説明

白色顔料分散液の製造方法及びインクジェット記録媒体の製造方法

【課題】増粘を抑えつつ、固形分濃度を高めることができる白色顔料分散液の製造方法、及び、塗布液製造用分散液の供給性がよく、塗布故障等の発生が抑えられ、濃度や光沢、インク吸収性等の良好なインクジェット記録媒体の製造方法の提供。
【解決手段】被分散物の全質量に対して20質量%以上の白色顔料と、分散剤と、媒質とを混合して分散処理する工程と、分散処理後に減圧処理する工程とを有し、好ましくは、前記白色顔料として、気相法シリカを使用し、1×104Pa以上の減圧処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色顔料分散液の製造方法、及びこれを用いたインクジェット記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機微粒子分散液は、例えば、水や有機溶剤あるいはこれらの混合物などの媒質(分散媒)にシリカ微粒子を混合して分散する、あるいは混合後に一旦一次分散(プレミキシング)して微粒子スラリーを調製した後、微粒子スラリーを更にサンドミルやボールミル等の分散機により二次分散する等により調製することができる。
【0003】
シリカ微粒子のような無機顔料が分散された顔料分散液は、分散状態が安定であること(分散安定性)が重要であるが、液中で顔料粒子は凝集を起こしやすく、粘度上昇を招きやすい。粘度上昇は、液中の顔料濃度が増大するに伴なって顕著になる傾向があり、これまでの技術では、高濃度に顔料粒子を含有しながら安定した分散状態、粘度を保持できる技術が確立されるまでには至っていない。
【0004】
例えばインクジェット記録に用いられるインクジェット記録紙では、インクが打滴される層に無機粒子が用いられることが多く、一般には無機粒子を分散含有する層形成用の塗液を支持体上に塗布することにより作製される。このとき、無機粒子を分散含有する塗液は、無機粒子の分散が不安定であると凝集しやすく、粘度変化を伴ないやすいが、凝集や粘度上昇が生じたときには、塗設された層にハジキ故障や筋状の塗布故障等の発生のみならず、画像濃度、光沢性の低下、インク吸収性の低下等の性能低下を招く。
したがって、従来よりシリカ粒子をはじめ無機粒子の分散性、分散安定性を向上させるための技術が広く検討されている。
【0005】
上記に関連する技術として、減圧可能な構造を有する容器と、分散機構を有し、固体顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能としたメジアミルとを含み、容器と分散機構との間に、固体顔料と液媒体との混合物を連続的に循環させる機構を設けた顔料分散装置を用い、分散中に減圧下にすることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、少なくとも顔料と液媒体と分散剤とからなる混合物を減圧環境下に保持後、常圧以上の圧力環境下に保持した後に、分散処理を行うことにより顔料分散液を作製する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
さらに、微粒子を真空作用を利用して吸引・加速すると同時に液体中に混合、分散する方法が記載されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2000−351916号公報
【特許文献2】特開2002−69325号公報
【特許文献3】特開2004−216687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の方法等によっても、顔料分散液の固形分濃度を高めようとすると、どうしても増粘が避けられず、顔料濃度が20質量%以上となる高い固形分量の範囲では、所望の分散性及び分散後の安定性を、粘度を保持しながら達成することは難しい。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、増粘を抑えつつ、固形分濃度を高めることができる白色顔料分散液の製造方法、及びインクジェット記録媒体用塗布液作成にあたり、分散液の供給性がよく、塗布故障等の発生が抑えられ、濃度や光沢、インク吸収性等の良好なインクジェット記録媒体が得られるインクジェット記録媒体の製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 被分散物の全質量に対して20質量%以上の白色顔料と、分散剤と、媒質とを混合して分散処理する工程と、分散処理後に減圧処理する工程とを有する白色顔料分散液の製造方法である。
<2> 前記白色顔料の平均一次粒子径が、20nm以下であることを特徴とする前記<1>に記載の白色顔料分散液の製造方法である。
<3> 前記白色顔料が、気相法シリカであることを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載の白色顔料分散液の製造方法である。
<4> 前記減圧処理は、1×10Pa以上の減圧環境にして行なうことを特徴とする前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の白色顔料分散液の製造方法である。
【0011】
<5> 前記分散剤が、カチオン系化合物であることを特徴とする前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の白色顔料分散液の製造方法である。
<6> 前記カチオン系化合物が、ジアリルジメチルカチオンポリマーであることを特徴とする前記<5>に記載の白色顔料分散液の製造方法である。
<7> 前記白色顔料と前記分散剤とをそれぞれ2回以上に分割して混合することを特徴とする前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載の白色顔料分散液の製造方法である。
<8> 前記<1>〜前記<7>のいずれか1つに記載の白色顔料分散液の製造方法により白色顔料分散液を作製する工程と、前記白色顔料分散液と水溶性樹脂とを少なくとも混合して塗布液を調製する工程と、前記塗布液を支持体上に塗布してインク受容層を形成する工程と、を有するインクジェット記録媒体の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、増粘を抑えつつ、固形分濃度を高めることができる白色顔料分散液の製造方法を提供することができる。また、
本発明によれば、インクジェット記録媒体用塗布液作成にあたり、分散液の供給性がよく、塗布故障等の発生が抑えられ、濃度や光沢、インク吸収性等の良好なインクジェット記録媒体が得られるインクジェット記録媒体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の白色顔料分散液の製造方法及びインクジェット記録媒体の製造方法について詳細に説明する。
【0014】
<白色顔料分散液の製造方法>
本発明の白色顔料分散液の製造方法は、被分散物の全質量に対して20質量%以上の白色顔料と分散剤と媒質とを混合して分散する工程(以下、「分散工程」ともいう。)と、分散後に減圧処理する工程(以下、「減圧工程」ともいう。)と、を設けて構成されたものである。本発明の白色顔料分散液の製造方法は、必要に応じて、さらに他の工程を設けて構成されてもよい。
【0015】
本発明においては、分散処理される被分散物の全質量に対して20質量%以上の高い割合を占める白色顔料を分散処理する場合に、分散処理中又はその前ではなく、分散処理してから一旦減圧処理することで、高い固形分濃度での分散性が保たれるので、液粘度の上昇を抑えつつ、顔料分散液の固形分濃度を高めることができる。
【0016】
−分散工程−
本発明における分散工程は、被分散物の全質量に対して20質量%以上の白色顔料と、分散剤と、媒質とを混合して分散処理する。本発明においては、20質量%以上の高い固形分濃度であっても、良好な分散性が得られ、増粘を抑えることができる。
【0017】
分散処理は、白色顔料、分散剤、及び媒質に加え、さらに他の成分が混合されてもよい。分散処理は、公知の分散方法を利用することができ、公知の分散装置、例えば、高速回転分散機、媒体攪拌型分散機(ボールミル、サンドミル等)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等を用いて行なうことができる。分散処理を効率良く行なえる観点から、攪拌型分散機、コロイドミル分散機、又は高圧分散機が好ましい。
【0018】
分散処理時における回転又は撹拌速度や処理時間などの分散条件については、組成や使用する分散装置などにより適宜選択すればよい。
【0019】
<白色顔料>
