説明

発熱剤

【目的】粉体生石灰と粉体アルミニウムから成り、水と反応させて発熱する発
熱剤の発熱量を大きくして、発生蒸気の最高温度を100℃に近づけ、且つ反
応開始後30分後でも70〜85℃近傍を維持させる。
【解決手段】100メッシュ(−150・m90%以上)〜200メッシュ(
−75・m95%以上)の粉体生石灰が11.35g、及び−330メッシュ
(−45・m)が40〜60%,+330メッシュ(+45・m)が15〜30
%,+235メッシュ(+63・m)が15%>、+200メッシュ(+75・
m)が10%>の粒度分布を有する粉体アルミニウムが22.70gから成る
発熱剤35gに、7.0gの塩化ナトリウムを配合し、水70mlと反応させ
て、反応開始から1分〜30分にわたる発生水蒸気の温度の最高到達温度を9
4.7℃とし、測定開始後30分の温度を82.7℃とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱剤に関し、より詳細には、粉体生石灰と粉体アルミニウムとから成り水と反応させる化学発熱剤に、塩化ナトリウムを配合したことを特徴とする発熱剤に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体生石灰と粉体アルミニウムとから成り水と反応させる化学発熱剤は、各種のものが提案されている。然しながら、いずれの従来技術も、高温の持続時間が短く、発熱開始から30秒後の温度は50℃以下で、用途も限定されている。
【0003】
たとえば、特開平11−146835号公報は、粉体金属アルミニウム25〜85%、粉体生石灰15〜75%からなる加熱剤を開示している。然しながら、この従来技術は、80℃以上の持続時間が6〜7分であり、発生熱量が少ないという欠点がある。
【0004】
また、特開平03−091588号公報は、粉体金属アルミニウムと粉体生石灰からなる加熱剤を開示している。然しながら、この従来技術は、100℃近傍の持続時間が17分であり、やはり総発生熱量が少ないという欠点がある。
【0005】
特許第3467729号公報は、発熱剤の質量当たり、100メッシュ(−150・m90%以上)〜200メッシュ(−75・m95%以上)の粉体生石灰が15〜30%,及び−330メッシュ(−45・m)が40〜60%,+330メッシュ(+45・m)が15〜30%,+235メッシュ(+63・m)が15%>、+200メッシュ(+75・m)が10%>の粒度分布を有する粉体アルミニウム70〜85%から成る発熱剤を開示している。
【0006】
特許第3467729号に係わる発熱剤は、たとえば、粉体生石灰5gと粉体アルミニウム10gから成る発熱剤15gを常水30mlと、或いは粉体生石灰6.67gと粉体アルミニウム13.3gから成る発熱剤20gを常水40mlと、或いは粉体生石灰8.33gと粉体アルミニウム16.67gから成る発熱剤25gを常水50mlと、或いは粉体生石灰11.57gと粉体アルミニウム23.33gから成る発熱剤35gを常水70mlと、或いは粉体生石灰13.33gと粉体アルミニウム26.67gから成る発熱剤40gを常水80mlと、或いは粉体生石灰16.67gと粉体アルミニウム33.33gから成る発熱剤50gを常水100mlと、 或いは粉体生石灰20.00gと粉体アルミニウム40.00gから成る発熱剤60gを常水120mlと反応させると、4分24秒後に最高温度92.1℃の水蒸気を発生し、20分後には、水蒸気温度が62.4℃、30分後には、50.2℃に降下する。このような水蒸気の温度特性は、自衛隊用戦闘糧食、駅弁、各種携帯食品、非常食等を喫食可能な状態に加熱するには十分な熱量である。
【0007】
然しながら、特許第3467729号に係わる発熱剤は、自衛隊用戦闘糧食、駅弁、非常食等各種携帯食品を一度に大量に短時間で効率よく加熱する場合、或いは釣り、スキューバーダイビング等マリーンスポーツで冷え切った体を暖める用途、地震等災害時の緊急避難所での簡易沐浴設備への利用するには、熱量不足であり、使用者が一様に要望することは、蒸気の最高到達温度を、できるだけ100℃に近づけること、及び30分後でも65〜70℃、場合によっては75〜85℃を維持させて欲しいということである。
【特許文献1】特開平11−146835号公報
【特許文献2】特開平03−294483号公報
【特許文献3】特許第3467729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明が解決しようとする主たる課題は、粉体生石灰と粉体アルミニウムとから成り、水と反応させる化学発熱剤の蒸気の最高到達温度を、約100℃に上げ、発熱開始から30分後でも、65〜85℃を維持させることである。
【0009】
発明が解決しようとする別の課題は、粉体生石灰と粉体アルミニウムとから成り水と反応させる化学発熱剤の蒸気の最高到達温度を、約100℃に上げ、発熱開始から30分後でも、65〜80℃を維持することにより、自衛隊用戦闘糧食、駅弁、非常食等各種携帯食品を、一度に、大量に、短時間で、効率よく加熱することである。
【0010】
発明が解決しようとするさらに別の課題は、粉体生石灰と粉体アルミニウムとから成り水と反応させる化学発熱剤の蒸気の最高到達温度を、約100℃に上げ、発熱開始から30分後でも65〜85℃を維持することにより、釣り、スキューバーダイビング等マリーンスポーツで冷え切った体を暖めるための簡易沐浴設備や、震等災害時の緊急避難所での簡易沐浴設備等へ利用しうるようにし、新たな用途を拡大することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段を策定するために、本発明者は、化学量両論から、特許第3467729号に係わる発熱剤と反応させる水の適正量を検討した。
【0012】
特許第3467729号に係わる発熱剤は、粉体生石灰(CaO)と粉体アルミニウムとの特定比率の混合物であるが、先ず式(1)の反応式に従って、粉体生石灰(CaO)と水が反応して、多量の熱を発生しながら水酸化カルシウムを生成する。
CaO+H2O=Ca(OH)2+15.2Kcal (1)
発熱量をグラム当たりに換算すると、CaOの分子量は56.08であるので、271cal/gになる。
(1)の反応の結果、水溶液は生じた水酸化カルシウムの加水分解により、強いアルカリ性を呈する。
【0013】
一方、アルミニウム粉末は、下記の式(2)に従って水酸化カルシウムと急激に反応し、アルミン酸カルシウムと水素を与える。
2Al+3Ca(OH)2=3CaO・Al23+3H2↑ (2)
この時発生する反応熱は約47cal/gである。Alの分子量は13であるので、約3615cal/g(3.615Kcal/g)になる。
【0014】
従って、化学量論上は、特許第3467729号に係わる発熱剤と反応させる水の適正量は、CaOのモル数と同じモル数で十分であることが分かる。
【0015】
然しながら、実用上、粉体CaO5gと粉体アルミニウム10gから成る発熱剤15gの場合、常水30mlと反応させている。CaOの分子量は56.08であるから、CaO5gは、5/56.08=0.09モルになる。従って、この場合の水の適正量は、18g(水H2Oの分子量)・0.09=1.62mlでよいことになる。
【0016】
同じように、粉体CaO6.67gと粉体アルミニウム13,3gから成る発熱剤20gの場合、常水40mlと反応させている。然しながら、[0014]と同じように計算すると、この場合の水の適正量は、1.62mlでよいことになる。
【0017】
同じように、粉体CaO8.33gと粉体アルミニウム16.67gから成る発熱剤25gの場合、常水50mlと反応させている。然しながら、[0014]と同じように計算すると、この場合の水の適正量は、2.7mlでよいことになる。
【0018】
同じように、粉体CaO11.67gと粉体アルミニウム23.33gから成る発熱剤35gの場合、常水70mlと反応させている。然しながら、[0014]と同じように計算すると、この場合の水の適正量は、3.78mlでよいことになる。
【0019】
同じように、粉体CaO13.33gと粉体アルミニウム26.67gから成る発熱剤40gの場合、常水80mlと反応させている。然しながら、[0014]と同じように計算すると、この場合の水の適正量は、4.32mlでよいことになる。
【0020】
同じように、粉体CaO16.67gと粉体アルミニウム33.33gから成る発熱剤50gの場合、常水100mlと反応させている。然しながら、[0014]と同じように計算すると、この場合の水の適正量は、5.4mlでよいことになる。
【0021】
同じように、粉体CaO20gと粉体アルミニウム40gから成る発熱剤60gの場合、常水120mlと反応させている。然しながら、[0014]と同じように計算すると、この場合の水の適正量は、6.58mlでよいことになる。
【0022】
このように、化学量論から算出すると、大過剰量の水を使用する第1の理由は、
(イ)CaO+H2O=Ca(OH)2+15.2Kcalの第1次反応により水が逐次的に蒸発して失われるが、その蒸発により失われる水の量を正確に理論計算することが不可能であるため、敢えて大過剰量を使用していること、(ロ)第2の理由は、水を添加した途端、発熱剤を充填している不織布に吸収されるため、それを見越して過剰量を使用していること、(ハ)第3の理由は、水は粉体CaO及び粉体アルミニウムに比べて安価であるため、厳密な原価計算をしなかったこと等である。
