発泡成形体およびその製造方法
【課題】断熱性に優れた発泡成形体を提供すること。
【解決手段】所定形状の成形型にて成形され、該成形型での圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向と直交する非圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0であることを特徴とする発泡成形体。
【解決手段】所定形状の成形型にて成形され、該成形型での圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向と直交する非圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0であることを特徴とする発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体およびその製造方法に関する。更に詳しくは、魚介類や農産物等を収容し、保管あるいは輸送する際に用いられる容器、及び断熱性能に優れた建材用発泡成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン等の合成樹脂からなる発泡成形体は、断熱性を備えている上に、軽量で成型がしやすく、衝撃吸収性にも優れているという特性を有する。このため、従来から野菜、果物、肉類、魚介類等を保管あるいは輸送する際に使用する容器や建築用の断熱材として用いられている。
【0003】
図10は従来の発泡成形体を示す斜視図の一例であり、図11は従来の発泡成形体における単位体積当たりの発泡粒子の配置を説明する模式図である。また、図12は従来の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図であり、図13は図12の続きの成形工程を示す模式図である。なお、図10において、矢印x、yおよびzは発泡成形体100の幅方向、長さ方向および厚さ方向を示している。また、図10において、実線と二点鎖線とで囲まれた立方体形の領域は、発泡成形体100の単位体積を表している。図10〜図13では、発泡成形体100の厚さと、単位体積の一辺の長さとを一致させて説明する。
【0004】
例えば、平板形の発泡成形体を製造する場合は、図12に示すように、まず、成形型の雌型M111に予備発泡粒子1を充填する。なお、予備発泡粒子1は、熱可塑性樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性熱可塑性樹脂粒子とし、それを蒸気や加熱空気等により発泡させた粒子である。
次に、図13に示すように、成形型の雄型M112を雌型M111に合わせて成形型を閉じ、その後、成形型内に蒸気を供給して予備発泡粒子1を熱融着させることにより発泡成形体を成形する。なお、雌型M111と雄型M112には蒸気を通す多数の蒸気孔が設けられているが、図12と図13において蒸気孔は図示省略されている。
【0005】
このように成形された発泡成形体100は、単位体積当たりにおいて、x、y、z方向にほぼ同数の発泡粒子111が配置されている。例えばこの図場合、単位体積当たりにおいて、x方向の発泡粒子数は3個であり、yおよびz方向も同じである。
つまり、従来の発泡成形体100は、単位体積あたりに発泡粒子111が均一に配置されている。なお、ここでは平板型の発泡成形体を例示して説明したが、容器形の発泡成形体も単位体積あたりに発泡粒子111が均一に配置されている。
【0006】
このように発泡成形体を製造するに際して、予備発泡粒子1の充填性が成形型内で不均一であると、強度低下および成形体の外観を損なう。この問題を解決するために、例えば、特許文献1では、オレフィン系樹脂予備発泡粒子を加圧空気にて圧縮し、成形型内に充填する圧縮充填を行うことが開示されている。
また、予備発泡粒子の充填性に劣る箇所を少なくするために、相対する雌型と雄型間に隙間を予め準備することが知られている。一般にこの空間をクラッキングと呼び、所望する形状により調整される。このクラッキングは従来から、予備発泡粒子が充填しにくい薄肉の形状であったり、細かい部分がある形状であるものに対して、予備発泡粒子の充填性を向上させる目的で1〜5mm程度確保することが知られている。
【0007】
また、特許文献2には、クラッキングを取り、かつ成形型内に充填する予備発泡粒子の重量を予め計量し、充填することで予備発泡粒子を成形型内に均一に充填することで、発泡成形体の重量ばらつきの少ないものが得られることが開示されている。
このように型内成形においては、従来から予備発泡粒子を均一に充填でき、発泡成形体の強度向上に有効であるとされてきた。
また特許文献3には、このクラッキング間隔を調整することにより発泡成形体の外観を向上できること、つまり、成形型の一部のクラッキングを取ることで、この部分の予備発泡粒子を圧縮し、特に着色した発泡粒子の色調を濃くして発泡成形体の外観を向上できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2910800号公報
【特許文献2】特開平4−135830号公報
【特許文献3】特公昭53−30741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記従来技術は、いずれも発泡成形体の強度向上や、外観の向上を目的としたものであり、断熱性能の向上については考慮されていない。従来の平板形または容器形の発泡成形体の場合、断熱性能を高めるためには、それらの板状部分の厚さを厚くしなければならない。しかしながら、発泡成形体の厚みを厚くすることは、形状が大きくなる、あるいは内部容積が小さくなることに繋がる。形状が大きくなることは発泡成形体の保管スペースが増加することに繋がり、一方、内部容積が小さくなることは発泡成形体の収納性が低下することに繋がる為、好ましくない。
【0010】
本発明は、前記課題を鑑みてなされたものであり、形状が大きくならず、かつ内部容積が小さくなることなく断熱性に優れた発泡成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして本発明によれば、所定形状の成形型にて成形され、成形型での圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向と直交する非圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0である発泡成形体が提供される。
【0012】
また、本発明の別の観点によれば、開いた成形型の凹型内に予備発泡粒子を充填する充填工程と、
前記成形型を閉じ、成形型の凸型にて凹型内における圧縮領域内の予備発泡粒子を圧縮し、かつ成形型内の予備発泡粒子を加熱することにより所定形状に発泡成形体を成形する成形工程とを含み、
充填工程において、得ようとする発泡成形体の体積Vと、前記成形工程で圧縮により減少させる体積V1との合計体積V2と等しい容積分の予備発泡粒子を充填し、
次いで、成形工程において、発泡成形して得られる発泡成形体の体積Vと前記体積V2との比V2/Vが1.05〜3.0となるように、予備発泡粒子を圧縮する発泡成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
従来の発泡成形体は、単位体積当たりの3次元方向(xyz方向)に存在する発泡粒子の個数が同じとなるように、すなわち、単位体積当たりに均一に発泡粒子が存在するように成形されたものである。
これに対し、本発明の発泡成形体は、単位体積当たりに均一に発泡粒子が存在するように成形されたものではなく、圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向と直交する非圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0である。つまり、発泡成形体の厚みが同一であっても、厚み方向の発泡粒子数は本発明の方が従来よりも多くなっている。換言すると、厚み方向を伝わる熱の遮熱回数は本発明の方が従来よりも多くなる。
したがって、本発明の発泡成形体は、特定方向(圧縮方向)の断熱性能が高くなったものであり、このような効果は従来の発泡成形体では得られない。
また、本発明の製造方法によれば、前記比N1/N2が1.05〜3.0の発泡成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の発泡成形体の実施形態1を示す斜視図である。
【図2】実施形態1の発泡成形体における単位体積当たりの発泡粒子の配置を説明する模式図である。
【図3】実施形態1の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図である。
【図4】図3の続きの成形工程を示す模式図である。
【図5】本発明の発泡成形体の実施形態2を示す斜視図である。
【図6】実施形態2の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図である。
【図7】図6の続きの成形工程を示す模式図である。
【図8】本発明の発泡成形体におけるN1/N2の測定方法を説明する図である。
【図9】本発明の発泡成形体におけるN1/N2と熱伝導率との関係を示すグラフである。
