説明

癌転移の検出方法および検出用キット

【課題】迅速で、簡便な癌の転移の検出方法を提供すること。
【解決手段】癌腫の患者から生体外へ分離された組織の可溶化物中に、該癌腫に発現する抗原が含まれるか否かを、該抗原に特異的な抗体を用いたドットブロット解析により評価すること、及び該組織の可溶化物中に、正常組織の可溶化物中に含まれる該抗原の量を上回る量の該抗原が検出された場合に、癌腫細胞の該組織への転移が存在する可能性があると判定することを含む、癌腫の転移の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌転移の検出方法および検出用キット等に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、乳癌の治療方法においては、大きくわけて乳房(全)切除手術と、乳房温存手術がある。前者は、しこり(癌)部位と周辺組織、さらに腋下のリンパ節群切除(リンパ節郭清)も行う。この方法では、手術後にリンパ節がなくなることに伴い、体液循環がスムーズにいかなくなり、リンパ液によるうっ帯や浮腫がみられたり、ひどい場合は、腕の稼働範囲が狭くなることが報告されている。
【0003】
一方、乳房温存手術は、しこり部位を中心として摘出を行う手術方法である。最近では、HER2(human epidermal growth factor receptor type 2)などのマーカーを用いた遺伝子診断も行われて、転移能が低い又は転移していないと判断された場合は乳房温存手術を選択することが多い。
【0004】
現在、転移を診断する方法として、センチネルリンパ節診断が行われ始めている。センチネルリンパ節とは、最も癌に近いと考えられるリンパ節であり、癌からのリンパ流を最初に受けるリンパ節である。癌の転移が起きる場合、センチネルリンパ節に最初の転移が起きると考えられている。センチネルリンパ節は、放射性物質や染色などによって、しこり部位からリンパ液がどのように流れているかを測定し、最も早く到達したリンパ節として判断される。センチネルリンパ節において、癌の転移を観察し、それによって転移の有無を診断し、乳房を温存するかしないかを決定する。
【0005】
また、乳癌に限らず、リンパ節への癌転移の判定が容易にできれば、手術の範囲(リンパ節郭清の程度)を決定する材料として有用な情報となる可能性もある。
【0006】
センチネルリンパ節診断は、局所麻酔を行った後、組織採取をし、薄切片を顕微鏡にて観察し、乳癌由来と思われる上皮細胞を見つける方法か、あるいはPCRによって上皮細胞由来の遺伝子を検出する方法の二つがある(非特許文献1〜3)。
【0007】
前者の方法は、手術室から検体を病理室へ運び、リンパ節に割を入れたのち、割面の押印細胞診をとり、リンパ節を迅速凍結させ、割面を薄切切片としてヘマトキシリン・エオジン染色を行い、病理専門医が転移の有無を検討することにより実施される。この方法は、(1)検体を病理室まで運ぶ、(2)薄切切片を作成し、ヘマトキシリン・エオジン染色する、(3)細胞診を行う、(4)組織診断を行う、といった数多くのプロセスが必要であるため、検査の完結までに病理医が常勤している施設でも約1時間、病理医の常勤していない施設では数時間要する。また、(2)〜(4)の工程に、細胞診や病理診断に関する専門技術もしくは専門的知識が必要である。また、施設差はあるが、リンパ節に割を入れた面のみを薄切する場合は、微小な転移などに関しては偽陰性となる可能性がある。実際、術中の診断では陰性であったが、術後の確定診断によって陽性と判断されることもある。
【0008】
後者は、比較的短時間で検査結果が判明するが、術中に行うには更なる時間の短縮が望まれる。また、小規模の病院では、高価な機器(ホモジナイザー、PCR機)やそれを運用するスタッフの、新たな導入が必要となることが多い。更に、PCR法では、ごく微量の遺伝子でも検出されるため、カットオフ値の設定が必要となる。また、PCR法では、リンパ節組織の半分をホモジナイズして検査に用いるため、他の検査方法との両立が困難となる可能性がある。
【0009】
一方、肺癌は、小細胞癌と、非小細胞癌(腺癌など)に大きく分類される。肺の小細胞癌は進展や転移が激しく、手術による適応は基本的に無く、化学療法が一般的である。一方、非小細胞癌(第III期まで)は、手術が原則である。従って、手術前の生検で、小細胞癌と診断された場合には化学療法を、非小細胞癌と診断された場合には外科的手術を、それぞれ1st choiceにする。
【0010】
しかし、現在汎用されている診断方法(免疫組織化学検査など)では、手術前の生検で非小細胞癌(腺癌など)と診断されたにも係らず、手術後の病理検査で、ホルマリン固定後標本を使用して、病変の最大割面でさらに免疫染色を行うと、小細胞性癌を合併(combined)していることが、判明することがよくある。これは、手術中に提供される原発巣検体を用いれば、手術前に生検で得られる検体よりも、大きな範囲の病変について検査を行うことが可能であるためと考えられる。従って、もし、手術の最中に、迅速な確定診断をできれば、侵襲的な手術によって臓器や周辺のリンパ節郭清をするなどせず、患者の体力を温存し、延命効果を高めることが可能となる。
【0011】
以上より、迅速で、高価な機器を要せず、かつ病理医等の専門スタッフでなくとも行うことができる簡便な癌の検出方法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Technique and clinical consequences of sentinel lymph node biopsy in colorectal cancer.Bembenek A, String A, Gretschel S, Schlag PM.Surg Oncol. 2008 Sep;17(3):183-93. Epub 2008 Jun 20. Review.
