発電装置、電子機器、移動手段及び発電装置の制御方法
【課題】圧電材料の圧電効果を利用して、大型化させることなく高い電圧を発生させることが可能な発電装置等を提供すること。
【解決手段】発電装置100は、変形方向を切り換えて変形する梁(変形部材)104と、梁104に設けられた圧電部材108と、圧電部材108に設けられた一対の電極(第1電極109a,第2電極109b)と、一対の電極の間に設けられ、圧電部材108の容量成分C0と共振回路を構成するインダクターLと、インダクターLに対して直列に接続されたスイッチSWと、一対の電極の間に設けられ、圧電部材108が発生する交流電流を整流する全波整流回路120と、全波整流回路120に含まれるダイオードD1,D3のアノードの電位及びカソードの電位を検出する電圧検出回路130と、電圧検出回路130の出力信号に基づいて、スイッチSWを所定期間導通状態とする制御回路(制御部)112と、を備える。
【解決手段】発電装置100は、変形方向を切り換えて変形する梁(変形部材)104と、梁104に設けられた圧電部材108と、圧電部材108に設けられた一対の電極(第1電極109a,第2電極109b)と、一対の電極の間に設けられ、圧電部材108の容量成分C0と共振回路を構成するインダクターLと、インダクターLに対して直列に接続されたスイッチSWと、一対の電極の間に設けられ、圧電部材108が発生する交流電流を整流する全波整流回路120と、全波整流回路120に含まれるダイオードD1,D3のアノードの電位及びカソードの電位を検出する電圧検出回路130と、電圧検出回路130の出力信号に基づいて、スイッチSWを所定期間導通状態とする制御回路(制御部)112と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾ素子などの圧電材料が変形したときに発生する電荷を電気エネルギーとして取り出す発電装置、発電装置を用いた電子機器及び移動手段、並びに発電装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)や、水晶(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの圧電材料は、外力を受けて変形すると、材料内部に電気分極が誘起されて表面に正負の電荷が現れる。このような現象は、いわゆる圧電効果と呼ばれている。圧電材料が有するこのような性質を利用して、片持ち梁を振動させて圧電材料に繰り返し加重を作用させ、圧電材料の表面に生じた電荷を電気として取り出す発電方法が提案されている。
【0003】
たとえば、先端に錘を設けるとともに圧電材料の薄板を貼り付けた金属製の片持ち梁を振動させ、振動に伴って圧電材料に交互に生じる正負の電荷を取り出すことによって交流電流を発生させる。そして、この交流電流をダイオードによって整流した後、コンデンサーに蓄えておき、電力として取り出す技術が提案されている(特許文献1)。また、圧電素子で正の電荷が発生している間だけ接点が閉じるようにすることで、ダイオードでの電圧損失を発生させずに直流電流が得られるようにした技術も提案されている(特許文献2)。これら技術を用いれば、発電装置を小型化することができるので、たとえば小型の電子部品に電池の代わりに組み込むなどの応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−107752号公報
【特許文献2】特開2005−312269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、提案されている従来の技術では、得られる電圧が、圧電材料の電気分極によって生じる電圧までに限られるという問題があった。このため、圧電材料から電気を取り出す発電回路とは別に昇圧回路が必要となることが多く、発電装置を十分に小型化することが難しいという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、圧電材料の圧電効果を利用した発電装置を大型化させることなく、高い電圧を発生させることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に設けられた圧電部材と、前記圧電部材に設けられた一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材の容量成分と共振回路を構成するインダクターと、前記インダクターに対して直列に接続されたスイッチと、前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材が発生する交流電流を整流する整流回路と、前記整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位及びカソードの電位を検出する電圧検出回路と、前記電圧検出回路の出力信号に基づいて、前記スイッチを所定期間導通状態とする制御部と、を備える、発電装置である。
【0008】
本発明によれば、圧電部材が変形部材に設けられているので、変形部材が変形することにより、圧電部材も変形する。このため、圧電部材には圧電効果によって正負の電荷が発生する。また、電荷の発生量は、変形部材の変形量(すなわち、圧電部材の変形量)が大きくなるほど多くなる。そして、圧電部材は、電気回路的にはコンデンサーと見なすことができるので、スイッチを接続することで、圧電部材とインダクターによる共振回路が形成され、圧電部材に発生していた電荷が圧電部材に設けられた一方の電極からインダクターに流れ込む。そして、インダクターに流れ込んだ電流はオーバーシュートして、圧電部材に設けられた他方の電極から圧電部材に流れ込む。従って、圧電部材とインダクターとを接続し、その後、所定のタイミングで、圧電部材からインダクターを切断すれば、インダクターを接続する前に圧電部材内に発生していた正負の電荷の配置を逆転させることができる。そして、その状態から、今度は逆方向に変形部材(圧電部材)を変形させれば、圧電効果によって発生した電荷を、圧電部材内に蓄積することができる。従って、変形部材(圧電部材)を繰り返し変形させ、変形部材の変形状態(振動状態)に同期して圧電部材とインダクターとの接続と切断を周期的に行うことにより、圧電部材内に電荷を蓄積することが可能となる。
【0009】
ところで、変形部材の変形(振動)に合わせて圧電部材内に蓄積される正負の電荷の配置は周期的に変化するので、この変化に応じて、圧電部材に設けられた一対の電極間の電圧も周期的に変化する。そして、この一対の電極間の電圧が整流回路を介して接続される負荷の両端間の電圧よりも高い期間だけ整流回路に電流が流れ、整流回路に含まれる所定のダイオードのアノードの電位がカソードの電位よりも高くなる。特に、本発明によれば、整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位とカソードの電位に基づいてスイッチを所定期間導通状態とすることで、変形部材の変形状態(振動状態)に同期した適切なタイミングで、圧電部材とインダクターとの接続及び切断を周期的に繰り返すことができる。これにより、圧電部材内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。また、圧電部材内に電荷を蓄積した分だけ、圧電部材に設けられた一対の電極間の電圧も増加するので、昇圧回路を別途用意しなくても、圧電材料の電気分極によって生じる電圧よりも高い電圧を発生させることができる。その結果、小型で効率の良い発電装置を得ることが可能となる。
【0010】
(2)この発電装置において、前記制御部は、前記ダイオードのアノードの電位がカソードの電位よりも高くなった後、前記ダイオードのアノードの電位がカソードの電位と同じ、もしくは低くなるときに前記スイッチを接続した後、前記所定期間が経過すると前記スイッチを切断するようにしてもよい。
【0011】
変形部材の変形方向が切り換わるタイミングは、圧電部材が発生させる電荷による電流の向きが切り換わるタイミング(電流が0となるタイミング)と一致する。つまり、変形部材の変形方向が切り換わるときに整流回路に流れていた電流が流れなくなる。従って、変形部材の変形方向が切り換わる前後で、整流回路を構成する所定のダイオードのアノードの電位がカソードの電位よりも高い状態から、前記ダイオードのアノードの電位がカソードの電位よりも低い状態に変化する。また、変形部材の変形方向が切り換わるタイミングでは、圧電部材が発生させる電圧がピークとなるから、このタイミングでスイッチを接続して共振回路を形成させることで、圧電部材に設けられた一対の電極間の電圧を効率よく昇圧させることができる。従って、この発電装置によれば、発電効率を高めることができる。
【0012】
(3)この発電装置において、前記整流回路は、前記圧電部材が発生する前記交流電流が、当該交流電流の極性に応じて、第1のダイオードと第4のダイオード、又は、第3のダイオードと第2のダイオード、に排他的に流れる全波整流回路であり、前記制御部は、前記第1のダイオード又は前記第4のダイオードのアノードの電位及びカソードの電位と、前記第3のダイオード又は前記第2のダイオードのアノードの電位及びカソードの電位とに基づいて、前記スイッチを前記所定期間導通状態とするようにしてもよい。
【0013】
変形部材(圧電部材)は繰り返し変形を行うから、圧電部材に設けられた一対の電極からは交流電流が発生する。従って、この発電装置によれば、当該一対の電極に全波整流回路を接続することで、圧電部材が発生するエネルギーを効率よく取り出して負荷に供給することができる。また、整流回路を構成し、排他的に電流が流れる2つのダイオードの各々のアノードの電位とカソードの電位に基づいて、変形部材の振動(変形)の半周期毎にスイッチの接続と切断を行うことができるので、圧電部材の発電効率を高めることができる。
【0014】
(4)この発電装置において、前記制御部は、前記共振回路の共振周期の半周期に相当する時間を前記所定期間として前記スイッチを導通状態とするようにしてもよい。
【0015】
圧電部材に設けられた一方の電極から流れ出した電荷が、インダクターを介して他方の電極から再び圧電部材に流れ込むまでの期間は、圧電部材とインダクターによって形成される共振回路の共振周期の半分となる。このため、スイッチを接続した後、共振周期の半分の時間が経過したタイミングで、スイッチを切断すれば、圧電部材内に発生した正負の電荷の配置を最も効率よく逆転させることができる。従って、この発電装置によれば、最も高い発電効率を実現することが可能である。
【0016】
(5)本発明は、上記の発電装置を用いた電子機器である。
【0017】
(6)本発明は、上記の発電装置を用いた移動手段である。
【0018】
これらの発明によれば、電池の代わりにリモコン等の小型電子機器に組み込むことが可能であるため、小型電子機器の移動により発電できるほか、例えば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動により発電し、移動手段に備わる機器に効率良く電力供給することもできる。
【0019】
(7)本発明は、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に設けられた圧電部材と、前記圧電部材に設けられた一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材の容量成分と共振回路を構成するインダクターと、前記インダクターに対して直列に接続されたスイッチと、前記圧電部材が発生する交流電流を整流する整流回路と、を備える発電装置の制御方法であって、前記整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位及びカソードの電位を検出するステップと、前記ダイオードのアノードの電位及びカソードの電位の検出結果に基づいて、前記スイッチを所定期間導通状態とするステップと、を含む。
【0020】
本発明によれば、整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位とカソードの電位に基づいてスイッチを所定期間導通状態とすることで、変形部材の変形状態(振動状態)に同期した適切なタイミングで、圧電部材とインダクターとの接続及び切断を周期的に繰り返すことができる。これにより、圧電部材内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。また、圧電部材内に電荷を蓄積した分だけ、圧電部材に設けられた一対の電極間の電圧も増加するので、昇圧回路を別途用意しなくても、圧電材料の電気分極によって生じる電圧よりも高い電圧を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の発電装置の構造を示した説明図である。
【図2】本実施例の発電装置の動作を示した説明図である。
【図3】本実施例の発電装置の動作原理の前半部分を概念的に示した説明図である。
【図4】本実施例の発電装置の動作原理の後半部分を概念的に示した説明図である。
【図5】適切なタイミングでスイッチをONしなければ、発電効率が低下する理由を示す説明図である。
【図6】適切なタイミングでスイッチをONしなければ、発電効率が低下する理由を示す説明図である。
【図7】適切なタイミングでスイッチをONしなければ、発電効率が低下する理由を示す説明図である。
【図8】LC共振回路の共振周期の3/2倍の時間だけスイッチをONにした場合の圧電部材の端子間の電圧波形を示した図である。
【図9】LC共振回路の共振周期の1/4の時間だけスイッチをONにした場合の圧電部材の端子間の電圧波形を示した図である。
【図10】ダイオードの両端の電位を比較することによって、梁の変形方向が切り換わるタイミングを決定できる理由を示す説明図である。
【図11】ダイオードの両端の電位を比較することによって、梁の変形方向が切り換わるタイミングを決定できる理由を示す説明図である。
【図12】電圧検出回路の構成例を示した図である。
【図13】電圧検出回路の各部の出力波形例を示した図である。
【図14】スイッチ制御処理のフローチャート図である。
【図15】第1変形例の発電装置の回路構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0023】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.発電装置の構造:
B.発電装置の動作:
C.発電装置の動作原理:
D.スイッチの切換タイミング:
E.変形例:
E−1.変形例1:
E−2.変形例2:
【0024】
A.発電装置の構造:
図1は、本実施例の発電装置100の構造を示した説明図である。図1(a)には、発電装置100の機械的な構造が示されており、図1(b)には電気的な構造が示されている。本実施例の発電装置100の機械的な構造は、先端に錘106が設けられた梁104が、基端側で支持端102に固定された片持ち梁構造となっており、支持端102は発電装置100内に固定されるのが望ましい。また、梁104の表面には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料によって形成された圧電部材108が取り付けられており、圧電部材108の表面には、表側と裏側とに、金属薄膜によって形成された第1電極(上部電極)109a、第2電極(下部電極)109bがそれぞれ設けられている。尚、図1(a)に示した例では、梁104の上面側に圧電部材108が設けられているが、梁104の下面側に圧電部材108を設けても良く、あるいは梁104の上面側および下面側の両方に圧電部材108を設けても良い。
【0025】
梁104は、基端側が支持端102に固定されており、先端側には錘106が設けられているので、振動などが加わると、図中に白抜きの矢印で示したように、梁104の先端が大きく振動する。その結果、梁104の表面に取り付けられた圧電部材108には、圧縮力および引張力が交互に作用する。すると、圧電部材108は圧電効果によって正負の電荷を発生し、その電荷が第1電極109a、および第2電極109bに現れる。また、錘106は必須ではないが、梁104の先端側と基端側とで重量のバランスが非均衡であることが望ましい。なぜなら、重量のバランスが非均衡であることで、たとえば、1つの振動により梁104の変位が反復しやすくなるためである。なお、梁104は、本発明の「変形部材」に相当する。