【図10】従来の発泡成形体を示す斜視図である。
【図11】従来の発泡成形体における単位体積当たりの発泡粒子の配置を説明する模式図である。
【図12】従来の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図である。
【図13】図12の続きの成形工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の発泡成形体は、所定形状に成形され、圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向と直交する非圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0である。この比N1/N2は、好ましくは1.10〜2.5であり、より好ましくは1.20〜2.5である。
なお、比N1/N2が1.05を下回ると特定方向(圧縮方向)の断熱性能を高めることができない。つまり、従来の発泡成形体(比N1/N2=1)と同等である。
一方、比N1/N2が3.0を上回っても、比N1/N2=3.0の発泡成形体の断熱性を上回ることがなく、発泡成形体の重量が重くなり、軽量性が低下する。
本発明において、「圧縮方向」とは、発泡体が成形型内に充填され加熱下で成形される際に圧縮された方向(加圧方向)を意味する。
【0016】
本発明の発泡体は、どのような形に成形されてもよいが、特定方向(圧縮方向)の断熱性能が高くなるという前記効果を最も享受できる形状は、板状部分を有する形状であり、かつ圧縮方向が板状部分における厚み方向である場合が挙げられる。
このような板状部分を有する形状としては、少なくとも一部に板状部分を有する形状であればよい。例えば、平板形、あるいは平板状の底板部と、底板部の上面の外周部に沿って形成された外周壁部とを有する上方開口容器形が挙げられる。
平板形発泡成形体においては、その全体が1つの板状部分であり、厚み方向に圧縮されている。
容器形発泡成形体においては、底板部および外周壁部が板状部分である。この場合、底板部が厚み方向に圧縮されている。なお、底板部と共に外周壁部が厚み方向に圧縮されていることが好ましいが、その場合、特殊な成形型が必要となる。
【0017】
この発泡成形体は、開いた成形型の凹型内に予備発泡粒子を充填する充填工程と、前記成形型を閉じ、成形型の凸型にて凹型内における圧縮領域内の予備発泡粒子を圧縮し、かつ成形型内の予備発泡粒子を加熱することにより所定形状に発泡成形体を成形する成形工程とを含み、充填工程において、得ようとする発泡成形体の体積Vと、前記成形工程で圧縮により減少させる体積V1との合計体積V2と等しい容積分の予備発泡粒子を充填し、次いで、成形工程において、発泡成形して得られる発泡成形体の体積Vと前記体積V2との比V2/Vが1.05〜3.0となるように、予備発泡粒子を圧縮する製造方法によって製造することができる。
成形工程における加熱用の熱媒体としては、水蒸気が好適に使用される。
【0018】
従来、建材用に使用される断熱材は、熱伝導率を基準にして7区分に分類されている。
例えば、熱伝導率0.052〜0.051w/mkでは(A−1)、0.050〜0.046w/mkでは(A−2)、0.045〜0.041w/mkでは(B)、0.040〜0.035w/mkでは(C)、0.034〜0.029w/mkでは(D)、0.028〜0.023w/mkでは(E)、0.022w/mk以下では(E)に区分される。
さらに、省エネ基準に準拠して国内を省エネ区分地域をI〜VIに分け、前記断熱材区分から算出した断熱材厚みを使用することが要望されている。例えば、北海道(I地区)で木造軸組充填断熱工法では、C区分の断熱材を使用する場合は屋根部で265mm以上、D区分の断熱材を使用する場合は、225mm以上の断熱材厚みが要望される。このように断熱材区分によっては、断熱材厚みを薄くでき、室内を広く使用できる等の利点がある。よって、本発明の発泡成形体を使用すれば、断熱材厚みを薄くできることが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の発泡成形体およびその製造方法の実施形態を詳説する。
【0019】
(実施形態1)
図1は本発明の発泡成形体の実施形態1を示す斜視図であり、図2は実施形態1の発泡成形体における単位体積当たりの発泡粒子の配置を説明する模式図である。
実施形態1の発泡成形体は、長方平板形の発泡成形体10であって、成形時に厚さ方向に圧縮されたものである。
なお、図1において、矢印x、yおよびzは発泡成形体10の幅方向、長さ方向および厚さ方向を示している。また、図1において、実線と二点鎖線とで囲まれた立方体形の領域は、発泡成形体10の単位体積を表している。実施形態1では、発泡成形体10の厚さと、単位体積の一辺の長さとを一致させて説明する。
【0020】
この発泡成形体10は、図2に示すように、複数の発泡粒子11が隙間無く熱融着して平板形に形成されたものであり、例えば、圧縮方向(厚さ方向z)に存在する単位体積当たりの発泡粒子11の個数N1と、圧縮方向(厚さ方向z)と直交する非圧縮方向(幅方向xまたは長さ方向y)に存在する単位体積当たりの発泡粒子11の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0である。
具体的に実施形態1の場合、個数N1=5であり、個数N2=3であるため、これらの比N1/N2=1.67である。
【0021】
発泡成形体10は、発泡性樹脂粒子を予備発泡して得た予備発泡粒子を準備し、この予備発泡粒子を材料として成形型を用いて所定形状に形成する。
ここで、発泡成形体の製造方法を説明する前に、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子およびそれらの製造方法について説明する。
【0022】
<発泡性樹脂粒子>
本発明において、発泡性樹脂粒子とは、樹脂粒子に所定の割合で発泡剤を含浸させた加熱発泡性能を有する樹脂粒子を意味する。
【0023】
(1)樹脂粒子
樹脂粒子を構成する樹脂成分は加熱によって発泡可能であれば特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を使用できる。具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリ乳酸系樹脂、PET等)等を挙げることができる。これら樹脂成分は、単独で使用しても、混合して使用してもよい。なお、(メタ)アクリルはアクリル又はメタクリルを意味する。
【0024】
本発明においては、樹脂成分は、ポリスチレン系樹脂が好ましい。ポリスチレン系樹脂は、高倍の発泡成形体を得ることができるからである。
【0025】
本発明において、ポリスチレン系樹脂とはスチレン単独重合体、又はスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を意味する。また、スチレン系単量体とは、スチレン単量体、又はスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体との混合物を意味する。ここでスチレン単量体を主成分とするとは、スチレン単量体が全単量体100質量部に対して60質量部以上を占めることを意味する。共重合体はランダム共重合体や、ブロック共重合体であってもよい。
【0026】
また、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体として、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、ジビニルベンゼン及びポリエチレングリコールジメタクリレートのようなビニル系単量体を挙げることができる。本発明において、アルキルとは炭素数1〜30のアルキルを意味する。
本発明においては、より高倍の発泡成形体を得ることができるため、樹脂成分としてスチレン単独重合体が好ましい。
【0027】
ポリスチレン系樹脂は樹脂成分の発泡性確保の観点から、好ましくは18×104〜70×104、より好ましくは20×104〜50×104の重量平均分子量を有する。なお、本発明において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)で測定される。
【0028】
樹脂粒子の製造には、公知の重合法、即ち、懸濁重合法、シード重合法等を適宜使用できる。また、樹脂成分を樹脂粒子とする際、公知の製造方法及び製造設備をいずれも使用できる。例えば、まず、押出機を使用して樹脂成分を溶融混錬し、押出し、次いで水中カット、ストランドカット等により造粒することによって、樹脂粒子を製造できる。
【0029】
(2)発泡剤
発泡剤としては、公知の種々の発泡剤が使用できる。例えば、プロパン、n−ブタン(ノルマルブタン)、イソブタン、n−ペンタン(ノルマルペンタン)及びイソペンタンのような炭化水素を挙げることができる。これらの内、より大きな発泡性能を発泡性樹脂粒子に導入できる、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタンの等が好ましい。発泡剤は単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。
【0030】
