説明

病害虫防除剤組成物

【課題】 有機農産物(JAS)を栽培する上で病害虫から植物を守り、従来の抗生物質や合成抗菌剤に頼ることなく、したがって、これらの薬剤が浸透した農産物の摂取による健康に対する不安を生じることもなく、且つ従来の前記化学農薬を使用した農産物と勝るとも劣らない、害虫による被害を受けない安全な農産物を得ることができる病害虫防除剤を提供すること。
【解決手段】 ヒノキチオール、除虫菊、ニーム油、馬酔木、こしょう、トウガラシ(カプサイシン)、桂皮油(シナモン)又はクララ抽出液の1種又は2種以上からなる植物由来の殺虫成分を含む殺虫剤と、イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物がひまし油及び/又はソルビタン系乳化剤とともに水に分散された乳化液からなる病害虫防除剤組成物を調製する。イソチオシアン酸アリルは殺虫成分の害虫への浸透性・透過性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農園芸用の病害虫防除剤組成物、病害虫防除方法、農薬助剤に関し、より詳しくは、殺虫剤と、イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物とを含む病害虫防除剤組成物や、該病害虫防除剤組成物を病害虫の孵化前に施与する農園芸用作物の病害虫防除方法や、イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物を有効成分とする農薬助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農薬による病害虫防除方法としては、有機塩素系、有機リン系などの合成殺虫剤が使用されてきており、農業生産の向上に大きな貢献を果たしてきた。しかしながら、近年世界的に地球環境の保全と食の安全が求められるようになり、特に農薬に於ける農産物の安全性と、化学合成農薬、化学肥料、化学薬品等の使用から自然の生態系を守る運動が高まり、我が国に於いても、農産物、水産物及び食品に於いてJAS法が定められ、有機農産物基準に従って生産し、化学合成農薬、化学薬品等の弊害から人々の健康を守る、安全、安心、安定した長期的再生可能な資源を利用した、農業生産システムが求められている。例えば、天然系植物由来物質を用いた防虫剤や殺虫剤が開発され、ハーブ精油を有効成分として含有するミカンキイロウアザミウマ防除剤(例えば、特許文献1参照)や、ペニーロウイヤル油及び/又はニーム油からなる天然精油を有効成分として含有するシロウアリ殺虫剤(例えば、特許文献2参照)や、ニームの抽出物を有効成分とするカミキリムシ類成虫忌避剤(例えば、特許文献3参照)や、除虫菊の抽出成分を有効成分の一つとする殺虫及び殺ダニ剤(例えば、特許文献4参照)等が知られている。また、自生植物(マメ科)クララの抽出成分やアセビ等にも殺虫及び除虫効果があることが既に知られている。
【0003】
しかし、これまでロウやワックスを出して越冬する害虫、例えば、アカマルカイガラムシ、ナシマルカイガラムシ、イセリカイガラムシ、コナカイガラムシ類、ロウムシ類、ルビーロウムシ、ツノロウムシ、ミカンワタガイガラムシ、ヤノネカイガラムシ等に対しては上記有効成分が浸透せず、十分な殺虫及び防虫効果は得られないという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、主に界面活性剤を中心とした展着剤、例えば、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなるエステル型ノニオン界面活性剤を含有する農薬用展着剤(例えば、特許文献5参照)や、脂肪酸残基の炭素数が12〜16の脂肪酸低級アルキルエステルのスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤を用いる農薬用添加剤(例えば、特許文献6参照)が、開示されている。しかし、これらの展着剤の使用には生分解性、魚毒性、植物薬害性などの環境安全の問題を完全に解決したものは知られていなかった。
【0005】
その他、本発明者は、先にヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルおよびヒマシ油をソルビタン系乳化剤とともに水に分散、乳化してなる野菜の鮮度保持剤を提案している(例えば、特許文献7参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−322907号公報
