説明

発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、発泡成形品、それらの製造方法、予備発泡粒子

【課題】構成する融着粒子間の隙間が少なく、印刷インクの色が映え、美麗な発泡成形品を得ることができる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂粒子に、ペンタンとプロパンとの混合発泡剤を含浸させ、得られた発泡剤含有樹脂粒子を30〜65℃の気相中において650〜4万Paの圧力で0.5〜12時間保圧することで、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、ペンタン3〜9質量部とプロパン0.01〜0.8質量部とを含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、発泡成形品、それらの製造方法、予備発泡粒子に関する。本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、表面美麗性に優れ、かつ優れた印刷面の発色を有する発泡成形品の製造に好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡成形品を作るのに広く使用されている。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から発泡成形品を作る方法を説明する。まず、発泡性粒子を加熱し発泡させて予備発泡粒子を作る。次いで、予備発泡粒子を閉鎖できるが密閉し得ない成形用金型に入れて粒子を加熱することで、金型内で予備発泡粒子を更に発泡させると共に互いに融着させて発泡成形品を得る。従って、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、予備発泡粒子を作る予備発泡工程と、金型内で予備発泡粒子同士を融着させる発泡成形工程の条件を調整することにより、目的に適った良好な発泡成形品を作ることが必要とされる。
【0003】
発泡成形品は、上述のように発泡した樹脂粒子の融着によって作られる。発泡成形品は、これを破断したとき各粒子の融着状態が良好、すなわち破断面における各粒子の表面が全く現れず、100%融着してあっても、それは面接着ではなく、微細な毛細管が外部に開口している。例えば、界面活性剤を含む染料水を入れると、染料水が粒子融着面を通過して外部に滲み出してくることで外部に開口する毛細管を確認することができる。
【0004】
発泡性樹脂粒子から製造された型内発泡成形品は、前述のように発泡した樹脂粒子の融着によって作られる。しかし、発泡粒子間の隙間が十分に埋まり難く、成形品表面には埋まりきらなかった隙間が残っている。この隙間は横断面が丸みを持ったV字状の溝として存在し、ジグザグ状に不規則に延びて交差し、網状を呈する。しかも、この溝は幅も深さも無視できない大きさとなっているため、型内発泡粒成形品の表面を美麗でない状態にし、外観を悪くする。
【0005】
特に、コーヒー容器や即席麺容器に使用する場合は、型内発泡成形品の表面に印刷が施される。印刷すると粒子間の隙間だけが印刷されないで残るため、色飛びが生じ、従って印刷効果を著しく減殺することとなる。そこで、発泡粒子間の隙間をできるため目立たないようにすることが、特に強く要望されるに至った。
【0006】
隙間をできるだけ目立たないようにする試みは、従来から行われてきている。例えば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に温風をあてることで、ガスを強制的に逸散させ表層の非発泡層を形成させる方法や減圧処理することで水分値を下げ、かつ均一な気泡径を得る方法が知られている。
例えば、特開平9−59416号公報(特許文献1)では−10℃〜+35℃の範囲にて減圧下で1〜4時間乾燥することにより、熟成日数を必要とせず、耐熱性がよく、高温でも気泡径が変化しない発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が得られると記載されている。
【0007】
特開平1−289841号公報(特許文献2)では、HLB7以下の非イオン系界面活性剤、ポリジメチルシロキサン、流動パラフィン等を表面に塗布する。次に、温風にて発泡剤を樹脂粒子の表面より除去し、5μm〜100μmの非発泡層を形成させている。
特開平9−40800号公報(特許文献3)では、ポリスチレン樹脂粒子を温風にて処理することにて、逆熟成が生じにくく、予備発泡粒子の気泡が均一、且つ気泡径が50〜300μmの範囲である予備発泡粒が得られている。
特開平9−111035号公報(特許文献4)では懸濁重合中に重合添加剤が30%以上の時点で水性媒体に対する濃度が、0.02〜0.5mol/lになるような量の電解質を添加して重合する工程、及び発泡剤を3〜20%逸散させることが記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開平9−59416号公報
【特許文献2】特開平1−289841号公報
【特許文献3】特開平9−40800号公報
【特許文献4】特開平9−111035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開平9−59416号公報の方法では、水中にて短時間で効果的にガスを逸散させることは可能であるが、ガス組成による影響が考慮されていない。
特開平9−59416号公報の方法では、−10℃〜+35℃の範囲及び減圧下にて1〜4時間かけて粒子を乾燥しているが、この乾燥が粒子内部まで効果を及ぼしており、セル径を均一にすることは可能である。しかし、気泡径の調整により印刷の美麗性が向上することを考慮していない。
【0010】