【0026】
図1(b)には、本実施例の発電装置100の回路図が例示されている。圧電部材108は、電気的には、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)C0として表すことができる。この圧電部材108に対して並列にインダクターLが接続されて、圧電部材108の容量成分と共に電気的な共振回路を形成している。そして、この共振回路をON/OFFするためのスイッチSWが、インダクターLに対して直列に接続されている。
【0027】
また、圧電部材108に設けられた第1電極109aおよび第2電極109bは、4つのダイオードD1〜D4から構成される全波整流回路120に接続されている。圧電部材108が発生する交流電流は、当該交流電流の極性に応じて、ダイオードD1(第1のダイオード)とダイオードD4(第4のダイオード)、又は、ダイオードD3(第3のダイオード)とダイオードD2(第2のダイオード)に排他的に流れる。更に、全波整流回路120には、電気負荷を駆動するために、整流後の電流を蓄えておく蓄電素子(出力用コンデンサー)C1が接続されている。
【0028】
電圧検出回路130は、ダイオードD1のアノードの電位とカソードの電位を比較するとともに、ダイオードD3のアノードの電位とカソードの電位を比較する。そして、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも高いか、又はダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも高い期間を示す信号を出力する。
【0029】
制御回路112は、電圧検出回路130の出力信号に基づいて、スイッチSWのON/OFFを制御する。具体的には、制御回路112は、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも高い状態から低い状態に変化したとき、あるいはダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも高い状態から低い状態に変化したときに、スイッチSWをONにし、所定期間が経過するとスイッチSWをOFFする。
【0030】
B.発電装置の動作:
図2は、本実施例の発電装置100の動作を示した説明図である。図2(a)には、梁104の振動に伴って、梁104の先端の変位uが変化する様子が示されている。尚、プラスの変位uは、梁104が上向きに反った状態(梁104の上面側が凹となった状態)を表しており、マイナスの変位(−u)は、梁104が下向きに反った状態(梁104の下面側が凹となった状態)を表している。また、図2(b)には、梁104の変形に伴って、圧電部材108が発生する電流の様子と、その結果として圧電部材108の内部に生じる起電力とが示されている。尚、図2(b)では、圧電部材108に電荷が発生する様子は、単位時間あたりに発生する電荷量(すなわち、電流Ipzt)として表され、また、圧電部材108に生じる起電力は、第1電極109aと第2電極109bとの間に生じる電位差Vpztとして表されている。
【0031】
図2(a)および図2(b)に示されるように、梁104の変位が増加している間は、圧電部材108は正方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipztがプラス値)、これに伴って第1電極109aおよび第2電極109bの電位差Vpztは正方向へ増加する。正方向の電位差Vpztが、蓄電素子C1の電圧VC1と全波整流回路120を構成しているダイオードの順方向降下電圧Vfの2倍との和、すなわち、VC1+2Vfよりも大きくなれば、それ以降に発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。また、梁104の変位が減少している間は、圧電部材108は負方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipztがマイナス値)、これに伴って第1電極109aおよび第2電極109bの電位差Vpztは負方向へ増加する。負方向の電位差Vpztが、VC1と全波整流回路120の2Vfの和よりも大きくなれば、発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。すなわち、図1のスイッチSWをOFFにしたままでも、図2(b)中に斜線を付して示した部分については、蓄電素子C1に電荷を蓄えることができる。
【0032】
本実施例の発電装置100では、制御回路112は、図2(c)に示すタイミングで、スイッチSWをONにする。すると、図2(d)に示すように、圧電部材108の端子間の電圧波形が、スイッチSWをONにしたときにシフトしたかのような現象が発生する。すなわち、たとえば、図2(d)中に「B」と表示した期間Bでは、圧電部材108の起電力に対応する細い破線で示した電圧波形Vpztがマイナス方向にシフトしたような、太い破線で示した電圧波形が圧電部材108の端子間に現れる。このような現象が発生する理由については後述する。また、図2(d)中に「C」と表示した期間Cでは、圧電部材108の起電力に対応する電圧波形Vpztがプラス方向にシフトしたような、太い破線の電圧波形が現れる。以降の期間D、期間E、期間Fなどについても同様に、圧電部材108の起電力に対応する電圧波形Vpztがプラス方向あるいはマイナス方向にシフトしたような、太い破線の電圧波形が現れる。そして、シフトした電圧波形が、VC1と2Vfとの和を超えた部分(図2(d)中に斜線を付して示した部分)では、圧電部材108で発生した電荷を蓄電素子C1に蓄えておくことができる。尚、圧電部材108から蓄電素子C1に電荷が流れる結果、圧電部材108の端子間の電圧(第1電極109aと第2電極109bとの間の電圧)Vgenは、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。その結果、第1電極109aおよび第2電極109bの間の電圧波形は、図2(d)に太い実線で示した波形となる。
【0033】
図2(b)に示したスイッチSWをOFFにしたままの場合と、図2(d)に示したように、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWをONにした場合とを比較すれば明らかなように、本実施例の発電装置100では、適切なタイミングでスイッチSWをONにすることで、効率よく、蓄電素子C1に電荷を蓄えることが可能となる。
【0034】
また、蓄電素子C1に電荷が蓄えられて、蓄電素子C1の端子間電圧が増加すると、それに従って電圧波形のシフト量も大きくなる。たとえば、図2(d)中の期間B(蓄電素子C1に電荷が蓄えられていない状態)と、図2(d)中の期間H(蓄電素子C1に少し電荷が蓄えられた状態)とを比較すると、期間Hの方が電圧波形のシフト量が大きくなっている。同様に、図2(d)中の期間Cと期間Iとを比較すると、蓄電素子C1に蓄えられた電荷が増えている期間Iの方が、電圧波形のシフト量が大きくなっている。このような現象が発生する理由については後述するが、この結果、本実施例の発電装置100では、圧電部材108を変形させたことによって、第1電極109aと第2電極109bとの間に生じる電圧Vpzt以上の電圧を、蓄電素子C1に蓄えることも可能となる。その結果、特別な昇圧回路を設ける必要がなくなり、小型で高効率の発電装置を得ることが可能となる。
【0035】
C.発電装置の動作原理:
図3は、本実施例の発電装置100の動作原理の前半部分を概念的に示した説明図である。また、図4は、本実施例の発電装置100の動作原理の後半部分を概念的に示した説明図である。図3では、圧電部材108の変形に合わせてスイッチSWをONにしたときのC0の電荷の動きが、概念的に示されている。図3(a)は、圧電部材108(正確には梁104)が上向きに(上面側が凹となるように)変形した状態を表している。圧電部材108が上向きに変形すると、電流源からは正方向の電流が流れ、C0に電荷が蓄積され、圧電部材108の端子間には正方向の電圧が発生する。電圧値は、圧電部材108の変形が大きくなるほど増加する。そして、圧電部材108の変形がピークとなったタイミング(電荷量がピークになったタイミング。図3(b)参照)で、スイッチSWをONにする。
【0036】
図3(c)には、スイッチSWをONにした直後の状態が示されている。C0には電荷が蓄えられているから、この電荷がインダクターLに流れようとする。インダクターLに電流が流れると磁束が生じる(磁束が増加する)が、インダクターLには、自らを貫く磁束の変化を妨げる方向に逆起電力が生じる性質(自己誘導作用)がある。スイッチSWをONにしたときには、電荷が流れることによって磁束が増加しようとするから、この磁束の増加を妨げる方向(換言すれば、電荷の流れを妨げる方向)に逆起電力が発生する。また、逆起電力の大きさは、磁束の変化速度(単位時間あたりの変化量)に比例する。図3(c)には、このようにしてインダクターLに生じる逆起電力が、斜線を付した矢印によって表されている。このような逆起電力が発生するため、スイッチSWをONにしても、圧電部材108の電荷は少しずつしか流れ出さない。すなわち、インダクターLを流れる電流は少しずつしか増加しない。
【0037】
その後、インダクターLを流れる電流がピークになると、磁束の変化速度が「0」となるので、図3(d)に示したように逆起電力が「0」となる。そして、今度は電流が減少し始める。すると、インダクターLを貫く磁束が減少するので、インダクターLには、この磁束の減少を妨げる方向(電流を流そうとする方向)の起電力が発生する(図3(e)参照)。その結果、この起電力によってC0から電荷を引き抜きながら、インダクターLを電流が流れ続ける。そして、電荷の移動の途中で損失が発生しなければ、圧電部材108の変形によって生じた全ての電荷が移動して、ちょうど正負の電荷が置き換わったような状態(すなわち、圧電部材108の下面側に正電荷が分布し、上面側に負電荷が分布した状態)となる。図3(f)には、圧電部材108の変形によって生じた正負の電荷が全て移動した状態が表されている。
【0038】
仮に、このままスイッチSWをONにしておくと、今度は上述した内容と逆の現象が生じる。すなわち、圧電部材108の下面側の正電荷がインダクターLに流れようとして、このときインダクターLには、電荷の流れを妨げる方向の逆起電力が発生する。その後、インダクターLを流れる電流がピークに達した後、減少に転じると、今度は電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)の起電力がインダクターLに発生する。その結果、圧電部材108の下面側にあった全ての正電荷が上面側に移動した状態(図3(b)に示した状態)となる。こうして圧電部材108の上面側に戻った正電荷は、再び、図3(b)〜図3(f)を用いて前述したようにして、下面側に移動する。
【0039】
このように、C0に電荷が蓄えられた状態でスイッチSWをONにした後、その状態を保っておくと、圧電部材108とインダクターLとの間で電流の向きが交互に反転する一種の共振現象が発生する。そして、この共振現象の周期は、いわゆるLC共振回路の周期Tとなるから、圧電部材108に含まれる容量成分C0の大きさ(キャパシタンス)をC、インダクターLの誘導成分の大きさ(インダクタンス)をLとすると、T=2π(LC)0.5によって与えられる。従って、スイッチSWをONにした直後(図3(b)に示した状態)から、図3(f)に示した状態となるまでの時間は、T/2となる。
【0040】
そこで、スイッチSWをONにしてからT/2が経過した時点で、図4(a)に示すようにスイッチSWをOFFにする。そしてこの状態から、圧電部材108(正確には梁104)を今度は下向きに(下面側が凹となるように)変形させる。前述した図3(a)では、圧電部材108を上向きに変形させたが、図4(a)では下向きに変形させているので、電流源から負方向の電流が流れ、圧電部材108の端子間の電圧が負方向へ大きくなるようにCoに電荷が蓄積する。また、図3(a)〜図3(f)を用いて前述したように、圧電部材108(正確には梁104)を下向きに変形させる前の段階で、圧電部材108の下面側には正電荷が分布し、上面側には負電荷が分布しているから、これらの電荷に加えて、下面側には新たな正電荷が蓄積され、上面側には新たな負電荷が蓄積されることになる。図4(b)には、スイッチSWをOFFにした状態で圧電部材108(正確には梁104)を変形させることによって、圧電部材108に新たな電荷が蓄積された状態が示されている。
【0041】
そして、この状態からスイッチSWをONにすると、圧電部材108の下面側に蓄積された正電荷がインダクターLに流れようとする。このときインダクターLには逆起電力が発生するので(図4(c)参照)、電流は少しずつ流れ始めるが、やがてピークに達して、その後は減少に転じる。すると、インダクターLには、電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)に起電力が発生し(図4(e)参照)、この起電力によって電流が流れ続けて、最終的には、圧電部材108の下面側に分布していた全ての正電荷が上面側に移動し、上面側に分布していた全ての負電荷が下面側に移動した状態となる(図4(f)参照)。また、下面側の全ての正電荷が上面側に移動し、上面側の全ての負電荷が下面側に移動する時間は、LC共振回路の半周期に相当する時間T/2となる。そこで、スイッチSWをONにした後、時間T/2が経過したらスイッチSWをOFFにして、今度は圧電部材108(正確には梁104)を上向きに(上面側が凹となるように)変形させれば、圧電部材108内に更に正負の電荷を蓄積することができる。
【0042】
以上に説明したように本実施例の発電装置100では、圧電部材108を変形させて電荷を発生させた後、圧電部材108をインダクターLに接続して、共振周期の半分の周期だけ共振回路を形成することで、圧電部材108内での正負の電荷の分布を反転させる。その後、圧電部材108を今度は逆方向に変形させて新たな電荷を発生させる。圧電部材108内での正負の電荷の分布は反転されているから、新たに発生させた電荷は圧電部材108に蓄積されることになる。その後、再び、共振周期の半分の周期だけ圧電部材108をインダクターLに接続して、圧電部材108内での正負の電荷の分布を反転させた後、圧電部材108を逆方向に変形させる。このような動作を繰り返すことで、圧電部材108を繰り返し変形させる度に、圧電部材108に蓄積された電荷を増加させることができる。
【0043】
図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、スイッチSWをONにする度に圧電部材108の端子間の電圧波形がシフトする特異な現象が生じるが、この現象は、以下のようなメカニズムによって発生する。すなわち、たとえば図2(d)中に示した期間Aでは、圧電部材108(正確には梁104)の変形に従って、第1電極109aおよび第2電極109bの間に電圧が発生するが、第1電極109aおよび第2電極109bは全波整流回路120に接続されているので、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は、全波整流回路120に接続された蓄電素子C1に流れ込む。その結果、梁104の変形がピークになった時点でスイッチSWをONにすると、その時に圧電部材108内に残っていた正負の電荷がインダクターLを介して移動して、圧電部材108内での正負の電荷の配置が入れ代わる。
【0044】
