皮溝構造の解析方法及び解析装置並びに解析システム
【課題】皮溝構造の解析を適正に行うことができ、特に撮影時の照明環境に左右されず、かつ経済的で簡便敏速な方法で皮溝構造を解析可能にする。
【解決手段】マイクロスコープカメラで撮影した肌の画像をPCに入力し(ステップS20、S30)、この画像を対象としてモルフォロジカル・フィルタにより皮溝成分を抽出し、皮溝多値画像を得る(ステップS40、S50)。この皮溝多値画像を2値化し(ステップS60、S70)、皮溝2値画像を対象として骨形態測定法(皮溝形態測定法)により皮溝構造のパラメータを算出する(ステップS80)。このようにして算出された皮溝構造のパラメータに基づいて皮溝構造の評価を行う。
【解決手段】マイクロスコープカメラで撮影した肌の画像をPCに入力し(ステップS20、S30)、この画像を対象としてモルフォロジカル・フィルタにより皮溝成分を抽出し、皮溝多値画像を得る(ステップS40、S50)。この皮溝多値画像を2値化し(ステップS60、S70)、皮溝2値画像を対象として骨形態測定法(皮溝形態測定法)により皮溝構造のパラメータを算出する(ステップS80)。このようにして算出された皮溝構造のパラメータに基づいて皮溝構造の評価を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮溝構造の解析方法及び解析装置並びに解析システムに係り、特にスキンケアに有効な情報を取得するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、年齢層や季節に合わせた様々なスキンケア化粧品が発売されている。美しい肌を保つためには、規則正しい生活を心がけ、睡眠時間や食事にも気をつけ、肌の状態やホルモンバランスの変化に気を配り、それらに合わせたスキンケアを施すことが必要である。さらに、紫外線や乾燥などの外的ストレス、疲労や精神的なストレスへの適切な対策も必要となる。
【0003】
しかし、自分自身で肌ストレスを管理し、肌の状態を見極め、それらに合わせた正しいスキンケアの実践は難しい。そして、肌の変調は肌理(キメ)の変化としてあらわれ、キメの状態には肌の代謝の状態など、美しい肌を保つことに関連した重要な要素が関係していることが分かっている。そのためキメの写真を撮影し、キメの状態を解析することで個々の肌の状態に合ったスキンケアが行なわれている。しかし、肌のキメの状態はホルモンバランスなどの肌ストレスによって毎日少しずつ変化しており、その変化を日常的に自分自身で判断し、適切なスキンケアを施すことは難しい。
【0004】
従来、肌のキメが皮膚の凹凸である皮溝と皮丘によって形成されていることから、肌表面をカメラで撮影し画像解析を行なうことにより肌のキメを自動的に評価する表皮組織定量化装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1に記載の表示組織定量化装置は、皮溝か皮丘かを画像の2値化により識別し、識別した皮溝の画素と所定の短直線とをマッチングして、マッチングした短直線の連結によって表される皮溝を抽出し、抽出された皮溝の中から短直線の連結数が所定値以上の皮溝を主要皮溝として抽出し、抽出された皮溝に基づいて表皮組織を定量化した指標として皮溝の平均太さ、皮溝の間隔、皮溝の平行度等を算出するようにしている。
【0006】
また、本出願人は、骨粗鬆症治療薬や骨サプリメントの骨梁構造に対する治療あるいは改善効果の判定に好適な骨梁構造の改善効果判定支援方法を提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−061892号公報
【特許文献2】特開2003−230557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の表皮組織定量化装置は、撮影された画像の輝度値のばらつきが所定値以上になるように画像の各画素の輝度値を変換するとともに、輝度値変換後の画素を2値化する際に画素毎に閾値を変えながら2値化し、これにより肌を直接撮影して得られる画像の輝度値依存性によるデータのばらつき等に対応できるようにしているが、2値化までの処理が煩雑になっている。
【0009】
さらに皮溝にも個人差があることからその連結性、連続性、配向性、複雑性、数、幅等、種々のパラメータを基に総合的に判定する必要があるが、このような肌質の状態の変化を日常的に、しかも経済的でかつ簡便敏速に行う方法は無かった。
【0010】
皮溝構造の評価は、従来肌のレプリカ画像をデジタルカメラにて撮影し、そのデジタル画像情報に対して画像処理を行ない、皮溝の構造を抽出定量化する方法である。最近では、皮膚内部構造を三次元画像化する光干渉断層法等が報告されている。
【0011】
しかしながら、皮溝構造の変化を高い精度で測定し種々のパラメータを基に総合的に評価する経済的で簡便敏速な方法はいまだ開発されていない。つまり画像上に写し出されている皮溝の構造特徴を定量的に評価するためのフーリエ解析、フラクタル解析、ランレングス解析等のテキスチャー解析があり、従来の装置にもすでに応用されている。これらの方法は、画像上の輝度変化の違いを利用した解析方法であり、撮影時の照明環境によって生じる輝度依存性が大きいため2値化のための閾値の決定やノイズの除去方法によって結果が異なりその基準化が難しい。また、装置も大きくなり個人がいかなる場所や状況においても簡単に利用できるものでなかった。そのため、肌の改善効果を高い精度で簡単に、照明環境に左右されず、かつ経済的に判定するための皮溝構造の解析方法の開発が切望されているのが実情である。
【0012】
一方、特許文献2には、骨梁構造を解析評価する技術が記載されているが、評価対象が骨の骨梁構造であり、特許文献2に記載の技術を表皮組織の皮溝構造に応用する動機付けがなかった。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、皮溝構造の解析を適正に行うことができ、特に撮影時の照明環境に左右されず、かつ経済的で簡便敏速な方法で皮溝構造を解析・評価することができる皮溝構造の解析方法及び解析装置並びに解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために請求項1に係る皮溝構造の解析方法は、人体の表皮組織表面の画像を入力する工程と、前記入力した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する工程と、前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出する工程と、前記算出された皮溝構造のパラメータを出力する工程と、を含むことを特徴としている。
【0015】
請求項1に係る発明は、数理形態学の理論を使ったモルフォロジカル・フィルタと骨の組織切片の定量評価に使用されている骨形態計測法とを、皮溝構造の解析に応用したものである。請求項1に係る発明によれば、表皮組織表面の画像から抽出した皮溝成分を、骨形態計測の対象である骨格成分と見なし、骨形態計測により骨格構造(皮溝構造)のパラメータを算出するようにしている。このようにして算出される皮溝構造のパラメータは、表皮組織表面の撮影時の照明環境に左右されず、皮溝情報の消失や変化が起こることが極めて少なく、精度が高いことが確認された。
【0016】
請求項2に示すように請求項1に記載の皮溝構造の解析方法において、前記皮溝成分を抽出する工程は、前記モルフォロジカル・フィルタの構造要素及び/又は演算式を変えて所望の皮溝成分を抽出することを特徴としている。このモルフォロジカル・フィルタの構造要素及び/又は演算処理回数を変えることで、個人差、画像の拡大率等にかかわらず、皮溝を適切に抽出することができる。
【0017】
請求項3に示すように請求項1又は2に記載の皮溝構造の解析方法において、基準となる皮溝構造のパラメータと前記算出された皮溝構造のパラメータとを比較する工程と、前記比較結果に基づいて前記算出された皮溝構造のパラメータに対する皮溝構造の評価値を算出する工程と、を更に含むことを特徴としている。
【0018】
請求項4に示すように請求項3に記載の皮溝構造の解析方法において、前記基準となる皮溝構造のパラメータは、同一人物の同一部位を撮影した過去の表示組織表面の画像に基づいて算出された皮溝構造のパラメータであることを特徴としている。
【0019】
これにより、例えば治療薬の治療効果、サプリメント又はスキンケアによる改善の様子を確認するために、所定の治療、摂取及びケア期間(例えば1ヶ月、1年の期間)を開けて、同じ患者の同一部位の皮溝画像を元に皮溝構造のパラメータを算出し、両者を比較することで皮溝構造の評価値(骨格構造のパラメータの増減等)を算出することができ、治療薬の治療効果、スキンケア及びサプリメントによる改善の様子の判定が可能となる。
