発破締固め工法
【課題】改良範囲に隣接する周辺地盤への影響(地盤変形)を確実に制御可能とすることにより、例えば宅地地盤や道路地盤、河川堤防などに対しても、発破締固め工法の適用を可能とする。
【解決手段】地盤に所定間隔で多数の発破孔3,3…を形成し、この発破孔3,3…の所定深さ位置に爆薬を挿入設置し、前記爆薬を爆発させることにより地盤の締固めを行う発破締固め工法において、事前に、地盤改良範囲Hと、この地盤改良範囲H外の地盤変形を生じさせたくない民地領域Sとの境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸1を境界に沿って適宜の間隔で設ける。
【解決手段】地盤に所定間隔で多数の発破孔3,3…を形成し、この発破孔3,3…の所定深さ位置に爆薬を挿入設置し、前記爆薬を爆発させることにより地盤の締固めを行う発破締固め工法において、事前に、地盤改良範囲Hと、この地盤改良範囲H外の地盤変形を生じさせたくない民地領域Sとの境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸1を境界に沿って適宜の間隔で設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良領域に隣接する周辺地盤への影響(地盤変形)を抑制し得る発破締固め工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地下水で飽和された緩い砂質土地盤を、爆薬(発破)のエネルギーを利用して人工的に液状化を発生させ、地盤を締固める工法が知られている。この発破締固め工法は、基本的には、発破孔の間隔を設定した後、ボーリングマシンにより地盤中に削孔を行い、装薬のためのケーシングパイプ(樹脂製など)を建て込んだ後、発破孔内に、1または複数段に亘って装薬ユニットを挿入設置し爆発させるものである。
【0003】
前記発破締固め工法に係る先行技術文献としては、例えば下記特許文献1において、埋立地盤内に複数段の爆薬を充填したパイプを埋設し、前記各爆薬を爆圧が水平乃至下部側に向くべく制御した状態で順次下から爆発させて、前記埋立土砂に対する締固め圧力を加えるようにした埋立地盤の発破締固め工法が提案されている。
【0004】
また下記特許文献2において、少なくとも発破時以降における地盤内の間隙水圧を測定し、この測定結果に基づいて地盤の締り程度を評価し、この評価結果と目標締り程度との対比に基づいて、少なくとも追加発破実施の可否を決定するようにした発破による軟弱地盤の締固め方法が提案されている。
【0005】
さらに下記特許文献3において、地盤中に所定間隔で多数の発破孔を形成し、この発破孔の所定深さ位置に爆薬を挿入設置し、前記爆薬を爆発させることにより地盤の締固めを行う第1ステップと、少なくとも前記発破孔周辺の緩み領域を柱状型地盤改良工法によって改良を行うとともに、地盤表層領域を表層型地盤改良工法によって改良を行う第2ステップと、からなる発破工法を併用した地盤改良工法が提案されている。
【特許文献1】特開昭63−197713号公報
【特許文献2】特開平11−181754号公報
【特許文献3】特開2002−47638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した発破締固め工法は、地盤構成粒子の再堆積および間隙水圧の正常化への復帰に伴う締固めによって、より密な地盤組織へと変化させ、その後の液状化を確実に防止するものであり、他の締固め工法と比べて、工期が短くて済む、経済的であるなどの利点を有する。
【0007】
しかし、図11の改良後における沈下分布例図に示されるように、地盤組織の密度増加に伴って、改良範囲の略中心部では地盤沈下量が1000mm以上にも達するとともに、爆発による衝撃が同心円状に拡がるため、地盤改良領域に隣接する周辺地盤にもその影響がおよび地盤沈下が生じていた。そのため、これまでは発破締固め工法の対象地域は、広域な埋立地や、改良領域と近隣構造物との距離が相当程度、例えば50m以上離れている地域に限定せざるを得なかった。
【0008】
近隣構造物に影響を及ばさないようにするために従来は、火薬量を調整し衝撃を抑えたり、地盤振動に緩衝を生ずるように複数回の発破を行うなどの方法等を採っていたが、これらの方法では上昇水圧が小さくなるため改良効果が小さくなるとともに、周辺地盤の沈下抑制効果も十分ではなく、周辺地盤にも沈下が発生する可能性があった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、改良範囲に隣接する周辺地盤への影響(地盤変形)を最小化することにより、例えば宅地地盤や道路地盤、河川堤防などに対しても、当該発破締固め工法を適用可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために請求項1に係る発明として、地盤に所定間隔で多数の発破孔を形成し、この発破孔の所定深さ位置に爆薬を挿入設置し、前記爆薬を爆発させることにより地盤の締固めを行う発破締固め工法において、
事前に、地盤改良範囲と、この地盤改良範囲外の地盤変形を生じさせたくない周辺地盤との境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸を適宜の間隔で設けることを特徴とする発破締固め工法が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明においては、発破締固め工法の施工に当たり事前に、地盤改良範囲と、この地盤改良範囲外の地盤変形(主に沈下)を生じさせたくない周辺地盤との境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸を適宜の間隔で設けておき、発破時に前記周辺地盤における過剰間隙水圧の上昇を防ぐことにより、当該周辺地盤の沈下を抑制するものである。その結果、従来は適用対象が広域な埋立地等に限定されていた発破締固め工法を宅地地盤や道路地盤、河川堤防などに対しても適用できるようになり、発破締固め工法の適用範囲を拡大することが可能となる。