【特許文献2】特開2001−106609号公報
【特許文献3】特公平03−62682号公報
【特許文献4】特開平10−101509号公
【特許文献5】特開平6−329503号公報
【特許文献6】特開平2−167202号公報
【特許文献7】特開2004−173550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、有機農産物(JAS)を栽培する上で病害虫から植物を守り、従来の抗生物質や合成抗菌剤に頼ることなく、したがって、これらの薬剤が浸透した農産物の摂取による健康に対する不安を生じることもなく、且つ従来の前記化学農薬を使用した農産物と勝るとも劣らない、外観上もきれいで、害虫による被害を受けない安全な農産物を得ることができる特定の農薬助剤及び該農薬助剤を使用した病害虫防除剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、長年にわたり有機農産物(JAS)を栽培する上で安全な天然物を殺虫剤として用いる農園芸用の病害虫防除剤を研究し続けている。有機農産物を生産する場合、安全な天然物に限られ、例えば、ジョチュウギク、ニーム油(センダン科植物)、クララ(豆科)、馬酔木、ハーブ類等が知られているが、害虫によっては効果が全く無い。その原因としては、ロウやワックスを出す害虫はロウ、ワックスによって水をはじくことから、殺虫剤を施与しても浸透せず、特に孵化前の卵、幼虫である場合は、ロウ、ワックスで包囲されることから、殺虫効果は皆無に近くなると考えられた。そこで、先ず、ロウやワックスを透過する成分を開発するべく鋭意努力した結果、カラシナ抽出油に含まれるイソチオシアン酸アリル或いはカラシナ抽出油自体が、ロウやワックスを透過させる性質を有することを見出した。そこで、前記のイソチオシアン酸アリル或いはカラシナ油を含む農薬助剤と他の天然の殺虫剤とを組み合わせて用いると、イソチオシアン酸アリルの作用により、用いた殺虫剤が浸透可能となり、卵や幼虫のみならず、成虫に対して、さらには薬剤抵抗性を有する害虫に対しても顕著な病害虫防除作用を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(1)殺虫剤と、イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物とを含むことを特徴とする病害虫防除剤組成物や、(2)イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物が、ひまし油及び/又はソルビタン系乳化剤とともに水に分散された乳化液として含まれていることを特徴とする上記(1)記載の病害虫防除剤組成物や、(3)イソチオシアン酸アリル含有物が、カラシナ抽出油であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の病害虫防除剤組成物や、(4)殺虫剤が、植物由来の殺虫成分を含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の病害虫防除剤組成物や、(5)殺虫成分が、ヒノキチオール、除虫菊、ニーム油、馬酔木、こしょう、トウガラシ(カプサイシン)、桂皮油(シナモン)又はクララ抽出液の1種又は2種以上からなることを特徴とする上記(4)記載の病害虫防除剤組成物に関する。
【0010】
また本発明は、(6)農園芸用作物に、殺虫剤と、イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物とを含む病害虫防除剤組成物を施与することを特徴とする農園芸用作物の病害虫防除方法や、(7)イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物が、ひまし油及び/又はソルビタン系乳化剤とともに水に分散された乳化液として含まれていることを特徴とする上記(6)記載の農園芸用作物の病害虫防除方法や、(8)イソチオシアン酸アリル含有物が、カラシナ抽出油であることを特徴とする上記(6)又は(7)記載の農園芸用作物の病害虫防除方法や、(9)殺虫剤が、植物由来の殺虫成分を含むことを特徴とする上記(6)〜(8)のいずれかに記載の農園芸用作物の病害虫防除方法や、(10)殺虫成分が、ヒノキチオール、除虫菊、ニーム油、馬酔木、こしょう、トウガラシ(カプサイシン)、桂皮油(シナモン)又はクララ抽出液の1種又は2種以上からなることを特徴とする上記(9)記載の農園芸用作物の病害虫防除方法や、(11)農園芸用作物が、桃樹、梅樹又は茶樹であることを特徴とする上記(6)〜(10)のいずれかに記載の病害虫防除方法や、(12)カイガラムシ類、アブラムシ類、ダニ類を防除することを特徴とする上記(6)〜(11)のいずれかに記載の病害虫防除方法に関する。