【0023】
本発明者は、本発明者保有の特許第3467729号に係わる発熱剤の発熱量を大きくして、発生蒸気の最高温度を、より100℃に近づけ、30分後でも、70〜75℃近傍を維持する方法を策定するために、上述した粉体CaOとの反応に関与しない余剰水を有効利用することを検討した。
【0024】
そのために、先ず、本発明者の特許第3467729号に係わる発熱剤に、無機化合物を第3成分として添加し、本発明者の特許第3467729号に係わる発熱剤の反応式(1)及び(2)によって発生する発熱量で反応系において転移(解離)させ、余剰水を水和反応を起こさせ溶解熱を発生させ、それらの総和を、前記反応式(1)及び(2)で発生する熱量と合わせて利用することを検討した。
【0025】
さらに、添加すべき無機化合物を策定する条件として、安全に保管でき、かつ使用し易いこと、及び低価格であること等も考慮した。
【0026】
このような点から、先ず周期律表1(IA族)のアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)について検討した。
【0027】
アルカリ金属のLiの第一次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)を計算すると、520.1kJmol−1(0.52503MJmol−1)、及び第二次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)は、7296kJmol−1(7.2981MJmol−1)である。
【0028】
Naの第一次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)を計算すると、495.7kJmol−1(0.4958MJmol−1)、及び第二次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)は、4563kJmol−1(4.5624MJmol−1)である。
【0029】
Kの第一次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)を計算すると、418.7kJmol−1(0.4189MJmol−1)、及び第二次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)は、3069kJmol−1(3.0514MJmol−1)である。
【0030】
Rbの第一次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)を計算すると、402.9kJmol−1(0.4030MJmol−1)、及び第二次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)は、2640kJmol−1(2.633MJmol−1)である。
【0031】
Csの第一次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)を計算すると、375.6kJmol−1(0.3757MJmol−1)、及び第二次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)は、2260kJmol−1(2.23MJmol−1)である。
【0032】
このように、いずれのアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)も、第二次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)は、第一次イオン化エンタルピー(イオン化エネルギー)より一桁ほど大きく、+1の酸化数をもつイオンが安定であることが分かる。また、アルカリ金属原子の格子エネルギーは比較的小さいから、水溶性の塩を形成し易い。また、イオン間の引力が小さいから、アルカリ金属の塩は水溶液で完全に解離する。
【0033】
従って、理論上は、いずれのアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)も、前記の条件に適合するが、開放状態で安全に使用できること、安全に保管できること、低価格であること、そして最も使用し易いことを考慮して、添加すべき成分として塩化ナトリウムを選択した。
【0034】
そこで、次ぎに塩化ナトリウムが転移(融解)するときの融解(解離)エンタルピ−を求めると、28.16(トH/kJmol−1)である。これにより、塩化ナトリウムは、本発明者の特許第3467729号に係わる発熱剤の反応式(1)及び(2)によって発生する発熱量で十分解離することが理解される。
【0035】
このように、本発明者の特許第3467729号に係わる発熱剤の反応式(1)及び(2)によって発生する発熱量で解離した塩化ナトリウムは、式(3)に従って、反応系内の余剰水と水和反応をして、141kJ/mol(33.7kcal/mol)を水和エネルギ−を発生するものと考えられる。
Na+H2・℃・・OH+1/2H2+141kJ/mol(33.7kcal/mol) (3)
【0036】
通常、陽イオン或いは陰イオンの大きさが小さいほど、水和エネルギ−は大きい。Naのイオン半径は、1.02℃と小さいので、この点からも水和エネルギ−が大きいことが理解される。
【0037】
上述した理論的考察をもとに、本発明者は、本発明者の特許第3467729号に係わる発熱剤の発熱量を大きくして、発生蒸気の最高温度を一層100℃に近づけること、及び30分後でも、70〜75℃近傍を維持させる手段として、塩化ナトリウムを添加することとし、さらにその添加範囲を検討した。
【0038】
塩化ナトリウムの配合量は、発熱剤の質量当たり0.5〜25%が好ましい。塩化ナトリウムの配合量が発熱剤の質量当たり0.5%以下の場合、所要の発熱量を得ることができないので好ましくない。塩化ナトリウムの配合量が発熱剤の質量当たり20〜25%の場合、最高到達温度は95℃であるが、発熱開始から1730秒後の温度が、75〜85℃なので、熱源がない場合の簡易沐浴設備用等新たな用途に拡大される。塩化ナトリウムの配合量が発熱剤の質量当たり25%以上の場合、発熱状態にバラツキがあり、一端温度降下すると谷の幅が広く、降下前の温度にまで復元する時間が長く、温度管理が難しく、安定した温度降下状態が要求される商品には適さない。
【0039】
塩化ナトリウムは、発熱剤に配合しても、或いは水に配合してもほぼ同じ発熱効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0040】
請求項1に記載した発明によると、粉体生石灰と粉体アルミニウムとから成り水と反応させる化学発熱剤に、塩化ナトリウムを添加したことにより、塩化ナトリウム無添加の場合に比べて、到達最高温度を引き上げ、総発熱量を増加することができる。
【0041】
請求項2に記載した発明によると、100メッシュ(−150・m90%以上)〜200メッシュ(−75・m95%以上)の粉体生石灰が15〜30質量%,及び−330メッシュ(−45・m)が40〜60%,+330メッシュ(+45・m)が15〜3質量0%,+235メッシュ(+63・m)が15%>、+200メッシュ(+75・m)が10%>の粒度分布を有する粉体アルミニウム70〜85質量%から成る発熱剤の発熱量を大きくして、発生蒸気の最高温度を100℃に近づけ、且つ反応開始から30分後でも、60〜85℃を維持することができるので、自衛隊用戦闘糧食、駅弁、各種携帯食品、非常食等を一度に大量に短時間で効率よく加熱する以外に、別の用途、たとえば登山、釣り、スキューバーダイビング等マリーンスポーツで冷えきった体を現場で暖めるための、或いは地震等災害時の緊急避難所の屋内外で簡易沐浴設備を作るのに役立てさせるか、新たな用途を拡大することができる。
【0042】
請求項3に記載した発明によると、塩化ナトリウムの配合量が、発熱剤の質量当たり0.5〜25%であるので、経済量であり、使用者が安全に使用でき、発熱剤を充填している不織布にダメージを与えることがない。
【0043】
請求項4に記載した発明によると、塩化ナトリウムを発熱剤に配合したので、特定の水を使用する必要がなく、常水他あらゆる水を使用するこよができ、必ずしも水とセットにする必要がない。
【0044】
請求項5に記載した発明によると、塩化ナトリウムを水に配合し、塩化ナトリウム水溶液としたので、発熱剤との反応が均一に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、発明を実施する好ましい形態を、実施例および比較例を参照して説明する。以下の各実施例では、発熱剤に塩化ナトリウムに配合する量を変化させて配合し、常水と反応させ、発生する蒸気の時間に対する温度変化と、塩化ナトリウムの配合量による発生熱量の増加分を確認した。また、各比較例では、発熱剤に塩化ナトリウムを配合せずに常水と反応させ、発生する蒸気の時間に対する温度変化を確認した。
【0046】
[実施例、比較例]
使用した塩化ナトリウム

