説明

発臭性廃棄物の封止基材及び発臭性廃棄物の封止方法

使用済みおむつやペットの糞、生ゴミその他の発臭性廃棄物を廃棄するまでの一定期間不快な臭いが殆ど漂いだすことなく保管しておくことができる発臭性廃棄物の封止基材及びその封止方法を提供する。包被基材(10)と前記包被基材(10)に形成された接着層(11)とを具備すると共に、前記包被基材(10)と接着層(11)とによりガスバリア性を有し、発臭性廃棄物(2)を包被基材(10)に包み込んで前記接着層(11)により封止するようにした。使用済みおむつなどの発臭性廃棄物をゴミ収集日まで保管する際は包被基材に包み込み、前記包被基材に形成された粘着層により封止するようにしたので、発臭性廃棄物の周囲を密封して外部に臭気が漏れないガスバリア状態とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使用済みおむつその他の発臭性廃棄物を封止するための基材及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭や病院、介護福祉施設等において、乳児や身体障害者、要介護の高齢者のために使い捨ておむつが利用されており、その使用数は近年の要介護高齢者の数の著しい増加に伴い増加している。
【0003】
通常使用済みおむつはスーパーの袋などのプラスチックバッグ等に入れて口を結び、ゴミ収集日までゴミ袋あるいはゴミ箱等に貯められる。従って、保管された使用済みおむつからゴミ収集日まで悪臭が発生することがあり不快である。
【0004】
そのため一連の連続した袋内に使用済みおむつを入れ、一つ入れる度に袋を捻ることにより、個々のおむつを外部から隔離しようとするものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかし、使用済みおむつを入れた袋を捻っただけでは、袋外部へ臭気が漏れ出す恐れがあり、またゴミ収集用のゴミ袋に移し変えるときに袋の捻れが解けて臭いが漏れ出したりするといった問題があった。このような問題は使用済みおむつに限らずペットの糞や生ゴミなどをゴミ収集日まで保管するとき、またその他の様々な発臭性廃棄物を一定期間保管する際にも起こりうる共通の問題である。
【特許文献1】特開2000−247401号公報
【発明の開示】
【0006】
そこで、この発明は使用済みおむつやペットの糞、生ゴミその他の発臭性廃棄物を廃棄するまでの一定期間不快な臭いが殆ど漂いだすことなく保管しておくことができる発臭性廃棄物の封止基材及びその封止方法を提供しようとするものである。
【0007】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の発臭性廃棄物の封止基材は、包被基材と前記包被基材に形成された接着層とを具備すると共に、前記包被基材と接着層とによりガスバリア性を有し、発臭性廃棄物を包被基材に包み込んで前記接着層により封止するようにしたことを特徴とする。
【0008】
前記包被基材として、プラスチック製フィルムやプラスチック製シート、紙、紙にプラスチック製フィルムをラミネートしたものや、紙に合成樹脂を含浸したものなどを用いることができる。
【0009】
この発臭性廃棄物の封止基材は、使用済みおむつなどの発臭性廃棄物をゴミ収集日まで保管する際は包被基材に包み込み、前記包被基材に形成された接着層により封止するようにしたので、発臭性廃棄物の周囲を密封して外部に臭気が漏れないガスバリア状態とすることができる。
【0010】
ここで包被基材の全面で接着するようにすると、一部に孔が開いてもその部分近傍の臭気だけしか漏れない。また包被基材と接着層とによるガスバリア性は、包被基材自体がガスバリア性を有するものとすることができ、接着層がガスバリア性を有するものとすることができ、包被基材と接着層との相乗作用によりガスバリア性を有するものとすることもできる。さらに前記接着層として、常温で少しべたついた手触りがする粘着層などを用いることができる。
【0011】
(2)また、この発明の発臭性廃棄物の封止基材は、包被基材と前記包被基材に形成された粘着層とを具備すると共に、前記包被基材と粘着層とによりガスバリア性を有し、発臭性廃棄物を包被基材に包み込んで前記粘着層により封止するようにしたことを特徴とする。
