説明

皮膚下陰圧維持具

【課題】極めて簡易な構造で、容易に使用することができるとともに、顔の各形状に対応して皮膚S下の細胞に適切な陰圧状態を生じさせる。
【解決手段】皮膚S下に陰圧が生じた状態を維持するための皮膚下陰圧維持具10であって、弾性を有するとともに、稜線Lを境として曲率の異なる一対の曲面Ra,Rbが接合された形状を有する保持部11と、保持部11の皮膚Sに対向する側の天井面に設けられた粘着性を有する接着面12とを備え、保持部11は、接着面12を介して皮膚Sに貼着されるとともに、保持部11の弾性による復元力によって、皮膚Sに貼着された接着面12を皮膚Sに貼り付けたままの状態で、接着面12を所定位置まで持ち上げて保持し、持ち上げた皮膚S下に陰圧が生じた状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚を持ち上げて皮膚下に陰圧が生じた状態を維持し、陰圧が生じている皮膚下の細胞の新陳代謝を促進させ、細胞を活性化させる皮膚下陰圧維持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、美容への関心は高く、特に、顔に生じる、しわや弛みについては、多くの女性が関心を有している。ここで、現在、美容外科や皮膚科等の医療分野においては、専門医師により外科的手術或いは各種電磁波の出射機器を用いて、顔のしわや弛みを改善させる手術等が行われている。ところが、美容外科における手術には多大な費用がかかるとともに、直接、肌にメスやレーザー等を当てて肌を傷つけるため、気軽に行うことができないという問題があった。
【0003】
そのような問題を解決すべく、自宅において、容易に使用し、顔のしわや弛みを改善することができる器具が提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1に開示された皮膚下陰圧維持具は、内部に空間のある円錐状の保持部と、保持部内部に備えられ、皮膚に貼り付く貼着部とからなり、皮膚を貼り付けた貼着部を持ち上げてその状態を保持することで、皮膚下の細胞に対して陰圧状態を発生させる。その結果、その陰圧状態の細胞の新陳代謝が促進され、細胞が活性化されることでしわやしみを改善させるものである。そして、特許文献1に開示された技術では、皮膚を持ち上げた貼着部を保持部に係止して、皮膚下の陰圧状態を維持するため、ユーザーは使用中、皮膚下陰圧維持具を手に持ち続けることがなく、容易に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報2009−125837号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された皮膚下陰圧維持具では、皮膚に接触する下部が略円状の形状であり、単純な円錐台又はドーム状の形状であり、皮膚下に与える陰圧状態が均一となる。このため、この器具を複雑な凹凸を多く有する顔に使用する場合には、その複雑な凹凸形状に追従させて陰圧状態を維持することができず、また、陰圧に部分的な強弱を付けることができず、各部位のしわの特性に合った効果を得られないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、極めて簡易な構造で、容易に使用することができるとともに、顔の各形状に対応して皮膚下の細胞に適切な陰圧状態を生じさせることができる皮膚下陰圧維持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、皮膚下に陰圧が生じた状態を維持するための皮膚下陰圧維持具であって、弾性を有するとともに、稜線を境として曲率の異なる一対の曲面が接合された形状を有する保持部と、保持部の皮膚に対向する側の天井面に設けられた粘着性を有する接着面とを備え、保持部は、接着面を介して皮膚に貼着されるとともに、保持部の弾性による復元力によって、皮膚に貼着された接着面を皮膚に貼り付けたままの状態で、接着面を所定位置まで持ち上げて保持し、持ち上げた皮膚下に陰圧が生じた状態を維持する。
【0008】