塩化ナトリウムとして、塩化ナトリム99.7質量%にリン酸三カルシウム0.3質量%を添加して使用した。この塩試験法による分析値は、水分0.016質量%、Cl(K、Ca、Mg結合)0.001質量%、SO20.016質量%、Ca0.001質量%、Mg0.000質量%、K0.002質量%、Na(SO4結合4)0.006質量%、塩化ナトリウム99.656質量%,及びリン酸三カルシウム0.3質量%である。なお、リン酸三カルシウムは、砂糖、塩化ナトリウムの凝固防止剤として通常配合されているものである。
【0047】
使用した塩化ナトリウムの140℃、90分間加熱法による乾燥減量は0.1質量%以下、純度は99.5%以上、硫化ナトリウム比色法による重金属は10ppm以下、フルイ分け法による粒度は、150・m(100メッシュ)以下が90%以上、異物はゼロである。
【0048】
140℃、90分間加熱法による乾燥減量は0.1質量%以下、純度は99.5%以上、硫化ナトリウム比色法による重金属は10ppm以下、フルイ分け法による粒度は、150・m(100メッシュ)以下が90%以上、異物はゼロである。
【0049】
使用した蒸気温度測定装置

厚さ2mmのステンレススティールで、100mm(W)・200mm(L)・200mm(H)の容積3700mLの完全密閉式の蓋付き反応容器を作成した。容器の蓋には、直径2mmの蒸気排出口を設けた。さらに、容器の蓋に直径10mmの開口を設け、水が入ったビ−カ−を密閉状態で挿入固定し、水が滴下できるようにした。(株)キーエンス社の温度センサーの先端を容器の底面から45mmの位置にセットした。反応容器に発熱剤を置き、蓋をして水を滴下して反応させた。蒸気温度の測定は、センサーをパソコンと連動させて、5秒〜1800秒まで連続して自動測定して得たアナログデータをグラフで記録し、同時に5秒〜1800秒まで5秒間隔でディジタルデータとして記録した。
【0050】
デ−タの処理に関して
5秒〜1800秒まで連続して自動作成したアナログデータは、連続した値である。従って、時間の変化に対する温度変化を全体として観察したり、温度の微妙な昇温、降温状態を観察するには都合がよいが、正確な時間当たりの正確な温度を確認することができない。一方、5秒〜1800秒まで5秒間隔で得たディジタルデータは、5秒毎の温度をほぼ正確に表示しているが、測定時間と測定時間の間の温度変化を読みとることはできない。
【0051】
従って、以下に記載する[実施例]及び[比較例]では、5秒〜1800秒まで連続して自動測定して得たアナログデータを表示するグラフを図1〜図15として示し、同時に、表1〜15で、5〜1800秒まで5秒間隔で得たディジタルデータを、分単位(1〜30分)で圧縮して表記した。[考察]においては、両方のデータを利用して説明した。また、表1〜15は、5〜1800秒まで5秒間隔で得たディジタルデータを、分単位で圧縮して表記してあるので、微妙な温度変化は、5秒間隔で得た元のデータを使用して説明した。実験は、全て室温(18〜22℃)で行った。
【0052】
[実施例1]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを0.35g(0.006モル)を配合し、常水70mlを添加した。水を添加後、5秒〜1800秒に亘って発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し得たアナログデータをグラフとして図1に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表1に示した。塩化ナトリウムを0.35g、すなわち発熱剤の質量当たり1%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上201calである。
【0053】
[比較例1]
発熱剤35g(AL23.33g、CaO11.67)に塩化ナトリウム無添加で、常水70mlを添加した。水を添加後、5秒〜1800秒に亘って発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図1に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表1に示した。
【0054】
[考 察]
図1に示したグラフにおいて1は実施例1の結果、2は比較例1の結果、3は室温を示している。実施例1と比較例1の結果を併記してある図1及び表1並びに5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例1は、測定開始後95〜155秒の間で安定した第1次最高温度帯域約80〜約90℃に達し、その間140秒で最高温度92.1℃に達した。その後、160〜225秒で一旦80℃以下に降下したが、230〜795秒で第2次最高温度帯域約80℃〜約90℃に達し、320秒で最高温度92.2℃に達した。その後805〜1120秒の間80〜70℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで60〜50℃に同じ降下率で降下し、1800秒では53.6℃を示した。
【0055】
一方、比較例1は、測定開始後135〜165秒の間で第1次最高温度帯域約80〜約90℃に達し、その間、145秒で最高温度91.1に達した。次いで、発熱開始後260〜640秒で第2次最高温度帯域80℃〜90℃に達し、その間、345秒で92.3℃を示した。その後、645〜1150秒の間80〜60℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで60〜50℃に同じ降下率で降下し、1800秒では46.5℃を示した。
【0056】
この結果から、発熱剤35g、塩化ナトリウム1%と水70mlの組合せが、発熱剤35gと水70mlの組合せより、最高到達温度を100℃近くまで引き上げ、80〜100℃を長時間維持し、総発熱量を大きくするという顕著な効果を奏功していることが分かる。
【0057】
【表1】