【0012】
この発臭性廃棄物の封止基材は、使用済みおむつなどの発臭性廃棄物をゴミ収集日まで保管する際は包被基材に包み込み、前記包被基材に形成された粘着層により封止するようにしたので、発臭性廃棄物の周囲を密封して外部に臭気が漏れないガスバリア状態とすることができる。
【0013】
ここで包被基材と粘着層とによるガスバリア性は、包被基材自体がガスバリア性を有するものとすることができ、粘着層がガスバリア性を有するものとすることができ、また包被基材と粘着層との相乗作用によりガスバリア性を有するものとすることもできる。
【0014】
(3)前記包被基材が離型剤層を具備することとしてもよい。
このように構成すると、前記発臭性廃棄物の封止基材をロール状に巻いたときやマット状に複数枚堆積させたときなどに、前記封止基材同士が過度に強固に粘着することを抑制して容易に剥離させることができる。
【0015】
(4)前記包被基材の破断強度を約15〜200N/15mmに設定したこととしてもよい。このような破断強度に設定すると、発臭性廃棄物を包み込んだ際に外力が加わっても破れにくい。
【0016】
(5)前記包被基材の5%モジュラスを約5〜100N/15mmに設定したこととしてもよい。このような5%モジュラスに設定すると、封止基材の腰が強すぎることがなく封止基材同士が柔軟に粘着しやすいのでより効果的に発臭性廃棄物を封止することができる。
【0017】
(6)前記包被基材と前記接着層又は粘着層との少なくともいずれかに消臭剤又は/及び脱臭剤又は/及び防臭剤又は/及び香料又は/及び抗菌剤を付与したこととしてもよい。このように構成すると、防臭効果や消臭効果をより高めることができ、抗菌効果を与えることができる。前記消臭剤や脱臭剤、防臭剤や香料、抗菌剤は、練り込んだりコーティングしたりすることにより付与することができる。
【0018】
(7)前記接着層又は粘着層がポリウレタン樹脂からなり、その軟化点が70℃以上で125℃未満としてもよい。
【0019】
このように構成すると、前記のような構成の粘着層は離型剤処理がされていない面に対する接着力が強すぎず弱すぎず丁度よい程度であるので、ロール状に巻回した場合にその粘着層が離型処理をしていない面に対して過度に接着することがなく、あまり力を入れ過ぎないでもロールから円滑に巻き出すことができる。つまり、粘着層の逆面に対する離型剤処理を必要としない。また、粘着層自体の常温時のベタツキが少なく、扱う際に手などにベタベタとまとわりつき難い。
【0020】
ここで、あまり常温時のベタツキを軽減させ過ぎる(軟化点の範囲の上限を上げ過ぎる)と粘着層同士の接着力が喪失してくる不具合が生じる。すなわち、粘着層の軟化点を70℃以上で125℃未満に設定することにより、前記のような粘着層の離型剤処理がされていない面に対する接着力が丁度よくまた常温時のベタツキ性が少ないという利点を有するのであるが、この利点と共に粘着層同士の接着力(耐剥離力)が十分であるという利点(封止時の密着強度に優れ使用時に発臭物が発酵したり上から抑えられられたとしても臭気が極めて漏れにくい)をも好適に両立させることができる。
【0021】
なお前記ポリウレタン樹脂として、ポリエステル系のものとすることやポリエーテル系のものを用いることができる。
【0022】
(8)この発明の発臭性廃棄物の封止方法は、前記発臭性廃棄物の封止基材を用い、発臭性廃棄物を包被基材に包み込んで前記接着層又は粘着層により封止するようにしたことを特徴とする。
【0023】
この発臭性廃棄物の封止方法は、使用済みおむつなどの発臭性廃棄物をゴミ収集日まで保管する際は包被基材に包み込み、前記包被基材に形成された接着層又は粘着層により封止するようにしたので、発臭性廃棄物の周囲を密封して外部に臭気が漏れないガスバリア状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
[図1]この発明の実施形態1の発臭性廃棄物の封止基材により発臭性廃棄物を封止する状態を示す斜視図。
[図2]図1の発臭性廃棄物の封止基材の断面図。
