説明

発泡樹脂製容器の製造方法及び装置と発泡樹脂製容器

【課題】強度必要部分を他部分よりも低倍発泡にして一体成形した発泡樹脂製容器を、能率よくかつ全体としてバランスよく成形できるようにする。
【解決手段】発泡倍率を異にして成形できる2種の発泡性樹脂粒子を用い、成形金型のキャビティに充填する際、低倍発泡側の発泡性樹脂粒子a1をキャビティ25内の強度必要部分に相当する所定部分に吸引保持させ、次に、高倍発泡側の発泡性樹脂粒子a2を他部分に充填し、この状態で蒸気を吹き込んで加熱発泡成形し、強度必要部分の肉厚全体が他部分より低倍発泡の容器を一体に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種農産物の輸送、保管等、特に保冷状態での輸送に好適に使用される発泡樹脂製容器の製造方法及び装置と、これにより製造された発泡樹脂製容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、青果物その他の各種の農産物、特には保冷を要する農産物の輸送、保管等に使用する容器として、上方に開口した平面矩形の容器本体と、その開口端部に嵌着される蓋体とからなる発泡スチロール等の発泡樹脂製の容器が使用されている。
【0003】
かかる容器の農産物等を収納した状態での輸送、保管等の取り扱いにおいて、多段に段積みする場合があること、また農産物等の出し入れの際に、側壁を外方へ引っ張るような力を加える場合もあることから、側壁については、段積み荷重に耐える強度や引っ張り強度を保有することが求められ、さらに被包装物を収容した状態での取扱において底抜けの虞のない底部強度を保有することが求められる。
【0004】
一方、農産物等を収納した状態での容器の段積み作業や積載作業等の取り扱いを容易にすること、資材節約によるコストダウンの観点から、肉厚を薄くし軽量化を図ることが求められている。しかし、容器側壁等の肉厚を薄くすると必要な強度を得られないことになる。そのため、容器強度の保持と軽量化の両立を図るのが難しく、その解決が要望されている。
【0005】
本発明者らは、側壁強度や底部強度を低下させずに資材節約や軽量化を図るために、例えば、側壁については、コーナー近傍を除く中央部領域の内面を、上下方向の凹条と各凹条間の凸条とによる波形凹凸状に形成することにより、所定の強度を保持しながら凹条により部分的に薄肉にすること、また底部については、上下面の少なくとも一方に、リブ状凸部により画した平面六角形の多数の凹部を設けたハニカム状にして、所定の強度を保持しながら材料の節約を図ることを提案している。
【0006】
前記提案の波形凹凸状の側壁の場合、容器上部から加圧しての圧縮試験、及び開口端部の拡開方向への引っ張り試験の結果、圧縮荷重や引っ張り荷重がコーナー部に分散されることで、凹凸のない通常の側壁と遜色のない強度あるいはそれ以上の強度を有するものであったが、さらに大きな荷重をかけると、最終的にコーナー部又はコーナー近傍で割れ等の破壊が生じた。また、ハニカム状を有する底部は、底部押圧試験の結果、その荷重がコーナー部に分散されることで、通常の底部と遜色のない強度あるいはそれ以上の強度を有するものであったが、さらに大きな荷重をかけると、最終的にやはりコーナー部又はコーナー近傍で破壊が生じた。
【0007】
すなわち、発泡樹脂製容器においては、側壁や底部について前記の凹凸波形状やハニカム状による強度保持構造を採用する場合にも、容器使用上、例えば段積み使用や収納物の取り出し等の際に最も荷重がかかることになるコーナー部やその近傍の強度を高くすることが望まれる。
【0008】
そこで、容器使用上における強度必要部分を低倍発泡、荷重のかからない他部分を高倍発泡にして一体成形する異倍率発泡成形の手法を利用して、容器使用上において最も力がかかるコーナー部やその近傍等の強度必要部分を、容器の容量等に影響を与えないように肉厚や形状を変更せずに補強することとしたものである。
【0009】
従来より、異倍率発泡成形により発泡脂成形品の一部を補強するものとして、例えば、特許文献1や特許文献2が知られている。
【0010】
特許文献1では、成形金型のキャビティ内を、成形品の一部分を遮断部材により遮断しておいて、該一部分に第1の原料(発泡性樹脂粒子)を充填して加熱を行い、加熱融着が完了するまでに遮断部材による遮断状態を解除して、残りの部分に第2の原料(発泡性樹脂粒子)を充填して加熱発泡成形するもので、一部分を遮断するために成形金型の一部を可動式に構成する必要がある上、加熱を2段階に行う必要もあり、構造が複雑であり、複数個取りも困難になり、生産能率の点でも問題がある。
【0011】
また、特許文献2の場合は、原料として、発泡倍率を異にして成形できる2種の発泡性ビーズを用い、発泡成形品の一部を成形する1種の発泡性ビーズを、発泡成形金型の所望の部位に付着させた後、他部分を成形する異種の発泡性ビーズを充填して加熱発泡成形するものであるが、1種の発泡性ビーズは、一定量だけをキャビティ内に注入するものであり、そのためこの発泡性ビーズの付着部分が、四隅のコーナー部等のように、複数部分である場合に、各部分における発泡性ビーズの付着量を同じにするのが難しく、例えば四隅のコーナー部毎に付着量や付着形態に差が生じ、この状態のままで成形されることで、発泡成形品の重量バランスが悪くなるおそれがある。また、吸引付着部に付着できない発泡性ビーズが底部に落下して、次に充填される異種の発泡性ビーズと混ざり合うことにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭60−40372号公報
