説明

病理的状態における変性した器官の治療への反対の細胞分化プログラム(OCDP)の使用

本発明は、反対の細胞分化プログラム(OCDP)の原理に従って選択されたドナー器官由来の表現型が安定的に分化するまたは分化したものの、必ずしも発生について最終的に既定されていない細胞を使用することによる、変性したおよび/または病理的段階にある器官の治療方法に関し、さらに、それらを治療するための、または、それらを治療するための薬剤を製造するためのこのタイプの細胞の使用にも関する。さらに本発明は、適切な表現型が安定した細胞を含む薬剤に関し、ここで、器官のタイプが第2器官と異なる第1器官の細胞が用いられ、当該細胞は、所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴が正常な生理的状態において、正常な生理的状態にある第2細胞と反対の特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反対の細胞分化プログラム(opposite cell differentiation program:OCDP)の原理に従って選択されたドナー器官由来の表現型が安定的に分化するまたは分化したが、必ずしも発生について最終的に既定されていない細胞を使用することによる、変性したおよび/または病理的段階にある器官の治療方法に関し、さらに、それらを治療するための、または、それらを治療するための薬剤を製造するためのこのタイプの細胞の使用にも関する。さらに本発明は、適切な表現型が安定した細胞を含む薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、西欧諸国で一般的に広まっている変性疾患の多くが、細胞ベースの治療法で注目を集めている(非特許文献1)。このような病気には、神経変性疾患(アルツハイマー、パーキンソン、ハンチントンなど)、慢性肝疾患(肝炎、線維症、および、肝硬変)、糖尿病、心疾患、関節炎、および、その他の多くの病気が含まれる。このような細胞ベースの治療法の基本概念は、障害を有し、その再生能力が制限された細胞または失われた細胞を置換すること、または、それらの置換を、移植した天然の細胞またはバイオテクノロジーで修飾された細胞から産生された栄養因子で補助することである(非特許文献1)。
【0003】
治療を成功させ得るような適切な細胞:胚性幹細胞、成体幹細胞、細胞の分化転換(例えば、造血幹細胞から対応する器官の細胞へ)が考察されおり、さらに、サイトカインおよび増殖因子を産生することによってレシピエント器官において再生を促進する細胞の連続的または一時的な使用も考察されている(Slack JMW.Metaplasia and transdifferentiation:from pure biology to the clinic,Nature Rev.2007;8:369−378)。
【0004】
このような方針で最初の実験的かつ臨床的な試験が行われたが、期待外れの結果となり(非特許文献2)、同時にこの治療アプローチ特有の欠陥が示された。
本発明に係る「反対の細胞分化プログラム」(OCDP)の概念は、これまでに述べられてきた細胞置換のために設計された治療アプローチを超えるものであり、異なる戦略がとられている。
【0005】
慢性的に罹患した器官の細胞ベースの治療法における現代の方法は:
1.罹患した器官の細胞中で分化する特徴を有している、由来が異なる幹細胞、および/または、
2.所定の特徴(例えば栄養因子の産生)を有し、罹患した器官の再生にポシティブな影響を与えることができる細胞、具体的には、遺伝子操作された細胞、
を適用することに基づく。
【0006】
これらの方法はいずれも、慢性的に罹患した器官の治療可能性に関して根本的な進展が見込まれてきたか、または、このような進展をすでに達成してきたが、同時に一連の顕著かつ未解決の不利益を伴っていた。
【0007】
幹細胞療法の場合、多能(pluri)または多分化能(multipotent)(未分化)ドナー細胞(胚幹細胞または成体幹細胞(SC)、間葉または上皮の造血幹細胞、骨髄細胞、脂肪組織、および、皮膚または毛根、ならびに、その他の器官由来の幹細胞)が用いられる(非特許文献3)。このような適用は、未分化幹細胞が、限られた回数の細胞分裂で異なる器官特異的な分化細胞に変換が可能であるという特徴を有するとの発見に基づいている。その例としては、幹細胞の骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、抗原提示樹状細胞への変換が挙げられる。しかしながら、適切な手段によって(例えば転写因子のための遺伝子をトランスフェクションすることによって)分化した器官細胞をその他の分化した器官細胞に変換する可能性も考察されている(分化転換(transdifferentiation);非特許文献1)。幹細胞は、それらの表現型の柔軟性(多能または多分化能)に基づき、ほとんど全ての器官に移植されて、そこで器官の機能を有する細胞で置換が可能であると考えられる。しかしながら、このような幹細胞または分化転換の適用は以下の不利益を伴う。
・腫瘍形成性の特徴(特に胚性幹細胞の場合)
・脱分化の高い可能性(成体幹細胞の場合、腫瘍幹細胞の生成)
・細胞培養中および移植後における、器官が異質な細胞への形質転換
・遺伝子操作に基づく環境による、細胞の変性、または、不可欠な能力および/または調節能力の喪失
・限られた得られる幹細胞の量
・成体幹細胞、または、すでにほぼ分化した幹細胞の低い増殖率
・倫理上の疑念(胚性および胎性幹細胞の場合)
(慢性)変性疾患の細胞ベースの治療法のこれまでの戦略は、本来の体の機能的な細胞の自発的または薬理学的に誘導可能な保護および再生に失敗した際の、病気の進行期において治療上の可能性を有する幹細胞またはその他の細胞の使用に基づく。従って、疾患の慢性的な特徴は、器官に関して言えば、不可避の強制を加えて病的状態を維持する(病理的な)調節システムが主流であることを意味する。神経組織および非神経組織が連続的に病原因子に晒されると、器官特異的な恒常性が引き起こされて、健康な状態で損傷を補ったり制御したりすることができる代謝経路とシグナル伝達経路の両方が崩壊する。このような強制は、本来の体の再生を妨害(ブロック)するだけでなく、移植細胞を病的状態に向かわせる。その上、病気を引き起こす環境は、移植幹細胞の分化、加えてそこで発生する老化および機能喪失を促進する可能性がある。用いられる幹細胞の表現型の柔軟性が大きければ大きいほど、それらが病気の力に屈しやすくなると予想され、すなわち不完全な分化、腫瘍性の障害、または、細胞死によりこれらの細胞が消失する危険がより大きくなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Slack JMW.Metaplasia and transdifferentiation:from pure biology to the clinic.Nature Rev.2007;8:369−378
【非特許文献2】Jeffrey DR Failure of allogeneic bone marrow transplantation to arrest disease activity in multiple sclerosis.Mult.Scler.2007年7月10日(印刷出版に先立ち電子出版された)
【非特許文献3】Wobus AM,Boheler KR.Embryonic Stem Cells:prospects for developmental biology and cell therapy.Physol.Rev.2005;85:635−678
【発明の概要】
【0009】
これまで、幹細胞を使用して、変性の環境に対して耐性を有するドナー細胞の安定した永久的に機能的な表現型を達成する目的は未だ達成されていない。従って、本発明の目的は、遺伝子組換え細胞の使用によって生じる既知の不利益、加えて、細胞ベースの治療法の場合、由来が異なる幹細胞の使用によって生じる既知の不利益を回避することである。この目的は、本発明の独立請求項に係る方法によって達成され、さらに本発明の独立請求項に係る薬剤によっても達成される。従属請求項に、有利な実施態様を示した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、HSC−T6細胞系または一次MCと共培養して14日齢後のアストログリア細胞の培養物におけるベータ−IIIチューブリン陽性細胞の数の変化を示す。
