説明

発香剤容器

【課題】 発香剤露出隙間量(発香剤の徐放量)が迅速且つ簡単に設定でき且つ時間が経過しても設定した露出隙間量が変化しない発香剤容器を提供する。
【解決手段】 本発明においては、発香剤を保持する本体2の中心部に取り付けられる中空のポール3の内周面に、溝斜面の傾斜角が比較的大きい少なくとも2条の螺旋溝9、9’を形成し、同ポール3と係合するカバー部の柱状部8に、前記螺旋溝に係合する少なくとも2つの径方向の突条部10、10’を形成し、同突条部の端面が、前記螺旋溝の溝斜面に摩擦係合すると同時に同螺旋溝の底面に対して径方向外方へ弾性的に付勢されるようにしている。螺旋溝の溝斜面の傾斜角が大きくされているので、少ない回転量で所望の発香剤露出隙間量が設定でき且つ設定された発香剤露出隙間量が突条部と螺旋溝との摩擦力及び弾性付勢力により確実に保持され、時間が経過しても設定した発香剤露出隙間量が変化することが少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤、防臭剤、芳香剤等の発香剤、特にゲル状発香剤を収容する発香剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲル状発香剤の容器は、主として、ゲル状発香剤を保持している本体部と、使用前に、同本体部に保持されたゲル状発香剤を本体部との間で密封しておくためのカバー部とから構成されており、使用時には、同カバー部を本体から引き上げて本体との間に隙間を形成して発香剤を外部雰囲気に晒すことによって発香成分を徐々に揮発放出させることによって消臭、防臭、芳香等の作用をさせるようになされている。希望する発香作用の強度は、使用者が本体からのカバー部の引き上げ量を調節して前記の隙間の大きさを加減することにより、発香剤が外部雰囲気に露出される面積を変えることによって設定される。
【0003】
カバー部の持ち上げ量の調節機構としては、発香剤を保持する本体部の中心に中空のポールを立設し、カバー部に同ポールと嵌合する柱状部を設け、ポールと柱状部とを軸線方向に相対的にずらすことによってなされていた。嵌合部の構造としては、軸線方向に摺動する摩擦嵌合構造のものや、ねじ結合構造とし且つねじ結合部のねじを回して緩めることによってカバーを持ち上がらせる構造のものがある。(特許文献1及び2参照)
【特許文献1】実公昭55−51473号公報
【特許文献2】実公昭58−20266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術による構造の場合、発香剤の重量、発香剤容器が設置される環境の温度等の変化、容器を構成している材料の経時的な変形等によって、せっかく調節した隙間の大きさが変化してしまう、という問題があった。このような問題は、発香剤を含む本体の重量がそのままカバーとの結合部にかかる吊り下げ式の容器の場合に特に顕著である。ねじによる結合による調整方法の場合は、このような経時的な隙間量の変化を少なく抑えるために、ねじの角度を小さくする(すなわち、ねじのピッチを細かくする)方法が考えられるが、ねじのピッチを細かくすると、カバー引き上げ量の調整の際に何回もねじを回さなければならず、使用者にとって極めて煩雑なものとなる。一方、ねじの角度を大きく(ねじのピッチを粗く)すると、ねじ部の摩擦力が芳香剤や容器の重量に耐えきれず設定された隙間量が変化してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、発香剤露出隙間量(すなわち、発香剤の徐放量)が迅速且つ簡単に調節でき且つ時間が経過しても調節した隙間が変化しない発香剤容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明においては、発香剤容器を、発香剤を保持する本体部と、該本体部に嵌合して前記発香剤を覆うカバー部とから構成し、前記本体部若しくは前記カバー部を回転することにより開閉可能とし、前記本体部と前記カバー部とのいずれか一方に中空ポール、他方に柱状部を備え、前記中空ポール内周面か前記柱状部外表面のいずれか一方に少なくとも1条の螺旋溝、他方に該螺旋溝に係合する少なくとも1つの突条部Aを設け、前記本体部と前記カバー部との相対的な回転で上下位置関係を変更することにより前記発香剤容器の開口具合を調節可能とし、前記中空ポール内周面又は前記柱状部外表面に径方向へ突出して弾性的に付勢されることにより前記中空ポールと前記柱状部とが局部的に圧接するようになされた突条部Bを設け、該突条部Bは、前記本体部底面に対して同じ高さに設けられ且つ前記突条部Bが2つの場合には互いに180度の位置に、3つ以上の場合には正多角形の各頂点上に位置するように配置されるようにした。
【0007】
螺旋溝の溝斜面の傾斜角は、発香剤容器及び発香剤の大きさによるが、1乃至2回転で一杯の隙間量に達するように比較的大きくするのが好ましい。また、螺旋溝の数も容器及び発香剤の大きさによるが、2乃至3条であるのが好ましい。更に、径方向へ突出して弾性的に付勢される突条部の弾性力は、突条部の高さの選定、柱状部に軸線方向の切り込み等を設けること及び材料の弾性率の選択等により、発香剤の重量との兼ね合いで適宜設定することが好ましい。更に、後に説明するように、容器を密閉するためにカバー部が螺旋溝に邪魔されずに本体に向かって動いて本体と確実に嵌合するように、螺旋溝の溝幅は本体部底面に近づくにつれて幅広にし、突条部と螺旋溝との間の軸線方向の遊びを徐々に大きくしておくのが好ましい。更に、突条部は、一方が螺旋溝に係合し他方が径方向へ突出して弾性的に付勢するように形成しても良いし、螺旋溝に係合すると共に径方向へ突出して弾性的に付勢する突条部としても良い。
