説明

発光材料

本発明は、光を生成するための発光粒子を有する発光材料であって、前記発光粒子が、前記発光粒子内で生成される光を効率的に取り出すための構造粒子面を持つ発光材料に関する。更に、本発明は、本発明による発光材料と、前記発光材料を励起するための装置とを有する光源に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の効果的な発光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発光材料は、例えば、室内照明用の装置、又はディスプレイにおいて、光を放射するために用いられる。発光材料における光放射は、励起源(excitation source)を用いて励起される。励起源は、例えば、短い波長の一次放射線、又は電子ビームを放射することが出来る。励起源によって放射されたエネルギ(一次エネルギ)は、少なくとも一部は、発光材料によって可視線に変換される。発光材料の重要な品質パラメータは、一次エネルギが発光材料によって可視光に変換される効率、発光材料の励起の化学的又は熱的な劣化に関しての発光材料の安定性、及び放射特性である。一般的な発光材料(蛍光体)は、直径が2μmから10μmまでの範囲内である密な粒度分布、及びあまり構造化(structure)されていない滑らかな表面を備える球形、六方晶系(hexagonal)又は正方晶系(tetragonal)の形態を持つ結晶構造を有する非有機粒子の材料である。個々の非有機粒子(蛍光体粒子)には、或る程度まで、寿命特性を改善するための均一な表面コーティングが更に設けられる。
【0003】
米国特許出願公開番号第2004/0166318号公報は、例えば、例えばY2O3のような希土類酸化物の一様で滑らかな完全な表面コーティングを持つ、銅、アルミニウム又は金をドープしたZnSといった蛍光体を開示している。表面コーティングは、1nmより厚い、好ましくは10nmと1000nmとの間の厚さを持っていてもよく、温度及び乾燥ステップが後に続くゲル化プロセスによって希土類水酸化物溶液として蛍光体粒子上に塗布される。前記完全な表面コーティングは、蛍光体材料のための化学的保護被覆であり、従って、例えば酸化又は加水分解による蛍光体粒子の発光特性の化学的な劣化を防止する。更に、この完全な被覆は、再結合中心の形成を防止し、これは、蛍光体粒子の励起効率(内部収量(internal yield))にプラスの効果をもたらす。
【0004】
しかしながら、発光材料(蛍光体又は発光材料)の効率は、蛍光体粒子の励起効率だけではなく、蛍光体材料において生成され、蛍光体粒子の外へ結合される光の取り出し効率(outcoupling efficiency)によっても決定される。一般的には屈折率が1である空気又は真空である周囲の材料に対する蛍光体材料の屈折率の差のため、生成された光の一部は、それが、全反射が起こる角度より小さい角度で蛍光体粒子の表面に入射し、取り出されるまで、屈折の法則により、蛍光体粒子の表面において後方反射(back-reflect)され、再び、蛍光体粒子を横切る。従って、生成された光の一部の、蛍光体粒子内の光路は、非常に長くなる。励起電子状態から基本状態までに、蛍光体粒子内で、無放射伝達(radiationless transfer)が後に続く光の再吸収が起こる確率は、蛍光体粒子内でカバーされる光路の長さと共に増大する。光のこのようにして再吸収される部分は、蛍光体粒子の取り出し効率を低下させ、従って、発光材料の総合効率を低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故、本発明の目的は、高い取り出し効率を持つ発光材料を供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、光を生成するための発光粒子を有する発光材料であって、前記発光粒子が、前記発光粒子内で生成される光の改善された取り出しのための構造粒子面(structured particle surface)を持つ発光材料によって達成される。前記粒子において生成される光は、以下では、二次放射線とも呼ばれる。構造面により、おそらく、前記粒子面において後方反射された光線は、前記発光粒子を一度横切った後、再び、異なる角度で前記粒子面に当たる。前記粒子面の局所的に変化する空間的配置(locally varying spatial alignment)は、前記光線が前記粒子面に一回又は数回繰り返し当たった後の、前記光線の取り出しを高い確率でもたらす。この方法では、滑らかな表面を持つ同じ材料の粒子と比べて、前記光の取り出しが改善され、より多くの光が前記粒子の外へ結合される。
