癌を検出するための検査キット
アリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性を測定するための検査キットであり、4−メチルウンベリフェリルスルフェート及び4−メチルウンベリフェロンを含む。この検査キットは、早期癌のスクリーニング、治療効果及び癌再発の監視のために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌又は他の疾患を検査するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
癌の致死率は高い。癌生存率を改善する1つの要因は、早期発見である。しかしながら、癌に対する現在の早期発見のための検査及び有効治療には、多くの限界がある。
【0003】
癌の発生及び成長は、酵素の不規則な発現と大いに相関している。細胞が癌化する間、細胞増殖に関係する酵素及びそのアイソザイムの活性は、高く調節される。アリールスルフェートを加水分解するアリールスルファターゼ(ARS)及びそのアイソザイムは、生体における解毒に関係している。血清ARS活性の上昇は、腫瘍か非腫瘍かを判別することができる炎症に関連していることは、一般的に認められている。血清中のARS濃度の測定は、疾患の臨床診断、治療及び予後に非常に有用な情報を提供し得る。
【0004】
いくつかの研究において、アリールスルファターゼ(ARS)及びそのアイソザイムは、アリールスルフェートの加水分解を触媒する加水分解酵素であることが示されており、これは、健康な人の血清中よりも、肺癌患者の血清中においてより活性であることが証明されている。また、その活性は治療により低下することが示されている。ARSを含むリソソーム酵素の活性の上昇を、有効な診断及び治療効果の監視のために使用することができる(非特許文献1参照)。さらに、ヒト原発性及び続発性腫瘍の異なる組織学的種類であるARSA及びARSBの活性が、ほぼ全ての原発性肺癌で著しく上昇する(非特許文献2参照)。乳癌患者におけるARS活性は、健康な女性におけるARS活性の2〜5倍である。手術又は化学療法の後では、活性は正常レベルまで低下する。酵素の活性は、腫瘍の大きさ及びその転移と相関している(非特許文献3参照)。また、乳癌組織でのスルファターゼの活性は、正常な組織での活性のおよそ2倍であることも分かっている(非特許文献4参照)。さらに、胃癌、直腸癌、乳癌及び皮膚癌でのARS活性は、特異でない基質を用いることにより上昇することが分かっている(非特許文献5参照)。
【0005】
4−メチルウンベリフェロンスルフェート(4−MUS)は、ARSの活性を試験するための適切な基質として使用することができる(非特許文献6参照)。さらに、4−MUSは、他の基質よりも良好なKm、Vmax、感度及び安定性を有し、その加水分解物である4−メチルウンベリフェロン(4−MU)は、アルカリ溶液中でより高い蛍光性を有し、測定に便利である。現在の技術では全て、ARS A又はARS Bのいずれかを検査する方法が取られているが、4−MUSは、A/Bを区別することができないことから(非特許文献7)、本発明ではARS A及びB酵素活性を一緒に、1回の分析で検査する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wozniak,A.ら、Neoplasma、2002年、49(1):p.10〜5
【非特許文献2】Gasa,S.ら、Cancer Res、1980年、40(10):p.3804〜9
【非特許文献3】Rozwodowska,M.ら、Pol Merkuriusz Lek、2004年、17(99):p.252〜4
【非特許文献4】Chetrite,G.S.ら、Anticancer Res、2005年、25(4):p.2827〜30
【非特許文献5】Dzialoszynski,L.M.ら、Clin.Chim.Acta、1966年、14(4):p.450〜3
【非特許文献6】Uchimura,Kら、Methods In Enzymology、2006年、416:p.243
【非特許文献7】Sherman,W.R.ら、Biochem J.、1967年、102:p.905
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ARS酵素により触媒された4−MUSの生化学的反応に従い、反応溶液中で生じる酵素活性を反映する4−MUの特質に基づき、365nm励起により、445〜450nmの波長で4−MUの蛍光強度を検査する。そして、既知の濃度での4−MU標準生成物に基づく標準曲線を引いて、血清/尿試料中のARS活性を定量的に検査する。これによって、初期スクリーニング、治療効果の監視及び再発検査を実施する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、4−MUS及び4−MUを含む、癌を検査するためのキットに関する。好ましくは、キット中の4−MUSの濃度は、1〜10mMであり、4−MUの濃度は、100〜5000nMである。キット中の緩衝液は、酢酸ナトリウムであり、好ましくは、濃度は1〜10000mMの範囲であり、pH値は1から14の間であり、より好ましくは、濃度は10〜1000mMの範囲であり、pH値は2から14の間である。キット中の停止液は、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウムの混合溶液又は炭酸ナトリウム及びグリシンの混合溶液であり、好ましくは、濃度は1〜50000mMの範囲であり、pH値は1から14の間であり、より好ましくは、濃度は10〜5000mMの範囲であり、pH値は7から12の間である。キット中の沈殿剤は、酢酸鉛であり、好ましい濃度は1%〜90%(w/v)の範囲であり、より好ましい濃度は10%〜40%(w/v)の範囲である。
【0009】
本発明は、スクリーニング、治療効果の監視及び再発検査のために使用することができる:
健康な人でのスクリーニング;症状を伴う患者での診断及び良性腫瘍及び悪性腫瘍の識別;患者の状態の判定及び治療計画の評価;腫瘍の治療効果の監視;再発及び予後の予測。