そして、正負の電荷の配置が入れ代わった状態から梁104を逆方向に変形させると、圧電部材108の第1電極109aおよび第2電極109bの間には、圧電効果による電圧波形が現れる。すなわち、圧電部材108の第1電極109aおよび第2電極109bの極性が入れ代わった状態から、圧電部材108に変形による電圧変化が発生することになる。その結果、図2(d)中に示した期間Bでは、梁104の変形によって圧電部材108に生じる電圧波形をシフトさせたような、電圧波形が現れることになる。もっとも、前述したように、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は蓄電素子C1に流れ込むので、圧電部材108の第1電極109aおよび第2電極109bの間の電圧は、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。その後、共振周期の半分の時間だけスイッチSWをONにすると、圧電部材108に残っていた正負の電荷の配置が入れ代わる。そして、その状態から梁104が変形することによって、圧電部材108には圧電効果による電圧波形が現れる。このため、図2(d)中に示した期間Cにおいても、梁104の変形による電圧波形をシフトさせたような電圧波形が現れることになる。
【0045】
また、図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、梁104が変形を繰り返しているうちに、電圧波形のシフト量が次第に大きくなるという現象も発生する。このため、圧電部材108の圧電効果によって第1電極109aと第2電極109bとの間に生じる電位差よりも高い電圧を、蓄電素子C1に蓄えることができるという大きな効果を得ることができる。このような現象は、次のようなメカニズムによって生じる。
【0046】
先ず、図2(d)中の期間Aあるいは期間Bに示したように、C1が充電されていない場合は、圧電部材108の端子間で発生する電圧が、全波整流回路120の2Vfを超えると、圧電部材108から蓄電素子C1に電荷が流れ込むので、圧電部材108の端子間に現れる電圧は、2Vfでクリップされている。しかし、こうして蓄電素子C1に電荷を蓄えるに従って蓄電素子C1の端子間の電圧が増加していく。すると、それ以降は、蓄電素子C1の端子間電圧がVC1と2Vfとの和よりも高い電圧になって始めて、圧電部材108から電荷が流れ込むようになる。このため、圧電部材108の端子間の電圧がクリップされる値が、蓄電素子C1に電荷が蓄えられるに従って次第に上昇していく。
【0047】
加えて、図3および図4を用いて前述したように、圧電部材108から電荷を流出させない限り、圧電部材108(正確には梁104)を変形させる度に、圧電部材108内の電荷は増えて行き、それに伴って、圧電部材108の端子間の電圧は大きくなる。このため、電荷がインダクターLやスイッチSWを流れる際の損失などを考えなければ、圧電部材108の端子間の電圧を大きくすることができる。このため、本実施例の発電装置100によれば、特別な昇圧回路を設けなくても、電気負荷の駆動に必要な電圧まで自然に昇圧させた状態で、発電することが可能となる。
【0048】
D.スイッチの切換タイミング:
以上に説明したように、本実施例の発電装置100では、圧電部材108(正確には梁104)に繰り返し変形を加えて、変形方向が切り換わるタイミングで、共振周期の半分の時間だけ圧電部材108をインダクターLに接続する。これにより、蓄電素子C1に最も効率良く電荷を蓄えることができ、加えて昇圧回路が不要なために容易に小型化することができるという優れた特徴を得ることができる。仮に、制御回路112がスイッチSWをONするタイミングと梁104の変形方向が切り換わるタイミングが一致しなくても、所定の周期で、LC共振回路の共振周期の半分の時間だけスイッチSWをONにすることで、圧電部材108の端子間の電圧Vgenを昇圧させることは可能である。ただし、スイッチSWをONするタイミングと梁104の変形方向が切り換わるタイミングが一致しなければ、発電効率は低下する。以下、この理由について説明する。
【0049】
図5(a)は、仮に、梁104の変形方向が切り替わる時刻t1でスイッチSWをONした後OFFしない場合の、圧電部材108の端子間の電圧Vgenの様子を示している。図5(b)は、図5(a)の時刻t1以降を拡大したものである。なお、図5の例では、全波整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0050】
時刻t1において、Vgenはピークになっており、スイッチSWがONすることにより、LC共振回路の共振周期Tの1/2の周期(時刻t1,t2,t3,t4,t5,t6,・・・)で正負のピーク値Vp1,Vp2,Vp3,Vp4,Vp5,Vp6,・・・が交互に現れながら減衰していく。もし、時刻t1からT/2だけ経過後の時刻t2にスイッチSWをOFFにすると、前述したVgenのシフト量はVp1の絶対値とVp2の絶対値の和(|Vp1|+|Vp2|)となる。なお、図3及び図4で説明したように、Vp2は、LC共振回路の共振により、容量成分C0の正負の電荷が入れ替わった時の電圧値であるから、Vp1の絶対値が大きいほどVp2の絶対値も大きくなる。従って、Vp1の絶対値が大きいほどVgenのシフト量も大きくなる。
【0051】
図6は、梁104の変形方向が切り替わるタイミング毎にスイッチSWがT/2だけONする場合の、圧電部材108の端子間の電圧Vgenの様子を示している。なお、図6の例でも、全波整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。圧電部材108が発生させる起電力Vpztの振幅が一定とすると、図6に示すように、最初にVgenが正のピーク値V1となるタイミングでスイッチSWがT/2だけONすると、VgenはV1+Vaだけマイナス方向にシフトする。すると、2回目にスイッチSWがONする時のVgenの電圧値V2=−(Va+2V1)であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVb+Va+2V1だけプラス方向にシフトする。同様に、3回目にスイッチSWがONする時のVgenの電圧値V3=Vb+2V1であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVc+Vb+2V1だけマイナス方向にシフトする。同様に、4回目にスイッチSWがONする時のVgenの電圧値V4=−(Vc+2V1)であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVd+Vc+2V1だけプラス方向にシフトする。同様に、5回目にスイッチSWがONする時のVgenの電圧値V5=−(Vd+2V1)である。ここで、V2=−(Va+2V1)であるから、明らかに|V2|>|V1|である。そして、V1,V2は図5(b)のVp1に対応する電圧値、Va,Vbは図5(b)のVp2に相当する電圧値であり、|V2|>|V1|であるから必ずVb>Vaとなる。すると、V2=−(Va+2V1),V3=Vb+2V1であり、Vb>Vaであるから|V3|>|V2|である。同様に、|V3|>|V2|であるから必ずVc>Vbとなり、V3=Vb+2V1,V4=−(Vc+2V1)であり、Vc>Vbであるから|V4|>|V3|である。同様に、|V4|>|V3|であるから必ずVd>Vcとなり、V4=−(Vc+2V1),V5=Vd+2V1であり、Vd>Vcであるから|V5|>|V4|である。要するに、梁104の変形方向が切り替わるタイミングでスイッチSWがT/2だけONすることにより、圧電部材108の端子間の電圧Vgenの絶対値は|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。
【0052】
梁104の変形方向が切り替わるタイミングとスイッチSWがONするタイミングがずれた場合も同様に考えることができる。図7(a)は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングの後ろでスイッチSWがT/2だけONする場合のVgenの様子を示し、図7(b)は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングの前でスイッチSWがT/2だけONする場合のVgenの様子を示している。なお、図7(a)、図7(b)の例でも、全波整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0053】
図7(a)及び図7(b)の例では、図6の例と同様に、Vgenは、最初にスイッチSWがONする時の電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONする時の電圧値V2=−(Va+2V1)、3回目にスイッチSWがONする時の電圧値V3=Vb+2V1、4回目にスイッチSWがONする時の電圧値V4=−(Vc+2V1)、5回目にスイッチSWがONする時の電圧値V5=−(Vd+2V1)、・・・となる。ここで、V2,V3,V4,V5,・・・は、それぞれ図6の場合のV2,V3,V4,V5,・・・と同じ式で表されるので、やはりV2>V1、V3>V2、V4>V3、V5>V4、・・・となる。従って、梁104の変形方向が切り替わるタイミングから前後にずれたタイミングでスイッチSWをT/2だけONしても、Vgenは|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。ただし、電圧値V1が高いほど、Va,Vb,Vc,Vd,・・・が大きくなるので、図6の例の方が、図7(a)及び図7(b)の例よりもVgenが昇圧するスピードが速く、発電効率が高い。
【0054】
なお、梁104の変位が0(Vgenが0)となるタイミングでスイッチSWがT/2だけONする場合(図7(a)及び図7(b)でV1=0の場合)は、LC共振回路の共振が起こらずVgenは昇圧しない。
【0055】
以上に説明したように、梁104の変形方向が切り換わるタイミングが一致するタイミングで、LC共振回路の共振周期の半分の時間だけスイッチSWをONにすることで、発電効率を最大にすることができる。なお、発電効率は低下するが、所定期間だけスイッチSWをONにしてもVgenを昇圧させることは可能である。例えば、図8は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの3/2倍の時間だけスイッチSWをONにした場合の、圧電部材108の端子間の電圧Vgenの一例を示している。要するに、図5(b)に示した時刻t1でスイッチをONにして時刻t3でスイッチSWをOFFにする場合に対応する。なお、図8の例でも、全波整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0056】
図8の例では、図6の例と同様に、Vgenは、最初にスイッチSWがONする時の電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONする時の電圧値V2=−(Va+2V1)、3回目にスイッチSWがONする時の電圧値V3=Vb+2V1、4回目にスイッチSWがONする時の電圧値V4=−(Vc+2V1)、5回目にスイッチSWがONする時の電圧値V5=−(Vd+2V1)、・・・となり、Vgenは|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。ただし、電圧値V1が高いほど、Va,Vb,Vc,Vd,・・・が大きくなるので、図6の例の方が、図8の例よりもVgenが昇圧するスピードが速く、発電効率が高い。
【0057】
一方、図9は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの1/4の時間だけスイッチSWをONにした場合の、圧電部材108の端子間の電圧Vgenの様子を示している。要するに、図5(b)に示した時刻t1でスイッチをONにして時刻(t1+t2)/2でスイッチSWをOFFにする場合に対応する。なお、図9の例でも、全波整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0058】
図9の例では、Vgenは、最初にスイッチSWがONする時の電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONする時の電圧値V2=−2V1、3回目にスイッチSWがONする時の電圧値V3=2V1、4回目にスイッチSWがONする時の電圧値V4=−2V1、5回目にスイッチSWがONする時の電圧値V5=2V1、・・・となる。すなわち、Vgenは2V1まで昇圧できるが、それ以上の昇圧はされない。
【0059】
同様に、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの3/4倍、5/4倍、7/4倍、9/4倍、・・・のいずれかの時間だけスイッチSWをONにした場合もV2=−2V1、V3=2V1、V4=−2V1、V5=2V1、・・・となり、Vgenは2V1まで昇圧できるが、それ以上の昇圧はされない。
【0060】
以上より、LC共振回路の共振により、少なくとも、VgenがスイッチSWをONにする時の極性と反対の極性となった時にスイッチSWをOFFすれば、Vgenが昇圧していく。要するに、LC共振回路の共振周期Tに対して、スイッチSWをONする所定期間を、少なくとも、(n+1/4)Tより長く(n+3/4)Tよりも短い時間(nは0以上の任意の整数)に設定すれば、Vgenを効率よく昇圧させることができる。
【0061】
前述したように、共振周期Tの1/2の時間だけスイッチSWをONするのが、スイッチSWの切り換え時のシフト量が最も大きくなるので、発電効率が最も高い。そこで、本実施例の発電装置100では、制御回路112は、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWをONにし、共振周期Tの1/2の時間が経過するとスイッチSWをOFFにする。
【0062】
もっとも、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWをONにすることは、それほど容易なことではない。たとえば、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでは、梁104の変位の大きさが最大と考えれば、機械的な接点を用いて、梁104が最大変位となったタイミングでONとなるように構成することも可能である。しかし、接点の調整がずれると効率が大きく低下することになる。そこで、本実施例の発電装置100では、電圧検出回路130を設けておき、全波整流回路120を構成する整流ダイオードの両端の電位を比較することで、スイッチSWを制御している。特に、本実施例では、電圧検出回路130は、ダイオードD1の両端の電位(アノードの電位とカソードの電位)を比較するとともに、ダイオードD3の両端の電位(アノードの電位とカソードの電位)を比較する。これにより、圧電部材108が発生する電流の極性によらず、ダイオードD1とダイオードD3のいずれか一方のアノードの電位とカソードの電位を比較することによって、梁104の変形方向の切り替わるときにスイッチSWを容易にONすることができる。
【0063】
図10は、ダイオードD1の両端の電位及びダイオードD3の両端の電位をそれぞれ比較することによって、梁104の変形方向が切り換わるタイミングを決定できる理由を示す説明図である。図10は、仮にスイッチSWを常にOFFにした状態での波形を示している。
【0064】
図10(a)には、梁104の変位が示されている。また、図10(b)には、梁104の振動に伴って、圧電部材108が発生させる電流Ipztと起電力Vpztとが変化する様子が示されている。また、図10(c)と図10(d)には、それぞれ、圧電部材108の第1電極109aの電位Vpzt1と第2電極109bの電位Vpzt2が変化する様子が示されている。なお、図10(c)及び図10(d)では、蓄電素子C1のマイナス側の電位を0としている。
【0065】