【0007】
前記発光材料の実施例においては、前記発光粒子は、光を生成するための第1発光材料と、前記粒子面を構造化するための第2材料とを有する。前記第1材料と比べて異なる材料特性、例えば形態的特性を持つ第2材料は、純粋な前記第1材料の粒子と比べて前記粒子面を乱し、従って、構造粒子面をもたらす。
【0008】
他の実施例においては、前記第2材料は、透過性又は発光性の材料のグループのうちの少なくとも1つの材料を有する。透過性の第2材料は、前記粒子において生成された放射線の再吸収を防止するのに対して、発光性の第2材料は、前記第1材料に加えて、一次エネルギの可視光への変換に寄与する。
【0009】
他の実施例においては、発光粒子の前記第1材料は、第1面を持ち、前記第2材料は、前記構造粒子面を生成するために前記第1面上に配設される。ここでは、前記第1材料の材料体積の外面が、前記第1面であると理解されたい。高い内部収量を持つ第1発光材料は、一般的に、一様な表面を備える結晶構造を持つことから、前記第1材料の表面(第1面)上に第2材料を付加することによって構造化された粒子面は、前記取り出し効率を改善することが出来る。
【0010】
好ましい実施例においては、前記第2材料は、前記発光粒子の前記第1面の30%以上を覆う。滑らかな表面を持つ発光材料と比べての取り出し効率の明らかな改善は、30%以上の被覆率で達成される。
【0011】
他の実施例においては、前記第1材料は、第1屈折率を持ち、前記第2材料は、前記第1屈折率以下である第2屈折率を持つ。光学的に密な第1材料から、光学的に薄い第2材料を介した、例えば屈折率n=1を持つ空気又は真空のような、光学的に更に薄い、粒子を囲む媒体への二段階光学遷移によって、全反射により後方反射される光の割合は、減らされ、従って、前記取り出し効率が、高められる。
【0012】
他の実施例においては、前記第2屈折率は、1.5と前記第1屈折率との間である。前記光の、前記第1材料と前記第2材料との間の境界面において全反射によって後方反射される部分は、前記第1屈折率と前記第2屈折率との間の差をあまり大きくしないことによって減らされる。
【0013】
他の実施例においては、前記第2材料は、SiO2、CaHPO4、MgAl2O4、MgO、YPO4、Al2O3、LaPO4、LuPO4、AlPO4のグループのうちの少なくとも1つの材料を有する。
【0014】
他の実施例においては、前記発光粒子内で生成される光の波長より短い波長を持つ前記第2材料が、前記第1発光材料より低い反射率を持つ。この方法においては、前記第2材料のために適切な材料を選ぶことによって、より多くの一次放射線が、前記発光粒子内へ結合され得る。
【0015】
他の実施例においては、前記構造粒子面は、少なくとも1つの構造物(structure)を有し、前記少なくとも1つの構造物は、前記構造物のまわりの局所環境(local environment)内の箇所(point)に対して10nmより大きい高低差を持つ箇所を少なくとも1箇所有する。ここで、局所環境は、前記粒子の平均的な表面領域上の突出した基本の構造物の面積の略々1乃至5倍の大きさの、前記構造物のまわりの面であると理解されたい。ここで、「構造物」という用語は、前記粒子の表面の領域であって、前記領域の形状によって前記領域の環境と区別され得る領域を全て含む。
【0016】
更に、本発明は、請求項1に規定されているような発光材料と、前記発光材料を励起するための装置とを有する光源に関する。ここで、励起は、一次エネルギを可視線に変換するための、前記発光材料への一次エネルギの伝達として示されている。
【0017】
下記の実施例を参照して、本発明のこれら及び他の態様を説明し、明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
