説明

病理検査用流し台付きテーブル装置

【課題】検査作業者の健康を損なうことなく、病理検査を安全に行うことができる病理検査用流し台付きテーブル装置を提供する。
【解決手段】作業用テーブル1と流し台2を併設した作業台3と、該作業台3の上面、下面、側面または背面のいずれかに、送風用ファン6および排気用ファン7を備えた送風・排気ボックス8を備えて形成され、前記送風用ファン6により作業台3上に送風して、該作業台3の外周縁部、または前記作業台3の外周縁部および作業用テーブル1と流し台2間に設けられた吸引部18を介して、前記作業台3から発するホルムアルデヒド等の有害ガスを吸引して、排気ダクト29より排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院の病理検査等でホルマリン固定された臓器等を検査するに当たり、水洗いしてホルマリンを除去し、その後切出しテーブルにて臓器の切出し作業を行う際に発生する有害なホルムアルデヒドガスや、その他の有害ガスの拡散を防止することにより、検査作業者の健康を損なうことなく、病理検査を安全に行うことができる病理検査用流し台付きテーブル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病理検査において検査作業者が臓器を切出す場合、その作業は一般の流し台でホルマリンを水洗いし、すぐ横のテーブルで臓器の切出しを行っている。その際、流し台およびテーブルから発生するホルムアルデヒドガスを除去する手段が全く備えられていないので、ホルマリンから発するホルムアルデヒド等の有害ガスを吸引して検査作業者が体調を崩すことが多いという課題があった。
【0003】
一方、病理検査用流し台付きテーブル装置に関する過去の特許文献を遡及検索しても1件の先行技術文献をも発見することができなかった。ただ、ホルマリンによる防腐処置を施こされた遺体を解剖台で解剖する場合、ホルムアルデヒドガスによる作業者への悪影響を予防する方法として、解剖台の四面外周縁に突設された縁枠に、遺体から発するホルムアルデヒドガスを吸引して除去するため吸気口を備えた、下記特許文献1に開示されているような解剖台が知られているに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−244762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであって、病理検査において、検査作業者がホルマリン固定された臓器を切出す場合、テーブルの外周縁部に設けられた吸引部で、ホルマリンから発するホルムアルデヒドなどの有害ガスを吸引して排気するようにすることにより、検査作業者が有害ガスを吸気して体調を崩すことがないようにした病理検査用流し台付きテーブル装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、作業用テーブルと流し台を併設した作業台と、該作業台の上面、下面、側面または背面のいずれかに、送風用ファンおよび排気用ファンを備えた送風・排気ボックスを備えて形成され、前記送風用ファンにより作業台上に送風して、該作業台の外周縁部、または前記作業台外周縁部および作業用テーブルと流し台間に設けられた吸引部を介して、前記作業台から発するホルムアルデヒドを含む有害ガスを吸引して排気するという手段を採用することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
ホルマリン固定された臓器の切出しおよび水洗作業をする作業台の上方より送風用ファンから送風されると、該送風は直ちに吸引部から吸引されるので、ホルマリンから発生するホルムアルデヒド等の有害ガスが発散上昇しても、検査作業者の顔面付近までは到達することがないので、検査作業者が前記有害ガスを吸入して体調を崩す虞れは全くない。また、ホルムアルデヒドガスばかりでなく、その他の有害ガスの排気も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明病理検査用流し台付きテーブル装置全体の斜視図である。
【図2】本発明病理検査用流し台付きテーブル装置の縦断面図である。
【図3】本発明病理検査用流し台付きテーブル装置において、吸引部を示す横断面図である。
【図4】本発明病理検査用流し台付きテーブル装置において、吸引部の他の実施例を示す横断面図である。
【実施例】
【0009】
本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明すると、本発明の病理検査用流し台付きテーブル装置は、図に示すように、側面から見ると略断面コ字状に形成され、下方部にホルマリン固定された臓器の切出し作業をする作業用テーブル1と、必要に応じて水洗作業する流し台2を併設した作業台3と、該作業台3の背面側上方に立設された戸棚4等の収納スペースとなる収納部5と、前記作業台3上に送風する送風用ファン6および該作業台3から発するホルムアルデヒド等の有害ガスを吸引して外部へ排気する排気用ファン7を備えた送風・排気ボックス8とが、背面板9の前方側に突設されると共に、前記作業台3・収納部5および送風・排気ボックス8に囲まれた作業空間10を備えて形成されている。なお、図中11は水道蛇口、12は照明器具である。
【0010】
前記送風・排気ボックス8は、図においては、作業台3の上面に設置されているが、前記作業台3の下面、側面または背面のいずれかに設置してもよい。
【0011】
前記作業台3を構成する作業用テーブル1と流し台2を備え設置した筺体13内の前記作業用テーブル1と流し台2の下面部において密に設けられた底板14上に区画板14を密に横設すると共に、前記収納部5の下面に区画壁16を密に立設固定して、該区画板15と区画壁16に区画された、切出しおよび水洗作業で発生するホルムアルデヒド等の有害ガスの流入室17を設けると共に、該作業台3の外周縁部に、または前記作業台3の外周縁部および作業用テーブル1と流し台2間に、切出しおよび水洗作業で発生するホルムアルデヒド等の有害ガスを吸引するための吸引部18が設けられている。