このような発明によれば、接着面に貼着した皮膚は保持部の弾性による復元力によって、皮膚が所定位置まで持ち上げられ、保持部の外周部分の皮膚下には、陽圧を生じさせるとともに、保持部の皮膚下には陰圧を生じさせることができる。さらに、本発明によれば、保持部には、その皮膚と接触する面に粘着性の接着面を有しているので、ユーザーが手を離した場合でも、皮膚は接着面と接着状態を維持することができるので、皮膚下に生じた陰圧を維持することが容易にできる。そして、本発明によれば、このように皮膚下に陰圧が生じたままの状態を維持させることで、陰圧がかかっている皮膚下では、陰圧による力を受け続ける細胞の新陳代謝が促進され、細胞を活性化させることができる。これにより、皮膚に現れたしわやしみなどの消失を促すことができる。
【0009】
特に、本発明において、保持部は、稜線を境として曲率の異なる一対の曲面が接合された形状を有しているので、各面曲の下方部分に位置する皮膚に対して、異なる陰圧状態を生じさせることができ、これにより、顔の凹凸部分に追従して陰圧を生じさせることができる。
例えば、一対の両曲面を、外方に膨らんだ異なる凸状をなす曲面とし、内部に主として陰圧を生じさせるとともに、周縁に陽圧を生じさせる。これらの曲面では、陰圧及び陽圧が、相互に作用し合い、全体として釣り合った状態となるが、各曲面の面積及び形状の違いにより局所的に作用する力が制御され、身体各部位の複雑な凹凸形状に追従させて、陰圧に部分的な強弱を付けることができ、各部位のしわの特性に合った効果が得られるようになっている。
また、例えば、一方の曲面を外方に膨らんだ凸状とし、他方の曲面よりも面積を大きくすることにより、その形状による弾性によって、内部に主として陰圧を生じさせる。併せて、他方の曲面を、内方に窪んだ凹状とし、内部に主として陽圧を生じさせる。これら一対の曲面では、相互に作用・反作用の関係によって全体として陰圧と陽圧とが釣り合った状態となるが、この場合にも、各曲面の面積及び形状の違いにより局所的に作用する力が制御され、身体各部位の複雑な凹凸形状に追従させて、陰圧及び陽圧に部分的な強弱を付けることができ、各部位のしわの特性に合った効果が得られるようになっている。
【0010】
上記発明において、一対の曲面は、縁部にサインカーブ状を有する第1の曲面と、第1の曲面よりも面積が広く、縁部が略円形の第2の曲面とからなることが好ましい。この場合には、目や口の近傍にはサインカーブ状を有する第1の曲面部分を配置させ、その他の部分に第2の曲面部分を配置させることで、目や口に皮膚下陰圧維持具が触れない状態で、目や口の周りにできたしわに対して適切に陰圧状態を生じさせることができる。
【0011】
また、上記発明において、保持部には、稜線上の一点を中心とする放射線状の切込線が表示され、切込線に沿って、該保持部の一部分を切除することにより、皮膚に貼着された状態の曲率を調節可能となっていることが好ましい。この場合には、保持部の一部を切除することで、皮膚に貼着された保持部の曲率を変更させて調整できるので、各ユーザーによって、異なる顔の形状に追従して皮膚下に陰圧状態を生じさせることができる。また、保持部には、切込線が表示されているので、ユーザーは、特別な熟練を要せず、容易に曲面の曲率を調整することができる。
【0012】
上記発明において、接着面は、皮膚を接着するための接着剤が塗布されていることが好ましい。この場合には、皮膚に接着する接着面に接着剤を塗布してあるので、皮膚と接着面との粘着力が増し、皮膚に容易に接着することができる。これにより、接着面を所定位置まで持ち上げることができ、皮膚下に陰圧が生じた状態を維持させることができる。
【0013】
上記発明において、接着面は、皮膚を接着するための接着テープが貼り付けられることが好ましい。この場合には、皮膚に接着する接着面に接着テープを貼り付けられているので、皮膚と接着面との粘着力が増し、皮膚に容易に接着することができる。これにより、接着面を所定位置まで持ち上げることができ、皮膚下に陰圧が生じた状態を維持させることができる。
【発明の効果】
【0014】
このような発明によれば、極めて簡易な構造で、容易に使用することができるとともに、顔の各形状に対応して皮膚下の細胞に適切な陰圧状態を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、実施形態に係る皮膚下陰圧維持具を示す側断面図であり、同図(b)は、実施形態に係る皮膚下陰圧維持具を示す下面図である。
