説明

発泡成型品補強材用不織布及びその製造方法

【課題】本発明は従来技術を背景になされたもので、家具あるいは車輌用座席等に使用される軽量な発泡成型品用補強材に関し、発泡成分の漏れや滲み出しが少なく、また発泡時に補強材の皺入りの問題が少なく、、かつ加工性や取り扱い性に優れた発泡成型品用補強材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】発泡ウレタンの成型品の補強材として用いられる不織布であって、7g/cm荷重での厚さが0.4〜2.0mm、破断強度が50N/5cm以上、破断伸度が100%以下、引裂強度が20N以上であり、少なくとも部分的に熱接着された箇所を有する発泡成型品補強材用短繊維不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具あるいは車輌用座席等に使用される複雑な形状の発泡成型品補強材用不織布に関する。さらに詳しくは、軽量であっても成型時の滲み出しや皺入りの問題が少なく、かつ加工性や取り扱い性に優れた発泡成型品補強材用不織布及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ベッド、座席等のシートやアームレストなどのクッション材や衝撃緩衝材などとして、軟質発泡ウレタン成型体が広く用いられており、一般的に、発泡ウレタン成型体の成型時に補強材(Backing clothなどとも呼ばれる)が一体化されたものが用いられている。かかる補強材は、発泡ウレタン成型体と金属スプリングなどの支持体の間に位置して、支持体のクッション作用を均等に分散すると共に、支持体から受ける摩擦から発泡ウレタン成型体を保護するという役割を担うものである。そして、消費者が求める品質が高度になるにつれ、座席等の使用時に、補強材に滲み出したウレタンと金属スプリングなどとの摩擦により発する擦過音を解消する要望が高まり、これに応える補強材として、嵩高層と緻密層とを有し、緻密層でウレタンの滲み出しを防止する不織布からなる補強材が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0003】
しかしながら、かかる補強材は、発泡ウレタン成型時の成型性が乏しいため、近年強く求められるに至っている意匠性が高く深絞り形状の発泡ウレタンを成型体に用いた場合、皺の発生や破れ等の欠陥が生じ、ここからウレタンの滲み出しにより、金属スプリングとの摩擦で擦過音の増大や破損が生じるという問題点を有していた。
【0004】
最近、発泡ウレタンの発泡倍率アップ(ウレタン発泡体の密度低下)による軽量化がすすんでおり、特に自動車用途では、軽量化による燃費改善などを目的にして、ウレタンの発泡倍率が高くなってきている。発泡倍率が高くなると、クッション材などとして用いる際に繰り返し荷重によりヘタリを生じやすくなり、その防止のために補強材の果たす役割がより重要になってきている。
【0005】
そこで、ウレタンの滲み出しを防止する緻密層の65℃及び100℃での5%伸長応力を低く抑えて凹凸が大きい発泡ウレタン成型にも使用し得る補強材として特許文献6が提案されている。しかしながら、かかる補強材は低目付の緻密層と基材層を積層交絡処理する方法では、発泡剤の滲み出しは防止できるが、伸度が低く、大きな伸びに対応し難いため、成型時の型添い性が悪くなる問題点を有していた。さらに、それぞれの層を作成後積層交絡処理するため、工程が煩雑化してコストアップになる問題がある。また、特許文献6の実施例には、単層のPBTスパンボンド不織布をカレンダー加工後ニードルパンチする方法も提案されているが、カレンダー加工により付与された剛直性(カレンダー加工により受けた熱履歴により結晶化が促進されたことが原因と考えられる)がニードルパンチ処理では柔軟化し難く、深絞り形状での型添い性がより劣る問題がある。
【0006】
また、打抜き性改良方法として、カーボンブラック含有繊維からなる不織布と非含有不織布を積層交絡接合する方法が、特許文献7で提案されている。しかし、かかる方法は、打抜き性とハンドリング性は大幅に改善されたが、複雑で凹凸が大きい深絞り形状の発泡ウレタン成型において、成型型への追従性が不充分となり、欠肉や皺の発生を充分防止することができない問題が残っている。また、2層のそれぞれの層を作成後積層交絡処理するため、工程が煩雑化してコストアップになる問題がある。
【0007】
高目付単層不織布の片面を熱圧着する方法が特許文献8で提案されている。かかる方法では、加工工程の煩雑さは改善されるものの、片面が熱圧着されて剛直化しているので、複雑で凹凸が大きい深絞り形状の発泡ウレタン成型において、成型型への追従性が不充分となり、欠肉や皺の発生を充分防止することができない問題が残っている。
【0008】
中配向度繊維からなる単層スパンボンド不織布を仮エンボス加工後ニードルパンチして、収縮処理により緻密化する方法で、低通気度の成型加工用不織布を得る方法が特許文献9で提案されている。かかる方法では、収縮熱処理により緻密化されて、0〜35cc/cm/秒の低通気度なものしか得られないため、複雑な深絞り形状の成型では、型添い性が劣り、仕上がり形状が悪くなる問題がある。又、工程が煩雑でコスト面で好ましくない。