【0058】
[実施例2]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを0.7g(0.012モル)を配合し、常水70mlを添加した。水を添加してから5秒〜1800秒に亘って発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図2に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表2に示した。塩化ナトリウムを0.7g、すなわち発熱剤の質量当た2%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上403calである。
【0059】
[比較例2]
発熱剤35g(AL23.33g、CaO11.67)に塩化ナトリウム無添加で、常水70mlを添加した。水を添加してから5秒〜1800秒に亘って発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図2に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表2に示した。
【0060】
[考 察]
図2に示したたグラフにおいて1は実施例2の結果、2は比較例2の結果、3は室温を示している。実施例2と比較例2の結果を併記してある図2、表2、および5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例2は、測定開始後55〜170秒の間で安定した第1次最高温度帯域約80〜約90℃に達し、その間155秒で最高温度92.7℃に達した。その後、280〜1080秒の間で、安定な第2次最高温度帯域80℃〜90℃に達し、395秒で最高温度95.2℃に達した。その後1085〜1510秒の間80〜70℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで60〜50℃に同じ降下率で降下し、1800秒では63.8℃を示した。
【0061】
一方、比較例2では、測定開始後130〜185秒の間で第1次最高温度帯域約80〜約90℃に達し、その間175秒で最高温度92.7℃に達した。次いで、測定開始後315〜675秒の間で第2次最高温度帯域80℃〜90℃に達し、その間400秒で89.7℃を示した。その後、680〜910秒の間80〜70℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで60〜50℃に同じ降下率で降下し、1800秒では47.9℃を示した。
【0062】
この結果から、発熱剤35g、塩化ナトリウム2%と水70mlの組合せが、発熱剤35gと水70mlの組合せより、最高到達温度を100℃近くまで引き上げ、80〜100℃を長時間維持し、総発熱量を大きくするという顕著な効果を奏功していることが分かる。
【0063】
【表2】

【0064】
[実施例3]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを1.05g(0.018モル)を配合して、常水70mlを添加して発熱反応を起こさせ、発生した蒸気の温度変化を5秒〜1800秒に亘って連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図3に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表3に示した。塩化ナトリウムを1.05g、すなわち発熱剤の質量当たり3%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上605calである。
【0065】
[比較例3]
発熱剤35g(AL23.33g、CaO11.67)に塩化ナトリウム無添加で、常水70mlを添加して発熱反応を起こさせ、発生した蒸気の温度変化を5秒〜1800秒に亘って連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図3に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表3に示した。
【0066】
[考 察]
図3に示したグラフにおいて1は実施例3の結果、2は比較例3の結果、3は室温を示している。実施例3と比較例3の結果を併記してある図3、表3、および5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例3は、測定開始後55〜60秒で第1次最高温度帯域約80〜約90℃に達し、その間55秒で最高温度84.8℃に達した。その後、105〜190秒の間で、安定な第2次最高温度帯域80℃〜90℃に達し、その間160秒で最高温度94.6℃に達した。その後290〜1140秒の間で安定な第3次最高温度帯域80℃〜90℃に達し、その間460秒で最高温度92.6℃に達した。1145〜1575秒の間で、80〜70℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで60〜50℃に同じ降下率で降下し、1800秒では65℃を示した。
【0067】
比較例3は、表3には表記していないが、測定開始後55秒で第1次最高温度82.7℃に達した。その後測定開始後100〜180秒の間で第2次最高温度帯域約80〜約90℃に達し、その間155秒で最高温度94.7℃に達した。次いで、測定開始後250〜615秒の間で第3次最高温度帯域80℃〜90℃に達し、その間335秒で90.3℃を示した。その後、620〜865秒の間80〜70℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで60〜50℃に同じ降下率で降下し、1800秒では47℃を示した。
【0068】
この結果から、発熱剤35g、塩化ナトリウム2%と水70mlの組合せが、発熱剤35gと水70mlの組合せより、最高到達温度を100℃近くまで引き上げ、80〜100℃を長時間維持し、総発熱量を大きくし、360秒〜1800秒の間、実施例3は、比較例3と比べて、平均で約15℃高い温度を維持するという顕著な効果を奏功していることが分かる。
【0069】
【表3】

【0070】
[実施例4]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを0.84g(0.0144モル)を添加した系に常水70mlを添加して発熱反応を起こさせ、発生した蒸気の温度変化を測定開始から5秒〜1800秒にわたって連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図4に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表4に示した。塩化ナトリウムを0.84g、すなわち発熱剤の質量当たり2.4%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上472calである。
【0071】
[実施例5]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを1.05g(0.018モル)を添加した系に常水70mlを添加して発熱反応を起こさせ、発生した蒸気の温度変化を測定開始から5秒〜1800秒にわたって連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図4に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表4に示した。塩化ナトリウムを1.05g、すなわち発熱剤の質量当たり3.0%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上605calである。
【0072】
[考 察]
図4に示したグラフにおいて1は実施例4の結果、2は実施例5の結果、3は室温を示している。実施例4と実施例5の結果を併記してある図4,表4、及び5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例4は、測定開始後135〜200秒の間で安定した第1次最高温度帯域約80〜約90℃に達し、その間170秒で最高温度90.7℃に達した。その後、295〜1160秒の間で、安定な第2次最高温度帯域80℃〜90℃に達し、その間560秒で最高温度87.9℃に達した。その後1160〜1560秒の間、80〜70℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで70〜60℃に同じ降下率で降下し、1800秒では66.4℃を示した。
【0073】
一方、実施例5は、測定開始後85〜180秒で、第1次最高温度帯域約80〜約90℃に達し、その間155秒で最高温度95℃に達した。次いで、測定開始後245〜1150秒で、第2次最高温度帯域80℃〜90℃に達し、その間415秒で93.4℃を示した。その後、1155〜1540秒の間、80〜70℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで、70〜60℃に同じ降下率で降下し、1800秒では63.5℃を示した。
【0074】
この結果から、発熱剤35g、塩化ナトリウム2.4%と水70mlの組合せによる発熱反応と、発熱剤35g、塩化ナトリウム3.0%と水70mlの組合せが、無添加の場合に比べて、最高到達温度を100℃近くまで引き上げ、100〜90℃を長時間維持し、総発熱量を大きくするという顕著な効果を奏功していることが分かる。
【0075】
【表4】