発泡剤の含有率としては、発泡性樹脂粒子100質量部に対して、4〜10質量部であることが好ましい。発泡剤の含有率が4質量部未満であると、発泡性樹脂粒子の発泡性が低下することがある。発泡性が低下すると、嵩倍数の高い低嵩密度の予備発泡粒子が得られ難くなることがある。一方、10質量部を超えると、予備発泡粒子中の気泡サイズが過大となり易く、成形性の低下や、得られる発泡成形体の圧縮、曲げ等の強度特性の低下が発生することがある。より好ましい発泡剤の含有率は、5〜9質量部の範囲である。
【0031】
また、更に均一に発泡性樹脂粒子を予備発泡させ得る発泡助剤を用いてもよい。発泡助剤として、例えば、シクロヘキサン及びd−リモネンのような溶剤、ジイソブチルアジペート、グリセリン、ジアセチル化モノラウレート及びやし油のような可塑剤(高沸点溶剤)を挙げることができる。
【0032】
(3)その他の原材料
本発明においては、所望の発泡成形体を得ることができる限り、樹脂粒子は他の添加剤等を含んでいてもよい。添加剤として、具体的には、表面処理剤、難燃剤、難燃助剤、被覆剤、連鎖移動剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤、表面処理剤、赤外線遮蔽剤等が挙げられる。なお、樹脂粒子がこれらの添加剤を含む場合、樹脂粒子から得られる予備発泡粒子、発泡成形体もこれらの添加剤を含む。
【0033】
(4)発泡性樹脂粒子の製造方法
発泡性樹脂粒子は発泡剤を樹脂粒子に含浸させることによって得ることができる。
発泡性樹脂粒子の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
例えば、攪拌機付密閉耐圧容器内で樹脂粒子を水性媒体に懸濁させ、次いで発泡剤を導入し、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法等を挙げることができる。
【0034】
また、発泡剤の含浸は50〜100℃、1.0〜8.0時間行うことが好ましい。更に所望の発泡性能を得る為に、溶剤、可塑剤等の発泡助剤となるものを添加してもよい。
【0035】
<予備発泡粒子>
本発明において、予備発泡粒子とは、発泡性樹脂粒子を所定の嵩倍数まで加熱発泡させた樹脂粒子を意味する。
【0036】
予備発泡粒子は、所望の嵩倍数を有する予備発泡粒子を得ることができる限り、公知の予備発泡方法を用いて製造できる。予備発泡方法の一例を挙げれば、水蒸気等の加熱媒体を用いて発泡性樹脂粒子を加熱し、所定の嵩倍数に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得ることができる。
【0037】
本発明においては、より容易に予備発泡を行うことができるため、95〜125℃の水蒸気を用いて発泡性樹脂粒子を予備発泡させることが好ましい。また、予備発泡粒子から水分を除去するために、好ましくは室温で、12時間以上放置してもよい。
【0038】
また、予備発泡粒子の平均粒子径は6.0mm以下が好ましく、5.0mm以下がより好ましい。平均粒子径が6.0mmより大きいと、発泡成形機への予備発泡粒子の充填性が低下することがあり、得られる発泡成形体の強度が低下することがある。なお、本発明においては、予備発泡粒子は、それらの流動性確保の観点から、球状〜略球状(卵状)であることが好ましい。
【0039】
<発泡成形体の製造方法例>
本発明の発泡成形体は予備発泡粒子を熱融着させ、次いで冷却することにより得ることができる。また、本発明において、発泡成形体とは、予備発泡粒子を熱融着させることにより得られる発泡樹脂成形体を意味する。
【0040】
図3は実施形態1の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図の1例であり、図4は図3の続きの成形工程を示す模式図の1例である。
具体的に、本発明の発泡成形体の製造方法は、図3に示すように、所定の成形型を用い、開いた成形型の凹型M11内に予備発泡粒子1を充填する充填工程と、図4に示すように、成形型を閉じ、成形型の凸型M12にて凹型M11内における圧縮領域内の予備発泡粒子1を圧縮し、かつ成形型内の予備発泡粒子1を加熱することにより所定形状に発泡成形体を成形する成形工程とを含む。なお、凹型M11および凸型M12は、成形型内に充填された予備発泡粒子1に蒸気を供給するための多数の蒸気孔を有しているが、図3および図4において蒸気孔は図示省略されている。
【0041】
図3と図4を用いた説明は、図2で示した単位体積当たりの発泡成形体を成形する成形型を用いた模式的な説明である。
この場合の凹型M11は、正方形の底面M11aと、底面M11aの一辺の長さM11bの1.67倍の深さD11を有する直方体形キャビティを有している。
充填工程では、得ようとする発泡成形体の体積Vと、圧縮すべき過剰体積V1との合計V2に等しい容積分の予備発泡粒子1を充填する。具体的には、容積Aの凹型M11内に予備発泡粒子1が満充填される。図3では、1段当たり9個(=3×3)の予備発泡粒子1が5段重なるように充填されている。
ここで、前記圧縮領域とは、後述する凸型M12の押し面部M12aによって予備発泡粒子1が圧縮される領域、すなわち、凹型M11内における押し面部M12aの下方領域、この場合、凹型M11の全キャビティ領域である。
【0042】
次の成形工程では、例えば、凹型M11の底面M11aと同等のサイズの正方形押し面部M12aと、凹型M11の上方開口端に当接する正方形当接面部M12bと、押し面部M12aと当接面部M12bとを連結する連結部M12cとを有する凸型M12を用いる。この場合、押し面部M12aの押圧面から当接面部M12bの当接面までの距離L12は、押し面部M12aの押圧面から凹型M11の底面M11aまでの深さD11aが底面M11aの一辺の長さM11bと同等になるように設定されている。つまり、深さD11−距離L12≒D11a≒M11bである。
【0043】
成形工程では、図4に示すように、予備発泡粒子1が満充填された凹型M11のキャビティに凸型M12の押し面部M12aを嵌め込み、凸型M12の当接面部M12bが凹型M11の上方開口端に当接するまで押し面部M12aを圧縮方向Pへ押し込む。
これにより、成形型内の容積は得ようとする発泡成形体の体積Vまで減少すると共に、成形型内の予備発泡粒子1の群は圧縮方向Pに圧縮される。この時容積比V2/Vは1.05〜3.0であり、実施形態1の場合は1.67である。
【0044】
換言すると、凹型M11の容積は、得ようとする発泡成形体の体積Vと、成形工程で圧縮により減少させる体積V1との合計体積V2と等しい。なお、体積V1=(凸型M12の押し面部M12aが予備発泡粒子1を圧縮するために移動した距離×押し面部M12aの面積)と表現することもできる。
本発明の発泡成形体の製造方法では、前記合計体積V2と体積Vとの比V2/Vが、1.05〜3.0に設定される。
この場合、成形型の過剰容積比率は、(成形工程で圧縮により減少させる体積V1/得ようとする発泡成形体の体積V)×100の式で求めることができ、本発明において過剰容積比率は5〜200%である。
【0045】
その後、図外の蒸気供給源から蒸気が成形型内に所定時間供給され、蒸気の熱で予備発泡粒子1が熱融着し、それによって成形型内のキャビティの形状と同じ形状に成形された発泡成形体が得られる。
成形型内から取り出された単位体積当たりの発泡成形体は、図2に示すようなものとなっている。つまり、圧縮方向(厚さ方向z)に存在する単位体積当たりの発泡粒子11の個数N1と、圧縮方向(厚さ方向z)と直交する非圧縮方向(幅方向xまたは長さ方向y)に存在する単位体積当たりの発泡粒子11の個数N2との比N1/N2が1.05〜3.0(実施形態1の場合は1.67)の発泡成形体が得られる。
なお、図3と図4では成形型の模式図を示したが、図1に示した平板形発泡成形体10を成形する場合は、この発泡成形体10に対応した形状およびサイズの成形型を用いればよい。
【0046】
(実施形態2)
図5は本発明の発泡成形体の実施形態2を示す斜視図であり、図6は実施形態2の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図であり、図7は図6の続きの成形工程を示す模式図である。
実施形態2の発泡成形体20は、長方形平板状の底板部21と、底板部21の上面の外周部に沿って形成された外周壁部22とを有する上方開口容器形であって、成形時に底板部21が厚さ方向に圧縮されたものである。なお、図5において、矢印x、yおよびzは底板部21の幅方向、長さ方向および厚さ方向を示している。
【0047】
この発泡成形体20は、複数の発泡粒子が隙間無く熱融着して容器形に形成されたものであって、圧縮方向(厚さ方向z)に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向(厚さ方向z)と直交する非圧縮方向(幅方向xまたは長さ方向y)に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0である底板部21を有している。実施形態2では、発泡成形体20の底板部21の厚さと、単位体積の一辺の長さとを一致させて説明する。
【0048】
この発泡成形体20の製造方法は、基本的に実施形態1の製造方法と同様である。