【0011】
さらに本発明は、(13)イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物を有効成分とすることを特徴とする農薬助剤や、(14)イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物が、ひまし油及び/又はソルビタン系乳化剤とともに水に分散された乳化液として含まれていることを特徴とする上記(13)記載の農薬助剤や、(15)イソチオシアン酸アリル含有物が、カラシナ抽出油であることを特徴とする上記(13)又は(14)記載の農薬助剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の農薬助剤、及び該農薬助剤と殺虫剤を含む病害虫防除剤組成物は、前記農薬助剤の有効成分及び殺虫剤の有効成分が天然から得られるものでありながら、合成抗菌剤等に比して顕著な病害虫防除作用があり、したがって、有機農産物(JAS)を確実に栽培することができ、かつ、消費者、生産者を満足させる安全、安心、安定した農業の、自然循環機能の維持増進に寄与し、環境安全の問題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の病害虫防除剤組成物としては、殺虫剤と、イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物とを含む組成物であれば特に制限されず、また、本発明の農園芸用作物の病害虫防除方法としては、農園芸用作物に、殺虫剤と、イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物とを含む病害虫防除剤組成物を施与する方法であれば特に制限されず、さらに本発明の農薬助剤としては、イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物を有効成分とする薬剤の透過性を向上させる助剤であれば特に制限されるものではなく、前記イソチオシアン酸アリル含有物としては、カラシナ抽出油、ワサビ抽出油などを挙げることができるが、カラシナ抽出油を好適に例示することができる。
【0014】
上記病害虫防除剤組成物におけるイソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物の使用形態や、イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物を農薬助剤として用いる形態は、特に制限されるものではないが、ひまし油又はソルビタン系乳化剤、好ましくはひまし油及びソルビタン系乳化剤とともに水に分散された乳化液として用いることにより、薬剤の透過性向上効果をより高めることができる。ひまし油は、トウゴマ Ricinus commnis L.(トウダイグサ科)の種子から圧搾法によって得られる不乾性油であり、種子全体に対して35〜57%の油が含まれている。ソルビタン系乳化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステルがあり、ソルビタンモノラウリン酸エステル(スパン20)、ソルビタンモノパルミチン酸エステル(スパン40)、ソルビタンモノステアリン酸エステル(スパン60)、ソルビタントリステアリン酸エステル(スパン65)、ソルビタンモノオレイン酸エステル(スパン80)、ソルビタントリオレイン酸エステル(スパン85)を使用することができる。イソチオシアン酸アリル又はカラシナ抽出油は水に難溶性であるので、ひまし油及び/又はソルビタン系乳化剤を用いて水によく分散できる乳化液とするものである。
【0015】