[図3]図2の発臭性廃棄物の封止基材の他の実施形態を説明する断面図。
[図4]図1の発臭性廃棄物の封止基材をロール状の封止基材として使用する状態を示す斜視図。
[図5]図1の発臭性廃棄物の封止基材の他の使用形態を示す斜視図。
[図6]この発明の実施形態2の発臭性廃棄物の封止基材の斜視図。
[図7]この発明の実施形態3の発臭性廃棄物の封止基材の側面図。
[図8]熱機械分析装置を説明する図。
[図9]熱機械分析装置の針入モードを説明する図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1乃至4に示すように、この実施形態の発臭性廃棄物の封止基材1は、包被基材10を透明性を有する未延伸ポリプロピレン製フィルムにより形成し、その片面にゴム系の粘着層(接着層)11を積層一体化している。前記粘着層(接着層)11は前記包被基材10の片面全部を覆うように形成したが、一回に使用する大きさの前記封止基材1の周辺箇所のみに粘着層11を形成してもよい。
【0026】
包被基材10の材質は前記未延伸ポリプロピレンの他に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、未延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、延伸ナイロン、ポリエステル、普通セロハン、防湿セロハン、塩化ビニリデン、塩化ビニリデンコートセロハン、塩化ビニリデンコート延伸ポリプロピレン、ビニロン、エチレンビニルアルコール共重合体、延伸ビニロンとすることもできる。ここで、低密度ポリエチレン、未延伸ポリプロピレンを用いると、価格を安価とすることができ、使用時の貼付作業性がよく、最終的に焼却処理を行う際にも有毒燃焼ガス等を発生しないなどの点で好ましい。
【0027】
また前記包被基材10の厚さは40μmに設定したが、約12μm〜1mmのフィルムや約1mm以上のシートにより好適に実施することができた。前記粘着層11は厚み約10μmのゴム系のものとしたが、アクリル系の粘着剤とすることもできる。
【0028】
図2に示すように前記包被基材10は一層構造としたが、図3に示すように多層構造としてもよい。また図3に示すように、前記包被基材10の他面に離型剤層12を形成すると、前記封止基材1同士の剥離を容易に行うことができる。前記離型剤層12の材質は、例えばシリコーン系のものや非シリコーン系のもので構成することができる。
【0029】
前記包皮基材10は32N/15mmの破断強度を有するように設定しており、発臭性廃棄物を包み込んだ際に外力が加わっても破れにくく、万一穴が開いたとしても粘着層11が互いに貼着しているためその穴が広がりにくく使用済みおむつ2が外気に露出することを防止することができる。前記包皮基材10の破断強度は、前記の特性を好適に付与するために約15〜200N/15mmに設定することが好ましい。また前記包皮基材10の5%モジュラスは16N/15mmに設定したが、これを約5〜100N/15mmに設定すると、封止基材1の腰が強すぎることがなく封止基材同士が柔軟に粘着しやすいのでより効果的に発臭性廃棄物を封止することができた。
【0030】
なお、包被基材10か粘着層11の少なくともいずれかに消臭剤又は/及び脱臭剤又は/及び防臭剤又は/及び香料又は/及び抗菌剤を練りこんでおくと、防臭効果や消臭効果をより高めることができ、抗菌効果を与えることができる。
【0031】
次に、この実施形態の発臭性廃棄物の封止基材の使用状態を説明する。
【0032】
図4に示すように、前記封止基材1は粘着層11を内側としてロール状に巻いて、開口引き出し部30を有する外箱3aに収容している。前記外箱3aは両端面を内側に折り込むことにより、前記封止基材1を引き出す際に外箱3aから飛び出してしまうことを防いでいる。そして使用者はロール状の封止基材1を必要長さ引き出し、前記外箱3aの外辺に設けたノコ歯4で切り取る。
【0033】
なお、封止基材1自体に予めミシン目などをつけて簡単に手で切り取れるようにしたりしておいてもよい。また、前記封止基材1はロール状に巻きつける際粘着層11を内側にしたが、外側にしてもよい。この場合、前記外箱3aの内面に剥離紙を貼付するかあるいは剥離剤を塗布しておくと、内部に収納する封止基材1の粘着層11が外箱3aの内面に固着することを防止することができる。