【0076】
[実施例6]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを0.945g(0.0172モル)を添加した系に、常水70mlを添加して発熱反応を起こさせた。発生した蒸気の温度変化を、測定開始5秒〜1800秒に亘って連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図5に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表5に示した。塩化ナトリウムを0.945g、すなわち発熱剤の質量当たり2.7%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上580calである。
【0077】
[実施例7]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを0.84g(0.014モル)配合した系に、常水70mlを添加して発熱反応を起こさせた。発生した蒸気の温度変化を測定開始5秒〜1800秒に亘って連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図5に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表5に示した。塩化ナトリウムを0.84g、すなわち発熱剤の質量当たり2.4%添加したことによる発熱量の増加分は、472calである。
【0078】
[考 察]
図5に示したグラフにおいて1は実施例6の結果、2は実施例7の結果、3は室温を示している。実施例6と実施例7の結果を併記してある図5,表5、および5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例6は、測定開始後45〜175秒で、安定した第1次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間150秒で最高温度95.8℃に達した。さらに、測定開始後270〜1085秒で、安定した第2次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間410秒で最高温度93.8℃に達した。その後、1090〜1475秒の間、80〜70℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで、70〜60℃に同じ降下率で降下し、1800秒では62.5℃を示した。
【0079】
一方、実施例7は、測定開始後120〜175秒で、第1次最高温度帯域約80〜約90℃に達し、その間160秒で最高温度96.1℃に達した。次いで、測定開始後255〜1030秒で、第2次最高温度帯域80℃〜90℃に達し、その間375秒で93.3℃を示した。その後、1035〜1395秒で、80〜70℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで、70〜60℃に同じ降下率で降下し、1800秒では60.3℃を示した。
【0080】
この結果から、発熱剤35g、塩化ナトリウム2.7%と水70mlの組合せによる発熱反応と、発熱剤35g、塩化ナトリウ2.4%と水70mlの組合せが、無添加の場合に比べて、最高到達温度を100℃近くまで引き上げ、100〜90℃を長時間維持し、総発熱量を大きくするという顕著な効果を奏功していることが分かる。
【0081】
【表5】

【0082】
[実施例8]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを0.945g(0.0172モル)を添加した系に常水70mlを添加して発熱反応を起こさせた。発生した蒸気の温度変化を、5秒〜1800秒に亘って連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図6に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表6に示した。塩化ナトリウムを0.945g、すなわち発熱剤の質量当たり2.7%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上580calである。
【0083】
[実施例9]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを1.05g(0.018モル)配合した系に、常水70mlを添加して発熱反応を起こさせ、5秒〜1800秒に亘って発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図6に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表6に示した。塩化ナトリウムを1.05g、すなわち発熱剤の質量当たり3.0%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上605calである。
【0084】
[考 察]
図6に示したグラフにおいて1は実施例8の結果、2は実施例9の結果、3は室温を示している。実施例8は、表6には記載しなかったが、測定開始後50秒で第1次最高温度85.4℃を示した。その後、測定開始後70〜215秒の間で安定した第1次最高温度帯域約80〜約90℃を示し、その間165秒で最高温度94.4℃に達した。次いで、測定開始後285〜1090秒で安定した第3次最高温度帯域約80〜約90℃を示し、その間400秒で最高温度95.1℃に達した。その後1095〜1410秒の間、80〜70℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで、70〜60℃に同じ降下率で降下し、1800秒では61.6℃を示した。
【0085】
実施例9は、表6には記載しなかったが、測定開始後50秒で第1次最高温度89.1℃を示した。その後、測定開始後115〜205秒で、第2次最高温度帯域約80〜約90℃に達し、その間180秒で、最高温度92.5℃に達した。次いで、測定開始後250〜1230秒で、第3次最高温度帯域80℃〜90℃に達し、その間340秒で、95.7℃を示した。その後、1230〜1610秒の間80〜70℃に徐々に降下し、さらに1800秒まで、70〜60℃に同じ降下率で降下し、1800秒では65.2℃を示した。
【0086】
この結果から、発熱剤35g、塩化ナトリウム2.7%と水70mlの組合せによる発熱反応と、発熱剤35g、塩化ナトリウ2.4%と水70mlの組合せが、無添加の場合に比べて、最高到達温度を100℃近くまで引き上げ、100〜90℃を長時間維持し、総発熱量を大きくするという顕著な効果を奏功していることが分かる。
【0087】
【表6】

【0088】
次ぎに、発熱剤15g、20g、25g、35g、40g、50g、及び60gに所定量の塩化ナトリウムを配合し水と反応させて、発生蒸気の温度変化を確認した実施例10〜16と、塩化ナトリウムを配合せずに、水と反応させて発生蒸気の温度変化を確認した比較例4〜10を行った。
【0089】
[実施例10]
発熱剤15g(AL9.73g、CaO4.865g)に塩化ナトリウムを0.405g(0.0069モル)を配合し、常水30mlを添加して発熱反応を起こさせ、5秒〜1800秒に亘って発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図7に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表7に示した。塩化ナトリウムを0.405g、すなわち発熱剤の質量当たり2.7%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上232calである。
【0090】
[比較例4]
発熱剤15g(AL10g、CaO5g)に塩化ナトリウム無添加で、常水30mlを添加して発熱反応を起こさせ、測定熱開始5秒から1800秒に亘って発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図7に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表7に示した。
【0091】
[考 察]
図7に示したグラフにおいて1は実施例10の結果、2は比較例4の結果、3は室温を示している。図7,表7,および5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例10は、測定開始後30〜45秒で第1次最高温度帯域約70℃を示し、その間35秒で76.8℃を示した。その後、測定開始後265〜495秒の間で第2次最高温度帯域約70〜76℃を示し、その間400秒で最高温度75.9℃に達した。次いで、測定開始後495〜1800秒まで70〜30℃に同じ降下率で降下し、1800秒では38.1℃を示した。
【0092】
比較例4は、測定開始後30〜55秒で第1次最高温度帯域約70〜80℃を示し、その間45秒で第1次最高温度85.8℃を示した。その後、80〜305秒で第2次最高温度帯域約70〜90℃を示し、その間135秒で最高温度86.6℃に達した。その後、310〜1800秒まで、70〜約30℃に急激に降下し、1800秒では32.1℃を示した。
【0093】
実施例10と比較例4を比較すると、発熱開始から355秒までは比較例4の方が熱量が高いが、360秒〜1800秒の間は、実施例10の方が、比較例4より平均で5〜10℃高い温度を維持し、そのまま温度降下し、1800秒では、実施例10は38.1℃を、比較例4は32.1℃を示した。この結果から、実施例10が、比較例4より、発熱総発熱量を大きくするという顕著な効果を奏功していることが分かる。
【0094】
【表7】