まず、図6に示すように、所定の成形型を用い、開いた成形型の凹型M21内に予備発泡粒子1を充填する充填工程を行い、次いで、図7に示すように、成形型を閉じ、成形型の凸型M22にて凹型M21内における圧縮領域内の予備発泡粒子を圧縮し、かつ成形型内の予備発泡粒子1を加熱することにより所定形状に発泡成形体を成形する成形工程を行う。ここでの前記圧縮領域は、後述する凸型M22の押し面部M22aによって予備発泡粒子1が圧縮される領域、すなわち、凹型M21内における押し面部M22aの下方領域である。
なお、凹型M21および凸型M22は、成形型内に充填された予備発泡粒子1に蒸気を供給するための多数の蒸気孔を有しているが、図6および図7において蒸気孔は図示省略されている。
【0049】
成形工程では、例えば、形成しようとする容器形発泡成形体20の底板部21の露出した上面と同等のサイズの長方形押し面部M22a1および押し面部M22a1の外周部に沿って一体状に連設された枠形壁部M22a2からなる第1型と、枠形壁部M22a2をスライド可能に挿通させる嵌合穴を有しかつ凹型M21の上方開口端に当接する枠形当接面部M22bからなる第2型とを備えた凸型M22を用いる。
図7に示すように、成形型が完全に閉じた状態において、押し面部M22a1の押圧面から当接面部M22bの当接面までの距離L22は、押し面部M22a1の押圧面から凹型M21の底面M21aまでの深さD21aが凹型M21の底面M22aの一辺の長さM21bと同等になるように設定されている。つまり、凹型M21の深さD21−距離L22≒D21a≒M21bである。
【0050】
成形型が開いた状態のとき、凸型M22において、第1型の押し面部M22a1は第2型の当接面部M22bの位置まで後退している。
成形工程では、まず、第1型が後退した状態の凸型M22が下降し、当接面部M22bが凹型M21の上方開口端に当接する。その後、第1型がさらに下降して押し面部M22a1が予備発泡粒子1を圧縮方向Pへ圧縮する。
一方、凹型M21内における当接面部M22bの下方領域は非圧縮領域であり、この非圧縮領域に存在する予備発泡粒子1は圧縮されない。
実施形態2においても、実施形態1と同様に、得ようとする発泡成形体の体積Vと、前記成形工程で圧縮により減少させる体積V1との合計体積V2と等しい容積分の予備発泡粒子を充填し、次いで、成形工程において、発泡成形して得られる発泡成形体の体積Vと前記体積V2との比V2/Vが1.05〜3.0となるように、予備発泡粒子を圧縮する。
なお、体積V1=(凸型M22の押し面部M22a1が予備発泡粒子1を圧縮するために移動した距離×M22a1の押圧面の面積)と表現することもできる。
この場合、成形型の過剰容積比率は、(成形工程で圧縮により減少させる体積V1/得ようとする発泡成形体の体積V)×100の式で求めることができ、本発明において過剰容積比率は5〜200%である。
【0051】
その後、図外の蒸気供給源から蒸気が成形型内に所定時間供給され、蒸気の熱で予備発泡粒子1が熱融着し、それによって成形型内のキャビティの形状と同じ容器形状に成形された発泡成形体が得られる。
成形型内から取り出された発泡成形体の底板部は、圧縮方向(厚さ方向z)に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向(厚さ方向z)と直交する非圧縮方向(幅方向xまたは長さ方向y)に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が1.05〜3.0(実施形態2の場合は1.67)の発泡成形体が得られる。
なお、図6と図7では成形型の模式図を示したが、図5に示した容器形発泡成形体20を成形する場合は、この発泡成形体20に対応した形状およびサイズの成形型を用いればよい。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
積水化成品工業社製のポリスチレン系発泡性樹脂粒子(重量平均分子量:30万)を、積水工機製の予備発泡機を用いて発泡倍数110倍に予備発泡させ、これによって得た予備発泡粒子を30℃で24時間放置した。
次いで、得られた予備発泡粒子を材料として、積水工機製の発泡成形機を用いて、平板形の発泡成形体を成形した(図1参照)。この発泡成型機の成形型において、キャビティ寸法は長さ400mm×幅300mm×厚み10mmであり、成形体厚み方向のクラッキング量を8mmとし、過剰容積比率を80%とした。
【0053】
開いた成形型内に予備発泡粒子を充填した後、成形型を完全に閉じ、成形型内に水蒸気(0.07MPa)を30秒間供給して、予備発泡粒子を熱融着させ、それによって平板形の発泡成形体を成形した。
そして、発泡成形体に膨れ、変形が出ない温度まで冷却した後、成形型を開いて発泡成形体を取り出した。
この発泡成形体を50℃で3日間乾燥した後、発泡成形体の厚みと発泡倍数、N1/N2比、および熱伝導率を測定し、その結果を表1に示した。
【0054】
発泡成形体の発泡倍数は、発泡成形体(成形後、50℃で24時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例200×200×試料厚み(mm))の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求め、密度の逆数、すなわち式(b)/(a)を発泡倍数とした。
【0055】
(N1/N2の測定方法)
図8は本発明の発泡成形体におけるN1/N2の測定方法を説明する図であり、図9は本発明の発泡成形体におけるN1/N2と熱伝導率との関係を示すグラフである。
N1/N2の測定方法は、図8に示すように、まず、試料の厚み方向に水平な直線L1を任意に引き、試料厚み間でこの直線上に存在する発泡粒子数を測定する。この直線を任意に10本引き、平均値(N1)を求める。
一方、試料から厚み寸法を一辺とした立法体を採取する。元の厚み方向と垂直面に直線L2を引く。ただし、この直線は厚み方向と垂直な面を構成している4辺に平行とする。
任意のL2を10本取り、N1と同様にして、発泡粒子数の平均値(N2)を算出する。
【0056】
(熱伝導率の測定方法)
JIS A1412−2 熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第2部:熱流計法(HFM法)に準拠
測定装置:AUTO−Λ HC−074/200(英弘精機株式会社製)
試験片:200W×200L×試料厚み(mm)
測定方法:1温度測定(23℃) 温度差(30℃)
【0057】
(実施例2〜4および比較例1)
表1に示すように、予備発泡倍数と過剰容積比率を変更した以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。また、実施例1と同様に、発泡成形体の厚みと発泡倍数、N1/N2比、および熱伝導率を測定し、その結果を表1に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1〜4および比較例1の発泡成形体は収縮もなく良好であった。
熱伝導率に関しては、実施例1〜4では0.033〜0.035w/mkであり、比較例1では0.036w/mkであり、実施例1〜4の方が比較例1よりも熱伝導率が低く断熱性に優れていることがわかった。
【符号の説明】
【0060】
1 予備発泡粒子
10、20 発泡成形体
11 発泡粒子
21 底板部
22 外周壁部
M11、M21 凹型
M12、M22 凸型
P 圧縮方向
x 方向(幅方句)
y 方向(長さ方向)
z 方向(厚さ方向)
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体およびその製造方法に関する。更に詳しくは、魚介類や農産物等を収容し、保管あるいは輸送する際に用いられる容器、及び断熱性能に優れた建材用発泡成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン等の合成樹脂からなる発泡成形体は、断熱性を備えている上に、軽量で成型がしやすく、衝撃吸収性にも優れているという特性を有する。このため、従来から野菜、果物、肉類、魚介類等を保管あるいは輸送する際に使用する容器や建築用の断熱材として用いられている。
【0003】
図10は従来の発泡成形体を示す斜視図の一例であり、図11は従来の発泡成形体における単位体積当たりの発泡粒子の配置を説明する模式図である。また、図12は従来の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図であり、図13は図12の続きの成形工程を示す模式図である。なお、図10において、矢印x、yおよびzは発泡成形体100の幅方向、長さ方向および厚さ方向を示している。また、図10において、実線と二点鎖線とで囲まれた立方体形の領域は、発泡成形体100の単位体積を表している。図10〜図13では、発泡成形体100の厚さと、単位体積の一辺の長さとを一致させて説明する。
【0004】
例えば、平板形の発泡成形体を製造する場合は、図12に示すように、まず、成形型の雌型M111に予備発泡粒子1を充填する。なお、予備発泡粒子1は、熱可塑性樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性熱可塑性樹脂粒子とし、それを蒸気や加熱空気等により発泡させた粒子である。