分散工程での分散処理には、白色顔料の少なくとも1種を用いる。白色顔料は、分散処理で最終的に得られる被分散物の全質量に対して、20質量%以上の割合となるように用いられる。
【0020】
本発明における全質量に対する白色顔料の割合は、20質量%以上であるが、顔料濃度は高い方が望ましく、25質量%以上が好ましく、25〜35質量%の範囲がより好ましい。
【0021】
白色顔料としては、例えば、シリカ微粒子(気相法シリカ、含水シリカ微粒子を含む)、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等を挙げることができる。これらの中では、4塩化珪素から合成される顔料が好ましく、特にシリカ微粒子が好ましく、気相法シリカがより好ましい。
【0022】
前記シリカ微粒子は、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行なうことにより、層形成した際に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られる。インク受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る点で重要である。
【0023】
前記シリカ微粒子は、その製造法により湿式法粒子と乾式法粒子とに大別される。
乾式法(気相法)は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークにより加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)により無水シリカ(気相法シリカ)を得る方法が主流であり、湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。これらの方法で得られる含水シリカ及び無水シリカは、表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、それぞれ異なった性質を示すが、無水シリカ(無水珪酸)の場合には、特に空隙率が高い三次元構造を形成しやすく特に好ましい。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nmで多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、無水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmであり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
従って、本発明においては、気相法により得られる無水シリカ(微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmである気相法シリカ)が好ましい。
【0024】
シリカ微粒子を用いると、その表面のシラノール基による水素結合により粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が50nm以下、好ましくは平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい多孔質構造を形成することができる。インク受容層を形成する際には、インク吸収性が効果的に向上する点で好適である。
【0025】
本発明における白色顔料の平均一次粒子径は、20nm以下であるのが好ましい。上記のように白色顔料の全質量に占める割合が20質量%以上である場合に、白色顔料の平均一次粒子径が20nm以下であると、分散時又は分散後により凝集を起こしやすいが、本発明においては、顔料凝集、ひいては液粘度の上昇抑制効果が大きい。平均一次粒子径としては、3〜20nmの範囲が好ましく、作製した膜の透明性の観点でより好ましい範囲は3〜10nmである。白色顔料の平均一次粒子径は、透過電子顕微鏡(TEM)により測定される値である。
本発明においては、平均一次粒子径が3〜20nmの気相法シリカを25質量%以上含有する場合が、顔料凝集、ひいては液粘度の上昇抑制効果が大きい点で好ましい。
【0026】
分散後に塗布したときには、多孔質化が容易でインク吸収性に優れた層形成が可能である点で、BET法による比表面積が200m/g以上の気相法シリカが好ましい。
【0027】
BET法は、日本アエロジル(株)の技術資料No.10の2,2項等に記載の一次粒子の平均径を測定するための方法で、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、すなわち比表面積を求めるものである。吸着気体としては通常、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧又は容積の変化から測定する方法が最も多く用いられる。多分子吸着の等温線を表すもので最も著名なものとして、Brunauer Emmett Tellerの式(BET式)があり、表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
気相法シリカは、BET法を用いて算出した比表面積が220m/g以上のものがより好ましく、更には300m/g以上のものが特に好ましい。
【0028】
<分散剤>
分散工程での分散処理には、分散剤の少なくとも1種を用いる。上記の白色顔料と分散剤とを混合し、その混合液を分散機で細粒化することで分散液を得ることができる。
【0029】
分散剤は、例えば、白色顔料の水分散液をあらかじめ調製し、該水分散液を分散剤水溶液に添加してもよいし、分散剤水溶液を白色顔料の水分散液に添加してよいし、白色顔料と分散剤とを同時に混合してもよい。また、白色顔料は、白色顔料の水分散液としてではなく、粉体の状態で上記のように分散剤水溶液に添加してもよい。
【0030】
分散剤としては、カチオン系化合物を用いることができる。カチオン系化合物は、白色顔料(好ましくは気相法シリカ)を分散し、記録画像の滲みを抑制し得る点で好ましい。中でも、分散剤としては、カオチン性のポリマーを用いることが好適であり、カオチン性のポリマーとしては、特開2006−321176号公報の段落番号0138〜0148に記載の媒染剤の例などが挙げられる。また、分散剤として、シランカップリング剤を用いることも好ましい。
【0031】
具体的には、カオチン性のポリマーとして、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好適である。その具体的な例としては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(含窒素有機カチオンモノマー)の単独重合体である含窒素有機カチオンポリマー、前記含窒素有機カチオンモノマーと他の単量体との共重合体又は縮重合体として得られる含窒素有機カチオンポリマー、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体、アクリル酸及びメタクリル酸の重合体又は共重合体等のアクリル系重合体;スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系重合体;エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体;ウレタン結合を有するウレタン系ポリマー等に、カチオン基を含む化合物を用いてカチオン化修飾して得られる含窒素有機カチオンポリマー等を挙げることができる。
【0032】
中でも、白色顔料の分散性の観点から、ジアリルジメチルカチオンポリマーが好ましく、具体的な例として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド誘導体が好ましく、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドがより好ましい。市販品の例としては、第一工業製薬(株)製の「シャロールDC902P」を挙げることができる。
【0033】
分散剤の白色顔料に対する割合としては、0.1〜30質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
本発明の白色顔料分散液の製造方法においては、後述の水溶性樹脂を架橋硬化する硼酸などの架橋剤などを混合してもよいが、架橋剤を含有しない系において分散後の減圧処理により増粘が抑えられ、特に固形分濃度を高めた際に高い増粘抑制効果が得られる。この場合、分散時に混合する架橋剤の割合は、好ましくは被分散物の全質量に対して10質量%以下とすることができる。
【0034】