【0008】
本発明は、吊り下げ式の発香剤容器に対して特に有用であるが、載置型の発香剤容器としても有効である。また、発香剤容器に限らず、同様の使用方法による徐放性薬剤容器にも有効に適用可能である。
【発明の効果】
【0009】
上記のような構造を採用したことにより、本発明の発香剤容器によれば、少ない回転数で所望の発香隙間量が設定でき、且つ設定された発香隙間量が、螺旋溝と該螺旋溝に係合する少なくとも1つの突条部との摩擦係合及び径方向へ突出した突条部による弾性的付勢により中空ポールと柱状部とが確実に保持され、時間が経過しても設定した発香隙間量が変化することが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、好ましい実施形態により本発明を詳細に説明する。
図1乃至図5は、本発明の好ましい実施形態であって、吊り下げ式の芳香剤容器を図示している。
【0011】
図1は、本実施形態による吊り下げ式の芳香剤容器1の使用前の閉じた状態を示す斜視図であり、図2は、芳香剤容器1の使用時の開いた状態を示す斜視図である。
図3は、図1に示した状態の芳香剤容器1の断面図である。図3に示すように、芳香剤容器1は、主として、本体部とカバー部とから構成されている。本体部は、本体2と、本体2の中心部に立設された中空のポール3とによって構成されている。ポール3の周囲には、想像線で示すゲル状の芳香剤4が嵌合保持される。
【0012】
一方、カバー部は、カバー5とキャップ6とから構成されている。カバー5とキャップ6とは、図3において符号aによって示す部分で嵌合して一体化されている。芳香剤容器1は、主として吊り下げて使用するようになされたものであり、そのため、図4に示されているように、キャップ6の頂端には芳香剤容器1を吊り下げるためのフック部7が設けられている。また、キャップ6の中心部には、柱状部8が下方に伸びており、この柱状部8が本体部のポール3内に嵌入してカバー部と本体部とが組み合わせられる。更に、カバー5は、芳香剤の未使用状態においては、図3において符号bによって示す部分で、カバー5に設けられた環状の突条が本体2に設けられた環状の凹溝に嵌合して容器内部を密閉するようになされている。
【0013】
図5は、本体2の中心部に取り付けられているポール3の詳細を示す拡大図である。図5から分かるように、ポール3の中空内周面には、円周上で正反対に対向するように2条の螺旋状の溝9、9’が設けられている。螺旋溝の溝斜面の傾斜角度は、ほぼ1回転で芳香剤の最大露出量(芳香剤の露出量設定方法は後に説明する)が得られるように比較的大きく設定されている。
【0014】
図4は、キャップ6の詳細図である。キャップ6の中空又は無垢であってよい柱状部8には、この柱状部8の外周に沿って2カ所に傾斜した突条部10、10’が設けられている。これらの突条部10、10’は、ポール3の内周に設けられた螺旋溝9、9’内に嵌るようになされている。従って、柱状部8の外周上の正反対の位置(互いに180°隔置された位置)に配置され且つ傾斜角度は螺旋溝9、9’の溝斜面の傾斜角に等しい。
【0015】
次に、本芳香剤容器の組立方法を説明する。組立時には、まず、ポール3の下端部を本体2の底部に嵌める。次に、カバーを嵌め、ポールとカバーの隙間に芳香液を流し込み冷やし固めてゲル状とする。一方、カバー5にキャップ6が嵌め込まれてカバー部が形成される。次いで、キャップ6の柱状部8が、上方から本体部のポール3内に押し込まれる。キャップ6は弾力性を有する樹脂(例えば、ポリプロピレン)で作られており、一方、ポール3も同様の弾力性を有する樹脂で作られており、両者の弾力性と樹脂特有の滑り性によって弾性変形して柱状部8がポール3内に圧入される。柱状部8上の突条部10、10’が螺旋溝9、9’の位置に到達すると、弾性により、突条部10、10’が、各々、対応する螺旋溝9、9’内に嵌入する。柱状部8上の突条部10、10’は、螺旋溝9、9’内に嵌入した状態でも、螺旋溝の底面に対して弾性的に当接するように径方向外方へ弾性的に付勢されるような径方向寸法とされている。続いて、カバー部を更に捻じると、キャップ6の突条部10、10’が螺旋溝9、9’に沿って進入し、最終的には、カバー5とキャップ6を嵌合することにより容器内部を密閉し芳香剤の組立体が完成する(図1及び3の状態)。カバー部を捻ると、キャップ6の突条部10、10’が螺旋溝9、9’に沿って進入することによってカバー部が進入するが、最終的な位置においては、カバー5の下端に設けられた環状の突条が螺旋溝と突条部との係合に邪魔されずに本体2に設けられた環状の溝に嵌合して容器内部を密閉しなければならない。このために、螺旋溝は、カバー5と本体2との嵌合を妨害しないように、下方終端の近くで溝幅が徐々に広くされている。
【0016】