特開平1−289841号公報、特開平9−40800号公報、特開平9−111035号公報の方法では水性媒体から、分離後に再度温風により処理を行わなければならないため、生産性を損なうといった問題があった。また、温風にて行うとガス逸散させるのに時間がかかりスチレン系樹脂粒子表面のみでなく、該樹脂全体に効果を及し、気泡が粗くなるため、印刷面のインクの色が映えないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
様々な検討を重ねた結果、本発明者等は、発泡剤をプロパン及びペンタンに限定して含浸させた樹脂粒子を減圧下で温風処理(保圧処理)することで、表層部の非発泡層が厚く、かつ表層部の気泡径を適度な径に保つ、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を開発するに至った。
かくして本発明によれば、ポリスチレン系樹脂粒子に、ペンタンとプロパンとの混合発泡剤を含浸させ、得られた発泡剤含有樹脂粒子を30〜65℃の気相中において650〜4万Paの圧力で0.5〜12時間保圧することで、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、ペンタン3〜9質量部とプロパン0.01〜0.8質量部とを含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0012】
更に、本発明によれば、ポリスチレン系樹脂粒子に、ペンタンとプロパンとの混合発泡剤を含浸させ、得られた発泡剤含有樹脂粒子を30〜65℃の気相中において650〜4万Paの圧力で0.5〜12時間保圧することで、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、ペンタン3〜9質量部とプロパン0.01〜0.8質量部とを含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を得る工程と、前記予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、成形型を蒸気加熱し型内発泡成形して発泡成形品を得る工程とを含むことを特徴とする発泡成形品の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、上記方法で得られた発泡剤を含むポリスチレン系樹脂からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、ペンタン3〜9質量部とプロパン0.01〜0.8質量部とを発泡剤として含有し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数10倍に発泡させた場合、得られる発泡粒子の表面非発泡層の厚みT1と表層部の平均気泡径D1が、それぞれ下記式(1)と(2)
6[μm]≦T1≦20[μm]・・・(1)
10[μm]≦D1≦40[μm]・・・(2)
の関係を満たしていることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提供される。
【0014】
更に、本発明によれば、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られた予備発泡粒子であって、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、ペンタン2.4〜7.2質量部とプロパン0.006〜0.3質量部とを発泡剤として含有し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数X倍に予備発泡させた場合、得られる予備発泡粒子の表面非発泡層の厚みT2と表層部の平均気泡径D2が、それぞれ下記式(3)と(4)
6[μm]≦T2≦20[μm]・・・(3)
10×(X/10)1/3[μm]≦D2≦40×(X/10)1/3[μm]・・・(4)
の関係を満たしていることを特徴とする予備発泡粒子が提供される。
また更に、本発明によれば、上記予備発泡粒子を型内発泡成形して得られたことを特徴とする発泡成形品が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、成形品を構成する融着粒子間の隙間が少なく、印刷インクの色が映え、美麗な発泡成形品を得ることができる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に使用できるポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず公知の樹脂をいずれも使用できる。例えば、スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体、これらの共重合体が挙げられる。スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂は、スチレン又はスチレン誘導体と、スチレンと共重合可能な、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、セチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸とそれらの誘導体、アクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレート等との共重合体であってもよく、スチレン又はスチレン誘導体と、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールメタクリレート等の多官能性単量体との共重合体であってもよい。更に、ポリスチレン系樹脂には、適量のゴム状物質が含まれていてもよい。
【0017】