【0020】
請求項5に示すように請求項3に記載の皮溝構造の解析方法において、前記基準となる皮溝構造のパラメータは、標準的な普通肌の画像、乾燥肌の画像、及び年齢肌の画像のうちの少なくとも1つの画像に基づいて算出された皮溝構造のパラメータであることを特徴としている。
【0021】
これにより、現在の肌の状態と普通肌、乾燥肌、又は年齢肌等との比較結果(評価結果)を得ることができる。
【0022】
請求項6に係る皮溝構造の解析装置は、人体の表皮組織表面の画像を入力する入力手段と、前記入力した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する皮溝成分抽出手段と、前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記算出された皮溝構造のパラメータを出力する出力手段と、を備えたことを特徴としている。
【0023】
請求項7に係る発明は、カメラ付き携帯電話と、該カメラ付き携帯電話と通信する処理サーバとからなる皮溝構造の解析システムにおいて、前記カメラ付き携帯電話は、人体の表皮組織表面の画像を撮影する撮影手段と、前記撮影した画像を前記処理サーバに送信するとともに、前記処理サーバにより算出された皮溝構造の評価結果を受信する通信手段と、前記受信した皮溝構造の評価結果を表示する表示手段と、を備え、前記処理サーバは、前記カメラ付き携帯電話から画像を受信するとともに、皮溝構造の評価結果を前記カメラ付き携帯電話に送信する通信手段と、前記受信した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する皮溝成分抽出手段と、前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出するパラメータ算出手段と、を備え、前記算出された皮溝構造のパラメータ又は該皮溝構造のパラメータに基づいて算出される評価結果を前記解析結果として前記カメラ付き携帯電話に送信することを特徴としている。
【0024】
これによれば、カメラ付き携帯電話を使用して、日常的、そして経済的、かつ簡便敏速に自分の肌質を確認することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、数理形態学の理論を使ったモルフォロジカル・フィルタと骨の組織切片の定量評価に使用されている骨形態計測法とを皮溝構造の解析に応用し、骨形態計測により骨格構造(皮溝構造)のパラメータを算出するようにしたため、表皮組織表面の撮影時の照明環境に左右されず、処理仮定での皮溝情報の消失や変化が起こることが極めて少なり、皮溝構造のパラメータを精度よく算出することができるという効果がある。そして、この算出された皮溝構造のパラメータに基づいて皮溝構造の評価を適正に行うことができ、皮膚疾患の治療薬やサプリメントおよび化粧品等の皮溝構造に対する治療あるいは改善効果の詳細が明らかになり、治療薬、化粧品、サプリメントの選択やそれらによる皮溝構造改善効果の程度を明確に判定することができるようになるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る皮溝構造の解析装置の実施形態を示すブロック図
【図2】モルフォロジカル・フィルタに用いられる構造要素の形態の一例を示す図
【図3】肌のレプリカ画像をモルフォロジカル・フィルタによって処理した複数の画像を示す図
【図4】本発明に係る皮溝構造の解析方法を示すフローチャート
【図5】本発明に係る皮溝構造の解析方法を示すフローチャート
【図6】普通肌(33歳)、乾燥肌(31歳)、年齢肌(57歳)のレプリカ画像とモルフォロジー処理によって得られた皮溝の骨格2値画像をレプリカ画像上にマッチングさせた重ね合わせ画像を示す図
【図7】普通肌、乾燥肌、年齢肌の肌型の違いを配向性を示す指標であるMean intercept length(MIL)で表した図
【図8】普通肌(33歳)、乾燥肌(31歳)、年齢肌(57歳)女性の皮溝パラメータより測定した美肌指数(%)と経年的肌たるみ指数(年)を示す図表
【図9】基準画像に対して輝度を低・高と2段階に変化させた時の普通肌のレプリカ画像を示す図
【図10】図9の画像を対象にモルフォロジー処理を行い基準画像に対する低・高輝度画像の皮溝を表すパラメータの変動率を示す図表
【図11】本発明に係る皮溝構造の解析システムの実施形態を示すシステム構成図
【図12】図11のカメラ付き携帯電話の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って本発明に係る皮溝構造の解析方法及び解析装置並びに解析システムの実施の形態について説明する。
【0028】
[皮溝構造の解析装置の構成]
図1は本発明に係る皮溝構造の解析装置の実施形態を示すブロック図である。
【0029】
この皮溝構造の解析装置は、ワークステーション、パーソナルコンピュータ(PC)により構成され、主として各構成要素の動作を制御する中央処置装置(CPU)10と、装置の制御プログラムが格納されたり、プログラム実行時の作業領域となる主メモリ12と、本発明に係る皮溝構造の解析方法を実現するためのプログラム、皮溝のデジタル画像データや過去の皮溝構造の解析結果等が格納されているハードディスク装置14と、皮溝のデジタル画像データを取り込むためのマイクロスコープカメラ16を接続のためのインターフェース(I/F)18又はマイクロスコープカメラ内蔵システムと、表示用データを一時記録する表示メモリ20と、この表示メモリ20からの画像データ、文字データ等により画像や文字等を表示するCRTモニタや液晶モニタ等のモニタ装置22と、キーボード24と、位置入力装置としてのマウス26と、マウスの状態を検出してモニタ装置上のマウスポインタの位置やマウスの状態等の信号をCPU10に出力するマウスコントローラ28と、後述する解析判定表をプリント出力するプリンタ30と、上記各構成要素を接続するバス32とから構成される。
【0030】
尚、ハードディスク装置14に格納される本発明に係る皮溝構造の解析方法を実現するためのプログラムを除いて周知のものであるため、各構成要素の詳細な説明については省略する。
【0031】
[本発明の原理]
次に、本発明の原理について説明する。
【0032】
まず、本発明に使用される数理形態学の理論を使ったモルフォロジカル・フィルタについて説明する。このモルフォロジカル・フィルタによる処理は、マイクロスコープカメラ16あるいはデジタルカメラを使用して人体の表皮組織表面(肌)を直接撮影し、あるいは印象材を使用して肌のレプリカを取得し、そのレプリカを撮影して取得した原画像(デジタルデータX)を、構造要素(B)と次式のスケルトン演算式とを組み合わせたものを用いて処理する。
【0033】
【数1】
【0034】
この実施の形態では、構造要素(B)として、図2に示すような直径5画素の単一円形構造要素を使用している。
【0035】
図3は皮溝を含む原画像(original image)に対して、上記式(1)により抽出した皮溝の皮溝2値画像の一例を示している。図3では、基画像と、この基画像に対して演算回数n(式(1) 内のn)を0から7まで行い、n=0,1,2,3,4,5,6,7の8枚の部分集合画像Sn(X)と、n=2−5,3−6,4−7の3枚の和集合画像Sk(X)とが示されている。
【0036】
図3に示すようにモルフォロジカル・フィルタにより抽出した部分集合画像Sn(X)又は和集合画像Sk(X)において、白い部分が皮溝に相当し、黒い部分が皮丘に相当するが、この皮溝の画像は、骨のX線画像から得られる骨梁の画像に似ている。
【0037】
本発明はこの点に着目し、皮溝構造の解析に、骨の骨格構造の定量解析に使用されている骨形態計測法を応用し、部分集合画像Sn(X)又は和集合画像Sk(X)を元に各種の骨格構造(以下、「皮溝構造」という)のパラメータを算出することとした。
【0038】
そして、皮膚疾患に対する治療薬の治療効果、スキンケア前後、サプリメントのよる皮溝改善の様子、そして肌や爪の加齢度を確認するために、所定の期間を開けて同じ同一部位の原画像から算出した皮溝構造のパラメータを比較し、現在の肌の状態を評価するようにしている。
【0039】
[第1の実施形態]
次に、本発明に係る皮溝構造の解析方法について、図4及び図5に示すフローチャートにしたがって説明する。
【0040】
図4に示すように皮膚疾患治療薬、スキンケア又はサプリメント摂取前後の肌をマイクロスコープカメラ16を用いて拡大撮影し、撮影したデジタル画像データをI/F18を介してハードディスク装置14に取り込む(ステップS10〜S30)。尚、撮影を行う撮影間隔としては、例えば、1日、数ヶ月および1年程度とする。また、撮影は、同一部位を同じ条件で行うことが望ましい。
