説明

発泡剤含有マスターバッチ

【課題】発泡剤の含有量が安定しており、経時による該含有量の変化率が小さい発泡剤含有マスターバッチを提供する。
【解決手段】本発明の発泡剤含有マスターバッチは、全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂100質量部と、発泡剤2.5〜10質量部とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂及び発泡剤を含有する発泡剤含有マスターバッチに関し、更に詳しくは、発泡剤の含有量が安定しており、経時による該含有量の変化率が小さい発泡剤含有マスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建材用材料として、軽量化、耐久性等に優れた樹脂を主成分とする樹脂組成物が用いられるようになっている。製品の軽量化をはかるために、特に、樹脂及び発泡剤を含有する樹脂組成物を用いた発泡成形が広く適用されている。
発泡成形に供される組成物用の樹脂として、特許文献1〜5には、ABS樹脂、ASA樹脂等のゴム強化スチレン系樹脂、ポリスチレン、スチレン・メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン等のスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭59−221340号
【特許文献2】特開平6−32932号
【特許文献3】特開平6−298983号
【特許文献4】特開平7−314438号
【特許文献5】特開平9−221562号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、耐薬品性に優れる発泡成形品を得るために、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位を含む樹脂と、発泡剤とを含有するマスターバッチについて検討したところ、該単位の含有割合が高いと、所期の量の発泡剤を含有するマスターバッチが得られず、経時とともに発泡剤の含有量が低下することが分かった。
本発明の目的は、発泡剤の含有量が安定しており、経時による該含有量の変化率が小さい発泡剤含有マスターバッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示される。
1.〔A〕全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂と、〔B〕発泡剤とを含有する発泡剤含有マスターバッチであって、上記発泡剤〔B〕の含有量は、上記スチレン系樹脂〔A〕100質量部に対して、2.5〜10質量部であることを特徴とする発泡剤含有マスターバッチ。
2.上記発泡剤〔B〕の沸点の平均値が、−10℃〜55℃である上記1に記載の発泡剤含有マスターバッチ。
3.上記スチレン系樹脂〔A〕を溶融状態としながら、上記発泡剤〔B〕を配合し、混練することにより製造されたものである上記1又は2に記載の発泡剤含有マスターバッチ。
【発明の効果】
【0006】
本発明の、スチレン系樹脂〔A〕及び発泡剤〔B〕を含有する発泡剤含有マスターバッチによれば、発泡剤〔B〕の含有量が安定している。また、経時による該含有量の変化率が小さい、即ち、経時による発泡剤の含有量の低下が抑制されているので、発泡倍率の安定した発泡成形品の製造用組成物の原料成分として好適であり、発泡倍率の高い発泡成形品を得ることもできる。上記発泡剤〔B〕の沸点の平均値が、−10℃〜55℃である場合、本発明の発泡剤含有マスターバッチは、特に、発泡倍率の高い発泡成形品の製造用組成物の原料成分として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
【0008】
本発明の発泡剤含有マスターバッチは、〔A〕全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂(以下、「成分〔A〕」ともいう。)と、〔B〕発泡剤(以下、「成分〔B〕」ともいう。)とを含有し、上記発泡剤〔B〕の含有量は、上記スチレン系樹脂〔A〕100質量部に対して、2〜10質量部であることを特徴とする。
【0009】
1.スチレン系樹脂〔A〕
この成分〔A〕は、全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位(以下、「単位(a1)」という。)75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位(以下、「単位(a2)」という。)5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位(以下、「単位(a3)」という。)0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000である樹脂である。
【0010】
上記単位(a1)を形成することとなる芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
【0011】
上記単位(a2)を形成することとなるシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
上記単位(a3)を形成することとなる他のビニル系化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等が挙げられる。また、これら以外であって、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物を用いることができる。
【0013】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物からなる単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
また、上記のヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物としては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
上記成分〔A〕の具体例としては、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