【0012】
図7に示されるように、液状化層厚HFLと液状化による沈下量δとの関係は、地震により液状化が発生すると、地盤に平均で約5%の体積ひずみが発生することが判明している。また、図8に示されるように、液状化程度(繰り返し回数Nを液状化までの繰り返し回数Nlで割った値)と過剰間隙水圧比の関係は、繰り返し回数が大きいほど過剰間隙水圧比も大きくなり液状化程度も大きいことが分かっているとともに、図9に示されるように、繰り返し回数と体積ひずみεvとの関係は、繰り返し回数が大きいほど体積ひずみεvも大きくなることが分かっている。これらより、図10に示されるように、地盤の体積ひずみεvの発生、すなわち地盤変形は、過剰間隙水圧比の発生が大きいほど(液状化の程度が大きいほど)大きくなる、との知見に基づき、周辺地盤における過剰間隙水圧の発生を防止することができれば、効果的に周辺地盤の地盤変形を抑制することができるとの考えの下、事前に改良範囲と周辺地盤との境界に過剰間隙水圧の消散用井戸を適宜の間隔で設けることにしたものである。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、空井戸、砕石等の高透水性材料の充填による排水井戸、穴空きパイプによる排水井戸等の静的排水井戸とし、発破時に前記静的排水井戸により過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0014】
請求項3に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸とし、
前記動的排水井戸の作動と同時に、或いは作動開始直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の本発明においては、前記過剰間隙水圧の消散用井戸として、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸を採用するものであり、上記請求項2記載の発明の静的排水井戸と比べると、タイムラグなく、迅速かつ効果的に過剰間隙水圧の消散を図ることができ、周辺地盤への影響を効果的に最小化できるようになる。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、下端が開口とされ、上部側又は上部に接続される流路途中に開閉バルブを備えた内管と、透水性の外管とからなる二重管構造の排水井戸とし、前記内管に圧気を封入して内管内水位を下げた状態としておき、
前記内管の開閉バルブを開放し圧気を放出すると同時に、或いは開閉バルブの開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0017】
請求項5に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、井戸内に膨縮自在のバルーンを挿入設置した構造とし、前記バルーンに気体を供給しバルーンを膨張させた状態としておき、
前記バルーン内の圧力開放と同時に、或いはバルーン内の圧力の開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0018】
請求項6に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、井戸内に、下端に開閉バルブを備えた管体を挿入設置した構造とし、前記管体内部の空気を排出して負圧状態としておき、
前記管体の下端開閉バルブの開放と同時に、或いは管体の下端開閉バルブの開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0019】
請求項7に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、強制排水可能な揚水井戸とし、
前記強制排水の開始と同時に、或いは強制排水の開始直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0020】
上記請求項4〜7記載の本発明は、請求項3記載の「動的排水井戸」を具体的に列挙したものであり、実施工に当たっては、これらの動的排水井戸のいずれかが好適に採用される。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、改良範囲に隣接する周辺地盤への影響(沈下)を最小化できるようになるため、例えば宅地地盤や道路地盤、河川堤防などに対しても、発破締固め工法を適用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0023】
本発明は、図1に示されるように、砂質層の軟弱地盤内に、民地領域Sに隣接して、発破による地盤締固め工法による改良範囲Hが設定された場合、当該民地領域Sにおける地盤変形を伴うことなく、前記改良範囲Hの締固めを行うために、図示の如く、地盤改良範囲Hと、地盤変形を生じさせたくない民地領域Sとの境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸1を境界に沿って適宜の間隔で設けるようにするものである。
【0024】
〔過剰間隙水圧の消散用井戸1の形態〕
前記過剰間隙水圧の消散用井戸1としては、種々の井戸が採用可能である。以下、具体的に列挙すると、
【0025】
(第1形態例)
