説明

白色ポリオレフィンフィルムおよびその製造方法

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、白色不透明で、擬紙状光沢、パール調光沢をもつポリオレフィンフィルムで、各種印刷性、寸法安定性、耐水性(湿気)、耐薬品性の要求される印刷用紙、各種ラベル、菓子、スナック等の包装および装飾用として好適な白色ポリオレフィンフィルムおよびその製造方法に関する。
[従来の技術]
従来、白色フィルムを得るために白色の無機粒子を熱可塑性樹脂に多量に添加し、一軸又は二軸に延伸することはよく知られている(特公昭46−40794号公報、特開昭50−90644等)。このフィルムが白色、不透明になるのは、フィルム延伸時に樹脂と無機粒子の界面に剥離がおこり、微細なボイドがフィルム内部に生成されることおよび表面で微少な亀裂が生成されることによって光がフィルム表面及び内部で散乱されるためである。
また、ポリプロピレンあるいはプロピレンコポリマーにメチルペンテンポリマーをブレンドし、二軸延伸する技術が知られている(特開昭52−58773、52−58774等)。
[発明が解決しようとする課題]
白色フィルムを得るために、無機粒子を多量に添加したフィルムは、印刷、打抜き、自動包装等の二次加工を行なう場合、表面亀裂によって生じた表面遊離粒子が印刷の仕上りを著しく低下させ、また内部ボイドが多く生成されるため機械強度が劣り、二次加工の能率を著しく低下させるという欠点がある。
また、ポリプロピレンにメチルペンテンポリマーをブレンドして、従来の一軸および二軸延伸法にて延伸したフィルムは、粗面化および引裂性は得られるが、擬紙状で、白く、隠蔽性が高く、機械強度の高いフィルムは得られない。
本発明は、白色ポリオレフィンフィルムに関し鋭意検討の結果、白くて隠蔽性に優れ、パール調の光沢を持ち、機構強度が高く、各種印刷用紙、各種ラベル、菓子やスナック等の包装および装飾用として好適な白色ポリオレフィンフィルムおよびその製造方法を提供せんとするものである。
[課題を解決するための手段]
本発明は、光学濃度(OD)が0.1以上、光沢度が40%以上のポリオレフィンフィルムであって、該フィルムの長手方向の強度が8kg/mm2以上で、長手方向と幅方向のヤング率の和が250kg/mm2以上であることを特徴とする白色ポリオレフィンフィルムに関するもので、さらに該白色ポリオレフィンフィルムを得るために、アイソタクチックインデックス(II)が80%以上、極限粘度が1.2〜3.5dl/gのポリプロピレン100重量部に、n−ヘプタン抽出残分が40%以上であるメチルペンテンポリマーを5〜50重量部添加してなる樹脂をシート状またはチューブ状に溶融成形後、120℃以下の温度で、弾性限度内での微延伸をした後、さらに120℃〜170℃の温度ですくなくとも一軸に延伸することを特徴とする白色ポリオレフィンフィルムの製造方法に関するものである。
本発明において、フィルムの光学濃度(OD)は0.1以上、好ましくは0.2以上である。光学濃度(OD)が0.1未満では白さと隠蔽性に劣り、印刷文字や絵が裏面から見えたりして実用性に劣る。
また光沢度は40%以上、好ましくは50%以上である。光沢度が40%未満では、フィルム表面の粗さが大きく、印刷した際にインキのにじみがおこり鮮明な文字や絵が得られず、また該フィルムの特徴の一つである真珠様の優雅で高貴な光沢観を損ねてしまう。
さらに本発明フィルムの長手方向の強度は8kg/mm2以上、好ましくは10kg/mm2以上である。長手方向の強度が8kg/mm2未満では、印刷加工時にフィルムが寸法変形したり、破れたりして二次加工の能率が著しく低下してしまう。
また、フィルムの長手方向と幅方向のヤング率の和は250kg/mm2以上、好ましくは300kg/mm2以上である。ヤング率の和が250kg/mm2未満では印刷加工時にフィルム端部がたるみ、中央部と端部で印字のずれが起こったり、ラベル用途においては打抜き加工性やハンドリング性に劣り、さらに包装用として用いた場合には形態保持性が悪く、内容物保護性に劣る。
なお、本発明フィルムの密度は0.7g/cm3以上、好ましくは0.8g/cm3以上のものが良い。密度が0.7g/cm3より小さいと、フィルム中のボイド容積が多く、生産性や機械強度などが劣ることが多いためである。
また、印刷敵性、ラベルなどの打抜き加工、自動包装などの二次加工性において本発明のフィルムの厚さは、5〜100μm、好ましくは10〜60μmである。上記範囲よりも薄いと隠蔽性や強度および形態保持性などが不足し、厚いと加工性、ハンドリング性などから好ましくない。