上記成分〔A〕を構成する、上記の単位(a1)、(a2)及び(a3)の含有割合は、それぞれ、75〜95質量%、5〜25質量%及び0〜20質量%であり、好ましくは78〜90質量%、10〜22質量%及び0〜15質量%、より好ましくは80〜87質量%、13〜20質量%及び0〜12質量%である。上記成分〔A〕が上記構成であれば、発泡剤の含有量が安定し、経時による該含有量の変化率が小さい発泡剤含有マスターバッチとすることができ、このマスターバッチは、発泡倍率の安定した発泡成形品の製造用組成物の原料成分として好適であり、発泡倍率の高い発泡成形品を得ることもできる。
【0018】
上記成分〔A〕は、重合開始剤の存在下又は非存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他のビニル系化合物を重合することにより製造することができる。重合方法は、重合開始剤を用いる場合には、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等が好適であり、これらの重合方法を組み合わせて用いてもよい。また、重合開始剤を用いない場合は、熱重合とすることができる。
【0019】
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記単量体全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。
【0020】
尚、上記成分〔A〕の製造の際には、単量体の全量を反応系に収容した状態で重合を開始してよいし、任意に選択した単量体成分を分割添加又は連続添加して重合を行ってもよい。更に、上記重合開始剤を用いる場合には、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。
【0021】
上記成分〔A〕のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、100,000〜300,000であり、好ましくは100,000〜270,000、より好ましくは120,000〜250,000である。上記Mwがこの範囲にあれば、発泡剤の含有量が安定し、経時による該含有量の変化の小さい発泡剤含有マスターバッチを得ることができ、また、成形加工性、機械的強度に優れた発泡成形品を得ることができる。
【0022】
2.発泡剤〔B〕
この成分〔B〕は、通常、炭化水素系化合物であり、この炭化水素系化合物は、炭化水素及びハロゲン化炭化水素を含む。
上記炭化水素としては、エタン、n−プロパン、イソプロパン、プロピレン、n−ブタン、イソブタン、イソブチレン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチル、塩化エチル、ジクロロエタン、クロロフォルム、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、フルオロクロロメタン、フルオロクロロエタン、ジクロロジフルオロメタン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記成分〔B〕としては、石油エーテル等を用いることもできる。
【0023】
上記成分〔B〕としては、1種単独で用いた場合、及び、2種以上を組み合わせて用いた場合のいずれにおいても、沸点(大気圧)の平均値が、−10℃〜55℃であることが好ましい。上記成分〔B〕は、上記例示した化合物のうち、炭素原子数3〜6の脂肪族炭化水素を含むことが好ましく、特に、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン及びイソペンタンから選ばれた1種以上を含むことが好ましい。これらを用いると、発泡性及び微分散性に優れる。
【0024】
本発明の発泡剤含有マスターバッチにおいて、上記成分〔B〕の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、2.5〜10質量部であり、好ましくは2.5〜8質量部、より好ましくは3〜7質量部である。上記範囲にあることにより、本発明の発泡剤含有マスターバッチが、発泡倍率の高い成形品の製造用組成物の原料成分として好適である。また、本発明の発泡剤含有マスターバッチを発泡させた場合に、又は、本発明の発泡剤含有マスターバッチを含有する熱可塑性樹脂組成物を発泡させた場合に、均一なセル径を容易に得ることができる。
【0025】
3.添加剤
本発明の発泡剤含有マスターバッチは、目的、用途等に応じて、添加剤を含有したものとすることができる。この添加剤としては、発泡助剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防汚剤、着色剤、蛍光増白剤、蛍光染料等が挙げられる。
【0026】
上記発泡助剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレンジクロライド、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等の有機溶剤が挙げられる。この発泡助剤は、上記成分〔B〕として、n−プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、シクロヘキサン等用いる場合に併用することにより、上記の成分〔A〕及び〔B〕の相溶性を向上させることができ、発泡剤〔B〕を効率よく上記成分〔A〕中に取り入れることができる。
【0027】
上記発泡助剤の使用量は、上記成分〔B〕100質量部に対して、通常、0.1〜2質量部である。
【0028】
上記充填剤としては、タルク、マイカ、クレー、ワラストナイト、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、炭素バルン、木炭粉末、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、カーボンブラック、グラファイト、セラミック繊維、アラミド粒子、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、各種ウィスカー、木粉、パルプ、もみがら、ペーパースラッジ等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0029】
上記熱安定剤としては、ホスファイト類、ヒンダードフェノール類、チオエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱安定剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.01〜2質量部である。
