説明

白熱電球用コーティング組成物、白熱電球及び白熱電球のコーティング方法

【課題】破損や特性劣化することなくガラスバルブ表面に色温度を高める着色膜を形成することができ、しかも、形成された着色膜が、点灯時に発生する熱などにより色変化や剥離しにくい白熱電球を得ることを目的とする。
【解決手段】その手段として、(A)青色無機顔料と、(B)Zr、Ti、Ta、Nb、Al、Snから選択された1種又は2種以上の金属を含む有機金属化合物と、(C)前記有機金属化合物を溶解可能な溶媒と、を含有してなる白熱電球用コーティング組成物をガラスバルブに塗布し、次いで、焼成することで、前記ガラスバルブの表面に着色膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングにより照射光の色温度を向上することができる電球バルブ用コーティング組成物、電球バルブ及び電球バルブのコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ヘッドライトやフォグランプや車内照明などの自動車に用いられる白熱電球は、視認性を向上させるために高い色温度の光で照明することが望まれており、従来、白熱電球の色温度を高める種々の手段が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
特許文献1には、ガラスバルブの表面に金の微粉末を分散した高屈折率膜(TiO、CeO、ZrO、Nb)を形成した白熱電球が記載されている。
【0004】
特許文献2には、車両用灯具のバルブの表面に色温度をコントロールするブルーのコーティング膜を形成した白熱電球が記載されている。
【0005】
特許文献3には、ガラスバルブの表面に酸化コバルト膜などの色温度をコントロールする赤色光吸収膜を形成し、その上層にTiOやZrOなどを含む保護膜を形成した白熱電球が記載されている。
【0006】
特許文献4には、コバルト・アルミニウム複合酸化物微粒子と有機シリケートまたはその加水分解生成物を混合したコーティング材をガラスバルブの表面に塗布した後、該ガラスバルブを焼成することにより、コバルトとアルミニウムの複合酸化物(アルミン酸コバルト:CoAl)からなる顔料とSi−O間の共有結合体を含む淡青色のカラーフィルター膜をガラスバルブの表面に形成した白熱電球が記載されている。
【0007】
ところで、自動車の車内照明に用いられる白熱電球は、自動車のヘッドライトなどに比べ供給電力が少なく耐熱性を要しないことから、安価で量産性に富む鉛ガラスやソーダライムガラスなどの軟質ガラスから形成されている。照明に用いられる白熱電球では、色温度が2800K〜4000K程度の人間の目に優しい白色が得られるものが好まれるが、軟質ガラスから形成された供給電力の小さい白熱電球では、通常、色温度が2000K〜2500K程度の赤みを帯びた白色光しか得られない。そのため、軟質ガラスから形成された供給電力の小さい白熱電球の色温度を高める要請があるが、このような軟質ガラスから形成された白熱電球に対し、上記した各種手段によって白熱電球の色温度を高めようとする場合、次の問題がある。
【0008】
すなわち、特許文献1に記載の手段では、金粉末を含有する膜を形成するには高温で焼成する必要があり、そのため、ガラスバルブに耐熱温度が低い軟質ガラスを使用した場合、焼成時に、ガラスバルブが変形や破損し易く、またガラスバルブに付着している微量の水分が不純ガスとしてガラスバルブ内部に滞留して白熱電球の特性が劣化するなどの不具合が発生する。更に、金粉末を含有するため非常にコストが高くなる問題がある。
【0009】
特許文献2に記載の手段では、コーティング膜の耐熱性・耐久性が不十分であるため、コーティング膜が色変化や剥離などして経時劣化しやすいという問題があり、コーティング膜の耐熱性・耐久性が向上するものの充分なものではなかった。
【0010】
特許文献3に記載の手段では、赤色光吸収膜用のコーティング材と保護膜用のコーティング材の2種類のコーティング材が必要であるため、塗布工程が煩雑となって製造コストがかかる問題がある。また、一度の成膜工程では充分な厚さの保護膜を形成できない場合、成膜工程を複数回繰り返して保護膜を多層化することがあるが、かかる場合、ガラスバルブとの膨張係数の相違によって保護膜に亀裂が生じ剥離しやすいという問題がある。
【0011】
特許文献4に記載の手段では、ランプバルブ表面に形成された着色膜にコーティング材に含まれている有機物が残留すると、点灯時に輝度不良を起こすことがあり、焼成行程において有機物が完全に熱分解して着色膜に残留しないようにする必要があるが、例えば500℃、5分程度の低温短時間である焼成条件では、有機物を完全に熱分解することができず、着色膜に有機物が残留する問題である。もっとも、有機シリケートがテトラアルコキシシランなどの珪素に炭素が直接結合した基を含有しない場合、比較的有機物の熱分解性が良好であり着色膜に残留しにくいものの、このような有機シリケートとコバルト・アルミニウム複合酸化物等のアルカリ性を呈する顔料を混合したコーティング材は、ゲル化しやすく寿命が短かくなってしまう問題がある。また、ゲル化したコーティング材中のシリカは、再溶解することなく粉末状態でコーティング材中に存在することになり、この粉末状のシリカゲルが、ランプに付着することで、コーティング不良が発生するおそれがある。
【特許文献1】特開2002−313288号公報
【特許文献2】実開平7−19943号公報
【特許文献3】特開2002−110104号公報