【0034】
そして図1に示すように、前記封止基材1の前記粘着層11上に使用済みおむつ2を置いて包み込んで前記粘着層11により封止する。すると、前記使用済みおむつ2の周囲がガスバリア状態となり、前記使用済みおむつ2の臭気は殆ど漂い出すことがない。
【0035】
なお図5に示すように、前記封止基材1を切り取って前記粘着層11上の真ん中あたりに使用済みおむつ2を置き、更にもう一枚前記封止基材1を切り取って粘着層11を下にして前記使用後おむつ2に被せて包み込んでもよい。
【0036】
このように前記ロール状の封止基材1の使用方法は非常に簡単であり形状もコンパクトであり、一般家庭等で使用するときに特に都合がよい。
【0037】
(実施形態2)
この実施形態の発臭性廃棄物の封止基材1は前記実施形態1と同様の構造を有し、図6に示すように予め適当な大きさに切断し、ある程度の厚さになるようマット状に複数枚積層し、これを蓋を有する外箱3b内に収容している。
【0038】
使用者は先ず積層している封止基材1を一枚剥がし、前記封止基材1の前記粘着層11上に使用済みおむつ2を置いて包み込んで前記粘着層11により封止する。すると、前記使用済みおむつ2の周囲がガスバリア状態となり、前記使用済みおむつ2の臭気は殆ど漂い出すことがない。
【0039】
封止基材1は蓋を有する外箱3b内に収容しているので、前記粘着層11は埃などから保護され、また使用者は使用する封止基材1を取り出した後には前記外箱3bの蓋を閉じてその上で作業することもできる。ここで、前記外箱3bの内側に剥離紙を貼付するか剥離剤を塗布しておくと、内部に収納する封止基材1をカバーフィルム等で覆わなくても前記粘着層11が前記外箱3bの内側に固着することを防止することができ使い勝手がよい。
【0040】
(実施形態3)
この実施形態の発臭性廃棄物の封止基材1は前記実施形態1と同様の構造を有し、図7に示すようにロール状に巻回した一対の封止基材1の粘着層11を内側にして略V字形を形成するように引き出し、その外側からスポンジローラー5で圧接することによって前記粘着層11同士を貼着するようにしている。前記スポンジローラー5は、公知のモーター(図示せず)により回転駆動する。
【0041】
使用者は、使用済みおむつ2等をV字形に配設した一対の前記封止基材1の内側に供給して前記スポンジローラー5を回転させる。すると使用済みおむつ2等は前記スポンジローラー5によって圧縮されながら前記一対の封止基材1は互いに固着し、前記使用済みおむつ2は前記封止基材1によって封止され、前記使用済みおむつ2の周囲はガスバリア状態となり臭気が殆ど漂いだすことがない。
【0042】
このように前記封止基材1は前記スポンジローラー5によって圧接して貼着するため短時間で多くの数を処理することができ、病院や介護福祉施設などの業務用として使用するときに特に都合がよい。
【実施例1】
【0043】
以下のようにして、悪臭の臭気洩れに関する評価試験を行った。
【0044】
悪臭源として2.5%アンモニア水溶液を1mL含ませたウエスを用い、これを発臭性廃棄物の封止基材により封止し、これをポリエチレン製袋に入れて密閉した。前記ポリエチレン製袋は手で封を閉められる一般的なものを使用した。
【0045】
このようにしてアンモニア水溶液を含浸させたウエスを封止基材により封止して密閉した直後のポリエチレン製袋内のアンモニアガス濃度を測定した。そして、その後前記ポリエチレン製袋を常温で放置し、1日後、2日後、4日後のポリエチレン製袋内のアンモニアガス濃度を測定した。
【0046】
アンモニアガス濃度の測定には株式会社ガステック製のガステック探知器を使用し、検知管として光明理化学工業株式会社製の北川式ガス検知管を使用した。ここで使用した封止基材は次の通りである。
【0047】
(1)未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被基材(厚さ40μm)の片面にゴム系粘着層(厚さ10μm)を積層一体化した封止基材。
【0048】