【0030】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類、硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.01〜2質量部である。
【0031】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ヒンダードアミン類と併用すると好ましい場合がある。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.05〜2質量部である。
【0032】
上記老化防止剤としては、例えば、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.01〜2質量部である。
【0033】
上記帯電防止剤としては、帯電防止剤としては、低分子型帯電防止剤、高分子型帯電防止剤等が挙げられる。また、これらは、イオン伝導型でもよいし、電子伝導型でもよい。
低分子型帯電防止剤としては、アニオン系帯電防止剤;カチオン系帯電防止剤;非イオン系帯電防止剤;両性系帯電防止剤;錯化合物;アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の金属アルコキシド及びその誘導体;コーテッドシリカ、リン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、高分子型帯電防止剤としては、分子内にスルホン酸金属塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、ベタイン等が挙げられる。更に、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等を用いることもできる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記帯電防止剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0034】
上記可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜5質量部である。
【0035】
上記滑剤としては、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、金属石鹸、シリコーン、変性シリコーン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記滑剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜5質量部である。
【0036】
上記難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トキヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン、グアニジン塩、シリコーン系化合物、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
上記難燃剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜30質量部である。
尚、本発明の発泡剤含有マスターバッチに難燃剤を含有させる場合には、難燃助剤を用いることが好ましい。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ、酸化鉄等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
上記抗菌剤としては、銀系ゼオライト、銀−亜鉛系ゼオライト等のゼオライト系抗菌剤、錯体化銀−シリカゲル等のシリカゲル系抗菌剤、ガラス系抗菌剤、リン酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、銀−ケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、セラミック系抗菌剤、ウィスカー系抗菌剤等の無機系抗菌剤;ホルムアルデヒド放出剤、ハロゲン化芳香族化合物、ロードプロパルギル誘導体、チオシアナト化合物、イソチアゾリノン誘導体、トリハロメチルチオ化合物、第四アンモニウム塩、ビグアニド化合物、アルデヒド類、フェノール類、ピリジンオキシド、カルバニリド、ジフェニルエーテル、カルボン酸、有機金属化合物等の有機系抗菌剤;無機・有機ハイブリッド抗菌剤;天然抗菌剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記抗菌剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0040】
上記着色剤としては、無機顔料、有機顔料及び染料のいずれを用いてもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記着色剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.0005〜10質量部である。
【0041】
上記発泡剤含有マスターバッチの形状及び大きさは、特に限定されず、形状について、例えば、平板状(円形、角形等)、柱状(円柱、角柱等)、線状等とすることができる。
【0042】
4.製造方法
本発明の発泡剤含有マスターバッチは、上記スチレン系樹脂〔A〕を溶融状態としながら、上記発泡剤〔B〕を配合し、混練することにより製造されたものであることが好ましい。
従って、本発明の発泡剤含有マスターバッチは、例えば、上記成分〔A〕を溶融混練する工程(以下、「溶融工程」という。)、溶融工程により得られた溶融状態の上記成分〔A〕に、上記成分〔B〕、又は、上記成分〔B〕及び発泡助剤を供給し、この混合物を溶融混練する工程(以下、「混練工程」という。)、混練工程により得られた混練物を線状体等とし、直ぐに上記線状体を冷却する工程(以下、「冷却工程」という。)、並びに、冷却した線状体を切断する工程(以下、「切断工程」という。)を、順次、進める製造方法により製造することができる。
【0043】
上記溶融工程においては、単軸押出機、二軸押出機、タンデム型押出機等の押出機を用い、上記成分〔A〕を、その溶融温度以上で溶融混練する。