図示されるように、梁104の変位が正方向に大きくなると、起電力Vpztも正方向に大きくなり、第1電極109aの電位Vpzt1が高くなる。そして、Vpzt1(=ダイオードD1のアノードの電位)が蓄電素子C1のプラス側の電位VC(=ダイオードD1のカソードの電位)よりも高くなると、圧電部材108が発生させる正方向の電流Ipztが、全波整流回路120を構成しているダイオードD1に流れることになる。これにより、第1電極109aの電位Vpzt1は、蓄電素子C1のプラス側の電位VCとダイオードD1の順方向降下電圧Vfとの和の電位にクランプされる。
【0066】
同様に、梁104の変位が負方向に大きくなると、起電力Vpztも負方向に大きくなり、第2電極109bの電位Vpzt2が高くなる。そして、Vpzt2(=ダイオードD3のアノードの電位)が蓄電素子C1のプラス側の電位VC(=ダイオードD3のカソードの電位)よりも高くなると、圧電部材108が発生させる負方向の電流Ipztが、全波整流回路120を構成しているダイオードD3に流れることになる。これにより、第2電極109bの電位Vpzt2は、蓄電素子C1のプラス側の電位VCとダイオードD3の順方向降下電圧Vfとの和の電位にクランプされる。
【0067】
また、梁104の変位の大きさがピークとなるタイミング(すなわち、梁104の変形方向が切り換わるタイミング)では、圧電部材108の発生する電流Ipztの方向が反転する。たとえば、圧電部材108が正の起電力を発生している状態で、梁104の変位の大きさがピークになると、正方向に流れていた電流Ipztが負方向に反転する。従って、ダイオードD1に流れていた電流が流れなくなり、第1電極109aの電位Vpzt1はVCよりも低くなる。同様に、圧電部材108が負の起電力を発生している状態で、梁104の変位の大きさがピークになると、負方向に流れていた電流Ipztが正方向に反転する。従って、ダイオードD3に流れていた電流が流れなくなり、第2電極109bの電位Vpzt2はVCよりも低くなる。
【0068】
従って、梁104の変形方向が正から負に切り換わるタイミング(梁104の変位が正のピークとなるタイミング)は、ダイオードD1に流れていた電流が流れなくなり、Vpzt1がVCよりも高い電位からVCよりも低い電位に変化するタイミングと一致する。同様に、梁104の変形方向が負から正に切り換わるタイミング(梁104の変位が負のピークとなるタイミング)は、ダイオードD3に流れていた電流が流れなくなり、Vpzt2がVCよりも高い電位からVCよりも低い電位に変化するタイミングと一致する。そこで、図1に示したように、電圧検出回路130を用いて、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも高くなった後、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも低く(もしくは同じに)なるか、又はダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも高くなった後、ダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも低く(もしくは同じに)なったことを検出したら、そのタイミングから、図10(e)に破線で示す所定期間(例えば、LC共振回路の共振周期Tの1/2の時間)だけ、スイッチSWをONしてやればよい。
【0069】
なお、図10では仮にスイッチSWをOFFにした状態での波形を示したが、図10(e)に破線で示したタイミングで実際にスイッチSWをONにした場合の波形を図11に示す。図11(a)に示される梁104の変位は図10(a)と同じである。また、図11(b)に示される電流Ipztと起電力Vpztの変化は、図10(b)と同じである。図11(c)と図11(d)に示すように、図11(e)に示されるスイッチSWがONするタイミングでVpzt1とVpzt2がシフトする。
【0070】
図12に、電圧検出回路130の構成ブロック図を例示する。また、図13に、電圧検出回路130の各部の出力波形の一例を示す。
【0071】
比較器132は、圧電部材108の第1電極109aの電位(ダイオードD1のアノードの電位)Vpzt1と蓄電素子C1のプラス側の電位VC(ダイオードD1のカソードの電位)を比較し、2値化(パルス化)された信号(Vpls1)を出力する。
【0072】
比較器134は、圧電部材108の第2電極109bの電位(ダイオードD3のアノードの電位)Vpzt2と蓄電素子C1のプラス側の電位VC(ダイオードD3のカソードの電位)を比較、2値化(パルス化)された信号(Vpls2)を出力する。
【0073】
OR回路136は、比較器132の出力信号(Vpls1)と比較器134の出力信号(Vpls2)の論理和信号(Vpls)を出力する。このOR回路136の出力信号(Vpls)の立ち下がりエッジのタイミングでスイッチSWをONすればよい。
【0074】
図14は、スイッチSWのON/OFFを切り換えるスイッチ制御処理を示したフローチャートである。この処理は、例えば、制御回路112に内蔵されたCPUによって実行される。
【0075】
スイッチ制御処理を開始すると、制御回路112のCPUは、圧電部材108の第1電極109aの電位(ダイオードD1のアノードの電位)Vpzt1が蓄電素子C1のプラス側の電位VC(ダイオードD1のカソードの電位)よりも高いか、あるいは、圧電部材108の第2電極109aの電位(ダイオードD3のアノードの電位)Vpzt2が蓄電素子C1のプラス側の電位VC(ダイオードD3のカソードの電位)よりも高い状態を検出するまで待機する(ステップS10のN)。例えば、制御回路112のCPUは、電圧検出回路130の出力信号(Ipls)をモニターし、立ち上がりエッジを検出するまで待機する。
【0076】
制御回路112のCPUは、Vpzt1がVCよりも高いか、あるいは、Vpzt2がVCよりも高い状態を検出すると(ステップS10のY)、Vpzt1がVCよりも低く、かつ、Vpzt2がVCよりも低い状態を検出するまで待機する(ステップS12のN)。例えば、制御回路112のCPUは、電圧検出回路130の出力信号(Ipls)をモニターし、立ち下がりエッジを検出するまで待機する。
【0077】
そして、制御回路112のCPUは、Vpzt1がVCよりも低く、かつ、Vpzt2がVCよりも低い状態を検出すると(ステップS12のY)、スイッチSWをONにした後(ステップS14)、制御回路112に内蔵された図示しないタイマーをスタートする(ステップS16)。このタイマーは、あらかじめ設定された時間、本実施例では、LC共振回路の共振周期の1/2の時間を計時する。なお、この設定時間は、図示しないメモリーに記憶して書き換え可能にしておいてもよいし、不変でもよければメモリーに記憶しておかなくてもよい。
【0078】
そして、制御回路112のCPUは、タイマーが設定時間を計時するまで(LC共振回路の共振周期の1/2の時間が経過するまで)待機し(ステップS18のN)、タイマーが設定時間を計時すると(ステップS18のY)、スイッチSWをOFFする(ステップS20)。
【0079】
制御回路112のCPUは、再び、Vpzt1がVCよりも高いか、あるいは、Vpzt2がVCよりも高い状態を検出するまで待機し(ステップS10のN)、上述した一連の処理を繰り返す。
【0080】
以上のようにしてスイッチSWのON/OFFを行えば、少なくとも、圧電部材108の端子間の電圧を昇圧させることができるので、蓄電素子C1の電圧が上昇しても電荷を蓄えることができる。
【0081】
尚、本実施例では制御回路112が、本発明の「制御部」に相当する。
【0082】
以上に説明したように、本実施例の発電装置100によれば、ダイオードD1のアノードとカソードの電位及びダイオードD3のアノードとカソードの電位をモニターすることで、圧電部材108の振動(変形)の半周期毎に、適切なタイミングでスイッチSWのON/OFFを行うことができる。これにより、圧電部材108の端子間の電圧を効率よく昇圧させ、発電効率を高めている。
【0083】
特に、圧電部材108の変形方向が切り換わるタイミングと一致する、ダイオードD1(及びダイオードD3)のアノードの電位がカソードの電位よりも低くなるタイミングで精度よくスイッチSWをONすることで、より高い発電効率が得られる。さらに、スイッチSWをONする期間をLC共振回路の共振周期の1/2の時間とすることで、最大限の発電効率が得られる。
【0084】
ところで、梁104の変位が微小であり、あるいは蓄電素子C1に十分な電荷が蓄えられているような場合、圧電部材108に設けられた第1電極109aの電位Vpzt1や第2電極109bの電位Vpzt2が蓄電素子C1のプラス側の電位VCを超えることができない可能性がある。このような状態では、全波整流回路120に電流が流れず蓄電素子C1に電荷が蓄積されない。一方、全波整流回路120に電流が流れないということは、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも低く、かつ、ダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも低い状態が維持されるので、スイッチSWはOFFのままである。従って、本実施例の発電装置100によれば、蓄電素子C1に電荷を蓄積できない時は、スイッチSWのON/OFFを切り換えるために必要な電力を無駄に消費しないで済むという効果もある。
【0085】
E.変形例:
E−1.第1変形例:
上述した実施例では、ダイオードD1のアノードとカソードの電位及びダイオードD3のアノードとカソードの電位をそれぞれ比較しているが、例えば、図15に示すように、ダイオードD2のアノードとカソードの電位及びダイオードD4のアノードとカソードの電位をそれぞれ比較するようにしてもよい。
【0086】
E−2.第2変形例:
また、上述した実施例では、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも少しでも高くなるか、ダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも少しでも高くなれば、スイッチSWのON/OFFが行われる。このスイッチSWのON/OFFにも電力が必要であり、蓄電素子C1に蓄積された電力の一部が使用される。ところが、環境振動に合わせてスイッチSWをON/OFFし続けた場合、環境振動が比較的小さいと、単位時間あたりに、スイッチSWのON/OFFで消費される電力が蓄電素子C1に蓄積される電力よりも大きくなる場合も起こりうる。つまり、スイッチSWのON/OFFを繰り返すことで発電効率が高まるが、電力が蓄積されず、むしろ減っていくという状況が考えられる。そこで、スイッチSWのON/OFFにより電力が消費されても、蓄積される電力が確実に増加するような発電が得られる状況でのみスイッチSWのON/OFFを行うようにしてもよい。具体的には、ダイオードD1〜D4の順方向降下電圧Vfは流れる電流値によって変わるため、電圧検出回路130は、ダイオードD1のアノードとカソードの電位差あるいはダイオードD3のアノードとカソードの電位差が所定の閾値を超えた後、当該閾値を下回るタイミングでスイッチSWをONすればよい。シミュレーションやサンプル評価により、スイッチSWをON/OFFする際の消費電力を考慮しても蓄電素子C1に蓄電される電力が増加するような閾値を決定すればよい。
【0087】
以上、本実施例あるいは変形例について説明したが、本発明はこれら本実施例あるいは変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0088】
たとえば、上述した実施例では、圧電部材108が片持ち梁構造の梁104に取り付けられているものとして説明した。しかし、圧電部材108が取り付けられる部材は、振動などによって容易に繰り返し変形する部材であれば、どのような部材であっても構わない。たとえば、薄膜の表面に圧電部材108を取り付けても良いし、弦巻バネの側面に圧電部材108を取り付けても構わない。
【0089】
また、本発明の発電装置は振動や移動に応じて発電するため、たとえば、橋梁や建築物あるいは地すべり想定箇所などに発電装置を設置すれば地震などの災害時に発電し、電子機器などのネットワーク手段に必要時(災害時)だけ電源供給することもできる。
【0090】
尚、電子機器に限らず、本発明の発電装置は小型化が可能であるため、あらゆる機器に設置することもできる。たとえば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動により発電し、移動手段に備わる機器に効率良く電力供給することもできる。
【0091】
このとき、あらゆる振動に対応するために、梁104の長さや錘106の重さが異なる複数の発電装置100を移動手段に組み込んでもよい。たとえば、複数の発電装置100が共通の支持端102に固定されている発電ユニットとして構成されていてもよい。
【0092】
また、本発明の発電装置を電池の代わりにリモコン等の小型電子機器に組み込むこともできる。
【0093】
さらに、特定の機器等に設置されるのではなく、本発明の発電装置が例えばボタン電池、乾電池と同じ形状であって、電子機器一般で使用されてもよい。このとき、振動によって蓄電素子への充電が可能であるため、電力が喪失した災害時でも電池として使用可能である。また、一次電池より寿命が長いため、ライフサイクルの観点で環境負荷低減を図ることができる。
【0094】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0095】
100…発電装置、102…支持端、104…梁、106…錘、108…圧電部材、109a…第1電極、109b…第2電極、112…制御回路、120…全波整流回路、130…電圧検出回路、132…比較器、134…比較器、136…OR回路、L…インダクター、C1…蓄電素子、D1〜D4…ダイオード、SW…スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾ素子などの圧電材料が変形したときに発生する電荷を電気エネルギーとして取り出す発電装置、発電装置を用いた電子機器及び移動手段、並びに発電装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)や、水晶(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの圧電材料は、外力を受けて変形すると、材料内部に電気分極が誘起されて表面に正負の電荷が現れる。このような現象は、いわゆる圧電効果と呼ばれている。圧電材料が有するこのような性質を利用して、片持ち梁を振動させて圧電材料に繰り返し加重を作用させ、圧電材料の表面に生じた電荷を電気として取り出す発電方法が提案されている。
【0003】
たとえば、先端に錘を設けるとともに圧電材料の薄板を貼り付けた金属製の片持ち梁を振動させ、振動に伴って圧電材料に交互に生じる正負の電荷を取り出すことによって交流電流を発生させる。そして、この交流電流をダイオードによって整流した後、コンデンサーに蓄えておき、電力として取り出す技術が提案されている(特許文献1)。また、圧電素子で正の電荷が発生している間だけ接点が閉じるようにすることで、ダイオードでの電圧損失を発生させずに直流電流が得られるようにした技術も提案されている(特許文献2)。これら技術を用いれば、発電装置を小型化することができるので、たとえば小型の電子部品に電池の代わりに組み込むなどの応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−107752号公報