【特許文献2】特開平7−308930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなしたもので、特に農産物用等に使用する発泡樹脂製容器において、容器使用上の強度必要部分、例えば段積みの際や被包装物の取り出し等の際に最も力がかかることになるコーナー部等の強度必要部分を他部分よりも低倍発泡にして一体成形して所定の強度を保持するものとした発泡樹脂製容器を、能率よくかつ全体としてバランスよく成形することができる製造方法と製造装置を提供するものであり、さらにはこれにより得られる発泡樹脂製容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発泡樹脂製容器の製造方法は、容器内面を成形する雄型と、容器外面を成形する雌型とよりなる成形金型のキャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填し、容器使用上の強度必要部分を他部分より低倍発泡にして成形する発泡樹脂製容器の製造方法において、雄型と雌型の少なくとも一方に型内から成形面に貫通する多数の連通孔を設けるとともに、前記強度必要部分を成形する所定成形部位に、前記連通孔を介して原料の発泡性樹脂粒子を吸引保持するための部分吸引手段を設けておき、発泡倍率を異にして成形できる少なくとも2種の発泡性樹脂粒子を用い、充填工程において、先ず、前記強度必要部分に使用する低倍発泡側の発泡性樹脂粒子を、前記所定成形部位の部分吸引手段によりキャビティ内の前記強度必要部分に相当する所定部分に吸引保持させ、次に、他部分に使用する高倍発泡側の発泡性樹脂粒子をキャビティ内の他部分に充填するようにして、キャビティ内に少なくとも2種の発泡性樹脂粒子を充填し、この状態で蒸気を吹き込んで加熱発泡成形し、前記強度必要部分の肉厚全体が他部分より低倍発泡の容器を一体に成形することを特徴とする。
【0015】
これにより、容器使用上の強度必要部分、例えばコーナー部等の強度必要部分の肉厚全体が、他部分より低倍発泡にして成形され、他部分より強度が高くなっている発泡樹脂製容器を1回の加熱発泡成形により能率よく製造できる。
【0016】
前記において、低倍発泡側の発泡性樹脂粒子を前キャビティ内の前記所定部分に吸引保持させた後、吸引保持状態を維持したまま高倍発泡側の発泡性樹脂粒子を充填するものとするのが好ましい。
【0017】
前記の発泡樹脂製容器の製造方法において、前記低倍発泡側の発泡性樹脂粒子をキャビティ内の所定部分に吸引保持させる際、該発泡性樹脂粒子を、キャビティ内全体に一旦充填し、その後、前記所定成形部位の部分吸引手段による吸引を続けながら他部分に充填された余剰の発泡性樹脂粒子を排出することにより、前記所定部分に吸引保持させるものとするのが好ましい。これにより、複数の強度必要部分に相当する所定部分がキャビティ内に設定されている場合に、各所定部分のそれぞれに確実にかつ略同量の発泡性樹脂粒子を集合状態にして保持させることができ、複数の強度必要部分をバランスよく成形できることになる。
【0018】
前記の発泡樹脂製容器の製造方法において、他の成形部位に有する連通孔からキャビティ内にエアを吹き込みながら、充填口又は充填口とは別に設けた排出口から吸引して排出するものとする。これにより、他部分に充填された余剰の発泡性樹脂粒子を確実に排出できる。また、キャビティ内の前記所定部分と他部分の境界部分で別回路のエアを吹き込み、余剰の発泡性樹脂粒子を吹き飛ばすようにして排出する。これにより、前記低倍発泡側の発泡性樹脂粒子を各所定成形部位に設けた部分吸引手段により、それぞれほぼ同量の発泡性樹脂粒子を吸引保持できることになり、前記キャビティ内の各所定部分に発泡性樹脂粒子を確実に且つ吸引保持させることができる。このため、重量バランスのよい発泡樹脂製容器を得ることができる。
【0019】
また、前記強度必要部分が平面矩形の容器のコーナー部であり、低倍発泡側の発泡性樹脂粒子をキャビティ内の容器コーナー部に相当する所定部分に吸引保持させた後、高倍発泡側の発泡性樹脂粒子をキャビティ内のコーナー部に相当する部分以外の他部分に吸引保持させるようにして充填して、加熱発泡成形するものとする。これにより、容器使用上において段積みの際や被包装物の取り出し等の際に最も力が掛かることになるコーナー部を補強した発泡樹脂製容器を製造できる。
【0020】
前記の発泡樹脂製容器の製造方法において、製造対象の発泡樹脂製容器に異倍率の複数の強度必要部分が設定されている場合に、異倍率の強度必要部分を成形する所定成形部位毎に、順次、それぞれの部分吸引手段により、各強度必要部分を成形する発泡性樹脂粒子をキャビティ内の各強度必要部分に相当する所定部分に吸引保持させ、その後、他部分の発泡性樹脂粒子を充填して、加熱発泡成形することができる。これにより、複数の強度必要部分が、それぞれ他部分より低倍で、かつ相互に異倍率にして成形できる。
【0021】