一般的な発光材料(蛍光体)は、略々球形とみなされ得る、あまり構造化されていない滑らかな表面を備える球形、六方晶系又は正方晶系の形態を持つ結晶構造を有する非有機粒子(蛍光体粒子又は発光粒子)の材料である。図1は、各々の表面21を備え、製造依存変動する粒径を持つ個々の発光粒子2から成る発光材料層1の3次元構造を概略的に示している。発光材料1は、二次放射線4、一般的には可視光を放射するために、一次放射線3によって励起される。一次放射線3としては、例えば、二次放射線4の波長より短い波長の光、又は適切な放射エネルギを持つ電子ビームが用いられる。励起が起きた後、発光粒子2は、等方的に放射し、ここで、二次放射線4は、発光粒子2内での伝搬方向に依存して、或る角度で粒子の表面21に入射する。前記表面は、同時に、粒子2と、周囲の媒体(通常、空気又は真空)との間の境界面であり、前記二次放射線の入射は、屈折の法則に従って、発光粒子2からの光の取り出し、又は粒子材料内への後方反射をもたらす。二次放射線4が前記表面21において後方反射する場合には、材料に依存して、粒子材料による二次放射線4の再吸収、及び起こりうる無放射エネルギ遷移(possible radiationless energy transition)の可能性があり、これは、発光材料1の発光効率の低下をもたらす。
【0019】
EuをドープしたSrS発光材料の例においては、二次電子顕微鏡(SEM)による画像が、図1に示されている表面21の滑らかな形態及び略々球形の粒子形状を証明する。発光性のSrS:Eu粒子の一般的な直径は、略々1μm乃至10μmの大きさである。
【0020】
理想的な球形をしている発光粒子2が利用可能である場合には、全反射によって発光粒子2を出ることが出来ない光の割合は、フレネルの式で計算され得る。図2は、屈折率の関数としてフレネルの式に従って計算された理想的な球形の粒子2の取り出し効率を示している。屈折率が1.6である場合は、発光粒子2において生成される光の60%という取り出し効率がもたらされ、屈折率が2.4である場合は、前記光は、30%未満まで減少する。一般的な発光材料の屈折率は、1.6と2.4との間のばらつきがある。例えば、次の発光材料は、次の屈折率nを持つ。即ち、BaSO4は、n=1.64を持ち、YPO4は、n=1.76を持ち、LaPO4は、n=1.79を持ち、Y2O3は、n=1.90を持ち、CaWO4は、n=1.92を持ち、CaSは、n=2.14を持ち、SrSは、n=2.11を持ち、又はZnSは、n=2.37を持つ。図2によれば、例えば硫黄で処理した発光材料のような2より大きい屈折率を持つ発光材料の場合は、50%よりずっと低い取り出し効率が得られる。小さい屈折率を持つ発光材料でも、取り出し効率は70%よりずっと低い。
【0021】
実際には、図2において理想的な球形の粒子のために計算された効率より高い効率が見出されるというのは事実である。なぜなら、蛍光体粒子の形態は、通常、完全な球形の形態からは逸脱しているからである。それでもなお、粒子における理論上の取り出し効率は100%よりずっと低い。光の大部分については、取り出しが行われる前に蛍光体粒子を何度も横切る必要があり、これは、蛍光体粒子内で再吸収される確率を増大させ、従って、取り出し効率をより一層低下させる。
【0022】
本発明によれば、発光材料は、図3に概略的に示されているような構造粒子面を持つ発光粒子20を有する。構造粒子面は、構造物5を有し、構造物5は、各々、構造物のまわりの局所環境内の箇所に対して10nmより大きい高低差を持つ箇所を少なくとも1箇所有する。表面の構造物5は、規則的あってもよく、又は不規則であってもよい。図3は、本発明による発光粒子20を側方断面図で概略的に示しており、前記粒子は、発光粒子20内で生成された二次放射線4、一般的には可視光を、効率的に取り出すための構造物5を備える構造面を持つ。発光粒子20は、第1外面21を持つ、光を生成するための第1発光材料2と、例えば第2材料の、発光粒子20の第1面21を構造化するための構造物5とを有する。構造物5を生成するため、例えば、第2材料5が、発光粒子20の第1面21上に外部コーティングとして塗布される。この図においては、第1面21の一部しか第2材料で覆われていない。他の実施例においては、第1面21は、第2材料の構造物で完全に覆われ得る。本発明によれば、第2材料は、粒子の構造面21の生成に役立つ。塗布される第2材料の形状は、図3において点付きのピラミッド及びドーム状の構造物5で概略的に示されているように、第1面21上で局所的に変化し得る。第2材料は、透過性且つ/又は自発光性(self-luminescent)のものであってもよい。
