説明

癌を処置するためのペグ化IL−10の使用

【課題】増殖性疾患の処置において使用できる化学修飾された哺乳類サイトカインタンパク質類を同定する。
【解決手段】本発明は、腫瘍を有効な量のペグ化インターロイキン−10(PEG−IL−10)に接触させるステップを含む、腫瘍または癌の増殖を阻害または減少させる方法を提供する。一実施形態においては、PEG−IL−10は、モノ−PEG−IL−10である。PEG−IL−10には、SC−PEG−12Kリンカーが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類サイトカイン分子および関連試薬の使用に関する。特に、本発明は、増殖性疾患の処置において使用できる、化学修飾された哺乳類サイトカインタンパク質類の同定に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌および腫瘍は、免疫系により制御または根絶されうる。免疫系は、数種類のリンパ細胞および骨髄細胞、例えば単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、好酸球、T細胞、B細胞、および好中球を含む。これらのリンパおよび骨髄細胞は、サイトカイン類として知られる、分泌シグナリングタンパク質類を生産する。サイトカイン類には、例えばインターロイキン−10(IL−10)、インターフェロン−ガンマ(IFNγ)、IL−12、およびIL−23が含まれる。免疫反応には、炎症、すなわち全身または体の特定の場所における免疫細胞の蓄積が含まれる。感染性因子または異物に応答して、免疫細胞がサイトカインを分泌し、このサイトカインが、免疫細胞増殖、成長、分化、または移動を調節する。過剰の免疫反応は、自己免疫不全等の病理的帰結をもたらしうるが、免疫反応障害は、癌をもたらしうる。免疫系による抗腫瘍反応には、例えばマクロファージ、NK細胞、および好中球によって媒介されるような先天免疫と、例えば抗原提示細胞(APC)、T細胞、およびB細胞によって媒介されるような適応免疫とが含まれる(例えば、Abbas等(編)(2000)Cellular and Molecular Immunology,W.B.Saunders Co.,ペンシルベニア州フィラデルフィア;Oppenheim and Feldmann(編)(2001)Cytokine Reference,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ;非特許文献1;非特許文献2を参照)。
【0003】
免疫反応を調節する方法が、癌、例えば黒色腫の処置において用いられている。これらの方法には、IL−2、IL−10、IL−12、腫瘍壊死因子−アルファ(TNFアルファ)、IFNγ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、およびトランスフォーミング成長因子(TGF)等のサイトカインによるか、サイトカインアンタゴニスト(例えば抗体)による処置が含まれる。インターロイキン−10は、サイトカイン合成阻止因子として最初に特徴づけされた(CSIF;例えば、非特許文献3を参照)。IL−10は、免疫抑制剤および免疫促進剤の両方として機能できる、T細胞、B細胞、単球により生産される多面的サイトカインである(例えば、非特許文献4;および非特許文献5を参照)。
【0004】
動物モデルから、IL−10が、用量依存的様式で、NK細胞活性化を誘導し、標的細胞破壊を促進しうることが示唆される(例えば、非特許文献6;非特許文献7)。さらなる研究により、腫瘍微小環境におけるIL−10の存在が、患者生存率の改善と相関することが示される(例えば、非特許文献8を参照)。
【0005】
残念ながら、IL−10は、血中半減期が比較的短く、2〜6時間である(例えば、非特許文献9を参照)。本発明は、癌を処置するための、改変された形のIL−10、例えばペグ化されたIL−10を使用する方法を提供することにより、この問題に対処する。非ペグ化IL−10と比較して、ペグ化された形のIL−10には、血中半減期の延長に加えて、驚くべきことに、例えば腫瘍部位へのCD8+T細胞の動員増加による、殺腫瘍活性の増加がみられた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】von Andrian and Mackay、New Engl.J.Med.(2000)343:1020−1034
【非特許文献2】Davidson and Diamond、New Engl.J.Med.(2001)345:340−350
【非特許文献3】Fiorentino等、J.Exp.Med.(1989)170:2081−2095
【非特許文献4】Groux等、J.Immunol.(1998)160:3188−3193
【非特許文献5】Hagenbaugh等、J.Exp.Med.(1997)185:2101−2110
【非特許文献6】Zheng等、J.Exp.Med.(1996)184:579−584
【非特許文献7】Kundu等、J.Natl.Cancer Inst.(1996)88:536−541
【非特許文献8】Lu等、J.Clin.Oncol.(2004)22:4575−4583
【非特許文献9】Smith等、Cellular Immunol.(1996)173:207−214
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ペグ化IL−10が改良された腫瘍成長モジュレータである、という発見に基づく。本発明は、腫瘍を有効な量のペグ化インターロイキン−10(PEG−IL−10)に接触させるステップを含む、腫瘍または癌の増殖を阻害または減少させる方法を提供する。一実施形態においては、PEG−IL−10は、モノ−PEG−IL−10である。PEG−IL−10には、SC−PEG−12Kリンカーが含まれる。代替的実施形態においては、PEG−IL−10には、メトキシ−PEG−アルデヒド(PALD−PEG)リンカーが含まれる。ある実施形態においては、PALD−PEGリンカーには、5KDa、12KDa、または20KDaからなる群より選択される分子量を有するPEG分子が含まれる。PEG−IL−10が、腫瘍または癌の増殖を阻害し、またはPEG−IL−10が、腫瘍または癌のサイズを減少させる。PEG−IL−10は、非ペグ化IL−10と比較して、腫瘍内へのCD8+T細胞の浸潤を増加させる。別の実施形態では、PEG−IL−10が、IFNγ、IL−4、IL−6、IL−10、およびRANK−リガンド(RANK−L)からなる群より選択されうる、少なくとも一つの炎症性サイトカインの発現を増加させる。ある実施形態では、PEG−IL−10が、少なくとも一つの化学療法剤と共投与(co−administer)される。化学療法剤は、表16の化学療法剤の少なくとも1つでありうる。ある実施形態では、腫瘍または癌は、大腸癌、卵巣癌、乳癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、および白血病からなる群より選択される。
【0008】
本発明は、有効な量のPEG−IL−10を対象に投与するステップを含む、癌または腫瘍を患う対象を処置する方法を含む。一実施形態においては、PEG−IL−10は、モノ−PEG−IL−10である。PEG−IL−10には、SC−PEG−12Kリンカーが含まれる。別の実施形態においては、PEG−IL−10には、5KDa、12KDa、または20KDaからなる群より選択される分子量を有しうる、メトキシ−PEG−アルデヒド(PALD−PEG)リンカーが含まれる。PEG−IL−10は、癌または腫瘍の増殖を阻害し、または腫瘍または癌のサイズを減少させる。非ペグ化IL−10と比較して、PEG−IL−10は、腫瘍へのCD8+T細胞の浸潤を増加させる。別の実施形態においては、PEG−IL−10は、少なくとも一つの炎症性サイトカインの発現を増加させる。炎症性サイトカインは、IFNγ、IL−4、IL−6、IL−10、およびRANK−Lからなる群より選択される。ある実施形態においては、PEG−IL−10が、少なくとも一つの化学療法剤と共投与される。化学療法剤は、表16の化学療法剤の少なくとも1つでありうる。PEG−IL−10は、癌または腫瘍の転移を減少させる。さらなる実施形態においては、腫瘍または癌は、大腸癌、卵巣癌、乳癌、肺癌、黒色腫、神経膠芽腫、および白血病からなる群より選択される。ある実施形態においては、処置対象はヒトであり、PEG−IL−10は、ヒトPEG−IL−10(PEG−hIL−10)である。
したがって、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
腫瘍または癌の増殖を阻害または減少する方法であり、この腫瘍を、有効な量のペグ化インターロイキン10(PEG−IL−10)に接触させるステップを含む、方法。
(項目2)
上記PEG−IL−10が、メトキシ−PEG−アルデヒド(PALD−PEG)リンカーを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記PEG−IL−10が、上記腫瘍または癌の増殖を阻害する、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記PEG−IL−10が、上記腫瘍または癌のサイズを減少させる、項目1に記載の方法。
(項目5)
非ペグ化IL−10と比較して、PEG−IL−10が、上記腫瘍へのCD8+T細胞の浸潤を増加させる、項目1に記載の方法。
(項目6)
PEG−IL−10が、少なくとも一つの炎症性サイトカインの発現を増加させる、項目1に記載の方法。
(項目7)
上記炎症性サイトカインが、IFNγ、IL−4、IL−6、IL−10、およびRANK−リガンド(RANK−L)からなる群より選択される、項目6に記載の方法。
(項目8)
上記PEG−IL−10が、少なくとも一つの化学療法剤と共投与される、項目1に記載の方法。
(項目9)
上記化学療法剤が、表16の化学療法剤の少なくとも1つである、項目8に記載の方法。
(項目10)
上記腫瘍または癌が、大腸癌、卵巣癌、乳癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、および白血病からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目11)
癌または腫瘍を患う対象を治療する方法であり、有効な量のPEG−IL−10を、この対象に投与するステップを含む、方法。
(項目12)
上記PEG−IL−10が、メトキシ−PEG−アルデヒド(PALD−PEG)リンカーを含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
上記PEG−IL−10が、上記癌または腫瘍の増殖を阻害する、項目11に記載の方法。
(項目14)
上記PEG−IL−10が、上記腫瘍または癌のサイズを減少させる、項目11に記載の方法。
(項目15)
非ペグ化IL−10と比較して、PEG−IL−10が、上記腫瘍へのCD8+T細胞の浸潤を増加させる、項目11に記載の方法。
(項目16)
PEG−IL−10が、少なくとも一つの炎症性サイトカインの発現を増加させる、項目11に記載の方法。
(項目17)
上記炎症性サイトカインが、IFNγ、IL−4、IL−6、IL−10、およびRANK−Lからなる群より選択される、項目16に記載の方法。
(項目18)
上記PEG−IL−10が、少なくとも一つの化学療法剤と共投与される、項目11に記載の方法。
(項目19)
上記化学療法剤が、表16の化学療法剤の少なくとも1つである、項目18に記載の方法。
(項目20)
PEG−IL−10が、癌または腫瘍の転移を減少させる、項目11に記載の方法。
(項目21)
上記腫瘍または癌が、大腸癌、卵巣癌、乳癌、肺癌、黒色腫、神経膠芽腫、および白血病からなる群より選択される、項目11に記載の方法。
(項目22)
上記対象が、ヒトである、項目11に記載の方法。
(項目23)
上記PEG−IL−10が、ヒトPEG−IL−10(PEG−hIL−10)である、項目22に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
添付の特許請求の範囲を含めた本明細書で使用される、「a」、「an」、「the」等の言葉の単数形には、文脈から逆が明らかでない限り、それらの複数形を含む。本明細書の全ての引用文献は、個々の刊行物、特許出願、または特許が参照により本明細書に組み込まれるものと特に個々に示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
I.定義