その後、上記混練工程においては、上記溶融工程において用いた押出機が、あるいは、別途準備した、上記例示した押出機が用いられ、溶融状態の上記成分〔A〕中に、液化させた上記成分〔B〕、又は、液化させた上記成分〔B〕及び発泡助剤を供給し、通常、上記成分〔A〕の溶融温度以上で溶融混練する。
【0044】
次いで、上記冷却工程においては、上記混練工程により得られた混練物を、押出機の出口に配設された、例えば、直径1〜5mmの押出孔から押し出して、連続した線状体等を形成する。そして、押し出された線状体を水等の冷媒の中に導入し、冷却する。
その後、冷却された線状体を適当な長さに切断することにより、所望の大きさの発泡剤含有マスターバッチを製造することができる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0046】
1.原料成分
下記の実施例及び比較例において用いる成分を示す。
【0047】
1−1.樹脂
(1)アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−1)
スチレン単位量79%、アクリロニトリル単位量21%の共重合体であり、Mwは16万である。
(2)アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−2)
スチレン単位量84%、アクリロニトリル単位量16%の共重合体であり、Mwは15万である。
(3)アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−3)
スチレン単位量70%、アクリロニトリル単位量30%の共重合体であり、Mwは20万である。
(4)ポリスチレン樹脂(A−4)
PSジャパン社製「HF77」(商品名)を用いた。Mwは、22万である。
【0048】
1−2.発泡剤
ブタン(大気圧における沸点−0.5℃)を用いた。
【0049】
2.マスターバッチの製造及び評価
実施例1
シリンダー温度を170〜250℃に設定した120mm単軸押出機に、アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−1)100部を供給してこれを溶融した。その後、ブタン4.5部を上記押出機後部の注入口から供給し、溶融混練した。
次いで、上記押出機の出口に配設した、50穴(2.5mmφ/穴)のダイを通して、ストランド化させて、そのまま直接、水槽に導入した。水槽にて冷却後、長さ3mmに切断し、外径約2mmのペレット(マスターバッチ)を得た。
【0050】
上記ペレットについて、下記項目について評価した。その結果を表1に示す。
(1)発泡剤含有量の安定性試験(I)
上記のようにして連続的に製造されたペレットに対して、1時間ごとに10個ずつサンプリングを行い、ブタンの含有量を測定した。測定方法は、以下のとおりである。
[ブタン含有量測定方法]
ペレット約10gを、200℃のホットプレート上に載置し、5分間加熱し、加熱前後の質量を精秤し、その差をブタン含有量とした。
【0051】
(2)発泡剤含有量の安定性試験(II)
上記のようにして製造された50本のストランドうち、任意に10本のサンプリングを行い、上記と同様に冷却及び切断後、ブタンの含有量を測定した。測定方法は、上記と同様である。
【0052】
(3)発泡剤保持性
上記のようにして製造されたペレットを、温度25℃の環境下、90日間放置し、放置前後のブタンの含有量を測定した。測定方法は、上記と同様である。
【0053】
(4)成形外観性
上記のようにして製造されたペレットの外観性を目視判定した。
○;表面が滑らかであった。
×;表面がスポンジのようになっていた。
【0054】
実施例2及び比較例1〜3
樹脂及び発泡剤を、それぞれ、表1に示す割合で用いた以外は、実施例1と同様にしてペレットを製造し、各種評価を行った。その結果を表1に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から明らかなように、実施例1及び2は、発泡剤含有量の安定性、保持性、及び、ペレットの外観性に優れていた。一方、比較例1は、発泡剤の含有割合が、樹脂100部に対して、1.7〜2.3部と少ない例であり、実用的な発泡倍率を有する発泡体を製造することが困難となるものと推測される。比較例2は、樹脂を構成するアクリロニトリル単量体単位量が30%と多い例であり、実施例1及び2と同様に、樹脂100部に対して発泡剤を4.5部配合しても、得られたペレット中の発泡剤の含有割合は0.5〜0.9部と少量であった。また、ペレットの表面は、スポンジのようになっており、外観性に劣っていた。比較例3は、樹脂としてポリスチレンを用いた例であり、発泡剤含有量の安定性に優れていたものの、経時による発泡剤の含有量の低減が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の発泡剤含有マスターバッチは、発泡剤の含有量が安定しているので、これをそのまま、あるいは、本発明の発泡剤含有マスターバッチと他の熱可塑性樹脂(ゴム強化樹脂等)等とから製造された組成物を用いることにより、発泡倍率の安定した発泡成形品を得ることができ、広く利用される。発泡倍率の高い発泡成形品を得ることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
〔A〕全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂と、〔B〕発泡剤とを含有する発泡剤含有マスターバッチであって、
上記発泡剤〔B〕の含有量は、上記スチレン系樹脂〔A〕100質量部に対して、2.5〜10質量部であることを特徴とする発泡剤含有マスターバッチ。
【請求項2】
上記発泡剤〔B〕の沸点の平均値が、−10℃〜55℃である請求項1に記載の発泡剤含有マスターバッチ。
【請求項3】
上記スチレン系樹脂〔A〕を溶融状態としながら、上記発泡剤〔B〕を配合し、混練することにより製造されたものである請求項1又は2に記載の発泡剤含有マスターバッチ。

【公開番号】特開2008−150475(P2008−150475A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339024(P2006−339024)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【出願人】(390029171)大日プラボード株式会社 (2)
【出願人】(592176756)三協化成産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】