【0023】
取り出し効率を改善するためには、第2材料の屈折率(第2屈折率)は、発光性の第1材料2の屈折率と、発光粒子21を囲む媒体(一般的には空気又は真空)の屈折率との間であるべきである。光学的に密な第1材料2から、光学的に薄い第2材料5を介した、例えば屈折率n=1を持つ空気又は真空のような、光学的に更に薄い、粒子を囲む媒体への二段階光学遷移によって、全反射により後方反射される光の割合は、減らされ、従って、取り出し効率が、高められる。第1材料2の第1屈折率と、第2材料5の第2屈折率との間の差は、第1材料と第2材料との間の境界面における全反射を減らすために可能な限り小さくすべきである。好ましくは、第2材料の屈折率は、1.5と、第1材料の屈折率との間である。
【0024】
第2材料はまた、自発光性の材料であってもよい。この場合には、一次エネルギ3の二次放射線4への変換に関係する材料体積が増大する。第1材料と第2材料とは、同じ材料組成を持っていてもよい。
【0025】
一例として、次の実施例に関して、本発明による発光粒子20の構造化された第1面21の製造を説明する。
【0026】
a)構造粒子面を生成するための SiO2コーティング(屈折率n=1.54)を持つ発光性のYAG:Ce粒子(屈折率n=1.90):
超音波槽内で300mlのエタノール中で100gのYAG:Ce(3.3%)が分散され、過剰乳状部(milky excess)が別容器に移された。精製された蛍光体は、超音波槽内で700mlのエタノール中でKPG撹拌器を備える三つ口フラスコにおいて分散された。次いで、撹拌している間に、50mlの濃縮NH3と20mlのテトラエトキシシランとが加えられ、2時間撹拌された。15分後、それは、10秒間超音波でかたまりを崩された。次いで、コーティングされた蛍光体粒子が、溝付きフィルタ(fluted filter)において集められ、エタノールで洗浄された。その後、コーティングされた蛍光体粒子は、200℃で12時間乾燥された。測光データは、このような方法で構造化された表面を持つYAG:Ce蛍光体粒子は、未処理のYAG:Ce蛍光体粒子より15%高い取り出し効率を持つことを示した。
【0027】
b)構造粒子面を生成するためのSiO2コーティング(屈折率n=1.54)を持つ発光性のSrS:Eu粒子(屈折率n=2.11):
(例えば、空気排除下で、超音波を用いて、三つ口フラスコ、ガラス撹拌器において)100gのSrS:Euが、900mlのエタノール中で懸濁され、1mlのテトラメトキシシランと混合された。15分後、140mlの濃縮アンモニアが加えられた。次いで、圧力平衡添加滴下漏斗を介して20分間以内に、200mlのエタノール中の70mlのテトラメトキシシランが加えられ、ここで、SrS:Eu粒子がかたまりになるのを防止するためにバッチ(batch)が超音波にさらされた。その後、それは、更に、3時間撹拌され、ろ過され、エタノールで洗浄された。乾燥後、SiO2材料でコーティングされた蛍光体は、空気中で250℃で12時間熱処理された。その場合、略々10μmの大きさの直径を持つSrS:Eu粒子が、略々数十nm乃至100nmの大きさの直径を持つ構造物5を生成するために第2材料としてのSiO2でコーティングされた。SiO2材料で完全にコーティングされた発光性のSrS:Eu粒子は、コーティングされていないSrS:Eu粒子と比べて8.5%増大した取り出し効率を持った。実施例a)と比べて、取り出し効率の増加量は少なかった。なぜなら、SrS:Euは、無放射遷移が後に続く再吸収による内部損失が少ないことを特徴とするからである。
【0028】
本発明による発光材料が、発光材料によって示される、無放射遷移が後に続く内部再吸収がより多い、滑らかな表面を持つ同じ発光材料と比べて高い取り出し効率を持つことは一般的に成り立つ。この効果の尺度(measure)は、吸収長と呼ばれるものであり、これは、例えば、粒子の異なる欠陥箇所数、又はBaMgAl10O17:Eu(六方晶系のディスク状の粒子)若しくはLaOBr:Tb(正方晶系のディスク状の粒子)などのディスク又は針状の粒子で異なるアスペクト比により、発光材料で10倍以上異なり得る。