【非特許文献2】Intra-operative rapid diagnostic method based on CK19 mRNA expression for the detection of lymph node metastases in breast cancer.Visser M, Jiwa M, Horstman A, Brink AA, Pol RP, van Diest P, Snijders PJ, Meijer CJ.Int J Cancer. 2008 Jun 1;122(11):2562-7.
【非特許文献3】Intraoperative imprint cytology of sentinel nodes in breast cancer.Barranger E, Antoine M, Grahek D, Callard P, Uzan S.J Surg Oncol. 2004 Jun 1;86(3):128-33. Review.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
迅速で、簡便な癌の検出方法を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、これらの課題を解決するために鋭意研究した結果、意外にも、癌細胞に特異的な抗体を用いたドットブロット法を用いると、極めて迅速かつ簡便に癌のリンパ節転移を検出できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]癌腫の患者から生体外へ分離された組織の可溶化物中に、該癌腫に発現する抗原が含まれるか否かを、該抗原に特異的な抗体を用いたドットブロット解析により評価すること、及び
該組織の可溶化物中に、正常組織の可溶化物中に含まれる該抗原の量を上回る量の該抗原が検出された場合に、癌腫細胞の該組織への転移が存在する可能性があると判定することを含む、
癌腫の転移の検出方法。
[2]癌腫が乳癌である、[1]記載の方法。
[3]抗原が、上皮細胞に特異的に発現する抗原である、[1]記載の方法。
[4]組織がリンパ節である、[1]記載の方法。
[5]リンパ節がセンチネルリンパ節である、[4]記載の方法。
[6]組織が、癌腫の摘出手術の過程で該患者から分離されたものであり、該摘出手術が行われている間に、ドットブロット解析による評価及び癌腫細胞の組織への転移が存在する可能性の判定が行われる、[1]記載の方法。
[7]組織の可溶化物が、リンパ節組織を生理的緩衝液で洗浄し、リンパ節の支持構造から遊離した実質細胞を可溶化することにより調製されたものである、[4]記載の方法。
[8]癌腫の患者から生体外へ分離された癌腫組織の可溶化物中の、癌腫の悪性度のマーカー抗原の含有量を、該マーカー抗原に特異的な抗体を用いたドットブロット解析により評価すること、及び
該マーカー抗原の含有量と、癌腫の悪性度とを相関付けることを含む、
癌腫の悪性度の評価方法。
[9]癌腫組織が、癌腫の摘出手術の過程で該患者から分離されたものであり、該摘出手術が行われている間に、ドットブロット解析による評価及び該マーカー抗原の含有量と、癌腫の悪性度との相関付けが行われる、[8]記載の方法。
[10]癌腫に発現する抗原に特異的な抗体、及びドットブロット解析を可能にする膜を含む、癌腫の検出用キット。
[11]正常組織の可溶化物を、ネガティブコントロールとして更に含む、[10]記載のキット。
[12]癌腫の悪性度のマーカー抗原に特異的な抗体、及びドットブロット解析を可能にする膜を含む、癌腫の悪性度の評価用キット。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、迅速且つ簡便に癌の転移を検出することが可能となる。
本発明によれば、迅速且つ簡便に癌の悪性度を評価することが可能となる。
本発明の方法は簡便であり、特殊な機器を要しないため、手術室やベッドサイドで実施することができる。そのため、手術中に、本発明の方法を用いて転移の有無や癌の悪性度を評価し、その結果に基づいて、リンパ節を摘出すべきか、或いはどの程度郭清すべきか等の手術の方針を迅速に決定することが可能となる。
微小な組織片で癌の悪性度やリンパ節転移の有無を評価できるので、従来の検査(細胞診、病理検査)を妨げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】乳癌組織のホモジネートを用いたドットブロット解析。図中の濃度は、ホモジネート中のタンパク質濃度を示す。
【図2】乳癌細胞株であるMCF−7のホモジネートを用いたドットブロット解析。図中の細胞数は1つのドットあたりのMCF−7細胞の個数を示す。
【図3】2名の乳癌患者から摘出されたセンチネルリンパ節を用いたドットブロット解析。患者1のN1とN2は、異なるリンパ節を示す。上段では1次抗体として抗サイトケラチン抗体を使用し、下段では、ネガティブコントロールとして、アイソタイプを一致させたIgGを使用した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.癌腫の転移の検出方法