本発明でいうポリオレフィンとは、ポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマーとメチルペンテンポリマーまたはコポリマーとの混合物である。ポリプロピレンおよびメチルペンテンは用途によって使い分けることが出来、耐熱性、機械的性質が重視される場合はホモポリマーで、逆にソフト性、柔軟性を重視する場合はコポリマーがよい。またコポリマーである場合には、他のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体であり、共重合量としては10モル%以下としておくことが好ましい。さらに他の樹脂をブレンドする場合には、ブレンド率は10wt%以下であることが好ましい。
次に本発明フィルムの製造方法について述べる。
該ポリプロピレンまたはコポリマーのアイソタクチックインデックス(以下IIと略す)は80%以上であることが必要であり、耐熱性、耐溶剤性が必要である場合には、IIが90%以上であると好ましい。
また該ポリプロピレンの極限粘度[η]は1.2dl/g〜3.5dl/gであることが必要であり、好ましくは1.5dl/g〜2.2dl/gである。[η]が上記範囲より小さいと、特にキャスト性、延伸性が悪化し、大きいと溶融押出し性が悪化するばかりか、製膜も難しくなる。
次に、該ポリプロピレンまたはコポリマーにブレンドされるメチルペンテンポリマーとは、メチルペンテンホモポリマーまたはコポリマーであって、4メチル1ペンテン単独の重合体または、他のα−オレフィンとのランダム共重合体であり、4メチル1ペンテンモノマーユニットが80モル%以上のものである。該ポリマーのn−ヘプタン抽出残分は40%以上であることが必要であり、好ましくは50%以上である。n−ヘプタン抽出残分が40%に満たない場合、光学濃度(OD)が0.1以下となって、白さおよび隠蔽性が発現しない。また、該ポリマーの融点(Tm)は200〜240℃、結晶化温度(Tmc)は180〜220℃であると光学濃度(OD)が0.1以上となって、白さおよび隠蔽性は良好となる。また、分散性の点で、該ポリマーのMIは、2〜200g/10分、好ましくは10〜100g/10分であると、光沢度が高くなって好ましい。該メチルペンテンポリマーの添加量は、該ポリプロピレン100重量部に対して、5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部の範囲が良い。5重量部未満では光学濃度(OD)が小さくなって、白さと隠蔽性に劣り、50重量部を超えると分散性が悪くなって延伸が不安定になり、フィルム内部に過ボイドができて機械的性質に劣ったものとなる。
また、本発明フィルムには本目的を損ねない範囲で、結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤等を添加しても良い。
次に、上記混合樹脂を260℃〜310℃に加熱された押出機に供給し、シート状またはチューブ状に溶融成形した後、該シートまたはチューブを120℃以下の温度で弾性限界内の微延伸をした後、さらに120℃〜170℃の温度ですくなくとも一軸に延伸することが必要である。公知のステンター式逐次あるいは同時二軸延伸法あるいは、チューブ式同時二軸延伸法のみによる延伸では、本発明の目的である光学濃度(OD)が0.1以上の白くて隠蔽性の高いフィルムが得られないためである。
弾性限界内での微延伸とは、延伸温度におけるStress−strainカーブの降伏点応力までの延伸をいう。
弾性限界内での微延伸の有効な理由は、基本的に非相溶な樹脂であるポリプロピレンとメチルペンテンポリマーの混合シート中の海島構造を大きくし、両者の界面に微小ボイドを生成させ、両者の屈折率差による界面乱反射を大きくして、白さと隠蔽性を発現させるのである。
弾性限界内の微延伸後の延伸においては、一軸延伸の場合、ロール間の周速差による延伸法またはステンター式延伸法により、延伸温度が120℃〜170℃で、延伸倍率は面倍率で3〜10倍、好ましくは4〜8倍であると製膜性が良好となる。
また二軸延伸の場合は、ステンター式逐次あるいは同時二軸延伸法、またはチューブ式同時二軸延伸法により二軸延伸される。同時二軸延伸の場合、延伸温度は145〜165℃の範囲が製膜性が良好となるので好ましく、延伸倍率は面倍率で10〜50倍、好ましくは20〜40倍であると製膜安定性が良好となり、光沢度も高くなる。
また逐次二軸延伸の場合、120〜150℃の延伸温度にて3〜7倍長手方向に延伸し引続きステンターにて150〜170℃の延伸温度で幅方向に5〜15倍延伸する。
