説明

発臭性廃棄物の封止フィルム

【課題】 使用済みおむつやペットの糞、生ゴミその他の発臭性廃棄物を廃棄するまでの一定期間不快な臭いが殆ど漂いだすことなく保管しておくことができる発臭性廃棄物の封止フィルムを提供しようとするもの。
【解決手段】 包被フィルム3と前記包被フィルム3に形成された接着層4とを具備し、前記包被フィルム3と接着層4とによりガスバリア性を有し、発臭性廃棄物1を包被フィルム3に包み込んで前記接着層4により封止すると共に、この封止フィルムのT形剥離試験の剥離力を1.0N/25mm以上に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使用済みおむつその他の発臭性廃棄物を封止するための封止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭や病院、介護福祉施設等において、乳児や身体障害者、要介護の高齢者のために使い捨ておむつが利用されており、その使用数は近年の要介護高齢者の数の著しい増加に伴い増加している。
【0003】
通常使用済みおむつはスーパーの袋などのプラスチックバッグ等に入れて口を結び、ゴミ収集日までゴミ袋あるいはゴミ箱等に貯められる。従って、保管された使用済みおむつからゴミ収集日まで悪臭が発生することがあり不快である。
【0004】
そのため一連の連続した袋内に使用済みおむつを入れ、一つ入れる度に袋を捻ることにより、個々のおむつを外部から隔離しようとするものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかし、使用済みおむつを入れた袋を捻っただけでは、袋外部へ臭気が漏れ出す恐れがあり、またゴミ収集用のゴミ袋に移し変えるときに袋の捻れが解けて臭いが漏れ出したりするといった問題があった。このような問題は使用済みおむつに限らずペットの糞や生ゴミなどをゴミ収集日まで保管するとき、またその他の様々な発臭性廃棄物を一定期間保管する際にも起こりうる共通の問題である。
【特許文献1】特開2000−247401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は使用済みおむつやペットの糞、生ゴミその他の発臭性廃棄物を廃棄するまでの一定期間不快な臭いが殆ど漂いだすことなく保管しておくことができる発臭性廃棄物の封止フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の発臭性廃棄物のフィルムは、包被フィルムと前記包被フィルムに形成された接着層とを具備し、前記包被フィルムと接着層とによりガスバリア性を有し、発臭性廃棄物を包被フィルムに包み込んで前記接着層により封止すると共に、この封止フィルムのT形剥離試験(JIS K6854−3準拠)の剥離力を1.0N/25mm以上に設定したことを特徴とする。
【0008】
この発臭性廃棄物の封止フィルムは、使用済みおむつなどの発臭性廃棄物を(ゴミ収集日まで)保管する際は包被フィルムに包み込み、前記包被フィルムに形成された接着層により封止するようにしたので、発臭性廃棄物の周囲を密封して外部に臭気が漏れないガスバリア状態とすることができる。
【0009】
また、この封止フィルムのT形剥離試験の剥離力を1.0N/25mm以上に設定したので、発臭性廃棄物を包被した際にフィルム中にエア噛みが生じ、しかもこのエアを外側に向けて移動させようとする圧力(機械的な圧力や経時的に発酵した廃棄物から発生したガス圧)がかかったとしても、フィルム相互間の剥離が生じ難くなっているのでエアの移動はし難く臭気は漏洩し難い。前記剥離力の数値は1.0N/25mm以上であれば大きければ大きいほど臭気が漏洩し難く好ましいので、前記数値の上限は特になく接着層による剥離力が技術的に可能な限りであって、30や50N/25mm以上とかの数値であってもよい。
【0010】
前記包被フィルムとして、例えば未延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、未延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレンフィルムの混合物などの軟質プラスチックフィルムを用いることができる。
【0011】
包被フィルムと接着層とによるガスバリア性は、包被フィルム自体がガスバリア性を有するものとすることができ、接着層がガスバリア性を有するものとすることができ、包被フィルムと接着層との相乗作用によりガスバリア性を有するものとすることもできる。
(2)前記包被フィルムとして厚みが20〜60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを用いたこととしてもよい。
【0012】
このように構成すると、未延伸ポリプロピレンフィルム自体が有する柔軟性とその20〜60μmという厚みとの相乗効果によって、発臭性廃棄物を包被する際に、前記発臭性廃棄物から外周へ向けて放射状のトンネル状エア噛みが発生しかけても、フィルム自身の柔らかさやしなやかさによって前記トンネルが塞がるように人手によって又は機械的に容易に潰すことができ外部への臭気の漏洩を防止することができると共に発臭性ガスがフィルムを透過することを防止するバリア性をも併立することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0014】