本発明は、癌腫の患者から生体外へ分離された組織の可溶化物中に、該癌腫に発現する抗原が含まれるか否かを、該抗原に特異的な抗体を用いたドットブロット解析により評価すること、及び
該組織の可溶化物中に、正常組織の可溶化物中に含まれる該抗原の量を上回る量の該抗原が検出された場合に、癌腫細胞の該組織への転移が存在する可能性があると判定することを含む、
癌腫の転移の検出方法を提供するものである。
【0019】
癌腫(carcinoma)とは、上皮細胞の悪性腫瘍を意味する。
【0020】
本発明を適用可能な癌腫の種類としては、特に限定されないが、例えば、乳癌、肺癌、膀胱癌、大腸癌、喉頭癌、食道癌、胃癌、腎癌、前立腺癌、卵巣癌等を挙げることが出来る。本発明の方法を用いると、僅かな量の組織の生検試料で癌腫の該組織への転移の有無を判定することが可能であるため、組織を採取する際の侵襲の大きさを最小限に抑えることが出来る。従って、本発明の方法は、特に、乳癌の腋窩リンパ節への転移の有無の検査に有利である。
【0021】
「転移」とは、原発巣に存在していた癌細胞が、原発巣とは異なる組織に到達することを意味する。
【0022】
患者の動物種は通常哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0023】
本発明の方法は、癌腫が転移する可能性のある、体中の全ての組織について適用することが可能である。該組織としては、特に限定されないが、リンパ節、骨、肺、肝臓、腹膜、腎臓、筋肉、膀胱、結腸等の臓器が挙げられ、好ましくはリンパ節である。
【0024】
腫瘍はまず近傍のセンチネルリンパ節へ転移すると考えられていることから、本発明の方法は、好ましくは、癌腫のセンチネルリンパ節への転移の検出に適用される。センチネルリンパ節とは、癌細胞がリンパ流に乗って最初に到達するリンパ節を意味する。センチネルリンパ節は、癌腫が存在する組織(例えば乳癌であれば乳腺)に、放射性物質や色素等の標識物質を注入し、この標識物質が最も早く到達したリンパ節を選択することにより、容易に決定することが出来る。センチネルリンパ節を決定する方法については、例えば、乳癌診療ガイドライン 外科療法、2008年版、日本乳癌学会/編、金原出版株式会社等に記載されている。乳癌の場合には、通常、同側腋窩リンパ節のいずれかがセンチネルリンパ節である。
【0025】
試料としては、癌腫の患者から生体外へ分離された上述の組織が用いられる。ここでいう組織とは、手術等により切除した臓器の全体又はその一部、及びバイオプシーなどにより臓器から採取された複数の組織構成細胞を含有する試料を含む。本発明の方法を用いると、侵襲の少ないバイオプシーにより分離した臓器片等の僅かな量の生検試料で癌腫の転移の有無を判定することが可能である。本発明の方法によると、この組織に癌腫細胞が含まれているか否か、即ち、原発巣からこの組織に癌腫細胞が転移しているか否かを判定することができる。
【0026】
本発明の方法は、極めて迅速かつ簡便に行うことが可能であるため、本発明の方法において、組織として、癌腫の摘出手術の過程で該患者から分離されたものを用い、該摘出手術が行われている間に、ドットブロット解析による評価及び癌腫細胞の組織への転移が存在する可能性の判定を行うことにより、転移の有無を確認しながら癌の摘出手術を進行することが可能となる。「癌腫の摘出手術の過程における組織の分離」とは、癌腫の摘出を目的として、該癌腫の周辺組織を分離することのみならず、癌腫の摘出に際して、原発巣から離れた組織への転移の有無を確認するために、該組織を分離することをも包含する。「摘出手術が行われている間」とは、癌腫の摘出のため、患者の皮膚を切開した時点から、癌腫の摘出を終えた後で、該切開口の縫合を完了した時点までの期間を意味する。
【0027】
組織の可溶化物は、自体公知の方法により調製することが可能である。例えば、組織を適切な界面活性剤を含む可溶化緩衝液中でホモジナイズする。これにより、生体試料中の細胞の細胞膜や核膜が物理的に破砕され、細胞内の分子が液中に移行しやすくなる。ホモジナイズは、ペッスルなどによって手動で行ってもよいし、市販の電動ホモジナイザを用いて行ってもよい。得られたホモジネートを数秒〜数分間遠心分離することによってホモジネート中に浮遊していた細胞の破片等を沈殿させることができる。これにより、タンパク質等の細胞内に存在する分子を含む上清を組織の可溶化物とすることができる。癌細胞は、リンパ管内を移動して、リンパ節実質内へ転移する。そこで、組織としてリンパ節を用いる場合には、生理的緩衝液(PBS、TBS、液体培地等)でリンパ節を洗浄し、リンパ節内の実質細胞をリンパ節の支持構造(間質)から遊離させ、遊離した実質細胞を可溶化緩衝液等で可溶化すると、単にリンパ節割面の細胞を押印する場合よりも、可溶化物中の癌細胞由来成分の含有量が高まるので、癌腫のリンパ節転移の検出感度が上昇することが期待される。
【0028】