【0009】
中配向度繊維からなる単層スパンボンド不織布を仮エンボス加工後ニードルパンチして、次いで更に片面熱エンボス加工して、次いで、収縮処理により緻密化し、収縮により形成したループをバフィング処理により起毛加工する方法で、熱成型加工用不織布を得る方法が特許文献10で提案されている。かかる方法は、圧着部が不織布の厚さ方向全体に及び、厚さ断面方向に2層構造化されていないので、起毛ループ部分からウレタンの滲み出しが発生し易くなり、発泡成型用には適さない問題がある。
【0010】
面ファスナー雌材として、片面にループ形成後、熱圧着し、接着剤でループを固定する方法が特許文献11に提案されているが、ファスナー材としては有用であるが、発泡成型品用補強材としては、型添い性が劣り仕上がり形状が悪くなり、発泡成型用には適さない場合がある。
【0011】
低モジュラス素材として捲縮ポリプロピレン繊維不織布にエンボス加工のみ付与した発泡成型用補強材が特許文献12に提案されている。この方法は、捲縮発現したバルキーな嵩高層にエンボス加工で部分的に圧着部を形成する方法で、かかる方法は、圧着部が不織布の厚さ方向全体に及び、厚さ断面方向に2層構造化されていないので、非エンボス部分から、特許文献10よりも滲み出しは改良されているものの、低目付ではウレタンの滲み出しが発生し易くなり、発泡成型用には問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実公昭62−26193号公報
【特許文献2】特開平2−258332号公報
【特許文献3】特許2990207号公報
【特許文献4】特許2990208号公報
【特許文献5】特許3048435号公報
【特許文献6】特許3883008号公報
【特許文献7】特開2007−331259号公報
【特許文献8】特許2611422号公報
【特許文献9】特許2514193号公報
【特許文献10】特公平07−30501号公報
【特許文献11】特開2000−265354号公報
【特許文献12】特開2009−167570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は従来技術を背景になされたもので、家具あるいは車輌用座席等に使用される軽量な発泡成型品補強材用不織布に関し、発泡成分の漏れや滲み出しが少なく、また発泡時に複雑なモールド型への形状追随性が良いために補強材の皺入りの問題が少なく、かつ加工や取り扱い性に優れた発泡成型品補強材用不織布及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、低目付の短繊維不織布であっても、7g/cm荷重時の厚さが0.4〜2.0mmであり、不織布に適度な熱接着箇所を形成したものを用いることで、コールド発泡時の複雑で凹凸が大きい深絞り形状にも追従性が優れ、発泡剤の滲み出しもなく、仕上がり形状も良好な発泡成型体が得られ、得られた仕上がり形状が良好な発泡成型体は、発泡層と強固に接合した補強層を形成して、補強耐久性に優れた発泡成型体が得られることを知見し、本発明の完成に到達した。
【0015】
即ち、本発明は、以下の通りである。
1.発泡ウレタンの成型品の補強材として用いられる不織布であって、7g/cm荷重での厚さが0.4〜2.0mm、引張強さが50N/5cm以上、伸び率が100%以下、引裂強度が20N以上であり、少なくとも部分的に熱接着された箇所を有する短繊維不織布からなる発泡成型品補強材用不織布。
2.目付が60〜140g/m、フラジール通気度が50〜350cc/cm/秒であり、ウレタン含浸後の引裂強度が18N以上である上記1に記載の発泡成型品補強材用不織布。
3.主たる構成繊維が繊度1.0〜6.7dtexのポリエステル系繊維で構成された不織布であって、低融点成分を含む複合繊維を5〜50%含有し、少なくとも部分的に圧着緻密化された構造を形成している上記1または2に記載の発泡成型品補強材用不織布。
4.短繊維からなるウェッブを繊維交絡を形成せしめた後に、エアースルー法により部分的接着を付与し、さらに加熱ロールに接触させる上記1〜3のいずれかに記載の発泡成型品補強材用不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発泡成型品補強材用不織布は、低目付でも、滲みだし防止性、設置取扱性、加工性、及び成型品の品質にも優れる。即ち、補強材用不織布が硬過ぎず柔らかすぎず成型枠への取付けは良好で、コールド発泡に代表される低温発泡における深絞り成型においても追随性が良好で適度の通気性を有するので、成型時にシワの発生、欠肉や樹脂抜けの発生を防止でき、補強材用不織布が発泡体と強固に接合した成型品となり、擦過、屈曲、屈折音を抑制し、保形耐久性、耐摩耗性にも優れた軽量なコールド発泡成型品を製造できる、低温コールド発泡に適した発泡成型品補強材用不織布を提供できる。