【図2】図2は、継代後のアストログリア細胞(P2)と継代後のMC(AP2+MCP1)(P1)との共培養において、GS陽性細胞の数が、56日齢のアストログリア細胞(AP2)の単一培養と比較して600%増加したことを示す。
【図3】図3は、アストログリア細胞と52日齢のアストログリア細胞の培養物との共培養においてPCNA陽性細胞が370%増加したことを示す。
【図4】図4は、アストログリア細胞とHSC−T6との共培養(図4のカラム1)において、HSC−T6(カラム2)またはアストログリア細胞の初代培養物(カラム3および4)それぞれの培養におけるGFAPの発現と比較してGFAPの発現がほとんどないことを示す。
【図5】図5は、神経学的状態の中央の値を示す。
【図6】図6は、MOGで誘導した多発性硬化症を有するラットの小脳(A)、前頭前皮質(B)および海馬(C)ならびにナイーブラット(MSなし)の海馬(D)における、CFDA−標識されたHSC−T6(緑色蛍光)の局在化を示す。
【0011】
この目的の解決方法は、反対の細胞分化プログラム(OCDP)の概念を適用することにある。OCDPは、その他全ての細胞ベースの治療法のアプローチでは考慮されていない2つの基本的な前提から始まる。1つの基本的な前提は、異なる器官中に、特定の群の発現遺伝子に関して、または、特定の群の表現型の特徴に関して、逆(反対)または双方向の特性および/またはコントロールメカニズムを有する可能性がある細胞群(細胞型)が存在することであり、このような細胞群としては、例えば、組織の恒常性維持、異なる区画間(例:血液/組織;空気/組織)への物質移動、解毒および再生に関して必要不可欠な機能を担う細胞群(「GPC」(GFAP産生細胞)と略記される)が挙げられる(Danielyan L,Tolstonog G,Traub P,Salvetter J,Gleiter CH,Reisig D,Gebhardt R,Buniatian GH.4.6 Colocalization of glial fibrillary acidic protein,metallothionein,and MHC II in human,rat NOD/SCID,and nude mouse skin keratinocytes and fibroblasts.J Invest Dermatol.2007 Mar.;127(3):555−63)。第2の前提は、これらの細胞は、異なる器官中で、それぞれのタイプの組織中で優勢な異なる活性化状態または調節状態(これは、病気の場合において、必ずしもそうとは限らないが、特に重要な機能性タンパク質および/または調節メカニズムに関して、正確に反対の活性化状態(または分化状態)または調節状態と一般的に想定される)で存在するという知見である(Buniatian G.H.,H−J Hartmann,P.Traub,U.Weser,H.Wiesinger,R.Gebhardt(2001).Acquisition of blood−tissue barrier supporting features by hepatic stellate cells and astrocytes of myofibroblastic phenotype.Inverse dynamics of metallothionein and glial fibrillary acidic protein expression.Neurochem.Int.38,373−383;Buniatian G.H.,Hartmann H.−J.,Traub P.,Wiesinger H.,Albinus M.,Nagel W.,Shoeman R.,Mecke D.,Weser U.(2002).Glial Fibrillary Acidic Protein−Positive Cells of the Kidney are Capable of Raising a Protective Biochemical Barrier Similar to Astrocytes:Expression of Metallothionein in Podocytes.Anat.Rec.267,296−306)。新規かつ驚くべきことに、現在、OCDPの概念は、罹患組織の治療を目的とした細胞移植は、その天然の活性化状態または表現型が、ドナー器官における上述の重要な抗原(タンパク質)または調節メカニズムに関してレシピエント器官における「関連」細胞の表現型とは反対の代表的な細胞群が移植される場合に特に成功しているという事実に端を発している。それについて、移植された天然の細胞群が幹細胞の特徴を有するかどうか、それらが栄養因子源として役立つか、または、レシピエント器官再生を促進するその他の特徴を有するかどうかは問題ではない。反対の細胞分化プログラムの基礎を形成しているのは、多くの器官(ただし全てではない)において「関連」細胞が存在するという事実であり、その分化状態は、例えば、それぞれの関連細胞の分化状態が逆または反対と呼ぶことができる、器官が対で配置されているような形態においてそれぞれが一様ではない。このような状況において、「関連」細胞は、必ずしも同じ由来という意味での関連を意味するのではなく、単に、これらの細胞が限定された群の同じ発現遺伝子A、B、C・・・等を意味する場合もあり、このような場合、ある器官中のこれらの細胞は、例えば「遺伝子Aが高度に発現した、遺伝子Bがわずかに発現した」という特徴によって特徴付けることができ、他方の器官においては、「遺伝子Aがわずかに発現した、遺伝子Bが高度に発現した」という「反対の」特徴によって特徴付けることができる。以下に記載する2つの例を参照しながら、本発明をそれらに制限することなく再度明らかにすることとする。
A)それぞれの器官において、組織の恒常性維持、異なる区画間(例:血液/組織;空気/組織)の物質移動、解毒および再生に関して必要不可欠な機能を担う細胞群(例えば、GFAP産生細胞)が存在する。中間径フィラメントタンパク質のGFAP(グリア細胞線維性酸性タンパク質)に加えて、これらの細胞は、同時に、他の細胞骨格タンパク質、例えばSMAA(アルファ平滑筋アクチン)、マイクロフィラメントタンパク質を産生することができる。ここ数年の知見から、これらの細胞は、様々な器官中でそれぞれのタイプの組織中で優勢な異なる活性化状態で存在することが示されてきた。従って、例えば正常な脳中の星状細胞は、高いSMAA発現、および、低いGFAP発現を特徴とし、それに対して肝星細胞(HSC)は、高いGFAP発現、および、低いSMAA発現を特徴とする。この様々なタイプの遺伝子発現は、高い不浸透性を有する血液脳関門の構築に正常な星状細胞が関与する状況と共に発生し、一方で、HSCは、肝臓において高い透過性を有する血液と肝臓組織との境界の構築で協同するか、または、境界を定める。病気の場合、この発現状態はそれぞれ逆になり、従って、影響を受けた血液脳組織関門の透過性、加えて組織の恒常性維持、解毒および再生に関するさらなる特徴も逆になる。これは、変性した脳の領域において、星状細胞は高いSMAA発現を減少させ、GFAP発現を増加させていることを意味し、それに対して、肝臓中のHSCはGFAP発現を減少させ、SMAA発現を増加させていることを意味する。それに関して、正常な状態とは反対の表現型を有する細胞の特徴付けは、タンパク質GFAPおよびSMAAの例に限定されない。GPCの治療特性は、同様に、その他の発現パターンで示される場合もあり、例えばグルタミン合成酵素、メタロチオネインまたはMHCクラスII分子の発現によって示され、反対の表現型を決定する場合がある。この場合、解毒反応は、組織の機能のうち最も重要となる。
【0012】
B)第2の例は、調節の側面をより重要と考えている。多くの(ただし全てではない)成人の組織において、ヘッジホッグとWnt/β−カテニンシグナル伝達の二重性は、組織の基礎を構築することにおいて特に重要である:細胞の一部が、ヘッジホッグの影響をより多く受け、他方がWnt/β−カテニンの影響をより多く受ける。この例は腸でみられ、腸陰窩においてはWnt/β−カテニンの影響が優勢であり、一方でヘッジホッグの影響は、絨毛の先端において優勢である。このような二重性は、肝臓にも当てはまる。所定の組織特異的な代謝バランスを提供するこれら反対のシグナル経路において一定の拮抗作用が起こらないと、これら組織は、例えば腫瘍形成などの様々なタイプの病的状態に陥る。逆に、病的状態では、これらのシグナル経路のうち1つの影響が、その他のシグナル経路を犠牲にして拡大するため、上記で引用されたGPCの例とまったく同様に、その細胞の反対または逆方向の表現型が誘導されるが、これらは実質的にそれぞれの天然の表現型よりも不安定である。