癌腫に発現する抗原としては、ドットブロット解析により検出可能なものであれば特に限定されないが、転移した微小な癌腫をも検出する観点から、該抗原としては、好ましくは正常組織と比較して癌腫において発現が高い抗原が、より好ましくは正常組織には発現せずに、癌腫において発現する抗原が用いられる。「正常組織」とは、評価対象である組織についての正常組織を意味し、例えば、評価対象としてリンパ節を使用する場合には、正常リンパ節を意味する。正常組織と比較して癌腫において発現が高い抗原としては、上皮細胞マーカー抗原、腫瘍抗原、細胞分化マーカー抗原等を挙げることが出来る。特に、リンパ節においては上皮細胞がほとんど存在しておらず、上皮細胞マーカー抗原は殆ど発現していないため、癌腫のリンパ節転移の検出には、上皮細胞マーカー抗原が好ましく用いられる。上皮細胞マーカー抗原とは、上皮細胞以外の系列の細胞(例えば血球細胞)と比較して、上皮細胞において発現が上昇している抗原を意味する。本発明に有用な上皮細胞マーカー抗原としては、サイトケラチン、EpCAM、EMA等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。腫瘍抗原とは、腫瘍細胞において、同一組織由来の非腫瘍細胞と比較して発現が上昇している抗原を意味する。本発明に有用な腫瘍抗原としては、HER2(乳癌)、CEA(大腸癌、胃癌、肺癌、乳癌)、CA15−3(乳癌)、BCA225(乳癌)、NCC−ST−439(胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌)、PSA(前立腺癌)、CA125(卵巣癌)等を挙げることができるが、これらに限定されない。細胞分化マーカー抗原とは、特定の分化段階にある細胞において、特異的に発現している抗原を意味する。特に、本発明においては、特定の上皮細胞において、他の種類の上皮細胞と比較して発現が上昇している細胞分化マーカー抗原が、好適に用いられる。本発明に有用な細胞分化マーカーとしては、Involucrin(扁平上皮)、Calretinin(中皮)、Muc5ac(腺上皮)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書において、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)等の天然型抗体;遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体;ヒト抗体産生トランスジェニック動物等を用いて製造され得るヒト抗体、これらの抗体の結合性断片が含まれるがこれらに限定されない。また、PEG等により修飾された抗体も、本発明において用いられる抗体に包含される。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体又はその結合性断片である。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくは、IgG又はIgMであり、より好ましくはIgGである。抗体の結合性断片としては、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv(variable fragment of antibody)、sFv、dsFv(disulphide stabilized Fv)、sdAb(single domain antibody)、Fab発現ライブラリーによって作製された抗体断片等が挙げられる(Exp. Opin. Ther. Patents, Vol.6, No.5, p.441-456, 1996)。
【0030】
「抗原Xに特異的な抗体」とは、抗原認識部位における抗原Xに対する親和性が、抗原X以外の抗原に対する親和性よりも高い抗体を意味する。特定の抗原に特異的な抗体は、自体公知の方法により製造することができる。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法[Nature、256巻、495頁(1975年)]を用いて製造することができる。
【0031】
例えば、特定の抗原を市販のアジュバントと共にマウスに2〜4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与の約3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例えば、NS−1、P3X63Ag8など)を細胞融合して特定の抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。細胞融合はPEG(ポリエチレングリコール)法[J. Immunol. Methods, 81(2): 223-228 (1985)]でも電圧パルス法[Hybridoma, 7(6): 627-633 (1988)]であってもよい。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、又はマウスもしくはラット、好ましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清及び動物の腹水から取得することができる。
【0032】