前記白色顔料及び前記分散剤は、それぞれを2回以上に分割して混合してもよい。分割混合することにより、分散処理している液粘度の急激な増大が抑制され、白色顔料の含有割合を容易に高めることができ、固形分濃度の高い分散液の分散性がより向上する。
分割混合する場合、所望量を2回〜5回程度に分けて混合することができる。
【0035】
<媒質>
分散処理に際しては、分散媒である媒質として、水系媒体を用いることができる。水系媒体としては、水又は、水及び水と混和性の有機溶剤の混合溶媒を用いることができる。前記有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0036】
−減圧工程−
本発明における減圧工程は、前記分散工程で分散処理した後の処理液を減圧環境下で保持する工程である。ここでいう保持とは、具体的には分散処理の終了後に循環等による撹拌処理のみを行なう状態をいい、ここでの撹拌処理は、分散処理時に行なう撹拌等と異なり、被分散物を流動状態で維持するための撹拌動作を与えることをいう。
【0037】
減圧工程は、前記分散工程で白色顔料及び分散剤を一括添加して分散処理した場合は、分散処理が終了した後の処理液に対して行ない、前記分散工程で白色顔料及び分散剤の添加・混合を複数回に分割して行なう場合は、白色顔料及び分散剤の一部を加えて分散処理を行なった分散途中の処理液の少なくとも1つ及び/又は全量添加後の最終処理液に対して行ない、好ましくは、白色顔料及び分散剤の一部を加えて分散処理を行なう各回毎に、分散処理後にその都度、減圧処理を実施することが好ましい。
【0038】
減圧環境としては、分散時の増粘抑制効果を高め、好ましくは20nm以下の小粒径の気相法シリカの含有割合を(好ましくは25質量%以上に)高める観点から、1.0×10Pa以上に減圧することが好ましい。中でも、上記同様の理由から、2.0×10Pa〜15×10Paの範囲に減圧することがより好ましく、4.0×10Pa〜10×10Paの範囲に減圧することが特に好ましい。
【0039】
減圧処理の時間としては、減圧の程度によるが、前記減圧環境下において、3分以上が好ましく、4〜120分がより好ましい。特には、減圧処理は、2.0×10Pa〜15×10Paの減圧下で5〜60分間実施することが好ましい。処理時間が前記範囲内であると、減圧の効果が十分に発揮され、増粘抑制に効果的である。
【0040】
減圧の方法としては、特に制限はなく、ポンプ等による吸引、真空引きなど公知の方法を選択して行なうことができる。
【0041】
本発明における前記分散工程及び前記減圧工程は、例えば、プシミックス(PSI−MIX・MICRO PSI、アシザワ・ファインテック(株)製)を用いて好適に行なうことができる。
【0042】
<インクジェット記録媒体の製造方法>
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、既述の本発明の白色顔料分散液の製造方法を利用したものであり、具体的には、既述の本発明の白色顔料分散液の製造方法により白色顔料分散液を作製する工程(以下、「顔料分散液作製工程」ともいう。)と、作製された白色顔料分散液と水溶性樹脂とを少なくとも混合して塗布液を調製する工程(以下、「塗布液調製工程」ともいう。)と、調製した塗布液を支持体上に塗布してインク受容層を形成する工程(以下、「インク受容層形成工程」ともいう。)とを設けて構成されたものである。また、本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、必要に応じて、他の工程をさらに設けて構成されてもよい。
【0043】
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法では、既述の白色顔料分散液の製造方法により粘度を抑えて高い固形分濃度にて作製した白色顔料分散液を用いるので、塗布故障等の発生を抑えて、濃度や光沢、インク吸収性等の良好なインク受容層を有するインクジェット記録媒体を作製することができる。
【0044】
−顔料分散液作製工程−
顔料分散液作製工程は、既述の本発明の白色顔料分散液の製造方法により白色顔料分散液を作製する。白色顔料分散液の作製に関する詳細については、既述した通りである。
【0045】
−塗布液調製工程−
塗布液調製工程は、前記顔料分散液作製工程で作製された白色顔料分散液と水溶性樹脂とを少なくとも混合して塗布液を調製する。塗布液の調製には、白色顔料分散液及び水溶性樹脂以外に、必要に応じて、水溶性樹脂を架橋する架橋剤、媒染剤、水溶性多価金属塩、及びその他成分を更に用いることができる。
【0046】
<水溶性樹脂>
水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類を挙げることができる。
【0047】
上記の中でも、水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂が好ましい。
【0048】
前記水溶性樹脂の重合度としては、1800以上が好ましく、中でも、2000〜4000がより好ましい。重合度が1800以上であると、良好なインク吸収性が得られる。
【0049】
前記水溶性樹脂の含有量としては、塗布液又はインク受容層の全固形分に対して、9〜40質量%が好ましく、16〜33質量%がより好ましい。該含有量は、9質量%以上であると膜強度が良好であり、40質量%以下であると空隙が樹脂により塞がれ難くインク吸収性が保てる。
【0050】
白色顔料と共に含有する水溶性樹脂は、単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系であってもよい。透明性を保持する観点からは、例えば気相法シリカを用いた場合に組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要になる。気相法シリカを用いる場合、水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、中でも鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0051】
ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と気相法シリカの表面シラノール基とが水素結合を形成するため、気相法シリカの二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造のインク受容層を形成されると考えられる。インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0052】
また、ポリビニルアルコール系樹脂には、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。他の水溶性樹脂をポリビニルアルコール系樹脂と併用する場合、全水溶性樹脂中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0053】
〜気相法シリカと水溶性樹脂との含有比〜
気相法シリカ(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x:y)〕を最適化することで、インク受容層の膜構造及び膜強度を、さらに向上させることが可能である。
質量含有比〔PB比(x:y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。
インクジェットプリンタの搬送系を通過する場合、記録用媒体に応力が加わることがあるので、インク受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。また、シート状に裁断加工する場合、インク受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、インク受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、前記PB比は5:1以下がより好ましく、インクジェットプリンタで高速でのインク吸収性を確保する観点からは、2:1以上であることがより好ましい。
【0054】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x:y)2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、気相法シリカの二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0055】
<架橋剤>
本発明における塗布液は、前記水溶性樹脂を架橋する架橋剤の少なくとも1種を含有することができる。インク受容層は、前記白色顔料と前記水溶性樹脂とを併用し、水溶性樹脂が架橋剤との架橋反応によって硬化された多孔質層とすることができる。