【0010】
腫瘍には、肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、乳癌、肝臓癌、食道癌、腸癌、鼻咽頭癌、腎臓癌、膀胱癌、リンパ癌、胆嚢癌、膨大部癌、陰茎癌、精巣癌、咽喉癌、甲状腺癌、前立腺癌、子宮癌、結腸直腸癌、胆管癌、柔組織肉腫、精原細胞腫瘍、ユーイング肉腫、白血病、骨肉腫、脳腫瘍又は悪性リンパ腫が含まれる。より好ましくは、肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、乳癌、肝臓癌、食道癌、腎臓癌、リンパ癌、結腸直腸癌、白血病及び悪性リンパ腫である。
【0011】
本発明の利点(ELISA(酵素結合免疫測定法)と比較して):
酵素と基質との間における反応は、極めて高効率かつ安定であるので、酵素活性の測定において抗原抗体反応方式よりも良好であり、誤った陽性結果がない。同時に、酵素活性の測定は、腫瘍形成における酵素の生物作用をより良好に示し得る。即ち、検査結果がより確かである。また、検査される生成物は、特殊な励起及び検出波長を有し、検査全体を実施可能なものにしている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の原理を示す図である。
【図2】ヒト血清アリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性に対する抗血液凝血剤の影響を示すグラフである。
【図3】ヒト血清アリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性に対する防腐剤の影響を示すグラフである。
【図4】4−MUの標準曲線及び蛍光指数のグラフである。
【図5】3種の血清試料による反応時間を決定するための[4−MU]−時間曲線のグラフである。
【図6】異なる希釈条件での血清試料の[4−MU]−時間曲線のグラフである。
【図7】健康な人の血清及び肺癌などの癌患者からの血清におけるアリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性を比較するグラフである。
【図8】健康な人の全血試料及び肺癌などの癌患者からの全血試料におけるアリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性を比較するグラフである。
【図9】健康な人の血清及び肺癌などの癌患者からの血清におけるアリールスルフェート又はそのアイソザイムの活性に対応する感度−特異性を示すグラフである。
【図10】健康な人の尿試料及び癌患者からの尿試料におけるアリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性を比較するグラフである。
【図11】様々な種類の癌患者からの尿試料におけるアリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性上昇の感度を示すグラフである。
【図12】健康な人の尿試料及び治療された癌患者からの尿試料におけるアリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)反応パラメーターの決定
1 反応パラメーター
1.1 酵素活性に対する抗血液凝血剤の影響(図2)
抗血液凝血剤の濃度上昇を伴う図2から:
・EDTAは、ARS活性に影響を及ぼさないようであった。
・ヘパリンナトリウム及びクエン酸ナトリウムは、ARS活性に劇的な作用を有し、これは、用量の上昇に伴って低下する。
酵素の活性を確保するために、抗血液凝血剤処理を伴わない血清試料を実験試料として選択する。
【0014】
1.2 酵素活性に対する防腐剤の影響(図3)
図3から:
・室温で防腐作用を施した状態では、血清ARS酵素の活性は毎日劇的に低下し、前日に比べて毎日約10%低下する。
・4℃では、血清ARS酵素の活性は、時間と共に僅かに変化する。
・10回の凍結−解凍により、活性は約20%低下する。
酵素活性に影響を及ぼさないために、−20℃の温度を選択する。
【0015】
1.3 基本的な酵素の実験により決定された反応パラメーター
・OD−[P]は、直線的である。
・[P]−時間は、初期段階では直線的である。
・初期反応速度v−[E]は、直線的である([S]>>[E]0である場合)。
【0016】
1.3.1 OD−[4−MU]標準曲線の決定:蛍光指数が4−MU濃度と直線的であることを確かめるために、図4を描いた(繰り返し実験で、一貫した結果を得た)。
【0017】
1.3.2 [4−MU]−時間曲線の決定:
最適な反応時間を決定するために、3種の血清試料を選択した。結果を図5に示す。[4−MU]の指数は、酵素反応時間が36時間以内であるときに直線的である。
実験測定に基づく[4−MU]指数値が直線的な範囲内にあり、標準(比較)の値とは明らかに異なることを確かなものにするために、反応時間を24時間に設定する。したがって、下記の血清試料を使用する実験は全て、他に明記されていなければ反応時間として24時間を使用した。
【0018】
1.3.3 異なる希釈条件での血清試料の[4−MU]−時間曲線(図6)
血清試料の希釈率が直線的な範囲内にあることを確かなものにするために、1:8の比を選択し、その20μlを反応系に加える。
【0019】
2 反応パラメーターの決定:血清を1/8に希釈し、20μlを酵素反応に入れ、蛍光指数を24時間後に測定し、同時にOD−[4−MU]標準曲線を決定し、最後に(OD試料−OD対照(水))を[4−MU]に変換する。
【0020】
(2)実験ステップ:
1 血清試料検査
血液5mLを分離ゲルと共に、抗血液凝血剤を入れずに真空キュベットに入れて、室温で約30分間放置し、次いで水平遠心分離機で10分間遠心分離する(3000回転/分)。上澄み血清を、1.5mLのEPチューブ/又は他のタイプの未使用管に吸引/注入し、使用前に−20℃に冷却する。
【0021】