【特許文献4】特開2002−56821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、破損や特性劣化することなくガラスバルブ表面に着色膜を形成することができ、しかも、形成された着色膜が、点灯時に発生する熱などにより色変化せず、また剥離しにくい白熱電球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の白熱電球用コーティング組成物は、(A)青色無機顔料と、(B)Zr、Ti、Ta、Nb、Al、Snから選択された1種又は2種以上の金属を含む有機金属化合物と、(C)前記有機金属化合物を溶解可能な溶媒と、を含有してなる白熱電球用コーティング組成物である。
【0014】
上記白熱電球用コーティング組成物において、前記有機金属化合物が、一般式M(OR)xで表される金属アルコキシド、前記金属アルコキシドの加水分解物及び一般式M(OCOR)yで表される金属カルボン酸塩(但し、M、Mはそれぞれ金属を表し 、R 、Rはそれぞれアルキル基を表す)からなる群から選択される1種又は2種以上であってもよく、また、金属アルコキシド又は金属カルボン酸塩を表す一般式におけるR、Rがそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基であってもよい。
【0015】
また、上記白熱電球用コーティング組成物は、前記青色無機顔料を前記溶媒に分散させた分散液と、前記金属アルコキシド又は金属カルボン酸塩を溶媒に溶解させ、アルカノールアミン又はβ−ジケトンの存在下で加水分解して得られた溶液とを混合して得られる組成物であってもよい。
【0016】
さらにまた、上記白熱電球用コーティング組成物において、前記青色無機顔料がコバルト・アルミニウム複合酸化物、バリウム・マンガン複合酸化物、コバルト・スズ複合酸化物からなる群から選択された1種又は2種以上であってもよい。
【0017】
また、本発明の白熱電球の製造方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング組成物を軟質ガラスからなるガラスバルブに塗布し、次いで焼成して、前記ガラスバルブの表面に着色膜を形成することを特徴とする。
【0018】
更にまた、本発明の白熱電球は、請求項5の製造方法により得られる白熱電球である。上記白熱電球において、ガラスバルブが軟質ガラスであってもよく、前記着色膜の膜厚は0.1〜5.0μmであることが好ましく、前記着色膜に含有する青色無機顔料の着色膜の乾燥重量に対する重量比率は30〜90重量%であることが好ましく、ガラスバルブ内部にAr、Kr、Xeから選択された1種又は2種のガスが封入されていることが好ましく、ガラスバルブの厚さは0.8mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、白熱電球の破損や特性劣化することなくガラスバルブ表面に色変化や剥離しにくい着色膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の1実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の1実施形態を示す白熱電球の一部切欠正面図であり、図2は白熱電球のコーティング方法を示す図である。
【0022】
白熱電球10は、例えば、定格消費電力が5〜20W程度の自動車の室内灯に使用される白熱電球であって、ソーダライムガラス、鉛ガラス、鉛フリーガラスなどの軟化点が600℃〜750℃程度の軟質ガラスからなるガラスバルブ12と両端にリード線14が接続されたフィラメント16と、ガラスバルブ12の表面に被着された着色膜20を備える。
【0023】
ガラスバルブ12は、その両開口端を封止することによってアルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの希ガスを主体とする不活性ガスが封入され、バルブ主体部12aとバルブ封止部12b、12bが形成されている。バルブ主体部12aの内部には、ガラスバルブ12の管軸方向に沿ってコイル状のフィラメント16が配置され、フィラメント16に接続されたリード線14がバルブ封止部12b、12bを貫通してガラスバルブ12の外部に引き出されている。なお、ガラスバルブ12を構成する軟質ガラスの肉厚は0.8mm以上であることが好ましく、これにより後述する着色層20を形成する焼成工程時にガラスバルブ12が変形・破損しにくくなる。
【0024】
着色膜20は、フィラメント16から放射される光のうち赤色光を吸収することで色温度を高める青色の着色膜であって、青色無機顔料の微粉末を分散した金属酸化物からなり、その厚みは、例えば、0.1〜5.0μmである。
【0025】
着色膜20の厚みは、厚くなるにつれて白熱電球10の輝度が低下し、薄くなるにつれて赤色光の吸収率が低下することから、得られる光の色温度と輝度のバランスを考慮して0.1〜5.0μmであることが好ましい。
【0026】
また、着色膜20は、青色無機顔料の含有量が固形分で90重量%を越えるとガラスバルブ12と着色膜20の密着性が低下して着色膜20が剥離しやすくなり、30重量%未満であると赤色光の吸収率が低下して充分に色温度を高めることができない場合があることから、30〜90重量%含有することが好ましい。
【0027】
上記の金属酸化物としては、波長380nm〜800nmの可視光を透過する金属酸化物であればよく、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(Ta2)、酸化ニオブ(Nb)、酸化アルミニウム(Al)、酸化スズ(SnO)が挙げられ、ガラスバルブ12との密着性に優れていることがら酸化ジルコニウム、酸化チタンが好ましい。
