説明

白色貴金属合金

【課題】白色貴金属合金において、混合させる金属にオーステナイト系のステンレス素材を用いることによって、金属アレルギーの発生を抑え、鋳造や切削性、圧延性、研磨性などの加工性を向上させるとともに、キズや変形などにも強く、従来の素材よりもコストを下げることのできる装飾品用の白色貴金属合金を提供する。
【解決手段】純金や純銀、もしくは純プラチナを主成分とする装飾品用貴金属素材に、オーステナイト系のステンレス素材を0.1%重量から96%重量混合させてなる白色貴金属合金。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は白色を有する装飾品としての貴金属合金において、金属アレルギーを起こす確率を抑え、装飾品としての硬度が十分にあり、加工性にも優れ、比較的安価な白色貴金属合金に関するものでである。
【背景技術】
【0002】
装飾品に用いられる白色貴金属合金は、金や銀などに異なる白色系元素を混合させて白色にするものや、プラチナなどの白色系貴金属にさらに白色系元素を混合させている
【0003】
その多くが特許公開2000−80423のように、元となる貴金属素材に白色系のプラチナやパラジウム、銀などを混合させて白色を作り出している。
【0004】
しかし、近年の貴金属素材の価格は世界的に上昇していて、それに伴って白色系元素も
高い価格を維持していて、白色系の装飾品用貴金属合金の製作は非常に高いコストが伴っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開2000−80423
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は前述した問題点を解決するものであり、白色貴金属合金において、金属アレルギーを起こす確率を抑え、加工性にも優れ、装飾品としての硬度が十分にあり、比較的安価な白色貴金属合金を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、この発明は白色貴金属合金は純金や銀、プラチナなどの主要貴金属素材に0.1%重量から96%重量のオーステナイト系のステンレス素材を混合させる。
【0008】
この発明は純金や銀、プラチナなどの主要貴金属素材に0.1%から96%重量の金属アレルギーを発生させにくいオーステナイト系のステンレス素材を混合させ、金属アレルギーの発生しにくい白色貴金属合金を提供する。
【0009】
この発明は純金や銀、プラチナなどの主要貴金属素材に0.1%から96%重量の鋳造や切削性、圧延性、研磨性の良いオーステナイト系のステンレス素材を混合させ、加工性の良い用白色貴金属合金を提供する。
【0010】
この発明は純金や銀、プラチナなどの主要貴金属素材に0.1%から96%重量の硬度の得られるオーステナイト系のステンレス素材を混合させ、装飾品としての硬度が十分にある白色貴金属合金を提供する。
【0011】
この発明は純金や銀、プラチナなどの主要貴金属素材に0.1%から96%重量の貴金属素材に比べて安価なオーステナイト系のステンレス素材を混合させ、安価な白色貴金属合金を提供する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、白色貴金属合金を作る際に、オーステナイト系のステンレス素材を元となる貴金属素材に0.1%重量から96%重量混合させることによって、金属アレルギーなどの発生を抑え、装飾品としての硬度を十分に備え、加工性に優れ、比較的安価な白色貴金属合金を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の白色貴金属合金は、金や銀、プラチナなどの主要貴金属素材に、オーステナイト系のステンレス素材を0.1%重量から96%重量混合することによって作られる。
【0014】
オーステナイト系のステンレス素材は、耐食性や耐孔食性などが優れていることが知られているが、その中でもSUS316Lは医療用などにも使用されるほど安定している。
【0015】
また、オーステナイト系のステンレス素材は、金属固体として安定しているため、金属アレルギーなどがほとんど発生しないことが知られている。
【0016】
そして、オーステナイト系のステンレス素材は、鋳造や切削性、圧延性、研磨性などの加工性に優れている性質もある。
【0017】
さらに、オーステナイト系のステンレス素材は、一般的な装飾品素材に比べて硬度が高いことなどもよく知られている。
【0018】
なにより、オーステナイト系のステンレス素材は貴金属素材と比較すると、数十分の一から数千分の一の価格である。
【0019】
[実施例1]