ドットブロット解析は、周知の免疫学的分析方法であり、Hawkes R.,The dot immunobinding assay., Methods Enzymol. 1986;121:484-91.やHawkes R, Niday E, Gordon J., A dot-immunobinding assay for monoclonal and other antibodies., Anal Biochem. 1982 Jan 1;119(1):142-7.等に記載されている方法に従い実施することが出来る。例えば、組織の可溶化物をドットブロットを可能にする膜へスポットし、当該膜上へ固定する。膜としては、タンパク質を吸着可能な膜であれば特に限定されないが、ニトロセルロース膜やPVDF膜、共有結合によりタンパク質を吸着する膜等が通常使用される。共有結合によりタンパク質を吸着する膜としては、アルデヒド基で表面修飾したポリエーテルスルホン(PES)製の膜等が挙げられる。これらの膜は市販されており、例えばUltraBindTM Affinity Membrane(Pall corporation)等が好適に使用される。セミドライ方式の場合には、可溶化物をブロットする側の膜の面に対して裏側の面に吸収材を接触させ、可溶化物中の水分を吸収することにより、膜へのタンパク質の吸着を促進することが出来る。該吸収材としては、ろ紙、吸水性のポリマー等を用いることが出来る。次に、非特異的なタンパク質の吸着を抑制するために、リンパ節の可溶化物を固定化した膜を、BSAや脱脂粉乳のような不活性なタンパク質でブロックする。その後、膜を癌腫に発現する抗原に特異的な抗体と接触させる。膜上の抗原と結合した抗体は、この抗体を認識する標識した2次抗体で検出することができる。あるいは、アビジン−ビオチン系による間接標識により抗体そのものを標識する方法も公知である。標識としては、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等の酵素や、125I等の放射線同位体等を用いることが出来る。
【0033】
膜上にブロットする可溶化物の量は、抗体による抗原の検出が可能であれば、特に限定されないが、1つのスポットあたり、通常1ng〜100μg程度である。
【0034】
ドットブロット解析を行うに際しては、ポジティブコントロールとして、検出対象の抗原を含む試料(例えば、検出対象の抗原を発現する癌細胞の転移を含むリンパ節等の組織の可溶化物)について、同時に解析することが好ましい。同様に、ネガティブコントロールとして、正常組織(例えば、正常リンパ節)の可溶化物について、同時に解析することが好ましい。
【0035】
そして、ドットブロット解析の結果、評価対象である組織の可溶化物中の癌腫に発現する抗原の量と、癌腫細胞の該組織への転移が存在する可能性との間の相関付けが行われる。評価対象である癌腫の患者から生体外へ分離された組織の可溶化物中に、正常組織の可溶化物中に含まれる検出対象の抗原の量を上回る量の該抗原が検出された場合には、癌腫細胞の該組織への転移が存在する可能性があると判定することが出来る。
【0036】
この判定結果は、治療方針や組織郭清領域を決定する際の指標の1つとして用いることができる。例えば、乳癌、胃癌又は大腸癌の患者から癌腫の原発巣の近傍のリンパ節組織をバイオプシーにより採取し、本発明の方法によって癌腫のリンパ節転移の可能性を判定することは、リンパ節を摘出すべきか、或いはどの程度郭清すべきか等を決定する一助となる。
【0037】
2.癌腫の悪性度の評価方法
また、本発明は、癌腫の患者から生体外へ分離された癌腫組織の可溶化物中の、癌腫の悪性度のマーカー抗原の含有量を、該マーカー抗原に特異的な抗体を用いたドットブロット解析により評価すること、及び該マーカー抗原の含有量と、癌腫の悪性度とを相関付けることを含む、癌腫の悪性度の評価方法を提供するものである。
【0038】
尚、本項における用語の定義は、特にことわりのない限り、「1.癌腫の転移の検出方法」の項における定義に従うものとする。
【0039】
本発明を適用可能な癌腫の種類としては、特に限定されないが、例えば、乳癌、肺癌、膀胱癌、大腸癌、喉頭癌、食道癌、胃癌、腎癌、前立腺癌、卵巣癌等を挙げることが出来る。本発明の方法を用いると、僅かな量の癌腫組織の生検試料で、癌腫の悪性度を評価することが可能であるため、組織を採取する際の侵襲の大きさを最小限に抑えることが出来る。従って、本発明の方法は、特に、乳癌の悪性度の評価に有利である。
【0040】
患者の動物種は通常哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0041】
本発明の方法は、極めて迅速かつ簡便に行うことが可能であるため、本発明の方法において、癌腫組織として、癌腫の摘出手術の過程で該患者から分離されたものを用い、該摘出手術が行われている間に、ドットブロット解析による評価及びマーカー抗原の含有量と癌腫の悪性度との相関付けを行うことにより、癌腫の悪性度を確認しながら癌の摘出手術を進行することが可能となる。
【0042】
癌腫組織の可溶化物は、「1.癌腫の転移の検出方法」の項に記載された方法により調製することが可能である。
【0043】