【0028】
次に、着色膜20の製造方法、すなわち、白熱電球のコーティング方法を図面に基づき説明する。
【0029】
着色膜20は、ディップ法によりガラスバルブ12表面に白熱電球用コーティング組成物(以下、コーティング材という)50を塗布した白熱電球10を焼成することにより形成される。
【0030】
具体的には、コーティング材50が収容されたディッピング槽60に対して着色膜20を形成する前の白熱電球10を、所定の一定速度で相対的に降下させ、コーティング材50中に少なくともバルブ主体部12aを、例えば、2.0秒間浸漬した後、ディッピング槽60に対して、所定の一定速度で相対的に引き上げることで、バルブ主体部12aにコーティング材50を塗布する。
【0031】
なお、白熱電球10の引き上げる時の速度を速くすると着色膜表面の平坦性を損ない、遅くすると一度の塗布工程で塗布することができる着色膜が薄くなることから、引き上げる時の速度は2.0〜10.0mm/秒に設定される。
【0032】
次いで、500℃に保持した電気炉の中で5分間にわたってガラスバルブ12に付着したコーティング材50を焼成することで、青色無機顔料の微粉末を分散した金属酸化物からなる着色膜20が形成される。
【0033】
着色膜20は、上記したコーティング材50の塗布工程と焼成工程を複数回ずつ繰り返して膜厚を調整してもよく、これにより、赤色光の吸収率を調整して所望の色温度に設定することが可能となる。このような多層化により着色膜20を形成する場合など着色膜20の膜厚を厚くしても、焼成工程の際に生じるひずみ応力を青色無機顔料が緩和するため、割れなどの不具合が発生しにくく、よって、膜厚の厚い着色膜20を容易に形成することができる。
【0034】
本発明においてガラスバルブに塗布されるコーティング材50としては、青色無機顔料と、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、Al(アルミニウム)、Sn(スズ)から選択された1種又は2種以上の金属を含む有機金属化合物と、溶媒とを含有してなる組成物が使用される。
【0035】
上記青色無機顔料としては、コバルト・アルミニウム複合酸化物(CoAl)、バリウム・マンガン複合酸化物(BaMnO)、コバルト・スズ複合酸化物(CoO・nSnO2)などの耐熱性を有する無機顔料が挙げられる。これらの青色無機顔料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、青色無機顔料は比表面積が30〜120m/gであることが好ましい。
【0036】
上記有機金属化合物としては、一般式M(OR)xで表される金属アルコキシド、前記金属アルコキシドの加水分解物及び一般式M(OCOR)yで表される金属カルボン酸塩(但し、M、MはそれぞれZr、Ti、Ta、Nb、Al、Snから選択された金属を表し 、R 、Rはそれぞれアルキル基を表す)からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、R、Rは、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
【0037】
より具体的に本発明の有機金属化合物は、有機ジルコニウム化合物として、ジルコニウムのエトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド類、アセチルアセトナート等のキレート類、有機酸エステル類、グリコレート、アルコキシドが重縮合したオリゴマー等が挙げられる。
【0038】
有機チタン化合物としては、チタンのエトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド類、アセチルアセトナート、アミナート等のキレート類、ステアレート等の有機酸エステル類、その他グリコレートやアルコキシドが重縮合化したオリゴマー等が挙げられる。
【0039】
有機タンタル化合物としては、タンタルのエトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド類、アセチルアセトナート、アミナート等のキレート類、ステアレート、オクチレート、ナフテネート等の有機酸エステル類、その他グリコレートやアルコキシドが重縮合化したオリゴマーが挙げられる。
【0040】
有機ニオブ化合物としては、ニオブのエトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド類、アセチルアセトナート、アミナート等のキレート類、ステアレート、オクチレート、ナフテネート等の有機酸エステル類、その他グリコレートやアルコキシドが重縮合化したオリゴマーが挙げられる。
【0041】
有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムのエトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド類、アセチルアセトナート、アミナート等のキレート類、ステアレート、オクチレート、ナフテネート等の有機酸エステル類、その他グリコレートやアルコキシドが重縮合化したオリゴマーが挙げられる。
【0042】