【0056】
本発明においては、架橋剤の塗布液中における含有量は、水溶性樹脂に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。架橋剤は、白色顔料分散液の調製後に加えることが好ましく、インク受容層形成用の塗布液は架橋剤を用いて調製することができる。架橋剤は、1種単独で用いるほか2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
水溶性樹脂、特にポリビニルアルコール系樹脂の架橋には、ホウ素化合物が好ましい。
ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO、Co(BO、二硼酸塩(例えば、Mg、Co)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO、NaBO、KBO)、四硼酸塩(例えば、Na・10HO)、五硼酸塩(例えば、KB・4HO、Ca11・7HO、CsB)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0058】
架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N'−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許第3017280号明細書、同第2983611号明細書に記載のアジリジン系化合物;米国特許第3100704号明細書に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N'−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等を用いることができる。
【0059】
<媒染剤>
本発明における塗布液は、白色顔料分散液に加えた分散剤とは別に、さらに媒染剤の少なくとも1種を含有することができる。媒染剤の含有により、形成画像のインク滲みの防止、耐水性、耐経時滲みの更なる向上を図ることができる。
【0060】
媒染剤としては、カチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)を用いることができる。カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
【0061】
前記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染ポリマー」という。)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー、又は水分散性のラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0062】
前記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0063】
前記非媒染ポリマーとは、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。非媒染モノマーも、1種単独で用いるほか、2種以上組合せて用いることができる。
【0064】
更に、ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレニミン、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン等も好ましい。
【0065】
前記ポリマー媒染剤の分子量としては、1000〜200000が好ましく、3000〜40000がより好ましい。分子量は、1000以上であると耐水性が良好であり、200000以下であると粘度が抑えられてハンドリング適正も良好である。
【0066】
前記カチオン性の非ポリマー媒染剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化マグネシウム等の水溶性金属塩が好ましい。
【0067】
上記の中でも、媒染剤は、形成されたインク受容層がインク保持性に優れ、経時滲みを抑えて精細な画像を形成し、長期間安定に保持し得る点で、分子量が3000〜40000のポリアリルアミンが特に好ましい。
【0068】
<水溶性多価金属塩>
本発明における塗布液は、媒染剤として、さらに水溶性多価金属化合物の少なくとも1種を含有することができる。
【0069】
水溶性多価金属化合物としては、3価以上の金属化合物が好ましい。3価以上の金属化合物としては、例えば、更に、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的な例としては、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酪酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウム、ナフトレゾルシンカルボン酸バリウム、酪酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、酪酸銅(II)、シュウ酸銅、フタル酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、ナフテン銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、スルファミン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性チオグリコール酸アルミニウム、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、クエン酸鉄(III)、乳酸鉄(III)三水和物、三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、フェノールスルホン酸亜鉛、酢酸亜鉛アンモニウム、亜鉛アンモニウムカーボネート、が挙げられる。
【0070】
水溶性多価金属化合物は、2種以上を併用してもよい。本発明において、水溶性多価金属化合物における水溶性とは、20℃の水に1重量%以上溶解することを意味する。
【0071】
水溶性多価金属化合物の中でも、アルミニウム化合物もしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましく、アルミニウム化合物であることがより好ましい。特に好ましくは、水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば、無機塩としては塩化アルミニウム又はその水和物、硫酸アルミニウム又はその水和物、アンモニウムミョウバン等が挙げられる。更に、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物(以下、「塩基性ポリ塩化アルミニウム」、「ポリ塩化アルミニウム」ともいう。)が好適である。
【0072】
塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の式1、式2又は式3で表され、例えば、[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
[Al(OH)Cl6−n ・・・(式1)
[Al(OH)AlCl ・・・(式2)
Al(OH)Cl(3n−m) 〔0<m<3n〕・・・(式3)
【0073】
これらの化合物としては、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名称で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名称で、また、(株)理研グリーンよりHAP−25の名称で、大明化学(株)よりアルファイン83の名称で、さらに他のメーカーからも同様の目的で上市されたものがあり、各種グレードのものを入手して用いることができる。
【0074】
前記周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、チタン又はジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタン、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、が挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0075】
水溶性多価金属化合物のインク受容層中における含有量は、気相法シリカに対して、0.1〜10質量%の範囲が好ましく、0.5〜8質量%の範囲がより好ましい。