また、ウレタンとの複合後において適正な引裂強度と難燃性を有する軽量な発泡成型品補強材用不織布及びその製造方法の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の発泡成型品補強材用不織布に用いられる素材は特には限定されるものではないが、ポリエステルやポリオレフィンなどの価格が安価な汎用熱可塑性樹脂を使用することが推奨され、特に不織布を構成する主たる繊維がポリエステル系繊維であることが好ましい。ポリエステル系繊維を用いることで優れた機械特性(引張強さや引裂強さ)やウレタン発泡温度域(65〜100℃程度)での寸法安定性および耐クリープ特性を得やすくなる。ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)、ポリトリメチオレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸(PLA)などのホモポリエステル及びそれらの共重合ポリエステルなどが例示できる。原料が生物由来のエチレングリコールを成分として用いられるPETを用いても物性面で問題がない。
また、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系材料なども使用可能であるが、本発明で要求される機械特性や耐クリープ特性に優れる不織布の主たる構成繊維であるポリエステル系繊維と混合して使用することが好ましい。
また、本発明では、特性を低下させない範囲で、必要に応じて、抗酸化剤、耐光剤、着色剤、抗菌剤、難燃剤、親水化剤などの改質剤を添加できる。
【0018】
本発明の発泡成型品補強材用不織布は、7g/cm荷重の厚さが0.4〜2.0mmであることが必要である。より好ましくは、0.8〜1.4mmである。
ウレタン発泡時において、補強材用不織布は予めモールド型の内部に、ピンやマグネット、両面テープなどを用いて予めセットされてから、型を閉じてのち原料供給ゲートから混合液よりなる発泡ウレタン原料が供給される。この際、ウレタン発泡により生じたガスが補強材用不織布層を通過し、続いて発泡ウレタンが補強材用不織布層に含浸されることになる。補強材用不織布の厚さが0.4mm未満であると、通気度の大小にかかわらずウレタンが層内を通過してしまい、モールド型面側にウレタンが漏れ出して、成型後のクッション表面側にウレタン漏れ層が形成されて、実使用時にウレタン成型体を支持するSバネとの摩擦により異音を発生することになると考えられる。
一方、厚さが2.0mmを超えると、シートの引張強さが低くなりすぎたり、伸び率が大きすぎたりして実用特性やハンドリング性などに問題を生じやすい。また、補強材の厚さが2.0mmを超えると繊維間隙距離が大きくなりすぎることにより、ウレタンが層内を透過しやすくなったり、縫製して使用する際の寸法精度が低下するなどの問題を生じたりしやすい。さらには、本発明者が検討したところ、シートの2次元面あるいは3次元面において局所的な分布斑が大きくなりやすく、シートの機械強度が低くなり過ぎる部分や繊維が少なくウレタンの滲み出し点が増えたりするなどの問題を生じやすい。また、繊維の接着あるいは交絡による拘束点が少なくなることにより打ち抜き加工時の繊維脱落や、毛羽立ちによるハンドリング性を低下させたりしやすくなる。
【0019】
7g/cm荷重での厚さをコントロールする方法は特に規定されないが、厚さを薄くするには、ニードルパンチ法を用いる場合は突き刺し密度を高くしたり、突き刺し深さを深くしたりなどすれば良い。エアースルー法を用いる際には、加工温度を高くしたり、循環させるエアー速度をあげたり、あるいはネットに挟んだ状態で熱処理するなどの方法をとることができる。
【0020】
厚さのコントロール法として、加熱ロールと接触させることも有効な方法である。対向する加熱ロールの間にクリアランスを設けることで適度な厚さを達成できる。あるいは片側のロールを樹脂やゴム素材のものを用いることで、クリアランスを設定しなくてもつぶれすぎて厚さが小さくなりすぎることを防ぐことが可能となる。また、樹脂ロールやゴムロールなどの硬度を適切に設定することで、厚さをコントロールすることが容易となる。厚さ制御性は劣るが、遠赤外線ヒータなどにより間接加熱をしたり、加熱した棒や板に接触させたりするなどの方法を取ることも可能である。
【0021】
例えばニードルパンチ加工においては、一般的には、突き刺し密度をある程度まで高くしたり、突き刺し深さを大きくとったりすることで引張強さや引裂強さなどの機械特性を所望の値とすることが可能であるが、適切な条件を超えると粉塵の発生や繊維切断による強度の低下などの別の問題が発生する場合が多くなるので注意が必要である。
【0022】
また、熱接着処理を行なうためカレンダーロールを用いる場合には、加工温度を低く設定したり、加工速度をあげたり、クリアランスを設けたりすることにより厚さを大きくすることができるケースが多い。また、高温の金属体との接触による厚さ低下を防ぐために熱エンボスロールを用いる場合には、おさえ面積(彫刻凸部面積)を小さくしたり、エンボス凸部深さを深くしたり、加工圧力を下げたりすることも好ましい。これらの条件設定は、関連するパラメータの複合要因により支配されるため、当該者の経験を元に適切な条件を決定することが必要となる。
【0023】