【0013】
従って、OCDPは、特に移植に適した細胞の同定を可能にし、および/または、それらを前提にすることができる:まず第一に、病的状態の器官においてどの細胞型が障害を受けているか、または、優勢に変化したか、または、どれがその病的状態に関してより重要な役割を有しているかを決定する。病気の表現型は、必須の特徴に関して、その正常な表現型とは反対の挙動を示すと考えられる。これは当然ながら、全てに、すなわちこれらの細胞の全プロテオームに関して当てはまるわけではなく、上記で説明した意味において必須の特徴に関してのみ当てはまる。第2の工程において、必須の特徴に関して病気の表現型に対応しており、必要に応じて、病的状態の器官の正常な細胞型とは反対の分化パターンを示す「関連」細胞型を含む器官を同定する。このような分化するまたは分化したドナー細胞(反対の分化の特徴を有する)は、血液組織の境界面の反対の生理的機能および特徴を有する健康なドナー器官(例えば肝臓および脳)に由来するものと予想される。経験と記憶によれば(Ghazarian A,Garner WL,Ehrlich HP.Memory of past exposure to the chemokine IL−8 inhibits the contraction of fibroblast−populated collagen lattices.Exp Mol Pathol.2000 Dec;69(3):242−7;Huang C,Kim Y,Caramori ML,Moore JH,Rich SS,Mychaleckyj JC,Walker PC,Mauer M.Diabetic nephropathy is associated with gene expression levels of oxidative phosphorylation and related pathways.Diabetes.2006 Jun;55(6):1826−31.)、この細胞型を移植した後、ドナー器官で寿命中にドナー細胞が増殖し、このようドナー細胞はその病気の環境によりよく順応し、加えてそれらの発病させる力に対してより強い耐性を有する。その結果、このような細胞型によって再生をより効果的に導くことが可能になる。従って、この細胞型が、多分化能幹細胞の特定の特徴(例えば、レシピエント器官の関連細胞型に形質転換する特徴)を有するかどうか、または、単に再生を促進する特徴を有し、例えば栄養因子の発現に影響を与えるかどうかは重要ではない。
【0014】
GPCの場合、例えば、以下の状況が起こる:変性した脳において、通常の細胞構造における老化の場合、脳中でほとんどの様々なタイプの有害物質に対して強い保護作用を示す星状細胞は、それらの活性化状態の収縮した表現型を失い、さらに、機能が減少した拡張した表現型を次第に獲得する。このような脳中での病理的な状況は、表現型が安定的に分化するまたは分化した活性化された肝臓由来肝星細胞(HSC)または腎臓由来メサンギウム細胞(MC)を供給することによって改善される。
【0015】
例えば、HSCおよびMCは、活性化された収縮した表現型が得られるように、さらにそれらの分化の過程でこの表現型(すなわち機能的な星状細胞の特徴)がより強化されるようにプログラム化される。表現型が安定的に分化するまたは分化した、活性化HSCおよびMCによって産生される保護因子(エリスロポイエチン、および/または、BDNF(脳由来神経栄養因子)、および/または、メタロチオネイン、および/または、グルタミン合成酵素、および/または、NGF(神経成長因子)、および/または、1型コラーゲン、および/または、GPR49(Gタンパク質結合受容体49)、および/または、その他のもの)の多様性の結果として、これらの細胞は、障害を受けた恒常性および生存能力を改善することができ、さらに、レシピエント器官の細胞の機能性(このような脳の場合)も改善することができる。さらに、HSC/MCは、培養条件下の幹細胞と同様に、ニューロンの特徴(シナプスの形成、神経伝達物質の形成に関与するニューロン特異的なマーカー、神経伝達物質および酵素の産生)を獲得することができる。この理由のために、HSC/MC(それらのニューロンおよび星状細胞における恒常性を改善および保護する機能は別として)は、変性した脳に移植した場合、失われたニューロンや変性したニューロンの機能を置換することができる。表1に、単なる例として、それぞれの細胞型の分化状態の相関的要素として選択された因子の発現量を示す。
【0016】
脳、肝臓および腎臓のGFAP陽性の血管周囲細胞に属する星状細胞、肝星細胞(HSC)およびメサンギウム細胞(MC)の解剖学的および機能的な相関(「親和性」)によれば、後者は、血液から生じるシグナルに対して類似の防御機構を有する。脳の変性疾患の主な特徴は、ニューロンの欠損、および、脳特異的な恒常性における強い変化である(後者は星状細胞によって調節される)。神経変性疾患の細胞ベースの治療法に関するHSCおよびMCの特徴は、これらの非神経性GFAP−PCは、それらの分化(活性化)の過程で、若い星状細胞(非細胞毒性の機能)、神経幹細胞(ネスチン産生)およびニューロン(β−IIIチューブリン、神経媒介物質、神経栄養因子)の特徴的な特性を獲得し、さらにそれらを増加させるように生来プログラム化されていることである。これらはインビトロおよびインビボで迅速に増殖し、それらの分化した表現型のために、レシピエント器官の罹患組織において安定した形態で維持される。正確に逆に進行する星状細胞およびHSC/MCの分化プログラムは、神経変性疾患を治療するための、表現型が安定的に分化するまたは分化したHSC/MCの使用を可能にする。
【0017】
神経変性疾患の細胞ベースの治療法に用いられる安定的に分化するまたは分化したHSCは、EPO(エリスロポイエチン)、GS(グルタミン合成酵素)、および、MT(メタロチオネイン)を産生する。それらの細胞骨格は、ネスチン、ベータ−チューブリン、デスミン、および、SMAAによって支持されている。これらの細胞の場合において、核周囲または核(ただし神経突起を除く)で発現されるGFAPが少量で存在する可能性がある。
【0018】
従って、HSCおよび/またはMCは、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、脳卒中のような一連の神経変性疾患、加えて、ニューロンの数および機能性の欠損、ならびに、脳特異的な恒常性の変化を特徴とするその他の病気における細胞ベースの治療法に用いることができる。
【0019】
HSC/MC(または類似の分化プログラムを有するその他の細胞型)の場合、これらの細胞は、移植、静脈内投与、またはその他のタイプの投与方法によって罹患した脳に供給される。それにより、HSCの移植は、上述の病気が進行期にある患者にも実施することができる。HSCおよび/またはMCの移植は、以下を目的とする。
【0020】
1)その顕著な解毒機能(グルタミン合成酵素、エリスロポイエチン、メタロチオネインの産生)によって障害を受けた組織における脳特異的な恒常性を恒久的に改善すること
2)レシピエント固有のニューロンの生存率を高め、さらにそれらの再生(例えば、軸索の再生)も高めること
3)機能性タンパク質(例えば、アセチルコリン、チロシンヒドロキシラーゼ)を産生することができるニューロン型の細胞におけるHSC/MCの形質転換による神経伝達を改善すること
4)レシピエント器官中の細胞の機能性を改善すること(星状細胞/ニューロンにおいて、HSC/MCの存在はアセチルコリン、チロシンヒドロキシラーゼの産生を誘導する)
5)2)、3)、4)に従ってニューロンの数を増加させること
