチドの使用であって、そのペプチドが、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列、またはT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる、使用。
【請求項49】
それを必要とする被験体においてTh1−Th2応答の不均衡に関連する免疫疾患を処置するための医薬組成物の製造を目的とする、T細胞共刺激経路を調節し得る免疫調節ペプチドの使用であって、そのペプチドが、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するアミノ酸配列、またはT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなる、使用。
【請求項50】
前記免疫関連疾患が自己免疫疾患、悪性および非悪性増殖性疾患、ならびに移植片拒絶症のいずれかである、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
前記ペプチドが請求項1〜37のいずれか一項で定義されたもの、またはそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体である、請求項48および49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項52】
前記ペプチドがp12A(配列番号1で示される)、p12B(p14Aとも呼ばれる、配列番号3で示される)、pTA(配列番号11で示される)、p1TA(配列番号9で示される)、p2TA(配列番号12で示される)、p1TB(配列番号14で示される)、p2TB(配列番号15で示される)、p1TC(配列番号16で示される)、p2TC(配列番号17で示される)、pe12(配列番号6で示される)、pd7(配列番号7で示される)、pc3(配列番号8で示される)、pa2(配列番号25で示される)、pb11(配列番号26で示される)、pc11(配列番号27で示される)、pf11(配列番号28で示される)、pg3(配列番号29で示される)、pb12(配列番号30で示される)、pa8.1(配列番号31で示される)、pb3(配列番号32で示される)、pb5(配列番号33で示される)、pb11(配列番号34で示される)、pf3(配列番号35で示される)、pf8(配列番号36で示される)、pe6(配列番号37で示される)、pf4(配列番号38で示される)、pa8.2(配列番号39で示される)、pb3(配列番号40で示される)、pb2(配列番号41で示される)、pc2(配列番号42で示される)、pc8(配列番号43で示される)、pc9(配列番号44で示される)、pf12(配列番号45で示される)、pc4(配列番号46で示される)、pe11(配列番号47で示される)、pb5(配列番号48で示される)、pe11(配列番号49で示される)、pg7(配列番号50で示される)、pa12(配列番号51で示される)、pb8(配列番号52で示される)、pb12(配列番号53で示される)、pc8(配列番号54で示される)、pd8(配列番号55で示される)、pg6(配列番号56で示される)、p1TD(配列番号57で示される)、p2TD(配列番号58で示される)ならびにそのいずれかの組合せ、機能的断片および誘導体からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
それを必要とする被験体において病原体によるT細胞共刺激経路の活性化を阻害するための方法であって、前記被験体に、その病原体に由来する成分とT細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位、すなわち、そのT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来する部位との直接的相互作用を阻害する、阻害上有効な量の物質を投与することを含む、方法。
【請求項54】
前記T細胞共刺激経路がCD28/B7、CD40リガンド/CD40、CD2/CD58およびLFA−1(CD18)/ICAM−1(CD54)共刺激経路のいずれかである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記T細胞共刺激経路がCD28/B7経路である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記病原体が細菌病原体、ウイルス、真菌、プリオン、寄生虫、酵母および毒液からなる群から選択される、請求項53〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記病原体が黄色ブドウ状球菌および可能連鎖球菌からなる群から選択される病原菌である、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記病原体の成分が超抗原、好ましくは発熱性外毒素である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記CD28/B7経路メンバーがCD28、CTLA4、ICOSおよびPD−1、B7−1、B7−2、ICOSL、PD−L1およびPD−L2のいずれかである、請求項55〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記経路メンバーがCD28分子、CD28内の二量体界面が配列番号19で示されるヒトCD28アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15および116〜121を含んでなる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記経路メンバーがCTLA4分子であり、CTLA4内の二量体界面が配列番号20で示されるヒトCTLA4アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と115〜120を
含んでなる、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記経路メンバーがICOS分子であり、ICOS内の二量体界面が配列番号21で示されるヒトICOSアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と119〜124を含んでなる、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記経路メンバーがPD−1分子であり、PD−1内の二量体界面に相当するドメインが配列番号59で示されるヒトPD−1アミノ酸配列のアミノ酸残基8〜13と110〜116を含んでなる、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記病原体に由来する成分とT細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位との間の直接的相互作用を阻害する前記物質が、T細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するペプチドおよびT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するペプチドのいれかである、請求項53に記載の方法。
【請求項65】
前記物質がT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するペプチドである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ペプチドが請求項11〜28のいずれか一項で定義されたものである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ペプチドがCD28分子と前記発熱性外毒素との間の直接的相互作用を阻害する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ペプチドが毒素により媒介されるTリンパ球の活性化のアンタゴニストであり、発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックから保護する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記物質がT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するペプチドである、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記ペプチドが請求項29〜37のいずれかで定義されたものである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記ペプチドが請求項34〜37のいずれかで定義されたものであり、CD28分子と発熱性外毒素との間の直接的相互作用を阻害する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記ペプチドが毒素により媒介されるTリンパ球の活性化のアンタゴニストであり、発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックから保護する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