本発明の発泡成型品補強材用不織布の強伸度特性は、引張強さが50N/5cm以上、伸び率が50〜100%である。引張強さが50N/5cm未満では、良好な取扱性を維持できず、生産工程での作業性が悪化する。伸び率が50%未満では、深絞り金型などの部分的に屈曲伸張が必要な金型成型での変形追随性が不充分になり、仕上がり形状が不良になったり、破れを生じたりする場合があり好ましくない。伸び率が100%を越える場合、補強材を打ち抜きや縫製する際に、変形してしまって所望の形状からのずれを生じたり、あるいは縫製品をモールド型にセットする際に、セットピンに引っ掛ける際にシートが伸びすぎてセット性が悪くなったりする。
【0024】
本発明の発泡成型品補強材用不織布の引裂強さ(シングルタング法)は、20N以上である。より好ましくは30N以上である。引裂強さは、補強材の耐久性に関係しており、高い荷重がかかった場合に補強材層が破壊される限界に関係すると考えられる。
【0025】
本発明の発泡成型品補強材用不織布のウレタン含浸後の引裂強さ(シングルタング法)は、18N以上であることが好ましく、特に好ましくは20N以上である。ウレタン含浸後の引裂強度は、ウレタン自身の硬さや繊維との接着力に関係していることから、ウレタン組成にも注意して決定する必要がある。
【0026】
本発明の発泡成型品補強材用不織布は優れた成型性を保持するため、短繊維不織布のみで構成される。短繊維不織布では、成型時の金型追随変形で均一に変形させられるので破れを生じず、綺麗な仕上がり成型品を得ることが可能となる。一般の短繊維不織布は、嵩高性に優れるが繊維の切断端を多数有するため、長繊維不織布、あるいは長繊維不織布/短繊維不織布の複合体と比較して機械的特性に劣る場合が多かった。特に低目付短繊維不織布は、繊維接合あるいは交絡点が少なくなるために力学特性が劣り、金型セット時に破れやすかったり、成型時の金型追随変形で追随斑による変形破れを生じたりしやすく好ましくないとされてきた。本発明者らの検討の結果、適切な原料と加工法を選択することによりこれらの問題を回避できることを見出した。
発泡後の力学特性は、ウレタンが存在することにより繊維の移動自由度が制限されることにより引裂特性が低下しやすいが、適切な繊度や目付を選択することで適合させることが可能である。
【0027】
従来の発泡成形品補強材用不織布は、長繊維不織布、あるいは長繊維不織布と短繊維不織布の複合体が使用されることが多かった。これは、長繊維不織布が強度特性にすぐれるだけでなく、同じ目付では不織布の2次元面内あるいは3次元構造内でのシートの均質性が高く、ウレタンなどの滲み出しを生じやすい疎な構造部を形成する確率が非常に低いことが理由であると考えられる。しかしながら、昨今の複雑な形状のモールド型形状が一般的となってくると、シートが堅すぎるために発泡時に皺が発生したりする場合も出てきた。
本発明を構成する短繊維不織布は、単一層でも二層以上の層が積層された構造であっても良い。必要に応じて、繊維径の異なる短繊維層を積層することも好ましい形態のひとつである。
生産性やコストの観点から考えると単一層を用いても必要特性を充足することが好ましいと考えられる。本発明者らは鋭意検討の結果、単一層であっても、ニードルパンチ、あるいはスパンレース法により予め適正な繊維交絡点を形成した後に、エアースルー法や加熱ロール使用などにより適正量の熱接着点を増やすことにより、全体としては嵩高で低目付短繊維不織布であっても、繊維交絡点や繊維相互接着箇所が力学特性保持に寄与して、必要な力学性能を発現できることを見出した。
また、本発明の不織布を予め所望の型にいれて成型しておいて後に発泡型にセットすることも好ましい形態のひとつである。
【0028】
本発明の発泡成型品補強材用不織布の軽量化を行うためには、1層からなる不織布とすることが、軽量化をすすめる上で好ましい形態のひとつである。しかしながら、1層にすると補強材として要求される機械的特性や加工時の取り扱い性に問題を生じやすいために、以下の構造を形成していることが好ましい。
本発明の不織布は、ニードルパンチ法により3次元的に交絡しており、かつ少なくとも一部に熱接着された部分を形成していることが好ましい。見掛け密度は、0.05〜0.15g/cmの不織布であることが好ましい。
本発明の発泡成型品補強材用不織布は、金属スプリング材などと接触する面(バネ受け面)に設置され、クッション層として、バネ材との擦過、屈曲、屈折音などの制音機能や成型品の耐磨耗性を実現するためには適正な機械特性を持つことが必要である。そのために、所望の繊維の交絡点や部分的な接着点が適正量あることが必要である。繊維の交絡点や接着点が適正量形成されていない場合、バネ材との擦過、屈曲、屈折音などの制音機能が低下し、一方、繊維の交絡点や接着点が多すぎると剛直性が高くなりすぎることにより、金型追随性が阻害されて成型仕上がり性が不良になり好ましくない。また、不織布が二層以上からなる場合は、細い繊度の不織布層と太い繊維の不織布層を積層することが好ましい。
【0029】