HSCは、分化したおよび活性化された状態では、MHCクラスIIタンパク質を発現しないため、HSCは、極めて弱い抗原提示機能しか有さないか、まったく有さない。従って、HSCを移植すれば、幹細胞のために起こる拒絶反応や移植組織片の低い生存率の問題がなくなるか、または、減少する。肝臓の変性は肝細胞の欠損を特徴とするため、肝細胞で行われる解毒機能が低下し、休止期のHSCによって制御される肝臓特異的な恒常性が大きく変化し、さらに活性化したHSCによって行われる肝類洞に構造的な修飾が起こる。休止期のHSCは、中間径フィラメントタンパク質のGFAPを強く発現し、このGFAPは、肝毛細血管の孔を介した血液肝臓間の変換の促進を助ける細胞外マトリックス分解酵素の産生を促進する。休止期のビタミンA貯蔵HSCは、リンパ球ホーミングに向けられた抗原提示に重要な抗原のMHCクラスII複合体を産生する。この機能はまた、肝臓の孔を介しても認識され、その孔サイズは休止期のHSCによって制御される。肝線維症は、HSCの活性化を特徴とし、これは、GFAPの欠損、ECMタンパク質消化の減少、および、脳毛細血管に適したタイプの一連の血管の発達によって示される。
【0021】
反対に、星状細胞の成熟および分化により、大量のGFAP、MHC−IIおよびメタロプロテイナーゼの蓄積が起こり、一方で、健康な肝臓および腎臓における未分化HSCおよびその他の非神経系の器官中の類似の細胞における特有な特徴を獲得する。この一連の抗原は、神経変性疾患の罹患中に提示され続ける(Markowitz CE.Interferon−beta:mechanism of action and dosing issues.Neurology.2007 Jun 12;68(24 Suppl 4):S8−11)。アルツハイマー病において血管壁に穴や裂け目が頻繁に出現することから(Scheibel AB,Duong T.On the possible relationship of cortical microvascular pathology to blood brain barrier changes in Alzheimer’s disease.Neurobiol Aging.1988 Jan−Feb;9(1):41−2)、血液組織の相互作用の促進を提供するメカニズムの普遍性、および、GFAPが高濃度化された血管周囲細胞の、傍細胞に通路を開口させることを促進する能力が実証されている。星状細胞の分化は、成人の脳で終結するか、または、神経細胞培養中に達成することができる。
【0022】
本発明によれば、表現型が安定的に分化するおよび分化した星状細胞は、線維症またはそのような障害によって実質的に引き起こされるその他の病気に罹った非神経系器官を治療するために用いることができる。この例は、肝硬変、および、腎臓の線維症である。
【0023】
分化した星状細胞(または類似の分化プログラムを有するその他の細胞型)は、非神経系器官(例えば、肝線維症、肝硬変の場合は肝臓)に供給される。また、表現型が安定的に分化する星状細胞の使用も可能である。
【0024】
幹細胞治療および遺伝子治療に対して、神経変性疾患のHSC/MCベースの治療法、および、非神経系器官(肝臓、腎臓)の線維症のグリア細胞ベースの治療法は、一連の利点を提供する。
【0025】
1)移植された細胞の安定した表現型およびレシピエント器官における優勢な病的状態に対するそれらの耐性。分化したHSC/MCは、脳に移植した後、好ましくはニューロン様およびグリア様細胞型に分化転換することができるため、幹細胞とは異なり表現型が安定した状態を保つ。これは、罹患した環境に移植する際に決定的な利点を提供する:移植された細胞は、a)変性した細胞の表現型を持ち越さないと予想され;および、b)それらの固有のプログラミングおよび高度な解毒機能の結果として、毒性の状態で生き延びるだけでなく恒常性も改善すると予想される。
【0026】
2)(胚性幹細胞とは異なり)倫理上の疑念が免除されることおよび単離方法があまり複雑でないこと。例えばHSC/MCは、レシピエント固有の(自己の)肝臓または腎臓から成体幹細胞を用いた場合よりも大量に得ることができ、さらに、細胞培養で増殖を誘発し増やすことができる。その他の可能性は、それらを血液由来の間充織幹細胞から製造すること、すなわち間充織幹細胞のHSCおよびMCへの形質転換を誘導することである。
【0027】
3)移植される細胞の量が限定されない(これらの細胞は高い増殖能力を有し、さらにドナー器官から得られるため)。
4)レシピエント組織における移植HSC/MC細胞の、その低免疫原性による、極めて優れた生存率。このような細胞は、MHCクラスIIタンパク質もほとんど発現しないため、(少なくとも細胞培養条件下で)抗原提示機能をほんのわずかしか示さない。
【0028】
まとめると、安定的に分化するまたは分化した血管周囲のGFAP陽性細胞(HSC、MCおよび星状細胞)はいずれも、レシピエント器官における移植組織片のより高い生存率、恒常性における改善、レシピエント器官における表現型の安定性、および、これらの細胞の獲得と移植前の取り扱いが容易なことを実現することができる。
【0029】
加えて、OCDP適用のさらなる例としては、糸球体足細胞および皮膚角化細胞の相互の置換が挙げられる。
表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞の適用は、既知の方式で行われる。例えばこのような細胞は、静脈内、髄腔内(脊髄内)、頭蓋内、脳室内、腹腔内、筋肉内および/または皮下に投与または移植することができる。
【0030】
適用量は、有利には、5×10〜1×1010細胞である。従ってこの量は、:1)病気の段階;2)患者の年齢;3)病気の型;3)適用経路(静脈内、腹腔内など);4)適用の持続時間(長期、一回、または、数回);5)以前罹った病気および/または併発している病気によって変化させることができる。
【0031】
適用頻度は、一回の適用、様々な注入速度および持続時間での輸注、複数回の、または長期にわたる適用が有利である。
以下に示す実施例で本発明を説明するが、これらに限定されない。
【実施例】
【0032】
1.インビトロ試験
以下、下記の略語を用いた:HSC−肝星細胞;MC−メサンギウム細胞;GFAP−PC−グリア細胞線維性酸性タンパク質陽性の血管周囲細胞;AP−アストログリア細胞の初代培養;P−継代;EPO−エリスロポイエチン;GS−グルタミン合成酵素;MT−メタロチオネイン;PCNA−増殖性細胞核抗原;OCDP−反対の細胞分化プログラム。
【0033】
様々な機能特異的および細胞型特異的なマーカータンパク質の免疫細胞化学的分析によって、それぞれの単一培養物、および、ラット由来アストログリア細胞の初代培養物との共培養物における、HSC、HSC−T6細胞系およびMCの保護特性を特定した。OCDP治療の効率は、十分に分化した脳由来の初代培養物と非神経性GFAP−PCとの共培養物より得られたインビトロモデルで評価した。非神経性GFAP−PCを以下に含ませた。
【0034】
1.成人腎臓および新生児ラット腎臓由来のメサンギウム細胞
2.成人の活性化したHSC(初代培養)
3.HSC−T6細胞系(活性化したHSC細胞系)
単独で、および、アストログリア細胞との共培養にて、これら全ての細胞型を、異なる培養期間(150日以内の培養)、互いに異なる定量的条件ならびに異なる細胞密度で解析した。
【0035】
以下に、非神経性の分化したGFAP−PC、すなわち活性化したHSCおよびMCの、分化によって獲得したニューロン特異的、形態学的および抗原性の特徴を示す。
GFAP−PC細胞(HSCおよびMC)のニューロンおよび幹細胞特異的な特徴
異なる期間(7日;14日および21日)の培養物中の新生児ラット由来のMC、および、さらに異なる継代数の成人HSCおよびMCの場合、MCにおいて、GFAPは段階的に減少し、高度に調節されたニューロンのマーカーであるベータ−IIIチューブリンの発現が次第に増加したことが観察された。加えて、幹細胞マーカーであるネスチンが多く発現された。また成人MCおよびHSCも、ネスチンおよびIIIチューブリンを多く発現した。MCにおいて、細胞培養で3回継代した後のベータ−IIIチューブリンの発現が、極めて高度に調節されていることが観察された。
【0036】
GFAP−PCにおける解毒および保護機能を有するタンパク質(GS、MT、EPO)、および、神経伝達の構成要素であるタンパク質(シナプシンおよびシナプトフィジン)、および、アセチルコリンの発現