細胞またはレセプターに使用されるところの、「活性化」、「刺激」、および「処置」は、文脈上または明示的に示されない限り、同じ意味、例えばリガンドによる細胞またはレセプターの活性化、刺激、または処置の意味を有する。「リガンド」には、自然および合成のリガンド、例えばサイトカイン、サイトカイン変異体、アナログ、変異タンパク質、および抗体由来の結合組成物を含む。「リガンド」には、小分子、例えばサイトカインのペプチド模倣物(mimetic)および抗体のペプチド模倣物も含む。「活性化」は、内部機構ならびに外部または環境因子により制御される細胞活性化をいい得る。例えば細胞、組織、臓器、または有機体等の「反応」には、生化学的または生理的挙動、例えば生物コンパートメント内の濃度、密度、接着、または移動、遺伝子発現率、または分化状態の変化を含み、変化は、活性化、刺激、または処置、または遺伝的プログラミング等の内部機構と相関する。
【0011】
分子の「活性」は、分子のリガンドまたはレセプターに対する結合、触媒活性;遺伝子発現または細胞シグナリング、分化、または成熟を刺激する能力;抗原活性、他の分子の活性の調節等を記載するか、またはいい得る。分子の「活性」は、活性細胞間相互作用、例えば接着を調節または維持する活性、または細胞の構造、例えば細胞膜または細胞骨格を維持する活性も意味しうる。「活性」は、比活性、例えば[触媒活性]/[mgタンパク質]、または[免疫学的活性]/[mgタンパク質]、生物コンパートメント内の濃度等も意味しうる。「増殖活性」には、例えば、正常な細胞分裂、ならびに癌、腫瘍、異形成、細胞形質転換、転移、および血管形成を促進するか、それらに必要であるか、それらに特に関連する、活性を含む。
【0012】
動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、臓器、または生物流体に使用されるところの、「投与」および「処置」とは、外来性の医薬品、治療剤、診断剤、化合物、または組成物の、動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器、または生物流体への接触をいう。「投与」および「処置」は、例えば治療、プラセボ、薬物動態学的、診断、研究、および実験法をさしうる。「細胞の処置」には、細胞に対する試薬の接触、ならびに、細胞と接触する流体に対する試薬の接触を含む。「投与」および「処置」は、例えば細胞の、試薬、診断、結合組成物による、または別の細胞による、in vitroおよびex vivoの処置も意味する。ヒト、獣医学的、または研究対象に使用されるところの、「処置」とは、治療的処置、防止または予防法、研究および診断のための適用をいう。ヒト、獣医学的、または研究対象、または細胞、組織、または臓器に使用されるところの、「処置」には、ヒトまたは動物対象、細胞、組織、生理的コンパートメント、または生理流体に対する、PEG−IL−10の接触が含まれる。「細胞の処置」には、PEG−IL−10がIL−10レセプター(IL−10R1およびIL−10R2のヘテロ二量体)に、例えば流体またはコロイド相において接触する状況、ならびに、例えば流体が細胞またはレセプターと接触するが、アゴニストまたはアンタゴニストが細胞またはレセプターに直接接触することが示されていない場合などに、IL−10アゴニストまたはアンタゴニストが流体に接触する状況も含まれる。
【0013】
「悪液質」は、代謝の障害から生じる筋肉(筋肉消耗)および脂肪の減少を伴う、消耗症候群である。悪液質は、様々な癌(「癌悪液質」)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、進行した臓器不全、およびAIDSで生じる。癌悪液質は、例えば顕著な体重減少、食欲不振、無力症、および貧血により特徴づけられる。食欲不振は、食物嫌悪など、食欲の欠如から生じる障害である(例えば、MacDonald等(2003)J.Am.Coll.Surg.197:143−161;Rubin(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:5384−5389;Tisdale(2002)Nature Reviews Cancer 2:862−871;Argiles等(2003)Drug Discovery Today 8:838−844;Lelli等(2003)J.Chemother.15:220−225;Argiles等(2003)Curr.Opin.Clin.Nutr.Metab.Care 6:401−406を参照)。
【0014】
「PEG−IL−10の保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の核酸配列をさす。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一の核酸が、任意の所与のタンパク質をコードしうる。
【0015】
アミノ酸配列については、技術者は、コードされた配列のアミノ酸またはわずかな比率のアミノ酸を保存されたアミノ酸に置換する、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換が、「保存的に修飾された変異体」であることを認識する。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該分野において周知である。保存的置換の例は、以下の群の一つにおけるアミノ酸の、同じ群の別のアミノ酸との交換である。(Lee等に対する米国特許第5,767,063号;KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105−132):
(1)疎水性:ノルロイシン,Ile,Val,Leu,Phe,Cys,またはMet;
(2)中性親水性:Cys,Ser,Thr;
(3)酸性:Asp,Glu;
(4)塩基性:Asn,Gln,His,Lys,Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly,Pro;
(6)芳香族:Trp,Tyr,Phe;
(7)小アミノ酸:Gly,Ala,Ser。
【0016】
「有効な量」は、医学的状態の症状または兆候を改善または防止するために十分な量を含む。有効な量は、診断を可能にするかまたは促進するために十分な量も意味する。特定の患者または獣医学的対象に対する有効な量は、治療される状態、患者の全体的な健康状態、投与の方法経路および用量および副作用の重症度等の要因により変動しうる(例えば、Netti等に対する米国特許第5,888,530号を参照)。有効な量は、有意な副作用または毒作用を回避する、最大用量または投与プロトコルでありうる。効果により、100%を健常人にみられる診断パラメータとして定義して、少なくとも5%、通常は少なくとも10%、より通常は少なくとも20%、最も通常は少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、理想的には少なくとも70%、より理想的には少なくとも80%、最も理想的には少なくとも90%の、診断尺度またはパラメータの改善がもたらされる(例えば、Maynard等(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice,Interpharm Press,フロリダ州ボカラトン;Dent(2001)Good Laboratory and Good Clinical Practice,Urch Publ.,ロンドン、UKを参照)。PEG−IL−10の有効な量は、腫瘍容積を減らし、腫瘍成長を阻害し、転移を防止し、または腫瘍部位へのCD8+T細胞浸潤増加させるのに十分な量である。
【0017】
「外因性」とは、文脈に応じて、有機体、細胞、または人体の外で生産される物質をいう。「内因性」は、文脈に応じて、細胞、有機体、または人体の中で生産される物質をいう。
【0018】
「免疫状態」または「免疫不全」は、例えば病的炎症、炎症性疾患、および自己免疫疾患または障害を含む。「免疫状態」には、免疫系による根絶(irradication)に抵抗する感染、腫瘍、および癌を含む、感染、持続性感染、および癌、腫瘍、および血管形成等の増殖状態もいう。「癌性の状態」には、例えば癌、癌細胞、腫瘍、血管形成、および異形成等の前癌性状態が含まれる。
【0019】
「阻害剤」および「アンタゴニスト」、または「活性化剤」および「アゴニスト」は、例えばリガンド、レセプター、補助因子、遺伝子、細胞、組織、または臓器の、例えば活性化のための、阻害または活性化分子をそれぞれ意味する。例えば遺伝子、レセプター、リガンド、または細胞のモジュレータは、遺伝子、レセプター、リガンド、または細胞の活性を変更する分子であり、活性が、活性化、阻害、またはその調節特性において変更されうる。モジュレータは、単独で作用するか、補助因子、例えばタンパク質、金属イオン、または小分子を使用しうる。阻害剤は、例えば遺伝子、タンパク質、リガンド、レセプター、または細胞の活性化を減少させ、遮断し、防止し、遅延させ、不活性化し、感度を減じ、ダウンレギュレートする化合物である。活性化剤は、例えば遺伝子、タンパク質、リガンド、レセプター、または細胞の活性化を増加、活性化、促進、増強し、感度を高め、またはアップレギュレートする化合物である。阻害剤は、構成的活性を減少、遮断、または不活性化する組成物として定義することもできる。「アゴニスト」は、標的と相互作用して、標的の活性化の増加を引き起こし、または促進する、化合物である。「アンタゴニスト」は、アゴニストの作用に対抗する化合物である。アンタゴニストは、アゴニストの活性を防止、減少、阻害、または中和する。アンタゴニストは、同定されるアゴニストがない場合にも、標的、例えば標的レセプターの構成的活性を防止、阻害、または減少させることができる。
【0020】
阻害の程度を検査するため、例えば、所与の、例えばタンパク質、遺伝子、細胞、または有機体を含む試料またはアッセイが、潜在的な活性化剤または阻害剤で処理され、阻害剤を伴わないコントロール試料と比較される。コントロール試料、すなわちアンタゴニストで処理されないものには、100%の相対的活性値が割り当てられる。コントロールに対する活性値が、約90%以下、典型的に85%以下、より典型的に80%以下、最も典型的に75%以下、一般には70%以下、より一般には65%以下、最も一般には60%以下、典型的に55%以下、通常は50%以下、より通常は45%以下、最も通常は40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下、および最も好ましくは25%未満であるときに、阻害が達成される。コントロールに対する活性値が、約110%、一般には少なくとも120%、より一般には少なくとも140%、さらに一般的には少なくとも160%、多くの場合には少なくとも180%、より多くの場合には少なくとも2倍、最も多くの場合には少なくとも2.5倍、通常は少なくとも5倍、より通常は少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも40倍、最も好ましくは40倍以上高いときに、活性化が達成される。
【0021】
活性化または阻害のエンドポイントは、以下の通りにモニタされうる。例えば細胞、生理流体、組織、臓器、および動物またはヒト対象の活性化、阻害および処置に対する反応を、エンドポイントによりモニタできる。エンドポイントは、所定の量または割合の、サイトカイン、毒性酸素、またはプロテアーゼの放出等の、例えば炎症、腫瘍原性、または細胞脱顆粒または分泌の指標を含みうる。エンドポイントには、例えば、所定量のイオン流出または輸送;細胞移動;細胞接着;細胞増殖;転移の可能性;細胞分化;および表現型の変化、例えば炎症、アポトーシス、形質転換、細胞周期、または転移に関連する遺伝子の発現の変化が含まれうる(例えば、Knight(2000)Ann.Clin.Lab.Sci.30:145−158;HoodおよびCheresh(2002)Nature Rev.Cancer 2:91−100;Timme等(2003)Curr.Drug Targets 4:251−261;RobbinsおよびItzkowitz(2002)Med.Clin.North Am.86:1467−1495;GradyおよびMarkowitz(2002)Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.3:101−128;Bauer等(2001)Glia 36:235−243;StanimirovicおよびSatoh(2000)Brain Pathol.10:113−126を参照)。
【0022】
阻害のエンドポイントは、一般にコントロールの75%以下、好ましくはコントロールの50%以下、より好ましくはコントロールの25%以下、もっとも好ましくはコントロールの10%以下である。一般に、活性化のエンドポイントは、コントロールの少なくとも150%、好ましくはコントロールの少なくとも二倍、より好ましくはコントロールの少なくとも四倍、最も好ましくはコントロールの少なくとも10倍である。
【0023】
