説明

発泡ガラスの製造装置および製造方法

【課題】混合物をベルトコンベア上に一定厚さの層状に敷き詰めた状態で移送しながら溶融、発泡、焼成、急冷することにより発泡ガラスを製造するに際し、均一な空隙を有する発泡ガラスを製造すること。
【解決手段】ガラス粉末に発泡剤を混合して得られた混合物GPMを加熱して溶融、発泡、焼成する焼成装置と、混合物GPMをメッシュベルト21b上に載せた状態で搬送して焼成装置内を通過させるベルトコンベア装置と、焼成装置の前段に、メッシュベルト21b上に載せられた混合物GPMを所定厚さに敷き均すとともに、混合物GPMにメッシュベルト21bの進行方向に沿って複数列の櫛目を入れるための歯型敷き均し板29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃板ガラスや廃ガラスびんなどの各種ガラス廃材を原料とする発泡ガラスの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部およびその表面に多数の空隙を有する多孔質構造の発泡ガラスは、従来、土木資材あるいは建築用骨材などとして利用されている。このような発泡ガラスを、廃ガラスびんを主原料としたガラスカレットから製造する技術として、例えば特許文献1に記載の発泡ガラス製造方法が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の発泡ガラス製造方法は、ガラスカレットを微粉砕し、発泡剤として、炭酸カルシウム、炭化珪素、ホウ砂などを0.1〜5.0質量%添加し、これらの混合微粉末を、ベルトコンベアを内蔵するローラハースキルン内のベルト上に5〜50mm厚に連続的に敷き詰め、当該ローラハースキルン内にて700〜1000℃に加熱して溶融、発泡、焼成せしめ、キルン内滞留時間を5〜60分として生成された板状発泡ガラスを、常温あるいは冷却された空気に曝しめ、または水掛けすることによって急冷し、このときに生じた歪みにより自然崩壊せしめることにより不定形塊状の発泡ガラスを得るものである。
【0004】
なお、発泡ガラスを得るために使用する発泡剤としては、上記の他、例えば特許文献2,3に記載のように、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸バリウム、微粉カーボン、石灰石、ドロマイト、タルクなどが挙げられる。
【0005】
また、本出願人は、特許文献4に記載のように、粒径5μm〜100μmのガラス粉粒体に炭酸カルシウム、ドロマイト、炭化珪素、ホウ砂の少なくとも一つを混合して得られた混合物を、ベルトコンベアの始端部上に一定厚さの層状に敷き詰め、ベルトコンベアによって焼成炉内を移送することにより、600℃〜1000℃に加熱してガラス成分を溶融、発泡、焼成し、得られた400℃〜800℃の焼成物に常温以下の冷却液体を霧状にして噴射または常温以下の冷却気体を噴射する発泡ガラスの製造方法を開発している。この製造方法によれば、粒径5.0〜30.0mm程度の発泡ガラスを効率的に製造することが可能である。
【0006】
【特許文献1】特開平10−203836号公報
【特許文献2】特開2004−34596号公報(段落0006)
【特許文献3】特許2000−317316号公報(段落0012)
【特許文献4】特開2004−67400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献4に記載のように混合物をベルトコンベア上に一定厚さの層状に敷き詰めた状態で移送しながら溶融、発泡、焼成させると、焼成時に混合物の内側まで熱が満遍なく伝わらず、むらを生じて均一に発泡しなくなり、内部に形成される空隙が不均一になってしまうという問題が発生する。
【0008】
そこで、本発明においては、混合物をベルトコンベア上に一定厚さの層状に敷き詰めた状態で移送しながら溶融、発泡、焼成、急冷することにより発泡ガラスを製造するに際し、均一な空隙を有する発泡ガラスを製造することが可能な発泡ガラスの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発泡ガラスの製造装置は、ガラス粉末に発泡剤を混合して得られた混合物を加熱して溶融、発泡、焼成する焼成装置と、混合物をベルト上に載せた状態で搬送して焼成装置内を通過させるベルトコンベア装置と、焼成装置の前段に、ベルト上に載せられた混合物を所定厚さに敷き均すとともに、混合物にベルトの進行方向に沿って複数列の櫛目を入れるための歯型敷き均し板とを備えるものである。
【0010】