純銀95%重量に対して5%重量のオーステナイト系のステンレス素材SUS316Lを溶解し鋳造によって太さ2mmの指輪の製作を試みた。
【0020】
実施例1の指輪の耐食性を調べるため、5%NaClの溶液に10日間浸した後、10倍ルーペで指輪の表面を観察したが、溶液に浸していないものと遜色ない状態であった。
【0021】
実施例1の指輪の金属アレルギー発生の有無を調べるため、金属アレルギーの既往症があって、指輪の装着ができない被験者3人に装着をしてもらったところ、21日間の装着期間において、金属アレルギー反応は全く出ることがなかった。
【0022】
実施例1の指輪の加工性を調べるため、指輪を芯がねに入れた後、ハンマーで指輪のサイズを1段階大きい物に変更を試みたところ、表面にクラックが入ることなくサイズが変更でき、良好な研磨をすることができた。
【0023】
実施例1の指輪の硬度を調べるため、ビッカース硬度測定器で測定したところ、一般的な純銀95%重量、銅5%重量の指輪よりも20%以上硬度が高くなっていた。
【0024】
[実施例2]
純金75%重量に対して25%重量のオーステナイト系のステンレス素材SUS316Lを溶解し鋳造によって太さ2mmの指輪の製作を試みた。
【0025】
実施例2の指輪の耐食性を調べるため、5%NaClの溶液に10日間浸した後、10倍ルーペで指輪の表面を観察したが、溶液に浸していないものと遜色ない状態であった。
【0026】
実施例2の指輪の金属アレルギー発生の有無を調べるため、金属アレルギーの既往症があって、指輪の装着ができない被験者3人に装着をしてもらったところ、21日間の装着期間において、金属アレルギー反応は全く出ることがなかった。
【0027】
実施例2の指輪の加工性を調べるため、指輪を芯がねに入れた後、ハンマーで指輪のサイズを1段階大きい物に変更を試みたところ、表面にクラックが入ることなくサイズが変更でき、良好な研磨をすることができた。
【0028】
実施例2の指輪の硬度を調べるため、ビッカース硬度測定器で測定したところ、一般的な純金75%重量、パラジウム15%重量、銀と銅10%重量の指輪よりも40%以上硬度が高くなっていた。
【0029】
実施例2の指輪は、一般的な純金75%重量、パラジウム15%重量、銀と銅10%重量の指輪よりも8%程度の材料コストを下げることができた。
【0030】
[実施例3]
純プラチナ90%重量に対して10%重量のオーステナイト系のステンレス素材SUS316Lを溶解し鋳造によって太さ2mmの指輪の製作を試みた。
【0031】
実施例3の指輪の耐食性を調べるため、5%NaClの溶液に10日間浸した後、10倍ルーペで指輪の表面を観察したが、溶液に浸していないものと遜色ない状態であった。
【0032】
実施例3の指輪の金属アレルギー発生の有無を調べるため、金属アレルギーの既往症があって、指輪の装着ができない被験者3人に装着をしてもらったところ、21日間の装着期間において、金属アレルギー反応は全く出ることがなかった。
【0033】
実施例3の指輪の加工性を調べるため、指輪を芯がねに入れた後、ハンマーで指輪のサイズを1段階大きい物に変更を試みたところ、表面にクラックが入ることなくサイズが変更でき、良好な研磨をすることができた。
【0034】
実施例3の指輪の硬度を調べるため、ビッカース硬度測定器で測定したところ、一般的な純プラチナ90%重量、パラジウム10%重量の指輪よりも25%以上硬度が高くなっていた。
【0035】
実施例3の指輪は、一般的な純プラチナ90%重量、パラジウム10%重量の指輪よりも5%程度の材料コストを下げることができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明の白色貴金属合金は、金属アレルギーなどの発生を抑え、加工性も良好で、十分な硬度もあるためキズや変形などにも強くなり、従来の素材に比べて安価な価格で装飾品が作れるようになったため、市場での競争力が期待できる白色貴金属合金が提供ができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純金や純銀、もしくは純プラチナを主成分とする装飾品用貴金属素材に、オーステナイト系のステンレス素材を0.1%重量から96%重量混合させてなる白色貴金属合金。

【公開番号】特開2012−122105(P2012−122105A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274414(P2010−274414)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(591043101)株式会社内藤貴金属製作所 (14)