【0041】
続いて、皮溝成分を含むデジタル画像データに対して、前述した式(1)により皮溝多値画像データ(例えば、0〜255階調の画像データ)を抽出し、この抽出した皮溝多値画像データを、閾値=1.0によって2値化し、皮溝2値画像を生成する(ステップS40〜S80)。尚、閾値を限りなく小さくすることで、閾値によって画像情報が失われないようにしている。
【0042】
上記のようにして皮溝2値画像が生成されると、各皮溝2値画像を対象として骨形態計測法(以下、「皮溝形態計測値法」という)によって皮溝構造のパラメータを算出する。尚、皮溝構造を示すパラメータの種類については後述する。
【0043】
次に、上記ステップS70〜S80の詳細な処理手順について、図5を用いて説明する。
【0044】
図5において、皮溝2値画像として、図3で説明したようにn=0〜7の8枚の部分集合画像と、n=2−5,3−6,4−7の3枚の和集合画像とを作成する(ステップS72)。続いて、上記複数の部分集合画像又は和集合画像のうちから、解析のための皮溝2値画像を選択する(ステップS74)。この皮溝2値画像の選択は、予め決定されたものを選択するようにしてもよいし、複数の部分集合画像又は和集合画像の高周波成分等の画質に関する画像情報を算出し、画像情報が最大のものを自動選択するようにしてもよい。
【0045】
次に、ステップS74で選択した皮溝2値画像を対象として皮溝形態計測法による各種の解析を行う。即ち、皮溝2値画像を対象として、皮溝形態計測及びスター・ボリューム(Star volume )解析を行う(ステップS82)。
【0046】
上記皮溝形態計測及びスター・ボリューム解析によって算出される皮溝構造のパラメータは、以下の通りである。
(a)皮溝形態計測
皮溝構造のパラメータ
P%=皮溝要素の画素数
FD=皮溝構造の複雑性
Sk.Ar/T.Ar=皮溝量
Sk.Pm/T.Ar=皮溝周囲長
Sk.Pm/Sk.Ar=皮溝周囲長に対する皮溝骨格量の割合
Sk.N=皮溝数
Sk.Th=皮溝幅
Sk.Sp=皮溝間距離
MIL=皮溝の配行性
TBpf=皮溝の凹凸性
Moment=曲げに対する強度
Polarmomet=ねじりに対する強度
(b)スター・ボリューム解析
皮溝構造のパラメータ
VsK=皮溝の連続性と皮溝の体積
VsP=非皮溝腔の大きさと皮溝腔の体積
一方、ステップS76で選択した皮溝2値画像を対象として、細線化処理を行う(ステップS84)。この細線化処理は、皮溝2値画像のパターンの中心線を抽出する処理であり、皮溝幅1ピクセルの細線化が行われる(ステップS86)。そして、この細線化処理された皮溝2値画像を対象として、皮溝形態測定法の一つであるノード・ストラット(Node strut)解析を行う(ステップS88)。
【0047】
上記ノード・ストラット解析によって算出される皮溝構造のパラメータは、以下の通りである。
(c)ノード・ストラット解析
3個以上の皮溝の接合点をNd、ほかの皮溝と接合していない終末点をTm、それらの間をつなぐ皮溝軸をストラット(strut)と定義した時の数のパラメータ:
N.Nd/T.Ar =Tissue area(T.Ar)当たりのNdの数
N.Tm/T.Ar =T.Ar当たりのTmの数
N.Nd/N.Tm =Nd数とTm数の比
全ストラット長(Total strut length(TSL))に対する各strutの長さのパラメータ:
NdNd/TSL
TmTm/TSL
NdTm/TSL
また、T.Ar当たりの長さが占める割合のパラメータ:
TSL/T.Ar
NdNd/T.Ar
TmTm/T.Ar
NdTm/T.Ar
尚、皮溝形態計測、スター・ボリューム解析及びノード・ストラット解析を行うソフトウエアは、予め皮溝構造の解析装置のハードディスク装置14に組み込まれている。
【0048】
上記のようにして皮膚疾患治療、スキンケア、サプリメント摂取前後について、それぞれ皮溝構造のパラメータ(P%,FD,Sk.Ar/T.Ar,Sk.Pm/T.Ar,Sk.Pm/Sk.Ar,Sk.N,Sk.Th,Sk.Sp,MIL,TBpf,Moment,Polarmomet,VsK,VsP,N.Nd/T.Ar,N.Tm/T.Ar,N.Nd/N.Tm,NdNd/TSL,TmTm/TSL,NdTm/TSL,TSL/T.Ar,NdNd/T.Ar,TmTm/T.Ar,NdTm/T.Ar)を算出し、これらの皮溝構造のパラメータを比較することにより、各皮溝構造のパラメータの増減から皮溝構造の評価を行う。
【0049】
この実施形態では、皮膚疾患治療、スキンケア、サプリメント摂取前後について、それぞれ皮溝構造のパラメータを算出するようにしたが、これに限らず、定期的又は日常的に肌のキメ状態の変化を判断するために、過去に撮影した同一部位の画像から算出した皮溝構造のパラメータをハードディスク装置14に保存管理しておき、これらの皮溝構造のパラメータを比較することで、皮溝構造の評価を行うようにしてもよい。
【0050】
また、撮影時点の異なる同一人物の同一部位の画像から算出した皮溝構造のパラメータを比較する場合に限らず、1つ又は複数の基準となる標準的な画像(普通肌の画像、乾燥肌の画像、及び年齢肌の画像等)に対して算出した皮溝構造のパラメータをハードディスク装置14に保存しておき、これらの皮溝構造のパラメータと比較することにより、現在の肌の状態を示す評価結果を得ることができる。
【0051】
[実施例]
以下に本手法を使用した際の応用例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0052】
図6に示すように33歳で普通肌、31歳で乾燥肌そして57歳で美肌の女性から印象材を使用して肌のレプリカを取得し、これをマイクロスコープカメラ16又はデジタルカメラで撮影してデジタル画像を皮溝構造の解析装置に入力した。その画像(レプリカ画像)を、図6(A)に示す。
【0053】
そして、レプリカ画像に対してモルフォロジー処理を行い、皮溝2値画像として抽出した(図6(B))。さらに、抽出した皮溝2値画像をレプリカ画像と重ね合わせた所、レプリカ画像上の皮溝と皮溝2値画像とは高い精度でマッチングした(図6(C))。
【0054】
抽出された皮溝2値化画像は、ネット状を示すキメの細かい普通肌、斜め方向の皮溝が目立つ乾燥肌、そして普通肌の女性ほど緻密ではないが57歳にもかかわらずネット状を維持した肌質の3パターンを再現することができた。
【0055】
また、図6(B)に示した皮溝2値画像に対して、構造異方性を解析する手法の1つである、Mean Intercept Length(MIL) 法により皮溝構造の配向を計測した。
【0056】
図7は上記普通肌、乾燥肌及び年齢肌の皮溝2値画像に対して計算したMILの結果を示す図である。
【0057】
外枠の円に類似した弧を描くほど皮溝の均一な配向性を示し、円の中に収縮するほど不均一な皮溝の配向性を示す事を意味している。図6(B)で示した普通肌のMILは外枠の円にほぼ一致しており、乾燥肌のMILは一定の方向性を持って円の中央に収縮する結果を示した。すなわち、ネットワーク状を示す普通肌と斜め方向の皮溝が目立つ乾燥肌のキメの状況が配向性の違いとして反映され、それは数値としても定量的に比較することができた。
【0058】
一方、57歳の年齢肌は、年齢に応じて皮溝が粗になってはいるものの、ネットワーク状を維持しており、MILの結果もほぼ普通肌と同様な配向性を示していることが定量的に確認することができた。
【0059】
そこで、本手法を使用して図6(B)に示した普通肌、乾燥肌、年齢肌の皮溝2値画像に対して、皮溝形態計測等を行い、計測した各種の皮溝評価パラメータを基準として美肌指数を計測した。さらに、皮溝の配向性を示すMILと皮溝量を示すパラメータが肌の強度に関与していることから、年齢・MIL・Sk.N(皮溝数)を基準として経年的肌たるみ指数を計測した。
【0060】
図8に計測結果を示す。同図に示すように、美肌指数は93.5%,83.4%,79.0%とほぼ年齢に応じて変化を示したが、普通肌と乾燥肌では肌質の違いが約10%の差で反映された。また、経年的肌たるみ指数では、57歳女性が1年が0.7年に相当する割合で最もゆるやかな肌の老化を示した。
【0061】
一方、31歳女性の肌年齢は57歳女性よりも良好なものの、1年が約2.0年に相当するスピードで将来老化していく傾向にあることが推測された。
【0062】