有機スズ化合物としては、スズのエトキシド、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド類、アセチルアセトナート等のキレート類、ステアレート、オクチレート、ナフテネート等の有機酸エステル類があげられる。
【0043】
上記溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、水など挙げられるが、これに限定されない。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、また2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
なお、金属アルコキシド又は金属カルボン酸塩の加水分解は、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン、又は、アセチルアセトンなどのβ−ジケトンの存在下で行うことが好ましく、これらのアルカノールアミンやβ−ジケトンにより適度な加水分解反応が起こり安定して反応させることができ、特に、コーティング材の状態で青色無機顔料が均一に分散しやすいことからトリエタノールアミンが好適に使用される。
【0045】
また、コーティング材50は、ガラスバルブ12に塗布された後、急速に乾燥すると塗布膜に亀裂が生じやすくなることから、塗布後の乾燥速度を遅延させるためにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等を含んでもよい。
【0046】
以上のように本発明によれば、従来のような保護膜を形成することなく、白熱電球の破損や特性劣化することなくガラスバルブ表面に色変化や剥離しにくい着色膜を形成することができる。また、例えば数千時間程度の長寿命の白熱電球に着色膜を形成しても、使用中に着色膜が退色・劣化することがなく、また、点灯時に発生する熱が白熱電球内部にこもることがないため白熱電球の寿命を短くすることもない。
【0047】
しかも、白熱電球にコーティング材を塗布する際、コーティング材液面が上下移動することで、ディッピング槽の内壁面には、コーティング材が乾燥してゲル化した金属酸化物が付着するが、本発明のコーティング材では、このゲル化した金属酸化物がコーティング材へ再溶解することができるため、コーティング材を長期にわたり使用することができる。そのため、コスト安価に着色膜を形成した白熱電球が得ることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、軟化点が600℃〜750℃の軟質ガラスからなるガラスバブルを備えた白熱電球について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、軟化点が750℃〜1000℃程度のホウ珪酸ガラス等の硬質ガラスからなるガラスバルブを備えた白熱電球にも適用することができ、軟化点600℃〜750℃の軟質ガラスの場合では焼成温度を例えば500℃に設定し、軟化点750℃〜1000℃の硬質ガラスの場合では焼成温度を例えば600℃に設定するなど、ガラスバルブを構成するガラス材の軟化点に応じて焼成温度を変更しても良い。
【0049】
また、本発明は、本実施形態のような定格消費電力が5〜20W程度の白熱電球以外にも、定格消費電力が20〜80W程度の室内照明灯に使用される白熱電球にも適用することができる。
【0050】
さらにまた、本発明は、本実施形態のようなT10×44形の白熱電球以外にも、例えば、図3〜5に示すようなT9G4F形、T15GY6.35形、T16GY6.35形(株式会社パール電球製作所製)の白熱電球30、32、34や、図5、6に示すような、セラミックスベース付口金35、37を備えた白熱電球34、36や、図7に示すような口金41を備えた白熱電球40など、ガラスチューブの形状、口金の有無、口金の形状に関係なく各種形状の白熱電球に適用することができる。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0052】
1.コーティング材の合成
まず、比表面積が70m/gのアルミニウム・コバルト複合酸化物30g、ジノルマルブトキシジルコニウムジトリエタノールアミネート10g、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート10g、イソプロピルアルコール50gからなる青色顔料分散液(以下、A液という)をビーズミルなどを使用して作成する。
【0053】
テトラ−n−ブトキシジルコニウム0.03molを溶解したエタノール40gにトリエタノールアミン0.03molを加え、1時間攪拌する。次いでエタノール10gと蒸留水4gを加え攪拌した後、滴下ロートを使用して1時間かけて滴下し加水分解を行う。これにより得られた液体をB液という。
【0054】
そして、上記B液全量に対して、上記A液30gを加え、5時間攪拌した後、この混合液が100gになるようにエタノールを加える。その後、1μmのフィルターにて濾過することで、コーティング材が得られる。
【0055】
2.着色層の形成
上記により得られたコーティング材が収容されたディッピング槽に着色膜を形成する前の白熱電球を2.0秒間浸漬し、ディッピング槽に対し速度7.5mm/秒で引き上げ、ガラスバルブ表面にコーティング材を塗布し、その後、焼成を行いガラスバルブ表面に着色膜を形成した。使用した白熱電球は、定格電圧・消費電力が24V・8Wの白熱電球(株式会社パール電球製作所製:T10×44 CC-8)である。また、コーティング材の塗布工程及び焼成工程をそれぞれ3回ずつ行い、3層からなる膜厚が約0.9μmの着色膜を形成した。