【図2】(a)は、第1実施形態に係る額用の皮膚下陰圧維持具を示す上面図であり、同図(b)は、第1実施形態に係る目元用の皮膚下陰圧維持具を示す上面図であり、同図(c)は、口元用の皮膚下陰圧維持具を示す上面図である。
【図3】(a)は、第1実施形態に係る額用の皮膚下陰圧維持具を示す斜視図であり、同図(b)は、同図(a)におけるA−A断面図である。
【図4】(a)は、第1実施形態に係る目元用の皮膚下陰圧維持具を示す斜視図であり、同図(b)は、同図(a)におけるB−B断面図である。
【図5】(a)は、第1実施形態に係る口元用の皮膚下陰圧維持具を示す斜視図であり、同図(b)は、同図(a)におけるC−C断面図である。
【図6】第1実施形態に係る各皮膚下陰圧維持具の切込線を示す上面図である。
【図7】第1実施形態に係る皮膚下陰圧維持具を使用した際の状態を示す説明図である。
【図8】第1実施形態に係る皮膚下陰圧維持具を使用した際の皮膚下の細胞に働く陰圧状態を示す説明図である。
【図9】(a)は、第2実施形態に係る皮膚下陰圧維持具を示す斜視図であり、同図(b)は、同図(a)におけるD−D断面図であり、同図(c)は、第2実施形態に係る皮膚下陰圧維持具を使用した際の状態を示す説明図である。
【図10】変更例に係る皮膚下陰圧維持具を示す斜視図、側断面図及び説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。図1(a)は本実施形態に係る皮膚下陰圧維持具を示す側断面図であり、(b)は、本実施形態に係る皮膚下陰圧維持具を示す下面図である。
【0017】
本実施形態に係る皮膚下陰圧維持具10は、皮膚S下に陰圧を生じさせ、その陰圧状態を維持するための器具であって、図1に示すように、外形をなす保持部11と、その内面の接着面12とから構成されている。
【0018】
保持部11は、図1(a)に示すように、その上部に形成された稜線Lを境として曲率の異なる一対の曲面11a,11bが接合され、その内部に空間2を有するとともに、下部が開口された貝殻のような略半球の形状をなしている。この保持部11は、シリコンなどの軟質合成樹脂や天然ゴムなどの天然樹脂など、弾性による復元力が生じて元の形状に戻ろうとする素材で形成され、曲面11a,11bを一体成型されている。
【0019】
曲面11aは、外方に膨らんだ凸状をなす曲面であり曲面11bよりも面積が大きく、その形状による弾性によって、内部に主として陰圧を生じさせる。一方、曲面11bにおいても、外方に膨らんだ凸状をなす曲面であり、内部に主として陰圧を生じさせるとともに、皮膚と接触する周縁部に陽圧を生じさせる。曲面11aと11bの間では、それぞれの陰圧が、相互に作用し合い、周縁の陽圧に対し、全体として釣り合った状態となるが、各曲面の面積及び形状の違いにより局所的に作用する力が制御され、身体各部位の複雑な凹凸形状に追従させて、陰圧に部分的な強弱を付けることができ、各部位のしわの特性に合った効果が得られるようになっている。
【0020】
また、保持部11は、図1(a)及び(b)に示すように、保持部11の皮膚に対向する側の天井面に粘着性を有する接着面12が設けられている。本実施形態において、接着面12には、皮膚を接着するための接着剤が塗布、又は皮膚を接着するための接着テープが貼り付けられ、この接着剤又は接着テープなどの接着部材20を有することで、一定の粘着性を有し、皮膚Sとの接着状態を維持するようになっている。
【0021】
なお、図1に示した保持部11は、その厚さが一律となっているが、部分的に肉厚部分を形成するようにしてもよい。例えば、曲面部分に上部から下部に向かって延びる肉厚部分(図示せず)を設けてもよい。この肉厚部分は、保持部11の強度を高めると同時に復元力を大きくする効果がある。さらに、接着剤や接着テープは、皮膚に直接に接触するものであるので、実施においてはアレルギーが起こらないようなものを使用することとなる。
【0022】
そして、本実施形態において、保持部11は、図1(a)に示すように開口部分を下にして、皮膚Sの上から被せるように押しあてて使用する。これにより、図8に示すように、皮膚下陰圧維持具10は、保持部11が接着面12を介して皮膚Sに貼着されると、保持部11の弾性による復元力によって、皮膚Sに貼着された接着面12を皮膚に貼り付けたままの状態で、接着面12を所定位置まで持ち上げて保持し、持ち上げた皮膚S下に陰圧が生じた状態を維持するようになっている。