図9は、普通肌を基準画像とし、輝度を低輝度と高輝度に変化させた時のレプリカ画像を示す。これらの画像に対してモルフォロジー処理、及び皮溝形態計測等を行った結果、図10に示すように基準画像に対する低輝度の全てのパラメータは、基準画像と同じ値を示し、誤差率は0%であった。一方、高輝度画像では誤差率0%を示したパラメータはSkp、SkN、Fractal Dimension、VSPであった。しかしながら、他のパラメータに誤差率は生じるものの0.01%と低く、モルフォロジカル・フィルタ処理及び皮溝形態計測等による皮溝の定量評価に輝度依存性の小さいことが証明された。
【0063】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る皮溝構造の解析システムについて説明する。
【0064】
図11は本発明に係る皮溝構造の解析システムの実施形態を示すシステム構成図である。
【0065】
図11に示すように、この皮溝構造の解析システムは、主として処理サーバ50と、カメラ付き携帯電話60とから構成されており、カメラ付き携帯電話60と処理サーバ50とは、基地局70、携帯電話ネットワーク72、図示しない携帯キャリア及びインターネット80を介して相互に通信できるようになっている。
【0066】
処理サーバ50は、インターネット80上に設置されており、各ユーザのカメラ付き携帯電話60と基地局72、携帯電話ネットワーク70及びインターネット80を介して通信できるようになっている。
【0067】
この処理サーバ50は、図1に示した皮溝構造の解析装置とほぼ同様に構成されており、図1に示したI/F18の代わりに通信インターフィースを有し、また、ハードディスク装置14又は図示しないデータベースにより、各ユーザの過去の肌の画像、及びその画像から算出した皮溝構造のパラメータ等を管理している。
【0068】
図12はカメラ付き携帯電話60の内部構成を示すブロック図である。
【0069】
図12に示すようにカメラ付き携帯電話60は、主としてCPU61、リードオンリーメモリ(ROM)62、ランダムアクセスメモリ(RAM)63、操作部64、カメラ部65、表示部66、及び通信部67から構成されている。尚、通常の携帯電話として機能するためのマイクやスピーカ等も設けられているが、図12では省略されている。
【0070】
CPU61は、操作部64から入力される操作信号に基づき所定の制御プログラムに従ってカメラ付き携帯電話60の全体を統括制御する部分である。ROM62には、カメラ付き携帯電話60を動作させるための制御プログラム、処理サーバ50のサービスを受けるためのアプリケーションソフト(Webブラウザ等)が記憶されており、CPU61は制御プログラム等に従って各部を制御する。尚、ROM62は、例えばフラッシュROMで構成することができ、上記アプリケーションソフト等は適宜書き込み又は書き換えができるようになっている。
【0071】
RAM63は、CPU61による演算作業領域、及び表示部66に表示させる情報の一時記憶領域として利用される。
【0072】
操作部64は、テンキー、マルチファンクションの十字キー、実行キー、キャンセルキー等で構成されている。
【0073】
カメラ部65は、カメラ付き携帯電話60が撮影モードに設定されると、被写体を撮影できるデジタルカメラとして機能する部分であり、マクロ撮影機能を有するものが好ましい。尚、前記カメラ部65がマクロ撮影機能付きでなくても、携帯電話装着用のマクロレンズがあれば、マクロ撮影は可能である。
【0074】
表示部66は、液晶表示器で構成されており、各種設定操作を行なう際のユーザインターフェースとして利用されるとともに、カメラ部65で撮影した画像やテキストの表示、Webサイトの情報等を表示するために利用される。
【0075】
通信部67は、基地局30を介して無線通信することにより、他の携帯電話やインターネット80上の処理サーバ50等と通信を行う。
【0076】
〔本システムの動作〕
本システムでは、ユーザがカメラ付き携帯電話60を操作し、自分の肌をカメラ付き携帯電話60で撮影(マクロ撮影)し、その画像を処理サーバ50にアップロードする。画像のアップロードは、処理サーバ50宛の電子メールに画像を添付して送信する方法や、処理サーバ50のWebサイトを介して送信する方法が考えられる。
【0077】
処理サーバ50は、ユーザからの画像を受信すると、その画像に基づいて肌の状況(皮溝構造)の解析を行う。尚、この解析は、第1の実施形態で説明した方法と同様にして行うことがきる。
【0078】
そして、処理サーバ50は、上記皮溝構造の解析結果をそのユーザのカメラ付き携帯電話60に通知する。このとき、解析結果に応じてスキンケアのアドバイス等も合わせて通知するようにしてもよい。
【0079】
[その他]
図1に示した皮溝構造の解析装置は、ワークステーションやPCにより構成されているが、これに限らず、カメラ付き携帯電話により構成してもよい。この場合、本発明に係る皮溝構造の解析方法を実現するためのプログラムを携帯電話の記憶手段(フラッシュROM)等に格納することで実現することができる。
【0080】
また、数理形態学の理論を使ったモルフォロジカル・フィルタに適用されるスケルトン演算式は、前述した式(1) に限らず、また、モルフォロジカル・フィルタに用いられる構造要素の形態も図2に示した直径5画素の単一円形構造要素に限らない。
【0081】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0082】
10…中央処理装置(CPU)、12…主メモリ、14…ハードディスク装置、16…マイクロスコープカメラ、18…インターフェース、22…モニタ装置、30…プリンタ、50…処理サーバ、60…カメラ付き携帯電話
【技術分野】
【0001】
本発明は皮溝構造の解析方法及び解析装置並びに解析システムに係り、特にスキンケアに有効な情報を取得するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、年齢層や季節に合わせた様々なスキンケア化粧品が発売されている。美しい肌を保つためには、規則正しい生活を心がけ、睡眠時間や食事にも気をつけ、肌の状態やホルモンバランスの変化に気を配り、それらに合わせたスキンケアを施すことが必要である。さらに、紫外線や乾燥などの外的ストレス、疲労や精神的なストレスへの適切な対策も必要となる。
【0003】
しかし、自分自身で肌ストレスを管理し、肌の状態を見極め、それらに合わせた正しいスキンケアの実践は難しい。そして、肌の変調は肌理(キメ)の変化としてあらわれ、キメの状態には肌の代謝の状態など、美しい肌を保つことに関連した重要な要素が関係していることが分かっている。そのためキメの写真を撮影し、キメの状態を解析することで個々の肌の状態に合ったスキンケアが行なわれている。しかし、肌のキメの状態はホルモンバランスなどの肌ストレスによって毎日少しずつ変化しており、その変化を日常的に自分自身で判断し、適切なスキンケアを施すことは難しい。
【0004】
従来、肌のキメが皮膚の凹凸である皮溝と皮丘によって形成されていることから、肌表面をカメラで撮影し画像解析を行なうことにより肌のキメを自動的に評価する表皮組織定量化装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1に記載の表示組織定量化装置は、皮溝か皮丘かを画像の2値化により識別し、識別した皮溝の画素と所定の短直線とをマッチングして、マッチングした短直線の連結によって表される皮溝を抽出し、抽出された皮溝の中から短直線の連結数が所定値以上の皮溝を主要皮溝として抽出し、抽出された皮溝に基づいて表皮組織を定量化した指標として皮溝の平均太さ、皮溝の間隔、皮溝の平行度等を算出するようにしている。
【0006】
また、本出願人は、骨粗鬆症治療薬や骨サプリメントの骨梁構造に対する治療あるいは改善効果の判定に好適な骨梁構造の改善効果判定支援方法を提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−061892号公報
【特許文献2】特開2003−230557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の表皮組織定量化装置は、撮影された画像の輝度値のばらつきが所定値以上になるように画像の各画素の輝度値を変換するとともに、輝度値変換後の画素を2値化する際に画素毎に閾値を変えながら2値化し、これにより肌を直接撮影して得られる画像の輝度値依存性によるデータのばらつき等に対応できるようにしているが、2値化までの処理が煩雑になっている。
【0009】
さらに皮溝にも個人差があることからその連結性、連続性、配向性、複雑性、数、幅等、種々のパラメータを基に総合的に判定する必要があるが、このような肌質の状態の変化を日常的に、しかも経済的でかつ簡便敏速に行う方法は無かった。
【0010】