最も簡易的には、前記消散用井戸1としては、空井戸、砕石等の高透水性材料の充填による排水井戸、穴空きパイプによる排水井戸等の静的排水井戸とすることができる。前記空井戸は単に素掘した井戸であり、前記砕石等の高透水性材料の充填による排水井戸は、グラベルドレーン工法に代表されるように、砂地盤中に砕石柱を造成することによって構築される排水井戸であり、前記穴空きパイプによる排水井戸はパイプドレーン工法に代表されるように、砂地盤中に穴空きパイプを挿入設置して構築される排水井戸である。
【0026】
前記静的排水井戸1は、図2に示されるように、不透水層2に達するように設けるのが最も望ましいが、民地領域Sにおける過剰間隙水圧比を所定値以下、例えば図10より過剰間隙水圧比を約0.5乃至0.6以下に抑えることができれば十分であり、発破による衝撃圧は円状に拡散していくため、図1に示されるように、不透水層2に達しない井戸としてもよい。また、前記静的排水井戸1の間隔は、例えば2〜3m、好ましくは1〜2mの間隔で配置するのが望ましい。
【0027】
上記静的排水井戸1を、発破による地盤の締固めに先だって、事前に設けておくことにより、発破時に前記静的排水井戸1により過剰間隙水圧の消散を図り、前記民地領域Sにおける間隙水圧の上昇を抑制することができる。
【0028】
(第2形態例)
図3に示される第2形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Bは、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸の例を示したものである。
【0029】
同図に示される動的排水井戸1Bは、下端が開口とされ、上部側又は上部に接続される流路の途中に排気バルブ7を備えた内管5と、該内管5を囲むように配設された透水性の外管6とからなる二重管構造の排水井戸とし、前記内管5へコンプレッサー(図示せず)から圧縮空気を供給可能としたものである。
【0030】
実施工に当たっては、図3(B)に示されるように、コンプレッサーから圧縮空気を内管5内に供給し、内管5内の水位を下げ、図3(C)のように内管5の下端近傍位置としておく。
【0031】
この状態から、前記内管5の排気バルブ7を開放し圧気を放出すると同時に、或いは排気バルブ7の開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記民地領域Sにおける間隙水圧の上昇を抑制する。
【0032】
(第3形態例)
図4に示される第3形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Cも、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸の例を示したものである。
【0033】
同図に示される動的排水井戸1Cは、井戸内に膨縮自在のバルーン8を挿入設置し、開閉バルブ9を開とし、コンプレッサー(図示せず)から圧縮空気を送り、図4(A)に示されるように、バルーン8を膨張させた状態としておく。
【0034】
そして、図4(B)に示されるように、開閉バルブ9を開とし前記バルーン8内の圧力開放と同時に、或いはバルーン8内の圧力の開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記民地領域Sにおける間隙水圧の上昇を抑制する。
【0035】
(第4形態例)
図5に示される第4形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Dも、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸の例を示したものである。
【0036】
同図に示される動的排水井戸1Dは、井戸内に、下端に開閉バルブ11を備えるとともに上端又は上端に接続される流路途中に開閉バルブ9を備えた管体10を挿入した構造とし、図5(A)に示されるように、下端開閉バルブ11を閉とした状態で、真空ポンプ(図示せず)により管体10内の空気を排気し負圧状態としておく。
【0037】
この状態から、図5(B)に示されるように、前記管体10の下端開閉バルブ11の開放と同時に、或いは管体10の下端開閉バルブ11の開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記民地領域Sにおける間隙水圧の上昇を抑制する。
【0038】
(第5形態例)
図6に示される第5形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Eも、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸の例を示したものである。
【0039】
同図に示される動的排水井戸1Eは、多数の吸水孔が形成されたストレーナ管12を井戸中に設置し、排水ポンプ13により強制的に井戸内の地下水を排水可能としたものである。
【0040】
そして、図6(B)に示されるように、前記排水ポンプ13の稼働による強制排水の開始と同時に、或いは強制排水の開始直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する。なお、排水ポンプに代えて、真空装置を使用することもできる。真空装置による揚水の方が、排水ポンプ13よりも急速排水が可能であるとともに、経済的であり、むしろ望ましい。
【0041】
上記第2〜5形態例に係る動的排水井戸1B〜1Eの場合も、不透水層2に達するように設けるのが最も望ましいが、民地領域Sにおける過剰間隙水圧比を所定値以下、例えば図10より過剰間隙水圧比を約0.5乃至0.6以下に抑えることができれば十分であり、発破による衝撃圧は円状に拡散していくため、図1に示されるように、不透水層2に達しない井戸としてもよい。また、前記動的排水井戸1の間隔は、例えば2〜3m、好ましくは1〜2mの間隔で配置するのが望ましい。