ヒノキチオールは、ヒノキ、ヒバ等の針葉樹から抽出される精油成分であり、殺虫、殺菌効果をも奏する油溶性の物質であり、水に難溶性であるので、イソチオシアン酸アリル又はカラシナ抽出油と同様に、ひまし油及び/又はソルビタン系乳化剤を用いて水によく分散できる乳化液とすることが好ましい。イソチオシアン酸アリル含有物としてカラシナ抽出油を用い、殺虫成分としてヒノキチオールを用いる場合、カラシナ抽出油、ヒノキチオール、ひまし油、ソルビタン系の乳化剤は、適宜の割合で水に分散、乳化することができ、特に限定されるものではないが、好ましくは、カラシナ抽出油とヒノキチオールとは、1:10〜10:1の割合で用い、ひまし油の量は、カラシナ抽出油とヒノキチオールの合計量に対し、5〜30重量%を、また、ソルビタン系乳化剤は、同じく5〜30重量%用いることができる。
【0016】
殺虫剤としては、殺虫成分を含むものであれば特に制限されないが、植物由来の殺虫成分を含むものが好ましく、植物由来の殺虫成分の化学合成品よりも、天然より得られるものがより好ましい。かかる植物由来の殺虫成分としては、前述のヒノキチオール、除虫菊、ニーム油(センダン科植物)、馬酔木、こしょう、トウガラシ(カプサイシン)、桂皮油(シナモン)、クララ(マメ科)抽出液、デリス(マメ科)、ニコチン、なたね油、大豆レシチン、ハーブ類の1種又は2種以上用いることができ、特に、除虫菊、ニーム油、馬酔木、こしょう、トウガラシ(カプサイシン)、桂皮油(シナモン)、クララ抽出液が好ましい。除虫菊、ニーム油、クララ等は乳剤として市販されている。
【0017】
殺虫剤と前記農薬助剤とを構成成分とする病害虫防除剤組成物の形態は前記農薬助剤の乳化液と混合する乳剤の他、水和剤、粒剤、懸濁剤等の形で用いることができる。
【0018】
上記農薬助剤の有効成分及び殺虫剤の製剤中の含有量は一般的に、製剤の総重量に対して0.01〜90重量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.05〜85重量%である。水和剤、乳剤、懸濁剤等の形態として用いられる病害防除剤は、水で所定の濃度に希釈して懸濁液又は乳化液として製造され植物に適用される。
【0019】
防除の対象となる病害虫としては特に制限されないが、アカマルカイガラムシ、ナシマルカイガラムシ、イセリカイガラムシ、コナカイガラムシ、ミカンワタガイガラムシ、ヤノネカイガラムシ等のカイガラムシ類、モモアカアブラムシ、モモコフキアブラムシ、コフキアブラムシ、ワタアブラムシ、マメクロウアブラムシ等のアブラムシ類及びカメノコロウムシ、ルビーロウムシ、ツノロウムシ等のロウムシ類を好適に例示することができる。さらに、抵抗性を獲得した病害虫、例えば殺虫剤として植物由来の殺虫成分を含む、除虫菊、クララ(マメ科)抽出液、ニーム油等に対して抵抗性を獲得した病害虫や、化学合成殺虫剤に対して抵抗性を獲得した病害虫など防除が困難とされる病害虫に対しても顕著に防除することできる。また、本発明の病害虫防除剤組成物を施与する農園芸用作物として特に制限されないが、病害虫の孵化前に施与すると効果的である樹木として、桃、梅、桜、林檎等の果樹、茶樹等を具体的に例示することができる。
【0020】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0021】
[実施例1]
対象の害虫:コフキアブラムシ
試験樹木:桃木
発生状況:葉全面
試験時期:4月
(実験方法及び効果)
除虫菊乳剤、ニーム油乳剤、クララ乳剤の各殺虫製剤を水で希釈し1000倍液、500倍液を作った。別途カラシナ抽出油(イソチオシアン酸アリル)70cc、ヒノキチオール30cc、ヒマシ油20cc、ソルビタン10ccよりなる農薬助剤を容器に取り混合攪拌し、水を870ccを加えて1,000ccとし、さらに混合攪拌を続けて乳化液を作った。上記各希釈された殺虫剤溶液を50L(リットル)づつ容器に取り、上記農薬助剤の乳化液が250倍になるように、前記各50Lの殺虫剤溶液が収容された容器に200ccずつ入れて、混合攪拌した。得られた乳化液をモモの葉全面にコフキアブラムシが繁殖した6本の桃木に対して満べんなく散布を行った。1回目散布後、7日目に2回目を散布した。1回目終了後、15日目に効果を調査した結果各除虫菊乳剤、ニーム油乳剤、クララ乳剤の殺虫製剤1,000倍区、500倍区ともに完全にコフキアブラムシが防除できた。
【0022】
[比較例1]
実施例1と同様に、ジョチュウギク、ニーム油、及びクララ抽出液の各1,000倍液、500倍液を作った。同様に4月期、モモの葉全面にコフキアブラムシが繁殖、6本の桃木に対して前記希釈液を散布した。桃の葉の裏、表とも、満べんなく散布した。