皮溝構造の評価は、従来肌のレプリカ画像をデジタルカメラにて撮影し、そのデジタル画像情報に対して画像処理を行ない、皮溝の構造を抽出定量化する方法である。最近では、皮膚内部構造を三次元画像化する光干渉断層法等が報告されている。
【0011】
しかしながら、皮溝構造の変化を高い精度で測定し種々のパラメータを基に総合的に評価する経済的で簡便敏速な方法はいまだ開発されていない。つまり画像上に写し出されている皮溝の構造特徴を定量的に評価するためのフーリエ解析、フラクタル解析、ランレングス解析等のテキスチャー解析があり、従来の装置にもすでに応用されている。これらの方法は、画像上の輝度変化の違いを利用した解析方法であり、撮影時の照明環境によって生じる輝度依存性が大きいため2値化のための閾値の決定やノイズの除去方法によって結果が異なりその基準化が難しい。また、装置も大きくなり個人がいかなる場所や状況においても簡単に利用できるものでなかった。そのため、肌の改善効果を高い精度で簡単に、照明環境に左右されず、かつ経済的に判定するための皮溝構造の解析方法の開発が切望されているのが実情である。
【0012】
一方、特許文献2には、骨梁構造を解析評価する技術が記載されているが、評価対象が骨の骨梁構造であり、特許文献2に記載の技術を表皮組織の皮溝構造に応用する動機付けがなかった。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、皮溝構造の解析を適正に行うことができ、特に撮影時の照明環境に左右されず、かつ経済的で簡便敏速な方法で皮溝構造を解析・評価することができる皮溝構造の解析方法及び解析装置並びに解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために請求項1に係る皮溝構造の解析方法は、人体の表皮組織表面の画像を入力する工程と、前記入力した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する工程と、前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出する工程と、前記算出された皮溝構造のパラメータを出力する工程と、を含むことを特徴としている。
【0015】
請求項1に係る発明は、数理形態学の理論を使ったモルフォロジカル・フィルタと骨の組織切片の定量評価に使用されている骨形態計測法とを、皮溝構造の解析に応用したものである。請求項1に係る発明によれば、表皮組織表面の画像から抽出した皮溝成分を、骨形態計測の対象である骨格成分と見なし、骨形態計測により骨格構造(皮溝構造)のパラメータを算出するようにしている。このようにして算出される皮溝構造のパラメータは、表皮組織表面の撮影時の照明環境に左右されず、皮溝情報の消失や変化が起こることが極めて少なく、精度が高いことが確認された。
【0016】
請求項2に示すように請求項1に記載の皮溝構造の解析方法において、前記皮溝成分を抽出する工程は、前記モルフォロジカル・フィルタの構造要素及び/又は演算式を変えて所望の皮溝成分を抽出することを特徴としている。このモルフォロジカル・フィルタの構造要素及び/又は演算処理回数を変えることで、個人差、画像の拡大率等にかかわらず、皮溝を適切に抽出することができる。
【0017】
請求項3に示すように請求項1又は2に記載の皮溝構造の解析方法において、基準となる皮溝構造のパラメータと前記算出された皮溝構造のパラメータとを比較する工程と、前記比較結果に基づいて前記算出された皮溝構造のパラメータに対する皮溝構造の評価値を算出する工程と、を更に含むことを特徴としている。
【0018】
請求項4に示すように請求項3に記載の皮溝構造の解析方法において、前記基準となる皮溝構造のパラメータは、同一人物の同一部位を撮影した過去の表示組織表面の画像に基づいて算出された皮溝構造のパラメータであることを特徴としている。
【0019】
これにより、例えば治療薬の治療効果、サプリメント又はスキンケアによる改善の様子を確認するために、所定の治療、摂取及びケア期間(例えば1ヶ月、1年の期間)を開けて、同じ患者の同一部位の皮溝画像を元に皮溝構造のパラメータを算出し、両者を比較することで皮溝構造の評価値(骨格構造のパラメータの増減等)を算出することができ、治療薬の治療効果、スキンケア及びサプリメントによる改善の様子の判定が可能となる。
【0020】
請求項5に示すように請求項3に記載の皮溝構造の解析方法において、前記基準となる皮溝構造のパラメータは、標準的な普通肌の画像、乾燥肌の画像、及び年齢肌の画像のうちの少なくとも1つの画像に基づいて算出された皮溝構造のパラメータであることを特徴としている。
【0021】
これにより、現在の肌の状態と普通肌、乾燥肌、又は年齢肌等との比較結果(評価結果)を得ることができる。
【0022】
請求項6に係る皮溝構造の解析装置は、人体の表皮組織表面の画像を入力する入力手段と、前記入力した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する皮溝成分抽出手段と、前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出するパラメータ算出手段と、前記算出された皮溝構造のパラメータを出力する出力手段と、を備えたことを特徴としている。
【0023】
請求項7に係る発明は、カメラ付き携帯電話と、該カメラ付き携帯電話と通信する処理サーバとからなる皮溝構造の解析システムにおいて、前記カメラ付き携帯電話は、人体の表皮組織表面の画像を撮影する撮影手段と、前記撮影した画像を前記処理サーバに送信するとともに、前記処理サーバにより算出された皮溝構造の評価結果を受信する通信手段と、前記受信した皮溝構造の評価結果を表示する表示手段と、を備え、前記処理サーバは、前記カメラ付き携帯電話から画像を受信するとともに、皮溝構造の評価結果を前記カメラ付き携帯電話に送信する通信手段と、前記受信した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する皮溝成分抽出手段と、前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出するパラメータ算出手段と、を備え、前記算出された皮溝構造のパラメータ又は該皮溝構造のパラメータに基づいて算出される評価結果を前記解析結果として前記カメラ付き携帯電話に送信することを特徴としている。
【0024】
これによれば、カメラ付き携帯電話を使用して、日常的、そして経済的、かつ簡便敏速に自分の肌質を確認することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、数理形態学の理論を使ったモルフォロジカル・フィルタと骨の組織切片の定量評価に使用されている骨形態計測法とを皮溝構造の解析に応用し、骨形態計測により骨格構造(皮溝構造)のパラメータを算出するようにしたため、表皮組織表面の撮影時の照明環境に左右されず、処理仮定での皮溝情報の消失や変化が起こることが極めて少なり、皮溝構造のパラメータを精度よく算出することができるという効果がある。そして、この算出された皮溝構造のパラメータに基づいて皮溝構造の評価を適正に行うことができ、皮膚疾患の治療薬やサプリメントおよび化粧品等の皮溝構造に対する治療あるいは改善効果の詳細が明らかになり、治療薬、化粧品、サプリメントの選択やそれらによる皮溝構造改善効果の程度を明確に判定することができるようになるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る皮溝構造の解析装置の実施形態を示すブロック図
【図2】モルフォロジカル・フィルタに用いられる構造要素の形態の一例を示す図
【図3】肌のレプリカ画像をモルフォロジカル・フィルタによって処理した複数の画像を示す図
【図4】本発明に係る皮溝構造の解析方法を示すフローチャート
【図5】本発明に係る皮溝構造の解析方法を示すフローチャート
【図6】普通肌(33歳)、乾燥肌(31歳)、年齢肌(57歳)のレプリカ画像とモルフォロジー処理によって得られた皮溝の骨格2値画像をレプリカ画像上にマッチングさせた重ね合わせ画像を示す図
【図7】普通肌、乾燥肌、年齢肌の肌型の違いを配向性を示す指標であるMean intercept length(MIL)で表した図
【図8】普通肌(33歳)、乾燥肌(31歳)、年齢肌(57歳)女性の皮溝パラメータより測定した美肌指数(%)と経年的肌たるみ指数(年)を示す図表
【図9】基準画像に対して輝度を低・高と2段階に変化させた時の普通肌のレプリカ画像を示す図
【図10】図9の画像を対象にモルフォロジー処理を行い基準画像に対する低・高輝度画像の皮溝を表すパラメータの変動率を示す図表
【図11】本発明に係る皮溝構造の解析システムの実施形態を示すシステム構成図