【0095】
[実施例11]
発熱剤20g(AL12.97g、CaO6.49g)に塩化ナトリウムを0.540g(0.0092モル)を配合し、常水40mlを添加して発熱反応を起こさせた。測定開始5秒から1800秒に亘って発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図8に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表8に示した。塩化ナトリウムを0.540g、すなわち発熱剤の質量当たり2.7%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上311calである。
【0096】
[比較例5]
発熱剤20g(AL13.3g、CaO6.67g)に塩化ナトリウム無添加で、常水40mlを添加して発熱反応を起こさせた。測定開始5秒から1800秒に亘って発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図8に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表8に示した。
【0097】
[考 察]
図8において1は実施例11の結果、2は比較例5の結果、3は室温を示している。図8,表8,および5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例11は、測定開始後35〜50秒で第1次最高温度帯域約80〜83℃に達し、その間35秒で82.6℃を示した。その後、測定開始後65〜430秒の間で第2次最高温度帯域約70〜89℃に達し、その間365秒で最高温度88.1℃を示した。次いで、測定開始後495〜1800秒まで70〜40℃にほぼ同じ降下率で降下し、1800秒では48.6℃を示した。
【0098】
比較例5は、測定開始後40〜50秒で第1次最高温度帯域約80〜83℃に達し、その間40秒で最高温度82.4℃を示した。その後、95〜210秒の間で第2次最高温度帯域約80℃に達し、その間170秒で最高温度87.6℃を示した。その後、260〜1800秒まで、ほぼ同じ降下率で70〜40℃に降下し、1800秒では40.3℃を示した。
【0099】
すなわち、発熱剤20g、塩化ナトリウム2.7%と水40mlの組合せと発熱剤20gと水70mlの組合せを比較すると、発熱開始から355秒までは、比較例4の方が熱量が高いが、360秒〜1800秒の間は、実施例11の方が、比較例5より平均で5〜10℃高い温度を維持し、そのまま温度降下し、1800秒では、実施例38.1℃を、比較例4は32.1℃を示した。この結果から、実施例11が、比較例5より、総発熱量を大きくするという顕著
な効果を奏功していることが分かる。
【0100】
【表8】

【0101】
[実施例12]
発熱剤25g(AL16.22g、CaO8.10g)に塩化ナトリウムを0.675g(0.0115モル)を配合し、常水50mlを添加して発熱反応を起こさせた。測定開始5秒から1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図9に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表9に示した。塩化ナトリウムを0.675g、すなわち発熱剤の質量当たり2.7%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上389calである。
【0102】
[比較例6]
発熱剤25g(AL16.67g、CaO8.33g)に塩化ナトリウム無添加で、常水50mlを添加して発熱反応を起こさせ、測定開始5秒から1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図9に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表9に示した。
【0103】
[考 察]
図9において1は実施例12の結果、2は比較例6の結果、3は室温を示している。図9,表9,および5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例12は、測定開始後125〜180秒の間で安定した第1次最高温度帯域約80℃に達し、150秒で最高温度88.5℃に達した。その後、185〜1100秒、80℃以下70℃以上を維持しながら、ゆっくりと温度降下し、1100〜1800秒の間、ほぼ同じ降下率で70〜50℃に降下し、1800秒では52.9℃を示した。
【0104】
一方、比較例6は、測定開始後30〜40秒で第1次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間35秒で最高温度90.3℃を示した。その後、60〜185秒の間で第2次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間155秒で最高温度94.1℃を示した。その後、185〜1800秒まで、ほぼ同じ降下率で70〜40℃に降下し、1800秒では40.2℃を示した。
【0105】
この結果から、実施例12と比較例6を比較すると、発熱開始から255秒までは両者ほぼ同じ発熱挙動を示したが、255秒程度から、実施例12が比較例6より平均で15℃高い温度を維持して、そのまま1800秒まで温度降下したことがわかる。この結果から、実施例12が、比較例6より、総発熱量を大きくするという顕著な効果を奏功していることが分かる。
【0106】
【表9】

【0107】
[実施例13]
発熱剤40g(AL25.95g、CaO12.97g)に塩化ナトリウムを1.08g(0.0184モル)を配合し、常水80mlを添加して発熱反応を起こさせた。測定開始5秒から1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図10に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表10に示した。塩化ナトリウムを1.08g、すなわち発熱剤の質量当たり2.7%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上683calである。
【0108】
[比較例7]
発熱剤40g(AL26.67g、CaO13.33g)に塩化ナトリウム無添加で、常水80mlを添加して発熱反応を起こさせた。測定開始5秒から1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図10に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表10に示した。
【0109】
図10において1は実施例13の結果、2は比較例7の結果、3は室温を示している。図10,表10,および5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例13は、測定開始後30〜35秒で第1次最高温度80.1℃に達した。その後、80〜140秒の間で第2次最高温度帯域約70〜89℃に達しし、その間105秒で最高温度89.8℃を示した。次いで145〜240秒の間、約70〜60℃に降下した。245〜1445秒の間、約80〜100℃の第3次最高温度帯域約80〜90℃を示し、その間315秒で最高温度95.9℃を示した。その後、1450〜1800秒まで80〜70℃をほぼ同じ降下率で降下し、1800秒では72.2℃を示した。
【0110】
一方、比較例7は、測定開始後40〜50秒で第1次最高温度帯域約80〜83℃に達し、その間45秒で最高温度82℃を示した。その後、190〜705秒の間で第2次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間250秒で最高温度92.1℃を示した。次いで710〜1800秒まで80〜50℃をほぼ同じ降下率で降下し、1800秒では50.2℃を示した。
【0111】
この結果から、発熱剤40gと、塩化ナトリウム2.7%と水80mlの組合せの方が、発熱剤40gと水80mlの組合せより、高温維持時間が長く、総発熱量が大きいことが分かる。
【0112】
【表10】