【0029】
c)構造粒子面を生成するためのLa2O3コーティング(屈折率n=1.79)を持つ発光性のBaSi2O5:Pb粒子(屈折率n=1.55):
250mgのLaCl3が50mlの蒸留水中にある溶液に、125mgのEDTAが加えられた。 次いで、 Ba(OH)2を加えることにより、pH値が7に設定された。9.5というpH値が得られるまで、50mlの蒸留水にBa(OH)2が加えられた。その後、このアルカリ溶液に10gのBaSi2O5:Pbが加えられた。BaSi2O5:Pb懸濁液にLa(EDTA)溶液が一滴ずつ加えられた。ここで、EDTAは、エチレンジアミン4酢酸を表わしている。La(EDTA)溶液を全部加えた後、pH値は、Ba(OH)2を加えることにより再び9.5に設定された。溶液は、2時間撹拌され、その後、コーティングされた蛍光体材料が、ろ過によって分離され、80℃で乾燥された。最後に、蛍光体材料は、結晶水の除去及び/又は二酸化炭素の分離のために、900℃で2時間か焼された。La(OH)3の析出(precipitation)の結果として、アニーリング後、BaSi2O5:Pb粒子の表面に小さいLa2O3領域が形成された。前記領域が、元の表面と一緒に、本発明による発光粒子の構造面を形成する。
【0030】
このような方法で製造された本発明による発光粒子は、未処理のBaSi2O5:Pb蛍光体粒子より8%高い取り出し効率を持つ。表面に敏感な電子線回析を用いた化学分析は、発光粒子の第1面の50%だけが、数十nmの厚さを持つLa2O3で覆われていることを証明した。本発明によれば、第1面の覆われる部分が大きくなればなるほど、取り出し効率はより一層改善するであろう。
【0031】
屈折率に基づくと、粒子面を構造化するのに更に適した透過性の第2材料は、例えば、CaHPO4(n=1.61)、MgAl2O4(n=1.72)、MgO(n=1.74)又はAl2O3(n=1.77)である。
【0032】
発光粒子内で生成される光の取り出しの改善のための構造粒子面は、同じ材料による図3に対応する発光粒子のコーティングによっても生成され得る。例えば、発光性のYPO4粒子の表面は、小さいYPO4粒子(屈折率n=1.76)又はLaPO4粒子(屈折率n=1.79)でコーティングされ得る。他の蛍光体材料にも同じことが当てはまる。
【0033】
元の蛍光体粒子の表面上で粒子を成長させるほかに、例えば、SiO2、La2O3又はMgOの析出によっても、可溶性の前駆物質の加水分解によっても、元の蛍光体粒子の表面上へのナノ粒子(ナノメートルレンジ内の直径を持つ粒子)、例えば、ナノ粒子状のAl2O3(Alon-C)又はSiO2の付着によっても、発光粒子の表面は構造化され得る。本発明は、一例として言及されているもの以外の透過性且つ/又は発光性の材料であって、不規則に構造化された表面を生成するために、成長又は付着によって、元の蛍光体粒子上に加えられる透過性且つ/又は発光性の材料も含む。
【0034】
他の実施例においては、発光粒子内で生成される光(二次放射線)の波長より短い波長を持つ第2材料が、第1発光材料より低い反射率を持つ。第2材料の適切な選択により、より多くの一次放射線が、発光粒子内へ結合され得る。従って、例えば、発光性のSrS:Eu粒子の完全なSiO2コーティングは、粒子の反射率を22%(未コーティング)から18%(コーティング済み)まで低下させる。反射率の低下に合わせて、より多くの一次放射線が、発光材料の励起のために発光粒子内へ結合され得る。これは、光源のより高い効率をもたらす。第1材料より低い反射率を持つ第2材料を用いる場合、考えられる反射率の低減は、第2材料による第1面の被覆率の関数である。
【0035】
更に、発光粒子20の第1面21は、付加的に第2材料を加えずに表面を処理することによっても構造化され得る。表面は、例えば、研削プロセス、化学エッチング、電気化学エッチング、又は適切な粒子衝撃(particle bombardment)によって、基本的に滑らかな表面から逸脱する構造物が表面に生成されるように変更を加えられることが出来る。例えば、ZnSの表面は、酸処理によって粗くされ得る。しかしながら、このタイプの表面変形は、欠陥状態(defect conditions)に起因する無放射遷移による内部収量の低下をもたらし得る。