ポリスチレン系樹脂粒子には、他の添加剤、例えば、可塑剤、溶剤、難燃剤、染料等の着色剤等が含まれていてもよい。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ペンタンとプロパンとからなる混合発泡剤を含有している。本発明で使用できるペンタンとしては、n−ペンタン、イソペンタン等が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂粒子に、公知の方法で上記発泡剤を含浸させることで、発泡剤含有樹脂粒子を得、次いで発泡剤含有樹脂粒子を、30〜65℃の気相中において、650〜4万Paの圧力で0.5〜12時間保圧する。この保圧処理により、印刷性が向上した発泡成形品を形成可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が得られる。保圧処理は、通常大気中で行なわれる。
【0018】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、ペンタンが3〜9質量部、プロパンが0.01〜0.8質量部含まれている。
ペンタンの含有量が3質量部より少ないと、発泡性が低下して予備発泡に時間がかかることがあるため、生産性が良好でないことがある。また、嵩倍数が所定の倍数に達しないことがある。また、9質量部を超えると、ポリスチレン系樹脂が軟化し、成形時の加熱に対する十分な耐熱性がないことがある。その結果、樹脂粒子の表層部が溶けて成形品外観の美麗性に劣ることがある。
一方、プロパンの含有量が0.01質量部より少ないと、樹脂粒子の表層部の気泡径が大きくなることがある。その結果、樹脂粒子から得られた成形品の表面に印刷した際のインクの映えが悪くなることがある。また、0.8質量部を超えると、樹脂粒子の表層部の気泡径が細かくなり、成形時の加熱に対する十分な耐熱性が得られないことがある。その結果、樹脂粒子の表層部が溶ける又は表層部の気泡の破れて収縮が発生し、美麗な成形品が得難いことがある。
【0019】
好ましいペンタン及びプロパンの含有量は、それぞれ3.6〜5.6質量部及び0.05〜0.7質量部である。この範囲であれば、より美麗な成形品を提供しうる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が得られる。より好ましいプロパンの含有量は、0.08〜0.44質量部である。
なお、発泡剤含有樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のペンタン及びプロパンの含有量を上記範囲とするため、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子より、ペンタンを0.1〜0.9質量部、プロパンを0.04〜0.41質量部それぞれ多く含有していることが好ましい。
【0020】
保圧する際の温度が30℃より低いと、ガスの逸散が遅く、十分な厚みの表面非発泡層が形成されないことがある。その結果、成形時の加熱に対する十分な耐熱性がなく、表層部が溶ける又は表層部の気泡の破れて収縮が発生し、美麗な成形品が得難いことがある。温度が65℃より高いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が微発泡することがあり、この場合、嵩が増えるため、輸送費がかかりコスト的に好ましくない。より好ましい温度は35〜60℃である。
【0021】
保圧する際の圧力が650Paより低いと、発泡剤の抜けが早く、樹脂粒子の表面の気泡径や発泡性の調整が難しくなることがある。もしくは発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が微発泡することがあり、この場合、嵩が増えるため、輸送費がかかりコスト的に好ましくない。また、圧力が4万Paより高いと、粒子全体にまで保圧の効果が及び、粒子全体の気泡径が大きくなることがある。その結果、成形品表面を印刷した後のインクの映えが悪くなることや、成形品外観の美麗性が低下することがある。より好ましい圧力は666〜33330Paである。
【0022】
保圧する時間が0.5時間より短いと、保圧による効果が小さく、十分な厚みの表面非発泡層が形成されないことがある。その結果、成形時の加熱に対する十分な耐熱性がなく、表層部が溶ける又は表層部の気泡の破れて収縮が発生し、美麗な成形品が得難いことがある。時間が12時間より長いと、粒子全体にまで保圧の効果が及び、粒子全体の気泡径が大きくなることがある。その結果、成形品表面を印刷した後のインクの映えが悪くなることや、発泡成形する時に長時間の加熱が必要となることや、2次発泡力が低下して、成形品の外観が低下すること等の問題が生じることがある。より好ましい時間は1〜12時間であり、更に好ましくは2〜8時間である。
【0023】
なお、保圧処理前に、発泡剤含有樹脂粒子を、減圧下又は常圧下において、35℃〜65℃の水性媒体中で0.5〜12時間保温してもよい。水性媒体とは、水又は、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体を意味する。
【0024】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、その表層部の非発泡層の厚さと、表層部の気泡径に特徴を有している。
詳しく述べると、嵩発泡倍率10倍の場合、非発泡層の厚さT1は、粒子の最表層の樹脂層厚みであり、6〜20μmの範囲が好ましく、更に好ましくは7〜12μmの範囲である。6μmより薄いと成形時の加熱に十分な耐熱性がなく、表層部が溶ける又は表層部の気泡が破れ収縮することがあり、美麗な成形品を得難いことがある。20μmより厚いと発泡能力が低下し、発泡成形する時に長時間の加熱が必要となることがある。
【0025】
また、嵩発泡倍率10倍の場合、表層部の気泡径D1は、10〜40μmが好ましく、更に好ましくは20〜40μmの範囲である。10μmより小さいと成形時の加熱に対する十分な耐熱性がなく、表層部が溶ける又は表層部の気泡が破れ収縮し、印刷後のインクの映えが悪くなることがある。40μmより大きいと、表面を印刷した後に気泡が大きいために光が透過し、印刷後のインクの映えが悪くなることがある。