「標識された」組成物は、直接または間接的に、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、同位体的、化学的方法により検出可能である。例えば、有用な標識には、32P、33P、35S、14C、H、125I、安定同位体、蛍光染料、高電子密度試薬(electron−dense reagent)、基質、エピトープタグ、または酵素、例えば酵素結合イムノアッセイにおいて用いられるようなもの、またはfluorettesが含まれる(例えば、RozinovおよびNolan(1998)Chem.Biol.5:713−728を参照)。
【0024】
「リガンド」は、例えば、レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用しうる、小分子、ペプチド、ポリペプチド、および膜関連または膜結合型分子、またはその複合体をさす。「リガンド」には、アゴニストまたはアンタゴニストでないが、その生物学的性質、例えばシグナリングまたは接着に大きな影響を与えずにレセプターに結合しうる因子も含まれる。さらに、「リガンド」には、例えば化学的または組換え法により、膜結合型リガンドの可溶形態に変更された膜結合型リガンドが含まれる。慣例によって、リガンドが第一細胞の膜に結合する場合には、レセプターは通常第二細胞にある。第二細胞は、第一細胞と同じまたは異なる正体を有しうる。リガンドまたはレセプターは完全に細胞内でありうる、すなわちサイトソル、核、または他の細胞内コンパートメントに存在しうる。リガンドまたはレセプターは、その位置を、例えば細胞内コンパートメントから形質膜の表面へと変更しうる。リガンドおよびレセプターの複合体は、「リガンドレセプター複合体」と称される。リガンドおよびレセプターがシグナリング経路に関わる場合においては、リガンドが上流の位置にあり、レセプターがシグナリング経路の下流の位置にある。
【0025】
「小分子」が、生理機能および腫瘍および癌疾患の治療のために提供される。「小分子」は、分子量が10kD未満、典型的に2kD未満、好ましくは1kD未満の分子として定義される。小分子には、無機分子、有機分子、無機成分を含む有機分子、放射性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣物、および抗体模倣物が含まれるが、これに限られない。治療としては、小分子は、大きな分子より細胞に浸透しやすく、劣化しにくく、免疫反応を誘発しにくい。抗体およびサイトカインのペプチド模倣物等の小分子、ならびに小分子毒素が記載される(例えば、Casset等(2003)Biochem.Biophys.Res.Commun.307:198−205;Muyldermans(2001)J.Biotechnol.74:277−302;Li(2000)Nat.Biotechnol.18:1251−1256;Apostolopoulos等(2002)Curr.Med.Chem.9:411−420;Monfardini等(2002)Curr.Pharm.Des.8:2185−2199;Domingues等(1999)Nat.Struct.Biol.6:652−656;SatoおよびSone(2003)Biochem.J.371:603−608;Stewart等に対する米国特許第6,326,482号を参照)。
【0026】
「化学療法剤」は、癌の治療において有用な化学化合物である。化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロスフォスファミド(CYTOXAN(商標))等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポサルファン等のアルキルスルホネート類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン(carboquone)、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa)等のアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロロメラミム(trimethylolomelamime)を含むエチレンイミン類およびメチラメラミン類(methylamelamine)、チオランブシル(chiorambucil)、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド(ifosfamide)、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード類;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン(ranimustine)等のニトロソウレア類(nitrosureas);アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン類(olivomycin)、ペプロマイシン(peplomycin)、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス(ubenimex)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン等の抗生物質類;メトトレキセートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)等の抗−代謝産物類;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート等の葉酸アナログ類;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリンアナログ類;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン、カルモフール(carmofur)、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロクスウリジン、5−FU等のピリミジンアナログ類;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎類(anti−adrenal);フロリン酸(frolinic acid)等の葉酸補充剤(replenisher);アセグラトン(aceglatone);アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸(aminolevulinic acid);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン(lentinan);ロニダミン(lonidamine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン(pirarubicin);ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);シゾフィラン(sizofiran);スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール(mitobronitol);ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(“Ara−C”);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)Bristol−Myers Squibb Oncology,ニュージャージー州プリンストン)およびドキセタキセル(Taxotere(商標)Rhone−Poulenc Rorer,アントニー、フランス);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチンおよびカルボプラチン等のプラチナアナログ類;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP−16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(vinorelbine);ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド(teniposide);ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン類(esperamicins);カペシタビン;および、以上のいずれかの薬理学上許容可能な塩類、酸類または誘導体類が含まれる。例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)−イミダゾール類、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン(onapristone)、およびトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン;およびフルタミド、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、ロイプロリド、およびゴセレリン等の抗アンドロゲン;および以上のいずれかの薬理学上許容可能な塩類、酸類または誘導体類等の、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤も、この定義に含まれる。
【0027】
リガンド/レセプター、抗体/抗原、または他の結合対についていう場合の「特異的に」または「選択的に」は、タンパク質および他の生物学製剤(biologics)の雑多な集団におけるそのタンパク質の存在を決定する結合反応を示す。したがって、指定の条件の下では、特異的リガンドは、特定のレセプターと結合し、サンプル中に存在する他のタンパク質に、有意な量で結合することはない。意図される方法における、抗体または抗体の抗原結合部位に由来する結合組成物は、その他の抗体またはこれに由来する結合組成物との親和性よりも少なくとも二倍高い、好ましくは少なくとも十倍高い、より好ましくは少なくとも二十倍高い、最も好ましくは少なくとも百倍高い親和性で、その抗原またはその変異体または変異タンパク質に結合する。好ましい実施形態においては、抗体は、例えばスキャッチャード分析で決定されるところにより、約10リットル/モルより高い親和性を有する(Munsen等(1980)Analyt.Biochem.107:220−239)。
【0028】
本明細書で使用される「インターロイキン−10」または「IL−10」は、ポリエチレングリコールに結合されているか非結合形態であるかを問わず、非共有結合によりホモ二量体を形成する二つのサブユニットを含むタンパク質である。本明細書で使用されるところでは、特に明記しない限り、「インターロイキン−10」および「IL−10」は、「hIL−10」または「mIL−10」とも呼ばれるヒトまたはマウスIL−10をさしうる(Genbank Accession番号NP_000563;M37897;または米国特許第6,217,857号)。
【0029】
「ペグ化IL−10」または「PEG−IL−10」は、結合が安定するように、リンカーを介してIL−10タンパク質の一つまたは二つ以上のアミノ酸残基に共有結合した一つ以上のポリエチレングリコール分子を有する、IL−10分子である。用語「モノペグ化IL−10」および「モノ−PEG−IL−10」は、一つのポリエチレングリコール分子が、リンカーを介してIL−10二量体の一つのサブユニット上の単一のアミノ酸残基に共有結合していることを意味する。PEG部分の平均分子量は、約5,000〜約50,000ダルトンの間であるのが好ましい。IL−10に対するPEG結合の方法または部位は重要でないが、ペグ化により生物活性分子の活性が変更されないか、または変更が最小限であることが好ましい。半減期の増加が、生物活性の任意の減少より大きいことが好ましい。PEG−IL−10については、米国特許第7,052,686号明細書に記載されるように、細菌性抗原(リポ多糖、LPS)に侵され、PEG−IL−10により治療される対象の、血清中の炎症性サイトカイン(例えばTNFα、IFNγ)のレベルを評価することにより、生物活性が測定されるのが典型的である。
【0030】
本明細書で使用されるところの、「t1/2」と略記される「血中半減期」は、排出半減期、すなわち、因子の血清濃度が、最初の値または最大値の半分に達した時間を意味する。本明細書において合成因子に関して用いられるところの、用語「血中半減期の増加」は、合成因子が、非合成、内因性因子、またはその組み換え生産された形態よりも遅い速度で排出されることを意味する。
【0031】
II.一般