各1,000倍液、各500倍液の殺虫剤液を7日毎に2回散布を行った。
第1回、第2回散布後15日目に効果を調査したが各殺虫剤の1,000倍区、500倍区とも効果は見られなかった。
比較例1では、本発明の農薬助剤を用いないものであり、殺虫剤と農薬助剤を用いた実施例1では、病害虫防除効果を顕著に奏することが分った。
【0023】
[実施例2]
対象の害虫:クワシロウカイガラムシ
試験区:10aに植えられた樹齢20年の茶樹
発生状況:全面
試験時期:1月〜3月
(実験方法及び効果)
ジョチュウギク乳剤、ニーム油、クララ抽出液の殺虫剤1,000倍液及び500倍液をつくった。上記1,000倍、500倍液を50L(リットル)づつ取り容器(6個)に入れた。次に、カラシナ抽出油70cc、ヒマシ油20cc、ソルビタン10ccを混合攪拌して水を870ccを加え攪拌して1,000ccの農薬助剤である乳化液を作った。前記各殺虫剤50Lづつ収容した容器に前記農薬助剤が250倍液となるように200ccずつを加え攪拌し、本発明の病害虫防除剤を作った。茶樹10a区を12等分に区割してそのうち6区に、前記各病害虫防除剤(乳化液)各50Lを、クワシロウカイガラムシが繁殖している茶樹の葉の裏、表全面に散布した。1回目及び1回目散布後7日目に同じ液を各50L散布した。1回目散布後30日目に調査した。
ジョチュウギク乳剤、ニーム油、クララ抽出液の1,000倍区は効果があった場所、無かった場所があり効果は50%程度であった。500倍区は各区とも100%の効果があった。1回目散布後90日目に再度調査をしたところ、茶樹全体からクワシロウカイガラムシが消え、防除されていることが確認できた。
【0024】
[比較例2]
実施例2と同様に、ジョチュウギク乳剤、ニーム油、クララ抽出液の各1,000倍液、500倍液をそれぞれ調製した(6個)。茶樹10a区を12等分に区割した実施例2の残り6区に前記調製した1,000倍液と500倍液を各50Lを容器に収容し、茶樹の全面葉に散布した。1回目散布後7日目に上記と同じ倍率のもの50Lづつ2回目を散布した。1回目散布後15日目に調査し、効果の確認をしたが目視でわからなかった。30日後再度調査をしたが各1,000倍区、500倍区とも効果は見られなかった。
比較例2では、本発明の農薬助剤を用いないものであり、殺虫剤と農薬助剤を用いた実施例2では、病害虫防除効果を顕著に奏することが分った。
【0025】
[実施例3]
対象害虫:ウメシロウカイガラムシ
試験時期:4月下旬〜5月
発生状況:ウメ樹枝全面に発生
(実験方法及び効果)
ジョチュウギク乳化剤、ニーム油、クララ抽出液の各500倍液をウメの木全体がぬれるように散布した。1回目散布及び1回目散布後7日目に2回の散布を各500倍液で散布した。1回目散布後30日目に調査したが効果は見られなかった。次に、ジョチュウギク乳剤、ニーム油、クララ抽出液各500倍液に、カラシナ油70cc、ヒノキチオール30cc、ヒマシ油20cc、ソルビタン10ccを容器に取り、混合攪拌して水870ccを加え混合攪拌して1,000ccの乳化液(農薬助剤)を調製した。前記各500倍液に対して前記農薬助剤乳化液が250倍液になるように加えた液をウメ樹全体がぬれるように散布した。1回目散布、1回目散布後7日目に2回目の散布を1回目使用した液と同じ液で散布した。散布後30日目に調査を行った。各区ともウメシロウカイガラムシは完全に死滅しており、防除ができたことを確認した。
【0026】
[実施例4]
対象害虫:カンザワハダニ
試験時期:3月上旬〜4月下旬
施用箇所:茶園 10a
施用部位:茶樹(茶葉)
(実験方法及び効果)
3月上旬にニーム油の500倍液250Lを散布した。次に3月下旬にクララ抽出液の500倍液250Lを散布した。さらに、4月下旬に除虫菊の500倍液250Lを散布した。前記の殺虫剤を用いた殺虫方法ではいずれもカンザワハダニを防除することができなかった。
4月下旬にニーム油の500倍液250Lを作り、別途カラシナ抽出液(イソチオシアン酸アリル)70cc、ヒノキチオール30cc、ひまし油20cc、ソルビタン10cc、水870ccのあわせて1000ccの乳化混合液を調製した。該乳化混合液が500倍となるように、その500ccを前記ニーム油250Lにを加え混合撹拌して、茶樹全体に散布した。10日後調査したところ、カンザワハダニは完全に防除されていた。このように、ロー、ワックスを出さない害虫では農薬助剤を500倍液で効果があることが確認された。