次に、図13に示すように、成形型の雄型M112を雌型M111に合わせて成形型を閉じ、その後、成形型内に蒸気を供給して予備発泡粒子1を熱融着させることにより発泡成形体を成形する。なお、雌型M111と雄型M112には蒸気を通す多数の蒸気孔が設けられているが、図12と図13において蒸気孔は図示省略されている。
【0005】
このように成形された発泡成形体100は、単位体積当たりにおいて、x、y、z方向にほぼ同数の発泡粒子111が配置されている。例えばこの図場合、単位体積当たりにおいて、x方向の発泡粒子数は3個であり、yおよびz方向も同じである。
つまり、従来の発泡成形体100は、単位体積あたりに発泡粒子111が均一に配置されている。なお、ここでは平板型の発泡成形体を例示して説明したが、容器形の発泡成形体も単位体積あたりに発泡粒子111が均一に配置されている。
【0006】
このように発泡成形体を製造するに際して、予備発泡粒子1の充填性が成形型内で不均一であると、強度低下および成形体の外観を損なう。この問題を解決するために、例えば、特許文献1では、オレフィン系樹脂予備発泡粒子を加圧空気にて圧縮し、成形型内に充填する圧縮充填を行うことが開示されている。
また、予備発泡粒子の充填性に劣る箇所を少なくするために、相対する雌型と雄型間に隙間を予め準備することが知られている。一般にこの空間をクラッキングと呼び、所望する形状により調整される。このクラッキングは従来から、予備発泡粒子が充填しにくい薄肉の形状であったり、細かい部分がある形状であるものに対して、予備発泡粒子の充填性を向上させる目的で1〜5mm程度確保することが知られている。
【0007】
また、特許文献2には、クラッキングを取り、かつ成形型内に充填する予備発泡粒子の重量を予め計量し、充填することで予備発泡粒子を成形型内に均一に充填することで、発泡成形体の重量ばらつきの少ないものが得られることが開示されている。
このように型内成形においては、従来から予備発泡粒子を均一に充填でき、発泡成形体の強度向上に有効であるとされてきた。
また特許文献3には、このクラッキング間隔を調整することにより発泡成形体の外観を向上できること、つまり、成形型の一部のクラッキングを取ることで、この部分の予備発泡粒子を圧縮し、特に着色した発泡粒子の色調を濃くして発泡成形体の外観を向上できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2910800号公報
【特許文献2】特開平4−135830号公報
【特許文献3】特公昭53−30741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記従来技術は、いずれも発泡成形体の強度向上や、外観の向上を目的としたものであり、断熱性能の向上については考慮されていない。従来の平板形または容器形の発泡成形体の場合、断熱性能を高めるためには、それらの板状部分の厚さを厚くしなければならない。しかしながら、発泡成形体の厚みを厚くすることは、形状が大きくなる、あるいは内部容積が小さくなることに繋がる。形状が大きくなることは発泡成形体の保管スペースが増加することに繋がり、一方、内部容積が小さくなることは発泡成形体の収納性が低下することに繋がる為、好ましくない。
【0010】
本発明は、前記課題を鑑みてなされたものであり、形状が大きくならず、かつ内部容積が小さくなることなく断熱性に優れた発泡成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして本発明によれば、所定形状の成形型にて成形され、成形型での圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向と直交する非圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0である発泡成形体が提供される。
【0012】
また、本発明の別の観点によれば、開いた成形型の凹型内に予備発泡粒子を充填する充填工程と、
前記成形型を閉じ、成形型の凸型にて凹型内における圧縮領域内の予備発泡粒子を圧縮し、かつ成形型内の予備発泡粒子を加熱することにより所定形状に発泡成形体を成形する成形工程とを含み、
充填工程において、得ようとする発泡成形体の体積Vと、前記成形工程で圧縮により減少させる体積V1との合計体積V2と等しい容積分の予備発泡粒子を充填し、
次いで、成形工程において、発泡成形して得られる発泡成形体の体積Vと前記体積V2との比V2/Vが1.05〜3.0となるように、予備発泡粒子を圧縮する発泡成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
従来の発泡成形体は、単位体積当たりの3次元方向(xyz方向)に存在する発泡粒子の個数が同じとなるように、すなわち、単位体積当たりに均一に発泡粒子が存在するように成形されたものである。
これに対し、本発明の発泡成形体は、単位体積当たりに均一に発泡粒子が存在するように成形されたものではなく、圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向と直交する非圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0である。つまり、発泡成形体の厚みが同一であっても、厚み方向の発泡粒子数は本発明の方が従来よりも多くなっている。換言すると、厚み方向を伝わる熱の遮熱回数は本発明の方が従来よりも多くなる。
したがって、本発明の発泡成形体は、特定方向(圧縮方向)の断熱性能が高くなったものであり、このような効果は従来の発泡成形体では得られない。
また、本発明の製造方法によれば、前記比N1/N2が1.05〜3.0の発泡成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の発泡成形体の実施形態1を示す斜視図である。
【図2】実施形態1の発泡成形体における単位体積当たりの発泡粒子の配置を説明する模式図である。
【図3】実施形態1の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図である。
【図4】図3の続きの成形工程を示す模式図である。
【図5】本発明の発泡成形体の実施形態2を示す斜視図である。
【図6】実施形態2の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図である。
【図7】図6の続きの成形工程を示す模式図である。
【図8】本発明の発泡成形体におけるN1/N2の測定方法を説明する図である。
【図9】本発明の発泡成形体におけるN1/N2と熱伝導率との関係を示すグラフである。
【図10】従来の発泡成形体を示す斜視図である。
【図11】従来の発泡成形体における単位体積当たりの発泡粒子の配置を説明する模式図である。
【図12】従来の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図である。
【図13】図12の続きの成形工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の発泡成形体は、所定形状に成形され、圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向と直交する非圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0である。この比N1/N2は、好ましくは1.10〜2.5であり、より好ましくは1.20〜2.5である。
なお、比N1/N2が1.05を下回ると特定方向(圧縮方向)の断熱性能を高めることができない。つまり、従来の発泡成形体(比N1/N2=1)と同等である。
一方、比N1/N2が3.0を上回っても、比N1/N2=3.0の発泡成形体の断熱性を上回ることがなく、発泡成形体の重量が重くなり、軽量性が低下する。
本発明において、「圧縮方向」とは、発泡体が成形型内に充填され加熱下で成形される際に圧縮された方向(加圧方向)を意味する。
【0016】
本発明の発泡体は、どのような形に成形されてもよいが、特定方向(圧縮方向)の断熱性能が高くなるという前記効果を最も享受できる形状は、板状部分を有する形状であり、かつ圧縮方向が板状部分における厚み方向である場合が挙げられる。
このような板状部分を有する形状としては、少なくとも一部に板状部分を有する形状であればよい。例えば、平板形、あるいは平板状の底板部と、底板部の上面の外周部に沿って形成された外周壁部とを有する上方開口容器形が挙げられる。
平板形発泡成形体においては、その全体が1つの板状部分であり、厚み方向に圧縮されている。
容器形発泡成形体においては、底板部および外周壁部が板状部分である。この場合、底板部が厚み方向に圧縮されている。なお、底板部と共に外周壁部が厚み方向に圧縮されていることが好ましいが、その場合、特殊な成形型が必要となる。
【0017】
この発泡成形体は、開いた成形型の凹型内に予備発泡粒子を充填する充填工程と、前記成形型を閉じ、成形型の凸型にて凹型内における圧縮領域内の予備発泡粒子を圧縮し、かつ成形型内の予備発泡粒子を加熱することにより所定形状に発泡成形体を成形する成形工程とを含み、充填工程において、得ようとする発泡成形体の体積Vと、前記成形工程で圧縮により減少させる体積V1との合計体積V2と等しい容積分の予備発泡粒子を充填し、次いで、成形工程において、発泡成形して得られる発泡成形体の体積Vと前記体積V2との比V2/Vが1.05〜3.0となるように、予備発泡粒子を圧縮する製造方法によって製造することができる。