活性測定では、血清50μlを100mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.4)350μlに入れる。
【0022】
この希釈血清20μlを反応系180μl(100mMの酢酸ナトリウム、pH5.4、8mMの4−MUSを含む)に加える。
【0023】
サーマルコンテナ(37℃)に24時間入れ、次いで停止液1ml(500mMの炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム緩衝液、pH10.7)を加えることにより反応を停止させ、最後に各試料の蛍光を測定する(365nm励起、445〜450nm放射光線値を記録)。
【0024】
OD−[4−MU]標準曲線のために標準試料4−MU(純粋な生成物)を使用し、血清での反応指数をこの標準曲線により変換して、各反応での[4−MU]を得る。
【0025】
この[4−MU]に基づき、血清ARS又はそのアイソザイムの活性を、1Lの血清タンパク質により1分で生成される4−MUの量として測定する。
【0026】
2 尿試料検査
早朝尿の試料約3mLを無菌EPチューブに入れる。不純物を伴う場合には、10分間遠心分離し(3000回転/分)、不純物を除去して−20℃で貯蔵する。
【0027】
活性測定では、尿試料40μLをマイクロピペットで反応管に入れ、沈殿剤(30%酢酸鉛溶液)40μLを加え、十分に混合し、試料を4℃で5分間放置する。次いで、室温で5分間遠心分離する(3000回転/分)。
【0028】
上澄みをマイクロピペットで除去する。基質調合液(100mMの酢酸ナトリウム、pH5.4、8mMの4−MUSを含む)40μLを反応管に加え、十分に混合し、残留物のない状態にして37℃で30〜40分間培養し、反応時間をTとして記録する。その後、反応管を氷の上に素早く置き、停止液(500mMの炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム緩衝液、pH10.7)200μLを加え、十分に混合する。反応管を室温で1分間遠心分離する(6000〜8000回転/分)。
【0029】
反応済みの混合された尿試料及びゼロ対照溶液(100mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.4)をそれぞれ200μL取り、蛍光測定(365nm励起、445〜450nm放射光線値を記録)する。
【0030】
OD−[4−MU]標準曲線のために標準試料4−MU(純粋な生成物)を使用し、尿の反応指数をこの標準曲線により変換して、各反応での[4−MU]を得る。
【0031】
上記[4−MU]に従って、尿ARS又はそのアイソザイムの活性を、1L尿タンパク質により1分で生成される4−MUの量として測定する。
【0032】
(3) データ処理I:
上述のように、緩衝液(酢酸ナトリウム及び停止液成分を同じ濃度で含む)中の標準試料、即ち4−MU(0.003mM)のODを測定し、ODsとして記録する。
対照反応(血清に代わる酢酸ナトリウム緩衝液20μlの反応/尿に代わる酢酸ナトリウム緩衝液40μlの反応)のODを測定し、これをOD0として記録する。
(ODn−OD0)/[4−MU]n=ODs/[4−MU]s
[4−MU]n=(ODn−OD0)×0.003mM/ODs
試料nの反応から生成される生成物4−MUの量、即ち、反応に関与する基質4−MUSの量を算出することが可能である。
【0033】
試料nの活性、即ち1Lの酵素タンパク質により1分で変えられ得る基質のモル数を得ることが可能である。
式は、[4−MU]n/(L×24×60)である。
単位は、nmol/分/Lに変わる。
【0034】
データ処理II:
上述のように、緩衝液(酢酸ナトリウム及び停止液成分を同じ濃度により含む)中の標準試料、即ち4−MUのOD(0.003mM)を測定し、ODsとして記録する。
対照反応(血清に代わる酢酸ナトリウム緩衝液20μlの反応/尿に代わる酢酸ナトリウム緩衝液40μlの反応)のODを決定し、これをOD0として記録する。
(ODn−OD0)/[4−MU]n=ODs/[4−MU]s
[4−MU]n=(ODn−OD0)×0.003mM/ODs
試料nの反応から生成される生成物4−MUの量、即ち、反応に関与する基質4−MUSの量を算出することが可能である。
【0035】
試料nのタンパク質量の測定:対照としてウシ血清アルブミン(BSA)を、λ=280nmでの紫外線分光光度計を用いて測定し、試料nのタンパク質濃度を得て、これをMnとして記録する。そこから、試料nのタンパク質量をMgnとして算出することができる。
【0036】
試料nの特異的活性、即ち、1mgの酵素タンパク質により1分で変えられ得る基質のモル数を得ることが可能である。
式:[4−MU]n/(Mgn×24×60)
単位は、nmol/分/mgに変わる。
【0037】
データ処理III:
4−MU標準試料B1、B2、B3及びB4の蛍光値を縦座標(y)、対応する標準溶液の濃度値(単位nM)を横座標(x)として使用し、原点を通る標準曲線を引く:y=kx。
【0038】
試料の正味蛍光値Ai’=Ai−A0を算出し、これを前記式にyとして代入すると、反応後溶液中の4−MUの濃度、即ち、[4−MU]i(単位nM)が得られる。
【0039】
【数1】
【0040】
試料の酵素活性を、下記の通り算出する:
【0041】
【数2】
(尿試料に適していて、式中、240μLは反応後溶液の全体積であり、40μLは当初尿体積である。)
【0042】
【数3】
(血清試料に適していて、式中、240μLは、反応後溶液の全体積であり、0.4μLは、当初血清体積、即ち1/10希釈血清4μLを加えた体積である。)
【0043】
値の単位を、U/Lに変換することができ、1U=1μmol・分-1である。
【0044】
(4)実験機器:
水平遠心分離機:Heraeus Labofuge 400R
検査機器:励起波長365nm及び検出波長445〜450nmで蛍光シグナルを検出することができる。
電気恒温インキュベーター:Tianjin Zhonghuan Experimental Circuit Ltd.