本発明の発泡ガラスの製造装置によれば、焼成時には混合物の上面からだけでなく、歯型敷き均し板によって混合物に入れられた櫛目に沿って、混合物の内部まで焼成時の熱が拡がるようになる。これにより、混合物の内部に満遍なく熱が伝わるようになり、均一な空隙を有する発泡ガラスを形成することが可能になる。
【0011】
また、本発明の発泡ガラスの製造方法は、ガラス粉末に発泡剤を混合して得られた混合物を、ベルトコンベア装置のベルト上に載せて所定厚さに敷き均すとともに、混合物にベルトの進行方向に沿って複数列の櫛目を入れる工程と、混合物をベルト上に敷き均した状態で搬送しながら加熱して溶融、発泡、焼成する焼成工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の発泡ガラスの製造方法によれば、焼成時には混合物の上面からだけでなく、混合物に入れられた櫛目に沿って、混合物の内部まで焼成時の熱が拡がるようになる。これにより、混合物の内部に満遍なく熱が伝わるようになり、均一な空隙を有する発泡ガラスを形成することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
ガラス粉末に発泡剤を混合して得られた混合物を、ベルトコンベア装置のベルト上に載せて所定厚さに敷き均すとともに、混合物にベルトの進行方向に沿って複数列の櫛目を入れ、混合物をベルト上に敷き均した状態で搬送しながら加熱して溶融、発泡、焼成する構成により、焼成時には混合物の内部まで熱が拡がって均一な空隙を有する発泡ガラスを形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の実施の形態における発泡ガラス製造装置の概略構成を示す図、図2は図1の発泡ガラス製造装置における製造工程を示す図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施の形態における発泡ガラス製造装置10は、ガラス粉末に発泡剤を混合して得られた混合物を加熱、発泡、焼成する焼成装置20と、焼成装置20で形成された発泡ガラスを粒状化する破砕装置30とを備える。破砕装置30は、焼成装置20において形成された発泡ガラスの破砕31および分級32を行うものである。
【0016】
焼成装置20には、発泡ガラス原料を搬送するベルトコンベア装置21の搬送方向に沿って予熱帯22、焼成炉23および冷却帯24が配置されている。予熱帯22および冷却帯24の下流には、熱回収用の吸気装置25,26が配置されている。吸気装置25,26はそれぞれファンFによりベルトコンベア装置21上方の高温空気を吸い込んで他の場所へ供給する送熱手段である。
【0017】
次に、図2に基づいて、図1に示す発泡ガラス製造装置10における発泡ガラスの製造工程について説明する。
【0018】
図2に示すように、まず、原料となる廃ガラスに前処理50が施される。前処理50においては廃ガラス中混入しているキャップ等の金属やラベルの除去が行われる。本実施形態では原料として廃ガラスを用いているが、これに限定するものではないので、一般のガラス材を原料として使用することができる。
【0019】
前処理工程50を経た廃ガラスは、一次粉砕51工程において粒径2〜5mm程度まで粉砕され、次に、二次粉砕52工程において粒径30〜100μm程度のガラスパウダーとなるまで粉砕された後、ガラスパウダー原料ストック53においてストックされる。そして、ガラスパウダー原料ストック53から供給されたガラスパウダーに発泡剤混合54が行われる。本実施形態では、発泡剤である炭酸カルシウムを0.5〜15質量%程度、ガラスパウダーに添加しているが、これに限定するものではない。
【0020】
発泡剤混合54を経たガラスパウダーは、図1に示す焼成装置20のベルトコンベア装置21に載って予熱帯22、焼成炉23および冷却帯24を通過しながら焼成55され、発泡ガラスとなる。本実施形態では焼成温度800〜900℃、焼成時間30〜120分としているがこれに限定するものではない。焼成55工程を経て形成された発泡ガラスは、発泡ガラス荒割り56工程において破砕され、粒径100mm程度の塊状体となった後、一次ストック57にストックされる。
【0021】
一次ストック57から供給された塊状発泡ガラスは、図1に示す破砕装置30における発泡ガラス粉砕58工程を経て粉砕され、50mm以下の粒状体となった後、発泡ガラス分級・袋詰め59工程において分級および袋詰めが行われる。このとき、分級された粒径2mm以下の粒状発泡ガラスは発泡剤混合54工程の前のガラスパウダーに混入される。
【0022】
次に、図3〜図7に基づいて、発泡ガラス製造装置10を構成する各種装置の構造、機能などの詳細について説明する。
【0023】