【0023】
次いで、本実施形態における、皮膚下陰圧維持具10の具体的な形態について説明する。図2は、本実施形態に係る額用,目元用,及び口元用の皮膚下陰圧維持具を示す上面図である。すなわち、本実施形態において、皮膚下陰圧維持具10の形態としては、図2(a)に示すように、額用の皮膚下陰圧維持具110と、図2(b)に示すように一対の目元用の皮膚下陰圧維持具120,120と、図2(c)に示すように、一対の口元用の皮膚下陰圧維持具130,130とがある。
【0024】
以下、これらの各形態について説明する。なお、図3(a)は、本実施形態に係る額用の皮膚下陰圧維持具を示す斜視図であり、同図(b)は、同図(a)におけるA−A断面図であり、図4(a)は、本実施形態に係る目元用の皮膚下陰圧維持具を示す斜視図であり、同図(b)は、同図(a)におけるB−B断面図であり、図5(a)は、本実施形態に係る口元用の皮膚下陰圧維持具を示す斜視図であり、同図(b)は、同図(a)におけるC−C断面図である。また、図6は、本実施形態に係る各皮膚下陰圧維持具における切込線を示す上面図である。
【0025】
(額用の皮膚下陰圧維持具)
額用の皮膚下陰圧維持具110は、額全体を覆い、額部分の皮膚S下に陰圧を生じさせ、その陰圧状態を維持するための器具であり、保持部111を備えている。保持部111の上部には、図3(a)に示すように、保持部111に対し左右に延びた稜線L1を有しており、保持部111は、この稜線L1を境にして第1の曲面111bと、第2の曲面111aとが上下に接合された形状をなしている。
【0026】
下側に位置する第1の曲面111bは、縁部112bにサインカーブ状の形状を有している曲面であり、額の下方部分である眉間や眉の近傍における凹凸部分に対応する形状となっている。上側に位置する第2の曲面111aは、第1の曲面よりも面積が広く、縁部112aが略円形の形状を有する曲面である。なお、額用の皮膚下陰圧維持具110においても、保持部111の皮膚に対向する側の天井面には、接着面12が設けられている。
【0027】
そして、本実施形態では、図3(b)に示すように、第1の曲面111bの曲率R1bと、第2の曲面111aの曲率R1aとの曲率が異なるように構成されている。上記稜線L1を、両方の眉毛の上部に沿うように位置させることにより、皮膚下陰圧維持具110の外周縁に生じる陽圧を反力として、額部分を中心とする陰圧が生じる。
【0028】
(目元用の皮膚下陰圧維持具)
目元用の皮膚下陰圧維持具120は、目尻部分を覆い、目尻部分の皮膚S下に陰圧を生じさせ、その陰圧状態を維持するための器具であり、保持部121を備えている。保持部121の上部には、図4(a)に示すように、保持部121に対し上下に延びた稜線L2を有しており、保持部121は、この稜線L2を境にして第1の曲面121bと、第2の曲面121aとが接合された形状をなしている。
【0029】
内側に位置する第1の曲面121bは、縁部122bにサインカーブ状の形状を有している曲面であり、両方の目尻部分の凹凸部分に対応する形状となっている。また、外側に位置する第2の曲面121aは、第1の曲面よりも面積が広く、縁部122aが略円形の形状を有する曲面である。なお、目元用の皮膚下陰圧維持具120においても、図示しないが、保持部121の皮膚に対向する側の天井面に接着面12が設けられている。
【0030】
そして、本実施形態では、図4(b)に示すように、第1の曲面121bの曲率R2bと、第2の曲面121aの曲率R2aとの曲率が異なるように構成されている。上記稜線L2を、目尻骨格に沿うように位置させることにより、皮膚下陰圧維持具120の外周縁に生じる陽圧を反力として、目尻位置を中心とする陰圧が生じる。
【0031】
(口元用の皮膚下陰圧維持具)
口元用の皮膚下陰圧維持具130は、口元の両側部を覆い、口元の皮膚S下に陰圧を生じさせ、その陰圧状態を維持するための器具であり、保持部131を備えている。保持部131の上部には、図5(a)に示すように、保持部131に対し上下に延びた稜線L3を有しており、保持部131は、この稜線L3を境にして第1の曲面131bと、第2の曲面131aとが接合された形状をなしている。