【0027】
以上の実施例が示すように、有機栽培農産物JASで使用できる安全な殺虫剤単独使用では効果の無かったものが、本発明のイソチオシアン酸アリル(カラシナ油)を有効成分とする農薬助剤を混合して使うことにより、顕著な効果を奏することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫剤と、イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物とを含むことを特徴とする病害虫防除剤組成物。
【請求項2】
イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物が、ひまし油及び/又はソルビタン系乳化剤とともに水に分散された乳化液として含まれていることを特徴とする請求項1記載の病害虫防除剤組成物。
【請求項3】
イソチオシアン酸アリル含有物が、カラシナ抽出油であることを特徴とする請求項1又は2記載の病害虫防除剤組成物。
【請求項4】
殺虫剤が、植物由来の殺虫成分を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の病害虫防除剤組成物。
【請求項5】
殺虫成分が、ヒノキチオール、除虫菊、ニーム油、馬酔木、こしょう、トウガラシ(カプサイシン)、桂皮油(シナモン)又はクララ抽出液の1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項4に記載の病害虫防除剤組成物。
【請求項6】
農園芸用作物に、殺虫剤と、イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物とを含む病害虫防除剤組成物を施与することを特徴とする農園芸用作物の病害虫防除方法。
【請求項7】
イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物が、ひまし油及び/又はソルビタン系乳化剤とともに水に分散された乳化液として含まれていることを特徴とする請求項6記載の農園芸用作物の病害虫防除方法。
【請求項8】
イソチオシアン酸アリル含有物が、カラシナ抽出油であることを特徴とする請求項6又は7記載の農園芸用作物の病害虫防除方法。
【請求項9】
殺虫剤が、植物由来の殺虫成分を含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の農園芸用作物の病害虫防除方法。
【請求項10】
殺虫成分が、ヒノキチオール、除虫菊、ニーム油、馬酔木、こしょう、トウガラシ(カプサイシン)、桂皮油(シナモン)又はクララ抽出液の1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項9に記載の農園芸用作物の病害虫防除方法。
【請求項11】
農園芸用作物が、桃樹、梅樹又は茶樹であることを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の病害虫防除方法。
【請求項12】
カイガラムシ類、アブラムシ類、ダニ類を防除することを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の病害虫防除方法。
【請求項13】
イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物を有効成分とすることを特徴とする農薬助剤。
【請求項14】
イソチオシアン酸アリル又はイソチオシアン酸アリル含有物が、ひまし油及び/又はソルビタン系乳化剤とともに水に分散された乳化液として含まれていることを特徴とする請求項13記載の農薬助剤。
【請求項15】
イソチオシアン酸アリル含有物が、カラシナ抽出油であることを特徴とする請求項13又は14記載の農薬助剤。

【公開番号】特開2006−111559(P2006−111559A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299619(P2004−299619)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(397001282)
【Fターム(参考)】