本発明は、増殖性疾患、例えば癌、腫瘍等を、ペグ化IL−10で治療する方法を提供する。IL−10は、CD8T−細胞の細胞毒性活性、B細胞の抗体産生を誘導し、マクロファージ活性および腫瘍促進性炎症を抑制する(ChenおよびZlotnik(1991)J.Immunol.147:528−534;Groux等(1999)J.Immunol.162:1723−1729;およびBergman等(1996)J.Immunol.157:231−238を参照)。CD8細胞の調節は、用量に依存し、高用量は、より強い細胞障害反応を誘導するが、組換えhIL−10の有用性は、半減期が短いことにより制限される。PEG−IL−10は、腫瘍免疫に関与する炎症性サイトカインの発現を増加させるだけでなく、腫瘍へのCD8+T細胞の浸潤を増やすという、予想外の特性を示した。したがって、PEG−IL−10による治療は、腫瘍治療に大きな前進をもたらすはずである。
【0032】
III.ポリエチレングリコール(「PEG」)
ポリエチレングリコール(「PEG」)は、治療用タンパク質製品の調製において使用されている、化学部分である。「ペグ化する」という動詞は、少なくとも一つのPEG分子を別の分子、例えば治療用タンパク質に付着させることを意味する。例えば、アデノシンデアミナーゼのペグ化製剤であるAdagenは、重症複合免疫不全症の治療に承認されており;ペグ化スーパーオキシドジスムターゼは、頭部外傷の治療の臨床試験がなされおり;ペグ化アルファインターフェロンは、肝炎治療のための第一相臨床試験でテストされており;ペグ化グルコセレブロシダーゼおよびペグ化ヘモグロビンは、前臨床試験が報告されている。ポリエチレングリコールの付着が、タンパク質分解から保護することが示されている(例えば、Sada等(1991)J.Fermentation Bioengineering 71:137−139を参照)。
【0033】
もっとも一般的な形においては、PEGは、ヒドロキシル基で終了し、以下の一般的構造を有する線状または分枝ポリエーテルである:
HO−(CHCHO)−CHCH−OH
PEGを分子(ポリペプチド類、多糖類、ポリヌクレオチド類、および小有機分子)に連結するためには、一方または両方の末端に官能基を有するPEGの誘導体を調製することにより、PEGを活性化することが必要である。タンパク質のPEG結合の最も一般的な経路は、リジンおよびN末端アミノ酸基との反応に適する官能基により、PEGを活性化することである。特に、ポリペプチド類へのPEGの結合に関するもっとも一般的な反応基は、リジンのアルファまたはイプシロンアミノ基である。
【0034】
ペグ化リンカーとタンパク質の反応により、主に以下の部位における、PEG部分の付着が生じる:タンパク質のN末端のアルファアミノ基、リジン残基の側鎖上のイプシロンアミノ基、およびヒスチジン残基の側鎖上のイミダゾール基。ほとんどの組換え型タンパク質は、単一のアルファおよび多数のイプシロンアミノおよびイミダズロー(imidazloe)基を有するため、リンカー化学に応じて多数の位置異性体が生成されうる。
【0035】
広く使用される二つの第一世代活性化モノメトキシPEG(mPEG)は、リジン残基と優先的に反応してカルバメート結合を形成するが、ヒスチジンおよびチロシン残基と反応することも知られている、スクシンイムジル(succinimdyl)カルボナートPEG(SC−PEG;例えばZalipsky等(1992)Biotehnol.Appl.Biochem 15:100−114;およびMironおよびWilcheck(1993)Bioconjug.Chem.4:568−569を参照)およびベンゾトリアゾールカルボネートPEG(BTC−PEG;例えばDolence等、米国特許第5,650,234号を参照)であった。IFNα上のヒスチジン残基に対する結合は、加水分解的に不安定なイミダゾールカルバメート結合であることが示されている(例えばLeeおよびMcNemar、米国特許第5,985,263号を参照)。
【0036】
第二世代PEG化技術は、これらの不安定結合のみならず、残基反応性における選択性の欠如を回避するように設計されている。PEG−アルデヒドリンカーの使用は、還元的アミノ化によりポリペプチドのN末端上の単一部位を標的とする。様々なタイプのリンカーおよびpHを用いてIL−10がペグ化されることにより、様々な形のペグ化分子に到達しうる(例えば、米国特許第5,252,714号、5,643,575号、5,919,455号、5,932,462号、5,985,263号、7,052,686号を参照)。
【0037】
IV. PEG−IL−10の生物活性
ヒトIL−10は、免疫正常マウスに投与されると、中和抗体の迅速な発生を誘導する。この種の中和を回避するために、B細胞欠損マウス、すなわち抗体反応を高められないマウスに、PEG−hIL−10の皮下投与が行われた。これらの免疫不全マウスにおける安定した同系腫瘍は、PEG−hIL−10により増殖が有意に遅延するか、完全に拒絶された。腫瘍成長制限または阻害は、CD4およびCD8T−細胞の両方に依存した。CD8細胞が枯渇すると、PEG−hIL−10の阻害作用は完全に抑制された。したがって、PEG−hIL−10は、CD8媒介性の細胞障害反応を誘導する。
【0038】
腫瘍組織のさらなる分析により、PEG−IL−10が、非ペグ化IL−10を上回るレベルで、腫瘍へのCD8+T細胞の浸潤を増加させることが示された。浸潤CD8細胞による炎症性サイトカイン発現のレベルも、非ペグ化IL−10治療と比較して、PEG−IL−10治療で高かった。PEG−IL−10による腫瘍患者の治療は、有意な抗腫瘍反応を誘導し、有意な治療効果をもたらすはずである。
【0039】
本発明において使用されるIL−10タンパク質は、成熟IL−10タンパク質の配列、すなわちあらゆるリーダー配列を欠く配列と、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、および最も好ましくは少なくとも90%以上、例えば少なくとも95%の相同性を有することが観察されるアミノ酸配列を含む。例えば、米国特許第6,217,857号を参照。アミノ酸配列相同性、または配列同一性は、残基のマッチを最適化することにより、および必要に応じて、必要なギャップを導入することにより決定される。相同のアミノ酸配列は、各々の配列における自然の対立遺伝子変異、多型変異および、種間変異を含むことが、通常意図される。典型的な相同タンパク質またはペプチドは、IL−10ポリペプチドのアミノ酸配列と、25〜100%の相同性(ギャップが導入されうる場合)から、50〜100%の相同性(保存的置換が含まれる場合)までを有する。Needleham等、J.Mol.Biol.48:443−453(1970);Sankoff等、Time Warps,String Edits,and Macromolecules:The Theory and Practice of Sequence Comparison,1983,Addison−Wesley,Reading,Mass.;およびIntelliGenetics,カリフォルニア州マウンテンビュウ、およびthe University of Wisconsin Genetics Computer Group,ウィスコンシン州マディソンからのソフトウェアパッケージを参照。
【0040】
PEG−IL−10結合体におけるIL−10部分は、グリコシル化され得るか、または非グリコシル化変異タンパク質またはBCRF1(エプスタインバーウイルスviral IL−10)タンパク質を含む他のアナログにより修飾されうる。IL−10をコードする配列の修飾は、様々な技術、例えば部位特異的変異誘発等を用いて行われ[Gillman等、Gene 8:81−97(1979);Roberts等、Nature 328:731−734(1987)]、IL−10活性の適切なアッセイにおける通常のスクリーニングにより、評価されうる。修飾IL−10タンパク質、例えば変異体は、一次構造レベルで天然の配列から異なりうる。このような修飾は、アミノ酸挿入、置換、欠失および融合により行われうる。IL−10変異体は、血中半減期の増加、IL−10に対する免疫反応の減少、精製または調製の促進、IL−10の単量体サブユニットへの転換の減少、治療効力の改善、治療での使用の間の副作用の重症度または発生の減少を含む、様々な目的を念頭に調製されうる。アミノ酸配列変異体は通常、自然に見られない所定の変異体であるが、その他は翻訳後変異体、例えばグリコシル化変異体でありうる。IL−10の任意の変異体が、IL−10活性の適切なレベルを保持することを条件として、本発明で使用されうる。腫瘍の場合には、適切なIL−10活性は、例えば、CD8+T細胞が腫瘍部位を浸潤し、これらの浸潤細胞からのIFNγ、IL−4、IL−6、IL−10、およびRANK−L等の炎症性サイトカインの発現、生体試料におけるTNFαまたはIFNγのレベル増加がある。
【0041】
本発明で使用されるIL−10は、哺乳類、例えばヒトまたはマウスに由来しうる。ヒトIL−10(hIL−10)は、IL−10治療を必要とするヒトの治療に好ましい。本発明で使用されるIL−10は、組換えIL−10であるのが好ましい。ヒトおよびマウスIL−10の調製を説明する方法は、米国特許第5,231,012号明細書に見られる。ヒトおよびマウスIL−10の、天然または保存的に置換された変異体も含まれる。本発明の別の実施形態においては、IL−10は、ウイルス起源でありうる。エプスタインバーウイルスからのviral IL−10(BCRF1タンパク質)のクローニングおよび発現が、Moore等、Science 248:1230(1990)に開示される。
【0042】
IL−10は、例えば、タンパク質(例えばT細胞)を分泌可能な活性化細胞の培地からの単離および精製、化学的合成、または組換え技術など、当技術分野で周知の標準的な技術を使用した多数の方法で得られる(例えば、Merrifield,Science 233:341−47(1986);Atherton等、Solid Phase Peptide Synthesis,A Practical Approach,1989,I.R.L.Press,Oxford;組換えおよび他の合成技術を含む、IL−10活性を有するタンパク質産生のための方法を教示する米国特許第5,231,012号を参照)。IL−10タンパク質は、組換え技術を用いて、IL−10ポリペプチドをコードする核酸から得られるのが好ましい。組換え型ヒトIL−10は、Pepro Tech,Inc.,ニュージャージー州ロッキーヒル等から市販もされている。
【0043】
PEG−IL−10は、当該分野において周知の技術を使用して作製されうる。ポリエチレングリコール(PEG)は、例えばLundblad,R.L.等(1988)Chemical Reagents for Protein Modification CRC Press,Inc.、第1巻、pp.105−125に説明されるように合成されうる。上述のように、リンカーを用いることによりPEGがIL−10に結合されうる。ある実施形態では、本発明で使用されるPEG−IL−10は、1〜9のPEG分子がリンカーを介してIL−10二量体の一つのサブユニットのN末端のアミノ酸残基のアルファアミノ基に共有結合する、モノ−PEG−IL−10である。
【0044】
IV.治療組成物、方法。
【0045】
PEG−IL−10は、治療有効量のIL−10と薬学的な担体とを含む医薬品組成物に製剤されうる。「治療有効量」は、所望の治療結果を提供するのに十分な量である。このような量は、負の副作用が最小限であることが好ましい。IL−10により治療可能な状態を治療するために投与されるPEG−IL−10の量は、複合タンパク質のIL−10活性に基づき、それは従来技術において公知のIL−10活性アッセイで決定されうる。このような治療を必要とする特定の患者に対する治療有効量は、治療される状態、患者の全体的な健康、投与の方法、副作用の重症度等の様々な要因を考慮することにより決定されうる。腫瘍の場合には、適切なIL−10活性は、例えば、CD8+T細胞が腫瘍部位を浸潤し、これらの浸潤細胞からのIFNγ、IL−4、IL−6、IL−10、およびRANK−L等の炎症性サイトカインの発現、生体試料におけるTNFαまたはIFNγのレベルの増加である。
【0046】
ペグ化IL−10の治療有効量は、1日につき体重1kgあたり約0.01〜約100μgのタンパク質の範囲でありうる。ペグ化IL−10の量は、1日につき体重1kgあたり約0.1〜20μgのタンパク質であるのが好ましく、1日につき体重1kgあたり約0.5〜10μgのタンパク質であるのがより好ましく、1日につき体重1kgあたり約1〜4μgのタンパク質の範囲であるのが最も好ましい。本発明のPEG−IL−10を使用すると、この結合形態はIL−10より作用が長いため、より頻度の低い投与計画が用いられうる。ペグ化IL−10は、精製された形で調製され、凝集物および他のタンパク質を実質的に含まない。PEG−IL−10は、1日につき約50〜800μgの範囲の量のタンパク質(すなわち、1日のPEG−IL−10につき体重1kgあたり約1〜16μgのタンパク質)が送達されるように、持続注入により投与されるのが好ましい。毎日の注入速度は、副作用および血球数のモニタリングに基づいて変更されうる。
【0047】