【0012】
前記吸引部18は、前記作業台3の外周縁部に、または該作業台3の外周縁部および作業用テーブル1と流し台2間に、特に限定する必要はないが、好ましくは多数の吸引小孔19を穿設して形成することが推奨される。
【0013】
更に、前記筺体13内の流入室17の背面側には、区画壁16、背面板9および底板14に囲まれた排気案内室20が設けられ、前記区画壁16に設けられたガラリ部21を通して、前記流入室17に流入したホルムアルデヒド等の有害ガスを排気案内室20へ導入できるように形成されている。
【0014】
一方、前記送風・排気ボックス8内には区画壁22が密に立設固定されていて、前記作業空間10に面する側を送風室23とすると共に、前記収納部5に面する側を排気室24とする。
【0015】
そして、前記送風・排気ボックス8の送気室23の上方には、送風用ファン6が設けられると共に、該送気室23の下方の底板25には送風開口26が開口されていて、前記送風用ファン6により外部の空気を吸引して、該送風開口26を介して前記作業空間10に送風できるよう形成されている。なお、特に限定する必要はないが、好ましくは、前記送風開口26に送風拡散用のプリーツ状に濾紙を折畳んで形成されたフィルタ27を設置することが推奨される。
【0016】
また、前記フィルタ27を使用することなく、送風用ファン6よりの送風を拡散して微風として、作業空間10へ送風するためのパンチング板28を備えてもよい。そして更に、フィルタ27とパンチング板28の両者を備えてもよい。なお、図においては、フィルタ27とパンチング板28の両者を備えたものが示されている。
【0017】
更に、前記送風・排気ボックス8の排気室24の上方には、排気用ファン7が設けられると共に、該排気用ファン7の上方には排気ダクト29が連結されており、後述するように、排気室23へ流入したホルムアルデヒド等の有害ガスを排気用ファン7で吸引して排気ダクト29を介して室外等へ排気するよう形成されている。
【0018】
更に、前記収納部5の戸棚4と背面板9間には小巾の通気スペース30が設けられると共に、該通気スペース30の下端部は前記流入室17に連結して設けられた排気案内室20に開口連通する一方、前記通気スペース30の上端部は前記排気室24に開口連通されている。
【0019】
そして、前記排気案内20内に前記排気用ファン7により吸引されて流入したホルムアルデヒド等の有害ガスを、無害化して排気案内室20から前記通気スペース30内に吸引させるために、該排気案内20と該通気スペース30間にはケミカルフィルタ31が設置されることが推奨される。なお、図示してはいないが、前記排気案内20と該通気スペース30間にケミカルフィルタ31を設置することなく、前記排気ダクト29に前記ホルムアルデヒド等の有害ガスを処理する部材、例えば、ケミカルフィルタを設置してもよい。
【0020】
前記のような構成より成る本発明装置の作用について説明すると、先ず電源を投入して送風用ファン6および排気用ファン7を起動した後、適宜流し台2において水洗したホルマリンで固定された臓器を作業台3の作業用テーブル1上に置いて、該ホルマリンで固定された臓器を切出して処理する。
【0021】
前記ホルマリン固定された臓器の切出しおよび水洗作業において、ホルマリンからホルムアルデヒド等の有害ガスが発散するが、該有害ガスは作業台3の外周縁部、または該作業台3の外周縁部および作業用テーブル1と流し台2間に設けられた吸引部18より前記排気用ファン7の吸引力により吸引されて、該有害ガスは、図に示すように気体流入室17からガラリ部21を経て排気案内室20へ導入され、然る後、ケミカルフィルタ31で有害ガスを吸着除去し、通気スペース30、排気室24を通って排気ファン7によって排気ダクト9を介して外部へ排気される。
【0022】
すなわち、本発明装置においては、臓器の切出し作業および水洗作業をする作業台3の上方より送風用ファン6から送風されると共に、該送風は直ちに吸引部18から吸引されるので、ホルマリンから発生するホルムアルデヒド等の有害ガスが発散上昇して、検査作業者が該有害ガスを吸入して体調を崩す虞れは全くない。
【符号の説明】
【0023】
1 作業用テーブル
2 流し台
3 作業台
4 戸棚
5 収納部
6 送風用ファン
7 排気用ファン
8 送風・排気ボックス
9 背面板
10 作業空間
11 水道蛇口
12 照明器具
13 筺体
14 底板
15 区画板
16 区画壁
17 流入室
18 吸引部
19 吸引小孔
20 排気案内室
21 ガラリ部
22 区画壁
23 送風室
24 排気室
25 底板
26 送風開口
27 フィルタ
28 パンチング板
29 排気ダクト
30 通気スペース
31 ケミカルフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用テーブルと流し台を併設した作業台と、該作業台の上面、下面、側面または背面のいずれかに、送風用ファンおよび排気用ファンを備えた送風・排気ボックスを備えて形成され、前記送風用ファンにより作業台上に送風して、該作業台の外周縁部、または前記作業台外周縁部および作業用テーブルと流し台間に設けられた吸引部を介して、前記作業台から発するホルムアルデヒドを含む有害ガスを吸引して排気するようにしたことを特徴とする病理検査用流し台付きテーブル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−5051(P2011−5051A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152877(P2009−152877)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000163660)近藤工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】