〔発破による地盤の締固め〕
以上のように、地盤改良範囲Hと、地盤変形を生じさせたくない民地領域Sとの境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸1を境界に沿って適宜の間隔で設置したならば、通常の手順に従って前記改良範囲Hの発破締固めを行う。具体的には、ピッチ約5〜10mのグリッド交点部に径約10〜20cm程度の発破孔3,3…をボーリングマシンを用いて形成する。この削孔には孔壁保護のために、塩ビ管などの樹脂管をケーシングパイプ4として建て込むようにするのが望ましい。
【0042】
削孔およびケーシングパイプ4の建込みを完了したならば、地上から所定の深さ位置に装薬ユニットを挿入設置する。この装薬ユニットの設置は、深さ方向の複数箇所、通常は2〜3箇所に分けて設置するのが望ましい。また、発破孔内には前記装薬ユニットと共に、砂、砕石などの粒状物を充填するようにする。また、発破による地盤改良は、複数回、例えば2回に分け、1回目の発破の後、間隙水圧の消散を待って2回目の発破を行うようにすれば、より大きな締固め効果が得られるようになる。
【0043】
前記発破により、地下水位以下において、爆発の衝撃力によって間隙水圧が過剰になるとともに、粒子堆積構造が破壊され、当該地盤に液状化が発生する。そして、地盤構成粒子の再堆積および間隙水圧の正常化への復帰に伴い、改良範囲H内の地盤が締固められる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る発破締固め工法の施工要領図(その1)である。
【図2】本発明に係る発破締固め工法の施工要領図(その2)である。
【図3】第2形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Bを示す図である。
【図4】第3形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Cを示す図である。
【図5】第4形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Dを示す図である。
【図6】第5形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Eを示す図である。
【図7】液状化層厚HFLと液状化による沈下量δとの関係図である。
【図8】液状化程度(繰り返し回数Nを液状化までの繰り返し回数Nlで割った値)と過剰間隙水圧比の関係図である。
【図9】繰り返し回数と体積ひずみεvとの関係図である。
【図10】過剰間隙水圧比と体積ひずみεvとの関係図である。
【図11】改良後における沈下分布例図である。
【符号の説明】
【0045】
1…消散用井戸、2…不透水層、3…発破孔、4…ケーシングパイプ、H…改良範囲、S…民地領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良領域に隣接する周辺地盤への影響(地盤変形)を抑制し得る発破締固め工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地下水で飽和された緩い砂質土地盤を、爆薬(発破)のエネルギーを利用して人工的に液状化を発生させ、地盤を締固める工法が知られている。この発破締固め工法は、基本的には、発破孔の間隔を設定した後、ボーリングマシンにより地盤中に削孔を行い、装薬のためのケーシングパイプ(樹脂製など)を建て込んだ後、発破孔内に、1または複数段に亘って装薬ユニットを挿入設置し爆発させるものである。
【0003】
前記発破締固め工法に係る先行技術文献としては、例えば下記特許文献1において、埋立地盤内に複数段の爆薬を充填したパイプを埋設し、前記各爆薬を爆圧が水平乃至下部側に向くべく制御した状態で順次下から爆発させて、前記埋立土砂に対する締固め圧力を加えるようにした埋立地盤の発破締固め工法が提案されている。
【0004】
また下記特許文献2において、少なくとも発破時以降における地盤内の間隙水圧を測定し、この測定結果に基づいて地盤の締り程度を評価し、この評価結果と目標締り程度との対比に基づいて、少なくとも追加発破実施の可否を決定するようにした発破による軟弱地盤の締固め方法が提案されている。
【0005】
さらに下記特許文献3において、地盤中に所定間隔で多数の発破孔を形成し、この発破孔の所定深さ位置に爆薬を挿入設置し、前記爆薬を爆発させることにより地盤の締固めを行う第1ステップと、少なくとも前記発破孔周辺の緩み領域を柱状型地盤改良工法によって改良を行うとともに、地盤表層領域を表層型地盤改良工法によって改良を行う第2ステップと、からなる発破工法を併用した地盤改良工法が提案されている。
【特許文献1】特開昭63−197713号公報
【特許文献2】特開平11−181754号公報
【特許文献3】特開2002−47638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した発破締固め工法は、地盤構成粒子の再堆積および間隙水圧の正常化への復帰に伴う締固めによって、より密な地盤組織へと変化させ、その後の液状化を確実に防止するものであり、他の締固め工法と比べて、工期が短くて済む、経済的であるなどの利点を有する。
【0007】
しかし、図11の改良後における沈下分布例図に示されるように、地盤組織の密度増加に伴って、改良範囲の略中心部では地盤沈下量が1000mm以上にも達するとともに、爆発による衝撃が同心円状に拡がるため、地盤改良領域に隣接する周辺地盤にもその影響がおよび地盤沈下が生じていた。そのため、これまでは発破締固め工法の対象地域は、広域な埋立地や、改良領域と近隣構造物との距離が相当程度、例えば50m以上離れている地域に限定せざるを得なかった。