【0026】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、公知の方法により予備発泡させることで予備発泡粒子が得られる。予備発泡は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造後すぐに行ってもよく、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を一定期間熟成させた後に行なってもよい。但し、経時により発泡剤の含有量は減少するため、例えば2週間程度内に予備発泡させることが好ましい。
予備発泡粒子は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、ペンタン2.4〜7.2質量部とプロパン0.006〜0.3質量部とを発泡剤として含有している。
ペンタンの含有量が2.4質量部より少ないと、成形時に十分な融着を得るのに時間がかかることがあるため、生産性が良好でないことがある。また、7.2質量部を超えると、ポリスチレン系樹脂が軟化し、成形時の加熱に対する十分な耐熱性がないことがある。その結果、樹脂粒子の表層部が溶けて成形品外観の美麗性に劣ることがある。
一方、プロパンの含有量が0.006質量部より少ないと、成形時に十分な融着を得るのに時間がかかることがあるため、生産性が良好でないことがある。また、0.3質量部を超えると、成形後も発泡力が過剰に残ってしまい、成形品表面の印刷を加熱乾燥させる工程で、印刷面の下の気泡が再発泡して印刷面に凹凸が生じ、美麗な成形品が得難いことがある。
好ましいペンタン及びプロパンの含有量は、それぞれ2.4〜4.3質量部及び0.03〜0.30質量部である。この範囲であれば、より美麗な成形品を提供しうる予備発泡粒子が得られる。
【0027】
得られた予備発泡粒子は、その表層部の非発泡層の厚さと、表層部の気泡径に特徴を有している。
すなわち、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数X倍に予備発泡させた場合、非発泡層の厚さT2は、粒子の最表層の樹脂層厚みであり、6〜20μmの範囲が好ましく、更に好ましくは7〜12μmの範囲である。6μmより薄いと成形時の加熱に十分な耐熱性がなく、表層部が溶ける又は表層部の気泡が破れ収縮することがあり、美麗な成形品を得難いことがある。20μmより厚いと発泡能力が低下し、発泡成形する時に長時間の加熱が必要となることがある。
【0028】
また、表層部の気泡径D2は、10×(X/10)1/3〜40×(X/10)1/3μmの範囲である。10×(X/10)1/3μmより小さいと成形時の加熱に対する十分な耐熱性がなく、表層部が溶ける又は表層部の気泡が破れ収縮することで、印刷後のインクの映えが悪くなることがある。40×(X/10)1/3μmより大きいと、表面を印刷した後に気泡が大きいために光が透過し、印刷後のインクの映えが悪くなることがある。
上記予備発泡粒子を、公知の型内発泡成形に付すことで発泡成形品が得られる。得られた発泡成形品は、成形品を構成する融着粒子間の隙間が少なく、印刷インクの色が映え、美麗な成形品である。
【実施例】
【0029】
次に実施例と比較例を挙げて、この発明の詳細を説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例の評価方法を記載する。
【0030】
(評価方法)
1.表層部の平均気泡径
嵩倍数10倍に発泡させた予備発泡粒子の中から任意に選択した10個について、剃刀刃を用いて、それぞれ発泡粒子の中心を通る平面で二等分し、その一方の切断面を走査型電子顕微鏡(日本電気社製 JSM-6360LV)を用いて、100倍に拡大した画像を作成した。
次に、粒子切断面の画像上に粒子の中心から半径90%に相当する距離を半径とする円(表層円)を描き、表層円の外側に存在する気泡径を粒子表層部の気泡径とし、この気泡について、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定した。つまり、各画像について円上にある気泡の個数を数え、次式によりこの気泡径の平均弦長(t)を算出した。
平均弦長t(μm)=(円周×1000)/(気泡数×画像の拡大倍数)
次の式により、この気泡の平均気泡径(D)を算出した。
平均気泡径D(μm)=t/0.616
計10画像分の平均値を表層部の平均気泡径とした。
【0031】
2.表面非発泡層の厚み
嵩倍数10倍に発泡させた予備発泡粒子の中から任意に選択した10個について、剃刀刃を用いて、それぞれ粒子の中心を通る平面で二等分し、その一方の切断面の最表層部を走査型電子顕微鏡(日本電気社製 JSM-6360LV)を用いて、500倍に拡大した画像を作成した。その画像に45°で交わる4本の線を引き、これらの線の両端部の非発泡層の厚みを測定した。各画像について、8カ所測定し、計10画像分の平均値を表面非発泡層の厚みとした。
【0032】
3.残存ガス量
嵩倍数10倍に発泡させた予備発泡粒子10〜20mgを20mlの専用ガラスバイアルに精秤密封し、パーキンエルマー社製ヘッドスペースサンプラーTurboMatrixHS40にセットし、160℃で30分間加熱後、パーキンエルマー社製ガスクロマトグラフClarus500GC(検出器:FID)を用いて定量した。ヘッドスペースサンプラーにおける測定条件は、ニードル温度160℃、試料導入時間0.08分、トランスファーライン温度160℃、ガスクロマトグラフにおける測定条件は、カラムをJ&W社製DB−1(0.25mmφ×60m、膜厚1μm、カラム温度:50℃で10分間、20℃/分で270℃まで昇温、270℃で1分間)、キャリアガスをヘリウム(導入条件:18psiで10分間、0.5psi/分で24psiまで増量)、注入口温度(200℃)とした。測定値を樹脂100質量部に対する値に換算した。
【0033】
4.発泡粒子間隙間
カップ成形品のインキ塗布されている部位の色飛びが認められる個数を目視にてかぞえcm2あたりの個数に換算した。
○・・・色飛びがほとんどなく、1個/cm2以下である。