【特許文献2】特開2005−312269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、提案されている従来の技術では、得られる電圧が、圧電材料の電気分極によって生じる電圧までに限られるという問題があった。このため、圧電材料から電気を取り出す発電回路とは別に昇圧回路が必要となることが多く、発電装置を十分に小型化することが難しいという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、圧電材料の圧電効果を利用した発電装置を大型化させることなく、高い電圧を発生させることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に設けられた圧電部材と、前記圧電部材に設けられた一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材の容量成分と共振回路を構成するインダクターと、前記インダクターに対して直列に接続されたスイッチと、前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材が発生する交流電流を整流する整流回路と、前記整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位及びカソードの電位を検出する電圧検出回路と、前記電圧検出回路の出力信号に基づいて、前記スイッチを所定期間導通状態とする制御部と、を備える、発電装置である。
【0008】
本発明によれば、圧電部材が変形部材に設けられているので、変形部材が変形することにより、圧電部材も変形する。このため、圧電部材には圧電効果によって正負の電荷が発生する。また、電荷の発生量は、変形部材の変形量(すなわち、圧電部材の変形量)が大きくなるほど多くなる。そして、圧電部材は、電気回路的にはコンデンサーと見なすことができるので、スイッチを接続することで、圧電部材とインダクターによる共振回路が形成され、圧電部材に発生していた電荷が圧電部材に設けられた一方の電極からインダクターに流れ込む。そして、インダクターに流れ込んだ電流はオーバーシュートして、圧電部材に設けられた他方の電極から圧電部材に流れ込む。従って、圧電部材とインダクターとを接続し、その後、所定のタイミングで、圧電部材からインダクターを切断すれば、インダクターを接続する前に圧電部材内に発生していた正負の電荷の配置を逆転させることができる。そして、その状態から、今度は逆方向に変形部材(圧電部材)を変形させれば、圧電効果によって発生した電荷を、圧電部材内に蓄積することができる。従って、変形部材(圧電部材)を繰り返し変形させ、変形部材の変形状態(振動状態)に同期して圧電部材とインダクターとの接続と切断を周期的に行うことにより、圧電部材内に電荷を蓄積することが可能となる。
【0009】
ところで、変形部材の変形(振動)に合わせて圧電部材内に蓄積される正負の電荷の配置は周期的に変化するので、この変化に応じて、圧電部材に設けられた一対の電極間の電圧も周期的に変化する。そして、この一対の電極間の電圧が整流回路を介して接続される負荷の両端間の電圧よりも高い期間だけ整流回路に電流が流れ、整流回路に含まれる所定のダイオードのアノードの電位がカソードの電位よりも高くなる。特に、本発明によれば、整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位とカソードの電位に基づいてスイッチを所定期間導通状態とすることで、変形部材の変形状態(振動状態)に同期した適切なタイミングで、圧電部材とインダクターとの接続及び切断を周期的に繰り返すことができる。これにより、圧電部材内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。また、圧電部材内に電荷を蓄積した分だけ、圧電部材に設けられた一対の電極間の電圧も増加するので、昇圧回路を別途用意しなくても、圧電材料の電気分極によって生じる電圧よりも高い電圧を発生させることができる。その結果、小型で効率の良い発電装置を得ることが可能となる。
【0010】
(2)この発電装置において、前記制御部は、前記ダイオードのアノードの電位がカソードの電位よりも高くなった後、前記ダイオードのアノードの電位がカソードの電位と同じ、もしくは低くなるときに前記スイッチを接続した後、前記所定期間が経過すると前記スイッチを切断するようにしてもよい。
【0011】
変形部材の変形方向が切り換わるタイミングは、圧電部材が発生させる電荷による電流の向きが切り換わるタイミング(電流が0となるタイミング)と一致する。つまり、変形部材の変形方向が切り換わるときに整流回路に流れていた電流が流れなくなる。従って、変形部材の変形方向が切り換わる前後で、整流回路を構成する所定のダイオードのアノードの電位がカソードの電位よりも高い状態から、前記ダイオードのアノードの電位がカソードの電位よりも低い状態に変化する。また、変形部材の変形方向が切り換わるタイミングでは、圧電部材が発生させる電圧がピークとなるから、このタイミングでスイッチを接続して共振回路を形成させることで、圧電部材に設けられた一対の電極間の電圧を効率よく昇圧させることができる。従って、この発電装置によれば、発電効率を高めることができる。
【0012】
(3)この発電装置において、前記整流回路は、前記圧電部材が発生する前記交流電流が、当該交流電流の極性に応じて、第1のダイオードと第4のダイオード、又は、第3のダイオードと第2のダイオード、に排他的に流れる全波整流回路であり、前記制御部は、前記第1のダイオード又は前記第4のダイオードのアノードの電位及びカソードの電位と、前記第3のダイオード又は前記第2のダイオードのアノードの電位及びカソードの電位とに基づいて、前記スイッチを前記所定期間導通状態とするようにしてもよい。
【0013】
変形部材(圧電部材)は繰り返し変形を行うから、圧電部材に設けられた一対の電極からは交流電流が発生する。従って、この発電装置によれば、当該一対の電極に全波整流回路を接続することで、圧電部材が発生するエネルギーを効率よく取り出して負荷に供給することができる。また、整流回路を構成し、排他的に電流が流れる2つのダイオードの各々のアノードの電位とカソードの電位に基づいて、変形部材の振動(変形)の半周期毎にスイッチの接続と切断を行うことができるので、圧電部材の発電効率を高めることができる。
【0014】
(4)この発電装置において、前記制御部は、前記共振回路の共振周期の半周期に相当する時間を前記所定期間として前記スイッチを導通状態とするようにしてもよい。
【0015】
圧電部材に設けられた一方の電極から流れ出した電荷が、インダクターを介して他方の電極から再び圧電部材に流れ込むまでの期間は、圧電部材とインダクターによって形成される共振回路の共振周期の半分となる。このため、スイッチを接続した後、共振周期の半分の時間が経過したタイミングで、スイッチを切断すれば、圧電部材内に発生した正負の電荷の配置を最も効率よく逆転させることができる。従って、この発電装置によれば、最も高い発電効率を実現することが可能である。
【0016】
(5)本発明は、上記の発電装置を用いた電子機器である。
【0017】
(6)本発明は、上記の発電装置を用いた移動手段である。
【0018】
これらの発明によれば、電池の代わりにリモコン等の小型電子機器に組み込むことが可能であるため、小型電子機器の移動により発電できるほか、例えば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動により発電し、移動手段に備わる機器に効率良く電力供給することもできる。
【0019】
(7)本発明は、変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に設けられた圧電部材と、前記圧電部材に設けられた一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材の容量成分と共振回路を構成するインダクターと、前記インダクターに対して直列に接続されたスイッチと、前記圧電部材が発生する交流電流を整流する整流回路と、を備える発電装置の制御方法であって、前記整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位及びカソードの電位を検出するステップと、前記ダイオードのアノードの電位及びカソードの電位の検出結果に基づいて、前記スイッチを所定期間導通状態とするステップと、を含む。
【0020】
本発明によれば、整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位とカソードの電位に基づいてスイッチを所定期間導通状態とすることで、変形部材の変形状態(振動状態)に同期した適切なタイミングで、圧電部材とインダクターとの接続及び切断を周期的に繰り返すことができる。これにより、圧電部材内に効率よく電荷を蓄積することが可能となる。また、圧電部材内に電荷を蓄積した分だけ、圧電部材に設けられた一対の電極間の電圧も増加するので、昇圧回路を別途用意しなくても、圧電材料の電気分極によって生じる電圧よりも高い電圧を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の発電装置の構造を示した説明図である。
【図2】本実施例の発電装置の動作を示した説明図である。
【図3】本実施例の発電装置の動作原理の前半部分を概念的に示した説明図である。
【図4】本実施例の発電装置の動作原理の後半部分を概念的に示した説明図である。
【図5】適切なタイミングでスイッチをONしなければ、発電効率が低下する理由を示す説明図である。
【図6】適切なタイミングでスイッチをONしなければ、発電効率が低下する理由を示す説明図である。
【図7】適切なタイミングでスイッチをONしなければ、発電効率が低下する理由を示す説明図である。
【図8】LC共振回路の共振周期の3/2倍の時間だけスイッチをONにした場合の圧電部材の端子間の電圧波形を示した図である。
【図9】LC共振回路の共振周期の1/4の時間だけスイッチをONにした場合の圧電部材の端子間の電圧波形を示した図である。
【図10】ダイオードの両端の電位を比較することによって、梁の変形方向が切り換わるタイミングを決定できる理由を示す説明図である。
【図11】ダイオードの両端の電位を比較することによって、梁の変形方向が切り換わるタイミングを決定できる理由を示す説明図である。
【図12】電圧検出回路の構成例を示した図である。
【図13】電圧検出回路の各部の出力波形例を示した図である。
【図14】スイッチ制御処理のフローチャート図である。
【図15】第1変形例の発電装置の回路構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0023】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.発電装置の構造:
B.発電装置の動作:
C.発電装置の動作原理:
D.スイッチの切換タイミング:
E.変形例:
E−1.変形例1:
E−2.変形例2:
【0024】
A.発電装置の構造:
図1は、本実施例の発電装置100の構造を示した説明図である。図1(a)には、発電装置100の機械的な構造が示されており、図1(b)には電気的な構造が示されている。本実施例の発電装置100の機械的な構造は、先端に錘106が設けられた梁104が、基端側で支持端102に固定された片持ち梁構造となっており、支持端102は発電装置100内に固定されるのが望ましい。また、梁104の表面には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料によって形成された圧電部材108が取り付けられており、圧電部材108の表面には、表側と裏側とに、金属薄膜によって形成された第1電極(上部電極)109a、第2電極(下部電極)109bがそれぞれ設けられている。尚、図1(a)に示した例では、梁104の上面側に圧電部材108が設けられているが、梁104の下面側に圧電部材108を設けても良く、あるいは梁104の上面側および下面側の両方に圧電部材108を設けても良い。
【0025】
梁104は、基端側が支持端102に固定されており、先端側には錘106が設けられているので、振動などが加わると、図中に白抜きの矢印で示したように、梁104の先端が大きく振動する。その結果、梁104の表面に取り付けられた圧電部材108には、圧縮力および引張力が交互に作用する。すると、圧電部材108は圧電効果によって正負の電荷を発生し、その電荷が第1電極109a、および第2電極109bに現れる。また、錘106は必須ではないが、梁104の先端側と基端側とで重量のバランスが非均衡であることが望ましい。なぜなら、重量のバランスが非均衡であることで、たとえば、1つの振動により梁104の変位が反復しやすくなるためである。なお、梁104は、本発明の「変形部材」に相当する。
【0026】
図1(b)には、本実施例の発電装置100の回路図が例示されている。圧電部材108は、電気的には、電流源と、電荷を蓄えるコンデンサー(容量成分)C0として表すことができる。この圧電部材108に対して並列にインダクターLが接続されて、圧電部材108の容量成分と共に電気的な共振回路を形成している。そして、この共振回路をON/OFFするためのスイッチSWが、インダクターLに対して直列に接続されている。
【0027】
また、圧電部材108に設けられた第1電極109aおよび第2電極109bは、4つのダイオードD1〜D4から構成される全波整流回路120に接続されている。圧電部材108が発生する交流電流は、当該交流電流の極性に応じて、ダイオードD1(第1のダイオード)とダイオードD4(第4のダイオード)、又は、ダイオードD3(第3のダイオード)とダイオードD2(第2のダイオード)に排他的に流れる。更に、全波整流回路120には、電気負荷を駆動するために、整流後の電流を蓄えておく蓄電素子(出力用コンデンサー)C1が接続されている。
【0028】
電圧検出回路130は、ダイオードD1のアノードの電位とカソードの電位を比較するとともに、ダイオードD3のアノードの電位とカソードの電位を比較する。そして、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも高いか、又はダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも高い期間を示す信号を出力する。
【0029】
制御回路112は、電圧検出回路130の出力信号に基づいて、スイッチSWのON/OFFを制御する。具体的には、制御回路112は、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも高い状態から低い状態に変化したとき、あるいはダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも高い状態から低い状態に変化したときに、スイッチSWをONにし、所定期間が経過するとスイッチSWをOFFする。
【0030】
B.発電装置の動作:
図2は、本実施例の発電装置100の動作を示した説明図である。図2(a)には、梁104の振動に伴って、梁104の先端の変位uが変化する様子が示されている。尚、プラスの変位uは、梁104が上向きに反った状態(梁104の上面側が凹となった状態)を表しており、マイナスの変位(−u)は、梁104が下向きに反った状態(梁104の下面側が凹となった状態)を表している。また、図2(b)には、梁104の変形に伴って、圧電部材108が発生する電流の様子と、その結果として圧電部材108の内部に生じる起電力とが示されている。尚、図2(b)では、圧電部材108に電荷が発生する様子は、単位時間あたりに発生する電荷量(すなわち、電流Ipzt)として表され、また、圧電部材108に生じる起電力は、第1電極109aと第2電極109bとの間に生じる電位差Vpztとして表されている。
【0031】
図2(a)および図2(b)に示されるように、梁104の変位が増加している間は、圧電部材108は正方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipztがプラス値)、これに伴って第1電極109aおよび第2電極109bの電位差Vpztは正方向へ増加する。正方向の電位差Vpztが、蓄電素子C1の電圧VC1と全波整流回路120を構成しているダイオードの順方向降下電圧Vfの2倍との和、すなわち、VC1+2Vfよりも大きくなれば、それ以降に発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。また、梁104の変位が減少している間は、圧電部材108は負方向の電流を発生させ(すなわち、電流Ipztがマイナス値)、これに伴って第1電極109aおよび第2電極109bの電位差Vpztは負方向へ増加する。負方向の電位差Vpztが、VC1と全波整流回路120の2Vfの和よりも大きくなれば、発生した電荷は直流電流として取り出して、蓄電素子C1に蓄えておくことができる。すなわち、図1のスイッチSWをOFFにしたままでも、図2(b)中に斜線を付して示した部分については、蓄電素子C1に電荷を蓄えることができる。