本発明の発泡成型品補強材用不織布として、主としてポリエステルからなる短繊維で構成された単一層からなる不織布が用いられる場合において、少なくとも片面に圧着緻密化された箇所を形成しており、該圧着緻密表面層に突出繊維構造を形成している不織布構造体であることが好ましい。なお、本発明における突出繊維構造とは、交絡処理により突き出された繊維がループや切断繊維として不織布面から複数本の繊維が突き出された形態を総称して突出繊維構造という。
本発明では、発泡剤との境界面側に圧着緻密表面層側を用いて成型し、突出繊維構造が発泡ウレタン層に埋設固化され、アンカー効果を発揮して、補強材である不織布と発泡ウレタン層間の強固な接合を可能としている。
圧着緻密表面層側に突出繊維構造を形成していると、発泡ウレタン層へのアンカー効果を得やすく、磨耗や変形に対する接合強度の低下による補強材層と発泡層と剥離を生じにくくなり、その結果として擦過、屈曲、屈折音などの制音機能や補強効果が低下して、耐久性が低下することを防止しやすくなる。
【0030】
見掛け密度や厚さを制御して通気度を調整することにより発泡時のガス抜け量をコントロールして発泡剤の充填性を向上させると共に、嵩高層側を柔軟化して、成型加工時の金型追随性も向上できるので、より好ましい実施形態である。突出繊維構造を形成する絡合方法としては公知のスパンレース法、ニードルパンチ法などが適用できる。本発明における、より好ましい交絡多孔柔軟化及び突出繊維構造形成方法としては、ニードルパンチ法による交絡柔軟化及び突出繊維構造形成が推奨される。
本発明における好ましい突出繊維構造の突出個数密度は、20〜100個/cmである。20個/cm未満では、交絡処理効果による柔軟化効果とアンカー効果が不充分になる場合があり、100個/cmを越える場合、緻密表面層が柔軟化して、発泡剤遮蔽層効果が低下する場合がある。なお、本発明における突出繊維構造の突出個数とは、1回の交絡処理により生じた1孔から複数本の繊維が突出した形態を1個として数える。
本発明のより好ましい突出繊維構造の突出密度は、30〜160個/cm、さらに好ましくは45〜110個/cmである。
【0031】
本発明における突出繊維構造で形成された好ましいループ高さは1〜4mmである。ループ高さが1mm未満ではアンカー効果が不足する場合があり、4mmを越える場合は、引っ掛かりによる型枠へのセット時作業性に問題が出る場合がある。本発明のより好ましいループ高さは1.5〜4mmであり、さらに好ましいループ高さは2〜3mmである。
【0032】
ニードルパンチ法による突出繊維構造形成効果は、針深度に依存しており、必要な突出繊維長を形成できる条件で、できるだけ浅くするのが好ましい。針深度が深いと開口径が大きくなり発泡剤の滲み出しを生じる場合があり好ましくない。例えば、突出繊維ループ長を3〜10mmとするには、針深度は9〜12mmに設定するのが好ましい。
【0033】
ニードルパンチ法により加工した補強材用不織布は、引き続きエアースルー法により部分的熱接着箇所を形成することが好ましい。エアースルー法の加工は、厚さを減らさずに部分的接着点を増やすことができるため、本発明の補強材用不織布の製造方法として特に好適である。加工温度は、ポリエステル系繊維の場合は90〜150℃くらいの温度であることが好ましく、30〜40秒の時間熱処理を行なうことで好適な接着状態を得ることが可能となる。加工温度のセッティングは低融点成分の融点と混合率によりコントロールすることが可能である。
【0034】
本発明における発泡成型品補強材用不織布の好ましい目付は、60〜140g/mである。より好ましい目付は、80〜120g/m、さらに好ましくは90〜110g/mである。目付が60g/m未満では、嵩高層の厚さが薄くなり、発泡成型時の発泡剤の滲み出しを防止する機能と、成型品としたときの擦過、屈曲、屈折音を抑制し、保形耐久性、耐摩耗性を付与する機能を同時に満足することが困難になる場合がある。目付が140g/mを越えると、軽量化が阻害される。
【0035】
本発明における発泡成型品補強材用不織布の通気度は、50〜350cc/cm/秒が好ましい。通気度が50cc/cm/秒未満では、発泡成型時の膨張空気抜けが不均一となり、欠肉、樹脂抜けの発生を生じる場合があり、350cc/cm/秒を越える場合は、発泡剤の漏れによる滲み出しを生じる場合がある。
本発明におけるより好ましい通気度は、100〜280cc/cm/秒、さらに好ましくは、150〜260cc/cm/秒である。
【0036】
本発明における発泡成型品補強材用不織布を主として構成する繊維の繊度は、1.0〜6.7dtexであることが好ましく、より好ましくは1.5〜4.4dtexである。繊度が1.0dtex未満では、耐摩耗性が劣り、耐久性が不充分になったり、荷重を変えた際の厚さ比を大きくすることが難しくなる。一方、6.7dtexを越えると、繊維構成本数が少なくなり、不織布構造の緻密度が低下し、通気性が高くなり過ぎ成型性に問題が出る場合があり、また、バネ材のクッション層機能が不充分になる場合がある。
【0037】
本発明における発泡成型品補強材用不織布では、主構成成分と主構成成分より融点が20℃以上低い低融点成分を含む2成分以上の複合繊維を含有することが好ましい。