成形工程における加熱用の熱媒体としては、水蒸気が好適に使用される。
【0018】
従来、建材用に使用される断熱材は、熱伝導率を基準にして7区分に分類されている。
例えば、熱伝導率0.052〜0.051w/mkでは(A−1)、0.050〜0.046w/mkでは(A−2)、0.045〜0.041w/mkでは(B)、0.040〜0.035w/mkでは(C)、0.034〜0.029w/mkでは(D)、0.028〜0.023w/mkでは(E)、0.022w/mk以下では(E)に区分される。
さらに、省エネ基準に準拠して国内を省エネ区分地域をI〜VIに分け、前記断熱材区分から算出した断熱材厚みを使用することが要望されている。例えば、北海道(I地区)で木造軸組充填断熱工法では、C区分の断熱材を使用する場合は屋根部で265mm以上、D区分の断熱材を使用する場合は、225mm以上の断熱材厚みが要望される。このように断熱材区分によっては、断熱材厚みを薄くでき、室内を広く使用できる等の利点がある。よって、本発明の発泡成形体を使用すれば、断熱材厚みを薄くできることが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の発泡成形体およびその製造方法の実施形態を詳説する。
【0019】
(実施形態1)
図1は本発明の発泡成形体の実施形態1を示す斜視図であり、図2は実施形態1の発泡成形体における単位体積当たりの発泡粒子の配置を説明する模式図である。
実施形態1の発泡成形体は、長方平板形の発泡成形体10であって、成形時に厚さ方向に圧縮されたものである。
なお、図1において、矢印x、yおよびzは発泡成形体10の幅方向、長さ方向および厚さ方向を示している。また、図1において、実線と二点鎖線とで囲まれた立方体形の領域は、発泡成形体10の単位体積を表している。実施形態1では、発泡成形体10の厚さと、単位体積の一辺の長さとを一致させて説明する。
【0020】
この発泡成形体10は、図2に示すように、複数の発泡粒子11が隙間無く熱融着して平板形に形成されたものであり、例えば、圧縮方向(厚さ方向z)に存在する単位体積当たりの発泡粒子11の個数N1と、圧縮方向(厚さ方向z)と直交する非圧縮方向(幅方向xまたは長さ方向y)に存在する単位体積当たりの発泡粒子11の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0である。
具体的に実施形態1の場合、個数N1=5であり、個数N2=3であるため、これらの比N1/N2=1.67である。
【0021】
発泡成形体10は、発泡性樹脂粒子を予備発泡して得た予備発泡粒子を準備し、この予備発泡粒子を材料として成形型を用いて所定形状に形成する。
ここで、発泡成形体の製造方法を説明する前に、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子およびそれらの製造方法について説明する。
【0022】
<発泡性樹脂粒子>
本発明において、発泡性樹脂粒子とは、樹脂粒子に所定の割合で発泡剤を含浸させた加熱発泡性能を有する樹脂粒子を意味する。
【0023】
(1)樹脂粒子
樹脂粒子を構成する樹脂成分は加熱によって発泡可能であれば特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を使用できる。具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリ乳酸系樹脂、PET等)等を挙げることができる。これら樹脂成分は、単独で使用しても、混合して使用してもよい。なお、(メタ)アクリルはアクリル又はメタクリルを意味する。
【0024】
本発明においては、樹脂成分は、ポリスチレン系樹脂が好ましい。ポリスチレン系樹脂は、高倍の発泡成形体を得ることができるからである。
【0025】
本発明において、ポリスチレン系樹脂とはスチレン単独重合体、又はスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を意味する。また、スチレン系単量体とは、スチレン単量体、又はスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体との混合物を意味する。ここでスチレン単量体を主成分とするとは、スチレン単量体が全単量体100質量部に対して60質量部以上を占めることを意味する。共重合体はランダム共重合体や、ブロック共重合体であってもよい。
【0026】
また、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体として、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、ジビニルベンゼン及びポリエチレングリコールジメタクリレートのようなビニル系単量体を挙げることができる。本発明において、アルキルとは炭素数1〜30のアルキルを意味する。
本発明においては、より高倍の発泡成形体を得ることができるため、樹脂成分としてスチレン単独重合体が好ましい。
【0027】
ポリスチレン系樹脂は樹脂成分の発泡性確保の観点から、好ましくは18×104〜70×104、より好ましくは20×104〜50×104の重量平均分子量を有する。なお、本発明において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)で測定される。
【0028】
樹脂粒子の製造には、公知の重合法、即ち、懸濁重合法、シード重合法等を適宜使用できる。また、樹脂成分を樹脂粒子とする際、公知の製造方法及び製造設備をいずれも使用できる。例えば、まず、押出機を使用して樹脂成分を溶融混錬し、押出し、次いで水中カット、ストランドカット等により造粒することによって、樹脂粒子を製造できる。
【0029】
(2)発泡剤
発泡剤としては、公知の種々の発泡剤が使用できる。例えば、プロパン、n−ブタン(ノルマルブタン)、イソブタン、n−ペンタン(ノルマルペンタン)及びイソペンタンのような炭化水素を挙げることができる。これらの内、より大きな発泡性能を発泡性樹脂粒子に導入できる、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタンの等が好ましい。発泡剤は単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。
【0030】
発泡剤の含有率としては、発泡性樹脂粒子100質量部に対して、4〜10質量部であることが好ましい。発泡剤の含有率が4質量部未満であると、発泡性樹脂粒子の発泡性が低下することがある。発泡性が低下すると、嵩倍数の高い低嵩密度の予備発泡粒子が得られ難くなることがある。一方、10質量部を超えると、予備発泡粒子中の気泡サイズが過大となり易く、成形性の低下や、得られる発泡成形体の圧縮、曲げ等の強度特性の低下が発生することがある。より好ましい発泡剤の含有率は、5〜9質量部の範囲である。
【0031】
また、更に均一に発泡性樹脂粒子を予備発泡させ得る発泡助剤を用いてもよい。発泡助剤として、例えば、シクロヘキサン及びd−リモネンのような溶剤、ジイソブチルアジペート、グリセリン、ジアセチル化モノラウレート及びやし油のような可塑剤(高沸点溶剤)を挙げることができる。
【0032】
(3)その他の原材料
本発明においては、所望の発泡成形体を得ることができる限り、樹脂粒子は他の添加剤等を含んでいてもよい。添加剤として、具体的には、表面処理剤、難燃剤、難燃助剤、被覆剤、連鎖移動剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤、表面処理剤、赤外線遮蔽剤等が挙げられる。なお、樹脂粒子がこれらの添加剤を含む場合、樹脂粒子から得られる予備発泡粒子、発泡成形体もこれらの添加剤を含む。
【0033】
(4)発泡性樹脂粒子の製造方法
発泡性樹脂粒子は発泡剤を樹脂粒子に含浸させることによって得ることができる。
発泡性樹脂粒子の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
例えば、攪拌機付密閉耐圧容器内で樹脂粒子を水性媒体に懸濁させ、次いで発泡剤を導入し、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法等を挙げることができる。
【0034】
また、発泡剤の含浸は50〜100℃、1.0〜8.0時間行うことが好ましい。更に所望の発泡性能を得る為に、溶剤、可塑剤等の発泡助剤となるものを添加してもよい。
【0035】
<予備発泡粒子>
本発明において、予備発泡粒子とは、発泡性樹脂粒子を所定の嵩倍数まで加熱発泡させた樹脂粒子を意味する。
【0036】
予備発泡粒子は、所望の嵩倍数を有する予備発泡粒子を得ることができる限り、公知の予備発泡方法を用いて製造できる。予備発泡方法の一例を挙げれば、水蒸気等の加熱媒体を用いて発泡性樹脂粒子を加熱し、所定の嵩倍数に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得ることができる。
【0037】