【0076】
<他の成分>
塗布液は、必要に応じて、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等を含んでいてもよい。
【0077】
支持体上に塗布する塗布液は、例えば以下のように調製できる。即ち、
前記本発明の白色顔料分散液の製造方法により白色顔料分散液を作製した後、架橋剤(例えば硼酸)及びポリビニルアルコール(PVA)水溶液(例えば、気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)を加え、更に水溶性多価金属塩(例えば、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物)を加えて、高速回転湿式コロイドミル(例えば、エム・テクニック(株)製の「クレアミックス」)を用いて、例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で例えば20分間(好ましくは10〜30分間)分散を行なうことにより調製することができる。なお、水溶性多価金属塩は、塗布直前にインライン混合により加えてもよい。
得られた塗布液は均一なゾル状態であり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布し乾燥させることにより、三次元網目構造を有する多孔質性のインク受容層を形成することができる。
【0078】
−インク受容層形成工程−
インク受容層形成工程は、前記塗布液調製工程で調製した塗布液を支持体上に塗布してインク受容層を形成し、インクジェット記録媒体を作製する。インクジェット記録媒体は、支持体上に少なくともインク受容層を設けて構成することができる。
【0079】
インク受容層は、下記の第1、第2の形態により好適に形成することができる。
インク受容層を形成する第1の形態は、塗布液調製工程で調製した塗布液を支持体上に塗布して塗布層を形成する工程と、前記塗布層に、(1)前記塗布液を塗布すると同時、又は(2)前記塗布液を塗布して形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、塩基性化合物を含む塩基性溶液を付与し、前記塗布層の架橋硬化を行なう工程とを設け、前記塗布層が架橋硬化されたインク受容層を形成する形態である。
【0080】
また、インク受容層を形成する第2の形態は、塗布液調製工程で調製した塗布液を支持体に塗布して塗布層を形成する工程と、形成された塗布層を、前記塗布時の塗布液の温度に対して5℃以上低下するように冷却する工程と、冷却された塗布層を乾燥する工程とを設けてインク受容層を形成する形態である。
【0081】
<塗布層形成工程>
前記第1の形態及び前記第2の形態は、支持体上に塗布液調製工程で調製した塗布液を塗布して塗布層を形成する工程(以下、「塗布層形成工程」ともいう)を有する。塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布装置を用いて行なうことができる。
塗布液の湿分塗布量としては、50〜200ml/mが好ましく、75〜150ml/mがより好ましい。また、塗布液の固形分塗布量としては、5〜25g/mが好ましく、10〜18g/mがより好ましい。
【0082】
塗布液は、既述のように白色顔料、分散剤、媒質、水溶性樹脂を少なくとも含有し、必要に応じて、さらに水溶性樹脂を架橋する架橋剤、媒染剤、分散剤、及び界面活性剤等その他の成分を含有することができる。また、塗布液の塗布においては、既述の水溶性多価金属塩(好ましくは、塩基性ポリ塩化アルミニウム化合物)を含む液をインライン混合した後に塗布することも好ましい。
【0083】
前記塗布液は、酸性であることが好ましく、pHとしては5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましい。塗布液のpHが5.0以下であると、例えば、塗布液中における架橋剤(特にホウ素化合物)による水溶性樹脂の架橋反応をより充分に抑制することができる。
【0084】
<架橋硬化工程>
前記第1の形態では、前記塗布層形成工程で形成された塗布層に対して、
(1)塗布液を塗布すると同時、又は
(2)塗布液を塗布して形成された塗布層の乾燥途中であって、該塗布層が減率乾燥を示す前、
のいずれかのときに、塩基性化合物を含む塩基性溶液を付与し、前記塗布層の架橋硬化を行なう工程(以下、「架橋硬化工程」ともいう。)を有する。
【0085】
前記「(1)塗布液を塗布すると同時」に塩基性溶液を付与する方法としては、塗布液及び塩基性溶液を支持体側から順に同時重層塗布する形態が好適である。同時重層塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーター等の公知の塗布装置を用いて行なうことができる。
【0086】
前記「(2)塗布液を塗布して形成された塗布層の乾燥途中であって、該塗布層が減率乾燥を示す前」に塩基性溶液を付与する方法は、例えば特開2005−14593号公報の段落番号0016〜0037に記載の、いわゆるWet−On−Wet法(WOW法)が好ましい。本発明においては、塗布液を支持体に塗布して塗布層を形成した後、形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前に、(i)該塗布層上に塩基性溶液を塗布する方法、(ii)該塗布層上に塩基性溶液をスプレー等により噴霧する方法、又は(iii)前記塗布層が形成された支持体を塩基性溶液中に浸漬する方法、等により行なえる。
前記(i)において、塩基性溶液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されている塗布層にコーターが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0087】
前記「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」は、通常、インク受容層形成用の塗布液(塗布液)の塗布直後から数分間の過程であり、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0088】
塗布層が減率乾燥を示すようになるまで乾燥されるための条件としては、一般に40〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行なわれる。この乾燥時間は塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0089】
次に、架橋硬化工程における前記塩基性溶液について説明する。
塩基性溶液は、塩基性化合物を少なくとも1種含有する。塩基性化合物としては、例えば、弱酸のアンモニウム塩、弱酸のアルカリ金属塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)、弱酸のアルカリ土類金属塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸バリウムなど)、ヒドロキシアンモニウム、1〜3級アミン(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリへキシルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミンなど)、1〜3級アニリン(例えば、ジエチルアニリン、ジブチルアニリン、エチルアニリン、アニリンなど)、置換基を有してもよいピリジン(例えば、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)−アミノピリジンなど)、等が挙げられる。
【0090】
また、上記の塩基性化合物以外に、該塩基性化合物と共に他の塩基性物質及び/又はその塩を併用することもできる。他の塩基性物質としては、例えば、アンモニアや、エチルアミン、ポリアリルアミン等の第一アミン類、ジメチルアミン等の第二アミン類、N−エチル−N−メチルブチルアミン等の第三アミン類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、等が挙げられる。
【0091】
上記のうち特に、弱酸のアンモニウム塩が好ましい。弱酸とは、化学便覧基礎編II(丸善株式会社)等に記載の無機酸及び有機酸でpKaが2以上の酸である。前記弱酸のアンモニウム塩としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硼酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。中でも、好ましくは炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムであり、乾燥後において層中に残存せずインク滲みを低減できる点で効果的である。なお、塩基性化合物は、2種以上を併用することができる。