【図12】図11のカメラ付き携帯電話の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って本発明に係る皮溝構造の解析方法及び解析装置並びに解析システムの実施の形態について説明する。
【0028】
[皮溝構造の解析装置の構成]
図1は本発明に係る皮溝構造の解析装置の実施形態を示すブロック図である。
【0029】
この皮溝構造の解析装置は、ワークステーション、パーソナルコンピュータ(PC)により構成され、主として各構成要素の動作を制御する中央処置装置(CPU)10と、装置の制御プログラムが格納されたり、プログラム実行時の作業領域となる主メモリ12と、本発明に係る皮溝構造の解析方法を実現するためのプログラム、皮溝のデジタル画像データや過去の皮溝構造の解析結果等が格納されているハードディスク装置14と、皮溝のデジタル画像データを取り込むためのマイクロスコープカメラ16を接続のためのインターフェース(I/F)18又はマイクロスコープカメラ内蔵システムと、表示用データを一時記録する表示メモリ20と、この表示メモリ20からの画像データ、文字データ等により画像や文字等を表示するCRTモニタや液晶モニタ等のモニタ装置22と、キーボード24と、位置入力装置としてのマウス26と、マウスの状態を検出してモニタ装置上のマウスポインタの位置やマウスの状態等の信号をCPU10に出力するマウスコントローラ28と、後述する解析判定表をプリント出力するプリンタ30と、上記各構成要素を接続するバス32とから構成される。
【0030】
尚、ハードディスク装置14に格納される本発明に係る皮溝構造の解析方法を実現するためのプログラムを除いて周知のものであるため、各構成要素の詳細な説明については省略する。
【0031】
[本発明の原理]
次に、本発明の原理について説明する。
【0032】
まず、本発明に使用される数理形態学の理論を使ったモルフォロジカル・フィルタについて説明する。このモルフォロジカル・フィルタによる処理は、マイクロスコープカメラ16あるいはデジタルカメラを使用して人体の表皮組織表面(肌)を直接撮影し、あるいは印象材を使用して肌のレプリカを取得し、そのレプリカを撮影して取得した原画像(デジタルデータX)を、構造要素(B)と次式のスケルトン演算式とを組み合わせたものを用いて処理する。
【0033】
【数1】
【0034】
この実施の形態では、構造要素(B)として、図2に示すような直径5画素の単一円形構造要素を使用している。
【0035】
図3は皮溝を含む原画像(original image)に対して、上記式(1)により抽出した皮溝の皮溝2値画像の一例を示している。図3では、基画像と、この基画像に対して演算回数n(式(1) 内のn)を0から7まで行い、n=0,1,2,3,4,5,6,7の8枚の部分集合画像Sn(X)と、n=2−5,3−6,4−7の3枚の和集合画像Sk(X)とが示されている。
【0036】
図3に示すようにモルフォロジカル・フィルタにより抽出した部分集合画像Sn(X)又は和集合画像Sk(X)において、白い部分が皮溝に相当し、黒い部分が皮丘に相当するが、この皮溝の画像は、骨のX線画像から得られる骨梁の画像に似ている。
【0037】
本発明はこの点に着目し、皮溝構造の解析に、骨の骨格構造の定量解析に使用されている骨形態計測法を応用し、部分集合画像Sn(X)又は和集合画像Sk(X)を元に各種の骨格構造(以下、「皮溝構造」という)のパラメータを算出することとした。
【0038】
そして、皮膚疾患に対する治療薬の治療効果、スキンケア前後、サプリメントのよる皮溝改善の様子、そして肌や爪の加齢度を確認するために、所定の期間を開けて同じ同一部位の原画像から算出した皮溝構造のパラメータを比較し、現在の肌の状態を評価するようにしている。
【0039】
[第1の実施形態]
次に、本発明に係る皮溝構造の解析方法について、図4及び図5に示すフローチャートにしたがって説明する。
【0040】
図4に示すように皮膚疾患治療薬、スキンケア又はサプリメント摂取前後の肌をマイクロスコープカメラ16を用いて拡大撮影し、撮影したデジタル画像データをI/F18を介してハードディスク装置14に取り込む(ステップS10〜S30)。尚、撮影を行う撮影間隔としては、例えば、1日、数ヶ月および1年程度とする。また、撮影は、同一部位を同じ条件で行うことが望ましい。
【0041】
続いて、皮溝成分を含むデジタル画像データに対して、前述した式(1)により皮溝多値画像データ(例えば、0〜255階調の画像データ)を抽出し、この抽出した皮溝多値画像データを、閾値=1.0によって2値化し、皮溝2値画像を生成する(ステップS40〜S80)。尚、閾値を限りなく小さくすることで、閾値によって画像情報が失われないようにしている。
【0042】
上記のようにして皮溝2値画像が生成されると、各皮溝2値画像を対象として骨形態計測法(以下、「皮溝形態計測値法」という)によって皮溝構造のパラメータを算出する。尚、皮溝構造を示すパラメータの種類については後述する。
【0043】
次に、上記ステップS70〜S80の詳細な処理手順について、図5を用いて説明する。
【0044】
図5において、皮溝2値画像として、図3で説明したようにn=0〜7の8枚の部分集合画像と、n=2−5,3−6,4−7の3枚の和集合画像とを作成する(ステップS72)。続いて、上記複数の部分集合画像又は和集合画像のうちから、解析のための皮溝2値画像を選択する(ステップS74)。この皮溝2値画像の選択は、予め決定されたものを選択するようにしてもよいし、複数の部分集合画像又は和集合画像の高周波成分等の画質に関する画像情報を算出し、画像情報が最大のものを自動選択するようにしてもよい。
【0045】
次に、ステップS74で選択した皮溝2値画像を対象として皮溝形態計測法による各種の解析を行う。即ち、皮溝2値画像を対象として、皮溝形態計測及びスター・ボリューム(Star volume )解析を行う(ステップS82)。
【0046】
上記皮溝形態計測及びスター・ボリューム解析によって算出される皮溝構造のパラメータは、以下の通りである。
(a)皮溝形態計測
皮溝構造のパラメータ
P%=皮溝要素の画素数
FD=皮溝構造の複雑性
Sk.Ar/T.Ar=皮溝量
Sk.Pm/T.Ar=皮溝周囲長
Sk.Pm/Sk.Ar=皮溝周囲長に対する皮溝骨格量の割合
Sk.N=皮溝数
Sk.Th=皮溝幅
Sk.Sp=皮溝間距離
MIL=皮溝の配行性
TBpf=皮溝の凹凸性
Moment=曲げに対する強度
Polarmomet=ねじりに対する強度
(b)スター・ボリューム解析
皮溝構造のパラメータ
VsK=皮溝の連続性と皮溝の体積
VsP=非皮溝腔の大きさと皮溝腔の体積
一方、ステップS76で選択した皮溝2値画像を対象として、細線化処理を行う(ステップS84)。この細線化処理は、皮溝2値画像のパターンの中心線を抽出する処理であり、皮溝幅1ピクセルの細線化が行われる(ステップS86)。そして、この細線化処理された皮溝2値画像を対象として、皮溝形態測定法の一つであるノード・ストラット(Node strut)解析を行う(ステップS88)。
【0047】
上記ノード・ストラット解析によって算出される皮溝構造のパラメータは、以下の通りである。
(c)ノード・ストラット解析
3個以上の皮溝の接合点をNd、ほかの皮溝と接合していない終末点をTm、それらの間をつなぐ皮溝軸をストラット(strut)と定義した時の数のパラメータ:
N.Nd/T.Ar =Tissue area(T.Ar)当たりのNdの数
N.Tm/T.Ar =T.Ar当たりのTmの数
N.Nd/N.Tm =Nd数とTm数の比
全ストラット長(Total strut length(TSL))に対する各strutの長さのパラメータ:
NdNd/TSL
TmTm/TSL
NdTm/TSL
また、T.Ar当たりの長さが占める割合のパラメータ:
TSL/T.Ar
NdNd/T.Ar
TmTm/T.Ar
NdTm/T.Ar
尚、皮溝形態計測、スター・ボリューム解析及びノード・ストラット解析を行うソフトウエアは、予め皮溝構造の解析装置のハードディスク装置14に組み込まれている。
【0048】
上記のようにして皮膚疾患治療、スキンケア、サプリメント摂取前後について、それぞれ皮溝構造のパラメータ(P%,FD,Sk.Ar/T.Ar,Sk.Pm/T.Ar,Sk.Pm/Sk.Ar,Sk.N,Sk.Th,Sk.Sp,MIL,TBpf,Moment,Polarmomet,VsK,VsP,N.Nd/T.Ar,N.Tm/T.Ar,N.Nd/N.Tm,NdNd/TSL,TmTm/TSL,NdTm/TSL,TSL/T.Ar,NdNd/T.Ar,TmTm/T.Ar,NdTm/T.Ar)を算出し、これらの皮溝構造のパラメータを比較することにより、各皮溝構造のパラメータの増減から皮溝構造の評価を行う。