また、本発明は、容器内面を成形する雄型と、容器外面を成形する雌型とよりなる成形金型のキャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填し、容器使用上の強度必要部分を他部分より低倍発泡にして成形する発泡樹脂製容器の製造装置において、前記雄型と雌型は、それぞれ型内空間から成形面に貫通する多数の連通孔を有するとともに、少なくとも一方の前記強度必要部分を成形する所定成形部位に、前記連通孔を介して発泡性樹脂粒子を吸引保持する部分吸引手段が、他の成形部位の吸排気手段とは別回路で吸引可能に設けられ、また、雄型と雌型の一方又は他方に、発泡倍率を異にして成形できる少なくとも2種の発泡性樹脂粒子をそれぞれキャビティ内に注入し充填するための充填口を備えてなることを特徴とする。
【0022】
前記の製造装置において、前記雄型と雌型の少なくとも一方の前記所定成形部位の部分吸引手段として、型内空間における前記所定成形部位の連通孔を含む領域が、他部分と仕切り壁により隔設された吸引室として形成され、該吸引室に、他の成形部位の吸排気手段とは別の吸引ラインを構成する吸引管が連設されてなるものとすることができる。
【0023】
前記の製造装置において、成形金型を構成する雄型に、前記所定成形部位の部分吸引手段が設けられてなるものとすることができる。
【0024】
また、本発明は、前記各発明のいずれかの製造方法により、成形金型のキャビティ内に、発泡倍率を異にして成形できる少なくとも2種の発泡性樹脂粒子を充填して一体に加熱発泡成形してなる発泡樹脂製容器であって、容器使用上の強度必要部分の肉厚全体が他部分より低倍発泡にして成形されてなることを特徴とする容器である。
【0025】
前記の発泡樹脂製容器において、容器における強度必要部分が、平面矩形の容器本体のコーナー部であり、該コーナー近傍領域が他部分に比して低倍の発泡樹脂により一体に形成されてなるものとすることができる。また、他部分より低倍でかつ異倍率の複数の強度必要部分が設定されてなるものとすることもできる。
【発明の効果】
【0026】
上記したように本発明の発泡樹脂製容器の製造方法及び製造装置によれば、特に容器使用上の強度必要部分、例えばコーナー部の肉厚全体を、他部分よりも低倍発泡にして成形することが問題なく容易に可能になり、ひいては厚みを大きくしたり容量を変更することなく、段積み使用にも耐える耐圧強度を持った発泡樹脂製容器を得ることできる。
【0027】
特に、強度必要部分を成形する低倍発泡側の発泡性樹脂粒子をキャビティ内の所定部分に吸引保持させる際、該発泡性樹脂粒子をキャビティ内全体に一旦充填して、前記所定成形部位の部分吸引手段により吸引保持した状態で、他部分の余剰の発泡性樹脂粒子を積極的に排出することとした場合、キャビティ内の強度必要部分に相当する各所定部分にはそれぞれほぼ同じ所定量の発泡性樹脂粒子を確実に吸引保持させることができ、各所定部分毎の保持量に大きな差が生じさせることなく保持させることができる。ひいては加熱発泡成形された容器における低倍発泡のコーナー部等の強度必要部分がほぼ均等化され、全体として安定した強度を保有し、かつ重量バランスのよい容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の製造方法に使用する成形金型を含む製造装置の概略を示す型開き状態の断面図である。
【図2】同上の型閉じ状態の断面図である。
【図3】同上のL1−L1線の断面図である。
【図4】コーナー部領域を成形する所定部分に発泡性樹脂粒子を吸引保持させた状態の一部の拡大断面図である。
【図5】同上のL2−L2線の断面図である。
【図6】本発明の製造方法における雌型と雄型の型閉じ時(a)と、第1の発泡性樹脂粒子の充填時(b)と、余剰分の排出時(c)と、第2の発泡性樹脂粒子の充填時(d)と、蒸気供給による加熱成形時(e)と、離型時(f)の各工程の略示断面説明図である。
【図7】本発明により製造する容器の基本形を示す斜視図である。
【図8】本発明により製造された発泡樹脂製容器の実用例を示す容器本体と蓋体の分離した斜視図である。
【図9】同上の容器本体の平面図である。
【図10】同上の容器本体と蓋体の半部縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0030】
図1〜図6は、本発明の発泡樹脂製容器の製造方法を実施するための製造装置と、これによる製造工程の概略を示している。なお、この実施例では、例えば蓋体と組み合わせて容器本体として使用、あるいは蓋なしで単独で使用される容器で、底部51と四方の側壁52とからなる図7に示す平面矩形の箱状の容器50を、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性の発泡性樹脂粒子を素材にして発泡成形して製造する場合を例にして説明している。
【0031】
本発明では、主として同系樹脂で発泡倍率を異にして成形できる少なくとも2種の発泡性樹脂粒子、例えば低倍発泡の第1の発泡性樹脂粒子a1と、高倍発泡側の第2の発泡性樹脂粒子a2との2種の発泡性樹脂粒子を使用して、容器使用上の強度必要部分、例えば容器50のコーナー部53を含むコーナー近傍領域54の肉厚全体を、例えば側壁52の中央部領域52aや底部51の内方部領域等の他部分より低倍発泡となるように成形するものである。前記の低倍発泡にするコーナー近傍領域54としては、コーナー部53だけの場合もあるが、実施上は、図のようにコーナー部53に加えて、側壁52の中央部領域52aを除く側壁側端部、及び底部51の四隅部の領域を含むものとするのが、耐圧強度や引っ張り強度の保持する上でより好ましい。
【0032】
図1は成形金型の雌型10と雄型30とを開いた状態を示し、図2は前記雌型10と雄型30の型閉じ状態を示している。
【0033】