モノ−PEG−IL−10を含む薬学的組成物を調製するために、治療有効量のPEG−IL−10が、薬学的に許容可能な担体または賦形剤と混合される。担体または賦形剤は、不活性であるのが好ましい。薬学的な担体は、本発明のIL−10組成物を患者に送達するために適切な、任意の適合性のある無毒性物質でありうる。好適な担体の例には、通常の生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液が含まれる。不揮発性油およびオレイン酸エチル等の、非水性担体が使用されてもよい。好ましい担体は、5%デキストロース/生理食塩水である。担体は、等張性および化学的安定性を増強する物質等の少量の添加物、例えば緩衝剤および保存剤を含みうる。たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company、ペンシルベニア州イーストン(1984)を参照。例えば凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液または懸濁液等の形で、生理的に許容可能な担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより、治療および診断用薬剤の製剤が調製されうる(例えば、Hardman等(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw−Hill、ニューヨーク州ニューヨーク;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott、Williams、およびWilkins、ニューヨーク州ニューヨーク;Avis等(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,ニューヨーク;Lieberman等(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Lieberman等(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,ニューヨーク;Weiner and Kotkoskie(2000)Excipient ToxicityおよびSafety,Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク州ニューヨークを参照)。
【0048】
本発明の組成物は、経口投与され、または体内に注射されうる。経口的使用のための製剤は、胃腸管内のプロテアーゼからIL−10をさらに保護するための、化合物も含みうる。注射は、通常筋肉内、皮下、皮内、または静脈内である。あるいは、関節内注射または他の経路が、適切な状況において使用されうる。
【0049】
非経口的に投与される場合には、ペグ化IL−10は、薬学的な担体とともに、単位用量の注射可能形態(溶液、懸濁液、エマルション)に製剤されるのが好ましい。例えば、Avis等編、Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Dekker,ニューヨーク(1993);Lieberman等編、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Dekker,ニューヨーク(1990);およびLieberman等編、Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Dekker,ニューヨーク(1990)を参照。あるいは、本発明の組成物は、例えば、Urquhart等.Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.24:199−236,(1984);Lewis,編、Controlled Release of Pesticides and Pharmaceuticals Plenum Press,ニューヨーク(1981);米国特許第3,773,919号;3,270,960号等のような移植可能または注射可能な薬物送達システムによって、患者の体に導入されうる。ペグ化IL−10は、例えば様々な添加剤および/または希釈剤を伴うか伴わない水、生理食塩水または緩衝化ビヒクル等の水性ビヒクルで投与されうる。
【0050】
特定の患者に対する有効量は、治療される状態、患者の全体的な健康、投与の方法経路および用量、および副作用の重症度等の要因によって変化し得る(例えば、Maynard等(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice,Interpharm Press,フロリダ州ボカラトン;Dent(2001)Good Laboratory and Good Clinical Practice,Urch Publ.,ロンドン、UKを参照)。
【0051】
典型的な獣医学的対象、実験対象、または研究対象には、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ウマ、およびヒトが含まれる。
【0052】
適切な用量の決定は、例えば、従来技術において治療に影響すると公知または考えられる、または治療に影響すると予測されるパラメータまたは要因を用いて、臨床医により行われる。一般に用量は、適量よりやや少ない量で開始し、任意の負の副作用に対して所望または最適な効果が達成されるまで少しずつ増加させていく。重要な診断尺度には、例えば、炎症または生成される炎症性サイトカインのレベルの症状の尺度が含まれる。使用される生物学製剤は、治療標的とされる動物と同じ種から得られ、これにより試薬に対する液性応答反応が最小限にされることが好ましい。共投与の方法または第二治療剤、例えばサイトカイン、ステロイド、化学療法剤、抗生物質、または放射線による治療の方法は、公知技術である(例えば、Hardman等(編)(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,第10版,McGraw−Hill,ニューヨーク州ニューヨーク;PooleおよびPeterson(編)(2001)Pharmacotherapeutics for Advanced Practice:A Practical Approach,Lippincott,Williams & Wilkins,ペンシルベニア州フィラデルフィア;ChabnerおよびLongo(編)(2001)Cancer Chemotherapy and Biotherapy,Lippincott,Williams & Wilkins,ペンシルベニア州フィラデルフィアを参照)。有効な量の治療剤は、症状、例えば腫瘍サイズまたは腫瘍成長の阻害を、典型的に少なくとも10%;通常は少なくとも20%;好ましくは少なくとも約30%;より好ましくは少なくとも40%、および最も好ましくは少なくとも50%減少させる。
【0053】
VI.使用
本発明は、増殖状態または疾患、例えば子宮、頸部、乳房、前立腺、精巣、陰茎、胃腸管、例えば食道、口腔咽頭部、胃、小腸または大腸、結腸、または直腸、腎臓、腎臓細胞、膀胱、骨、骨髄、皮膚、頭部または頸部、皮膚、肝臓、胆嚢、心臓、肺、膵臓、唾液腺、副腎、甲状腺、脳、例えば神経膠腫、神経節、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)、および免疫系、例えば脾臓または胸腺の癌を治療する方法を提供する。本発明は、例えば免疫原性腫瘍、非免疫原性腫瘍、休眠中腫瘍、ウイルス誘導性癌、例えば上皮細胞癌、内皮細胞癌、扁平上皮癌、乳頭しゅウイルス、腺癌、リンパ腫、癌腫、黒色腫、白血病、骨髄腫、肉腫、奇形癌、化学的に誘導された癌、転移、および血管形成を治療する方法を提供する。本発明は、例えば制御性T細胞(Treg)および/またはCD8 T細胞の活性を調節することにより、腫瘍細胞または癌細胞抗原に対する寛容を抑制することも意図する(例えば、Ramirez−Montagut等(2003)Oncogene 22:3180−3187;Sawaya等(2003)New Engl.J.Med.349:1501−1509;Farrar等(1999)J.Immunol.162:2842−2849;Le等(2001)J.Immunol.167:6765−6772;CannistraおよびNiloff(1996)New Engl.J.Med.334:1030−1038;Osborne(1998)New Engl.J.Med.339:1609−1618;LynchおよびChapelle(2003)New Engl.J.Med.348:919−932;EnzingerおよびMayer(2003)New Engl.J.Med.349:2241−2252;Forastiere等(2001)New Engl.J.Med.345:1890−1900;Izbicki等(1997)New Engl.J.Med.337:1188−1194;Holland等(編)(1996)Cancer Medicine Encyclopedia of Cancer,第4版,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴを参照)。
【0054】
いくつかの実施形態においては、本発明は、PEG−IL−10および少なくとも一つの追加的な治療または診断用薬剤により、増殖状態、癌、腫瘍、または異形成等の前癌状態を治療する方法を提供する。追加的な治療用薬剤は、例えば、IL−12、インターフェロンアルファ、または抗表皮成長因子レセプター等のサイトカインまたはサイトカインアンタゴニスト、ドキソルビシン、エピルビシン、抗葉酸剤、例えばメトトレキセートまたはフルオロウラシル(fluoruracil)、イリノテカン、シクロホスファミド、放射線療法、ホルモンまたは抗ホルモン療法、例えばアンドロゲン、エストロゲン、抗エストロゲン、フルタミド、またはジエチルスチルベストロール、手術、タモキシフェン、イフォスファミド、ミトラクトール、アルキル化剤、例えばメルファランまたはシスプラチン、エトポシド、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンデシン、グルココルチコイド、ヒスタミンレセプターアンタゴニスト、血管形成阻害剤、放射線、放射線増感剤、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、タキサン、例えばパクリタキセルおよびドセタキセル、細胞周期阻害剤、例えばサイクリン依存性キナーゼ阻害剤、別の腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体および毒素の複合体、T細胞アジュバント、骨髄移植、または抗原提示細胞、例えば樹状細胞療法でありうる。ワクチンは、例えば可溶タンパク質として、またはタンパク質をコードする核酸として、提供されうる(例えば、Le等、上記;GrecoおよびZellefsky(編)(2000)Radiotherapy of Prostate Cancer,Harwood Academic,Amsterdam;ShapiroおよびRecht(2001)New Engl.J.Med.344:1997−2008;Hortobagyi(1998)New Engl.J.Med.339:974−984;Catalona(1994)New Engl.J.Med.331:996−1004;NaylorおよびHadden(2003)Int.Immunopharmacol.3:1205−1215;The Int.Adjuvant Lung Cancer Trial Collaborative Group(2004)New Engl.J.Med.350:351−360;Slamon等(2001)New Engl.J.Med.344:783−792;Kudelka等(1998)New Engl.J.Med.338:991−992;van Netten等(1996)New Engl.J.Med.334:920−921)。
【0055】
癌の骨髄外造血(EMH)を治療する方法も、提供される。EMHが記載される(例えば、Rao等(2003)Leuk.Lymphoma 44:715−718;Lane等(2002)J.Cutan.Pathol.29:608−612を参照)。
【0056】
本発明の広い範囲は、本発明を特定の実施例に制限するものではない以下の実施例に関連して、最もよく理解される。
【0057】
本明細書における全ての引用文献は、各々の刊行物または特許出願が特に個々に参照により本明細書に組み込まれるものと示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
当業者には当然のことながら、本発明の多くの修正変更が、その趣旨および範囲から逸脱することなく行われうる。本明細書に説明される特定の実施形態は、単なる例として提供されるものであり、本発明は、添付の請求の範囲中の用語、ならびにかかる請求の範囲が与えられた等価物の完全な範囲により制限されるものである。本発明は、本明細書に例として示された特定の実施形態により制限されるものではない。
【実施例】
【0059】