(2)ポリエチレン(PE)製フィルムからなる包被基材(厚さ55μm)の片面にゴム系粘着層(厚さ10μm)を積層一体化した封止基材。
【0049】
(3)ポリエステル(PET)製フィルムからなる包被基材(厚さ25μm)の片面にゴム系粘着層(厚さ10μm)を積層一体化した封止基材。
【0050】
2.5%アンモニア水溶液を1mL含ませたウエスをそのままポリエチレン製袋に入れた時のポリエチレン製袋中のアンモニアガス濃度の値をブランク値とした。評価試験の結果を、表1に示す。
【0051】

【0052】
表1に示すように、密閉直後はブランク値ではアンモニアガス濃度が260ppm以上であるのに対し、上記発臭性廃棄物の封止基材(1)(2)(3)はいずれも0ppmであった。1日後はブランク値ではアンモニアガス濃度が60ppmであるのに対し、上記封止基材(1)(2)(3)はそれぞれ0〜2ppm、1〜2ppm、0〜1ppmであった。2日後はブランク値ではアンモニアガス濃度が40ppmであるのに対し、上記封止基材(1)(2)(3)はそれぞれ1〜4ppm、2〜4ppm、0〜2ppmであった。4日後はブランク値ではアンモニアガス濃度が10ppm以下であるのに対し、上記封止基材(1)(2)(3)はそれぞれ2〜4ppm、4〜6ppm、1〜3ppmであった。
【0053】
すなわち、実施例の発臭性廃棄物の封止基材(1)(2)(3)はアンモニアガスを含んだウエスを好適に封止することができ、その臭気が殆ど漂いだすことがないようにすることができた。
【実施例2】
【0054】
粘着層が形成された面同士を貼り合わせた際の相互間の接着力を評価するため、次の試験フィルム1〜5によりT型剥離試験を行った。内容を表2に示す。
【0055】

【0056】
(1)試験フィルム1(表中丸印を付けて示す、以下同様)
未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被基材(厚さ40μm)の片面にポリエステル系ポリウレタン樹脂(三洋化成社製、商品名サンプレンIB−129)からなる粘着層(厚さ5μm)を積層一体化した封止基材。前記粘着層の軟化点は80℃(メーカー公表値)である。
【0057】
ここで、前記粘着層の「軟化点」を、ティー・エー・インスツルメンツ社製の熱機械分析装置(型名TMA2940)を用いて測定した(JIS−K7196準拠)。前記TMAは、試料の温度変化に伴う形状変化を非振動的な荷重下で測定する熱分析法によるものである。図8に示すように、荷重発生部51からプローブ52を介して試料53に荷重を与えながら、加熱炉54にて試料温度を変化させる。温度変化に対応して試料53の軟化が生じると、変形に伴う変位量がプローブ52の位置変化量として位置検出部55で計測される。TMAには荷重のかけ方とプローブの形状により幾つかのモードがあるが、針入モードにより測定した。図9に示すように、前記針入モード(針進入法、昇温温度5℃/min)は、膨張・圧縮モード用のプローブ52(直径2.9mmで円柱状)の先端に針状の細い突起56を設け、局部的に荷重を加え、試料53の軟化点を測定する手法である。具体的には、圧力が0.1N、プローブの針状の細い突起56の直径が0.89mmで測定した。すると、軟化点の実測値は80.5℃であった。
【0058】
(2)試験フィルム2
未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被基材(厚さ40μm)の片面にポリエステル系ポリウレタン樹脂(三洋化成社製、商品名サンプレンIB−422)からなる粘着層(厚さ5μm)を積層一体化した封止基材。前記粘着層の軟化点は90℃(メーカー公表値)である。前記(1)のようにして測定した軟化点の実測値は75℃であった。
【0059】
(3)試験フィルム3
未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被基材(厚さ40μm)の片面にポリエーテル系ポリウレタン樹脂(三洋化成社製、商品名サンプレンIB−300)からなる粘着層(厚さ5μm)を積層一体化した封止基材。前記粘着層の軟化点は90℃(メーカー公表値)である。前記(1)のようにして測定した軟化点の実測値は90℃であった。