前記雌型10は、成形する容器50の外面形状に対応合致した形状を有する凹型部11を有し、該凹型部11には、型内空間(チャンバー)10aから成形面、すなわち図2のように雌型10と雄型30を型閉じすることにより形成されるキャビティ25側の型面に貫通する連通孔13が、所定間隔でほぼ全面にわたって多数貫設されている。この連通孔13としては、原料の発泡性樹脂粒子が入り込まない程度の径小の細孔あるいは細幅のスリットが所定の間隔で設けられてなる。この雌型10には、それぞれ型内に開閉バルブを介して連通する蒸気供給管14、ドレーン管15、原料充填時や加熱蒸気流入時のエアや蒸気を吸引又は排気する吸排気手段としての管16が配設され、さらに前記管16とは別に排気弁17が配設されている。図示は省略するが、離型用のエア供給管及び冷却水の供給管も配設される。前記吸排気手段としては、前記管16を省略して、前記ドレーン管15を配管途中で分岐構成し、前記吸排気手段を兼ねる構成とすることもできる。さらに前記の吸排気手段を省略することもできる。
【0034】
また、前記雌型10には、発泡樹脂の原料である発泡性樹脂粒子を供給しキャビティ25に充填するための充填口18が設けられる。本発明の場合、発泡倍率を異にして成形できる少なくとも2種、例えば低倍発泡側の第1の発泡性樹脂粒子a1と、高倍発泡側の第2の発泡性樹脂粒子a2との2種の発泡性樹脂粒子を原料に使用することから、前記充填口18には、各原料の供給ホッパー20a,20bからの供給路21a,21bが切替接続部22及びフィーダー等の充填手段(図示省略)を介して連結されており、前記切替接続部22の切替により、エア等により適宜給送される前記発泡性樹脂粒子a1,a2のいずれかを選択的に前記充填口18より適宜充填できるように設けられている。19はキャビティ25内全体に充填した低倍発泡側の第1の発泡性樹脂粒子a1の余剰分を排出するための回収用排出管であり、ポンプ等の吸引移送手段(図示省略)と接続されており、該吸引移送手段の作動により、適宜余剰の発泡性樹脂粒子を排出し回収できるように設けられている。
【0035】
前記充填口18及び回収用排出管19は、成形対象の容器50の2種の発泡性樹脂粒子a1,a2によるそれぞれ成形部分のうち、強度必要部分以外の体積の大きい他部分を成形する成形部位に開口して設けられており、図示は省略しているが、キャビティ25側の型面における開口部は開閉自在に設けられている。
【0036】
一方、雄型30には、成形する容器50の内面形状及び側壁上端面形状に対応合致した形状の凸型部31及び開口端用型部32を有し、これらの凸型部31及び開口端用型部32には、雌型10と同様に、型内空間(チャンバー)30aから成形面、つまりキャビティ25側の型面に貫通する連通孔33が、所定間隔でほぼ全面にわたって多数貫設されている。
【0037】
さらに、この雄型30には、それぞれ開閉バルブを介して型内に連通する蒸気供給管34、ドレーン管35と、原料充填時や加熱蒸気流入時のエアや蒸気を吸引又は排気する吸排気手段としての管36が配設され、さらに前記管36とは別に排気弁37が配設されている。図示は省略するが、離型用のエア供給管及び冷却水の供給管も配設される。前記吸排気手段としては、前記管36を省略して、前記ドレーン管35を配管途中で分岐構成し、前記吸排気手段を兼ねる構成とすることもできる。また前記の吸排気手段を省略することもできる。
【0038】
そして、前記雄型30における成型対象の容器50の強度必要部分に相当する所定成型部位、例えばコーナー近傍領域54を成形する所定成形部位38には、低倍発泡側の第1の発泡性樹脂粒子a1を、前記連通孔33を介してキャビティ25内のコーナー近傍領域54に相当する所定部分に吸引保持するための部分吸引手段が、他の成形部位における前記吸排気手段としての管36とは別回路により吸引可能に設けられている。この部分吸引手段により、充填口18から流入する空気の流れを作り、前記キャビティ25内の所定部分にブロック状に安定的に発泡性樹脂粒子a1を保持させることができるように設けておくのが好ましい。
【0039】
前記所定成形部位38の部分吸引手段としては、前記吸排気手段としての管36とは別に吸引可能な吸引管41を備えている。具体的には、前記雄型30の型内空間30aにおいて、前記所定成形部位38の連通孔33を含む領域部分が、他の成形部位39の領域と仕切り壁42により隔設された吸引室43として形成され、該吸引室43に他の型内空間30aに連設された吸排気手段としての管36とは別回路の吸引ラインを構成する吸引管41が連結されており、これにより、前記所定成形部位38でのみ吸引できるようになっている。
【0040】
この吸引管41による吸引ラインは、前記吸排気手段としての管36の吸引排気のためのラインとは別に、各別に駆動制御される吸引用ポンプ(真空ポンプや減圧ポンプ等、図示せず)に接続され、バルブの開閉を制御することにより、それぞれ適宜吸引作用を行うように設定されている。
【0041】
また、図3のように成形対象の容器50の4隅の各コーナー近傍領域54を低倍発泡にして成形する場合、各コーナー近傍領域54に相当する所定成形部位38毎に、それぞれ別に制御される吸引管41が設けられている。各吸引管41を一つの吸引用ポンプに接続して同じ吸引力で吸引するように設けることもできるが、前記雌型10と雄型30とを、図のように横向きに配置して実施することが多く、この場合、キャビティ25に充填される低倍発泡側の第1の泡性樹脂粒子a1が下部側に降下して下部側ほど多くの粒子が集まることになるので、上下で吸引力に差をつけて、吸引による発泡性樹脂粒子の保持量を均等化させるのが望ましい。