本発明においては、より容易に予備発泡を行うことができるため、95〜125℃の水蒸気を用いて発泡性樹脂粒子を予備発泡させることが好ましい。また、予備発泡粒子から水分を除去するために、好ましくは室温で、12時間以上放置してもよい。
【0038】
また、予備発泡粒子の平均粒子径は6.0mm以下が好ましく、5.0mm以下がより好ましい。平均粒子径が6.0mmより大きいと、発泡成形機への予備発泡粒子の充填性が低下することがあり、得られる発泡成形体の強度が低下することがある。なお、本発明においては、予備発泡粒子は、それらの流動性確保の観点から、球状〜略球状(卵状)であることが好ましい。
【0039】
<発泡成形体の製造方法例>
本発明の発泡成形体は予備発泡粒子を熱融着させ、次いで冷却することにより得ることができる。また、本発明において、発泡成形体とは、予備発泡粒子を熱融着させることにより得られる発泡樹脂成形体を意味する。
【0040】
図3は実施形態1の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図の1例であり、図4は図3の続きの成形工程を示す模式図の1例である。
具体的に、本発明の発泡成形体の製造方法は、図3に示すように、所定の成形型を用い、開いた成形型の凹型M11内に予備発泡粒子1を充填する充填工程と、図4に示すように、成形型を閉じ、成形型の凸型M12にて凹型M11内における圧縮領域内の予備発泡粒子1を圧縮し、かつ成形型内の予備発泡粒子1を加熱することにより所定形状に発泡成形体を成形する成形工程とを含む。なお、凹型M11および凸型M12は、成形型内に充填された予備発泡粒子1に蒸気を供給するための多数の蒸気孔を有しているが、図3および図4において蒸気孔は図示省略されている。
【0041】
図3と図4を用いた説明は、図2で示した単位体積当たりの発泡成形体を成形する成形型を用いた模式的な説明である。
この場合の凹型M11は、正方形の底面M11aと、底面M11aの一辺の長さM11bの1.67倍の深さD11を有する直方体形キャビティを有している。
充填工程では、得ようとする発泡成形体の体積Vと、圧縮すべき過剰体積V1との合計V2に等しい容積分の予備発泡粒子1を充填する。具体的には、容積Aの凹型M11内に予備発泡粒子1が満充填される。図3では、1段当たり9個(=3×3)の予備発泡粒子1が5段重なるように充填されている。
ここで、前記圧縮領域とは、後述する凸型M12の押し面部M12aによって予備発泡粒子1が圧縮される領域、すなわち、凹型M11内における押し面部M12aの下方領域、この場合、凹型M11の全キャビティ領域である。
【0042】
次の成形工程では、例えば、凹型M11の底面M11aと同等のサイズの正方形押し面部M12aと、凹型M11の上方開口端に当接する正方形当接面部M12bと、押し面部M12aと当接面部M12bとを連結する連結部M12cとを有する凸型M12を用いる。この場合、押し面部M12aの押圧面から当接面部M12bの当接面までの距離L12は、押し面部M12aの押圧面から凹型M11の底面M11aまでの深さD11aが底面M11aの一辺の長さM11bと同等になるように設定されている。つまり、深さD11−距離L12≒D11a≒M11bである。
【0043】
成形工程では、図4に示すように、予備発泡粒子1が満充填された凹型M11のキャビティに凸型M12の押し面部M12aを嵌め込み、凸型M12の当接面部M12bが凹型M11の上方開口端に当接するまで押し面部M12aを圧縮方向Pへ押し込む。
これにより、成形型内の容積は得ようとする発泡成形体の体積Vまで減少すると共に、成形型内の予備発泡粒子1の群は圧縮方向Pに圧縮される。この時容積比V2/Vは1.05〜3.0であり、実施形態1の場合は1.67である。
【0044】
換言すると、凹型M11の容積は、得ようとする発泡成形体の体積Vと、成形工程で圧縮により減少させる体積V1との合計体積V2と等しい。なお、体積V1=(凸型M12の押し面部M12aが予備発泡粒子1を圧縮するために移動した距離×押し面部M12aの面積)と表現することもできる。
本発明の発泡成形体の製造方法では、前記合計体積V2と体積Vとの比V2/Vが、1.05〜3.0に設定される。
この場合、成形型の過剰容積比率は、(成形工程で圧縮により減少させる体積V1/得ようとする発泡成形体の体積V)×100の式で求めることができ、本発明において過剰容積比率は5〜200%である。
【0045】
その後、図外の蒸気供給源から蒸気が成形型内に所定時間供給され、蒸気の熱で予備発泡粒子1が熱融着し、それによって成形型内のキャビティの形状と同じ形状に成形された発泡成形体が得られる。
成形型内から取り出された単位体積当たりの発泡成形体は、図2に示すようなものとなっている。つまり、圧縮方向(厚さ方向z)に存在する単位体積当たりの発泡粒子11の個数N1と、圧縮方向(厚さ方向z)と直交する非圧縮方向(幅方向xまたは長さ方向y)に存在する単位体積当たりの発泡粒子11の個数N2との比N1/N2が1.05〜3.0(実施形態1の場合は1.67)の発泡成形体が得られる。
なお、図3と図4では成形型の模式図を示したが、図1に示した平板形発泡成形体10を成形する場合は、この発泡成形体10に対応した形状およびサイズの成形型を用いればよい。
【0046】
(実施形態2)
図5は本発明の発泡成形体の実施形態2を示す斜視図であり、図6は実施形態2の発泡成形体の製造方法における充填工程を示す模式図であり、図7は図6の続きの成形工程を示す模式図である。
実施形態2の発泡成形体20は、長方形平板状の底板部21と、底板部21の上面の外周部に沿って形成された外周壁部22とを有する上方開口容器形であって、成形時に底板部21が厚さ方向に圧縮されたものである。なお、図5において、矢印x、yおよびzは底板部21の幅方向、長さ方向および厚さ方向を示している。
【0047】
この発泡成形体20は、複数の発泡粒子が隙間無く熱融着して容器形に形成されたものであって、圧縮方向(厚さ方向z)に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向(厚さ方向z)と直交する非圧縮方向(幅方向xまたは長さ方向y)に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0である底板部21を有している。実施形態2では、発泡成形体20の底板部21の厚さと、単位体積の一辺の長さとを一致させて説明する。
【0048】
この発泡成形体20の製造方法は、基本的に実施形態1の製造方法と同様である。
まず、図6に示すように、所定の成形型を用い、開いた成形型の凹型M21内に予備発泡粒子1を充填する充填工程を行い、次いで、図7に示すように、成形型を閉じ、成形型の凸型M22にて凹型M21内における圧縮領域内の予備発泡粒子を圧縮し、かつ成形型内の予備発泡粒子1を加熱することにより所定形状に発泡成形体を成形する成形工程を行う。ここでの前記圧縮領域は、後述する凸型M22の押し面部M22aによって予備発泡粒子1が圧縮される領域、すなわち、凹型M21内における押し面部M22aの下方領域である。
なお、凹型M21および凸型M22は、成形型内に充填された予備発泡粒子1に蒸気を供給するための多数の蒸気孔を有しているが、図6および図7において蒸気孔は図示省略されている。
【0049】
成形工程では、例えば、形成しようとする容器形発泡成形体20の底板部21の露出した上面と同等のサイズの長方形押し面部M22a1および押し面部M22a1の外周部に沿って一体状に連設された枠形壁部M22a2からなる第1型と、枠形壁部M22a2をスライド可能に挿通させる嵌合穴を有しかつ凹型M21の上方開口端に当接する枠形当接面部M22bからなる第2型とを備えた凸型M22を用いる。
図7に示すように、成形型が完全に閉じた状態において、押し面部M22a1の押圧面から当接面部M22bの当接面までの距離L22は、押し面部M22a1の押圧面から凹型M21の底面M21aまでの深さD21aが凹型M21の底面M22aの一辺の長さM21bと同等になるように設定されている。つまり、凹型M21の深さD21−距離L22≒D21a≒M21bである。
【0050】
成形型が開いた状態のとき、凸型M22において、第1型の押し面部M22a1は第2型の当接面部M22bの位置まで後退している。
成形工程では、まず、第1型が後退した状態の凸型M22が下降し、当接面部M22bが凹型M21の上方開口端に当接する。その後、第1型がさらに下降して押し面部M22a1が予備発泡粒子1を圧縮方向Pへ圧縮する。
一方、凹型M21内における当接面部M22bの下方領域は非圧縮領域であり、この非圧縮領域に存在する予備発泡粒子1は圧縮されない。
実施形態2においても、実施形態1と同様に、得ようとする発泡成形体の体積Vと、前記成形工程で圧縮により減少させる体積V1との合計体積V2と等しい容積分の予備発泡粒子を充填し、次いで、成形工程において、発泡成形して得られる発泡成形体の体積Vと前記体積V2との比V2/Vが1.05〜3.0となるように、予備発泡粒子を圧縮する。
なお、体積V1=(凸型M22の押し面部M22a1が予備発泡粒子1を圧縮するために移動した距離×M22a1の押圧面の面積)と表現することもできる。
この場合、成形型の過剰容積比率は、(成形工程で圧縮により減少させる体積V1/得ようとする発泡成形体の体積V)×100の式で求めることができ、本発明において過剰容積比率は5〜200%である。