【0008】
近隣構造物に影響を及ばさないようにするために従来は、火薬量を調整し衝撃を抑えたり、地盤振動に緩衝を生ずるように複数回の発破を行うなどの方法等を採っていたが、これらの方法では上昇水圧が小さくなるため改良効果が小さくなるとともに、周辺地盤の沈下抑制効果も十分ではなく、周辺地盤にも沈下が発生する可能性があった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、改良範囲に隣接する周辺地盤への影響(地盤変形)を最小化することにより、例えば宅地地盤や道路地盤、河川堤防などに対しても、当該発破締固め工法を適用可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために請求項1に係る発明として、地盤に所定間隔で多数の発破孔を形成し、この発破孔の所定深さ位置に爆薬を挿入設置し、前記爆薬を爆発させることにより地盤の締固めを行う発破締固め工法において、
事前に、地盤改良範囲と、この地盤改良範囲外の地盤変形を生じさせたくない周辺地盤との境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸を適宜の間隔で設けることを特徴とする発破締固め工法が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明においては、発破締固め工法の施工に当たり事前に、地盤改良範囲と、この地盤改良範囲外の地盤変形(主に沈下)を生じさせたくない周辺地盤との境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸を適宜の間隔で設けておき、発破時に前記周辺地盤における過剰間隙水圧の上昇を防ぐことにより、当該周辺地盤の沈下を抑制するものである。その結果、従来は適用対象が広域な埋立地等に限定されていた発破締固め工法を宅地地盤や道路地盤、河川堤防などに対しても適用できるようになり、発破締固め工法の適用範囲を拡大することが可能となる。
【0012】
図7に示されるように、液状化層厚HFLと液状化による沈下量δとの関係は、地震により液状化が発生すると、地盤に平均で約5%の体積ひずみが発生することが判明している。また、図8に示されるように、液状化程度(繰り返し回数Nを液状化までの繰り返し回数Nlで割った値)と過剰間隙水圧比の関係は、繰り返し回数が大きいほど過剰間隙水圧比も大きくなり液状化程度も大きいことが分かっているとともに、図9に示されるように、繰り返し回数と体積ひずみεvとの関係は、繰り返し回数が大きいほど体積ひずみεvも大きくなることが分かっている。これらより、図10に示されるように、地盤の体積ひずみεvの発生、すなわち地盤変形は、過剰間隙水圧比の発生が大きいほど(液状化の程度が大きいほど)大きくなる、との知見に基づき、周辺地盤における過剰間隙水圧の発生を防止することができれば、効果的に周辺地盤の地盤変形を抑制することができるとの考えの下、事前に改良範囲と周辺地盤との境界に過剰間隙水圧の消散用井戸を適宜の間隔で設けることにしたものである。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、空井戸、砕石等の高透水性材料の充填による排水井戸、穴空きパイプによる排水井戸等の静的排水井戸とし、発破時に前記静的排水井戸により過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0014】
請求項3に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸とし、
前記動的排水井戸の作動と同時に、或いは作動開始直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の本発明においては、前記過剰間隙水圧の消散用井戸として、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸を採用するものであり、上記請求項2記載の発明の静的排水井戸と比べると、タイムラグなく、迅速かつ効果的に過剰間隙水圧の消散を図ることができ、周辺地盤への影響を効果的に最小化できるようになる。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、下端が開口とされ、上部側又は上部に接続される流路途中に開閉バルブを備えた内管と、透水性の外管とからなる二重管構造の排水井戸とし、前記内管に圧気を封入して内管内水位を下げた状態としておき、
前記内管の開閉バルブを開放し圧気を放出すると同時に、或いは開閉バルブの開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0017】
請求項5に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、井戸内に膨縮自在のバルーンを挿入設置した構造とし、前記バルーンに気体を供給しバルーンを膨張させた状態としておき、
前記バルーン内の圧力開放と同時に、或いはバルーン内の圧力の開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0018】
請求項6に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、井戸内に、下端に開閉バルブを備えた管体を挿入設置した構造とし、前記管体内部の空気を排出して負圧状態としておき、