【0042】
さらに、前記雄型30の開口端用型部32には、前記他の成形部位39における前記所定成形部位38との境界部近傍の個所に、キャビティ25内の前記境界部に沿う奥行方向、すなわち成形される容器側壁の高さ方向にエアを吹き込むエア吹き込み管45が設けられている。このエア吹き込み管45は、キャビティ25内に一旦充填された第1の発泡性樹脂粒子a1の余剰分を排出する際、離型用のエア供給管47からのエア供給とは別に、該境界部に沿ってエアを吹き込むことにより、キャビティ25内のコーナー近傍領域54に相当する所定部分以外の他部分の発泡性樹脂粒子を吹き飛ばすようにして確実に排出できるようにするためのもので、これにより、キャビティ25内の所定部分における発泡性樹脂粒子の吸引保持の形態(ブロック状の集合形態)及び保持量を均一化できるようになっている(図4及び図5)。
【0043】
なお、図示してはいないが、前記雌型10において、上述した雄型30と同様に、例えば強度必要部分としてのコーナー近傍領域54を成形する所定成形部位に、吸引管及び吸引室等による部分吸引手段を設けて、雌型10に設けられている吸排気手段として管16とは別回路の吸引ラインにより吸引可能に構成して実施することができる、この場合、雄型30の部分吸引手段と併用することも、また、雌型10のみに前記部分吸引手段を設けて実施することもできる。
【0044】
次に、上記の雌型10と雄型30とよりなる成形金型を備える製造装置による本発明の方法について、図6の各工程の略示図に基づいて説明する。この発泡成形では、原料として、主として同系樹脂で発泡倍率を異にして成形できる2種の発泡性樹脂粒子a1,a2を使用する。
【0045】
先ず、例えば雄型30を雌型10に対し対向方向に移動させて型閉じする。このとき、雌型10のドレーン管15を開き、また雄型30の吸排気手段としての管36及び/又は雌型10の吸排気手段としての管16を開いた状態にして内部空気を逃がしながら(この際、雄雌両型間からも内部空気を逃がす)行い、型閉じが完了した状態において、雌型10及び雄型30のドレーン管15、35を閉じる〔図6(a)〕。
【0046】
そして、前記の型閉じ状態において、雌型10及び雄型30の排気弁17、37を開き、さらに少なくとも雄型30の吸排気手段としての管36の弁を開いた状態で、雌型10に配置された充填口18から、コーナー近傍領域54を成形する低倍発泡側の第1の発泡性樹脂粒子a1を、供給ホッパー20aからエアを利用して給送しキャビティ25内全体に充填する。このとき、図6(b)のように、雄型30に配置された吸排気手段としての管36による吸排気作用とは別に、前記所定成形部位38の部分吸引手段としての吸引管41を吸引動作させて吸引室43を介して所定成形部位38で吸引を行う。
【0047】
このように、キャビティ25内全体に第1の発泡性樹脂粒子a1を一旦充填した後、図6(c)のように、前記所定成形部位38の吸引管41による吸引を連続させたまま、雌型10及び雄型30の管16、36を閉じ、この状態で前記雄型30の離型用エアの供給管47の弁(必要な場合、雌型の離型用エアの供給管の弁も)を開いて、雄型30の型内から前記所定成形部位38以外の他部分の連通孔33を通じてキャビティ25内にエアを吹き込むとともに、充填口18とは別に設けられている回収用排出口19のエア吸引による移送手段を作動させて、前記キャビティ25内の所定成形部位38の部分吸引手段(吸引管41)により吸引されているもの以外の他部分の余剰の発泡性樹脂粒子a1を排出する。これにより、前記所定部分には、それぞれ所定量の発泡性樹脂粒子a1を吸引保持させることができる。特に、キャビティ25内に複数の強度必要部分に相当する所定部分が設定されている場合、各所定部分のそれぞれに確実にかつ略同量の発泡性樹脂粒子を集合状態にして保持させることができる。
【0048】
このとき、前記雄型30の開口端用型部32に設けた別回路のエア吹き込み管45から、他の成形部位39における前記所定成形部位38との境界部に沿ってエアを吹き込み、キャビティ25内のコーナー近傍領域54に相当する所定部分以外の他部分の発泡性樹脂粒子a1を吹き飛ばすようにして排出し、発泡性樹脂粒子a1を前記所定部分のみに確実に且つ保持形態及び保持量に大きな差が生じさせないようにするのが好ましい。この際、前記部分吸引手段としての吸引管41による吸引により、充填口18から流入する空気の流れを作ることで、前記キャビティ25内の所定部分に発泡性樹脂粒子a1をブロック状に集合した状態に安定的に保持させることができることになる。
【0049】
次に、図6(d)のように、前記所定成形部位38の吸引管41による吸引を連続したまま、雌型10及び雄型30の排気弁17、37を開き、さらに吸排気手段として管16,36を開いた状態にして、雌型10に配置された充填口18から、コーナー近傍領域54以外の他部分を成形する原料である高倍発泡側の第2の発泡性樹脂粒子a2を、供給ホッパー20bからエアを利用して給送し、キャビティ25内の他部分、すなわち前記発泡性樹脂粒子a1が存在しない空間部分に充填する。
【0050】
なお、前記第1の発泡性樹脂粒子a1及び第2の発泡性樹脂粒子a2のそれぞれの充填完了時には、前記充填口18の開口端を閉じた状態で、充填口18の管路に備える送風エアを利用する給送手段を逆方向に作動させて、充填口18の管路内の発泡性樹脂粒子a1を排除しておくものとする。