それを必要とする被験体において病原体により引き起こされるTh1−Th2応答の不均衡に関連する病理的疾患を処置するための方法であって、前記被験体に、その病原体に由来する成分とT細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位、すなわち、そのT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来する部位との直接的相互作用を阻害する、阻害上有効な量の物質を投与することを含む、方法。
【請求項74】
前記病態が自己免疫疾患、悪性および非悪性増殖性疾患および移植片拒絶症のいずれかである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記T細胞共刺激経路がCD28/B7T細胞共刺激経路、CD40リガンド/CD40、CD2/CD58およびLFA−1(CD18)/ICAM−1(CD54)共刺激経路のいずれかである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記T細胞共刺激経路がCD28/B7経路である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記病原体が細菌病原体、ウイルス、真菌、プリオン、寄生虫、酵母および毒液からなる群から選択される、請求項73〜76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記病原体が黄色ブドウ状球菌および可能連鎖球菌からなる群から選択される病原菌である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記病原体の成分が超抗原、好ましくは発熱性外毒素である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記病態が発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショック、無能化および死のいずれかである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記CD28/B7経路メンバーがCD28、CTLA4、ICOSおよびPD−1、B7−1、B7−2、ICOSL、PD−L1およびPD−L2のいずれかである、請求項78〜80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記経路メンバーがCD28分子であり、CD28内の二量体界面が配列番号19で示されるヒトCD28アミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と116〜121を含んでなる、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記経路メンバーがCTLA4分子であり、CTLA4内の二量体界面が配列番号20で示されるヒトCTLA4アミノ酸配のアミノ酸残基10〜15と115〜120を含んでなる、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記経路メンバーがICOS分子であり、ICOS内の二量体界面が配列番号21で示されるヒトICOSアミノ酸配列のアミノ酸残基10〜15と119〜124の総てまたは一部を含んでなる、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
前記経路メンバーがPD−1分子であり、PD−1内の二量体界面に相当するドメインが配列番号59で示されるヒトPD−1アミノ酸配列のアミノ酸残基8〜13と110〜116を含んでなる、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
前記病原体に由来する成分とT細胞共刺激経路メンバー分子内の結合部位との間の直接的相互作用を阻害する前記物質がT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するペプチド、およびT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するペプチドのいずれかである、請求項73〜84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記物質がT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面に由来するペプチドである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記ペプチドが請求項11〜28のいずれか一項で定義されたものである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記ペプチドがCD28分子と発熱性外毒素との間の直接的相互作用を阻害する、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記ペプチドが毒素により媒介されるTリンパ球の活性化のアンタゴニストであり、発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックから保護する、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記物質がT細胞共刺激経路メンバーの二量体界面内のアミノ酸配列と特異的に結合するペプチドである、請求項86に記載の方法。
【請求項92】
前記ペプチドが請求項29〜37のいずれかに定義されたものである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記ペプチドが請求項34〜37のいずれか一項で定義されたものであり、CD28分子と前記発熱性外毒素との間の直接的相互作用を阻害する、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記ペプチドが毒素により媒介されるTリンパ球の活性化のアンタゴニストであり、発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックから保護する、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
T細胞共刺激経路メンバーと特異的に結合し、かつ、発熱性外毒素により媒介されるTh1リンパ球の活性化と拮抗することができ、所望により発熱性外毒素または少なくとも2種の発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対する防御免疫を惹起することができる試験物質をスクリーニングする方法であって、
a.T細胞共刺激経路メンバーと結合する候補アンタゴニスト物質を得る工程;
b.工程(a)で得られた物質から、そのT細胞共刺激経路メンバーと超抗原との間の直接的相互作用を阻害する物質を選択する工程;および
c.超抗原により媒介されるTh1リンパ球の活性化に対する、工程(b)で得られた物質の拮抗作用を判定する工程
を含む、方法。
【請求項96】
前記候補アンタゴニスト物質が
a.請求項1〜37のいずれか一項で定義された単離ペプチドを含んでなる混合物を準備する工程;
b.その混合物をこのような結合にとって好適な条件下で試験物質と接触させる工程;および
c.終点指標に対する試験物質の作用を決定し、それにより、その終点の変更がその試験物質とペプチドの結合の指標となる工程
により得られる、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
終点指標が視覚的に検出可能なシグナルをもたらす、抗ペプチド抗体と前記ペプチドとの結合である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記候補物質がタンパク質に基づく、炭水化物に基づく、脂質に基づく、天然有機物に基づく、合成起源の有機物に基づく、無機物に基づく、およびペプチドミメティクスに基づく物質からなる群から選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記物質がペプチドのコンビナトリアルライブラリー、環状ペプチドミメティクスのライブラリー、およびランダムまたは特定ファージディスプレーライブラリーのポジショナルスキャニングのいずれかの産物である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記候補アンタゴニスト物質が毒素により媒介されるTh1リンパ球の活性化に拮抗するその物質の能力、および所望により発熱性外毒素またはそのような発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対する防御免疫を惹起するその能力を判定する方法により評価される、請求項99に記載の方法。

【公開番号】特開2010−195797(P2010−195797A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−70685(P2010−70685)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【分割の表示】特願2006−507597(P2006−507597)の分割
【原出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(501479721)イースム、リサーチ、デベロプメント、カンパニー、オブ、ザ、ヘブライ、ユニバーシティー、オブ、イエルサレム (5)
【氏名又は名称原語表記】YISSUM RESEARCH DEVELOPMENT COMPANY OF THE HEBREW UNIVERSITY OF JERUSALEM
【Fターム(参考)】