ラット由来の成人の活性化したHSCおよびMCは、過量のグルタミン酸塩およびNH3をグルタミンに変換する酵素であるGSを多く発現する。メタロチオネイン(MT)は、そのフリーラジカルに対する「スカベンジャー」機能に関して知られており、これは、GS陽性のMCで観察される。加えて、成人の分化したHSCは、GSおよびEPOを共に発現した。またGSおよびEPOは、活性化されたMCでも発現した。成人の活性化されたMCは、9回継代した後でさえも高い増殖能を示した。これは、PCNAの発現により示された。また活性化されたMCは、機能的に活性なニューロンのマーカー:アセチルコリン、シナプシン、および、シナプトフィジンも発現した。
【0037】
HSCおよびMCのニューロン様の形態
シナプスの終末球は、ニューロンに典型的であるが、MCおよびHSCでも見られた。さらに長い軸索状の突起もニューロンに典型的であるが、MCおよびHSCから形成された。さらに、EPOおよびGSの二重染色によって、HSCにおける樹状突起の形成が示された。
【0038】
HSC−T6(HSC細胞系)とラット由来のアストログリア細胞の初代培養物との共培養におけるニューロンのマーカー(ベータ−IIIチューブリン)およびGFAPの発現
変性したCNS組織におけるOCDP療法の効率を示すために、神経変性のインビトロモデルとして、主成分として星状細胞を含み、ニューロンの数が極めてわずかなアストログリア細胞の初代培養物を用いた。このモデルは、ニューロンの数がかなり減少し、星状細胞の数が増加している罹患した病気の状態を模したものである。特定の脳領域における星状細胞は、前駆細胞の特徴を有し、ニューロンを含む新しい細胞群のための源として役立つ可能性があるため、様々な期間の細胞培養物を用いた。若い7日齢の細胞、および、中間の日齢(14日の培養)の星状細胞に加えて、それらの本来の特徴が失われた古い星状細胞(30、48、90日齢の培養物)も用いた。
【0039】
図1は、HSC−T6細胞系または一次MCと共培養して14日齢後のアストログリア細胞の培養物におけるベータ−IIIチューブリン陽性細胞の数の変化を示す。この図から、アストログリア細胞(Ao)を、HSC−T6(Ao+T6)またはMC(Ao+MC)と14日間共培養すると、アストログリア細胞のコントロール培養物(Ao14d)と比較して、ベータ−IIIチューブリン陽性細胞の数がほぼ3倍に増加したことがわかる。28日目に、アストログリア細胞の培養物には、ほんのわずかなベータ−IIIチューブリン陽性細胞しか含まれていなかった。14日齢のアストログリア細胞の培養物に5×10個のHSC−T6細胞を投与すると、7日間の共培養の後に、ベータ−IIIチューブリン陽性細胞の個体群が大いに増殖した。14日間共培養した後、ベータ−IIIチューブリン陽性細胞の数の劇的な増加が観察された。これらのベータ−IIIチューブリン陽性細胞のうち大多数がニューロンの形態を示し、すなわち、それぞれが軸索突起を伸長させ、細胞本体の周囲に多数の短い樹状突起を発生させていた。培養物中の本作用は、5倍低い細胞密度で観察された。ベータ−IIIチューブリン陽性細胞をネットワーク中に配置した。これらの細胞において、ベータ−IIIチューブリンは多く発現されたが、GFAPは極めてわずかしか発現されなかった。
【0040】
MCと新生児ラット由来のアストログリア細胞の初代培養物との共培養におけるニューロンのマーカー(ベータ−IIIチューブリン)およびGFAPの発現
上記アストログリア細胞を、新生児ラット由来のMCと共培養した。
【0041】
1.14日齢のアストログリア細胞と、新たに新生児ラットから単離したMC細胞とを、14日間共培養した。
2.14日齢のMCと、新たに新生児ラットから単離したアストログリア細胞とを、14日間共培養した。
【0042】
3.14日齢のMCと、14日齢の新生児ラット由来のアストログリア細胞の培養物とを継代培養した後に、14日間共培養した。
4.21日齢のアストログリア細胞の培養物と、21日齢の新生児ラット由来のMCとを継代培養した後に、14日間共培養した。
【0043】
5.46日齢のアストログリア細胞と、31日齢のMC細胞とを1回継代した後に、14日間共培養した。
上記で列挙した5種の共培養条件全てにおいて、ベータ−IIIチューブリン陽性細胞の数が大きく増加した。さらに、休止期細胞の数(核染色によってのみ検出が可能)は、60日齢のアストログリア細胞の培養におけるコントロール条件下で、共培養の場合よりも顕著に多かった。共培養におけるベータ−IIIチューブリン陽性細胞の数は大きく増加するため、これらの休止期細胞は、ニューロンに形質転換されると考えられる。
【0044】
140日齢のアストログリア細胞の細胞培養と、ラット由来の成人HSCまたはMCとの共培養におけるベータ−IIIチューブリンの発現
この一連の実験において、コントロールとしてより多くの140日齢のアストログリア細胞の培養物を観察した。149日齢のアストログリア細胞(AP1)と、8回継代した成人MC、または、7回継代した成人の活性化したHSCとの28日目の共培養により、ベータ−IIIチューブリン陽性細胞がコントロール培養と比較して顕著に増加した。AP1およびHSC−T6細胞系との共培養により、多くの細胞がペトリ皿の底から剥離した。しかしながら残った付着細胞群は、コントロール培養の場合よりも多いベータ−IIIチューブリン陽性細胞の数を示した。
【0045】
HSC−T6の非細胞毒性
図2は、継代後のアストログリア細胞(P2)と継代後のMC(AP2+MCP1)(P1)との共培養において、GS陽性細胞の数が、56日齢のアストログリア細胞(AP2)の単一培養と比較して600%増加したことを示す。さらにこの図において、HSC−T6(活性化したHSCの細胞系)を添加した場合と添加しなかった場合のアストログリア細胞の培養におけるGSおよびMTの発現比較研究の結果も示す。HSC−T6を52日齢のアストログリア細胞の培養に添加することによって、GS、MTおよびデスミンの劇的な増加がもたらされた。これらの細胞は強い構造を有する突起でニューロン様のネットワークを形成し、それに伴い強いGS、MTおよびデスミン発現が起こった。
【0046】
MCの非細胞毒性
58日齢のアストログリア細胞の培養におけるGSの発現およびそれに相当する活性は、14日齢の共培養物への新生児ラット由来のMCの添加によって劇的に増加した。
【0047】
アストログリア細胞とHSCまたはMCとの共培養におけるニューロン特異的な機能の発達
チロシンヒドロキシラーゼ(TH)の発現
28日目に、均一な培養物中の多数の星状細胞がTHを発現した。ラット由来の初代培養物の成人の分化した(活性化された)MC、または、7回〜8回継代した成人の分化したHSCおよびMCと共培養してから14日後、TH陽性細胞の数は、アストログリア細胞のコントロール培養物と比較してほぼ同じままであった。
【0048】
相当長期にわたる培養後のTHの発現
アストログリア細胞の初代培養物の40日目に、培養中のTH陽性細胞の数は28日目と比較してわずかに減少した。40〜52日の期間も、TH染色の強度およびTH発現細胞の数はかなり減少した。40日齢のアストログリア細胞の培養物の、ラット由来の成人の活性化されたMC、または、成人の活性化されたラット−HSC、または、活性化したHSC−T6細胞系との共培養により、TH発現が、52日齢のアストログリア細胞のコントロール培養と比較して顕著に増加した。
【0049】
ニューロフィラメントタンパク質(NF)の発現
20,000個のHSC−T6細胞を14日齢のアストログリア細胞の培養に添加することによって、アストログリア細胞のコントロール培養と比較して、NF発現細胞の数がわずかに増加した。HSC−T6細胞数が10倍増加したことにより、AP(星状細胞−初代培養物)とHSC−T6との14日の共培養物においてNF陽性細胞の数および強度が大きく増加した。
【0050】
アストログリア細胞(2回継代、AP2)とHSC−T6細胞系との共培養における増殖性細胞核抗原(PCNA)の発現
図3は、アストログリア細胞と52日齢のアストログリア細胞の培養との共培養物においてPCNA陽性細胞が370%増加したことを示す。
【0051】