【0036】
発光材料によって完全に囲まれている適切な第2材料の付加もまた、粒子の滑らかな表面が形成されないように、発光粒子の成長プロセスを乱し得る。この技術もまた、後の段階で発光材料の第1面上に第2材料を加える必要なしに、本発明による構造粒子面を持つ発光材料をもたらす。
【0037】
図及び明細書に関して説明した実施例は、本発明に従って発光材料の取り出し効率を改善するための例を示しているだけであって、特許請求の範囲をこれらの例に限定するものと解釈されるべきではない。当業者は、添付した特許請求の範囲の保護範囲から外れない別の実施例を考えることが出来るであろう。ただ単に、或る手段が異なる従属項において列挙されているという事実は、これらの手段の組み合わせが有利には用いられ得ないことを示してはいない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】最新技術による発光粒子の発光材料を示す。
【図2】理想的に球形の発光粒子の取り出し効率を、前記粒子の材料の屈折率の関数として示す。
【図3】本発明による、構造面を持つ発光粒子の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を生成するための発光粒子を有する発光材料であって、前記発光粒子が、前記発光粒子内で生成される光の改善された取り出しのための構造粒子面を持つ発光材料。
【請求項2】
前記発光粒子が、光を生成するための第1発光材料と、前記粒子面を構造化するための第2材料とを有することを特徴とする請求項1に記載の発光材料。
【請求項3】
前記第2材料が、透過性又は発光性の材料のグループのうちの少なくとも1つの材料を有することを特徴とする請求項2に記載の発光材料。
【請求項4】
発光粒子の前記第1材料が、第1面を持ち、前記第2材料が、前記構造粒子面を生成するために、前記第1面上に配設されることを特徴とする請求項2又は3に記載の発光材料。
【請求項5】
前記第2材料が、前記第1面の30%以上を覆うことを特徴とする請求項4に記載の発光材料。
【請求項6】
前記第1材料が、第1屈折率を持ち、前記第2材料が、前記第1屈折率以下である第2屈折率を持つことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の発光材料。
【請求項7】
前記第2屈折率が、1.5と前記第1屈折率との間であることを特徴とする請求項6に記載の発光材料。
【請求項8】
前記第2材料が、SiO2、CaHPO4、MgAl2O4、MgO、YPO4、Al2O3、LaPO4、LuPO4、AlPO4のグループのうちの少なくとも1つの材料を有することを特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項に記載の発光材料。
【請求項9】
前記発光粒子内で生成される光の波長より短い波長を持つ前記第2材料が、前記第1発光材料より低い反射率を持つことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか一項に記載の発光材料。
【請求項10】
前記構造粒子面が、少なくとも1つの構造物を有し、前記少なくとも1つの構造物が、前記構造物のまわりの局所環境内の箇所に対して10nmより大きい高低差を持つ箇所を少なくとも1箇所有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の発光材料。
【請求項11】
請求項1に記載の発光材料と、前記発光材料を励起するための装置とを有する光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−506157(P2009−506157A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527547(P2008−527547)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052796
【国際公開番号】WO2007/023410
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】