主成分繊維がポリエチレンテレフタレート(pet)繊維である場合には、低融点petとpetの2成分を含む複合繊維であることが好ましい実施形態のひとつである。複合繊維の形態としては、芯鞘構造でもサイドバイサイド構造であってもよい。不織布の厚さを厚くしたい場合には、中空芯鞘や中空サイドバイサイド繊維も用いることも好ましい形態のひとつである。
また、ポリエチレンとpetの芯鞘型複合繊維もpet繊維と混合して用いることが可能である。
接着強度や嵩高性を所望の値に設定する目的で複合繊維の繊度は2.2〜8.9dtexであることが好ましく、4.4〜6.7dtexであることがより好ましい。
【0038】
本発明における発泡成型品補強材用不織布において、複合繊維を用いる理由は以下のとおりである。通常の短繊維不織布は、長繊維不織布より強度が劣り、特に本発明で好適に用いられる目付が140g/m以下の不織布ではその傾向が顕著となり、本発明の目的である発泡成型品補強材用不織布として用いることが難しかった。その問題を解決すべく鋭意検討の結果、複合繊維を適切量用いることにより、不織布の引張強さや伸び率などを所望の値にコントロールすることが可能であることを見出した。また、補強材用不織布は打ち抜き加工して用いられる場合が多いが、複合繊維による接着部を設けることで繊維の脱落を減らすことができる。そのことにより、工程に設置されたウレタン発泡ガスを含む排気ガス中のダストによる環境汚染を防止する目的で設置されたダスト(繊維屑など)の回収フィルターの圧力損失上昇を防ぐことも可能となる。また、補強材を金型にセットする作業者の手や手袋などにシートが絡みついくという問題を防ぐことが可能となる。
【0039】
本発明における発泡成型品補強材用不織布では、複合繊維の混合比率が5〜50%であることが好ましく、10〜40%であることがより好ましい。複合繊維の混合比率が5%より低いと機械的強度特性が劣るだけでなく、金型のピンなどにセットする場合にずるずると伸びが大きくなりすぎて設置が難しくなったり、たるみなどを生じて皺などの発生を誘発する要因となったりしやすい。また、打ち抜き裁断後の繊維の脱落や毛羽立ちが多くなり、金型へのセット作業性が低下して問題となる。一方、混合比率が50%より高くなると、シートが堅すぎてセット性が悪くなったり、発泡成型時に皺が生じたりしやすいという問題を生じる。また、自動車などに用いられる際には、低融点成分が増えることにより難燃特性が悪くなり、ウレタン発泡複合後においてさえもfmvss302規格などへの適合が困難となる。
【0040】
本発明の発泡成型品補強材用不織布の柔軟性は、45°カンチレバ法で測定した剛軟度として、30mm〜150mmが好ましい。30mm未満では、柔らか過ぎるとハンドリング性に問題を生じ、150mmを越えると硬すぎて成型型へのセット性に問題を生じる場合がある。より好ましい剛軟度は40〜100mm、さらに好ましくは50〜80mmである。なお、本発明では、縦及び横方向ともに満足するのが望ましいが、片方向が外れる場合は、縦横の平均値が満足すれば許容範囲と考えても良い。
【0041】
本発明の発泡成型品補強材用不織布を用いて、所定の形状に切断し、クッション用金型にセットして発泡剤を注入発泡させて、車両用クッションを成型した。成型したクッションは良好な形状に仕上り、発泡剤の滲み出しもなく、バネ受け材との擦過、屈曲、屈折音を抑制し、保形耐久性、耐摩耗性にも優れた発泡成型品であった。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び従来例、比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例および比較例で用いた評価方法は下記の方法でおこなった。
【0043】
(1)繊度[dtex]
試料の任意の場所5点を選び、光学顕微鏡を用いて、単繊維径をn=20で測定して、全平均値(D)を求めた。同場所5点の繊維を取り出し、密度勾配管を用いて、繊維の比重をn=5で測定し、全平均値(ρ)を求めた。ついで、平均単繊維断面積と平均比重から1万mの重量に換算して繊度をdtexで示す。
【0044】
(2)目付[g/m
JIS L 1906(2000)「単位面積当たりの質量」に準拠して測定した。
【0045】
(3)厚さ[mm]
JIS L 1906(2000)「厚さ」に準拠し、荷重7gf/cmおよび荷重20gf/cmで測定した。
【0046】
(4)見掛け密度[g/cm
上記(2)と(3)で測定した目付と厚さ(荷重20gf/cm)から下記式を用いて算出した。
見かけ密度=目付÷厚さ÷1000
【0047】
(5)不織布の強伸度特性及び引裂強さ
引張強さ、伸び率はJIS L 1906(2000)「引張強さ及び伸び率」に準じて測定した。引裂強さは、JIS L 1906(2000)「引裂強さ シングルタング法」に準拠して測定した。
また、ウレタン含浸複合後の不織布の引裂強さは、発泡ウレタン層から補強材をはがして後に測定を行なう。ウレタンの付着量はできるだけ減らすようにはがして測定することが好ましいが、5〜30g/mくらいの付着量であれば引き裂き強度にほとんど影響を与えない。
【0048】
(6)通気度(cc/cm/sec)