I. 一般的方法
分子生物学の標準的方法が記載されている(Maniatis等(1982)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー;SambrookおよびRussell(2001)Molecular Cloning,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー;Wu(1993)Recombinant DNA,第217巻,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ)。Ausubel等(2001)Current Protocols in Molecular Biology,第1−4巻,John Wiley and Sons,Inc.ニューヨーク州ニューヨークにも標準的方法がみられ、ここでは、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(第1巻)、哺乳類細胞および酵母のクローニング(第2巻)、複合多糖およびタンパク質発現(第3巻)、および生物情報科学(第4巻)を説明する。
【0060】
免疫沈降、クロマトグラフィ、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含む、タンパク質精製の方法が記載される(Coligan等(2000)Current Protocols in Protein Science,第1巻,John Wiley and Sons,Inc.,ニューヨーク)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、タンパク質のグリコシル化が記載される(例えば、Coligan等(2000)Current Protocols in Protein Science,第2巻,John Wiley and Sons,Inc.,ニューヨーク;Ausubel等(2001)Current Protocols in Molecular Biology,第3巻,John Wiley and Sons,Inc.,ニューヨーク州ニューヨーク、pp.16.0.5−16.22.17;Sigma−Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,ミズーリ州セントルイス;pp.45−89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384−391を参照)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の産生、精製、および断片化が記載される(Coligan等(2001)Current Protcols in Immunology,第1巻,John Wiley and Sons,Inc.,ニューヨーク;HarlowおよびLane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー;HarlowおよびLane,上記)。リガンド/レセプター相互作用を特徴付けするための標準的な技術が利用可能である(例えば、Coligan等(2001)Current Protcols in Immunology,第4巻,John Wiley,Inc.,ニューヨークを参照)。PEG−IL−10をつくる方法が、例えば米国特許第7,052,686号に記載される。
【0061】
蛍光標識細胞分取(FACS)を含むフローサイトメトリの方法が利用可能である(例えば、Owens等(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,ニュージャージー州ホーボーケン;Givan(2001)Flow Cytometry,第2版;Wiley−Liss,ニュージャージー州ホーボーケン;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,ニュージャージー州ホーボーケンを参照)。例えば診断試薬として使用するための、核酸プライマおよびプローブを含む核酸を修飾するための適切な蛍光試薬、ポリペプチド、および抗体が利用可能である(Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,オレゴン州ユージーン;Sigma−Aldrich(2003)Catalogue,ミズーリ州セントルイス)。
【0062】
免疫系の標準的な組織学的方法が説明される(例えば、Muller−Harmelink(編)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,ニューヨーク州ニューヨーク;Hiatt等(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott、Williams、およびWilkins、ペンシルベニア州フィラデルフィア;Louis等(2002)Basic Histology:TextおよびAtlas,McGraw−Hill,ニューヨーク州ニューヨークを参照)。
【0063】
癌の治療および診断の方法が記載される(例えば、Alison(編)(2001)The Cancer Handbook,Grove’s Dictionaries,Inc.,ミズーリ州セントルイス;Oldham(編)(1998)Principles of Cancer Biotherapy,第3版,Kluwer Academic Publ.,マサチューセッツ州ヒンガム;Thompson等(編)(2001)Textbook of Melanoma,Martin Dunitz,Ltd.,ロンドン、UK;Devita等(編)(2001)Cancer:Principles and Practice of Oncology,第6版,Lippincott,ペンシルベニア州フィラデルフィア;Holland等(編)(2000)Holland−Frei Cancer Medicine,BC Decker,ペンシルベニア州フィラデルフィア;GarrettおよびSell(編)(1995)Cellular Cancer Markers,Humana Press,ニュージャージー州トトワ;MacKie(1996)Skin Cancer,第2版,モスビー、セントルイス;Moertel(1994)New Engl.J.Med.330:1136−1142;Engleman(2003)Semin.Oncol.30(3 Suppl.8):23−29;Mohr等(2003)Onkologie 26:227−233を参照)。
【0064】
例えば抗原性フラグメント、リーダー配列、タンパク質の折畳み、機能的ドメイン、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが利用可能である(例えば、GenBank,Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,メリーランド州ベテスダ);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,カリフォルニア州サンディエゴ);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,ネバダ州クリスタルベイ);Menne等(2000)Bioinformatics 16:741−742;Menne等(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741−742;Wren等(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177−181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17−21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683−4690を参照)。
【0065】
II. ペグ化IL−10
IL−10を、10mMリン酸ナトリウムpH7.0、100mMのNaClに対し透析した。透析したIL−10を、透析緩衝液を用いて3.2倍に希釈し、4mg/mLの濃度にした。リンカー(SC−PEG−12K(Delmar Scientific Laboratories,イリノイ州メイウッド))の添加の前に、、1容積のpH9.1の100mMのテトラホウ酸Naを、9容積の希釈IL−10に加え、IL−10溶液のpHを8.6に上昇させた。SC−PEG−12Kリンカーを、透析緩衝液に溶解し、適切な容積のリンカー溶液(1モルのIL−10につき1.8〜3.6モルのリンカー)を、ペグ化反応を開始するために希釈IL−10溶液に加えた。反応の速度(reate)を制御するために、反応を5℃で行った。反応溶液を、ペグ化反応の間に穏やかに攪拌した。サイズ排除HPLC(SE−HPLC)により決定されるところのモノ−PEG−IL−10収率が、40%に近くなったときに、30mMの最終濃度まで1Mグリシン溶液を加えることにより、反応を停止させた。反応溶液のpHを、HCl溶液を用いて7.0にゆっくり調節し、反応物を0.2ミクロンでろ過し、−80℃で貯蔵した。
【0066】
あるいは、モノ−PEG−IL−10を、メトキシ−PEG−アルデヒド(PALD−PEG)をリンカーとして使用して調製する(Inhale Therapeutic Systems Inc.,アラバマ州ハンツヴィル)。PALD−PEGは、5KDa、12KDa、または20KDaの分子量を有しうる。IL−10を、上記の通りに透析および希釈するが、反応緩衝液のpHは、6.3〜7.5の間である。活性化されたPALD−PEGリンカーを、1:1のモル比で反応緩衝液に加える。水性シアノホウ水素化ナトリウムを、反応混合物に0.5〜0.75mMの最終濃度まで加える。穏やかな撹拌を伴って15〜20時間室温(18〜25℃)で反応を行う。反応物を、1Mグリシンによりクエンチする。収率が、SE−HPLCにより分析される。モノ−PEG−IL−10が、ゲル濾過クロマトグラフィにより、未反応のIL−10、PEGリンカー、およびジ−PEG−IL−10から分離され、rp−HPLCおよびバイオアッセイ(例えば、IL−10反応性細胞または細胞株の刺激)により特徴づけされる。
【0067】
III. 腫瘍モデル:
同系マウス腫瘍細胞を、腫瘍接種あたり10、10または10細胞で、皮下または皮内注射した。Ep2乳癌(mammary carcinoma)、CT26結腸癌、皮膚のPDV6扁平上皮癌および4T1乳癌(breast carcinoma)モデルを用いた(例えば、Langowski等(2006)Nature 442:461−465を参照)。免疫正常Balb/CマウスまたはB細胞欠損Balb/Cマウスを用いた。PEG−mIL−10を免疫正常マウスに投与し、PEG−hIL−10治療を、B細胞欠損マウスに用いた。治療開始前に、腫瘍を100〜250mmのサイズにした。IL−10、PEG−mIL−10、PEG−hIL−10、または緩衝液コントロールを、腫瘍移植から離れた部位で皮下投与した。電子キャリパーを使用して、典型的に毎週二回、腫瘍成長がモニタされた。
【0068】
IV. 腫瘍分析:
多数の炎症性マーカーのmRNA発現を測定し、いくつかの炎症細胞マーカーの免疫組織化学法を行うために、腫瘍組織およびリンパ器官を様々なエンドポイントで採取した。組織を、液体窒素中で急冷凍し、−80℃で貯蔵した。電子キャリパーを使用して、典型的に毎週二回、原発腫瘍成長をモニタした。腫瘍容積を、長さを長いほうの寸法とする式(幅×長さ/2)を使用して計算した。治療開始前に、腫瘍を90〜250mmのサイズにした。
【0069】
V. IL−10および/またはPEG−IL−10の投与
mIL−10またはPEG−mIL−10を、免疫正常マウスに投与し、PEG−hIL−10治療を、B細胞欠損マウスに使用した。mIL−10、PEG−mIL−10、PEG−hIL−10、またはビヒクルコントロールを、腫瘍移植から離れた部位に皮下投与した。これらの研究において使用されるPEG−mIL−10は、SC−PEG−12Kリンカーにより調製された。mIL−10およびPEG−mIL−10の生物活性を、内因性mIL−10レセプター(R1およびR2)を発現するマウスマスト細胞株MC/9を利用した、短期増殖バイオアッセイを適用することにより評価した。MC/9細胞は、mIL−4およびmIL−10による同時刺激に応答して増殖する(MC/9は、mIL−4またはmIL−10だけでは増殖しない)。代謝活性の検出に基づく増殖指示色素Alamar Blueを用いた比色手段を用いて、増殖を測定した。組換えまたはペグ化mIL−10の生物活性を、EC50値、または用量反応曲線で最大値の半分の刺激が観察されるタンパク質濃度により評価した(表1)。
【0070】
表1:これらの研究において使用されるmIL−10およびPEG−mIL10試薬の生理活性の評価のためのMC/9増殖バイオアッセイ
【0071】
【表1】