【0032】
本実施例の発電装置100では、制御回路112は、図2(c)に示すタイミングで、スイッチSWをONにする。すると、図2(d)に示すように、圧電部材108の端子間の電圧波形が、スイッチSWをONにしたときにシフトしたかのような現象が発生する。すなわち、たとえば、図2(d)中に「B」と表示した期間Bでは、圧電部材108の起電力に対応する細い破線で示した電圧波形Vpztがマイナス方向にシフトしたような、太い破線で示した電圧波形が圧電部材108の端子間に現れる。このような現象が発生する理由については後述する。また、図2(d)中に「C」と表示した期間Cでは、圧電部材108の起電力に対応する電圧波形Vpztがプラス方向にシフトしたような、太い破線の電圧波形が現れる。以降の期間D、期間E、期間Fなどについても同様に、圧電部材108の起電力に対応する電圧波形Vpztがプラス方向あるいはマイナス方向にシフトしたような、太い破線の電圧波形が現れる。そして、シフトした電圧波形が、VC1と2Vfとの和を超えた部分(図2(d)中に斜線を付して示した部分)では、圧電部材108で発生した電荷を蓄電素子C1に蓄えておくことができる。尚、圧電部材108から蓄電素子C1に電荷が流れる結果、圧電部材108の端子間の電圧(第1電極109aと第2電極109bとの間の電圧)Vgenは、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。その結果、第1電極109aおよび第2電極109bの間の電圧波形は、図2(d)に太い実線で示した波形となる。
【0033】
図2(b)に示したスイッチSWをOFFにしたままの場合と、図2(d)に示したように、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWをONにした場合とを比較すれば明らかなように、本実施例の発電装置100では、適切なタイミングでスイッチSWをONにすることで、効率よく、蓄電素子C1に電荷を蓄えることが可能となる。
【0034】
また、蓄電素子C1に電荷が蓄えられて、蓄電素子C1の端子間電圧が増加すると、それに従って電圧波形のシフト量も大きくなる。たとえば、図2(d)中の期間B(蓄電素子C1に電荷が蓄えられていない状態)と、図2(d)中の期間H(蓄電素子C1に少し電荷が蓄えられた状態)とを比較すると、期間Hの方が電圧波形のシフト量が大きくなっている。同様に、図2(d)中の期間Cと期間Iとを比較すると、蓄電素子C1に蓄えられた電荷が増えている期間Iの方が、電圧波形のシフト量が大きくなっている。このような現象が発生する理由については後述するが、この結果、本実施例の発電装置100では、圧電部材108を変形させたことによって、第1電極109aと第2電極109bとの間に生じる電圧Vpzt以上の電圧を、蓄電素子C1に蓄えることも可能となる。その結果、特別な昇圧回路を設ける必要がなくなり、小型で高効率の発電装置を得ることが可能となる。
【0035】
C.発電装置の動作原理:
図3は、本実施例の発電装置100の動作原理の前半部分を概念的に示した説明図である。また、図4は、本実施例の発電装置100の動作原理の後半部分を概念的に示した説明図である。図3では、圧電部材108の変形に合わせてスイッチSWをONにしたときのC0の電荷の動きが、概念的に示されている。図3(a)は、圧電部材108(正確には梁104)が上向きに(上面側が凹となるように)変形した状態を表している。圧電部材108が上向きに変形すると、電流源からは正方向の電流が流れ、C0に電荷が蓄積され、圧電部材108の端子間には正方向の電圧が発生する。電圧値は、圧電部材108の変形が大きくなるほど増加する。そして、圧電部材108の変形がピークとなったタイミング(電荷量がピークになったタイミング。図3(b)参照)で、スイッチSWをONにする。
【0036】
図3(c)には、スイッチSWをONにした直後の状態が示されている。C0には電荷が蓄えられているから、この電荷がインダクターLに流れようとする。インダクターLに電流が流れると磁束が生じる(磁束が増加する)が、インダクターLには、自らを貫く磁束の変化を妨げる方向に逆起電力が生じる性質(自己誘導作用)がある。スイッチSWをONにしたときには、電荷が流れることによって磁束が増加しようとするから、この磁束の増加を妨げる方向(換言すれば、電荷の流れを妨げる方向)に逆起電力が発生する。また、逆起電力の大きさは、磁束の変化速度(単位時間あたりの変化量)に比例する。図3(c)には、このようにしてインダクターLに生じる逆起電力が、斜線を付した矢印によって表されている。このような逆起電力が発生するため、スイッチSWをONにしても、圧電部材108の電荷は少しずつしか流れ出さない。すなわち、インダクターLを流れる電流は少しずつしか増加しない。
【0037】
その後、インダクターLを流れる電流がピークになると、磁束の変化速度が「0」となるので、図3(d)に示したように逆起電力が「0」となる。そして、今度は電流が減少し始める。すると、インダクターLを貫く磁束が減少するので、インダクターLには、この磁束の減少を妨げる方向(電流を流そうとする方向)の起電力が発生する(図3(e)参照)。その結果、この起電力によってC0から電荷を引き抜きながら、インダクターLを電流が流れ続ける。そして、電荷の移動の途中で損失が発生しなければ、圧電部材108の変形によって生じた全ての電荷が移動して、ちょうど正負の電荷が置き換わったような状態(すなわち、圧電部材108の下面側に正電荷が分布し、上面側に負電荷が分布した状態)となる。図3(f)には、圧電部材108の変形によって生じた正負の電荷が全て移動した状態が表されている。
【0038】
仮に、このままスイッチSWをONにしておくと、今度は上述した内容と逆の現象が生じる。すなわち、圧電部材108の下面側の正電荷がインダクターLに流れようとして、このときインダクターLには、電荷の流れを妨げる方向の逆起電力が発生する。その後、インダクターLを流れる電流がピークに達した後、減少に転じると、今度は電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)の起電力がインダクターLに発生する。その結果、圧電部材108の下面側にあった全ての正電荷が上面側に移動した状態(図3(b)に示した状態)となる。こうして圧電部材108の上面側に戻った正電荷は、再び、図3(b)〜図3(f)を用いて前述したようにして、下面側に移動する。
【0039】
このように、C0に電荷が蓄えられた状態でスイッチSWをONにした後、その状態を保っておくと、圧電部材108とインダクターLとの間で電流の向きが交互に反転する一種の共振現象が発生する。そして、この共振現象の周期は、いわゆるLC共振回路の周期Tとなるから、圧電部材108に含まれる容量成分C0の大きさ(キャパシタンス)をC、インダクターLの誘導成分の大きさ(インダクタンス)をLとすると、T=2π(LC)0.5によって与えられる。従って、スイッチSWをONにした直後(図3(b)に示した状態)から、図3(f)に示した状態となるまでの時間は、T/2となる。
【0040】
そこで、スイッチSWをONにしてからT/2が経過した時点で、図4(a)に示すようにスイッチSWをOFFにする。そしてこの状態から、圧電部材108(正確には梁104)を今度は下向きに(下面側が凹となるように)変形させる。前述した図3(a)では、圧電部材108を上向きに変形させたが、図4(a)では下向きに変形させているので、電流源から負方向の電流が流れ、圧電部材108の端子間の電圧が負方向へ大きくなるようにCoに電荷が蓄積する。また、図3(a)〜図3(f)を用いて前述したように、圧電部材108(正確には梁104)を下向きに変形させる前の段階で、圧電部材108の下面側には正電荷が分布し、上面側には負電荷が分布しているから、これらの電荷に加えて、下面側には新たな正電荷が蓄積され、上面側には新たな負電荷が蓄積されることになる。図4(b)には、スイッチSWをOFFにした状態で圧電部材108(正確には梁104)を変形させることによって、圧電部材108に新たな電荷が蓄積された状態が示されている。
【0041】
そして、この状態からスイッチSWをONにすると、圧電部材108の下面側に蓄積された正電荷がインダクターLに流れようとする。このときインダクターLには逆起電力が発生するので(図4(c)参照)、電流は少しずつ流れ始めるが、やがてピークに達して、その後は減少に転じる。すると、インダクターLには、電流の減少を妨げる方向(電流を流し続けようとする方向)に起電力が発生し(図4(e)参照)、この起電力によって電流が流れ続けて、最終的には、圧電部材108の下面側に分布していた全ての正電荷が上面側に移動し、上面側に分布していた全ての負電荷が下面側に移動した状態となる(図4(f)参照)。また、下面側の全ての正電荷が上面側に移動し、上面側の全ての負電荷が下面側に移動する時間は、LC共振回路の半周期に相当する時間T/2となる。そこで、スイッチSWをONにした後、時間T/2が経過したらスイッチSWをOFFにして、今度は圧電部材108(正確には梁104)を上向きに(上面側が凹となるように)変形させれば、圧電部材108内に更に正負の電荷を蓄積することができる。
【0042】
以上に説明したように本実施例の発電装置100では、圧電部材108を変形させて電荷を発生させた後、圧電部材108をインダクターLに接続して、共振周期の半分の周期だけ共振回路を形成することで、圧電部材108内での正負の電荷の分布を反転させる。その後、圧電部材108を今度は逆方向に変形させて新たな電荷を発生させる。圧電部材108内での正負の電荷の分布は反転されているから、新たに発生させた電荷は圧電部材108に蓄積されることになる。その後、再び、共振周期の半分の周期だけ圧電部材108をインダクターLに接続して、圧電部材108内での正負の電荷の分布を反転させた後、圧電部材108を逆方向に変形させる。このような動作を繰り返すことで、圧電部材108を繰り返し変形させる度に、圧電部材108に蓄積された電荷を増加させることができる。
【0043】
図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、スイッチSWをONにする度に圧電部材108の端子間の電圧波形がシフトする特異な現象が生じるが、この現象は、以下のようなメカニズムによって発生する。すなわち、たとえば図2(d)中に示した期間Aでは、圧電部材108(正確には梁104)の変形に従って、第1電極109aおよび第2電極109bの間に電圧が発生するが、第1電極109aおよび第2電極109bは全波整流回路120に接続されているので、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は、全波整流回路120に接続された蓄電素子C1に流れ込む。その結果、梁104の変形がピークになった時点でスイッチSWをONにすると、その時に圧電部材108内に残っていた正負の電荷がインダクターLを介して移動して、圧電部材108内での正負の電荷の配置が入れ代わる。
【0044】
そして、正負の電荷の配置が入れ代わった状態から梁104を逆方向に変形させると、圧電部材108の第1電極109aおよび第2電極109bの間には、圧電効果による電圧波形が現れる。すなわち、圧電部材108の第1電極109aおよび第2電極109bの極性が入れ代わった状態から、圧電部材108に変形による電圧変化が発生することになる。その結果、図2(d)中に示した期間Bでは、梁104の変形によって圧電部材108に生じる電圧波形をシフトさせたような、電圧波形が現れることになる。もっとも、前述したように、VC1と2Vfとの和の電圧を超えた部分の電荷は蓄電素子C1に流れ込むので、圧電部材108の第1電極109aおよび第2電極109bの間の電圧は、VC1と2Vfとの和の電圧でクリップされる。その後、共振周期の半分の時間だけスイッチSWをONにすると、圧電部材108に残っていた正負の電荷の配置が入れ代わる。そして、その状態から梁104が変形することによって、圧電部材108には圧電効果による電圧波形が現れる。このため、図2(d)中に示した期間Cにおいても、梁104の変形による電圧波形をシフトさせたような電圧波形が現れることになる。
【0045】
また、図2を用いて前述したように本実施例の発電装置100では、梁104が変形を繰り返しているうちに、電圧波形のシフト量が次第に大きくなるという現象も発生する。このため、圧電部材108の圧電効果によって第1電極109aと第2電極109bとの間に生じる電位差よりも高い電圧を、蓄電素子C1に蓄えることができるという大きな効果を得ることができる。このような現象は、次のようなメカニズムによって生じる。
【0046】
先ず、図2(d)中の期間Aあるいは期間Bに示したように、C1が充電されていない場合は、圧電部材108の端子間で発生する電圧が、全波整流回路120の2Vfを超えると、圧電部材108から蓄電素子C1に電荷が流れ込むので、圧電部材108の端子間に現れる電圧は、2Vfでクリップされている。しかし、こうして蓄電素子C1に電荷を蓄えるに従って蓄電素子C1の端子間の電圧が増加していく。すると、それ以降は、蓄電素子C1の端子間電圧がVC1と2Vfとの和よりも高い電圧になって始めて、圧電部材108から電荷が流れ込むようになる。このため、圧電部材108の端子間の電圧がクリップされる値が、蓄電素子C1に電荷が蓄えられるに従って次第に上昇していく。
【0047】
加えて、図3および図4を用いて前述したように、圧電部材108から電荷を流出させない限り、圧電部材108(正確には梁104)を変形させる度に、圧電部材108内の電荷は増えて行き、それに伴って、圧電部材108の端子間の電圧は大きくなる。このため、電荷がインダクターLやスイッチSWを流れる際の損失などを考えなければ、圧電部材108の端子間の電圧を大きくすることができる。このため、本実施例の発電装置100によれば、特別な昇圧回路を設けなくても、電気負荷の駆動に必要な電圧まで自然に昇圧させた状態で、発電することが可能となる。
【0048】
D.スイッチの切換タイミング:
以上に説明したように、本実施例の発電装置100では、圧電部材108(正確には梁104)に繰り返し変形を加えて、変形方向が切り換わるタイミングで、共振周期の半分の時間だけ圧電部材108をインダクターLに接続する。これにより、蓄電素子C1に最も効率良く電荷を蓄えることができ、加えて昇圧回路が不要なために容易に小型化することができるという優れた特徴を得ることができる。仮に、制御回路112がスイッチSWをONするタイミングと梁104の変形方向が切り換わるタイミングが一致しなくても、所定の周期で、LC共振回路の共振周期の半分の時間だけスイッチSWをONにすることで、圧電部材108の端子間の電圧Vgenを昇圧させることは可能である。ただし、スイッチSWをONするタイミングと梁104の変形方向が切り換わるタイミングが一致しなければ、発電効率は低下する。以下、この理由について説明する。
【0049】
図5(a)は、仮に、梁104の変形方向が切り替わる時刻t1でスイッチSWをONした後OFFしない場合の、圧電部材108の端子間の電圧Vgenの様子を示している。図5(b)は、図5(a)の時刻t1以降を拡大したものである。なお、図5の例では、全波整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0050】