JIS L 1906(2000) 「通気性 フラジール形法」に準じたフラジール通気度測定機によって行った。
【0049】
(7)柔軟性(剛軟度)
JIS L 1906(2000) 「剛軟性 45°カンチレバー法」に準拠して測定した値の平均値で示す。
【0050】
(8)発泡評価
クッションパッド金型に所定の形状に切断し、φ30mmの穴を中央部に中心間隔が10cm間隔で3点空けた発泡成型品補強材用不織布を形状に馴染ませるようにセットして、セット状態をセット性として官能評価し、次いで、MDI(ジフェニルメタン・ジ・イソシアネート)系2液ウレタン樹脂にて65℃のコールド発泡を行い、ウレタン密度約46kg/mの成型品の評価を目視判定で行った。
(8−1)セット性
金型に馴染み易くセット容易:○、馴染み易いがセットし難い:△、馴染み難くセットし難い:×で官能評価した。
(8−2)滲み出し
成型品の補強材面にウレタンの滲み出しがなし:○、滲み出し微小:△、滲み出し明確にあり:×で目視判定した。全面と穴のまわり半径2cm分の2種類の評価を行なった。
(8−3)皺
成型品の補強材面に皺発生なし:○、微小な皺発生:△、皺が発生:×で目視判定した。
(8−4)浮き
成型品の補強材面に浮きが発生なし:○、微小な浮きあり:△、浮きあり:×で目視と触感で判定した。
(8−5)破れ
成型品の補強材面に破れなし:○、破れ直前:△、破れあり:×で目視判定した。
(8−6)剥離
成型品の補強材面と発泡体との境界剥離のし易さを、成型品の補強材端部を1cm剥離して、手で補強材を発泡体から引裂くときに、境界が剥離しない:○、境界剥離に近い剥離を生じる:△、境界で剥離する:×で官能目視判定した。
【0051】
(9)成型品の性能評価
(9−1)制音性
(8)で得られた成型品をを厚さが半分になるように押さえつけた際の、擦れ音を聞き、音が聞こえない:○、圧縮する瞬間のみわずかに音がする:△、圧縮時および回復時に音がする:×で官能評価した。
(9−2)耐磨耗性
(8)で得られた成型品の補強材面側を、発泡体を含めて厚さ5mmにスライスした試料を用いて、JIS L 0849に定義される方法により、摩擦試験機II型(学振型)を用いて、補強材面を摩擦面としてセットし、10分間磨耗させて、損傷の程度を目視判定で級別して評価した。損傷なし:5、微小な損傷:4、損傷少しあり:3級、損傷中程度:2級、損傷大:1級とした。
(9−3)保形性
(8)で得られた成型品を55cm角10ミリ鉄板上に置き、テンシロン(ボールドウィン社製UCT25T)で、同じ鉄板をロードセルに接合して接触する高さをHcmとすると、半分の高さまで圧縮回復(50%繰返し圧縮)を100回繰返し、補強材面の損傷状態を目視判定して以下の評価をした。○:損傷、剥離なし、△:剥離小、損傷なし、×:剥離あり、損傷あり。
【0052】
(10)難燃性
FMVSS302に準じて測定を行った。短繊維不織布は場所によりバラツキが大きい場合があり幅方向の均等割り5箇所での測定をおこない、全数合格の場合を合格とした。
【0053】
<実施例1>
繊度2.2dtexの中実構造のポリエチレンテレフタレートよりなる短繊維(ユニチカ株式会社製100、カット長51mm)と、4.4dtexの鞘成分がイソフタル酸を共重合成分とする低融点PET、芯成分がPETの芯鞘型複合繊維(東洋紡績株式会社製EE7、カット長51mm)を重量比で70:30になるように混合したウェッブを得たのち、オルガン社製FPD1−40Sのニードルを用いてニードル突き刺し密度(突出密度)45個/cm、針深度10mmでニードルパンチ加工を行なった。次いで、エアースルー法により150℃の雰囲気の全長7mのオーブンを5m/分の速度で通過させることにより部分的な繊維の接着を形成した。さらには、対向する加熱ローラーを用いて、ローラー温度100℃、線圧30N/m、加工速度20m/分、クリアランス1mmにて加工して、目付100g/m、厚さ1.29mmの不織布を得た。不織布の表面はニードルパンチによる突出繊維が残っている部分と熱接着複合繊維が溶融して部分的な圧着接合点が形成されている部分が点在していた。
得られた不織布構体を用いた評価結果を表1に示す。
実施例1は本発明要件を満たし、セット性、滲み出し、皺、浮き、破れ、剥離も良好な優れた成型性を示し、成型品の性能評価でも、制音性、耐磨耗性、保形性とも良好な性能を示す成型品が得られた。
【0054】
<実施例2>
繊度2.2dtexの中実構造のポリエチレンテレフタレートよりなる短繊維と、2.2dtexの鞘成分がポリエチレン、芯成分がPETの芯鞘型複合繊維(東洋紡績株式会社製FRS、カット長44mm)を重量比で80:20になるように混合したウェッブを得たのち、オルガン社製FPD1−40Sのニードルを用いてニードル突き刺し密度(突出密度)40個/cm、針深度8mmでニードルパンチングして積層不織布構造体を得た。次いで、エアースルー法によりテフロン(登録商標)コーティングしたネットに挟み込んだ状態(クリアランス設定無し)で140℃の雰囲気で全長7mのオーブンを5m/分の速度で通過させることにより部分的な繊維の接着を形成して、目付110g/m、厚さ1.55mmの不織布を得た。