【0060】
(4)試験フィルム4
未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被基材(厚さ40μm)の片面にポリエーテル系ポリウレタン樹脂(三洋化成社製、商品名サンプレンIB−465)からなる粘着層(厚さ5μm)を積層一体化した封止基材。前記粘着層の軟化点は120℃(メーカー公表値)である。前記(1)のようにして測定した軟化点の実測値は125℃であった。
【0061】
(5)試験フィルム5
未延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルムからなる包被基材(厚さ40μm)の片面に合成ゴム系樹脂(ノーテープ工業社製、商品名G−5312)からなる粘着層(厚さ5μm)を積層一体化した封止基材。
【0062】
そして、T型剥離試験を次の方法で行った。
【0063】
試験フィルム1〜5を、幅25mm×長さ200mmのサイズにカットした。カットした2枚の試験フィルムについて、その粘着層が形成された面同士を対向させて積層し、上から2kgのゴムローラーで300mm/min.の速度で1往復して貼り合わせた。すると、試験フィルム4(ポリウレタン樹脂からなる粘着層の軟化点は120℃〔実測値125℃〕)はどちらかと言えば貼着しにくい傾向がみられた。そして20〜40分放置した後、貼り合わせた試験フィルム1,2,3、5のそれぞれを引っ張り試験機(島津製作所社製、商品名オートグラフ AGS−G)のつかみ具に固定し、剥離速度300mm/nin.で剥離した。その時の剥離力の数値を測定した。試験結果を表3に示す。
【0064】

【0065】
表3に示すように、試験フィルム1(ポリウレタン樹脂からなる粘着層の軟化点は80℃〔実測値80.5℃〕)の耐剥離力(接着力)は4.00N/25mm、試験フィルム2(前記粘着層の軟化点は90℃〔実測値75℃〕)の耐剥離力(接着力)は6.00N/25mm、試験フィルム3(前記粘着層の軟化点は90℃〔実測値90℃〕)の耐剥離力(接着力)は5.00N/25mm、試験フィルム5(合成ゴム系樹脂からなる粘着層)の耐剥離力(接着力)は5.00N/25mmであった。この試験フィルム1,2,3、5の耐剥離力(接着力)は十分なものであった。
【0066】
前記試験フィルムは、T型剥離試験に示されるように接着面同士の接着力が強いので、封止時の密着強度に優れ、実使用時に発臭物が発酵したり上から抑えられられたり一部に孔が空いてしまったとしても、粘着層によって接着性が付与されたフィルム面の全面で接着しているので臭気が極めて漏れにくいという利点がある。また、フィルム面の全面で接着しているので孔が開いた場合にはその部分近傍の臭気だけしか漏れないという利点がある。
【実施例3】
【0067】
上記表2に示す試験フィルム1〜5(粘着層を形成していない側の面は、離型剤処理等を施していない未処理面である)により、粘着層を形成した側の面の未処理面に対する粘着力の試験を次の方法で行った。
【0068】
試験フィルムの未処理面を上側に向けて両面テープでSUS板に貼り付けて被着体として準備した。幅25mm×長さ200mmにカットした試験フィルム1〜5について、粘着層が形成された側の面を前記被着体に積層し、2kgのゴムローラーで300mm/min.の速度で1往復して貼り合せた。すると、試験フィルム4(ポリウレタン樹脂からなる粘着層の軟化点は120℃〔実測値125℃〕)はどちらかと言えば貼着しにくい傾向がみられた。20〜40分放置した後、試験フィルム1,2,3,5のそれぞれを引っ張り試験機(島津製作所社製、商品名オートグラフ AGS−G)のつかみ具にとめた。そして、剥離速度300mm/nin.で剥離した。その時の剥離力の数値を測定した。試験結果を表3に示す。
【0069】