【0092】
前記塩基性化合物(特に弱酸のアンモニウム塩)の塩基性溶液中の含有量としては、塩基性溶液の全質量(溶媒を含む)に対し、0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。塩基性化合物(特に弱酸のアンモニウム塩)の含有量を特に上記範囲とすると、充分な硬化度が得られ、またアンモニア濃度が高くなりすぎて作業環境を損なうこともない。
【0093】
塩基性溶液は、金属化合物の少なくとも1種を含有する態様が好ましい。
塩基性溶液に含有する金属化合物としては、塩基性下で安定なものを制限なく使用可能であり、既述の水溶性多価金属塩や、金属錯体化合物、無機オリゴマー、又は無機ポリマーのいずれであってもよい。例えば、ジルコニウム化合物や、特開2005−14593号公報中の段落番号0100〜0101に無機媒染剤として列挙された化合物が好適である。上記の金属錯体化合物としては、日本化学会編「化学総説 No.32(1981年)」に記載の金属錯体、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordinantion Chemistry Review)」、第84巻、85〜277頁(1988年)及び特開平2−182701号公報に記載の、ルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体が使用可能である。
【0094】
上記の中でも、ジルコニウム化合物や亜鉛化合物が好ましく、特にジルコニウム化合物が好ましい。ジルコニウム化合物としては、例えば、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硝酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、等が挙げられ、特に炭酸ジルコニウムアンモニウムが好ましい。また、塩基性溶液には、二種以上の金属化合物(好ましくはジルコニウム化合物を含む。)を併用してもよい。
【0095】
前記金属化合物(特にジルコニウム化合物)の塩基性溶液中の含有量としては、塩基性溶液の全質量(溶媒を含む)に対し、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜2質量%である。金属化合物(特にジルコニウム化合物)の含有量を特に上記範囲とすることにより、塗布層の硬膜を充分に行なえると共に、媒染能が低下して充分な印画濃度が得られなかったりビーディングが発生することがなく、アンモニア等の塩基性化合物の濃度が高くなりすぎることによる作業環境の悪化を招くこともない。なお、金属化合物は二種以上併用することができ、後述する他の媒染剤成分のうち金属化合物以外のものを併用する場合には、総量が上記範囲内であって、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0096】
また、画像濃度、耐オゾン性の観点からは、塩基性溶液には、金属化合物として既述のマグネシウム塩を含有することも好ましい。マグネシウム塩としては、塩化マグネシウムが特に好ましい。この場合のマグネシウム塩の添加量としては、塩基性溶液の全質量に対し、0.1〜1質量%が好ましく、0.15〜0.5質量%がより好ましい。
【0097】
前記塩基性溶液は、必要に応じて、架橋剤、他の媒染剤成分を含有することができる。
塩基性溶液は、アルカリ溶液として用いることで塗布層の硬膜を促進でき、pH7.1以上に調製されるのが好ましく、より好ましくはpH8.0以上であり、特に好ましくはpH9.0以上である。前記pHが7.1以上であると、塗布液に含まれる水溶性樹脂の架橋反応をより進めることができる。
【0098】
前記塩基性溶液は、例えば、イオン交換水に、金属化合物(例:ジルコニア化合物;例えば1〜5質量%)及び塩基性化合物(例:炭酸アンモニウム;例えば1〜5%)と、必要に応じてパラトルエンスルホン酸(例えば0.5〜3%)とを添加し、十分に攪拌することで調製することができる。なお、各組成物の「%」はいずれも固形分質量%を意味する。
また、塩基性溶液の調製に用いる溶媒には、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0099】
一方、塩基性溶液は、シリカ粒子などの無機粒子の含有量が少ないことが好ましく、無機粒子の含有量が塩基性溶液の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、特には無機粒子を含まないことが望ましい。
【0100】
<冷却・乾燥工程>
前記第2の形態では、前記塗布層形成工程で形成された塗布層を、前記塗布時の塗布液の温度に対して5℃以上低下するように冷却する工程(以下、「冷却工程」ともいう。)と、冷却された塗布層を乾燥する工程(以下、「乾燥工程」ともいう。)とを有する。
【0101】
冷却工程において塗布層を冷却する方法としては、塗布層が形成された支持体を、0〜10℃に保たれた冷却ゾーンで、5〜30秒冷却させる方法が好適である。冷却工程においては、0〜10℃低下するように冷却することが好ましく、0〜5℃以上低下するように冷却することがより好ましい。ここで、塗布層の温度は、膜面の温度を測定することにより測定する。
【0102】
<支持体>
支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。インク受容層の透明性を生かす上では、透明支持体又は高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。また、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスクを支持体として用いレーベル面側にインク受容層を付与することもできる。
【0103】
前記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
【0104】
高光沢性の不透明支持体としては、インク受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム、あるいは前記各種紙支持体、前記透明支持体もしくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有もしくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体等が挙げられる。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0105】
また、支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0106】
次に、前記レジンコート紙に用いられる原紙について詳述する。
原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0107】
前記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0108】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0109】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0110】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。特に、インク受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行なわれているように、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度及び色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上にインク受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行なって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0111】