図3は図1の発泡ガラス製造装置10を構成するストックサイロ付近を示す模式図である。図3に示すストックサイロ27はガラスパウダーGPを貯留するためのものであり、前述のガラスパウダー原料ストック53(図2参照。)に配備されている。ストックサイロ27は、内径の等しい筒状部27aと、その下方に連設された漏斗部27bとを備え、漏斗部27bはその下端開口部27cに向かって徐々に縮径した形状である。漏斗部27bの外面には振動装置MBが配置され、漏斗部27bの下端開口部27cは、スクリューコンベア28に臨む姿勢で立設されている。ストックサイロ27に貯留されたガラスパウダーGPは下端開口部27cからスクリューコンベア28へ送り出されるが、振動装置MBを稼働させてストックサイロ27に振動を与えることにより、ガラスパウダーGPを滞りなく送り出すことができる。
【0024】
図4は図1の発泡ガラス製造装置10を構成するベルトコンベア装置21の一部を示す斜視図である。図4に示すように、ベルトコンベア装置21(図1参照。)は、主に、所定間隔を設けて平行に配置された複数のローラ21aと、このローラ21aに巻回されたメッシュベルト21bとにより構成される。発泡剤混合54工程において得られたガラスパウダーと発泡剤との混合物GPMは、図4に示すように、ベルトコンベア装置21のメッシュベルト21b上に敷き均しされる。
【0025】
また、ベルトコンベア装置21上には、メッシュベルト21b上の混合物GPMを厚さ10〜20mmに敷き均すとともに、混合物GPMに搬送方向に沿って深さ5〜10mm、幅10〜20mmの複数列の櫛目29aを入れるための歯型敷き均し板29が配置されている。図5はメッシュベルト21b上の混合物GPMに櫛目29aが入れられた状態を示す断面図である。混合物GPMは、この歯型敷き均し板29によってメッシュベルト21b上に敷き均され、かつ櫛目29aが入れられた状態でベルトコンベア装置21により搬送され、焼成装置20内を通過する。
【0026】
このとき、焼成装置20では、図5に示すように混合物GPMの上面からだけでなく、歯型敷き均し板29によって混合物GPMに入れられた櫛目29aに沿って、混合物GPM内部まで焼成時の熱Hが拡がるようになる。これにより、混合物GPMの内部に満遍なく熱Hが伝わるようになり、均一な空隙を有する発泡ガラスが形成される。
【0027】
図6は図1の発泡ガラス製造装置10を構成する発泡ガラス荒割り装置を示す模式図、図7は図6の発泡ガラス荒割り装置の破砕具の斜視図である。図6に示す発泡ガラス荒割り装置40は発泡ガラス荒割り工程56(図2参照。)において使用されるものである。焼成炉23で形成された発泡ガラスBGは板状であり、外気に触れて急冷されることによりクラックが生じるが、そのままでは大き過ぎて次工程移送用ベルトコンベア装置60によって一次ストック57まで移送できないので、発泡ガラス荒割り装置40によって荒割りされる。
【0028】
荒割り装置40は、図6に示すように、ベルトコンベア装置21の終端のローラ21z上で昇降する破砕具41と、破砕具41を昇降させるモータ42とから構成される。破砕具41は、図7に示すように、メッシュベルト21bの幅方向に所定の間隔を設けて配置された複数の刃43を備える。各刃43は、それぞれメッシュベルト21bの進行方向に長く、かつメッシュベルト21bの上面に対して傾斜した刃面44を有する。刃面44の傾斜は、メッシュベルト21bの進行方向後側が低くなるように形成されている。
【0029】
図6の矢線方向に回転するメッシュベルト21bにより搬送されてくるクラック入りの板状の発泡ガラスBGは、モータ42によって昇降させる破砕具41により破砕される。これにより、発泡ガラスBGは粒径10〜100mm程度の塊状体LGとなる。この塊状体LGは、ベルトコンベア装置21の終端下方の次工程移送用ベルトコンベア装置60上に落下し、この次工程移送用ベルトコンベア装置60により次の一次ストック57工程へ移送される。
【0030】
以上のように、本実施形態における発泡ガラス製造装置10では、焼成装置20によってベルトコンベア装置21のメッシュベルト21b上に形成された板状の発泡ガラスBGは、焼成装置20から搬出され、急冷されてクラックを生じる。そして、このクラックが生じた板状の発泡ガラスBGは、ベルトコンベア装置21の終端で荒割り装置40によって荒割りされ、クラックが伝播して分離し、ばらばらに砕かれた状態となる。これにより、次工程移送用ベルトコンベア装置60により次の一次ストック57工程へ効率良く発泡ガラスを移送することが可能となる。
【0031】