時刻t1において、Vgenはピークになっており、スイッチSWがONすることにより、LC共振回路の共振周期Tの1/2の周期(時刻t1,t2,t3,t4,t5,t6,・・・)で正負のピーク値Vp1,Vp2,Vp3,Vp4,Vp5,Vp6,・・・が交互に現れながら減衰していく。もし、時刻t1からT/2だけ経過後の時刻t2にスイッチSWをOFFにすると、前述したVgenのシフト量はVp1の絶対値とVp2の絶対値の和(|Vp1|+|Vp2|)となる。なお、図3及び図4で説明したように、Vp2は、LC共振回路の共振により、容量成分C0の正負の電荷が入れ替わった時の電圧値であるから、Vp1の絶対値が大きいほどVp2の絶対値も大きくなる。従って、Vp1の絶対値が大きいほどVgenのシフト量も大きくなる。
【0051】
図6は、梁104の変形方向が切り替わるタイミング毎にスイッチSWがT/2だけONする場合の、圧電部材108の端子間の電圧Vgenの様子を示している。なお、図6の例でも、全波整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。圧電部材108が発生させる起電力Vpztの振幅が一定とすると、図6に示すように、最初にVgenが正のピーク値V1となるタイミングでスイッチSWがT/2だけONすると、VgenはV1+Vaだけマイナス方向にシフトする。すると、2回目にスイッチSWがONする時のVgenの電圧値V2=−(Va+2V1)であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVb+Va+2V1だけプラス方向にシフトする。同様に、3回目にスイッチSWがONする時のVgenの電圧値V3=Vb+2V1であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVc+Vb+2V1だけマイナス方向にシフトする。同様に、4回目にスイッチSWがONする時のVgenの電圧値V4=−(Vc+2V1)であり、スイッチSWがT/2だけONするとVgenはVd+Vc+2V1だけプラス方向にシフトする。同様に、5回目にスイッチSWがONする時のVgenの電圧値V5=−(Vd+2V1)である。ここで、V2=−(Va+2V1)であるから、明らかに|V2|>|V1|である。そして、V1,V2は図5(b)のVp1に対応する電圧値、Va,Vbは図5(b)のVp2に相当する電圧値であり、|V2|>|V1|であるから必ずVb>Vaとなる。すると、V2=−(Va+2V1),V3=Vb+2V1であり、Vb>Vaであるから|V3|>|V2|である。同様に、|V3|>|V2|であるから必ずVc>Vbとなり、V3=Vb+2V1,V4=−(Vc+2V1)であり、Vc>Vbであるから|V4|>|V3|である。同様に、|V4|>|V3|であるから必ずVd>Vcとなり、V4=−(Vc+2V1),V5=Vd+2V1であり、Vd>Vcであるから|V5|>|V4|である。要するに、梁104の変形方向が切り替わるタイミングでスイッチSWがT/2だけONすることにより、圧電部材108の端子間の電圧Vgenの絶対値は|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。
【0052】
梁104の変形方向が切り替わるタイミングとスイッチSWがONするタイミングがずれた場合も同様に考えることができる。図7(a)は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングの後ろでスイッチSWがT/2だけONする場合のVgenの様子を示し、図7(b)は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングの前でスイッチSWがT/2だけONする場合のVgenの様子を示している。なお、図7(a)、図7(b)の例でも、全波整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0053】
図7(a)及び図7(b)の例では、図6の例と同様に、Vgenは、最初にスイッチSWがONする時の電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONする時の電圧値V2=−(Va+2V1)、3回目にスイッチSWがONする時の電圧値V3=Vb+2V1、4回目にスイッチSWがONする時の電圧値V4=−(Vc+2V1)、5回目にスイッチSWがONする時の電圧値V5=−(Vd+2V1)、・・・となる。ここで、V2,V3,V4,V5,・・・は、それぞれ図6の場合のV2,V3,V4,V5,・・・と同じ式で表されるので、やはりV2>V1、V3>V2、V4>V3、V5>V4、・・・となる。従って、梁104の変形方向が切り替わるタイミングから前後にずれたタイミングでスイッチSWをT/2だけONしても、Vgenは|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。ただし、電圧値V1が高いほど、Va,Vb,Vc,Vd,・・・が大きくなるので、図6の例の方が、図7(a)及び図7(b)の例よりもVgenが昇圧するスピードが速く、発電効率が高い。
【0054】
なお、梁104の変位が0(Vgenが0)となるタイミングでスイッチSWがT/2だけONする場合(図7(a)及び図7(b)でV1=0の場合)は、LC共振回路の共振が起こらずVgenは昇圧しない。
【0055】
以上に説明したように、梁104の変形方向が切り換わるタイミングが一致するタイミングで、LC共振回路の共振周期の半分の時間だけスイッチSWをONにすることで、発電効率を最大にすることができる。なお、発電効率は低下するが、所定期間だけスイッチSWをONにしてもVgenを昇圧させることは可能である。例えば、図8は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの3/2倍の時間だけスイッチSWをONにした場合の、圧電部材108の端子間の電圧Vgenの一例を示している。要するに、図5(b)に示した時刻t1でスイッチをONにして時刻t3でスイッチSWをOFFにする場合に対応する。なお、図8の例でも、全波整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0056】
図8の例では、図6の例と同様に、Vgenは、最初にスイッチSWがONする時の電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONする時の電圧値V2=−(Va+2V1)、3回目にスイッチSWがONする時の電圧値V3=Vb+2V1、4回目にスイッチSWがONする時の電圧値V4=−(Vc+2V1)、5回目にスイッチSWがONする時の電圧値V5=−(Vd+2V1)、・・・となり、Vgenは|V1|<|V2|<|V3|<|V4|<|V5|<・・・と昇圧していく。ただし、電圧値V1が高いほど、Va,Vb,Vc,Vd,・・・が大きくなるので、図6の例の方が、図8の例よりもVgenが昇圧するスピードが速く、発電効率が高い。
【0057】
一方、図9は、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの1/4の時間だけスイッチSWをONにした場合の、圧電部材108の端子間の電圧Vgenの様子を示している。要するに、図5(b)に示した時刻t1でスイッチをONにして時刻(t1+t2)/2でスイッチSWをOFFにする場合に対応する。なお、図9の例でも、全波整流回路120や蓄電素子C1はないものとしている。
【0058】
図9の例では、Vgenは、最初にスイッチSWがONする時の電圧値V1に対して、2回目にスイッチSWがONする時の電圧値V2=−2V1、3回目にスイッチSWがONする時の電圧値V3=2V1、4回目にスイッチSWがONする時の電圧値V4=−2V1、5回目にスイッチSWがONする時の電圧値V5=2V1、・・・となる。すなわち、Vgenは2V1まで昇圧できるが、それ以上の昇圧はされない。
【0059】
同様に、梁104の変形方向が切り替わるタイミングで共振周期Tの3/4倍、5/4倍、7/4倍、9/4倍、・・・のいずれかの時間だけスイッチSWをONにした場合もV2=−2V1、V3=2V1、V4=−2V1、V5=2V1、・・・となり、Vgenは2V1まで昇圧できるが、それ以上の昇圧はされない。
【0060】
以上より、LC共振回路の共振により、少なくとも、VgenがスイッチSWをONにする時の極性と反対の極性となった時にスイッチSWをOFFすれば、Vgenが昇圧していく。要するに、LC共振回路の共振周期Tに対して、スイッチSWをONする所定期間を、少なくとも、(n+1/4)Tより長く(n+3/4)Tよりも短い時間(nは0以上の任意の整数)に設定すれば、Vgenを効率よく昇圧させることができる。
【0061】
前述したように、共振周期Tの1/2の時間だけスイッチSWをONするのが、スイッチSWの切り換え時のシフト量が最も大きくなるので、発電効率が最も高い。そこで、本実施例の発電装置100では、制御回路112は、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWをONにし、共振周期Tの1/2の時間が経過するとスイッチSWをOFFにする。
【0062】
もっとも、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでスイッチSWをONにすることは、それほど容易なことではない。たとえば、梁104の変形方向が切り換わるタイミングでは、梁104の変位の大きさが最大と考えれば、機械的な接点を用いて、梁104が最大変位となったタイミングでONとなるように構成することも可能である。しかし、接点の調整がずれると効率が大きく低下することになる。そこで、本実施例の発電装置100では、電圧検出回路130を設けておき、全波整流回路120を構成する整流ダイオードの両端の電位を比較することで、スイッチSWを制御している。特に、本実施例では、電圧検出回路130は、ダイオードD1の両端の電位(アノードの電位とカソードの電位)を比較するとともに、ダイオードD3の両端の電位(アノードの電位とカソードの電位)を比較する。これにより、圧電部材108が発生する電流の極性によらず、ダイオードD1とダイオードD3のいずれか一方のアノードの電位とカソードの電位を比較することによって、梁104の変形方向の切り替わるときにスイッチSWを容易にONすることができる。
【0063】
図10は、ダイオードD1の両端の電位及びダイオードD3の両端の電位をそれぞれ比較することによって、梁104の変形方向が切り換わるタイミングを決定できる理由を示す説明図である。図10は、仮にスイッチSWを常にOFFにした状態での波形を示している。
【0064】
図10(a)には、梁104の変位が示されている。また、図10(b)には、梁104の振動に伴って、圧電部材108が発生させる電流Ipztと起電力Vpztとが変化する様子が示されている。また、図10(c)と図10(d)には、それぞれ、圧電部材108の第1電極109aの電位Vpzt1と第2電極109bの電位Vpzt2が変化する様子が示されている。なお、図10(c)及び図10(d)では、蓄電素子C1のマイナス側の電位を0としている。
【0065】
図示されるように、梁104の変位が正方向に大きくなると、起電力Vpztも正方向に大きくなり、第1電極109aの電位Vpzt1が高くなる。そして、Vpzt1(=ダイオードD1のアノードの電位)が蓄電素子C1のプラス側の電位VC(=ダイオードD1のカソードの電位)よりも高くなると、圧電部材108が発生させる正方向の電流Ipztが、全波整流回路120を構成しているダイオードD1に流れることになる。これにより、第1電極109aの電位Vpzt1は、蓄電素子C1のプラス側の電位VCとダイオードD1の順方向降下電圧Vfとの和の電位にクランプされる。
【0066】
同様に、梁104の変位が負方向に大きくなると、起電力Vpztも負方向に大きくなり、第2電極109bの電位Vpzt2が高くなる。そして、Vpzt2(=ダイオードD3のアノードの電位)が蓄電素子C1のプラス側の電位VC(=ダイオードD3のカソードの電位)よりも高くなると、圧電部材108が発生させる負方向の電流Ipztが、全波整流回路120を構成しているダイオードD3に流れることになる。これにより、第2電極109bの電位Vpzt2は、蓄電素子C1のプラス側の電位VCとダイオードD3の順方向降下電圧Vfとの和の電位にクランプされる。
【0067】
また、梁104の変位の大きさがピークとなるタイミング(すなわち、梁104の変形方向が切り換わるタイミング)では、圧電部材108の発生する電流Ipztの方向が反転する。たとえば、圧電部材108が正の起電力を発生している状態で、梁104の変位の大きさがピークになると、正方向に流れていた電流Ipztが負方向に反転する。従って、ダイオードD1に流れていた電流が流れなくなり、第1電極109aの電位Vpzt1はVCよりも低くなる。同様に、圧電部材108が負の起電力を発生している状態で、梁104の変位の大きさがピークになると、負方向に流れていた電流Ipztが正方向に反転する。従って、ダイオードD3に流れていた電流が流れなくなり、第2電極109bの電位Vpzt2はVCよりも低くなる。
【0068】
従って、梁104の変形方向が正から負に切り換わるタイミング(梁104の変位が正のピークとなるタイミング)は、ダイオードD1に流れていた電流が流れなくなり、Vpzt1がVCよりも高い電位からVCよりも低い電位に変化するタイミングと一致する。同様に、梁104の変形方向が負から正に切り換わるタイミング(梁104の変位が負のピークとなるタイミング)は、ダイオードD3に流れていた電流が流れなくなり、Vpzt2がVCよりも高い電位からVCよりも低い電位に変化するタイミングと一致する。そこで、図1に示したように、電圧検出回路130を用いて、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも高くなった後、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも低く(もしくは同じに)なるか、又はダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも高くなった後、ダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも低く(もしくは同じに)なったことを検出したら、そのタイミングから、図10(e)に破線で示す所定期間(例えば、LC共振回路の共振周期Tの1/2の時間)だけ、スイッチSWをONしてやればよい。
【0069】
なお、図10では仮にスイッチSWをOFFにした状態での波形を示したが、図10(e)に破線で示したタイミングで実際にスイッチSWをONにした場合の波形を図11に示す。図11(a)に示される梁104の変位は図10(a)と同じである。また、図11(b)に示される電流Ipztと起電力Vpztの変化は、図10(b)と同じである。図11(c)と図11(d)に示すように、図11(e)に示されるスイッチSWがONするタイミングでVpzt1とVpzt2がシフトする。
【0070】
図12に、電圧検出回路130の構成ブロック図を例示する。また、図13に、電圧検出回路130の各部の出力波形の一例を示す。
【0071】
比較器132は、圧電部材108の第1電極109aの電位(ダイオードD1のアノードの電位)Vpzt1と蓄電素子C1のプラス側の電位VC(ダイオードD1のカソードの電位)を比較し、2値化(パルス化)された信号(Vpls1)を出力する。
【0072】
比較器134は、圧電部材108の第2電極109bの電位(ダイオードD3のアノードの電位)Vpzt2と蓄電素子C1のプラス側の電位VC(ダイオードD3のカソードの電位)を比較、2値化(パルス化)された信号(Vpls2)を出力する。
【0073】
OR回路136は、比較器132の出力信号(Vpls1)と比較器134の出力信号(Vpls2)の論理和信号(Vpls)を出力する。このOR回路136の出力信号(Vpls)の立ち下がりエッジのタイミングでスイッチSWをONすればよい。
【0074】
図14は、スイッチSWのON/OFFを切り換えるスイッチ制御処理を示したフローチャートである。この処理は、例えば、制御回路112に内蔵されたCPUによって実行される。