以上の様にして延伸された該フィルムは、160〜175℃で数秒間熱処理される。この時数%のリラックスを許しながら熱処理すると寸法安定性が良好となる。また、さらに必要に応じ、表面活性化処理、例えばN2、CO2などの各種ガス下でのコロナ放電処理やプラズマ処理などをして表面張力をあげておくと、印刷インキの接着性あるいは蒸着金属との接着性が良好となる。
また、本発明フィルムの表面に易接着性の樹脂、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン・エチル・アクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等の樹脂をインラインまたはオフラインにて両者または片面にラミネートしてもよい。
上記方法によって得られた白色ポリオレフィンフィルムは、各種印刷用紙、各種ラベル、菓子やスナック等の包装および装飾用として好適であるばかりか、粘着テープ用ベースフィルムとしても良好な特性を有する。
[発明の効果]
本発明の白色ポリオレフィンフィルムは次のような優れた点を有する。
(1)白く、隠蔽性に優れ、フィルム表面の光沢度が高くて印刷性に優れると共に、二次加工工程で必要な機械強度、耐寸法安定性、耐溶剤性を有している。
(2)実質的に無機フィラーを含まないため内部ボイドが微小であり、菓子等の包装用として必要な防湿性に優れている。
(3)製膜性、コスト性に優れている。
[測定法]
次に、本発明における各特性値の測定方法及び用語について以下まとめて示す。
(1) 極限粘度([η])
試料0.1gを135℃のテトラリン100mlに完全溶解させ、この溶液を粘度計で135℃の恒温槽中で測定して比粘度Sより次式に従って極限粘度を求める。
単位はdl/gとする。
[η]=S/0.1×(1+0.22×S)
(2) アイソタクチックインデックス(II)あるいはn−ヘプタン抽出残分 試料を130℃で2時間真空乾燥する。これから重量W(mg)の試料をとり、ソックスレー抽出器に入れ沸騰n−ヘプタンで12時間抽出する。次に、この試料を取出しアセトンで十分洗浄したのち、130℃で6時間真空乾燥しその後、重量W′(mg)を測定し、次式で求める。
II(%)=W′/W×100(3) 破断強度JIS K−6782に準ずる。
(4) ヤング率ASTM D−882−75bに準ずる。
(5) 融解温度(Tm)・溶融結晶化温度(Tmc)
試料5mgを走査型熱量計DSC−II型(Perkin Elmer社製)にセットし、窒素気流下で昇温速度20℃/分にて室温より測定し、融解に伴なう吸熱ピーク温度を融解温度(Tm)とする。
また、同様にして試料を280℃にて5分間保った後に、降温速度20℃/分にて室温まで温度を下げていった時に、結晶化に伴う放熱ピーク温度を溶融結晶化温度Tmcとする。
(6) メルトフローインデックス(MI)
ASTM−D−1238にて、260℃、5kgの条件で測定する。
単位はg/10分で表わす。
(7) 光学濃度(OD)
マクベス社濃度計モデルTD504で測定する。透過濃度をD、入射光量をIo、透過光量をIとすると、D=−log(I/Io)で定義される。
(8) 光沢度 JIS−Z8741(60゜−60゜)に準ずる。
(9) 隠蔽性 フィルムの隠蔽性とは不透明度を示すものであり、ASTM−D1003−52法に準じ測定したヘイズが90%以上を○、89〜80%の範囲を△、80%以下を×とした。
(10) 印刷性 フィルムの表面にコロナ放電処理を行ない、その処理面に市販セロファン用印刷インキ“セロカラー"ST「白」(東洋インキ製造(株)製)をコーティングバー#5にて塗布し、80℃オーブンで1分間乾燥した後、25℃、50%RH下に24時間放置した。
a.セロファンテープ剥離テスト 印刷フィルムにセロファンテープ(積水化学(株)製No.1150、幅24mm)を、貼付して強く引剥し、インキ剥離面積により次の通り5段階評価した。
インキ剥離面積0% :判定5インキ剥離面積10%未満 :判定4インキ剥離面積10%以上25%未満 :判定3インキ剥離面積25%以上50%未満 :判定2インキ剥離面積50%以上 :判定1b.印刷加工テスト フィルム1000mをグラビア印刷した時に、インキのにじみ、印字のずれ、フィルムのシワ等のトラブル発生の有無を評価した。
(11) 打抜き加工テスト フィルムを100枚/分の速度でラベルの打抜きテストを行ない、打抜きや不良やシワおよびよじれ等の不良個数を評価した。
(12) 密度 JIS−K6758に準ずる。
[実施例]