【0051】
その後、図外の蒸気供給源から蒸気が成形型内に所定時間供給され、蒸気の熱で予備発泡粒子1が熱融着し、それによって成形型内のキャビティの形状と同じ容器形状に成形された発泡成形体が得られる。
成形型内から取り出された発泡成形体の底板部は、圧縮方向(厚さ方向z)に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向(厚さ方向z)と直交する非圧縮方向(幅方向xまたは長さ方向y)に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が1.05〜3.0(実施形態2の場合は1.67)の発泡成形体が得られる。
なお、図6と図7では成形型の模式図を示したが、図5に示した容器形発泡成形体20を成形する場合は、この発泡成形体20に対応した形状およびサイズの成形型を用いればよい。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
積水化成品工業社製のポリスチレン系発泡性樹脂粒子(重量平均分子量:30万)を、積水工機製の予備発泡機を用いて発泡倍数110倍に予備発泡させ、これによって得た予備発泡粒子を30℃で24時間放置した。
次いで、得られた予備発泡粒子を材料として、積水工機製の発泡成形機を用いて、平板形の発泡成形体を成形した(図1参照)。この発泡成型機の成形型において、キャビティ寸法は長さ400mm×幅300mm×厚み10mmであり、成形体厚み方向のクラッキング量を8mmとし、過剰容積比率を80%とした。
【0053】
開いた成形型内に予備発泡粒子を充填した後、成形型を完全に閉じ、成形型内に水蒸気(0.07MPa)を30秒間供給して、予備発泡粒子を熱融着させ、それによって平板形の発泡成形体を成形した。
そして、発泡成形体に膨れ、変形が出ない温度まで冷却した後、成形型を開いて発泡成形体を取り出した。
この発泡成形体を50℃で3日間乾燥した後、発泡成形体の厚みと発泡倍数、N1/N2比、および熱伝導率を測定し、その結果を表1に示した。
【0054】
発泡成形体の発泡倍数は、発泡成形体(成形後、50℃で24時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例200×200×試料厚み(mm))の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求め、密度の逆数、すなわち式(b)/(a)を発泡倍数とした。
【0055】
(N1/N2の測定方法)
図8は本発明の発泡成形体におけるN1/N2の測定方法を説明する図であり、図9は本発明の発泡成形体におけるN1/N2と熱伝導率との関係を示すグラフである。
N1/N2の測定方法は、図8に示すように、まず、試料の厚み方向に水平な直線L1を任意に引き、試料厚み間でこの直線上に存在する発泡粒子数を測定する。この直線を任意に10本引き、平均値(N1)を求める。
一方、試料から厚み寸法を一辺とした立法体を採取する。元の厚み方向と垂直面に直線L2を引く。ただし、この直線は厚み方向と垂直な面を構成している4辺に平行とする。
任意のL2を10本取り、N1と同様にして、発泡粒子数の平均値(N2)を算出する。
【0056】
(熱伝導率の測定方法)
JIS A1412−2 熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第2部:熱流計法(HFM法)に準拠
測定装置:AUTO−Λ HC−074/200(英弘精機株式会社製)
試験片:200W×200L×試料厚み(mm)
測定方法:1温度測定(23℃) 温度差(30℃)
【0057】
(実施例2〜4および比較例1)
表1に示すように、予備発泡倍数と過剰容積比率を変更した以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。また、実施例1と同様に、発泡成形体の厚みと発泡倍数、N1/N2比、および熱伝導率を測定し、その結果を表1に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1〜4および比較例1の発泡成形体は収縮もなく良好であった。
熱伝導率に関しては、実施例1〜4では0.033〜0.035w/mkであり、比較例1では0.036w/mkであり、実施例1〜4の方が比較例1よりも熱伝導率が低く断熱性に優れていることがわかった。
【符号の説明】
【0060】
1 予備発泡粒子
10、20 発泡成形体
11 発泡粒子
21 底板部
22 外周壁部
M11、M21 凹型
M12、M22 凸型
P 圧縮方向
x 方向(幅方句)
y 方向(長さ方向)
z 方向(厚さ方向)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の成形型にて成形され、該成形型での圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向と直交する非圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0であることを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
前記所定形状が板状部分を有する形状であり、成形型での圧縮方向が前記板状部分における厚み方向である請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項3】
前記所定形状が平板形である請求項2に記載の発泡成形体。
【請求項4】
前記所定形状が、平板状の底板部と、底板部の上面の外周部に沿って形成された外周壁部とを有する上方開口容器形である請求項2に記載の発泡成形体。
【請求項5】
前記底板部の発泡粒子が、厚み方向に圧縮されている請求項4に記載の発泡成形体。
【請求項6】
前記発泡粒子が、樹脂成分としてポリスチレン系樹脂を含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の発泡成形体。
【請求項7】
開いた成形型の凹型内に予備発泡粒子を充填する充填工程と、
前記成形型を閉じ、成形型の凸型にて凹型内における圧縮領域内の予備発泡粒子を圧縮し、かつ成形型内の予備発泡粒子を加熱することにより所定形状に発泡成形体を成形する成形工程とを含み、
充填工程において、得ようとする発泡成形体の体積Vと、前記成形工程で圧縮により減少させる体積V1との合計体積V2に等しい容積分の予備発泡粒子を充填し、
次いで、成形工程において、発泡成形して得られる発泡成形体の体積Vと前記体積V2との比V2/Vが1.05〜3.0となるように、予備発泡粒子を圧縮することを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項1】
所定形状の成形型にて成形され、該成形型での圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N1と、圧縮方向と直交する非圧縮方向に存在する単位体積当たりの発泡粒子の個数N2との比N1/N2が、1.05〜3.0であることを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
前記所定形状が板状部分を有する形状であり、成形型での圧縮方向が前記板状部分における厚み方向である請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項3】
前記所定形状が平板形である請求項2に記載の発泡成形体。
【請求項4】
前記所定形状が、平板状の底板部と、底板部の上面の外周部に沿って形成された外周壁部とを有する上方開口容器形である請求項2に記載の発泡成形体。
【請求項5】
前記底板部の発泡粒子が、厚み方向に圧縮されている請求項4に記載の発泡成形体。
【請求項6】
前記発泡粒子が、樹脂成分としてポリスチレン系樹脂を含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の発泡成形体。
【請求項7】
開いた成形型の凹型内に予備発泡粒子を充填する充填工程と、
前記成形型を閉じ、成形型の凸型にて凹型内における圧縮領域内の予備発泡粒子を圧縮し、かつ成形型内の予備発泡粒子を加熱することにより所定形状に発泡成形体を成形する成形工程とを含み、
充填工程において、得ようとする発泡成形体の体積Vと、前記成形工程で圧縮により減少させる体積V1との合計体積V2に等しい容積分の予備発泡粒子を充填し、
次いで、成形工程において、発泡成形して得られる発泡成形体の体積Vと前記体積V2との比V2/Vが1.05〜3.0となるように、予備発泡粒子を圧縮することを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−201820(P2012−201820A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68419(P2011−68419)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
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