△・・・色飛び少しあり、3個/cm2以下である。
×・・・色飛び多く、3個/cm2より多い
【0034】
5.融着性
カップ成形品の周壁部を80mm×80mmで切り出し、得られた切片の湾曲方向の両端に圧を加えることで、湾曲方向に略直交する方向に切片を破断した。破断面に露出した発泡粒子を目視観察し、発泡粒子内で破断している発泡粒子の数を数えて下記式に基づいて融着性を算出し、下記基準に基づいて判断した。
融着性(%)=100×発泡粒子内で破断している発泡粒子数/破断面に露出している発泡粒子数
○・・・80%以上
△・・・60%以上で且つ80%未満
×・・・60%未満
【0035】
6.印刷面のインクの映え
印刷後のカップ成形品の周壁部外面を目視観察して下記基準により判断した。
○・・・色が濃くでている。
×・・・色が薄く、商品価値を下げる。
【0036】
7.嵩発泡倍数
嵩発泡倍数は、試料としての予備発泡粒子をメスシリンダー内に自然落下させた後、メスシリンダーの底をたたいて試料容積を一定にし、その容積と質量を測定し、下記式により算出した。樹脂比重は、ポリスチレン系樹脂の場合、1.0とした。
嵩発泡倍数(倍)=メスシリンダー中の試料容積(ml)/試料質量(g)×樹脂比重
【0037】
8.発泡倍数
発泡成形品の発泡倍数は、試験片の寸法と質量を有効数字3桁以上になるように測定し、下記式により算出した。樹脂比重は、ポリスチレン系樹脂の場合、1.0とした。
発泡倍数(倍)=試験片体積(cm3)/試験片質量(g)×樹脂比重
【0038】
実施例1
内容積が100リットルの攪拌羽付きオートクレーブにリン酸三カルシウム120g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ4g、ベンゾイルパーオキサイド105g、t−ブチルパーオキシベンゾエート30g、イオン交換水40kg及び可塑化成分を不純物として若干量含有するスチレンモノマー40kgを供給した後、200rpmの速度で攪拌羽を回転させて懸濁液を作製した。
引き続き、オートクレーブの攪拌羽を200rpmの速度で回転させながらオートクレーブ内を90℃に6時間に亘って加熱した。次に、オートクレーブ内を115℃で2時間に亘って加熱した後、オートクレーブ内を25℃まで冷却して水性媒体のpHが2となるまで塩酸を添加した後に、脱水、乾燥させてポリスチレン粒子を得た。
【0039】
得られたポリスチレン粒子をJIS Z8801に規定された目開き0.600mmの篩で篩い、この篩を通過したポリスチレン粒子を収集した。次に、この収集したポリスチレン粒子をJIS Z8801に規定された目開き0.300mmの篩で篩い、この篩上に残ったポリスチレン粒子を収集することによって、平均粒子径が0.450mmのポリスチレン粒子を得た。
続いて、内容積が5.6リットルの攪拌羽付きオートクレーブ内に水2kgを供給して攪拌羽を300rpmの速度で回転させながら、複分解法で生成したピロリン酸マグネシウム12g及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.3gを分散剤としてオートクレーブ内に供給して水性媒体とした後、この水性媒体中に上記平均粒子径が0.450mmのポリスチレン粒子2kgを供給した。
【0040】
しかる後、オートクレーブの攪拌羽を300rpmの速度で回転させながら、オートクレーブ内を110℃に加熱した後、発泡剤としてプロパン(コスモ石油社製プロパンゴールド)22g、ペンタン(コスモ石油社製ノルマルペンタン)100gを窒素加圧することによって10分間かけて供給し、4時間に亘って110℃で放置した。次に、オートクレーブ内を25℃まで2時間かけて冷却してオートクレーブ内から粒子を取り出し、脱水、洗浄、乾燥させて発泡剤含有樹脂粒子を得た。
【0041】
その後、上記発泡剤含有樹脂粒子2kgをポリエチレン袋に入れ、この袋を小型油回転真空ポンプ(ヤマト科学社製PD52)が付属した角型真空定温乾燥器(ヤマト科学社製DP33)に入れて、乾燥器内の温度を40℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を8000Paにして4時間放置することで発泡性スチレン樹脂粒子を得た。
次に、発泡性スチレン樹脂粒子2kg、並びに、表面処理剤としてポリエチレングリコール(日本油脂社製PEG−300)1.0g及びステアリン酸亜鉛(日本油脂社製ジンクステアレートGF−200)8.0gをスーパーミキサーに供給して800rpmの速度で攪拌して、発泡性スチレン樹脂粒子の表面を表面処理剤によって被覆した。
【0042】
そして、発泡性ポリスチレン樹脂粒子1kgを15℃の保冷庫にて24時間に亘って放置した後、発泡性ポリスチレン樹脂粒子を予備発泡機に供給して嵩発泡倍数10倍に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子の表層部の気泡径、表層部の非発泡層の厚さ及び残存ガス量を下記の要領にて測定し、その結果を表1に示した。
【0043】
得られた予備発泡粒子を室温にて24時間に亘って放置した後、この予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填してゲージ圧0.2MPaの水蒸気で7秒間に亘って加熱成形を行なった。次に、金型のキャビティ内を冷却した後、金型内から有底円筒状のカップ成形品を得た。なお、カップ成形品は、直径が68mmで且つ厚みが2mmの平面円形状の底面部と、この底面部の外周縁から斜め上方に向かって徐々に拡径する円筒状周壁部(上端開口径:96mm、高さ:106mm、厚み:2mm)とから形成されていた発泡倍数10倍の発泡成形品である。
【0044】
次に得られたカップ成形品を湖北精工社製 CUP PRINTER KH-6100にて、東洋インキ製造社製のインキであるFLASH DRY FDC メジウムを成形品表面に被覆印刷し、アイグラフィックス社製のアイ紫外硬化用電源装置にて紫外線乾燥により塗布膜を形成することで、印刷されたカップ成形品を得た。