支持体には、バックコート層を設けることができる。バックコート層は、白色顔料(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム等の無機顔料やポリエチレン、メラミン樹脂等の有機顔料)や、水性バインダー(スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子等)、その他の成分(消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等)を用いて構成することができる。
【0112】
インクジェット記録媒体には、インク受容層に加えて更にインク溶媒吸収層、中間層等を有していてもよい。また、支持体上には、インク受容層と支持体との間の接着性を高め、電気抵抗値を適切に調整する等の目的で下塗層を設けてもよい。
【0113】
また、インクジェット記録媒体の構成層(例えばインク受容層、あるいはバックコート層など)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、特開平10−228076号の各公報に記載がある。尚、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、前記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止することができる。
【0114】
なお、インク受容層は、支持体の片側のみに設けてもよいし、カール等の変形を防止する等の所望とする目的で、支持体の両側に設けてもよい。OHP等で用いる場合であって、前記インク受容層を支持体の片側のみに設ける場合は、その反対側の表面あるいはその両面に、光透過性を高める目的で反射防止膜を設けることもできる。
【0115】
また、インク受容層が設けられる側の支持体の表面にホウ酸又はホウ素化合物を塗工し、その上にインク受容層を形成することにより、インク受容層の光沢度や表面平滑性をより高め、高温高湿環境下における画像の経時滲みをより抑制することもできる。
【0116】
〜インクジェット記録方法〜
本発明のインクジェット記録媒体上に画像を記録するためのインクジェット法による記録方式については、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して、放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等を用いることができる。また、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0118】
(実施例1)
−予分散液の作製−
イオン交換水(媒質)20.5kgに、気相法シリカ粒子として、AEROSIL 300SF75(平均一次粒子径7nm、日本アエロジル(株)製)1.76kgを添加し、さらにシャロール DC−902P(分散剤;第一工業製薬(株)製)0.15kgを添加して得た混合液を、予分散液作製装置としてプシミックス(PSI−MIX・MICRO PSI、アシザワ・ファインテック(株)製)を用いて、下記の条件(以下同様)にて分散処理を行なった。分散処理の後、9.0×10Paまで減圧し、5分間保持した。
【0119】
その後さらに、AEROSIL 300SF75(日本アエロジル(株)製)1.76kgを添加し、続いてシャロール DC−902P(分散剤;第一工業製薬(株)製)0.15kgを添加した後、前記プシミックスにて分散処理を行ない、分散処理後に再び9.0×10Paまで減圧し、5分間保持した。次いで、これにAEROSIL 300SF75(日本アエロジル(株)製)1.76kgを添加し、シャロールDC−902P(分散剤;第一工業製薬(株)製)0.31kgを添加し、再び前記プシミックスにて分散処理を行なった後、9.0×10Paまで減圧して5分間保持した。引き続き、AEROSIL 300SF75(日本アエロジル(株)製)1.76kgを添加し、前記プシミックスにて分散処理を行なった後、再び9.0×10Paまで減圧して5分間保持した。
<分散条件>
・回転数 :2500rpm
・供給圧力:9.0MPa
・被分散物の循環量:10L/min
以上のようにして、気相法シリカの予分散液を作製した。
【0120】
−評価・測定−
(1)液粘度の測定
得られた予分散液を30℃に調整し、B型粘度計(東機(株)製)を用いて30℃に保って予分散液の粘度[Pa・s]を測定した。測定結果は、下記表1に示す。
【0121】
−インク受容層用塗布液の調製−
得られた予分散液35.7部に、酢酸ジルコニル (ジルコゾールZA−30(50%溶液)、第一稀元素化学工業(株)製)0.47部を混合し、液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて分散させた後、得られた分散液を45℃に加熱し、20時間保持した。その後、この分散液、イオン交換水31.6部、7.5%ホウ酸水溶液(架橋剤)4.4部、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン・ポリアルキレンポリアミン重縮合物(50%溶液)(SC−505、ハイモ(株)製)0.1部、下記ポリビニルアルコール溶解液26.0部、及びカチオン変性ポリウレタン(スーパーフレックス650−5(25%水溶液)、第一工業製薬(株)製)2.2部を加え、さらにディゾルバーにより回転数8000rpmで10分間、撹拌を行なった。その後、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エマルゲン109P(10質量%水溶液)、HLB値13.6、花王(株)製)1.2部及びイオン交換水33.0部を含む溶液をさらに加え、再びディゾルバーにより回転数2000rpmで10分間、撹拌を行なった。このようにして、インク受容層用塗布液Aを調製した。
<ポリビニルアルコール溶解液の組成>
・ポリビニルアルコール・・・6.96部
(JM−33(鹸化度94.3mol%、重合度3300)、日本酢ビ・ポバール製)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル・・・0.23部
(界面活性剤 エマルゲン109P、花王(株)製)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル・・・2.12部
(ブチセノール20P、協和発酵(株)製)
・イオン交換水・・・90.69部
【0122】
−インクジェット記録用シートの作製−
まず、以下のようにして、支持体を用意した。
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/mの原紙を抄造した。
【0123】
得られた原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4質量%水溶液に蛍光増白剤(住友化学工業(株)製の「Whitex BB」)を0.04質量%添加し、これを絶乾重量換算で0.5g/mとなるように前記原紙に含浸させ、乾燥した。その後、更にキャレンダー処理を施し、密度1.05に調整した基紙を得た。
【0124】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、この樹脂層面を「ウラ面」と称する。)。このウラ面側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施した後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製の「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製の「スノーテックスO」)を質量比1:2で水に分散した分散液を、乾燥重量が0.2g/mとなるように塗布した。
【0125】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10質量%、微量の群青、及び蛍光増白剤0.01質量%(対ポリエチレン)を含有する、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて厚み29μmとなるように溶融押出しをし、高光沢の熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成した(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)。
以上のようにして、支持体を作製した。
【0126】
得られた支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、前記インク受容層用塗布液A183g/mに、下記PAC液1を11.4g/mの塗布量となるようにインラインブレンドした後、エクストルージョンダイコーターで塗布を行なった。その後、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/秒)にて塗布層の固形分濃度が20質量%になるまで乾燥させた。この間、塗布層は恒率乾燥を示した。そして、減率乾燥を示す前に、塗布層を下記組成の塩基性溶液(pH=7.8)に3秒浸漬して、前記塗布層上にその13g/mを付着させ、更に65℃で10分間乾燥させた。