以下、本発明の実施例に基づいて説明する。
実施例1 [η]が1.85dl/g、II=97%のポリプロピレンホモポリマー(三井東圧化学(株)製“三井ノーブレン"FO−850)100重量部と、メチルペンテンホモポリマー(三井石油化学(株)製“TPX"MX−019、n−ヘプタン抽出残分=95%、MI=100g/10分)12重量部をヘンシェルミキサーで混合後、30mmφの二軸押出機にて280℃で溶融押出してペレットを作成した。該ペレットを35mmφの一軸押出機に供給し、T−ダイにて290℃の樹脂温度でシート状に押出し、60℃に保たれた冷却ドラム上で固化し、厚さ800μmのポリオレフィン組成物シートを得た。該シートをロール式縦延伸機にて110℃で縦方向に弾性限界内の倍率1.15倍の微延伸をし、さらに縦方向に135℃で4.5倍延伸した後、引続きステンターに導き横方向に160℃にて8倍に延伸し、5%のリラックスを許しつつ165℃にて熱処理し、厚さ20μmの二軸配向ポリオレフィンフィルムを得た(第1表参照)。
該フィルムの光学特性を調べたところ、光学濃度(OD)が0.3であり、光沢度はドラム面89%、非ドラム面88%であり、ベイズは97%で白くて隠蔽性に優れた特性を有していることが分かる。
また該フィルムの機械特性を調べたところ、長手方向の強度が12kg/mm2であり、長手方向と幅方向のヤング率の和は520kg/mm2であった。
さらに、該フィルムは印刷性に優れていることが分かる。(第2表参照)。
比較例1 実施例1と同様にして得たポリオレフィン組成物シートを従来の逐次二軸延伸法で縦方向に135℃で一挙5倍延伸後、ステンターにて横方向に160℃で8倍延伸して厚さ20μmの二軸配向ポリオレフィンフィルムを得た。該フィルムは、光学濃度(OD)が0.08で、ヘイズは68%と白さ、隠蔽性に劣っていた。(第1、2表参照)
実施例2 [η]が2.25dl/g、II=97%のポリプロピレンホモポリマー(三井東圧化学(株)製“三井ノーブレン"JS−1429)100重量部と、メチルペンテンコポリマー(三井石油化学(株)製“TPX"RT−18、n−ヘプタン抽出残分=74%、MI=26g/10分)18重量部を混合後、実施例1と同様にして押出し固化し、厚さ600μmのポリオレフィン組成物シートを得た。該シートをロール式縦延伸機にて100℃で縦方向に弾性限界内の倍率1.20倍の微延伸した後、ステンター式同時延伸機にて165℃で縦横延伸共に5倍に同時延伸し、厚さ20μmのフィルムを得た。(第1表参照)。
該フィルムの光学農度(OD)は0.2であり、光沢度はドラム面75%、非ドラム面72%であり、ヘイズは92%と白さ、隠蔽性に優れていた。また、長手方向の強度は10kg/mm2、長手方向と幅方向のヤング率の和は350kg/mm2であった。(第2表参照)。
比較例2 ポリプロピレンホモポリマー(FO−850)100重量部とメチルペンテンホモポリマー(MX−019)60重量部の組成物を実施例1と同様に製膜しようとしたが、制膜性が極めて不安定なため、微延伸温度を130℃、縦延伸温度を140℃、横延伸温度を172℃として厚さ22μmのフィルムを得た。(第1表参照)。該フィルムは内部ボイドが多く光学濃度(OD)は0.2と高いが、光沢度は37%と低く、長手方向の強度は6kg/mm2、長手方向と幅方向のヤング率の和は230kg/mm2と小さく、印刷加工時にフィルム端部がたるみ、印字のずれが発生した。(第2表参照)。
比較例3 ポリプロピレンホモポリマー(JS−1429)100重量部と炭酸カルシウム25重量部の組成物を実施例1と同様にして厚さ30μmのフィルムを得た。(第1表参照)該フィルムは光学濃度(OD)およびヘイズが高く、白さ、隠蔽性に優れるものの、ボイド容積が大きいため、光沢度、機械特性に劣ることが分かる。(第2表参照)。




【特許請求の範囲】
【請求項1】光学濃度(OD)が0.1以上、光沢度が40%以上のポリオレフィンフィルムであって、該フィルムの長手方向の強度が8kg/mm2以上で、長手方向と幅方向のヤング率の和が250kg/mm2以上であることを特徴とする白色ポリオレフィンフィルム。
【請求項2】アイソタクチックインデックス(II)が80%以上、極限粘度が1.2〜3.5dl/gのポリプロピレン100重量部に、n−ヘプタン抽出残分が40%以上であるメチルペンテンポリマーを5〜50重量部添加してなる樹脂をシート状またはチューブ状に溶融成形後、120℃以下の温度で、弾性限界内での微延伸をした後、さらに120℃〜170℃の温度ですくなくとも一軸に延伸することを特徴とする白色ポリオレフィンフィルムの製造方法。