上記表3に示すように、試験フィルム1(ポリウレタン樹脂からなる粘着層の軟化点は80℃〔実測値80.5℃〕)の対未処理面の接着力は0.50N/25mm、試験フィルム2(前記粘着層の軟化点は90℃〔実測値75℃〕)の対未処理面の接着力は0.50N/25mm、試験フィルム3(前記粘着層の軟化点は90℃〔実測値90℃〕)の対未処理面の接着力は0.50N/25mm、試験フィルム4(前記粘着層の軟化点は120℃〔実測値125℃〕)の対未処理面の接着力は0.00N/25mm、試験フィルム5の対未処理面の接着力は5.00N/25mmであった。試験フィルム1,2,3の対未処理面の接着力は丁度よい程度のものであった。なお試験フィルム5(合成ゴム系樹脂からなる粘着層)の対未処理面の接着力は、少し強すぎるように感じるものであった。
【0070】
すなわち、ポリウレタン樹脂からなる粘着層の軟化点が80℃〔実測値80.5℃〕(試験フィルム1)、90℃〔実測値75℃〕(試験フィルム2)、90℃〔実測値90℃〕(試験フィルム3)の対未処理面の接着力は丁度よい程度のものであったが、前記粘着層の軟化点が120℃〔実測値125℃〕(試験フィルム4)の場合は未処理面に対して貼着しにくい傾向がみられた。この試験結果に示されるように、ポリウレタン樹脂からなる粘着層の軟化点が、対未処理面の接着力は丁度よい程度の試験フィルム2の実測値75℃よりも少し低い70℃以上であって、未処理面に対して貼着しにくい傾向がみられる試験フィルム4の実測値125℃未満の場合には適正な未処理面接着力を得ることができるものである。
【0071】
前記のように粘着層の軟化点が70℃以上で125℃未満の場合には適正な未処理面接着力を得ることができるので、ロール状に巻回した場合にその粘着面は離型処理等をしていない面に対して過度に接着することがなく、あまり力を入れ過ぎないでもロールから円滑に巻き出すことができるという利点がある。また粘着面自体の常温時のベタツキが少ないので、扱う際に手などにベタベタとまとわりつき難いという利点がある。
【0072】
なお、試験フィルム5(合成ゴム系樹脂からなる粘着層)は対未処理面に対する粘着力が強い傾向があるのできるだけ離型処理を行うことが好ましく、その分製造の手間やコストがかかる。またゴム系やアクリル系の粘着層は常温で手触りがベタベタした感じがするきらいがあり、ロール状に巻いてある場合に引き出す際に重い感じがすると共に引き剥がす音がうるさいきらいもある。このためゴム系やアクリル系の粘着層を用いる場合、ロール状に巻き取る態様では裏面側に離型処理を施しておくことが好ましい。
【実施例4】
【0073】
上記表2に示す試験フィルム1〜3、5により、臭気試験を行った。この臭気試験では、次の(6)ブランクと(7)相当品(チャック付きポリ袋)とについても併せて測定を行った。
【0074】
(6)ブランク
チャック付きポリ袋(中国製、コメリ社輸入販売、厚み40μm)を、アンモニア液を用いた臭気試験のための封止袋として使用した。
【0075】
(7)相当品(チャック付きポリ袋)
チャック付きポリ袋(中国製、コメリ社輸入販売、厚み40μm)を、上記各試験フィルムとの比較の対象とした。すなわち、このチャック付きポリ袋も前記ブランクのチャック付きポリ袋(6)に収容し、各試験フィルム1〜3、5との比較試験を行った。具体的には、次の通りである。
【0076】
2.5%アンモニア水溶液1mlをウエスに含ませ、前記ウエスを各試験フィルム及びチャック付きポリ袋(上記(7))で包皮して臭いが洩れないように密閉し、これをチャック付きポリ袋(6)に収容して封をした。このとき、チャック付きポリ袋(6)には極力空気を入れないようにした。そして、前記試験フィルムからチャック付きポリ袋(6)との相互間に漏洩したアンモニアガス濃度の測定を行った。また、2.5%アンモニア水溶液1mlをウエスに含ませ、前記ウエスをそのままチャック付きポリ袋(6)中に直接入れたものをブランクとした。
【0077】
常温で1日後,4日後にガス探知器(ガステック社製、ガステック検知器)でアンモニアガス濃度(アンモニアガスの漏れ)を測定した。アンモニアガス濃度の測定用の検知管もガステック社製のものを用いた。試験結果を表3に示す。
【0078】