次に、この芳香剤容器を使用した芳香剤の使用方法を説明する。芳香剤の使用者は、揮発防止用の外部包装を取り外した後、カバー5とキャップ6とからなるカバー部全体を上記組立時と逆方向に捻ることにより、カバー5と本体2との間の嵌合を外す。そして、キャップ6の突条部10、10’が螺旋溝9、9’に沿って螺旋溝の溝斜面を滑り上り、カバー部が本体部から上昇してカバー5の下端縁と本体2の上端縁との間が徐々に開き、本体に保持されているゲル状の芳香剤が露出される(図2参照)。使用者は、芳香剤の露出程度が所望位置に達すると、そこでカバー部の回転を止める。そして、キャップ6のフック部7を適当な場所に吊り下げて設置する。芳香剤容器を吊り下げた状態では、芳香剤及び本体部の重量がカバー部にかかり、キャップ6の突条部10、10’の上端面が螺旋溝9、9’の上側溝斜面に当接し、これらの当接面の摩擦力と螺旋溝底面に対する突条部10、10’の径方向の弾性的な付勢力による摩擦力とによって、芳香剤の設定された露出位置に保持されて設定された徐放量が維持される。
【0017】
このように、本実施形態においては、従来のものよりも少ない回転量で所望の芳香剤露出量が設定でき、正反対に対向して配置された2条の螺旋溝とこれに対応する突出部との間の摩擦力及び弾性的付勢力によって、設定された芳香剤の露出量が経時的に変化することなく一定に維持される。特に、本実施形態のような芳香剤を含む本体部の重量が全てカバー部にかかる吊り下げ式の芳香剤組立体においても有効に機能する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の原理は、吊り下げ式の発香剤容器に限らず、載置型の発香剤容器においても有効に利用できる。また、発香剤容器に限らず、同様の使用方法による徐放性薬剤容器にも有効に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施形態による吊り下げ式の芳香剤容器1の使用前の閉じた状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、芳香剤容器1の使用時の開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1に示した状態の芳香剤容器1の断面図である。
【図4】図4は、キャップ6の詳細図である。
【図5】図5は、本体2の中心部に取り付けられているポール3の詳細を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0020】
1 芳香剤容器、 2 本体、
3 ポール、 4 ゲル状の芳香剤、
5 カバー、 6 キャップ、
7 フック部、 8 柱状部、
9、9’ 螺旋溝、 10、10’ 突条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発香剤を保持する本体部と、該本体部に嵌合して前記発香剤を覆うカバー部とからなり、前記本体部若しくは前記カバー部を回転することにより開閉可能な発香剤容器であって、
前記本体部と前記カバー部とのいずれか一方に中空ポール、他方に柱状部を備え、
前記中空ポール内周面か前記柱状部外表面のいずれか一方に少なくとも1条の螺旋溝、他方に該螺旋溝に係合する少なくとも1つの突条部Aを備えており、前記本体部と前記カバー部との相対的な回転で上下位置関係を変更することにより前記発香剤容器の開口具合を調節可能にしてなり、
前記中空ポール内周面又は前記柱状部外表面に径方向へ突出して弾性的に付勢されることにより前記中空ポールと前記柱状部とが局部的に圧接するようになされた突条部Bを設け、
該突条部Bは、前記本体部底面に対して同じ高さに設けられ且つ前記突条部Bが2つの場合には互いに180度の位置に、3つ以上の場合には正多角形の各頂点上に位置するように配置される、ことを特徴とする発香剤容器。
【請求項2】
請求項1に記載の発香剤容器であって、
前記螺旋溝の溝斜面の傾斜角は、ほぼ1回転で前記発香剤の最大露出量が得られるように設定した、ことを特徴とする発香剤容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発香剤容器であって、
前記螺旋溝を少なくとも2条備え、前記突条部Aは、前記本体部底面に対して同じ高さに設けられ且つ前記突条部Aが2つの場合には互いに180度の位置に、3つ以上の場合には正多角形の各頂点上に位置するように配置され、前記突条部Aが前記螺旋溝に係合すると共に周面の径方向へ突出して弾性的に付勢されることにより前記中空ポールと前記柱状部とが接するようになされている、ことを特徴とする発香剤容器。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれか一の項に記載の発香剤容器であって、
前記カバー部が、カバーと、前記カバーの頂部に嵌合されたキャップとからなり、該キャップに前記中空ポール又は前記柱状部が設けられている、ことを特徴とする発香剤容器。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれか一の項に記載の発香剤容器であって、
前記螺旋溝の溝幅を前記本体部底面に近づくにつれて幅広になした、ことを特徴とする発香剤容器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一の項に記載の発香剤容器であって、
該発香剤容器が吊り下げて使用するものであり、吊り下げ用部材を備えている、ことを特徴とする発香剤容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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