【0032】
第1の曲面131bは、縁部132bにサインカーブ状の形状を有している曲面であり、口元近傍の凹凸部分に対応する形状となっている。また、第2の曲面131aは、第1の曲面よりも面積が広く、縁部132aが略円形の形状を有する曲面である。なお、口元用の皮膚下陰圧維持具130においても、図示しないが、保持部131の皮膚に対向する側の天井面には、接着面12が設けられている。
【0033】
そして、本実施形態では、図5(b)に示すように、第1の曲面131bの曲率R3bと、第2の曲面131aの曲率R3aとの曲率が異なるように構成されている。上記稜線L3を、ほうれい線に沿うように位置させることにより、皮膚下陰圧維持具130の外周縁に生じる陽圧を反力として、ほうれい線を中心とする陰圧が生じる。
【0034】
さらに、本実施形態においては、各保持部111,121,131には、図6(a)〜(c)に示すように、各稜線L1,L2,L3上の点P1,P2,P3を中心とする放射線状の切込線T1,T2,T3が表示されている。この切込線T1,T2,T3に沿って、保持部111,121,131の一部分を切除することにより、皮膚に貼着された状態の曲率を調節可能となっている。
【0035】
次いで、各皮膚下陰圧維持具110,120,130の使用方法について説明する。図7は、本実施形態における各皮膚下陰圧維持具110,120,130を顔に置き、使用した状態を示す説明図であり、図8は、皮膚下陰圧維持具を使用した際の皮膚下に働く陰圧の状態を示す説明図である。
【0036】
皮膚下陰圧維持具110,120,130を使用する際には、先ず、接着面12を覆っているシートを剥がして接着剤又は両面テープの接着面12を露出させてから、図7に示すように、保持部111,121,131の下部を皮膚Sに向け、それぞれの保持部111,121,131を所定の額、目元、及び口元の位置に配置させる。
【0037】
具体的に、額用の皮膚下陰圧維持具110では、図7に示すように、第1の曲面111bを下方に位置させて、保持部111を眉間や眉などの近傍における凹凸部分に対応する位置に配置させる。また、目元用の皮膚下陰圧維持具120は、図7に示すように、第1の曲面121bを目の近傍部分に位置させて、保持部121を目尻部分の凹凸形状に対応する位置に配置させる。さらに、口元用の皮膚下陰圧維持具130は、図7に示すように、第1の曲面131bを口部分の近傍に位置させるとともに、保持部131を、ほうれい線部分における凹凸形状に対応する位置に配置させる。このように各皮膚下陰圧維持具110,120,130をそれぞれ配置させることで、図8(a)に示すように、顔の形状の凹凸部分にも対応して、皮膚下陰圧維持具10が配置される。
【0038】
次いで、図8(b)に示すように、保持部11(111,121,及び131)を上部から指などで皮膚Sに向けて押込んで接着面12を皮膚Sに押し付ける。保持部11(111,121,及び131)は、弾性を有するのでその弾性による復元力に抗して上部を押込むことになる。このようにして接着面12を皮膚Sに貼着させる。
【0039】
接着面12を皮膚Sに貼着することができたら、次に、各保持部11(111,121,及び131)の上部を押込んでいた指を離す。これにより、復元力に抗して押込まれていた各保持部11(111,121,及び131)は、図8(a)に示した状態に戻ろうとする。これにより、図8(c)に示したように皮膚Sが持ち上げられ、その状態が保持される。この状態では、持ち上げられた皮膚S下の細胞に陰圧が生じるとともに、保持部11の外周部分には、皮膚下を押下する力が生じ、皮膚下の細胞に陽圧が生じる。
【0040】
なお、接着面12に接着剤を塗布しておらず、また、両面テープを貼付していない場合には、別に、接着面12に塗布する接着剤や接着面12に貼付する両面テープを付属しておき、使用の度に接着剤を塗布するか、両面テープを接着面12に貼付してから皮膚Sに接着面12を貼り付けるようにしてもよい。また、皮膚下陰圧維持具10(110,120,130)を取り外すときは、保持部11(111,121,及び131)を引っ張って、接着面12を皮膚から剥がせばよい。