癌腫の悪性度のマーカー抗原とは、悪性度の低い(即ち転移性が低い)癌腫と比較して、悪性度が高い(即ち、転移性が高い)癌腫において発現が亢進している抗原を意味する。本発明に有用な癌腫の悪性度のマーカー抗原としては、HER2(乳癌)、CD56(肺小細胞癌)等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
【0044】
ドットブロット解析は、「1.癌腫の転移の検出方法」の項に記載された方法により実施することができる。
【0045】
ドットブロット解析を行うに際しては、ポジティブコントロールとして、検出対象のマーカー抗原を含む試料(例えば、悪性度の高い癌細胞を含む癌腫組織の可溶化物)について、同時に解析することが好ましい。同様に、ネガティブコントロールとして、正常組織又は悪性度の低い癌細胞を含む癌腫組織の可溶化物について、同時に解析することが好ましい。
【0046】
そして、ドットブロット解析の結果、評価対象である癌腫組織の可溶化物中の癌腫の悪性度のマーカー抗原の含有量と、癌腫の悪性度との間の相関付けが行われる。マーカー抗原の含有量と、癌腫の悪性度との間には正の相関があるので、マーカー抗原の含有量が高いほど、癌腫の悪性度が高いという判定がなされる。例えば、評価対象である癌腫の患者から生体外へ分離された癌腫組織の可溶化物中に、正常組織又は悪性度の低い癌細胞を含む癌腫組織の可溶化物中に含まれる検出対象のマーカー抗原の量を上回る量の該抗原が検出された場合には、該癌腫の悪性度が比較的高い可能性があると判定することが出来る。
【0047】
この判定結果は、治療方針や組織郭清領域を決定する際の指標の1つとして用いることができる。例えば、乳癌、胃癌又は大腸癌の患者から癌腫の原発巣の一部をバイオプシーにより採取し、本発明の方法によって癌腫の悪性度を評価することは、リンパ節を摘出すべきか、或いはどの程度郭清すべきか等を決定する一助となる。より具体的には、例えば乳癌の組織について、本発明の方法を用いてHer2の発現を評価する。そして、Her2が陽性ならば、悪性度が比較的高い可能性があるため、リンパ節郭清をするのが望ましいという診断を下すことが出来る。また、肺癌の組織について、本発明の方法を用いてCD56の発現を評価する。そしてCD56が陽性ならば、癌腫は悪性度が高い小細胞癌である可能性が高く、患者の体力を温存するため、リンパ節郭清を含む侵襲的な手術を避けて、化学療法を適用するのが望ましいという診断を下すことが出来る。一方、CD56が陰性ならば、癌腫は悪性度が低い非小細胞癌である可能性が高く、外科的手術により腫瘍組織を摘出するのが望ましいという診断を下すことが出来る。
【0048】
3.癌腫の転移の検出用キット
また、本発明は上述の癌腫の転移の検出方法の実施に有用な癌腫の転移の検出用キットを提供する。本発明のキットには、癌腫に発現する抗原に特異的な抗体、及びドットブロットを可能にする膜が含まれる。
【0049】
尚、本項における用語の定義は、特にことわりのない限り、「1.癌腫の転移の検出方法」の項における定義に従うものとする。
【0050】
ドットブロットを可能にする膜としては、タンパク質を吸着可能な膜であれば特に限定されないが、ニトロセルロース膜やPVDF膜等が好ましい。
【0051】
本発明のキットは、正常組織(例えば、正常リンパ節)の可溶化物を、ネガティブコントロールとして更に含むことが好ましい。
【0052】
本発明のキットは、ポジティブコントロールとして、検出対象の抗原を含む試料(例えば、検出対象の抗原を発現する癌細胞の転移を含むリンパ節等の組織の可溶化物)を更に含むことが出来る。
【0053】
本発明のキットは、上記本発明の方法の実施に有用な、以下の構成成分から選択される少なくとも1以上を更に含むことが出来る:
・ 組織を摘出するためのバイオプシー用の針;
・ 組織を可溶化するための可溶化緩衝液;
・ 吸収材(ろ紙、吸水性ポリマー等)
・ ドットブロット用の膜を洗浄するための緩衝液、又はその濃縮液;
・ ブロッキング用の不活性なタンパク質(BSA、脱脂粉乳等);
・ 標識した2次抗体;
・ 発色用の色素;及び
・ 本キットが上記本発明の方法の実施に有用であることが記載された記載物。
【0054】
本発明のキットに含まれる各構成成分は、それぞれ個別の容器に収容された上で、全ての構成成分が1つのパッケージに収容されていることが好ましい。また、可能であれば構成成分のうちのいくつかを混合してもよい。
【0055】
4.癌腫の悪性度の評価用キット
また、本発明は上述の癌腫の悪性度の評価方法の実施に有用な癌腫の悪性度の評価用キットを提供する。本発明のキットには、癌腫の悪性度のマーカー抗原に特異的な抗体、及びドットブロットを可能にする膜が含まれる。
【0056】
尚、本項における用語の定義は、特にことわりのない限り、「1.癌腫の転移の検出方法」、「2.癌腫の悪性度の評価方法」及び「3.癌腫の転移の検出用キット」の項における定義に従うものとする。
【0057】
ドットブロットを可能にする膜としては、タンパク質を吸着可能な膜であれば特に限定されないが、ニトロセルロース膜やPVDF膜等が好ましい。また、共有結合によりタンパク質を吸着する膜なども、検出感度を上昇させる観点から好ましい。共有結合によりタンパク質を吸着する膜としては、アルデヒド基で表面修飾したポリエーテルスルホン(PES)製の膜等が挙げられる。これらの膜は市販されており、例えばUltraBindTM Affinity Membrane(Pall corporation)等が好適に使用される。