得られた不織布構造体を用いた評価結果を表1に示す。
実施例2は本発明要件を満たし、セット性、滲み出し、皺、浮き、破れ、剥離も良好な優れた成型性を示し、成型品の性能評価でも、制音性、耐磨耗性、保形性とも良好な性能を示す成型品が得られた。
【0055】
<参考例>
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)を用い、紡糸温度283℃にて溶融紡糸し、紡糸速度4800m/分にて引取り、ネットコンベア上に振り落して3.3dtexの長繊維からなるウエブを得た。次いで、圧着面積率15%の円文様エンボスローラーを用いて、ローラー温度170℃、線圧30N/m、加工速度20m/分にて加工して、目付40g/mの不織布Aを得た。同様にして、1.7dtexの目付40g/mの不織布Bを得た。不織布Aおよび不織布Bを不織布製造時のネットコンベア側の面が外側になるよう積層してのち、オルガン社製FPD1−40Sのニードルを用いてニードル突き刺し密度(突出密度)49個/cm、針深度12mmでニードルパンチングして積層不織布構造体を得た。
得られた不織布構造体を用いた評価結果を表1に示す。
参考例の不織布はセット性、滲み出し、浮き、破れ、剥離は良好な成型性を示した。成型品の性能評価でも、制音性、耐磨耗性が良好な性能を示す成型品が得られた。ただし、成型型が深絞りの際には皺の発生が実施例に比べると若干起こりやすく、型添いも実用上は問題ないが若干急峻な局面の滑らかさに欠ける場合があった。
【0056】
<比較例1>
実施例2と同様の方法により混合ウェッブを得た。続いて突き刺し密度85個/cmにしてニードルパンチング不織布構造体を得た。
エアースルー処理をせずにそのまま発泡評価を実施した。繊維のすき間からウレタンの滲み出しが起こり、成型品を圧縮時に摩擦音が発生した。また、制音性にも問題があった。ウレタン含浸後の引裂強度が低く、S−バネの加工バリに強く擦るとシートの破断を生じて問題であった。また、成型型に併せてトムソン刃打ち抜きを行なった際に、繊維屑が多数発生して問題であった。補強材単独で難燃性を評価したところ5箇所のうち2箇所はFMVSS302に不合格となった。
【0057】
<比較例2>
実施例2と類似の方法により混合ウェッブを得た。ただし、ニードルパンチ法を行なわずに、140℃の雰囲気の全長7mのオーブンを5m/分の速度で通過させることにより部分的な繊維の接着を形成するようにエアースルー処理を実施して不織布構造体を得た。
得られた不織布は機械特性が劣り実用上問題であった。
発泡評価の結果は、ウレタン発泡時に滲みだしを生じており、成型品を圧縮時に摩擦音が発生した。補強材単独で難燃性を評価したところ5箇所全数がFMVSS302に不合格となった。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の発泡成型補強材用不織布は、低目付でも、滲みだし防止性、設置取扱性、加工性、及び成型品の品質にも優れる。即ち、補強材用不織布が硬過ぎず柔らかすぎず成型枠への取付けは良好で、コールド発泡に代表される低温発泡における深絞り成型においても追随性が良好で適度の通気性を有するので、成型時にシワの発生、欠肉や樹脂抜けの発生を防止でき、補強材用不織布が発泡体と強固に接合した成型品となり、擦過、屈曲、屈折音を抑制し、保形耐久性、耐摩耗性にも優れた軽量なコールド発泡成型品を製造できる、低温コールド発泡に適した発泡成型品補強材用不織布を提供できる。また、ウレタンとの複合後において適正な引裂強度と難燃性を有する軽量な発泡成型品補強材用不織布及びその製造方法の提供が可能となり、産業界への寄与が大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ウレタンの成型品の補強材として用いられる不織布であって、7g/cm荷重での厚さが0.4〜2.0mm、引張強さが50N/5cm以上、伸び率が100%以下、引裂強度が20N以上であり、少なくとも部分的に熱接着された箇所を有する短繊維不織布からなる発泡成型品補強材用不織布。
【請求項2】
目付が60〜140g/m、フラジール通気度が50〜350cc/cm/秒であり、ウレタン含浸後の引裂強度が18N以上である請求項1に記載の発泡成型品補強材用不織布。
【請求項3】
主たる構成繊維が繊度1.0〜6.7dtexのポリエステル系繊維で構成された不織布であって、低融点成分を含む複合繊維を5〜50%含有し、少なくとも部分的に圧着緻密化された構造を形成している請求項1または2に記載の発泡成型品補強材用不織布。
【請求項4】
短繊維からなるウェッブを繊維交絡を形成せしめた後に、エアースルー法により繊維間に部分的熱接着を付与し、さらに加熱ロールに接触させる請求項1〜3のいずれかに記載の発泡成型品補強材用不織布の製造方法。


【公開番号】特開2012−82548(P2012−82548A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229347(P2010−229347)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】