2回継代(AP2)における31日齢のアストログリア細胞の増殖活性は、継代させていない初代培養と比較してわずかに減少した(PCNA発現から明らか)。増殖は、AP2のHSC−T6細胞を添加して、さらに14日間共培養したことによって大きく増加した。HSC−T6の作用は、後者を、細胞懸濁液中のAP2と混合し、同時にペトリ皿上で培養した場合に、さらに大きかった。混合培養物において大量に増殖が起こったため、培養皿の底から細胞が大量に剥離した(極めて高密度、または、極めて低密度の細胞分布の領域に隣接するの高密度で増殖する細胞の面積が大きいことによって検出することができる)。それにもかかわらず、共培養において、低密度の細胞分布を有する領域においてさえも、PCNA陽性細胞の数は、HSCを添加しないアストログリア細胞の培養の場合より多かった。
【0052】
アストログリア細胞の加齢問題に対するHSC−T6の作用
この作用を理解しやすくするために、アストログリア細胞の培養におけるGFAP発現を、単独で、および、HSC−T6との共培養でウェスタンブロットにより解析した。図4は、アストログリア細胞とHSC−T6との共培養(図4のカラム1)において、HSC−T6(カラム2)またはアストログリア細胞の初代培養物(カラム3および4)それぞれの培養におけるGFAPの発現と比較してGFAPの発現がほとんどないことを示す。これは極めて強い分化を示し、従って、アストログリア細胞におけるHSCの老化遅延作用を示す。
【0053】
共培養におけるアストログリア細胞およびHSC−T6細胞の低酸素に対する耐性
この一連の実験において、アストログリア細胞を以下の条件に晒した。
1.初回継代(P1)からの43日齢の培養物を、酸素正常状態下(NC)で単独で培養した(酸素正常状態コントロール)。
【0054】
2.初回継代(P1)からのアストログリア細胞の43日齢の培養物を、さらに10日間NC下で培養し、続いて低酸素状態(HC)(1%O、10%CO、89%N)に移してさらに48時間培養した(低酸素コントロール)。
【0055】
3.P1からの31日齢のアストログリア細胞の培養に、150,000個のHSC−T6細胞を添加し、NC下でさらに12日間共培養した。
4.PIからの31日齢のアストログリア細胞の培養に、150,000個のHSC−T6細胞を添加し、NC下でさらに10日間共培養した。続いて、この共培養物をさらに48時間HCに晒した。
【0056】
ネスチンの発現
GFAP陽性アストログリア細胞においてネスチンが中程度に発現されたことが、酸素正常状態下での初回継代(AP1)で観察された。これらの培養において、ネスチン発現は、低酸素状態下で大きく減少した。NC下でHSC−T6と12日間共培養した後、ネスチンの発現速度は大きく増加した。細胞群全体のうち50%において、ネスチン発現の強度は、GFAP発現より高かった。HC下において、ネスチンの染色強度も、NC下でのHSCを添加しないアストログリア細胞のコントロール培養の場合よりもかなり高かった。AP1とHSC−T6細胞との共培養において、アセチルコリンを発現する能力は低酸素状態下でさえも維持された。
【0057】
ベータ−IIIチューブリンの発現
ベータ−IIIチューブリンとGFAPとの同時染色、および、ベータ−IIIチューブリンに対するモノクローナル抗体を用いてそれぞれを染色したところ、酸素正常状態および低酸素状態下でそれぞれのAP1のベータ−IIIチューブリン陽性細胞のみが示された。HSC−T6と共培養して12日後に、ベータ−IIIチューブリン陽性細胞の数は、NC下およびHC下の両方で顕著に増加した。これらの細胞のうち一部は、典型的なニューロンの表現型を示した(ベータ−IIIチューブリンの存在、および、GFAPの非存在から明らかである)。HCにおいて、ベータ−IIIチューブリンの染色強度、および、ベータ−IIIチューブリン陽性細胞の数はNCとHC下で同じであったが、NC下でのAP1の単一培養よりもかなり多かった。
【0058】
グルタミン合成酵素(GS)とメタロチオネイン(MT)との共発現
NC下でAP1の単一培養中の細胞は、NC下およびHC7下のいずれにおいても、GSをわずかに発現したが、MTをほとんど発現しなかった。NC下でHSC−T6と共培養して12日後に、GSおよびMTは高度に調節された。ほとんどの細胞はGSおよびMTを共発現した。多くの細胞において、GSまたはMTの発現が優勢だった。HC下で、共培養におけるMT染色の強度は、NC下での共培養の場合よりもわずかに低かった。それにもかかわらず、HC下での共培養におけるGSおよびMTの発現は、酸素正常状態下でのアストログリア細胞の単一培養の場合よりも実質的に大きかった。
【0059】
PCNAおよびカスパーゼ3の共発現
初回継代(AP1)における43日齢のアストログリア細胞培養物中のほとんどの細胞が、酸素正常状態下で(NC)PCNAを発現しなかった。またほとんどの細胞がカスパーゼ3も含んでいなかった。さらなる低酸素状態下で、AP1培養物の細胞数およびPCNAの強度は減少した。AP1とHSC−T6との共培養により、酸素正常状態および低酸素状態下で、NCおよびHC下でのAP1培養と比較して、PCNA陽性細胞の大幅な増加が起こった。共培養においてで増殖が促進されたことにより、ペトリ皿の底から細胞が大量に剥離したが、これは、PCNA陽性細胞の大きい集塊が存在することと、隣接してまばらに独立して増殖する細胞が存在していたことから明らかである。いくつかの集塊において、カスパーゼ3の発現はほぼまったくなかった。一方で、それ以外のものにおいて、強いカスパーゼおよびPCNA発現が見られた。これは、アポトーシスで相殺される新しい増殖可能な細胞群が生じたことを示す。
【0060】
本発明の結果は、HSC、HSC−T6細胞系およびMCのアストログリア細胞の初代培養に対する保護特性を証明するものである。これらの特性を、以下のパラメーターによって評価した。
【0061】
1.共培養におけるニューロンの数の増加(ベータ−IIIチューブリン陽性ニューロンの250〜300%の増加);
2.休止期細胞の活性化;
3.チロシンヒドロキシラーゼの発現の増加;
4.GSおよびMTの発現の増加、すなわち非細胞毒性の機能の増加;
5.細胞増殖の増加;
6.星状細胞群の再生(ネスチンの染色強度の増加、および、ネスチン陽性細胞の300%の増加から明らか);
7.共培養におけるニューロンネットワークの拡張;
8.以下の作用により生じる、低酸素状態に対する耐性の増加:
a)低酸素状態下での細胞増殖の増加;
b)アストログリア細胞の培養物の再生(単一培養と比較して、酸素正常状態および低酸素状態下でネスチン陽性細胞の300%を超える増加);
c)GSおよびMT発現の増加;
d)ニューロン数の増加(ベータ−IIIチューブリン陽性細胞の300%増加から明らか)。
【0062】
これらの非神経性GFAP陽性細胞の保護特性は、以下に示すことによるそれらの長期にわたるCNS細胞に対する作用に基づく。
1.分化およびニューロン生成に必須な物質の産生;
2.それらが分化した星状細胞の機能を引き継ぐことによる、星状細胞に対して分化を遅延させる作用;
3.増殖による神経細胞群の再生;
4.それらに固有の、ニューロン様の細胞に形質転換する能力。
【0063】
2.インビボ試験
多発性硬化症を治療するためのHSC−T6細胞系の保護作用
試験計画
ヒトMOG(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)を、約1ヶ月齢の18GAラットに50μg/動物の濃度で静脈内投与した。24時間後、これらの動物を2つのグループに分けた:グループ1には、静脈内に5,000,000個の細胞(PBS溶液中)が与えられ、このグループから2匹の動物に、蛍光マーカーを付された細胞が適用された;グループ2(コントロールグループ)には、PBSのみが静脈内に与えられた。OCDPに相当する細胞として、HSC−T6細胞系の形態の肝星細胞を用いた。グループ1からの2匹の動物に、CNS中で適用された細胞の採取しやすさと持続性を検出するために、蛍光マーカーを付された細胞が静脈内に適用された。11日後に、これらの動物を準備した。加えて、MOGによるEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)誘導が誘導されていない2匹の正常な(ナイーブ)ラットに、同じ量の蛍光マーカーを付された細胞を静脈内に適用した。これらのコントロール動物の血液脳関門は無傷のままであるため、これらの動物が有するCNS中のHSC−T6細胞群はより小さいと予想される。MOG処理した動物を、以下に示す神経学の「スコア」に従って毎日観察した。
【0064】
結果
上記動物を、以下の基準に従って、顕著な運動の特徴に関して毎日試験した:
【0065】
【表1】

【0066】
図5は、神経学的状態の中央の値を示す。
MOG適用の10週間後に、動物群うち大部分が全ての病状を発症させた。この時点からさらなる期間(42〜54日)を経て、細胞が適用されたグループは神経学的な状態(スコア)において顕著な改善を示した。細胞で処理されたグループ(図5における緑色の曲線)は、0.9±0.05(n=8)の平均スコアを示したが、それに対して、PBS処理したグループ(図1における赤色の曲線)は、2.21±0.06(n=8)の平均スコアを示した。従って、グループ1(図5の「細胞」)とグループ2(「PBS」)との差の平均は、1.2±0.08のスコアであり、これは、神経学的な症状において顕著な改善があったことを意味する。
【0067】
MSラットおよび未処理のナイーブ動物の異なる脳領域におけるCFDAで標識したHSC−T6の同定
5,000,000個の細胞を静脈内適用した場合の異なる脳領域におけるHSC−T6の持続性を証明するために、CFDAで標識した蛍光性のHSC−T6細胞を取り込んだ動物の脳の一連の切片を作製し、蛍光顕微鏡検査法で試験した。
【0068】
MS動物の小脳(図6A)、前頭前皮質(図6B)、および、海馬(図6C)中の多数の細胞群が同定されたが、ナイーブラット(MOG適用なし)(図6D)の場合、それぞれの細胞はもっぱら海馬にしか見出されなかった。
【0069】
上述した結果から、本発明によって達成される利点が明白に示されたが、具体的に言えば以下の通りである。
1.分化した安定した表現型を有するHSC−T6細胞の適用により、多発性硬化症(MS)の動物実験モデルにおいて神経学的な症状に顕著な改善が起こる。
【0070】
2.静脈内投与によるHSC−T6の高密度化は、MS動物の場合、血液脳関門に障害を受けていないナイーブ動物とは顕著に異なっているが、これは、多数の細胞がCNSに移動するのは、血液脳関門が障害を受けた病気が進行中の場合のみであるが、それに対して、個々の細胞がCNSに到達することができるのは健康な動物の場合のみであることを示す。
【0071】
3.細胞が適用された動物で、細胞の適用に対する追加の毒性または腫瘍形成性の反応が示されない(健康なナイーブラットでもMSの動物でも示されない)ことから、毒物学的な観点からの細胞の使用は安全であるとみなすことができる。
【0072】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性したおよび/または病理的段階にある第2細胞を有する、生物の変性したおよび/または病理的段階にある第2器官を治療するための薬剤を製造するための、表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞のドナー細胞(第1細胞)としての使用であって、
器官のタイプが第2器官と異なる第1器官の細胞が、ドナー細胞として使用され、ここで、当該細胞が、所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴が正常な生理的状態において、正常な生理的状態にある第2細胞と反対の特徴を有している、上記使用。
【請求項2】
変性したおよび/または病理的段階にある第2細胞を有する、生物の変性したおよび/または病理的段階にある第2器官を治療するための、表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞のドナー細胞(第1細胞)としての使用であって、
器官のタイプが第2器官と異なる第1器官の細胞が、ドナー細胞として使用され、ここで、当該細胞が、所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴が正常な生理的状態において、正常な生理的状態にある第2細胞と反対の特徴を有している、上記使用。
【請求項3】
変性したおよび/または病理的段階にある細胞(第2細胞)を有する、生物の変性したおよび/または病理的段階にある器官(第2器官)の治療方法であって、
表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞が、器官のタイプが第2器官と異なる第1器官のドナー細胞(第1細胞)として適用され、ここで、当該細胞が、所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴が正常な生理的状態において、正常な生理的状態にある第2細胞と反対の特徴を有している、上記方法。
【請求項4】
第2細胞が、変性したおよび/または病理的段階において、その正常な生理的状態に対して、所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴について反対の特徴を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項5】
所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴が正常な生理的状態にあるドナー細胞が、変性したおよび/または病理的段階にある細胞と同等である、および/または、同じ特徴を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項6】
所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴について第2細胞と比較して、ドナー細胞が、変性した状態および/または病理的段階において、正常な生理的状態から反対の分化プログラムを有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項7】
生物の特定の第2細胞型の変性したおよび/または病理的段階にある細胞を保護および/または再生するための薬剤を製造するための、生物の特定の第1細胞型の表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞の使用であって、
所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴が正常な生理的状態にある第1細胞型の細胞が、正常な生理的状態にある第2細胞型の細胞と反対の特徴を有する、上記使用。
【請求項8】
生物の特定の第2細胞型の変性したおよび/または病理的段階にある細胞を保護および/または再生するための、生物の特定の第1細胞型の表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞の使用であって、
所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴が正常な生理的状態にある第1細胞型の細胞が、正常な生理的状態にある第2細胞型の細胞と反対の特徴を有する、上記使用。
【請求項9】
生物の特定の第1細胞型の表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞が適用される、生物の特定の第2細胞型の変性したおよび/または病理的段階にある細胞の保護および/または再生方法であって、
所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴が正常な生理的状態にある第1細胞型の細胞が、正常な生理的状態にある第2細胞型の細胞と反対の特徴を有する、上記方法。
【請求項10】
表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞が、正常な生理的状態にある、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項11】
第2細胞型の細胞が、変性したおよび/または病理的段階において、その正常な生理的状態に関する所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴について反対の特徴を有する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項12】
所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴が正常な生理的状態にある第1細胞型の細胞が、変性したおよび/または病理的段階にある第2細胞型の細胞と同等である、および/または、同じ特徴を有する、請求項7〜11のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項13】