【0058】
本発明のキットは、正常組織、又は悪性度の低い癌細胞を含む癌腫組織の可溶化物を、ネガティブコントロールとして更に含むことが好ましい。
【0059】
本発明のキットは、ポジティブコントロールとして、検出対象のマーカー抗原を含む試料(例えば、検出対象のマーカー抗原を発現する癌細胞を含む癌腫組織の可溶化物)を更に含むことが出来る。
【0060】
本発明のキットは、上記本発明の方法の実施に有用な、以下の構成成分から選択される少なくとも1以上を更に含むことが出来る:
・ 癌腫組織を摘出するためのバイオプシー用の針;
・ 癌腫組織を可溶化するための可溶化緩衝液;
・ 吸収材(ろ紙、吸水性ポリマー等)
・ ドットブロット用の膜を洗浄するための緩衝液、又はその濃縮液;
・ ブロッキング用の不活性なタンパク質(BSA、脱脂粉乳等);
・ 標識した2次抗体;
・ 発色用の色素;及び
・ 本キットが上記本発明の方法の実施に有用であることが記載された記載物。
【0061】
本発明のキットに含まれる各構成成分は、それぞれ個別の容器に収容された上で、全ての構成成分が1つのパッケージに収容されていることが好ましい。また、可能であれば構成成分のうちのいくつかを混合してもよい。
【0062】
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
【0063】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0064】
(試薬)
・細胞溶解用バッファー(50ml): 50 mM Tris-Cl [pH 7.6], 150 mM NaCl, 0.1% Nonidet P-40, 及びComplete protease inhibitor cocktail (Roche Diagnostics, Indianapolis, USA)を1タブレット
・PBS: 0.01M phosphate buffered saline
・PBS−T: PBS + 0.05% Tween 20 (polyoxyethylene (20) sorbitan monolaurate)
・濾紙: Absorbent Paper (ATTO, Tokyo, JAPAN)
・ニトロセルロース膜: Hybond-ECL (Amersham Biosciences, Buckinghamshire, UK)
・1次抗体: Monoclonal Mouse Anti-Human Cytokeratin, Clones AE1/AE3 (DAKO, #N1590, Glostrup, Denmark)
・2次抗体: ImmPRESS REAGENT Anti-Mouse Ig, (Vector Laboratories, #MP-7402, CA, USA)
・反応液: Vector VIP Substrate Kit for Peroxidase (Vector Laboratories, #SK-4600, CA, USA)
【0065】
(測定用サンプルの調製)
患者よりリンパ節の一部を摘出し、該リンパ節に割を入れた。50mlコニカルチューブにPBS 2mlを入れて、割を入れたリンパ節を軽く揺すりながら15秒間洗浄した。得られた細胞懸濁液をマイクロチューブ用遠心機で1分間遠心分離し、上清を捨て、細胞塊を回収した。細胞塊へ、細胞溶解バッファー 20μlを加え、細胞溶解液を調製した。得られた細胞溶解液 10μlとPBS 10μlを混和し、マイクロチューブ用遠心機で1分間遠心分離し、上清を測定用サンプルとした。
【0066】
(セミドライ系の準備)
PBS−T 50mlをプラスチックトレーに準備した。濾紙2枚をPBS−Tに浸したのちに、パラフィルム上に設置し、検出用シートとした。
【0067】
(ブロッティング及び検出)
ニトロセルロース膜にボールペンで、サンプル、ネガティブコントロール用にそれぞれ1cmの円を書いた。測定用サンプルを円の中心に3.5μl滴下して、ドットを作成した。ニトロセルロース膜を3分間自然乾燥させた後、PBS−Tで30秒洗浄した。ニトロセルロース膜のPBS−Tを切り、検出用シート上にセットした。約10秒でニトロセルロース膜上のPBS−Tは濾紙に吸収された。ドット上に1次抗体を7μl滴下した。約10秒で、ニトロセルロース膜上の抗体は濾紙に吸収された。その後、3分間室温にてニトロセルロース膜を静置し、抗原抗体反応を行った。ニトロセルロース膜をPBS−Tで30秒洗浄し、ニトロセルロース膜上のPBS−Tを切り、検出用シート上にセットすることにより、ニトロセルロース膜上のPBS−Tを濾紙に吸収させた。次に、ドット上に2次抗体を7μl滴下した。約10秒で、ニトロセルロース膜上の抗体は濾紙に吸収された。その後、3分間室温にてニトロセルロース膜を静置し、2次抗体を反応させた。ニトロセルロース膜をPBS−Tで30秒洗浄し、ニトロセルロース膜上のPBS−Tを可及的に切り、反応液に浸すことにより、呈色反応(赤色)を約1分間行った。ニトロセルロース膜をPBS−Tで軽くリンスし、乾燥後に反応を確認した。