渦振盪機:IKA MS2 Minishaker
Pipetman(登録商標):Gilson 1mL、200μl、20μl
【0045】
(5)実験データ
1.健康な人(15例)及び癌患者(肺癌7例、胃癌1例、卵巣癌3例、膵臓癌1例、乳癌1例)からの各血清試料でのARS活性の測定を3回繰り返した。全てのデータに関しては、図7参照。
【0046】
【表1】
【0047】
2.健康な人及び癌患者の血清試料でのARS活性の平均
【0048】
【表2】
【0049】
T−試験を健康な人の血清(全部で15試料)及び癌患者からの血清(全部で13試料)で完了して、p=0.005415<0.01を得た。
【0050】
3.実験データに対応する感度−特異性相関に関しては、図2参照のこと。
【0051】
4.標準の決定:
感度−特異性の相関にしたがって、標準として比較的高い感度及び特異性でのカットオフ値を選択した。
【0052】
5.健康な人(54例)及び癌患者(肺癌12例、胃癌10例、結腸直腸癌13例、食道癌9例、腎臓癌5例及び乳癌5例)からの各尿試料でのARS活性の測定を3回繰り返した。全てのデータに関しては、図10参照。
【0053】
図が示しているように、癌患者からの尿試料でのアリールスルファターゼの活性は、健康な人の尿試料よりも劇的に高く、このことは、尿ARS活性が、健康なサンプルから腫瘍を見分けるためのマーカーとして使用することができることを示している。
【0054】
6.癌患者(食道癌57例、胃癌83例、結腸直腸癌79例、腎臓癌51例、膀胱63例、肺癌211例、肝臓癌76例、乳癌107例、卵巣癌91例、造血性腫瘍28例)からの尿試料でのアリールスルファターゼの活性を検査した。様々な種類の癌での感度(真の陽性例/(真の陽性例+偽の陽性例))を図11に示す。
【0055】
検査された様々な種類の癌患者からの多くの尿試料で、アリールスルファターゼ活性の平均感度は80%以上であり、このことは、尿試料でのARS活性の異常な上昇が癌患者に共通していることを示している。
【0056】
7.健康な人(29例)及び治療後の癌患者(肺癌7例、食道癌9例、肝臓癌9例、腎臓癌2例、卵巣癌3例、下咽頭癌1例及び造血腫瘍2例)からの各尿試料でのARS活性の測定を3回繰り返した。全てのデータに関しては、図12参照。
【0057】
治療処置後の癌患者では、尿ARS活性が、健康な対照の尿ARS活性に近いレベルまで劇的に低下したことが観察された(図12)。したがって、尿試料でのARS活性レベルの変化を、癌患者で治療効果を監視するために使用することができる。治療が有効であれば、ARS活性値が、治療前よりも健康な人のレベル近くまで低下するはずである。また、尿試料でのARS活性レベルの変化を、治療後の患者での癌再発を監視するために使用することもできる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌又は他の疾患を検査するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
癌の致死率は高い。癌生存率を改善する1つの要因は、早期発見である。しかしながら、癌に対する現在の早期発見のための検査及び有効治療には、多くの限界がある。
【0003】
癌の発生及び成長は、酵素の不規則な発現と大いに相関している。細胞が癌化する間、細胞増殖に関係する酵素及びそのアイソザイムの活性は、高く調節される。アリールスルフェートを加水分解するアリールスルファターゼ(ARS)及びそのアイソザイムは、生体における解毒に関係している。血清ARS活性の上昇は、腫瘍か非腫瘍かを判別することができる炎症に関連していることは、一般的に認められている。血清中のARS濃度の測定は、疾患の臨床診断、治療及び予後に非常に有用な情報を提供し得る。
【0004】
いくつかの研究において、アリールスルファターゼ(ARS)及びそのアイソザイムは、アリールスルフェートの加水分解を触媒する加水分解酵素であることが示されており、これは、健康な人の血清中よりも、肺癌患者の血清中においてより活性であることが証明されている。また、その活性は治療により低下することが示されている。ARSを含むリソソーム酵素の活性の上昇を、有効な診断及び治療効果の監視のために使用することができる(非特許文献1参照)。さらに、ヒト原発性及び続発性腫瘍の異なる組織学的種類であるARSA及びARSBの活性が、ほぼ全ての原発性肺癌で著しく上昇する(非特許文献2参照)。乳癌患者におけるARS活性は、健康な女性におけるARS活性の2〜5倍である。手術又は化学療法の後では、活性は正常レベルまで低下する。酵素の活性は、腫瘍の大きさ及びその転移と相関している(非特許文献3参照)。また、乳癌組織でのスルファターゼの活性は、正常な組織での活性のおよそ2倍であることも分かっている(非特許文献4参照)。さらに、胃癌、直腸癌、乳癌及び皮膚癌でのARS活性は、特異でない基質を用いることにより上昇することが分かっている(非特許文献5参照)。
【0005】
4−メチルウンベリフェロンスルフェート(4−MUS)は、ARSの活性を試験するための適切な基質として使用することができる(非特許文献6参照)。さらに、4−MUSは、他の基質よりも良好なKm、Vmax、感度及び安定性を有し、その加水分解物である4−メチルウンベリフェロン(4−MU)は、アルカリ溶液中でより高い蛍光性を有し、測定に便利である。現在の技術では全て、ARS A又はARS Bのいずれかを検査する方法が取られているが、4−MUSは、A/Bを区別することができないことから(非特許文献7)、本発明ではARS A及びB酵素活性を一緒に、1回の分析で検査する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wozniak,A.ら、Neoplasma、2002年、49(1):p.10〜5
【非特許文献2】Gasa,S.ら、Cancer Res、1980年、40(10):p.3804〜9
【非特許文献3】Rozwodowska,M.ら、Pol Merkuriusz Lek、2004年、17(99):p.252〜4
【非特許文献4】Chetrite,G.S.ら、Anticancer Res、2005年、25(4):p.2827〜30
【非特許文献5】Dzialoszynski,L.M.ら、Clin.Chim.Acta、1966年、14(4):p.450〜3
【非特許文献6】Uchimura,Kら、Methods In Enzymology、2006年、416:p.243
【非特許文献7】Sherman,W.R.ら、Biochem J.、1967年、102:p.905