このようにして、乾燥膜厚32μmのインク受容層が設けられたインクジェット記録用シートを作製した。
【0127】
<PAC液1の組成>
・塩基度83%のポリ塩化アルミニウム水溶液・・・20部
(アルファイン83、大明化学工業(株)製)
・イオン交換水・・・80部
【0128】
<塩基性溶液の組成>
・ホウ酸・・・0.65部
・炭酸ジルコニウムアンモニウム(28質量%水溶液)・・・0.33部
(ジルコソールAC−7、第一稀元素化学工業(株)製)
・炭酸アンモニウム(一級、関東化学(株)製)・・・3.5部
・イオン交換水・・・63.3部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル(2質量%水溶液)・・・30.0部
(界面活性剤;エマルゲン109P、花王(株)製)
【0129】
−インク吸収性の評価−
インクジェットプリンタ(商品名:PM−A820C、セイコーエプソン(株)製)を用意し、作製したインクジェット記録用シートにY(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)、B(青)、G(緑)、及びR(赤)のベタ印字をし、その直後(約10秒後)にベタ印字部の上から紙を接触、押圧し、インクの紙への転写の有無を観察した。そして、インクの転写の程度を指標として、下記の評価基準にしたがってインク吸収性を評価した。
<評価基準>
A:紙にインクが全く転写せず、インク吸収性は良好であった。
B:紙にインクが僅かに転写した。
C:紙にインクの一部が転写された。
【0130】
(実施例2)
実施例1において、予分散液の作製時における減圧を9.0×10Paから5.0×10Paに変更したこと以外は、実施例1と同様にして予分散液を作製し、液粘度及び粒子径を測定した。さらに、実施例1と同様に、得られた予分散液を用いてインク受容層用塗布液を調製し、インクジェット記録用シートを作製、評価した。
【0131】
(実施例3)
実施例1において、予分散液の作製を、気相法シリカ粒子及び分散剤の添加を分割添加せずに、下記のように一括して添加するようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、予分散液を作製し、液粘度及び粒子径を測定した。さらに、実施例1と同様に、得られた予分散液を用いてインク受容層用塗布液を調製し、インクジェット記録用シートを作製、評価した。
−予分散液の作製−
イオン交換水(媒質)20.5kgに、シャロール DC−902P(分散剤;第一工業製薬(株)製)0.61kgを添加し、さらに気相法シリカ粒子として、AEROSIL 300SF75(平均一次粒子径7nm、日本アエロジル(株)製)7.04kgを添加して得た混合液を、予分散液作製装置としてプシミックス(アシザワ・ファインテック(株)製)を用いて分散処理を行なった。分散処理の後、9.0×10Paまで減圧し、5分間保持して、気相法シリカの予分散液とした。
【0132】
(実施例4)
実施例1の「予分散液の作製」において、気相法シリカ粒子及び分散剤の添加を、下記のように分割して行なうようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、予分散液を作製し、液粘度及び粒子径を測定した。さらに、実施例1と同様に、得られた予分散液を用いてインク受容層用塗布液を調製し、インクジェット記録用シートを作製、評価した。
【0133】
−予分散液の作製−
イオン交換水(媒質)20.5kgに、気相法シリカ粒子として、AEROSIL 300SF75(平均一次粒子径7nm、日本アエロジル(株)製)3.52kgを添加し、さらにシャロール DC−902P(分散剤;第一工業製薬(株)製)0.30kgを添加して得た混合液を、予分散液作製装置としてプシミックス(アシザワ・ファインテック(株)製)を用いて分散処理を行なった。分散処理の後、9.0×10Paまで減圧し、5分間保持した。
その後さらに、AEROSIL 300SF75(日本アエロジル(株)製)1.76kgを添加し、続いてシャロール DC−902P(分散剤;第一工業製薬(株)製)0.31kgを添加した後、前記プシミックスにて分散処理を行ない、分散処理後に再び9.0×10Paまで減圧し、5分間保持した。引き続き、AEROSIL 300SF75(日本アエロジル(株)製)1.76kgを添加し、前記プシミックスにて分散処理を行なった後、再び9.0×10Paまで減圧して5分間保持した。
以上のようにして、気相法シリカの予分散液を作製した。
【0134】
(比較例1)
実施例1において、予分散液の作製に用いた予分散液作製装置(プシミックス)を吸引分散攪拌機conti−TDS〔Ystral社製〕に代え、分散処理後の減圧処理を行なわずに予分散液を作製した。得られた予分散液を用い、実施例1と同様に、液粘度及び粒子径を測定し、さらにインク受容層用塗布液を調製すると共に、インクジェット記録用シートを作製、評価した。
【0135】
(比較例2)
実施例1において、予分散液の作製に用いた予分散液作製装置(プシミックス)をT.K.ロボミックス(プライミクス(株)製)に代え、減圧処理を行なわずに予分散液を作製した。得られた予分散液を用い、実施例1と同様に、液粘度及び粒子径を測定し、さらにインク受容層用塗布液を調製すると共に、インクジェット記録用シートを作製、評価した。
【0136】
【表1】

【0137】
前記表1に示すように、実施例では、シリカ微粒子が25質量%を占める高い固形分量としながらも、分散液の粘度上昇が抑えられ、良好な分散性が得られた。また、インクジェット記録用シートとした際のインク吸収性に優れていた。
これに対し、分散後に減圧処理しなかった比較例では、分割投入により固形分量が高くなるにつれ著しく粘度が増大し、所望量の全てを投入することができなかった。そのため、分散が良好に行なえなかったばかりか、シリカ粒子の高濃度化が図れなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被分散物の全質量に対して20質量%以上の白色顔料と、分散剤と、媒質とを混合して分散処理する工程と、分散処理後に減圧処理する工程とを有する白色顔料分散液の製造方法。
【請求項2】
前記白色顔料の平均一次粒子径が、20nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の白色顔料分散液の製造方法。
【請求項3】
前記白色顔料が、気相法シリカであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の白色顔料分散液の製造方法。
【請求項4】
前記減圧処理は、1×10Pa以上の減圧環境にして行なうことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の白色顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
前記分散剤が、カチオン系化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の白色顔料分散液の製造方法。
【請求項6】
前記カチオン系化合物が、ジアリルジメチルカチオンポリマーであることを特徴とする請求項5に記載の白色顔料分散液の製造方法。
【請求項7】
前記白色顔料と前記分散剤とをそれぞれ2回以上に分割して混合することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の白色顔料分散液の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の白色顔料分散液の製造方法により白色顔料分散液を作製する工程と、
前記白色顔料分散液と水溶性樹脂とを少なくとも混合して塗布液を調製する工程と、
前記塗布液を支持体上に塗布してインク受容層を形成する工程と、
を有するインクジェット記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2010−214638(P2010−214638A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61343(P2009−61343)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】