【0049】
この実施形態では、皮膚疾患治療、スキンケア、サプリメント摂取前後について、それぞれ皮溝構造のパラメータを算出するようにしたが、これに限らず、定期的又は日常的に肌のキメ状態の変化を判断するために、過去に撮影した同一部位の画像から算出した皮溝構造のパラメータをハードディスク装置14に保存管理しておき、これらの皮溝構造のパラメータを比較することで、皮溝構造の評価を行うようにしてもよい。
【0050】
また、撮影時点の異なる同一人物の同一部位の画像から算出した皮溝構造のパラメータを比較する場合に限らず、1つ又は複数の基準となる標準的な画像(普通肌の画像、乾燥肌の画像、及び年齢肌の画像等)に対して算出した皮溝構造のパラメータをハードディスク装置14に保存しておき、これらの皮溝構造のパラメータと比較することにより、現在の肌の状態を示す評価結果を得ることができる。
【0051】
[実施例]
以下に本手法を使用した際の応用例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0052】
図6に示すように33歳で普通肌、31歳で乾燥肌そして57歳で美肌の女性から印象材を使用して肌のレプリカを取得し、これをマイクロスコープカメラ16又はデジタルカメラで撮影してデジタル画像を皮溝構造の解析装置に入力した。その画像(レプリカ画像)を、図6(A)に示す。
【0053】
そして、レプリカ画像に対してモルフォロジー処理を行い、皮溝2値画像として抽出した(図6(B))。さらに、抽出した皮溝2値画像をレプリカ画像と重ね合わせた所、レプリカ画像上の皮溝と皮溝2値画像とは高い精度でマッチングした(図6(C))。
【0054】
抽出された皮溝2値化画像は、ネット状を示すキメの細かい普通肌、斜め方向の皮溝が目立つ乾燥肌、そして普通肌の女性ほど緻密ではないが57歳にもかかわらずネット状を維持した肌質の3パターンを再現することができた。
【0055】
また、図6(B)に示した皮溝2値画像に対して、構造異方性を解析する手法の1つである、Mean Intercept Length(MIL) 法により皮溝構造の配向を計測した。
【0056】
図7は上記普通肌、乾燥肌及び年齢肌の皮溝2値画像に対して計算したMILの結果を示す図である。
【0057】
外枠の円に類似した弧を描くほど皮溝の均一な配向性を示し、円の中に収縮するほど不均一な皮溝の配向性を示す事を意味している。図6(B)で示した普通肌のMILは外枠の円にほぼ一致しており、乾燥肌のMILは一定の方向性を持って円の中央に収縮する結果を示した。すなわち、ネットワーク状を示す普通肌と斜め方向の皮溝が目立つ乾燥肌のキメの状況が配向性の違いとして反映され、それは数値としても定量的に比較することができた。
【0058】
一方、57歳の年齢肌は、年齢に応じて皮溝が粗になってはいるものの、ネットワーク状を維持しており、MILの結果もほぼ普通肌と同様な配向性を示していることが定量的に確認することができた。
【0059】
そこで、本手法を使用して図6(B)に示した普通肌、乾燥肌、年齢肌の皮溝2値画像に対して、皮溝形態計測等を行い、計測した各種の皮溝評価パラメータを基準として美肌指数を計測した。さらに、皮溝の配向性を示すMILと皮溝量を示すパラメータが肌の強度に関与していることから、年齢・MIL・Sk.N(皮溝数)を基準として経年的肌たるみ指数を計測した。
【0060】
図8に計測結果を示す。同図に示すように、美肌指数は93.5%,83.4%,79.0%とほぼ年齢に応じて変化を示したが、普通肌と乾燥肌では肌質の違いが約10%の差で反映された。また、経年的肌たるみ指数では、57歳女性が1年が0.7年に相当する割合で最もゆるやかな肌の老化を示した。
【0061】
一方、31歳女性の肌年齢は57歳女性よりも良好なものの、1年が約2.0年に相当するスピードで将来老化していく傾向にあることが推測された。
【0062】
図9は、普通肌を基準画像とし、輝度を低輝度と高輝度に変化させた時のレプリカ画像を示す。これらの画像に対してモルフォロジー処理、及び皮溝形態計測等を行った結果、図10に示すように基準画像に対する低輝度の全てのパラメータは、基準画像と同じ値を示し、誤差率は0%であった。一方、高輝度画像では誤差率0%を示したパラメータはSkp、SkN、Fractal Dimension、VSPであった。しかしながら、他のパラメータに誤差率は生じるものの0.01%と低く、モルフォロジカル・フィルタ処理及び皮溝形態計測等による皮溝の定量評価に輝度依存性の小さいことが証明された。
【0063】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る皮溝構造の解析システムについて説明する。
【0064】
図11は本発明に係る皮溝構造の解析システムの実施形態を示すシステム構成図である。
【0065】
図11に示すように、この皮溝構造の解析システムは、主として処理サーバ50と、カメラ付き携帯電話60とから構成されており、カメラ付き携帯電話60と処理サーバ50とは、基地局70、携帯電話ネットワーク72、図示しない携帯キャリア及びインターネット80を介して相互に通信できるようになっている。
【0066】
処理サーバ50は、インターネット80上に設置されており、各ユーザのカメラ付き携帯電話60と基地局72、携帯電話ネットワーク70及びインターネット80を介して通信できるようになっている。
【0067】
この処理サーバ50は、図1に示した皮溝構造の解析装置とほぼ同様に構成されており、図1に示したI/F18の代わりに通信インターフィースを有し、また、ハードディスク装置14又は図示しないデータベースにより、各ユーザの過去の肌の画像、及びその画像から算出した皮溝構造のパラメータ等を管理している。
【0068】
図12はカメラ付き携帯電話60の内部構成を示すブロック図である。
【0069】
図12に示すようにカメラ付き携帯電話60は、主としてCPU61、リードオンリーメモリ(ROM)62、ランダムアクセスメモリ(RAM)63、操作部64、カメラ部65、表示部66、及び通信部67から構成されている。尚、通常の携帯電話として機能するためのマイクやスピーカ等も設けられているが、図12では省略されている。
【0070】
CPU61は、操作部64から入力される操作信号に基づき所定の制御プログラムに従ってカメラ付き携帯電話60の全体を統括制御する部分である。ROM62には、カメラ付き携帯電話60を動作させるための制御プログラム、処理サーバ50のサービスを受けるためのアプリケーションソフト(Webブラウザ等)が記憶されており、CPU61は制御プログラム等に従って各部を制御する。尚、ROM62は、例えばフラッシュROMで構成することができ、上記アプリケーションソフト等は適宜書き込み又は書き換えができるようになっている。
【0071】
RAM63は、CPU61による演算作業領域、及び表示部66に表示させる情報の一時記憶領域として利用される。
【0072】
操作部64は、テンキー、マルチファンクションの十字キー、実行キー、キャンセルキー等で構成されている。
【0073】
カメラ部65は、カメラ付き携帯電話60が撮影モードに設定されると、被写体を撮影できるデジタルカメラとして機能する部分であり、マクロ撮影機能を有するものが好ましい。尚、前記カメラ部65がマクロ撮影機能付きでなくても、携帯電話装着用のマクロレンズがあれば、マクロ撮影は可能である。
【0074】
表示部66は、液晶表示器で構成されており、各種設定操作を行なう際のユーザインターフェースとして利用されるとともに、カメラ部65で撮影した画像やテキストの表示、Webサイトの情報等を表示するために利用される。
【0075】
通信部67は、基地局30を介して無線通信することにより、他の携帯電話やインターネット80上の処理サーバ50等と通信を行う。
【0076】
〔本システムの動作〕
本システムでは、ユーザがカメラ付き携帯電話60を操作し、自分の肌をカメラ付き携帯電話60で撮影(マクロ撮影)し、その画像を処理サーバ50にアップロードする。画像のアップロードは、処理サーバ50宛の電子メールに画像を添付して送信する方法や、処理サーバ50のWebサイトを介して送信する方法が考えられる。
【0077】
処理サーバ50は、ユーザからの画像を受信すると、その画像に基づいて肌の状況(皮溝構造)の解析を行う。尚、この解析は、第1の実施形態で説明した方法と同様にして行うことがきる。
【0078】
そして、処理サーバ50は、上記皮溝構造の解析結果をそのユーザのカメラ付き携帯電話60に通知する。このとき、解析結果に応じてスキンケアのアドバイス等も合わせて通知するようにしてもよい。
【0079】
[その他]