この発臭性廃棄物の封止フィルムによると、発臭性廃棄物の周囲を密封して外部に臭気が漏れないガスバリア状態とすることができ臭いが殆ど漂いだすことがないので、使用済みおむつやペットの糞、生ゴミその他の発臭性廃棄物を廃棄するまでの一定期間不快な臭いが殆ど漂いだすことなく保管しておくことができる。
【0015】
また、発臭性廃棄物を包被した際にフィルム中にエア噛みが生じ、しかもこのエアを外側に向けて移動させようとする圧力(機械的な圧力や経時的に発酵した廃棄物から発生したガス圧)がかかったとしても、フィルム相互間の剥離が生じ難くなっているのでエアの移動はし難く臭気は漏洩し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、この実施形態の発臭性廃棄物1の封止フィルム2は、包被フィルム3と前記包被フィルム3の片面の全面に塗布・形成された接着層4とを具備し、前記包被フィルム3と接着層4とによりガスバリア性を有し、発臭性廃棄物1を包被フィルム3に包み込んで前記接着層4により封止するようにしている。
【0018】
前記包被フィルム3として、厚みが20〜60μmの透明性を有する未延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。前記封止フィルム2は、T形剥離試験(JIS K6854−3準拠)の剥離力を1.0N/25mm以上に設定したものである。この剥離力は貼り合わせた2枚のフィルムの接着力の指標となるものである。前記T形剥離試験は次の方法で行った。供試フィルムを、幅50mm×長さ200mmのサイズにカットした。カットした2枚の供試フィルムをその接着層4の面同士を対向させて接着させ、上から2kgのゴムローラーで300mm/min.の速度で1往復することにより一定の荷重で貼り合わせた。その後、供試フィルムの中央近傍から幅25mm×長さ200mmのサイズに切り出した。20〜40分放置した後、貼り合わせた前記供試フィルを引っ張り試験機(島津製作所社製、商品名オートグラフ AGS−G)のつかみ具に固定し、剥離速度300mm/nin.で剥離し、その時の数値を測定した。
【0019】
前記接着層4として、例えばアクリル系のコーティング剤、合成ゴム系のコーティング剤、ポリエーテル系のポリウレタン樹脂からなるコーティング剤などを用いることができる。また、包被フィルム3と接着層4とによるガスバリア性は、包被フィルム3自体がガスバリア性を有するものとすることができ、接着層4がガスバリア性を有するものとすることができ、包被フィルム3と接着層4との相乗作用によりガスバリア性を有するものとすることもできる。
【0020】
次に、この実施形態の発臭性廃棄物の封止フィルムの使用状態を説明する。
【0021】
この発臭性廃棄物の封止フィルム2は、使用済みおむつなどの発臭性廃棄物1をゴミ収集日まで保管する際は包被フィルム3に包み込み、前記包被フィルム3に形成された接着層4により封止するようにしたので、発臭性廃棄物1の周囲を密封して外部に臭気が漏れないガスバリア状態とすることができ臭いが殆ど漂いだすことがないので、使用済みおむつやペットの糞、生ゴミその他の発臭性廃棄物1を廃棄するまでの一定期間不快な臭いが殆ど漂いだすことなく保管しておくことができるという利点がある。
【0022】
また、包被フィルム3として厚みが20〜60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを用いることとしたので、未延伸ポリプロピレンフィルム自体が有する柔軟性とその20〜60μmという厚みとの相乗効果によって、発臭性廃棄物1を包被する際に、前記発臭性廃棄物1から外周へ向けて放射状のトンネル状エア噛みが発生しかけても、フィルム自身の柔らかさやしなやかさによって前記トンネルが塞がるように人手によって又は機械的に容易に潰すことができ外部への臭気の漏洩を防止することができると共に発臭性ガスがフィルムを透過することを防止するバリア性をも併立することができるという利点がある。
【0023】
さらに、前記封止フィルム2のT形剥離試験の剥離力を1.0N/25mm以上に設定しており、発臭性廃棄物1を包被した際にフィルム中にエア噛みが生じ、しかもこのエアを外側に向けて移動させようとする圧力(機械的な圧力や経時的に発酵した廃棄物によるガス圧)がかかったとしても、フィルム相互間の剥離が生じ難くなっているのでエアの移動はし難く臭気は漏洩し難いと共に、厚みが20〜60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを用い且つその剥離力を1.0N/25mm以上としているので、2枚のフィルムに発臭性廃棄物1を包被して貼り合わせた後に剥がそうとする力が働いても接着面が剥離する前にフィルム自体が伸びようとする働きが生じて接着面が離反しようとする動きが牽制されて発臭性廃棄物1はフィルム相互間に封入された状態を維持することができる。
【0024】
次に、この実施形態の発臭性廃棄物の封止フィルムの他の使用状態を説明する。
【0025】
図2に示すように、ロール状に巻回した一対の封止フィルム2の接着層4を内側にして略V字形を形成するように引き出し、その外側からスポンジローラーで圧接することによって前記接着層4同士を貼着するようにしている。前記スポンジローラーは、公知のモーター(図示せず)により回転駆動する。使用者は、使用済みおむつ等をV字形に配設した一対の前記封止フィルム2の内側に供給して前記スポンジローラー5を回転させる。すると使用済みおむつ等は前記スポンジローラー5によって圧縮されてエアが押し出されながら前記一対の封止フィルム2は互いに固着し、前記使用済みおむつは前記封止フィルム2によって封止され、前記使用済みおむつの周囲はガスバリア状態となり臭気が殆ど漂いだすことがない。