【0113】
[実施例14]
発熱剤50g(AL32.43g、CaO16.21g)に塩化ナトリウムを1.35g(0.023モル)を配合し、常水100mlを添加して発熱反応を起こさせた。測定開始5秒から1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図11に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表11に示した。塩化ナトリウムを1.35g、すなわち、発熱剤の質量当たり、2.7%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上778calである。
【0114】
[比較例8]
発熱剤50g(AL32.43g、CaO16.21g)に塩化ナトリウム無添加で、常水100mlを添加して発熱反応を起こさせた。測定開始5秒から1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図11に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表11に示した。
【0115】
[考 察]
図11において1は実施例14の結果、2は比較例8の結果、3は室温を示している。図11,表11,および5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例14は、測定開始後35〜95秒で第1次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間80秒で92.2℃を示した。その後、135〜1505秒の間で第2次最高温度帯域約80〜89℃に達し、その間210秒で最高温度96.9℃を示した。次いで1510〜1800秒の間、80〜70℃をほぼ同じ降下率で降下し、1800秒では73.3℃を示した。
【0116】
一方、比較例8は、測定開始後30〜50秒の間で第1次最高温度帯域約80〜83℃に達し、その間35秒で最高温度83℃を示した。その後、70〜895秒の間で第2次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間220秒で最高温度96.8℃を示した。次いで895〜1800秒まで80〜50℃をほぼ同じ降下率で降下し、1800秒では56.5℃を示した。
【0117】
この結果から、発熱剤50gと、塩化ナトリウム2.7%と水100mlの組合せの方が、発熱剤50gと水100mlの組合せより、高温維持時間が長く、総発熱量が大きいことが分かる。
【0118】
【表11】

【0119】
[実施例15]
発熱剤60g(AL38.92g、CaO19.46g)に塩化ナトリウムを1.62(0.0277モル)を配合し、常水120mlを添加して発熱反応を起こさせた。5秒後から測定を開始し1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図12に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表12に示した。塩化ナトリウムを1.62g、すなわち発熱剤の質量当たり2.7%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上934calである。
【0120】
[比較例9]
発熱剤60g(AL40.00g、CaO20.00g)に塩化ナトリウム無添加で、常水120mlを添加して発熱反応を起こさせた。5秒後から測定を開始し、1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図12に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表12に示した。
【0121】
[考 察]
図12において1は実施例15の結果、2は比較例9の結果、3は室温を示している。図12,表12,および5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例15は、測定開始後45〜90秒の間で第1次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間70秒で90℃を示した。その後、130〜1800秒の間で第2次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間305秒で最高温度97.1℃に達した。
【0122】
一方、比較例9は、測定開始後45〜95秒の間で第1次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間85秒で最高温度89.5℃を示した。その後、150〜1105秒の間で第2次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間350〜375秒の間で最高温度97〜97.1℃を示した。次いで1110〜1800秒まで80〜60℃をほぼ同じ降下率で降下し、1800秒では62.5℃を示した。
【0123】
この結果から、発熱剤60gと、塩化ナトリウム2.7%と水120mlの組合せの方が、発熱剤60gと水120mlの組合せより、高温維持時間が長く、総発熱量が大きいことが分かる。
【0124】
【表12】

【0125】
次ぎに、発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に、微量(0.5%)の塩化ナトリム、及び大量(5%、10%、15%、20%、及び25%)の塩化ナトリムを配合し、常水70mlを添加して発熱反応を起こさせ、発熱剤に添加する塩化ナトリムの量の臨界性を検討した。
【0126】
[実施例16]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを3.5g(0.05988モル)を配合し、常水70mlを添加して発熱反応を起こさせた。5秒後から測定を開始し、1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図13に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表13に示した。塩化ナトリウムを3.5g、すなわち発熱剤の質量当たり10%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上2018calである。
【0127】
[実施例17]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを5.25g(0.0898モル)を配合し、常水70mlを添加して発熱反応を起こさせた。5秒後から測定を開始し、1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図13に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表13に示した。塩化ナトリウムを5.25、すなわち発熱剤の質量当たり15%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上3026calである。
【0128】
[考 察]
図13において1は実施例16の結果、2は実施例17の結果、3は室温を示している。図13,表13,および5秒間隔で得た元のディジタルデータを参照すると、実施例16は、測定開始後35〜45秒の間で第1次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間35秒で最高温度85℃を示した。その後、55〜210秒の間で第2次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間145秒で最高温度93.8℃を示した。その後、260〜910秒の間100〜90℃をほぼ同じ降下率で温度降下し、915秒〜1800秒まで80〜60℃をほぼ同じ降下率で温度降下し、1800秒では67.7℃を示した。
【0129】
一方、実施例17は、測定開始後45〜50秒の間で第1次最高温度帯域約80℃に達し、その間45秒で最高温度84.6℃を示した。その後、85〜180秒の間で第2次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間160秒で最高温度94.2℃を示した。その後、185〜255秒の間一旦80〜70℃に温度降下した。その後、260〜1010秒の間で第2次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間345〜365秒の間で最高温度95.7〜95.8℃を示した。その後、1015〜1435秒の間、90〜80℃をゆっくりと降下し、1440〜1800秒まで80〜70℃をほぼ同じ降下率で降下し、1800秒では71.3℃を示した。
【0130】
この結果から、発熱剤60gと、塩化ナトリウム2.7%と水120mlの組合せの方が、発熱剤60gと水120mlの組合せより、高温維持時間が長く、総発熱量が大きいことが分かる。
【0131】
【表13】

【0132】
[実施例18]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウムを0.175g(0.00299モル)を配合し、常水70mlを添加して発熱反応を起こさせ、測定開始5秒から1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図14に、5秒間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表14に示した。塩化ナトリウムを0.175g、すなわち発熱剤の質量当たり、0.5%添加したことによる発熱量の増加分は、理論上100.8calである。
【0133】
[実施例19]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウム
を1.75g(0.0299モル)を配合し、常水70mlを添加して発熱反
応を起こさせ、測定開始5秒から1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変
化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図14に、5秒
間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表14に示した。塩化ナ
トリウムを1.75g、すなわち発熱剤の質量当たり、5%添加したことによ
る発熱量の増加分は、理論上1009calである。
【0134】
[考 察]
図14において1は実施例18の結果、2は実施例19の結果、3は室温を
示している。図14,表14,および5秒間隔で得た元のディジタルデータを
参照すると、実施例18は、測定開始から160秒で71.8℃に達し、16
5〜210秒の間で、安定した第1次最高温度帯域約80〜90℃を示し、2
00秒で最高温度92.1℃に達した。その後、215〜300秒の間一旦8
0℃以下に温度降下し、305〜820秒の間で、第2次最高温度帯域約80
〜90℃を示し、その間395秒で最高温度88.9℃に達した。その後、82
5〜1800秒まで、ほぼ同じ降下率で温度降下し、1800秒では56.2
℃を示した。
【0135】
一方、実施例19は、測定開始から70〜175秒の間は、約73〜約90
℃の範囲で昇温、降温を繰り返す第1次最高温度帯域℃に達し、160秒で最高
温度93,3℃に達した。その後、235〜1380秒で、第2次最高温度帯
域約80〜90℃を示し、そ395秒で最高温度95.7℃に達した。その後、
1385〜1800秒の間、80℃からほぼ同じ降下率で温度降下し、180
0秒では70.2℃を示した。
【0136】
この結果から、発熱剤35g、塩化ナトリウム0.5%と水70mlの組合
せ、及び発熱剤35g、塩化ナトリウム5%と水70mlの組合せの両方が8
0〜90℃の高温維持時間が長いこと、総発熱量が大きいことが分かる。
【0137】
【表14】