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ARS酵素により触媒された4−MUSの生化学的反応に従い、反応溶液中で生じる酵素活性を反映する4−MUの特質に基づき、365nm励起により、445〜450nmの波長で4−MUの蛍光強度を検査する。そして、既知の濃度での4−MU標準生成物に基づく標準曲線を引いて、血清/尿試料中のARS活性を定量的に検査する。これによって、初期スクリーニング、治療効果の監視及び再発検査を実施する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、4−MUS及び4−MUを含む、癌を検査するためのキットに関する。好ましくは、キット中の4−MUSの濃度は、1〜10mMであり、4−MUの濃度は、100〜5000nMである。キット中の緩衝液は、酢酸ナトリウムであり、好ましくは、濃度は1〜10000mMの範囲であり、pH値は1から14の間であり、より好ましくは、濃度は10〜1000mMの範囲であり、pH値は2から14の間である。キット中の停止液は、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウムの混合溶液又は炭酸ナトリウム及びグリシンの混合溶液であり、好ましくは、濃度は1〜50000mMの範囲であり、pH値は1から14の間であり、より好ましくは、濃度は10〜5000mMの範囲であり、pH値は7から12の間である。キット中の沈殿剤は、酢酸鉛であり、好ましい濃度は1%〜90%(w/v)の範囲であり、より好ましい濃度は10%〜40%(w/v)の範囲である。
【0009】
本発明は、スクリーニング、治療効果の監視及び再発検査のために使用することができる:
健康な人でのスクリーニング;症状を伴う患者での診断及び良性腫瘍及び悪性腫瘍の識別;患者の状態の判定及び治療計画の評価;腫瘍の治療効果の監視;再発及び予後の予測。
【0010】
腫瘍には、肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、乳癌、肝臓癌、食道癌、腸癌、鼻咽頭癌、腎臓癌、膀胱癌、リンパ癌、胆嚢癌、膨大部癌、陰茎癌、精巣癌、咽喉癌、甲状腺癌、前立腺癌、子宮癌、結腸直腸癌、胆管癌、柔組織肉腫、精原細胞腫瘍、ユーイング肉腫、白血病、骨肉腫、脳腫瘍又は悪性リンパ腫が含まれる。より好ましくは、肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、乳癌、肝臓癌、食道癌、腎臓癌、リンパ癌、結腸直腸癌、白血病及び悪性リンパ腫である。
【0011】
本発明の利点(ELISA(酵素結合免疫測定法)と比較して):
酵素と基質との間における反応は、極めて高効率かつ安定であるので、酵素活性の測定において抗原抗体反応方式よりも良好であり、誤った陽性結果がない。同時に、酵素活性の測定は、腫瘍形成における酵素の生物作用をより良好に示し得る。即ち、検査結果がより確かである。また、検査される生成物は、特殊な励起及び検出波長を有し、検査全体を実施可能なものにしている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の原理を示す図である。
【図2】ヒト血清アリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性に対する抗血液凝血剤の影響を示すグラフである。
【図3】ヒト血清アリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性に対する防腐剤の影響を示すグラフである。
【図4】4−MUの標準曲線及び蛍光指数のグラフである。
【図5】3種の血清試料による反応時間を決定するための[4−MU]−時間曲線のグラフである。
【図6】異なる希釈条件での血清試料の[4−MU]−時間曲線のグラフである。
【図7】健康な人の血清及び肺癌などの癌患者からの血清におけるアリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性を比較するグラフである。
【図8】健康な人の全血試料及び肺癌などの癌患者からの全血試料におけるアリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性を比較するグラフである。
【図9】健康な人の血清及び肺癌などの癌患者からの血清におけるアリールスルフェート又はそのアイソザイムの活性に対応する感度−特異性を示すグラフである。
【図10】健康な人の尿試料及び癌患者からの尿試料におけるアリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性を比較するグラフである。
【図11】様々な種類の癌患者からの尿試料におけるアリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性上昇の感度を示すグラフである。
【図12】健康な人の尿試料及び治療された癌患者からの尿試料におけるアリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)反応パラメーターの決定
1 反応パラメーター
1.1 酵素活性に対する抗血液凝血剤の影響(図2)
抗血液凝血剤の濃度上昇を伴う図2から:
・EDTAは、ARS活性に影響を及ぼさないようであった。
・ヘパリンナトリウム及びクエン酸ナトリウムは、ARS活性に劇的な作用を有し、これは、用量の上昇に伴って低下する。
酵素の活性を確保するために、抗血液凝血剤処理を伴わない血清試料を実験試料として選択する。
【0014】
1.2 酵素活性に対する防腐剤の影響(図3)
図3から:
・室温で防腐作用を施した状態では、血清ARS酵素の活性は毎日劇的に低下し、前日に比べて毎日約10%低下する。
・4℃では、血清ARS酵素の活性は、時間と共に僅かに変化する。
・10回の凍結−解凍により、活性は約20%低下する。
酵素活性に影響を及ぼさないために、−20℃の温度を選択する。
【0015】
1.3 基本的な酵素の実験により決定された反応パラメーター
・OD−[P]は、直線的である。
・[P]−時間は、初期段階では直線的である。
・初期反応速度v−[E]は、直線的である([S]>>[E]0である場合)。
【0016】
1.3.1 OD−[4−MU]標準曲線の決定:蛍光指数が4−MU濃度と直線的であることを確かめるために、図4を描いた(繰り返し実験で、一貫した結果を得た)。
【0017】
1.3.2 [4−MU]−時間曲線の決定:
最適な反応時間を決定するために、3種の血清試料を選択した。結果を図5に示す。[4−MU]の指数は、酵素反応時間が36時間以内であるときに直線的である。
実験測定に基づく[4−MU]指数値が直線的な範囲内にあり、標準(比較)の値とは明らかに異なることを確かなものにするために、反応時間を24時間に設定する。したがって、下記の血清試料を使用する実験は全て、他に明記されていなければ反応時間として24時間を使用した。
【0018】
1.3.3 異なる希釈条件での血清試料の[4−MU]−時間曲線(図6)