【0075】
スイッチ制御処理を開始すると、制御回路112のCPUは、圧電部材108の第1電極109aの電位(ダイオードD1のアノードの電位)Vpzt1が蓄電素子C1のプラス側の電位VC(ダイオードD1のカソードの電位)よりも高いか、あるいは、圧電部材108の第2電極109aの電位(ダイオードD3のアノードの電位)Vpzt2が蓄電素子C1のプラス側の電位VC(ダイオードD3のカソードの電位)よりも高い状態を検出するまで待機する(ステップS10のN)。例えば、制御回路112のCPUは、電圧検出回路130の出力信号(Ipls)をモニターし、立ち上がりエッジを検出するまで待機する。
【0076】
制御回路112のCPUは、Vpzt1がVCよりも高いか、あるいは、Vpzt2がVCよりも高い状態を検出すると(ステップS10のY)、Vpzt1がVCよりも低く、かつ、Vpzt2がVCよりも低い状態を検出するまで待機する(ステップS12のN)。例えば、制御回路112のCPUは、電圧検出回路130の出力信号(Ipls)をモニターし、立ち下がりエッジを検出するまで待機する。
【0077】
そして、制御回路112のCPUは、Vpzt1がVCよりも低く、かつ、Vpzt2がVCよりも低い状態を検出すると(ステップS12のY)、スイッチSWをONにした後(ステップS14)、制御回路112に内蔵された図示しないタイマーをスタートする(ステップS16)。このタイマーは、あらかじめ設定された時間、本実施例では、LC共振回路の共振周期の1/2の時間を計時する。なお、この設定時間は、図示しないメモリーに記憶して書き換え可能にしておいてもよいし、不変でもよければメモリーに記憶しておかなくてもよい。
【0078】
そして、制御回路112のCPUは、タイマーが設定時間を計時するまで(LC共振回路の共振周期の1/2の時間が経過するまで)待機し(ステップS18のN)、タイマーが設定時間を計時すると(ステップS18のY)、スイッチSWをOFFする(ステップS20)。
【0079】
制御回路112のCPUは、再び、Vpzt1がVCよりも高いか、あるいは、Vpzt2がVCよりも高い状態を検出するまで待機し(ステップS10のN)、上述した一連の処理を繰り返す。
【0080】
以上のようにしてスイッチSWのON/OFFを行えば、少なくとも、圧電部材108の端子間の電圧を昇圧させることができるので、蓄電素子C1の電圧が上昇しても電荷を蓄えることができる。
【0081】
尚、本実施例では制御回路112が、本発明の「制御部」に相当する。
【0082】
以上に説明したように、本実施例の発電装置100によれば、ダイオードD1のアノードとカソードの電位及びダイオードD3のアノードとカソードの電位をモニターすることで、圧電部材108の振動(変形)の半周期毎に、適切なタイミングでスイッチSWのON/OFFを行うことができる。これにより、圧電部材108の端子間の電圧を効率よく昇圧させ、発電効率を高めている。
【0083】
特に、圧電部材108の変形方向が切り換わるタイミングと一致する、ダイオードD1(及びダイオードD3)のアノードの電位がカソードの電位よりも低くなるタイミングで精度よくスイッチSWをONすることで、より高い発電効率が得られる。さらに、スイッチSWをONする期間をLC共振回路の共振周期の1/2の時間とすることで、最大限の発電効率が得られる。
【0084】
ところで、梁104の変位が微小であり、あるいは蓄電素子C1に十分な電荷が蓄えられているような場合、圧電部材108に設けられた第1電極109aの電位Vpzt1や第2電極109bの電位Vpzt2が蓄電素子C1のプラス側の電位VCを超えることができない可能性がある。このような状態では、全波整流回路120に電流が流れず蓄電素子C1に電荷が蓄積されない。一方、全波整流回路120に電流が流れないということは、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも低く、かつ、ダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも低い状態が維持されるので、スイッチSWはOFFのままである。従って、本実施例の発電装置100によれば、蓄電素子C1に電荷を蓄積できない時は、スイッチSWのON/OFFを切り換えるために必要な電力を無駄に消費しないで済むという効果もある。
【0085】
E.変形例:
E−1.第1変形例:
上述した実施例では、ダイオードD1のアノードとカソードの電位及びダイオードD3のアノードとカソードの電位をそれぞれ比較しているが、例えば、図15に示すように、ダイオードD2のアノードとカソードの電位及びダイオードD4のアノードとカソードの電位をそれぞれ比較するようにしてもよい。
【0086】
E−2.第2変形例:
また、上述した実施例では、ダイオードD1のアノードの電位がカソードの電位よりも少しでも高くなるか、ダイオードD3のアノードの電位がカソードの電位よりも少しでも高くなれば、スイッチSWのON/OFFが行われる。このスイッチSWのON/OFFにも電力が必要であり、蓄電素子C1に蓄積された電力の一部が使用される。ところが、環境振動に合わせてスイッチSWをON/OFFし続けた場合、環境振動が比較的小さいと、単位時間あたりに、スイッチSWのON/OFFで消費される電力が蓄電素子C1に蓄積される電力よりも大きくなる場合も起こりうる。つまり、スイッチSWのON/OFFを繰り返すことで発電効率が高まるが、電力が蓄積されず、むしろ減っていくという状況が考えられる。そこで、スイッチSWのON/OFFにより電力が消費されても、蓄積される電力が確実に増加するような発電が得られる状況でのみスイッチSWのON/OFFを行うようにしてもよい。具体的には、ダイオードD1〜D4の順方向降下電圧Vfは流れる電流値によって変わるため、電圧検出回路130は、ダイオードD1のアノードとカソードの電位差あるいはダイオードD3のアノードとカソードの電位差が所定の閾値を超えた後、当該閾値を下回るタイミングでスイッチSWをONすればよい。シミュレーションやサンプル評価により、スイッチSWをON/OFFする際の消費電力を考慮しても蓄電素子C1に蓄電される電力が増加するような閾値を決定すればよい。
【0087】
以上、本実施例あるいは変形例について説明したが、本発明はこれら本実施例あるいは変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0088】
たとえば、上述した実施例では、圧電部材108が片持ち梁構造の梁104に取り付けられているものとして説明した。しかし、圧電部材108が取り付けられる部材は、振動などによって容易に繰り返し変形する部材であれば、どのような部材であっても構わない。たとえば、薄膜の表面に圧電部材108を取り付けても良いし、弦巻バネの側面に圧電部材108を取り付けても構わない。
【0089】
また、本発明の発電装置は振動や移動に応じて発電するため、たとえば、橋梁や建築物あるいは地すべり想定箇所などに発電装置を設置すれば地震などの災害時に発電し、電子機器などのネットワーク手段に必要時(災害時)だけ電源供給することもできる。
【0090】
尚、電子機器に限らず、本発明の発電装置は小型化が可能であるため、あらゆる機器に設置することもできる。たとえば、車両や電車などの移動手段に本発明の発電装置を用いることで、移動に伴う振動により発電し、移動手段に備わる機器に効率良く電力供給することもできる。
【0091】
このとき、あらゆる振動に対応するために、梁104の長さや錘106の重さが異なる複数の発電装置100を移動手段に組み込んでもよい。たとえば、複数の発電装置100が共通の支持端102に固定されている発電ユニットとして構成されていてもよい。
【0092】
また、本発明の発電装置を電池の代わりにリモコン等の小型電子機器に組み込むこともできる。
【0093】
さらに、特定の機器等に設置されるのではなく、本発明の発電装置が例えばボタン電池、乾電池と同じ形状であって、電子機器一般で使用されてもよい。このとき、振動によって蓄電素子への充電が可能であるため、電力が喪失した災害時でも電池として使用可能である。また、一次電池より寿命が長いため、ライフサイクルの観点で環境負荷低減を図ることができる。
【0094】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0095】
100…発電装置、102…支持端、104…梁、106…錘、108…圧電部材、109a…第1電極、109b…第2電極、112…制御回路、120…全波整流回路、130…電圧検出回路、132…比較器、134…比較器、136…OR回路、L…インダクター、C1…蓄電素子、D1〜D4…ダイオード、SW…スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、
前記変形部材に設けられた圧電部材と、
前記圧電部材に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材の容量成分と共振回路を構成するインダクターと、
前記インダクターに対して直列に接続されたスイッチと、
前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材が発生する交流電流を整流する整流回路と、
前記整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位及びカソードの電位を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路の出力信号に基づいて、前記スイッチを所定期間導通状態とする制御部と、を備える、発電装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ダイオードのアノードの電位がカソードの電位よりも高くなった後、前記ダイオードのアノードの電位がカソードの電位と同じ、もしくは低くなるときに前記スイッチを接続した後、前記所定期間が経過すると前記スイッチを切断する、請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記整流回路は、
前記圧電部材が発生する前記交流電流が、当該交流電流の極性に応じて、第1のダイオードと第4のダイオード、又は、第3のダイオードと第2のダイオード、に排他的に流れる全波整流回路であり、
前記制御部は、
前記第1のダイオード又は前記第4のダイオードのアノードの電位及びカソードの電位と、前記第3のダイオード又は前記第2のダイオードのアノードの電位及びカソードの電位とに基づいて、前記スイッチを前記所定期間導通状態とする、請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記共振回路の共振周期の半周期に相当する時間を前記所定期間として前記スイッチを導通状態とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の発電装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の発電装置を用いた電子機器。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の発電装置を用いた移動手段。
【請求項7】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に設けられた圧電部材と、前記圧電部材に設けられた一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材の容量成分と共振回路を構成するインダクターと、前記インダクターに対して直列に接続されたスイッチと、前記圧電部材が発生する交流電流を整流する整流回路と、を備える発電装置の制御方法であって、
前記整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位及びカソードの電位を検出するステップと、
前記ダイオードのアノードの電位及びカソードの電位の検出結果に基づいて、前記スイッチを所定期間導通状態とするステップと、を含む、発電装置の制御方法。
【請求項1】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、
前記変形部材に設けられた圧電部材と、
前記圧電部材に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材の容量成分と共振回路を構成するインダクターと、
前記インダクターに対して直列に接続されたスイッチと、
前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材が発生する交流電流を整流する整流回路と、
前記整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位及びカソードの電位を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路の出力信号に基づいて、前記スイッチを所定期間導通状態とする制御部と、を備える、発電装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ダイオードのアノードの電位がカソードの電位よりも高くなった後、前記ダイオードのアノードの電位がカソードの電位と同じ、もしくは低くなるときに前記スイッチを接続した後、前記所定期間が経過すると前記スイッチを切断する、請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記整流回路は、
前記圧電部材が発生する前記交流電流が、当該交流電流の極性に応じて、第1のダイオードと第4のダイオード、又は、第3のダイオードと第2のダイオード、に排他的に流れる全波整流回路であり、
前記制御部は、
前記第1のダイオード又は前記第4のダイオードのアノードの電位及びカソードの電位と、前記第3のダイオード又は前記第2のダイオードのアノードの電位及びカソードの電位とに基づいて、前記スイッチを前記所定期間導通状態とする、請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記共振回路の共振周期の半周期に相当する時間を前記所定期間として前記スイッチを導通状態とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の発電装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の発電装置を用いた電子機器。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の発電装置を用いた移動手段。
【請求項7】
変形方向を切り換えて変形する変形部材と、前記変形部材に設けられた圧電部材と、前記圧電部材に設けられた一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられ、前記圧電部材の容量成分と共振回路を構成するインダクターと、前記インダクターに対して直列に接続されたスイッチと、前記圧電部材が発生する交流電流を整流する整流回路と、を備える発電装置の制御方法であって、
前記整流回路に含まれるダイオードのアノードの電位及びカソードの電位を検出するステップと、
前記ダイオードのアノードの電位及びカソードの電位の検出結果に基づいて、前記スイッチを所定期間導通状態とするステップと、を含む、発電装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−81281(P2013−81281A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219144(P2011−219144)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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