【0026】
このように、前記封止フィルム2は前記スポンジローラーによって圧接して貼着するため短時間で多くの数を処理することができ、病院や介護福祉施設などの業務用として使用するときに特に都合がよい。
【実施例】
【0027】
実施例1:未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被フィルム(厚さ40μm)の片面にアクリル系樹脂(日本合成化学工業社製、商品名5302A)からなる接着層(厚さ5μm)を形成した。T形剥離試験の剥離力は1.20N/25mmであった。
【0028】
実施例2:未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被フィルム(厚さ40μm)の片面にアクリル系樹脂(日本合成化学工業社製、商品名5302A)からなる接着層(厚さ8μm)を形成した。T形剥離試験の剥離力は1.80N/25mmであった。
【0029】
実施例3:未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被フィルム(厚さ40μm)の片面に合成ゴム系(広野化学工業社製、商品名S−132M)の接着層(厚さ5μm)を形成した。T形剥離試験の剥離力は3.0N/25mmであった。
【0030】
実施例4:未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被フィルム(厚さ40μm)の片面に合成ゴム系(ノーテープ工業社製、商品名G−5312)の接着層(厚さ5μm)を形成した。T形剥離試験の剥離力は4.5N/25mmであった。
【0031】
実施例5:未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被フィルム(厚さ40μm)の片面にポリエーテル系のポリウレタン樹脂(三洋化成工業社製、商品名IB−300)からなる接着層(厚さ5μm)を形成した。T形剥離試験の剥離力は4.5N/25mmであった。
【0032】
実施例6:未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被フィルム(厚さ40μm)の片面にアクリル系樹脂(日本合成化学工業社製、商品名KN−589)からなる接着層(厚さ5μm)を形成した。T形剥離試験の剥離力は7.0N/25mmであった。
【0033】
比較例1:未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被フィルム(厚さ40μm)の片面にアクリル系樹脂(日本合成化学工業社製、商品名KN−800)からなる接着層(厚さ5μm)を形成した。T形剥離試験の剥離力は0.75N/25mmであった。
【0034】
比較例2:未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被フィルム(厚さ40μm)の片面にアクリル系樹脂(日本合成化学工業社製、商品名5767)からなる接着層(厚さ8μm)を形成した。T形剥離試験の剥離力は0.50N/25mmであった。
【0035】
実施例1〜6の封止フィルム2のT形剥離試験の剥離力は1.0N/25mm以上であり、フィルム中に意図的にエア噛みを形成して、このエアを外側に向けて指で移動させようとしても移動させることができなかった。
【0036】
一方、比較例1、2の封止フィルム2のT形剥離試験の剥離力は1.0N/25mm未満あり、フィルム中に意図的にエア噛みを形成して、このエアを外側に向けて指で移動させようとすると簡単に移動させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発臭性廃棄物の封止フィルムは使用済みおむつ以外にも、ペットの糞や生ゴミその他の様々な発臭性廃棄物を封止することに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の発臭性廃棄物の封止フィルムの使用状態を説明する斜視図。
【図2】この発明の発臭性廃棄物の封止フィルムの他の使用状態を説明する図。
【符号の説明】
【0039】
1 発臭性廃棄物
2 封止フィルム
3 包被フィルム
4 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包被フィルム(3)と前記包被フィルム(3)に形成された接着層(4)とを具備し、前記包被フィルム(3)と接着層(4)とによりガスバリア性を有し、発臭性廃棄物(1)を包被フィルム(3)に包み込んで前記接着層(4)により封止すると共に、この封止フィルムのT形剥離試験(JIS K6854−3準拠)の剥離力を1.0N/25mm以上に設定したことを特徴とする発臭性廃棄物の封止フィルム。
【請求項2】
前記包被フィルム(3)として厚みが20〜60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを用いた請求項1記載の発臭性廃棄物の封止フィルム。

【図1】
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【図2】
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