特に、この発泡ガラス製造装置10では、ベルトコンベア装置21の終端のローラ21z上で昇降する破砕具41を備えた荒割り装置40により板状の発泡ガラスBGを破砕するので、メッシュベルト21b上の板状の発泡ガラスBGは、ベルトコンベア装置21の終端のローラ21zの曲面によって自重による曲げ荷重を受けるとともに、さらに破砕具41の力が加わる。したがって、この荒割り装置40では、小さな力で板状の発泡ガラスBGを荒割りすることが可能であり、破砕具41のモータ42の駆動力を小さくすることができるので、モータ42として小出力のものを使用して荒割り装置40の製造コストおよびランニングコストを抑えることが可能である。
【0032】
また、この破砕具41は、メッシュベルト21bの幅方向に所定の間隔を設けて配置された複数の刃43を備え、各刃43が、それぞれメッシュベルト21bの進行方向に長い刃面44を有するので、この破砕具41の力は、メッシュベルト21bの幅方向に所定の間隔で加わることになり、さらに小さな力で効率良く板状の発泡ガラスBGを荒割りすることが可能である。
【0033】
また、本実施形態における発泡ガラス製造装置10では、焼成前に、メッシュベルト21b上に敷き均された混合物GPMに歯型敷き均し板29によって複数列の櫛目29aを入れるので、前述のように焼成時に混合物GPMの内部まで熱が拡がって均一な発泡ガラスを形成することが可能になることに加えて、焼成後の板状の発泡ガラスBGにメッシュベルト21bの進行方向に沿って複数列の溝が形成されることになる。これにより、この溝に沿ってさらに板状の発泡ガラスBGが荒割りされやすくなるので、さらに小さな力で効率良く板状の発泡ガラスBGを荒割りすることが可能である
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、廃板ガラスや廃ガラスびんなどの各種ガラス廃材を原料とし、土木資材、建築用骨材、コンクリート二次製品の骨材、軽量盛土材などに好適な非吸水性素材、あるいは斜面緑化、擁壁緑化、屋上緑化などに好適な吸水性素材、保水性素材その他水質浄化材などとして、様々な用途に使用可能な発泡ガラスの製造装置および製造方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態における発泡ガラス製造装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1の発泡ガラス製造装置における製造工程を示す図である。
【図3】図1の発泡ガラス製造装置を構成するストックサイロ付近を示す模式図である。
【図4】図1の発泡ガラス製造装置を構成するベルトコンベア装置の一部を示す斜視図である。
【図5】メッシュベルト上の混合物に櫛目が入れられた状態を示す断面図である。
【図6】図1の発泡ガラス製造装置を構成する発泡ガラス荒割り装置を示す模式図である。
【図7】図6の発泡ガラス荒割り装置の破砕具の斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
10 発泡ガラス製造装置
20 焼成装置
21 ベルトコンベア装置
21a,21z ローラ
21b メッシュベルト
22 予熱帯
23 焼成炉
24 冷却帯
25,26 吸気装置
27 ストックサイロ
27a 筒状部
27b 漏斗部
27c 下端開口部
28 スクリューコンベア
29 歯型敷き均し板
29a 櫛目
30 破砕装置
40 荒割り装置
41 破砕具
42 モータ
43 刃
44 刃面
60 次工程移送用ベルトコンベア装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス粉末に発泡剤を混合して得られた混合物を加熱して溶融、発泡、焼成する焼成装置と、
前記混合物をベルト上に載せた状態で搬送して前記焼成装置内を通過させるベルトコンベア装置と、
前記焼成装置の前段に、前記ベルト上に載せられた混合物を所定厚さに敷き均すとともに、前記混合物に前記ベルトの進行方向に沿って複数列の櫛目を入れるための歯型敷き均し板と
を備える発泡ガラスの製造装置。
【請求項2】
ガラス粉末に発泡剤を混合して得られた混合物を、ベルトコンベア装置のベルト上に載せて所定厚さに敷き均すとともに、前記混合物に前記ベルトの進行方向に沿って複数列の櫛目を入れる工程と、
前記混合物を前記ベルト上に敷き均した状態で搬送しながら加熱して溶融、発泡、焼成する焼成工程と
を含む発泡ガラスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−249270(P2009−249270A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102836(P2008−102836)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(597104053)日本建設技術株式会社 (24)