正常な生理的状態にある第1細胞型の細胞が、変性したおよび/または病理的段階にある第2細胞型の細胞に関する所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴について逆および/または反対の、活性化、調節および/または分化状態を有する、請求項7〜12のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項14】
所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴が正常な生理的状態にある第1細胞型の細胞の活性化、調節および/または分化の程度が、変性したおよび/または病理的段階にある第2細胞型の細胞の活性化、調節および/または分化の程度と反対である、請求項7〜12のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項15】
各器官における第2細胞とドナー細胞の両方または第1細胞型と第2細胞型の細胞の両方が、器官組織の恒常性、異なる器官区画間の物質移動、器官解毒および/または器官再生のための機能を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項16】
所定の群の発現遺伝子および/または表現型の特徴が、器官組織の恒常性、異なる器官区画間の物質移動、器官解毒および/または器官再生の範囲内で機能を発揮する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項17】
変性したおよび/または病理的段階にある器官の細胞または第2細胞型の細胞の少なくとも1以上の所定の機能および/または特徴が、低下および/または欠損している、請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項18】
生物が、脊椎動物および/または哺乳動物である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項19】
生物が、ヒトである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項20】
ドナー細胞または第1細胞型の細胞が、所定の細胞の特徴および/または機能として保護因子を産生する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項21】
ドナー細胞または第1細胞型の細胞が、第2細胞または第2型の細胞に特有の、成長および/または再生を促す1以上の因子を産生し、この因子が、第2細胞または第2細胞型の細胞によって産生されないかまたは不十分に産生される、請求項1〜20のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項22】
GFAP陽性細胞、特に、血管周囲のGFAP陽性細胞が、使用/適用される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項23】
使用/適用される細胞が、エリスロポエチンおよび/またはBDNFおよび/またはメタロチオネインおよび/またはグルタミン合成酵素および/またはNGFおよび/または1型コラーゲンおよび/またはGPR49および/またはさらなる保護因子を産生する、請求項1〜22のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項24】
グリア細胞が、使用/適用される、請求項1〜23のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項25】
表現型が安定的に分化するまたは分化した星状細胞または類似の分化プログラムを有する細胞が使用/適用される、非神経器官の線維症を治療するための、請求項1〜24のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項26】
表現型が安定的に分化するまたは分化した星状細胞または類似の分化プログラムを有する細胞が使用/適用される、肝硬変を治療するための、請求項1〜25のいずれか1項に記載の使用/方法。
【請求項27】
表現型が安定的に分化するまたは分化した星状細胞または類似の分化プログラムを有する細胞が使用/適用される、腎線維症を治療するための、請求項25に記載の使用/方法。
【請求項28】
表現型が安定的に分化するまたは分化した肝星細胞および/またはメサンギウム細胞または類似の分化プログラムを有する細胞が使用/適用される、神経変性病を治療するための、請求項1〜23に記載の使用/方法。
【請求項29】
表現型が安定的に分化するまたは分化した肝星細胞、メサンギウム細胞、膵臓星細胞、脾臓樹状細胞および/または皮膚線維芽細胞が使用/適用される、ニューロン脱落および/またはその機能性および/または器官特異的な恒常性障害による疾病を治療するための、請求項1〜23および28に記載の使用/方法。
【請求項30】
表現型が安定的に分化するまたは分化した肝星細胞、メサンギウム細胞、膵臓星細胞、脾臓樹状細胞および/または皮膚線維芽細胞が使用/適用される、アルツハイマー病を治療するための、請求項1〜23および28〜29に記載の使用/方法。
【請求項31】
表現型が安定的に分化するまたは分化した肝星細胞、メサンギウム細胞、膵臓星細胞、脾臓樹状細胞および/または皮膚線維芽細胞が使用/適用される、多発性硬化症を治療するための、請求項1〜23および28〜29に記載の使用/方法。
【請求項32】
表現型が安定的に分化するまたは分化した肝星細胞、メサンギウム細胞、膵臓星細胞、脾臓樹状細胞および/または皮膚線維芽細胞が使用/適用される、パーキンソン病を治療するための、請求項1〜23および28〜29に記載の使用/方法。
【請求項33】
表現型が安定的に分化するまたは分化した肝星細胞、メサンギウム細胞、膵臓星細胞、脾臓樹状細胞および/または皮膚線維芽細胞が使用/適用される、脳卒中を治療するための、請求項1〜23および28〜29に記載の使用/方法。
【請求項34】
少なくとも1以上の所定の細胞の特徴および/または機能に関して、表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞を含む、医薬品。
【請求項35】
表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞が、所定の細胞の特徴および/または機能として保護因子を産生する、請求項34に記載の医薬品。
【請求項36】
表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞が、GFAP陽性細胞、特に、血管周囲のGFAP陽性細胞である、請求項34〜35のいずれかに記載の医薬品。
【請求項37】
表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞が、グリア細胞である、請求項34〜36のいずれかに記載の医薬品。
【請求項38】
表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞が、星状細胞または類似の分化プログラムを有する細胞である、請求項30〜36のいずれかに記載の医薬品。
【請求項39】
表現型が安定的に分化するまたは分化した細胞が、肝星細胞、メサンギウム細胞、膵臓星細胞、脾臓樹状細胞および/または皮膚線維芽細胞である、請求項30〜36のいずれかに記載の医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−539198(P2010−539198A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525213(P2010−525213)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003146
【国際公開番号】WO2009/036817
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(506138225)
【Fターム(参考)】