得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子中のカップ成形品の表面粒子隙間、融着性、印刷面のインクの映えを測定し、その結果を表1に示した。
【0045】
実施例2
発泡剤として、プロパンを4g供給したこと以外は実施例1と同様に行った。
実施例3
発泡剤として、プロパンを8g供給したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0046】
実施例4
内容積が100リットルの攪拌機付きオートクレーブ内に水40kgを供給して攪拌羽を120rpmの速度で回転させながら、複分解法で生成したピロリン酸マグネシウム240g及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ12gを分散剤としてオートクレーブ内に供給して水性媒体とした後、この水性媒体中に上記平均粒子径が0.450mmのポリスチレン粒子40kgを供給した。
【0047】
しかる後、オートクレーブの攪拌羽を120rpmの速度で回転させながら、オートクレーブ内を110℃に加熱した後、発泡剤としてプロパン360g、ペンタン2000gを窒素加圧することによって10分間かけて供給し、4時間に亘って放置した。
次に、オートクレーブ内を25℃まで冷却してオートクレーブ内から取り出し、水性媒体のpHが2となるまで塩酸を添加した後に、脱水、乾燥させて発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。
【0048】
得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子をJIS Z8801に規定された目開き0.600mmの篩で篩い、この篩を通過した発泡性ポリスチレン樹脂粒子を収集した。次に、この収集した発泡性ポリスチレン樹脂粒子をJIS Z8801に規定された目開き0.300mmの篩で篩い、この篩上に残った発泡性ポリスチレン樹脂粒子を収集することによって、平均粒子径が0.450mmの発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。
【0049】
その後、上記平均粒子径が0.450mmの発泡性ポリスチレン樹脂粒子をポリエチレン袋に入れ、その袋を小型油回転真空ポンプ(ヤマト科学社製PD52)が付属した角型真空定温乾燥器(ヤマト科学社製DP33)に入れて、乾燥器内の温度を30℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を8000Paにして10時間放置したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0050】
実施例5
乾燥器内の温度を65℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を8000Paにして1時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
実施例6
乾燥器内の温度を40℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を8000Paにして4時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
実施例7
乾燥器内の温度を40℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を8000Paにして1時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
【0051】
実施例8
乾燥器内の温度を35℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を8000Paにして10時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
実施例9
乾燥器内の温度を60℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を33330Paにして8時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
実施例10
乾燥器内の温度を40℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を666Paにして2時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
【0052】
実施例11
発泡剤としてプロパン360g、ペンタン3200gを窒素加圧することによって10分間かけて供給し、4時間に亘って放置した。次に、オートクレーブ内を25℃まで冷却してオートクレーブ内から取り出し、pHが2となるまで塩酸を添加した後に、脱水、乾燥させて発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得たこと以外は実施例6と同様に行った。
【0053】
実施例12
オートクレーブ内を110℃に加熱した後、発泡剤としてプロパン480g、ペンタン3600gを窒素加圧することによって10分間かけて供給し、8時間に亘って放置した。次に、オートクレーブ内を25℃まで冷却してオートクレーブ内から取り出し、pHが2となるまで塩酸を添加した後に、脱水、乾燥させて発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。
【0054】