【0056】
3.評価
上記で得られた着色層が形成された白熱電球について、印加電圧24V・消費電力8Wで4000時間点灯させた後、目視により白熱電球10の外観検査を行ったところ、着色膜に亀裂・剥離は見られなかった。また、印可電圧28.8(24×120%)V・消費電力8Wで点灯させたところ、点灯初期時の色温度が3105Kに対し、561時間(印加電圧24V・消費電力8W点灯時の5000時間相当)経過後の色温度は2954Kであり、初期時の色温度に対する色温度維持率は95%以上であり、充分な耐久性が示された。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る白熱電球の一部切欠正面図及び要部拡大断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る白熱電球にコーティング材を塗布する工程を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るコーティング材を塗布する白熱電球の例を示す白熱電球の正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るコーティング材を塗布する白熱電球の例を示す白熱電球の正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るコーティング材を塗布する白熱電球の例を示す白熱電球の正面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るコーティング材を塗布する白熱電球の例を示す白熱電球の正面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るコーティング材を塗布する白熱電球の例を示す白熱電球の正面図である。
【符号の説明】
【0058】
10…白熱電球
12…ガラスバルブ
12a…バルブ主体部
12b…バルブ封止部
14…リード線
16…フィラメント
20…着色膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)青色無機顔料と、(B)Zr、Ti、Ta、Nb、Al、Snから選択された1種又は2種以上の金属を含む有機金属化合物と、(C)前記有機金属化合物を溶解可能な溶媒と、を含有してなる白熱電球用コーティング組成物。
【請求項2】
前記有機金属化合物が、一般式M(OR)xで表される金属アルコキシド、前記金属アルコキシドの加水分解物及び一般式M(OCOR)yで表される金属カルボン酸塩(但し、M、MはそれぞれZr、Ti、Ta、Nb、Al、Snから選択された金属を表し 、R 、Rはそれぞれアルキル基を表す)からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の白熱電球用コーティング組成物。
【請求項3】
前記青色無機顔料を前記溶媒に分散させた分散液と、前記金属アルコキシド又は金属カルボン酸塩を溶媒に溶解させ、アルカノールアミン又はβ−ジケトンの存在下で加水分解して得られた溶液とを混合して得られることを特徴とする、請求項2に記載の白熱電球用コーティング組成物。
【請求項4】
前記青色無機顔料がコバルト・アルミニウム複合酸化物、バリウム・マンガン複合酸化物、コバルト・スズ複合酸化物からなる群から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の白熱電球用コーティング組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング組成物をガラスバルブに塗布し、次いで焼成して、前記ガラスバルブの表面に着色膜を形成することを特徴とする白熱電球の製造方法。
【請求項6】
請求項5の製造方法により得られる白熱電球。
【請求項7】
請求項6に記載の白熱電球において、前記ガラスバルブが軟質ガラスであることを特徴とする白熱電球。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の白熱電球において、前記着色膜の膜厚が0.1〜5.0μmであることを特徴とする白熱電球。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の白熱電球において、前記着色膜が含有する前記青色無機顔料の着色膜の乾燥重量に対する重量比率が30〜90重量%であることを特徴とする白熱電球。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の白熱電球において、前記ガラスバルブ内部にAr、Kr、Xeから選択された1種又は2種のガスが封入されていることを特徴とする白熱電球。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の白熱電球において、前記ガラスバルブの厚さが0.8mm以上であることを特徴とする白熱電球。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−317567(P2007−317567A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147334(P2006−147334)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(591244292)株式会社パール電球製作所 (36)
【出願人】(000158954)技研科学株式会社 (1)