血清試料の希釈率が直線的な範囲内にあることを確かなものにするために、1:8の比を選択し、その20μlを反応系に加える。
【0019】
2 反応パラメーターの決定:血清を1/8に希釈し、20μlを酵素反応に入れ、蛍光指数を24時間後に測定し、同時にOD−[4−MU]標準曲線を決定し、最後に(OD試料−OD対照(水))を[4−MU]に変換する。
【0020】
(2)実験ステップ:
1 血清試料検査
血液5mLを分離ゲルと共に、抗血液凝血剤を入れずに真空キュベットに入れて、室温で約30分間放置し、次いで水平遠心分離機で10分間遠心分離する(3000回転/分)。上澄み血清を、1.5mLのEPチューブ/又は他のタイプの未使用管に吸引/注入し、使用前に−20℃に冷却する。
【0021】
活性測定では、血清50μlを100mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.4)350μlに入れる。
【0022】
この希釈血清20μlを反応系180μl(100mMの酢酸ナトリウム、pH5.4、8mMの4−MUSを含む)に加える。
【0023】
サーマルコンテナ(37℃)に24時間入れ、次いで停止液1ml(500mMの炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム緩衝液、pH10.7)を加えることにより反応を停止させ、最後に各試料の蛍光を測定する(365nm励起、445〜450nm放射光線値を記録)。
【0024】
OD−[4−MU]標準曲線のために標準試料4−MU(純粋な生成物)を使用し、血清での反応指数をこの標準曲線により変換して、各反応での[4−MU]を得る。
【0025】
この[4−MU]に基づき、血清ARS又はそのアイソザイムの活性を、1Lの血清タンパク質により1分で生成される4−MUの量として測定する。
【0026】
2 尿試料検査
早朝尿の試料約3mLを無菌EPチューブに入れる。不純物を伴う場合には、10分間遠心分離し(3000回転/分)、不純物を除去して−20℃で貯蔵する。
【0027】
活性測定では、尿試料40μLをマイクロピペットで反応管に入れ、沈殿剤(30%酢酸鉛溶液)40μLを加え、十分に混合し、試料を4℃で5分間放置する。次いで、室温で5分間遠心分離する(3000回転/分)。
【0028】
上澄みをマイクロピペットで除去する。基質調合液(100mMの酢酸ナトリウム、pH5.4、8mMの4−MUSを含む)40μLを反応管に加え、十分に混合し、残留物のない状態にして37℃で30〜40分間培養し、反応時間をTとして記録する。その後、反応管を氷の上に素早く置き、停止液(500mMの炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム緩衝液、pH10.7)200μLを加え、十分に混合する。反応管を室温で1分間遠心分離する(6000〜8000回転/分)。
【0029】
反応済みの混合された尿試料及びゼロ対照溶液(100mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.4)をそれぞれ200μL取り、蛍光測定(365nm励起、445〜450nm放射光線値を記録)する。
【0030】
OD−[4−MU]標準曲線のために標準試料4−MU(純粋な生成物)を使用し、尿の反応指数をこの標準曲線により変換して、各反応での[4−MU]を得る。
【0031】
上記[4−MU]に従って、尿ARS又はそのアイソザイムの活性を、1L尿タンパク質により1分で生成される4−MUの量として測定する。
【0032】
(3) データ処理I:
上述のように、緩衝液(酢酸ナトリウム及び停止液成分を同じ濃度で含む)中の標準試料、即ち4−MU(0.003mM)のODを測定し、ODsとして記録する。
対照反応(血清に代わる酢酸ナトリウム緩衝液20μlの反応/尿に代わる酢酸ナトリウム緩衝液40μlの反応)のODを測定し、これをOD0として記録する。
(ODn−OD0)/[4−MU]n=ODs/[4−MU]s
[4−MU]n=(ODn−OD0)×0.003mM/ODs
試料nの反応から生成される生成物4−MUの量、即ち、反応に関与する基質4−MUSの量を算出することが可能である。
【0033】
試料nの活性、即ち1Lの酵素タンパク質により1分で変えられ得る基質のモル数を得ることが可能である。
式は、[4−MU]n/(L×24×60)である。
単位は、nmol/分/Lに変わる。
【0034】
データ処理II:
上述のように、緩衝液(酢酸ナトリウム及び停止液成分を同じ濃度により含む)中の標準試料、即ち4−MUのOD(0.003mM)を測定し、ODsとして記録する。
対照反応(血清に代わる酢酸ナトリウム緩衝液20μlの反応/尿に代わる酢酸ナトリウム緩衝液40μlの反応)のODを決定し、これをOD0として記録する。
(ODn−OD0)/[4−MU]n=ODs/[4−MU]s
[4−MU]n=(ODn−OD0)×0.003mM/ODs
試料nの反応から生成される生成物4−MUの量、即ち、反応に関与する基質4−MUSの量を算出することが可能である。
【0035】
試料nのタンパク質量の測定:対照としてウシ血清アルブミン(BSA)を、λ=280nmでの紫外線分光光度計を用いて測定し、試料nのタンパク質濃度を得て、これをMnとして記録する。そこから、試料nのタンパク質量をMgnとして算出することができる。
【0036】
試料nの特異的活性、即ち、1mgの酵素タンパク質により1分で変えられ得る基質のモル数を得ることが可能である。
式:[4−MU]n/(Mgn×24×60)
単位は、nmol/分/mgに変わる。
【0037】
データ処理III:
4−MU標準試料B1、B2、B3及びB4の蛍光値を縦座標(y)、対応する標準溶液の濃度値(単位nM)を横座標(x)として使用し、原点を通る標準曲線を引く:y=kx。
【0038】
試料の正味蛍光値Ai’=Ai−A0を算出し、これを前記式にyとして代入すると、反応後溶液中の4−MUの濃度、即ち、[4−MU]i(単位nM)が得られる。
【0039】
【数1】
【0040】
試料の酵素活性を、下記の通り算出する:
【0041】
【数2】
(尿試料に適していて、式中、240μLは反応後溶液の全体積であり、40μLは当初尿体積である。)
【0042】
【数3】
(血清試料に適していて、式中、240μLは、反応後溶液の全体積であり、0.4μLは、当初血清体積、即ち1/10希釈血清4μLを加えた体積である。)
【0043】
値の単位を、U/Lに変換することができ、1U=1μmol・分-1である。
【0044】
(4)実験機器:
水平遠心分離機:Heraeus Labofuge 400R
検査機器:励起波長365nm及び検出波長445〜450nmで蛍光シグナルを検出することができる。
電気恒温インキュベーター:Tianjin Zhonghuan Experimental Circuit Ltd.