【0041】
また、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0042】
(作用・効果)
本発明にかかる皮膚下陰圧維持具によれば、皮膚に接着面12を貼り付けることで、接着面12に連結した保持部11の復元力によって皮膚Sが持ち上げられ、保持部11の外周部分の皮膚下には、陽圧を生じさせるとともに、保持部11の皮膚下に陰圧を生じさせることができる。さらに、本実施形態によれば、保持部11には、その皮膚Sと接触する面に粘着性の接着面12を有しているので、ユーザーが手を離した場合でも、皮膚は接着面12と接着状態を維持することができるので、皮膚S下に陰圧の生じた状態を維持することが容易にできる。このように皮膚下に陰圧が生じたままの状態を維持すると、陰圧がかかっている皮膚下では、陰圧による力を受け続けるため、細胞の新陳代謝を促進させ、細胞を活性化させるとともに、細胞を増殖させることができる。これにより、皮膚に現れたしわやしみなどの消失を促すことができる。
【0043】
また、皮膚下陰圧維持具10は、皮膚に貼り付ける接着面12と、この接着面を保持する保持部11だけからなるので、極めて簡易な構造のものとすることができる。さらに、皮膚Sの外側に密閉空間を作って、この密閉空間を減圧して皮膚を吸引する必要がないので、皮膚に優しく、且つ、皮膚に使用する箇所を選ばず、さらに、長時間に亘って継続使用することができるので、細胞の新陳代謝を促進させ、細胞を活性化させるとともに、細胞を増殖させる効果が向上する。
【0044】
特に、本実施形態において、保持部11は稜線Lを境として曲率の異なる一対の曲面11a,11bが接合された形状を有しているので、第1の面曲11b及び第2の11aの下方部分に位置する皮膚Sに対して、異なる陰圧状態を生じさせることができ、これにより、顔の凹凸部分に追従して陰圧を生じさせることができる。詳しくは、本実施形態では、曲面11aを、外方に膨らんだ凸状とし、曲面11bよりも面積が大きくし、その形状による弾性によって、内部に主として陰圧を生じさせる。一方、曲面11bにおいても、外方に膨らんだ凸状とし、内部に主として陰圧を生じさせる。これにより、相互の陰圧が作用し合うことで、局所的に作用する力が制御され、身体各部位の複雑な凹凸形状に追従させて、陰圧に部分的な強弱を付けることができ、各部位のしわの特性に合った効果を得ることができる。
【0045】
さらに、本実施形態において、一対の曲面は、縁部にサインカーブ状を有する第1の曲面11aと、第1の曲面よりも面積が広く、縁部が略円形の第2の曲面11bとから構成されているので、目や口の近傍にはサインカーブ状を有する第1の曲面部分を配置させ、その他の部分に第2の曲面部分を配置させることで、目や口に皮膚下陰圧維持具が触れない状態で、目や口の周りにできたしわや弛みに対して適切に陰圧状態を生じさせることができる。
【0046】
また、本実施形態において、保持部11には、稜線L上の一点Pを中心とする放射線状の切込線Tが表示され、切込線Tに沿って、保持部11の一部分を切除することにより、皮膚Sに貼着された状態の曲率を調節可能となっているので、各ユーザーによって異なる顔の形状に追従して皮膚S下に陰圧状態を生じさせることができる。また、保持部11には、切込線Tが表示されているので、ユーザーは、特別な熟練を要せず、容易に曲面の曲率を調整することができる。
【0047】
さらに、本実施形態において、接着面12は、皮膚Sを接着するための接着剤、や接着テープである接着部材20を有しているので、接着剤が塗布、又は、接着テープが貼り付けられることで、皮膚Sと接着面との粘着力が増し、皮膚に容易に接着することができるとともに、接着面に接着した皮膚Sを所定位置まで持ち上げることができ、皮膚S下に陰圧が生じた状態を維持させることができる。
【0048】
[第2実施形態]
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、2つの曲面を一つの稜線を境として接合した形態を例に説明したが、曲面及び稜線の個数を増やし、さらに複雑な形状にして、陰圧及び陽圧をさらに精度よく制御することができる。
【0049】