【0068】
(結果)
基礎実験として、リンパ節に代えて乳癌組織及び乳癌培養細胞(MCF−7)を用い、同一の試験を行った。
乳癌組織を用いた場合には、細胞溶解液のタンパク質濃度を0.001mg/mlまで希釈しても、赤色の呈色反応が認められ、乳癌細胞の存在が検出された(図1)
乳癌培養細胞(MCF−7)を用いた場合には、1つのドットあたり20個の細胞数まで少なくしても、赤色の呈色反応が認められ、乳癌細胞の存在が検出された(図2)
血液の混入による影響は見られず、仮に全血が混入しても呈色のパターンで識別可能であった。
【0069】
次に2名の乳癌患者から摘出されたセンチネルリンパ節を用いて試験を行った。
患者1から摘出されたセンチネルリンパ節N1及びN2では赤色の呈色反応が確認され、「リンパ節転移あり」と判定された。実際に患者1のセンチネルリンパ節N1及びN2について病理検査を行ったところ、転移が確認された。
患者2から摘出されたセンチネルリンパ節N1では赤色の呈色反応が起こらず、「リンパ節転移なし」と判定された。実際に患者2のセンチネルリンパ節N1について病理検査を行ったところ、転移陰性であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、迅速且つ簡便に癌の転移を検出することが可能となる。
本発明によれば、迅速且つ簡便に癌の悪性度を評価することが可能となる。
本発明の方法は簡便であり、特殊な機器を要しないため、手術室やベッドサイドで実施することができる。そのため、手術中に、本発明の方法を用いて転移の有無や癌の悪性度を評価し、その結果に基づいて、リンパ節を摘出すべきか、或いはどの程度郭清すべきか等の手術の方針を迅速に決定することが可能となる。
微小な組織片で癌の悪性度やリンパ節転移の有無を評価できるので、従来の検査(細胞診、病理検査)を妨げることがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌腫の患者から生体外へ分離された組織の可溶化物中に、該癌腫に発現する抗原が含まれるか否かを、該抗原に特異的な抗体を用いたドットブロット解析により評価すること、及び
該組織の可溶化物中に、正常組織の可溶化物中に含まれる該抗原の量を上回る量の該抗原が検出された場合に、癌腫細胞の該組織への転移が存在する可能性があると判定することを含む、
癌腫の転移の検出方法。
【請求項2】
癌腫が乳癌である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗原が、上皮細胞に特異的に発現する抗原である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
組織がリンパ節である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
リンパ節がセンチネルリンパ節である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
組織が、癌腫の摘出手術の過程で該患者から分離されたものであり、該摘出手術が行われている間に、ドットブロット解析による評価及び癌腫細胞の組織への転移が存在する可能性の判定が行われる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
組織の可溶化物が、リンパ節組織を生理的緩衝液で洗浄し、リンパ節の支持構造から遊離した実質細胞を可溶化することにより調製されたものである、請求項4記載の方法。
【請求項8】
癌腫の患者から生体外へ分離された癌腫組織の可溶化物中の、癌腫の悪性度のマーカー抗原の含有量を、該マーカー抗原に特異的な抗体を用いたドットブロット解析により評価すること、及び
該マーカー抗原の含有量と、癌腫の悪性度とを相関付けることを含む、
癌腫の悪性度の評価方法。
【請求項9】
癌腫組織が、癌腫の摘出手術の過程で該患者から分離されたものであり、該摘出手術が行われている間に、ドットブロット解析による評価及び該マーカー抗原の含有量と、癌腫の悪性度との相関付けが行われる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
癌腫に発現する抗原に特異的な抗体、及びドットブロット解析を可能にする膜を含む、癌腫の検出用キット。
【請求項11】
正常組織の可溶化物を、ネガティブコントロールとして更に含む、請求項10記載のキット。
【請求項12】
癌腫の悪性度のマーカー抗原に特異的な抗体、及びドットブロット解析を可能にする膜を含む、癌腫の悪性度の評価用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−169873(P2011−169873A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36515(P2010−36515)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)