渦振盪機:IKA MS2 Minishaker
Pipetman(登録商標):Gilson 1mL、200μl、20μl
【0045】
(5)実験データ
1.健康な人(15例)及び癌患者(肺癌7例、胃癌1例、卵巣癌3例、膵臓癌1例、乳癌1例)からの各血清試料でのARS活性の測定を3回繰り返した。全てのデータに関しては、図7参照。
【0046】
【表1】
【0047】
2.健康な人及び癌患者の血清試料でのARS活性の平均
【0048】
【表2】
【0049】
T−試験を健康な人の血清(全部で15試料)及び癌患者からの血清(全部で13試料)で完了して、p=0.005415<0.01を得た。
【0050】
3.実験データに対応する感度−特異性相関に関しては、図2参照のこと。
【0051】
4.標準の決定:
感度−特異性の相関にしたがって、標準として比較的高い感度及び特異性でのカットオフ値を選択した。
【0052】
5.健康な人(54例)及び癌患者(肺癌12例、胃癌10例、結腸直腸癌13例、食道癌9例、腎臓癌5例及び乳癌5例)からの各尿試料でのARS活性の測定を3回繰り返した。全てのデータに関しては、図10参照。
【0053】
図が示しているように、癌患者からの尿試料でのアリールスルファターゼの活性は、健康な人の尿試料よりも劇的に高く、このことは、尿ARS活性が、健康なサンプルから腫瘍を見分けるためのマーカーとして使用することができることを示している。
【0054】
6.癌患者(食道癌57例、胃癌83例、結腸直腸癌79例、腎臓癌51例、膀胱63例、肺癌211例、肝臓癌76例、乳癌107例、卵巣癌91例、造血性腫瘍28例)からの尿試料でのアリールスルファターゼの活性を検査した。様々な種類の癌での感度(真の陽性例/(真の陽性例+偽の陽性例))を図11に示す。
【0055】
検査された様々な種類の癌患者からの多くの尿試料で、アリールスルファターゼ活性の平均感度は80%以上であり、このことは、尿試料でのARS活性の異常な上昇が癌患者に共通していることを示している。
【0056】
7.健康な人(29例)及び治療後の癌患者(肺癌7例、食道癌9例、肝臓癌9例、腎臓癌2例、卵巣癌3例、下咽頭癌1例及び造血腫瘍2例)からの各尿試料でのARS活性の測定を3回繰り返した。全てのデータに関しては、図12参照。
【0057】
治療処置後の癌患者では、尿ARS活性が、健康な対照の尿ARS活性に近いレベルまで劇的に低下したことが観察された(図12)。したがって、尿試料でのARS活性レベルの変化を、癌患者で治療効果を監視するために使用することができる。治療が有効であれば、ARS活性値が、治療前よりも健康な人のレベル近くまで低下するはずである。また、尿試料でのARS活性レベルの変化を、治療後の患者での癌再発を監視するために使用することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−メチルウンベリフェロンスルフェート及び4−メチルウンベリフェロンを含む、アリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性を検査するためのキット。
【請求項2】
癌又は他の疾患の検出並びに初期スクリーニング、治療効果の監視及び再発検査のために使用される、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記癌が、肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、乳癌、肝臓癌、食道癌、腸癌、鼻咽頭癌、腎臓癌、膀胱癌、リンパ癌、胆嚢癌、膨大部癌、陰茎癌、精巣癌、咽喉癌、甲状腺癌、前立腺癌、子宮癌、結腸直腸癌、胆管癌、柔組織肉腫、精原細胞腫瘍、ユーイング肉腫、白血病、骨肉腫、脳腫瘍又は悪性リンパ腫である、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記癌が、肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、乳癌、肝臓癌、食道癌、腎臓癌、膀胱癌、リンパ癌、結腸直腸癌、白血病又は悪性リンパ腫である、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
使用される生物学的試料が、ヒト全血、血清、尿、唾液、痰、リンパ液又は他の組織液である、請求項1に記載のキット。
【請求項6】
使用される前記生物学的試料が、ヒト血清である、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
使用される前記生物学的試料が、ヒト尿である、請求項5に記載のキット。
【請求項8】
前記4−メチルウンベリフェロンスルフェートが、0.1〜100mMの範囲内である、請求項1に記載のキット。
【請求項9】
前記4−メチルウンベリフェロンスルフェートが、1〜10mMの範囲内である、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記4−メチルウンベリフェロンスルフェートが、8mMである、請求項8に記載のキット。
【請求項11】
前記4−メチルウンベリフェロンが、1〜10000nMの範囲内である、請求項1に記載のキット。
【請求項12】
前記4−メチルウンベリフェロンが、100〜5000nMの範囲内である、請求項10に記載のキット。
【請求項13】
前記4−メチルウンベリフェロンが、100〜2000nMの範囲内である、請求項10に記載のキット。
【請求項14】
緩衝液及び停止液を包含する、請求項6に記載のキット。
【請求項15】
緩衝液、沈殿剤及び停止液を包含する、請求項7に記載のキット。
【請求項16】
前記緩衝液が酢酸ナトリウムである、請求項14又は15に記載のキット。
【請求項17】
前記酢酸ナトリウムが1〜10000mMの範囲内であり、pH値が1〜14の範囲内である、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記酢酸ナトリウムが10〜1000mMの範囲内であり、前記pH値が2〜7の範囲内である、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記酢酸ナトリウムが100mMであり、前記pH値が5.4である、請求項17に記載のキット。
【請求項20】
前記停止液が、炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム/グリシン溶液である、請求項14又は15に記載のキット。
【請求項21】
前記炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム/グリシン溶液が、1〜50000mMの範囲内であり、pH値が1〜14の範囲内である、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム/グリシン溶液が、10〜5000mMの範囲内であり、前記pH値が7〜12の範囲内である、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム/グリシン溶液が、500mMであり、前記pH値が10.7である、請求項21に記載のキット。