【0051】
この後、図6(e)のように、雌型10及び雄型30の排気弁17,37及び離型用のエア供給管47の弁をそれぞれ閉じておいて、雌型10及び雄型30の一方のドレーン管15又は35を開くとともに、必要に応じて吸排気手段としての管16又は36を開き、こうして雌型10及び雄型30の他方の蒸気供給管34又は14の弁を開いて、加熱蒸気を通して一方加熱で、あるいは、雌型10及び雄型30の双方のドレーン管15及び35と、蒸気供給管14及び34の弁を開いて、双方から加熱蒸気を通して全型加熱で加熱発泡成形を行う。これにより、容器のコーナー近傍領域54に相当するキャビティ25内の所定部分に保持されている第1の発泡性樹脂粒子a1と、他部分に充填された第2の発泡性樹脂粒子a2とが一体に成形される。
【0052】
この加熱発泡成形の後、図6(f)のように、蒸気供給管14,34を閉じ、ドレーン管15,35を開いた状態で、離型用エアーの供給管47から離型用エアーを吹き込みながら、いずれか一方、例えば雄型30を移動させて型開きし、発泡成形品の容器を取り出す。
【0053】
こうして加熱発泡成形されて製造された例えば図7の容器50は、強度必要部分であるコーナー部53を含むコーナー近傍領域54の肉厚全体が、低倍発泡側の第1の発泡性樹脂粒子a1により成形されて他部分より発泡倍率が低く、また他部分が高倍発泡側の第2の発泡性樹脂粒子a2により成形されて、コーナー近傍領域54より発泡倍率が高くなっている。しかも、前記第1の発泡性樹脂粒子a1は、キャビティ25内全体に一旦充填させた後、余剰の発泡性樹脂粒子a1を排出することにより、キャビティ25内の所定部分に吸引保持させるので、各所定部分のそれぞれに確実にかつ略同量の発泡性樹脂粒子をブロック状の集合状態にして保持させることができ、複数の強度必要部分としてのコーナー近傍領域54と他部分との境界を綺麗にして且つ重量バランスよく成形できることになる。
【0054】
なお、発泡成形された前記コーナー近傍領域54の発泡倍率と他部分の発泡倍率とは、使用する原料の発泡性樹脂粒子a1,a2によって適宜設定できるが、例えば、農産物用容器等では、コーナー近傍領域54の発泡倍率を55倍、他部分の発泡倍率を65倍とする等、10倍前後の差をつける。
【0055】
なお、上記した実施例では、底部51と四方の側壁52からなる容器50を製造する場合を例にして説明したが、例えば底部51や側壁52及び開口端部50aに凹凸形状を有する種々の構成形態の容器において、上記と同様に実施して製造できる。この場合、雌型10の凹型部11及び雄型30の凸型部31や開口端用型部32の各成形面を、容器の内外面や開口端部の形状に対応合致する形状にしておけばよい。
【0056】
図8〜図10は、本発明の製造方法により製造される発泡樹脂製容器の具体例の一つを示している。この発泡樹脂製容器は、発泡ポリスチレン等の発泡性樹脂粒子を素材として成形され、上方に開口する平面矩形の容器本体50Aと、該容器本体50Aの側壁上端の開口端部に対し嵌合被着自在な蓋体60とよりなる。容器本体50Aは底部51と四方の側壁52とにより平面矩形の箱状に形成されている。
【0057】
前記容器本体50Aに対する蓋体30の嵌合被着構造として、図の場合、容器本体50Aの開口端部、すなわち各側壁52の上端部において、外側に嵌合用の凸縁55を残して内側が切欠形成され、他方、蓋体60の周縁部61の下面には、前記凸縁55の内側に嵌合する嵌合部62が形成されている。もちろん、他の嵌合形態による被着構造でもよい。
【0058】
図の容器本体50Aの場合、前記各側壁52は、四隅のコーナー部53の近傍の側壁側端部分を除く中央部領域52aの内面が、本来の側壁内面に対して凹をなす上下方向の凹条56が、容器周方向に所定の間隔で形成されることにより、該凹条56と、各凹条56,56間に残余させた凸条57とによる波形凹凸状をなしており、上下方向の凸条57が段積み荷重等の上方からの荷重や、側壁52の内外方向への曲げ荷重に対して、補強リブ的な作用を果たすことで、所定の強度を保持しながら、前記凹条56による薄肉化を可能にされている。
【0059】
また、前記容器本体50Aの底部51の上下面の少なくとも一方、例えば上面51aは、図のように全面にわたって、所定高さのリブ状凸部58により画した平面六角形の多数の凹部59が形成されてハニカム構造をなしており、リブ状凸部58により所定の強度を保持しながら、底部51の凹部59の部分の肉厚を本来の底部よりも薄くし、容器軽量化に寄与できるようになっている。前記のハニカム構造については、底部51の下面51bに設けることもでき、また上下面51a,51bの双方に設けることもできる。さらに底部51の上下面の少なくとも一方に他の凹凸形状を設けることもできる。
【0060】
そして、前記構造の容器本体50Aを上記した本発明の製造方法により、発泡倍率を異にして成形できる少なくとも2種の発泡性樹脂粒子a1,a2を使用し、上記と同様に、図6の(a)〜(f)の各工程を経て加熱発泡成形することにより、容器使用上の強度必要部分としての容器本体50Aにおけるコーナー近傍領域54の肉厚全体を、低倍発泡側の第1の発泡性樹脂粒子a1により側壁52の中央部領域52aや底部51の内方部等の他部分より低倍発泡となるように成形できる。すなわち、コーナー近傍領域54の肉厚全体を他部分より低倍発泡にした容器本体50Aを容易に成形し製造できる。図の場合、コーナー部53のほかに、側壁52の中央部領域52aを除く側壁測端部及び底部51の四隅部の領域を含むコーナー近傍領域54が、他部分より低倍発泡にして成形されているが、場合によっては、コーナー部53だけを他部分より低倍発泡にして成形しておくこともできる。