MC/9バイオアッセイにもとづいて、実験で使用されるペグ化mIL−10の比活性は、使用したmIL−10の活性の約7分の1である(表1)。
【0072】
PEG−mIL−10を、1日おきに、Ep2乳癌腫瘍をもつマウスに投与した。治療は、腫瘍のサイズを減少させ、腫瘍拒絶を誘導する効果があった。
【0073】
表2:PEGmIL−10はBalb/CマウスのEp2乳癌モデルにおいて腫瘍サイズ(mm)を減少させる。
【0074】
【表2】

PEG−mIL−10による治療も、PDV6、CT−26、および4T1の同系免疫正常マウス腫瘍モデルにおいて、腫瘍サイズを減少させる効果があった(表3、4、および5を参照)。
【0075】
表3:研究04−M52 338:移植後36日に開始するPEGmIL−10は、C57B/6マウスにおけるPDV6腫瘍サイズ(mm)を減少させる。
【0076】
【表3】

表4:移植後7日に開始するPEGmIL−10は、ビヒクルコントロールに対して、BALB/cマウスにおけるCT26腫瘍の腫瘍サイズを減少させる(mm)。
【0077】
【表4】

表5:IL−10およびPEGmIL−10は、4T1乳癌の腫瘍サイズ(mm)を減少させる。
【0078】
【表5】

表6:研究05−M52−496。移植後19日に開始するmIL−10およびmPEG IL−10による2週間の治療は、4T1乳癌の腫瘍サイズ(mm)を減少させる。
【0079】
【表6】