図1に示した皮溝構造の解析装置は、ワークステーションやPCにより構成されているが、これに限らず、カメラ付き携帯電話により構成してもよい。この場合、本発明に係る皮溝構造の解析方法を実現するためのプログラムを携帯電話の記憶手段(フラッシュROM)等に格納することで実現することができる。
【0080】
また、数理形態学の理論を使ったモルフォロジカル・フィルタに適用されるスケルトン演算式は、前述した式(1) に限らず、また、モルフォロジカル・フィルタに用いられる構造要素の形態も図2に示した直径5画素の単一円形構造要素に限らない。
【0081】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0082】
10…中央処理装置(CPU)、12…主メモリ、14…ハードディスク装置、16…マイクロスコープカメラ、18…インターフェース、22…モニタ装置、30…プリンタ、50…処理サーバ、60…カメラ付き携帯電話
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の表皮組織表面の画像を入力する工程と、
前記入力した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する工程と、
前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出する工程と、
前記算出された皮溝構造のパラメータを出力する工程と、
を含むことを特徴とする皮溝構造の解析方法。
【請求項2】
前記皮溝成分を抽出する工程は、前記モルフォロジカル・フィルタの構造要素及び/又は演算式を変えて所望の皮溝成分を抽出することを特徴とする請求項1に記載の皮溝構造の解析方法。
【請求項3】
基準となる皮溝構造のパラメータと前記算出された皮溝構造のパラメータとを比較する工程と、
前記比較結果に基づいて前記算出された皮溝構造のパラメータに対する皮溝構造の評価値を算出する工程と、
を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の皮溝構造の解析方法。
【請求項4】
前記基準となる皮溝構造のパラメータは、同一人物の同一部位を撮影した過去の表示組織表面の画像に基づいて算出された皮溝構造のパラメータであることを特徴とする請求項3に記載の皮溝構造の解析方法。
【請求項5】
前記基準となる皮溝構造のパラメータは、標準的な普通肌の画像、乾燥肌の画像、及び年齢肌の画像のうちの少なくとも1つの画像に基づいて算出された皮溝構造のパラメータであることを特徴とする請求項3に記載の皮溝構造の解析方法。
【請求項6】
人体の表皮組織表面の画像を入力する入力手段と、
前記入力した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する皮溝成分抽出手段と、
前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出するパラメータ算出手段と、
前記算出された皮溝構造のパラメータを出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする皮溝構造の解析装置。
【請求項7】
カメラ付き携帯電話と、該カメラ付き携帯電話と通信する処理サーバとからなる皮溝構造の解析システムにおいて、
前記カメラ付き携帯電話は、
人体の表皮組織表面の画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影した画像を前記処理サーバに送信するとともに、前記処理サーバにより算出された皮溝構造の解析結果を受信する通信手段と、
前記受信した皮溝構造の解析結果を表示する表示手段と、を備え、
前記処理サーバは、
前記携帯電話から画像を受信するとともに、皮溝構造の解析結果を前記携帯電話に送信する通信手段と、
前記受信した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する皮溝成分抽出手段と、
前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出するパラメータ算出手段と、を備え、
前記算出された皮溝構造のパラメータ又は該皮溝構造のパラメータに基づいて算出される評価結果を前記解析結果として前記カメラ付き携帯電話に送信することを特徴とする皮溝構造の解析システム。
【請求項1】
人体の表皮組織表面の画像を入力する工程と、
前記入力した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する工程と、
前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出する工程と、
前記算出された皮溝構造のパラメータを出力する工程と、
を含むことを特徴とする皮溝構造の解析方法。
【請求項2】
前記皮溝成分を抽出する工程は、前記モルフォロジカル・フィルタの構造要素及び/又は演算式を変えて所望の皮溝成分を抽出することを特徴とする請求項1に記載の皮溝構造の解析方法。
【請求項3】
基準となる皮溝構造のパラメータと前記算出された皮溝構造のパラメータとを比較する工程と、
前記比較結果に基づいて前記算出された皮溝構造のパラメータに対する皮溝構造の評価値を算出する工程と、
を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の皮溝構造の解析方法。
【請求項4】
前記基準となる皮溝構造のパラメータは、同一人物の同一部位を撮影した過去の表示組織表面の画像に基づいて算出された皮溝構造のパラメータであることを特徴とする請求項3に記載の皮溝構造の解析方法。
【請求項5】
前記基準となる皮溝構造のパラメータは、標準的な普通肌の画像、乾燥肌の画像、及び年齢肌の画像のうちの少なくとも1つの画像に基づいて算出された皮溝構造のパラメータであることを特徴とする請求項3に記載の皮溝構造の解析方法。
【請求項6】
人体の表皮組織表面の画像を入力する入力手段と、
前記入力した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する皮溝成分抽出手段と、
前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出するパラメータ算出手段と、
前記算出された皮溝構造のパラメータを出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする皮溝構造の解析装置。
【請求項7】
カメラ付き携帯電話と、該カメラ付き携帯電話と通信する処理サーバとからなる皮溝構造の解析システムにおいて、
前記カメラ付き携帯電話は、
人体の表皮組織表面の画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影した画像を前記処理サーバに送信するとともに、前記処理サーバにより算出された皮溝構造の解析結果を受信する通信手段と、
前記受信した皮溝構造の解析結果を表示する表示手段と、を備え、
前記処理サーバは、
前記携帯電話から画像を受信するとともに、皮溝構造の解析結果を前記携帯電話に送信する通信手段と、
前記受信した画像をモルフォロジカル・フィルタで処理することにより前記表皮組織表面の皮溝成分を抽出する皮溝成分抽出手段と、
前記抽出した皮溝成分を骨格成分として骨形態計測により皮溝構造のパラメータを算出するパラメータ算出手段と、を備え、
前記算出された皮溝構造のパラメータ又は該皮溝構造のパラメータに基づいて算出される評価結果を前記解析結果として前記カメラ付き携帯電話に送信することを特徴とする皮溝構造の解析システム。
【図1】
【図2】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図2】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2011−104099(P2011−104099A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261930(P2009−261930)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(502053269)
【出願人】(509318480)株式会社骨構造解析研究所 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(502053269)
【出願人】(509318480)株式会社骨構造解析研究所 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]