上記表3から分かるように、試験フィルム1(上記(1))は最初は0ppm、1日後は2〜5ppm、4日後は10〜15ppmであった。試験フィルム2(上記(2))は最初は0ppm、1日後は2〜5ppm、4日後は10ppmであった。試験フィルム3(上記(3))は最初は0ppm、1日後は2〜5ppm、4日後は10ppmであった。試験フィルム5(上記(5))は最初は0ppm、1日後は2〜5ppm、4日後は10〜15ppmであった。これに対し、比較対照のチャック付きポリ袋(上記(7))は最初は0ppm、1日後は30ppm、4日後は30〜60ppmであった。なお、ブランク(上記(6))は最初は>500ppm、1日後は100ppm、4日後は30〜50ppmあった。
【0079】
すなわち、ポリウレタン樹脂からなる粘着層の軟化点が80℃(試験フィルム1)、90℃(試験フィルム2)、90℃(試験フィルム3)や合成ゴム系樹脂からなる粘着層を有するもの(試験フィルム5)は、比較対照のチャック付きポリ袋(上記(7))よりもアンモニアガスが洩れが少なく、したがって臭気の漏洩が少ないという利点が認められた。
【0080】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0081】
この発臭性廃棄物の封止基材及び発臭性廃棄物の封止方法によると、発臭性廃棄物の周囲を密封して外部に臭気が漏れないガスバリア状態とすることができ臭いが殆ど漂いだすことがないので、使用済みおむつやペットの糞、生ゴミその他の発臭性廃棄物を廃棄するまでの一定期間不快な臭いが殆ど漂いだすことなく保管しておくことができる。
産業上の利用の可能性
【0082】
この発臭性廃棄物の封止基材は使用済みおむつ以外にも、ペットの糞や生ゴミその他の様々な発臭性廃棄物を封止することに適用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
包被基材(10)と前記包被基材(10)に形成された接着層とを具備すると共に、前記包被基材(10)と接着層とによりガスバリア性を有し、発臭性廃棄物(2)を包被基材(10)に包み込んで前記接着層により封止するようにしたことを特徴とする発臭性廃棄物の封止基材。
【請求項2】
包被基材(10)と前記包被基材(10)に形成された粘着層(11)とを具備すると共に、前記包被基材(10)と粘着層(11)とによりガスバリア性を有し、発臭性廃棄物(2)を包被基材(10)に包み込んで前記粘着層(11)により封止するようにしたことを特徴とする発臭性廃棄物の封止基材。
【請求項3】
前記包被基材(10)が離型剤層を具備する請求項1又は2記載の発臭性廃棄物の封止基材。
【請求項4】
前記包被基材(10)の破断強度を約15〜200N/15mmに設定した請求項1乃至3のいずれかに記載の発臭性廃棄物の封止基材。
【請求項5】
前記包被基材(10)の5%モジュラスを約5〜100N/15mmに設定した請求項1乃至4のいずれかに記載の発臭性廃棄物の封止基材。
【請求項6】
前記包被基材(10)と前記接着層又は粘着層(11)との少なくともいずれかに消臭剤又は/及び脱臭剤又は/及び防臭剤又は/及び香料又は/及び抗菌剤を付与した請求項1乃至5のいずれかに記載の発臭性廃棄物の封止基材。
【請求項7】
前記接着層又は粘着層(11)がポリウレタン樹脂からなり、その軟化点が70℃以上で125℃未満とした請求項1乃至6のいずれかに記載の発臭性廃棄物の封止基材。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれかに記載の発臭性廃棄物の封止基材(1)を用い、発臭性廃棄物(2)を包被基材(10)に包み込んで前記接着層又は粘着層(11)により封止するようにしたことを特徴とする発臭性廃棄物の封止方法。

【国際公開番号】WO2005/040002
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515020(P2005−515020)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015928
【国際出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(592182791)株式会社スミロン (10)
【出願人】(501076472)住友商事プラスチック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】