前記管体の下端開閉バルブの開放と同時に、或いは管体の下端開閉バルブの開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0019】
請求項7に係る本発明として、前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、強制排水可能な揚水井戸とし、
前記強制排水の開始と同時に、或いは強制排水の開始直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法が提供される。
【0020】
上記請求項4〜7記載の本発明は、請求項3記載の「動的排水井戸」を具体的に列挙したものであり、実施工に当たっては、これらの動的排水井戸のいずれかが好適に採用される。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、改良範囲に隣接する周辺地盤への影響(沈下)を最小化できるようになるため、例えば宅地地盤や道路地盤、河川堤防などに対しても、発破締固め工法を適用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0023】
本発明は、図1に示されるように、砂質層の軟弱地盤内に、民地領域Sに隣接して、発破による地盤締固め工法による改良範囲Hが設定された場合、当該民地領域Sにおける地盤変形を伴うことなく、前記改良範囲Hの締固めを行うために、図示の如く、地盤改良範囲Hと、地盤変形を生じさせたくない民地領域Sとの境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸1を境界に沿って適宜の間隔で設けるようにするものである。
【0024】
〔過剰間隙水圧の消散用井戸1の形態〕
前記過剰間隙水圧の消散用井戸1としては、種々の井戸が採用可能である。以下、具体的に列挙すると、
【0025】
(第1形態例)
最も簡易的には、前記消散用井戸1としては、空井戸、砕石等の高透水性材料の充填による排水井戸、穴空きパイプによる排水井戸等の静的排水井戸とすることができる。前記空井戸は単に素掘した井戸であり、前記砕石等の高透水性材料の充填による排水井戸は、グラベルドレーン工法に代表されるように、砂地盤中に砕石柱を造成することによって構築される排水井戸であり、前記穴空きパイプによる排水井戸はパイプドレーン工法に代表されるように、砂地盤中に穴空きパイプを挿入設置して構築される排水井戸である。
【0026】
前記静的排水井戸1は、図2に示されるように、不透水層2に達するように設けるのが最も望ましいが、民地領域Sにおける過剰間隙水圧比を所定値以下、例えば図10より過剰間隙水圧比を約0.5乃至0.6以下に抑えることができれば十分であり、発破による衝撃圧は円状に拡散していくため、図1に示されるように、不透水層2に達しない井戸としてもよい。また、前記静的排水井戸1の間隔は、例えば2〜3m、好ましくは1〜2mの間隔で配置するのが望ましい。
【0027】
上記静的排水井戸1を、発破による地盤の締固めに先だって、事前に設けておくことにより、発破時に前記静的排水井戸1により過剰間隙水圧の消散を図り、前記民地領域Sにおける間隙水圧の上昇を抑制することができる。
【0028】
(第2形態例)
図3に示される第2形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Bは、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸の例を示したものである。
【0029】
同図に示される動的排水井戸1Bは、下端が開口とされ、上部側又は上部に接続される流路の途中に排気バルブ7を備えた内管5と、該内管5を囲むように配設された透水性の外管6とからなる二重管構造の排水井戸とし、前記内管5へコンプレッサー(図示せず)から圧縮空気を供給可能としたものである。
【0030】
実施工に当たっては、図3(B)に示されるように、コンプレッサーから圧縮空気を内管5内に供給し、内管5内の水位を下げ、図3(C)のように内管5の下端近傍位置としておく。
【0031】
この状態から、前記内管5の排気バルブ7を開放し圧気を放出すると同時に、或いは排気バルブ7の開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記民地領域Sにおける間隙水圧の上昇を抑制する。
【0032】
(第3形態例)
図4に示される第3形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Cも、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸の例を示したものである。
【0033】
同図に示される動的排水井戸1Cは、井戸内に膨縮自在のバルーン8を挿入設置し、開閉バルブ9を開とし、コンプレッサー(図示せず)から圧縮空気を送り、図4(A)に示されるように、バルーン8を膨張させた状態としておく。
【0034】
そして、図4(B)に示されるように、開閉バルブ9を開とし前記バルーン8内の圧力開放と同時に、或いはバルーン8内の圧力の開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記民地領域Sにおける間隙水圧の上昇を抑制する。
【0035】
(第4形態例)
図5に示される第4形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Dも、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸の例を示したものである。
【0036】