【0061】
前記の容器本体50Aのほか、蓋体60についても、容器本体50Aの場合と同様に、発泡倍率を異にして成形できる少なくとも2種の発泡性樹脂粒子a1,a2を使用して、図6の(a)〜(f)の工程を経て一体に加熱発泡成形することにより、容器本体50Aのコーナー部53又はコーナー近傍領域54に対応する蓋体60のコーナー部63又はコーナー近傍領域64を、他部分より低倍発泡にして成形して製造することができる。
【0062】
このようにして成形され製造された容器本体50Aと蓋体60とからなる発泡樹脂製容器は、前記のように容器本体50Aのコーナー部53を含むコーナー近傍領域54の肉厚全体、さらには蓋体60のコーナー近傍領域64の肉厚全体が、低倍発泡側の第1の発泡性樹脂粒子a1により成形されて他部分より発泡倍率が低くなっており、これが容器本体50Aの側壁52の波形凹凸状及び底部51のハニカム構造と相まって、容器全体としてて、同発泡倍率の従来品の場合よりも段積み荷重に耐える圧縮強度や引っ張り強度を保有できることになる。
【0063】
なお、発泡樹脂製容器の強度必要部分としては、容器のコーナー部又はコーナー近傍領域だけでなく、開口端部等の他の強度必要部分においても、上記同様にして、該強度必要部分を他部分より低倍発泡にして実施することができる。
【0064】
さらに、図示していないが、製造対象の発泡樹脂製容器に異倍率の複数の強度必要部分が設定されている場合に、異倍率の強度必要部分を成形する所定成形部位毎に、上記の実施例と同様にして、順次、強度必要部分それぞれの部分吸引手段により、各強度必要部分を成形する発泡性樹脂粒子をキャビティ内の各強度必要部分に相当する所定部分に吸引保持させ、その後、他部分の発泡性樹脂粒子を充填して加熱発泡成形することができる。この場合も、各強度必要部分に使用する発泡性樹脂粒子を所定部分に吸引保持させる際、キャビティ内全体に一旦充填し、その後、前記所定成形部位の部分吸引手段により吸引しながら他部分に充填された余剰の発泡性樹脂粒子を排出する方法を利用して、キャビティ内の所定部分に確実に吸引保持させるようにして、上記と同様に実施できる。
【0065】
前記容器50、容器本体50A及び蓋体60の製造に使用する発泡性樹脂粒子の合成樹脂材料としては、例えば、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、あるいはポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種の熱可塑性の合成樹脂材料を用いることができる。発泡倍率は10〜70倍の範囲であり、低倍発泡側と高倍発泡側とに5〜15倍程度の差をつけるようにして使用するのが好ましい。
【0066】
例えば、低倍発泡側の発泡性樹脂粒子a1と、高倍発泡側の発泡性樹脂粒子a2として、同系樹脂の発泡性樹脂粒子を用いて発泡成形した状態の発泡倍率に差をつけるために、発泡性樹脂粒子の粒径、発泡剤の種類や予備発泡の程度を異にする等、発泡倍率を異にできる種々の実施が可能である、また、低倍発泡側の発泡性樹脂粒子a1と、高倍発泡側の発泡性樹脂粒子a2とを異色の材料を用いることができ、また蒸気加熱による接着性に問題がなければ、異種素材の合成樹脂樹脂材料を用いることもできる。
【符号の説明】
【0067】
a1…低倍発泡側の発泡性樹脂粒子,a2…高倍発泡側の発泡性樹脂粒子、10…雌型、11…凹型部、10a…型内空間、13…連通孔、14…蒸気供給管、15…ドレーン管、16…吸排気手段としての管、17…排気弁、18…充填口、19…回収用排出管、20a,20b…供給ホッパー、21a,21b…供給路、25…キャビティ、30…雄型、30a…型内空間、31凸型部、32…開口端用型部、33…連通孔、34…蒸気供給管、35…ドレーン管、36…吸排気手段としての管、37…排気弁、38…所定成型部位、39…他の成形部位、41…別の吸引管、42…仕切り壁、43…吸引室、45…エア吹き込み管、47…離型用のエア供給管、50…容器、50A…容器本体、51…底部、11a…上面、11b…下面、52…四方の側壁、52a…中央部領域、53…コーナー部、54…コーナー近傍領域、55…凸縁、56…凹条、57…凸条、58…リブ状凸部、59…凹部、60…蓋体、61…周縁部、62…嵌合部、63…コーナー部、64…コーナー近傍領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内面を成形する雄型と、容器外面を成形する雌型とよりなる成形金型のキャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填し、容器使用上の強度必要部分を他部分より低倍発泡にして成形する発泡樹脂製容器の製造方法において、
雄型と雌型の少なくとも一方に型内から成形面に貫通する多数の連通孔を設けるとともに、前記強度必要部分を成形する所定成形部位に、前記連通孔を介して原料の発泡性樹脂粒子を吸引保持するための部分吸引手段を設けておき、