VI. 用量漸増研究
用量漸増においては、研究用尾静脈血液を、予想ピークおよびトラフ用量レベルに対応する時間に、各群の代表マウスから集めた。マルチアレイ技術;電気化学ルミネセンス検出およびパターン化アレイの組み合わせに基づくMeso Scale Discoveryプラットフォームを用いて、採取された血清のmIL−10濃度をアッセイした。両側不対スチューデントt検定を用いて、血清mIL−10濃度によって分類されたmIL−10またはPEG−mIL−10で治療されたマウスの平均腫瘍容積を、それらの対応するビヒクルコントロールの平均腫瘍容積と比較した。二つの群が不等分散を有する場合(F検定よりp<0.05)には、Welch補正を用いた。
【0080】
4T1乳癌をもつマウスにおける、PEG−mIL−10およびmIL−10の用量漸増は、原発腫瘍および肺転位の制御については、mIL−10およびPEG−mIL−10の両方が用量滴定可能(dose titratable)であることを示す。任意の所与の用量において、PEG−mIL−10は、mIL−10より有効である(表7)。毎日二回の治療を、平均腫瘍容積が84〜90mmとなった移植後17日目に開始した。治療群は、群あたり14匹のマウスをからなり、コントロール群は、各群に8匹のマウスを含んだ。TrisおよびHepes緩衝液は、それぞれmIL−10およびPEGmIL−10のコントロールであった。
【0081】
表7:研究06−M175−1103。mIL−10およびPEG−mIL−10は、BALB/cマウスにおける4T1乳癌の原発腫瘍サイズ(mm)を、用量依存的様式で減少させる。
【0082】
【表7】

PDV6扁平上皮癌をもつマウスにおけるPEG−mIL−10およびmIL−10の用量漸増は、原発腫瘍の制御については、mIL−10およびPEG−mIL−10の両方が用量滴定可能であるが、任意の所与の用量において、PEG−mIL−10のほうがmIL−10より有効であることを示す(表8)。高用量PEG−mIL−10治療により、100%に近い腫瘍退縮および再度の投与(re−challenge)に対するその後の抵抗が生じた(表9)。毎日二回の治療を、平均腫瘍容積が107〜109mmとなった移植後23日目に開始し、全てのmIL10治療群および0.01mg/kg PEGmIL−10治療群に対して55日目まで続けた。0.1mg/kgPEG−mIL−10治療は、100%の腫瘍退縮が認められた48日目に止められ、残りの群は51日目まで治療された。治療群には、群あたり10匹のマウスからなり、各ビヒクルコントロールには6匹のマウスが含まれた。Tris緩衝液およびHepes緩衝液が、それぞれmIL−10およびPEGmIL−10のビヒクルコントロールであった。最初の移植の85日後および最後のPEG−mIL10治療の4週間後に、再移植が行われた。群につき10匹のマウスが含まれた。
【0083】
表8:研究06−M52−1106。mIL−10およびPEG−mIL−10は、C57B16/JマウスにおけるPDV6扁平上皮癌の腫瘍サイズ(mm)を用量依存的様式で減少させる。
【0084】
【表8】

表9:研究06−M52−1106。3週間のPEG−mIL−10治療後にPDV6扁平上皮癌腫瘍が除去されたC57B1/6Jマウスは、追加的治療の非存在下で再移植に抵抗性である。
【0085】
【表9】

VII. 肺転位研究
4T1乳癌モデルにおける肺転位を、Current Protocols in Immunology(Section 20.2.4)John Wiley and Sons,Inc.,ニューヨーク;HarlowおよびLane(1999)に記載されるように、肺切除後に巨視的にか(表10)、または培養後に肺転移コロニーを計数することのいずれかによって(表11)定量化した。簡潔にいうと、4T1腫瘍マウスから採取された肺を刻み、コラゲナーゼ/エラスターゼカクテルにより消化した後、限界希釈アッセイにおいて6−チオグアニンを含む培地で培養された。4T1細胞だけを、6−チオグアニン耐性があり、培養の10〜14日後にコロニー数を計数することにより定量化することができる。毎日二回の治療が、平均腫瘍体積が84〜90mmとなった移植後17日目に開始された。TrisおよびHepes緩衝液を、それぞれmIL−10およびPEG mIL−10のコントロールとした。肺転位が、肺あたりに培養された転移コロニー数として測定された。
【0086】
表10:研究05−M52−496。移植19日後に開始するmIL−10およびPEG−mIL−10による2週間の治療は、4T1乳癌の転移を減らす(マウスあたりの肺転位数として測定)
【0087】
【表10】

表11:研究06−M175−1103。mIL−10およびPEG−mIL−10は、BALB/cマウスにおける4T1乳癌の肺転位を用量依存的様式で減少させる。
【0088】
【表11】

4T1乳癌マウスに対するPEG−mIL−10またはIL−10の投与は、転移率を減少させ、CD8T細胞浸潤および免疫刺激性のサイトカインの発現を増加させることが、定量RT−PCRで測定される(表12および13)。浸潤CD8+T細胞の数が、免疫組織化学によりCD8表面マーカーを染色した腫瘍の代表的な切片から計数され、抗−CD3および抗−TCRαβ抗体で染色することにより実証された。
【0089】
表12:IL−10およびPEG mIL−10は、4T1癌腫におけるCD8+T細胞浸潤を誘導する
【0090】
【表12】

PEG−mIL−10は、炎症性サイトカインの誘導においてIL−10より有効である。均質化腫瘍サンプルからの全RNAを抽出し、以前に説明されるように逆転写した(例えば、Homey等(2000)J.Immunol.164:3465−3470を参照)。蛍光発生(fluorgenic)5’−ヌクレアーゼPCRアッセイにより、サイトカイン発現につき、相補DNAを定量分析した(例えば、Holland等(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.88:7276−7280を参照)。特異的PCR産物を、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems)により、40サイクルの間持続的に測定した。値を、ユビキチンに正規化した。対数変換されたデータを、Kruskal−Wallis統計分析に供した(メジアン法)。発現レベル(対数変換)が高いほど、腫瘍サンプルに発現される炎症性サイトカインの量が多いように、発現レベル(対数変換)が、腫瘍サンプルに発現される炎症性サイトカインの量に対応する。
【0091】
表13:投与されたPEG−mIL−10は、用量投与の24h後の4T1癌腫における炎症性サイトカインのレベルの持続を誘導する。
【0092】
【表13】

V. 免疫細胞の枯渇
CD4+およびCD8+T細胞を、抗体を介した除去により枯渇させた。250ugのCD4またはCD8特異的抗体を、この目的で毎週注射した。FACSおよびIHC分析を用いて、細胞枯渇を実証した。
【0093】
CD4抗体によるB細胞欠損BALB/cマウス(C.129−Igh−6tm1Cgn)におけるCD4+T細胞の枯渇により、腫瘍に対するPEG−hIL−10機能が阻害される(表14)。
【0094】
表14:腫瘍移植8日後に開始するPEG−hIL−10治療は、B細胞欠損BALB/cマウス(C.129−Igh−6tm1Cgn)において、CD4枯渇後にCT−26結腸癌の腫瘍サイズ(mm)を減少できない。
【0095】
【表14】

CD8T細胞の枯渇は、同系腫瘍に対するPEG mIL−10の効果を完全に阻害する(表15)。
【0096】
表15:腫瘍移植後8日に開始するPEG−hIL−10治療は、B細胞欠損BALB/cマウスにおいて、CD8枯渇後にCT−26結腸癌の腫瘍サイズ(mm)を減少できない。
【0097】
【表15】

VI. 併用療法
PEG−IL−10を、公知の化学療法剤と組み合わせて投与する。化学療法剤は、PEG−IL−10投与の前、同時、またはその後に投与され得る。化学療法剤および用量範囲の例が、表16に提供される。
【0098】
表16:化学療法剤の用量範囲
【0099】
【表16】

PEG−IL−10の併用投与により、より低く、毒性が少ない化学療法剤の用量を用いることが可能になるため、公知の副作用を回避しうる。
【0100】
本明細書の全ての引用文献は、個々の刊行物または特許出願が参照により本明細書に組み込まれるものと特に個々に示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
当業者には当然のことながら、本発明の多くの修正変更が、その趣旨および範囲から逸脱することなく行われうる。本明細書に説明される特定の実施形態は、単なる例として提供されるものであり、本発明は、添付の請求の範囲中の用語、ならびにかかる請求の範囲が与えられた等価物の完全な範囲により制限されるものである。本発明は、本明細書に例として示された特定の実施形態により制限されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2012−211206(P2012−211206A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−175219(P2012−175219)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【分割の表示】特願2009−530418(P2009−530418)の分割
【原出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(596129215)メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション (785)
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
【住所又は居所原語表記】One Merck Drive,Whitehouse Station,New Jersey 08889,U.S.A.
【Fターム(参考)】