【請求項24】
前記沈殿剤が、酢酸鉛である、請求項15に記載のキット。
【請求項25】
前記酢酸鉛が、1%〜90%(w/v)の範囲内である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記酢酸鉛が、10%〜40%(w/v)の範囲内である、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記酢酸鉛が、30%(w/v)である、請求項25に記載のキット。
【請求項1】
4−メチルウンベリフェロンスルフェート及び4−メチルウンベリフェロンを含む、アリールスルファターゼ又はそのアイソザイムの活性を検査するためのキット。
【請求項2】
癌又は他の疾患の検出並びに初期スクリーニング、治療効果の監視及び再発検査のために使用される、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記癌が、肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、乳癌、肝臓癌、食道癌、腸癌、鼻咽頭癌、腎臓癌、膀胱癌、リンパ癌、胆嚢癌、膨大部癌、陰茎癌、精巣癌、咽喉癌、甲状腺癌、前立腺癌、子宮癌、結腸直腸癌、胆管癌、柔組織肉腫、精原細胞腫瘍、ユーイング肉腫、白血病、骨肉腫、脳腫瘍又は悪性リンパ腫である、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記癌が、肺癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、乳癌、肝臓癌、食道癌、腎臓癌、膀胱癌、リンパ癌、結腸直腸癌、白血病又は悪性リンパ腫である、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
使用される生物学的試料が、ヒト全血、血清、尿、唾液、痰、リンパ液又は他の組織液である、請求項1に記載のキット。
【請求項6】
使用される前記生物学的試料が、ヒト血清である、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
使用される前記生物学的試料が、ヒト尿である、請求項5に記載のキット。
【請求項8】
前記4−メチルウンベリフェロンスルフェートが、0.1〜100mMの範囲内である、請求項1に記載のキット。
【請求項9】
前記4−メチルウンベリフェロンスルフェートが、1〜10mMの範囲内である、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記4−メチルウンベリフェロンスルフェートが、8mMである、請求項8に記載のキット。
【請求項11】
前記4−メチルウンベリフェロンが、1〜10000nMの範囲内である、請求項1に記載のキット。
【請求項12】
前記4−メチルウンベリフェロンが、100〜5000nMの範囲内である、請求項10に記載のキット。
【請求項13】
前記4−メチルウンベリフェロンが、100〜2000nMの範囲内である、請求項10に記載のキット。
【請求項14】
緩衝液及び停止液を包含する、請求項6に記載のキット。
【請求項15】
緩衝液、沈殿剤及び停止液を包含する、請求項7に記載のキット。
【請求項16】
前記緩衝液が酢酸ナトリウムである、請求項14又は15に記載のキット。
【請求項17】
前記酢酸ナトリウムが1〜10000mMの範囲内であり、pH値が1〜14の範囲内である、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記酢酸ナトリウムが10〜1000mMの範囲内であり、前記pH値が2〜7の範囲内である、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記酢酸ナトリウムが100mMであり、前記pH値が5.4である、請求項17に記載のキット。
【請求項20】
前記停止液が、炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム/グリシン溶液である、請求項14又は15に記載のキット。
【請求項21】
前記炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム/グリシン溶液が、1〜50000mMの範囲内であり、pH値が1〜14の範囲内である、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム/グリシン溶液が、10〜5000mMの範囲内であり、前記pH値が7〜12の範囲内である、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム/グリシン溶液が、500mMであり、前記pH値が10.7である、請求項21に記載のキット。
【請求項24】
前記沈殿剤が、酢酸鉛である、請求項15に記載のキット。
【請求項25】
前記酢酸鉛が、1%〜90%(w/v)の範囲内である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記酢酸鉛が、10%〜40%(w/v)の範囲内である、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記酢酸鉛が、30%(w/v)である、請求項25に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−509069(P2011−509069A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536591(P2009−536591)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/CN2008/000081
【国際公開番号】WO2008/067777
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509135382)北京雅康博生物科技有限公司 (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/CN2008/000081
【国際公開番号】WO2008/067777
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509135382)北京雅康博生物科技有限公司 (2)
【Fターム(参考)】
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