発泡倍率を異にして成形できる少なくとも2種の発泡性樹脂粒子を用い、充填工程において、先ず、前記強度必要部分に使用する低倍発泡側の発泡性樹脂粒子を、前記所定成形部位の部分吸引手段によりキャビティ内の前記強度必要部分に相当する所定部分に吸引保持させ、次に、他部分に使用する高倍発泡側の発泡性樹脂粒子をキャビティ内の他部分に充填するようにして、キャビティ内に少なくとも2種の発泡性樹脂粒子を充填し、この状態で蒸気を吹き込んで加熱発泡成形し、前記強度必要部分の肉厚全体が他部分より低倍発泡の容器を一体に成形することを特徴とする発泡樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
低倍発泡側の発泡性樹脂粒子を前キャビティ内の前記所定部分に吸引保持させた後、吸引保持状態を維持したまま高倍発泡側の発泡性樹脂粒子を充填する請求項1に記載の発泡樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
前記低倍発泡側の発泡性樹脂粒子をキャビティ内の所定部分に吸引保持させる際、該発泡性樹脂粒子を、キャビティ内全体に一旦充填し、その後、前記所定成形部位の部分吸引手段による吸引を続けながら他部分に充填された余剰の発泡性樹脂粒子を排出することにより、前記所定部分に吸引保持させる請求項1又は2に記載の発泡樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
前記キャビティ内の他部分に充填された余剰の発泡性樹脂粒子を排出する際、他の成形部位に有する連通孔からキャビティ内にエアを吹き込みながら、充填口又は充填口とは別に設けた排出口から吸引して排出する請求項3に記載の発泡樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
前記キャビティ内の他部分に充填された余剰の発泡性樹脂粒子を排出する際、キャビティ内の前記所定部分と他部分の境界部分で別回路のエアを吹き込み、余剰の発泡性樹脂粒子を吹き飛ばすようにして排出する請求項3又は4に記載の発泡樹脂製容器の製造方法。
【請求項6】
前記強度必要部分が平面矩形の容器のコーナー部であり、低倍発泡側の発泡性樹脂粒子をキャビティ内の容器コーナー部に相当する所定部分に吸引保持させた後、高倍発泡側の発泡性樹脂粒子をキャビティ内のコーナー部に相当する部分以外の他部分に吸引保持させるようにして充填して、加熱発泡成形する請求項1〜5のいずれか1項に記載の発泡樹脂製容器の製造方法。
【請求項7】
製造対象の発泡樹脂製容器に異倍率の複数の強度必要部分が設定されている場合に、異倍率の強度必要部分を成形する所定成形部位毎に、順次、それぞれの部分吸引手段により、各強度必要部分を成形する発泡性樹脂粒子をキャビティ内の各強度必要部分に相当する所定部分に吸引保持させ、その後、他部分の発泡性樹脂粒子を吸引保持させる請求項1または2に記載の発泡樹脂製容器の製造方法。
【請求項8】
容器内面を成形する雄型と、容器外面を成形する雌型とよりなる成形金型のキャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填し、容器使用上の強度必要部分を他部分より低倍発泡にして成形する発泡樹脂製容器の製造装置において、
前記雄型と雌型は、それぞれ型内空間から成形面に貫通する多数の連通孔を有するとともに、少なくとも一方の前記強度必要部分を成形する所定成形部位に、前記連通孔を介して発泡性樹脂粒子を吸引保持する部分吸引手段が他の成形部位の吸排気手段と別回路で吸引可能に設けられ、また、雄型と雌型の一方又は他方に、発泡倍率を異にして成形できる少なくとも2種の発泡性樹脂粒子をそれぞれキャビティ内に注入し充填するための充填口を備えてなることを特徴とする発泡樹脂製容器の製造装置。
【請求項9】
前記雄型と雌型の少なくとも一方の前記所定成形部位の部分吸引手段として、型内空間における前記所定成形部位の連通孔を含む領域が、他部分と仕切り壁により隔設された吸引室として形成され、該吸引室に他の成形部位の吸排気手段とは別の吸引ラインを構成する吸引管が連設されてなる請求項8に記載の発泡樹脂製容器の製造装置。
【請求項10】
成形金型を構成する雄型に、前記所定成形部位の部分吸引手段が設けられてなる請求項8又は9に記載の発泡樹脂製容器の製造装置。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により、成形金型のキャビティ内に、発泡倍率を異にして成形できる少なくとも2種の発泡性樹脂粒子を充填して一体に加熱発泡成形してなる発泡樹脂製容器であって、容器使用上の強度必要部分の肉厚全体が他部分より低倍発泡にして成形されてなることを特徴とする発泡樹脂製容器。
【請求項12】
容器における強度必要部分が、平面矩形の容器本体のコーナー部を含むコーナー近傍領域であり、該コーナー近傍領域が他部分に比して低倍の発泡樹脂により一体に形成されてなる請求項11に記載の発泡樹脂製容器。
【請求項13】
他部分より低倍でかつ異倍率の複数の強度必要部分が設定されてなる請求項11に記載の発泡樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−171629(P2012−171629A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32263(P2011−32263)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】