【0138】
[実施例20]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウム
を7.0g(0.1197モル)を配合し、常水70mlを添加して発熱反応
を起こさせ、測定開始5秒から1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変化
を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図15に、5秒間
隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表15に示した。塩化ナト
リウムを7.0g、すなわち発熱剤の質量当たり20%添加したことによる発
熱量の増加分は、理論上4036calである。
【0139】
[実施例21]
発熱剤35g(AL22.70g、CaO11.35g)に塩化ナトリウム
を8.75g(0.1497モル)を配合し、常水70mlを添加して発熱反
応を起こさせ、測定開始5秒から1800秒に亘って、発生した蒸気の温度変
化を連続して自動記録し、得たアナログデータをグラフとして図15に、5秒
間隔で得たディジタルデ−タを1〜30分に圧縮して表15に示した。塩化ナ
トリウムを8.75g、すなわち発熱剤の質量当たり25%添加したことによ
る発熱量の増加分は、理論上5045calである。
【0140】
[考 察]
図15において1は実施例20の結果、2は実施例21の結果、3は室温を
示している。図15,表15,および5秒間隔で得た元のディジタルデータを
参照すると、実施例20は、測定開始後40〜45秒の間で第1次最高温度帯
域約80℃に達し、その間40秒で最高温度86.3℃を示した。その後、16
5〜285秒の間で安定した第1次最高温度帯域約80℃に達し、255秒で
最高温度88℃を示した。290〜485秒の間、一旦80〜60℃の間に降下
し、その後、490〜1800秒で、安定した第2次最高温度帯域約80〜9
0℃に達しし、その間990秒で最高温度95℃を示した。1235秒頃から、
ほぼ同じ降下率で温度降下し、1800秒では82.7℃を示した。
【0141】
一方、実施例21は、測定開始後45〜55秒の間で第1次最高温度帯域
約80℃に達し、その間45秒で最高温度87.4℃を示した。その後、発熱開
始90〜200秒で安定した第2次最高温度帯域約80〜90℃に達し、17
5秒で最高温度92.4℃を示した。その後、370〜1800秒の間で、安
定した第3次最高温度帯域約80〜90℃に達し、その間、550秒で最高温
度93.9に達し、1800秒でも76℃を示した。
【0142】
この結果から、発熱剤35g、塩化ナトリウム20%と水70mlの組合せ
、及び発熱剤35g、塩化ナトリウム25%と水70mlの組合せの両方が8
0〜90℃の高温維持時間、及び総発熱量の両方が極めて顕著に増大されてい
ることが分かる。
【0143】
【表15】

【0144】
[実施例22〜26]
次ぎに、実施例22〜26を、各実施例で3回試験を行った。それぞれの例
で、発熱剤の質量を正確に秤量し、発熱剤の質量当たり表16に示した量の塩
化ナトリウムを添加した水80mlと、発熱剤を反応させ、温度センサーを発
熱剤に直接接触させて、最高温度を測定し、3回の最高温度の平均値と、それ
ぞれの最高温度までの到達時間を測定した。得た結果を表16に示す。
【0145】
[比較例11]
比較例11として、3回試験を行った。それぞれの例で、発熱剤の質量を正
確に秤量し、発熱剤の質量当たり、表16に示した量の塩化ナトリウムを添加
した水80mlと、発熱剤とを反応させ、温度センサーを発熱剤に直接接触さ
せて、最高温度を測定し、3回の最高温度の平均値と、それぞれの最高温度ま
での到達時間を測定した。得た結果を表16に示す。
【0146】
【表16】

【0147】
[考 察]
表16に示した結果から、塩化ナトリウムを発熱剤に配合して常水と反応させ
た場合でも、塩化ナトリウムを水に配合して発熱剤と反応させた場合でも、同
じ発熱効果が得られることが分かる。特に、発熱剤の質量当たり3%の塩化ナ
トリウムを水に配合して、発熱剤と反応させた場合、反応開始から約10分以
内に最高温度120.2℃に到達した。
【産業上の利用可能性】
【0148】
以上述べたように、本発明の高発熱量発生発熱剤は、粉体生石灰と粉体アル
ミニウムとから成り水と反応させる化学発熱剤に、化学的に安全で、開放状態
でも安全に使用でき、安全に保管でき、かつ低価格の塩化ナトリウムを配合す
るだけで、最高到達温度を90〜100℃に引き上げ、反応開始から30分後
でも、70〜80℃近傍を維持することができるので、自衛隊用戦闘糧食、駅
弁、各種携帯食品、非常食等の加熱はもとより、温度管理を適切に行えば、登
山、釣り、スキューバーダイビング等マリーンスポーツで冷えきった体を現場
で暖めたり、地震等災害時の緊急避難所の屋内外で簡易沐浴設備を作るのに資
することができ、新たな用途を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】実施例1と比較例1における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図2】実施例2と比較例2における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図3】実施例3と比較例3における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図4】実施例4と実施例5における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図5】実施例6と実施例7における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図6】実施例8と実施例9における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図7】実施例10と比較例4における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図8】実施例11と比較例5における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図9】実施例12と比較例6における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図10】実施例13と比較例7における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図11】実施例14と比較例8における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図12】実施例15と比較例9における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図13】実施例16と実施例17における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図14】実施例18と実施例19における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。
【図15】実施例20と実施例21における発生蒸気の時間−温度変化を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体生石灰と粉体アルミニウムとから成り水と反応させる化学発熱剤に、塩化ナトリウムを配合したことを特徴とする発熱剤。
【請求項2】
発熱剤が、100メッシュ(−150・m90%以上)〜200メッシュ(−75・m95%以上)の粉体生石灰が15〜30質量%,及び−330メッシュ(−45・m)が40〜60%,+330メッシュ(+45・m)が15〜3質量0%,+235メッシュ(+63・m)が15%>、+200メッシュ(+75・m)が10%>の粒度分布を有する粉体アルミニウム70〜85質量%から成ることを特徴とする請求項1に記載の発熱剤。
【請求項3】
塩化ナトリウムの配合量が、発熱剤の質量当たり0.5〜25%である請求項1または2に記載した発熱剤。
【請求項4】
塩化ナトリウムを発熱剤に配合した請求項1〜3のいずれか1項に記載した発熱剤。
【請求項5】
塩化ナトリウムを水に配合した請求項1〜3のいずれか1項に記載した発熱剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−152090(P2006−152090A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343022(P2004−343022)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(598105570)
【出願人】(500067606)株式会社協同 (12)