同図に示される動的排水井戸1Dは、井戸内に、下端に開閉バルブ11を備えるとともに上端又は上端に接続される流路途中に開閉バルブ9を備えた管体10を挿入した構造とし、図5(A)に示されるように、下端開閉バルブ11を閉とした状態で、真空ポンプ(図示せず)により管体10内の空気を排気し負圧状態としておく。
【0037】
この状態から、図5(B)に示されるように、前記管体10の下端開閉バルブ11の開放と同時に、或いは管体10の下端開閉バルブ11の開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記民地領域Sにおける間隙水圧の上昇を抑制する。
【0038】
(第5形態例)
図6に示される第5形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Eも、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸の例を示したものである。
【0039】
同図に示される動的排水井戸1Eは、多数の吸水孔が形成されたストレーナ管12を井戸中に設置し、排水ポンプ13により強制的に井戸内の地下水を排水可能としたものである。
【0040】
そして、図6(B)に示されるように、前記排水ポンプ13の稼働による強制排水の開始と同時に、或いは強制排水の開始直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する。なお、排水ポンプに代えて、真空装置を使用することもできる。真空装置による揚水の方が、排水ポンプ13よりも急速排水が可能であるとともに、経済的であり、むしろ望ましい。
【0041】
上記第2〜5形態例に係る動的排水井戸1B〜1Eの場合も、不透水層2に達するように設けるのが最も望ましいが、民地領域Sにおける過剰間隙水圧比を所定値以下、例えば図10より過剰間隙水圧比を約0.5乃至0.6以下に抑えることができれば十分であり、発破による衝撃圧は円状に拡散していくため、図1に示されるように、不透水層2に達しない井戸としてもよい。また、前記動的排水井戸1の間隔は、例えば2〜3m、好ましくは1〜2mの間隔で配置するのが望ましい。
〔発破による地盤の締固め〕
以上のように、地盤改良範囲Hと、地盤変形を生じさせたくない民地領域Sとの境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸1を境界に沿って適宜の間隔で設置したならば、通常の手順に従って前記改良範囲Hの発破締固めを行う。具体的には、ピッチ約5〜10mのグリッド交点部に径約10〜20cm程度の発破孔3,3…をボーリングマシンを用いて形成する。この削孔には孔壁保護のために、塩ビ管などの樹脂管をケーシングパイプ4として建て込むようにするのが望ましい。
【0042】
削孔およびケーシングパイプ4の建込みを完了したならば、地上から所定の深さ位置に装薬ユニットを挿入設置する。この装薬ユニットの設置は、深さ方向の複数箇所、通常は2〜3箇所に分けて設置するのが望ましい。また、発破孔内には前記装薬ユニットと共に、砂、砕石などの粒状物を充填するようにする。また、発破による地盤改良は、複数回、例えば2回に分け、1回目の発破の後、間隙水圧の消散を待って2回目の発破を行うようにすれば、より大きな締固め効果が得られるようになる。
【0043】
前記発破により、地下水位以下において、爆発の衝撃力によって間隙水圧が過剰になるとともに、粒子堆積構造が破壊され、当該地盤に液状化が発生する。そして、地盤構成粒子の再堆積および間隙水圧の正常化への復帰に伴い、改良範囲H内の地盤が締固められる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る発破締固め工法の施工要領図(その1)である。
【図2】本発明に係る発破締固め工法の施工要領図(その2)である。
【図3】第2形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Bを示す図である。
【図4】第3形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Cを示す図である。
【図5】第4形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Dを示す図である。
【図6】第5形態例に係る過剰間隙水圧の消散用井戸1Eを示す図である。
【図7】液状化層厚HFLと液状化による沈下量δとの関係図である。
【図8】液状化程度(繰り返し回数Nを液状化までの繰り返し回数Nlで割った値)と過剰間隙水圧比の関係図である。
【図9】繰り返し回数と体積ひずみεvとの関係図である。
【図10】過剰間隙水圧比と体積ひずみεvとの関係図である。
【図11】改良後における沈下分布例図である。
【符号の説明】
【0045】
1…消散用井戸、2…不透水層、3…発破孔、4…ケーシングパイプ、H…改良範囲、S…民地領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に所定間隔で多数の発破孔を形成し、この発破孔の所定深さ位置に爆薬を挿入設置し、前記爆薬を爆発させることにより地盤の締固めを行う発破締固め工法において、
事前に、地盤改良範囲と、この地盤改良範囲外の地盤変形を生じさせたくない周辺地盤との境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸を適宜の間隔で設けることを特徴とする発破締固め工法。
【請求項2】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、空井戸、砕石等の高透水性材料の充填による排水井戸、穴空きパイプによる排水井戸等の静的排水井戸とし、発破時に前記静的排水井戸により過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【請求項3】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸とし、
前記動的排水井戸の作動と同時に、或いは作動開始直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【請求項4】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、下端が開口とされ、上部側又は上部に接続される流路途中に開閉バルブを備えた内管と、透水性の外管とからなる二重管構造の排水井戸とし、前記内管に圧気を封入して内管内水位を下げた状態としておき、
前記内管の開閉バルブを開放し圧気を放出すると同時に、或いは開閉バルブの開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【請求項5】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、井戸内に膨縮自在のバルーンを挿入設置した構造とし、前記バルーンに気体を供給しバルーンを膨張させた状態としておき、
前記バルーン内の圧力開放と同時に、或いはバルーン内の圧力の開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【請求項6】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、井戸内に、下端に開閉バルブを備えた管体を挿入設置した構造とし、前記管体内部の空気を排出して負圧状態としておき、
前記管体の下端開閉バルブの開放と同時に、或いは管体の下端開閉バルブの開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【請求項7】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、強制排水可能な揚水井戸とし、
前記強制排水の開始と同時に、或いは強制排水の開始直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【請求項1】
地盤に所定間隔で多数の発破孔を形成し、この発破孔の所定深さ位置に爆薬を挿入設置し、前記爆薬を爆発させることにより地盤の締固めを行う発破締固め工法において、
事前に、地盤改良範囲と、この地盤改良範囲外の地盤変形を生じさせたくない周辺地盤との境界部分に、過剰間隙水圧の消散用井戸を適宜の間隔で設けることを特徴とする発破締固め工法。
【請求項2】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、空井戸、砕石等の高透水性材料の充填による排水井戸、穴空きパイプによる排水井戸等の静的排水井戸とし、発破時に前記静的排水井戸により過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【請求項3】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、作動開始により周囲の地下水水位を強制的に低下可能とする動的排水井戸とし、
前記動的排水井戸の作動と同時に、或いは作動開始直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【請求項4】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、下端が開口とされ、上部側又は上部に接続される流路途中に開閉バルブを備えた内管と、透水性の外管とからなる二重管構造の排水井戸とし、前記内管に圧気を封入して内管内水位を下げた状態としておき、
前記内管の開閉バルブを開放し圧気を放出すると同時に、或いは開閉バルブの開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【請求項5】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、井戸内に膨縮自在のバルーンを挿入設置した構造とし、前記バルーンに気体を供給しバルーンを膨張させた状態としておき、
前記バルーン内の圧力開放と同時に、或いはバルーン内の圧力の開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【請求項6】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、井戸内に、下端に開閉バルブを備えた管体を挿入設置した構造とし、前記管体内部の空気を排出して負圧状態としておき、
前記管体の下端開閉バルブの開放と同時に、或いは管体の下端開閉バルブの開放直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【請求項7】
前記過剰間隙水圧の消散用井戸は、強制排水可能な揚水井戸とし、
前記強制排水の開始と同時に、或いは強制排水の開始直後に発破を行うことにより、過剰間隙水圧の消散を図り、前記周辺地盤における間隙水圧の上昇を抑制する請求項1記載の発破締固め工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−70504(P2006−70504A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253068(P2004−253068)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
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