得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子をJIS Z8801に規定された目開き0.600mmの篩で篩い、この篩を通過した発泡性ポリスチレン樹脂粒子を収集した。次に、この収集した発泡性ポリスチレン樹脂粒子をJIS Z8801に規定された目開き0.300mmの篩で篩い、この篩上に残った発泡性ポリスチレン樹脂粒子を収集することによって、平均粒子径が0.450mmの発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。
【0055】
その後、上記平均粒子径が0.450mmの発泡性ポリスチレン樹脂粒子をポリエチレン袋に入れ、小型油回転真空ポンプ(ヤマト科学社製 PD52)付き、角型真空定温乾燥器(ヤマト科学社製 DP33)に入れて、乾燥器内の温度を60℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を8000Paにして10時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
【0056】
実施例13
オートクレーブ内を110℃に加熱した後、発泡剤としてプロパン600g、ペンタン2000gを窒素加圧することによって10分間かけて供給し、8時間に亘って放置した。次に、オートクレーブ内を25℃まで冷却してオートクレーブ内から取り出し、分離したこと以外は実施例6と同様に行った。
【0057】
比較例1
8000Paにて4時間の保圧処理を、常圧(1.013×105Pa)下で48時間に変更すること以外は実施例1と同様に行った。
【0058】
比較例2
8000Paにて4時間の保圧処理を、常圧(1.013×105Pa)下で1時間に変更すること以外は実施例1と同様に行った。
比較例3
角型真空定温乾燥器に入れず、15℃の保冷庫に1ヵ月放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
【0059】
比較例4
乾燥器内の温度を50℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を400Paにして12時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。乾燥器内で放置すると、発泡し始めたため中止した。
比較例5
乾燥器内の温度を25℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を8000Paにして4時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
比較例6
乾燥器内の温度を70℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を8000Paにして4時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。乾燥器内で放置すると、発泡し始めたため中止した。
【0060】
比較例7
乾燥器内の温度を50℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を8000Paにして20時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
比較例8
乾燥器内の温度を40℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を46663Paにして4時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
比較例9
発泡剤としてプロパン14g、ペンタン60gを窒素加圧することによって10分間かけて供給し、4時間に亘って放置した。次に、オートクレーブ内を25℃まで冷却してオートクレーブ内から取り出し、pHが2となるまで塩酸を添加した後に、脱水、乾燥させて発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得たこと以外は実施例4と同様に行った。
【0061】
比較例10
発泡剤としてプロパン800g、ペンタン2000gを窒素加圧することによって10分間かけて供給し、8時間に亘って放置した。次に、オートクレーブ内を25℃まで冷却してオートクレーブ内から取り出し、pHが2となるまで塩酸を添加した後に、脱水、乾燥させて発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。
【0062】
得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子をJIS Z8801に規定された目開き0.600mmの篩で篩い、この篩を通過した発泡性ポリスチレン樹脂粒子を収集した。次に、この収集した発泡性ポリスチレン樹脂粒子をJIS Z8801に規定された目開き0.300mmの篩で篩い、この篩上に残った発泡性ポリスチレン樹脂粒子を収集することによって、平均粒子径が0.450mmの発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。
【0063】
その後、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をポリエチレン袋に入れ、その袋を小型油回転真空ポンプ(ヤマト科学社製 PD52)が付属した角型真空定温乾燥器(ヤマト科学社製 DP33)に入れて、乾燥器内の温度を40℃にし、真空ポンプのスイッチを入れて圧力を8000Paにして4時間放置したこと以外は実施例4と同様に行った。
【0064】
比較例11
発泡剤としてブタン(コスモ石油製ブタンシルバー)2000gを窒素加圧することによって10分間かけて供給し、8時間に亘って放置した。次に、オートクレーブ内を25℃まで冷却してオートクレーブ内から取り出し、pHが2となるまで塩酸を添加した後に、脱水、乾燥させて発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得たこと以外は実施例10と同様に行った。
【0065】
比較例12
発泡剤としてプロパン360g、ブタン2000gを窒素加圧することによって10分間かけて供給し、8時間に亘って放置したこと以外は実施例10と同様に行った。
比較例13
発泡剤としてブタン400g、ペンタン2000gを窒素加圧することによって10分間かけて供給し、4時間に亘って放置したこと以外は実施例10と同様に行った。
比較例14
発泡剤としてペンタン2000gを窒素加圧することによって10分間かけて供給し、4時間に亘って放置したこと以外は実施例10と同様に行った。
実施例1〜13及び比較例1〜14の評価結果を表1に示す。また、実施例1及び比較例1と2の予備発泡粒子の電子顕微鏡写真を図1〜6に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1から以下のことがわかる。
実施例1〜13と、比較例9〜14とから、発泡剤としてペンタンとプロパンとを使用することで、優れた外観を有する成形品が得られることがわかる。
実施例1〜3及び11〜13と、比較例9〜11及び14とから、樹脂粒子を保圧することで得られた、ペンタン3〜9質量部、プロパン0.01〜0.8質量部を含有した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を成形すると、得られた成形品が優れた外観を有していることがわかる。
実施例4〜6及び9と、比較例3及び5〜6とから、保圧温度を30〜65℃とすることで、優れた外観を有する成形品が得られることがわかる。
実施例9〜10と、比較例1〜4及び8とから、保圧圧力を650〜4万Paとすることで、優れた外観を有する成形品が得られることがわかる。
実施例7〜8と、比較例1、2及び7とから、保圧時間を0.5〜12時間とすることで、優れた外観を有する成形品が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例1の予備発泡粒子の電子顕微鏡写真(100倍)である。
【図2】実施例1の予備発泡粒子の表層部の電子顕微鏡写真(500倍)である。
【図3】比較例1の予備発泡粒子の電子顕微鏡写真(100倍)である。
【図4】比較例1の予備発泡粒子の表層部の電子顕微鏡写真(500倍)である。
【図5】比較例2の予備発泡粒子の電子顕微鏡写真(100倍)である。
【図6】比較例2の予備発泡粒子の表層部の電子顕微鏡写真(500倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂粒子に、ペンタンとプロパンとの混合発泡剤を含浸させ、得られた発泡剤含有樹脂粒子を30〜65℃の気相中において650〜4万Paの圧力で0.5〜12時間保圧することで、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、ペンタン3〜9質量部とプロパン0.01〜0.8質量部とを含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
ポリスチレン系樹脂粒子に、ペンタンとプロパンとの混合発泡剤を含浸させ、得られた発泡剤含有樹脂粒子を30〜65℃の気相中において650〜4万Paの圧力で0.5〜12時間保圧することで、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、ペンタン3〜9質量部とプロパン0.01〜0.8質量部とを含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を得る工程と、前記予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、成形型を蒸気加熱し型内発泡成形して発泡成形品を得る工程とを含むことを特徴とする発泡成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法により得られた発泡剤を含むポリスチレン系樹脂からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、ペンタン3〜9質量部とプロパン0.01〜0.8質量部とを発泡剤として含有し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数10倍に発泡させた場合、得られる発泡粒子の表面非発泡層の厚みT1と表層部の平均気泡径D1が、それぞれ下記式(1)と(2)
6[μm]≦T1≦20[μm]・・・(1)
10[μm]≦D1≦40[μm]・・・(2)
の関係を満たしていることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
請求項3に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られた予備発泡粒子であって、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、ペンタン2.4〜7.2質量部とプロパン0.006〜0.3質量部とを発泡剤として含有し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数X倍に予備発泡させた場合、得られる予備発泡粒子の表面非発泡層の厚みT2と表層部の平均気泡径D2が、それぞれ下記式(3)と(4)
6[μm]≦T2≦20[μm]・・・(3)
10×(X/10)1/3[μm]≦D2≦40×(X/10)1/3[μm]・・・(4)
の関係を満たしていることを特徴とする予備発泡粒子。
【請求項5】
請求項4に記載の予備発泡粒子を型内発泡成形して得られたことを特徴とする発泡成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−156600(P2008−156600A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224490(P2007−224490)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】