本実施形態では、皮膚下陰圧維持具に稜線が2つある場合を例に説明する。図9(a)は、第2実施形態に係る皮膚下陰圧維持具を示す斜視図であり、同図(b)は、同図(a)におけるD−D断面図であり、同図(c)は、第2実施形態に係る皮膚下陰圧維持具を使用した際の状態を示す説明図である。なお、本実施形態において、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能等は特に言及しない限り同一であり、その説明は省略する。
【0050】
本実施形態における皮膚下陰圧維持具140は、口元の周辺部分を覆い、周辺部分の皮膚S下に陰圧を生じさせ、その陰圧状態を維持するための器具であり、図9(a)に示すように、その上部に保持部141を備えている。
【0051】
本実施形態において、保持部141は、所定の縁部間を延びる稜線L41,L42を有しており、稜線L41,L42を境として、第1の曲面141bと、第2の曲面141aと、第3の曲面141cとが接合された形状をなしている。
【0052】
第1の曲面141bは、縁部142bにサインカーブ状の形状を有している曲面であり、図9(c)に示すように、口元近傍の凹凸部分に対応する形状となっている。また、第2の曲面141aは、第1の曲面よりも面積が広く、縁部142aに略円形の形状を有する曲面であり、図9(c)に示すように、頬の下部に位置するようになっている。さらに、第3の曲面141cは、縁部142cがサインカーブ状を有する曲面であり、目元周辺に位置するようになっている。
【0053】
そして、本実施形態では、図9(b)に示すように、第3の曲面141cの曲率R4cと、第2の曲面141aの曲率R4aとの曲率が異なるように構成されている。さらに、第1の曲面141bの曲率R4bと、第3の曲面141cの曲率R4dとの曲率が異なるように構成されている。なお、口元用の皮膚下陰圧維持具140においても、図示しないが、保持部141の皮膚Sに対向する側の天井面には、接着面12が設けられている。
【0054】
このような構成により、皮膚Sに使用した際は、保持部141の弾性による復元力によって、図9(b)に示すように、第2の曲面141aの下方に位置する皮膚Sは、抑えられ、皮膚下の細胞に対して陽圧を生じさせるとともに、第3の曲面141cの下方に位置する皮膚Sは、所定位置まで持ち上げられて、その状態が保持される。これにより、その皮膚下の細胞に対して陰圧状態を維持させることができ、皮膚下における細胞の新陳代謝を促進させ、細胞を活性化させるとともに、細胞を増殖させることにより、ほうれい線を消去させ、頬の弛みや、目元の弛みを防止することができる。特に、本実施形態では、稜線を複数有する形状としたため、各曲面の面積及び形状の違いにより局所的に作用する力を、より精度よく制御することができ、身体各部位の複雑な凹凸形状に追従させて、より正確に陰圧及び陽圧に部分的な強弱を付けることができる。
【0055】
[変更例]
上述した各実施形態においては、以下のような変更を加えることができる。例えば、皮膚下陰圧維持具を顔以外の部分に用いてもよい。本変更例では、皮膚下陰圧維持具を乳房に使用した場合を例に説明する。図10(a)は、本変更例に係る皮膚下陰圧維持具を示す斜視図であり、同図(b)は、その側断面図であり、同図(c)は、本変更例に係る皮膚下陰圧維持具の稜線を示す説明図である。
【0056】
本変更例に係る皮膚下陰圧維持具150は、図10(a)に示すように、乳房全体を覆うように形成された保持部151を有しており、乳頭部分に対応する箇所に、保持部151を貫通する孔152を有している。また、本変更例に係る皮膚下陰圧維持具150においても、乳房部分の皮膚Sと接触する面に粘着性の接着面12を有している。
【0057】
そして、保持部151によって乳房全体を覆うことで、接着面12に貼着した皮膚は保持部151の弾性による復元力によって所定位置まで持ち上げられて、その状態が保持されるので、その皮膚下の細胞に対して陰圧状態を維持させることができ、皮膚下における細胞の新陳代謝を促進させ、細胞を活性化させるとともに、細胞を増殖させることができる。これにより、バストアップを促すことができる。
【0058】
なお、本変更例において、保持部151は、図10(c)に示すように、その複数の稜線L51及びL52を境として曲率の異なる複数の曲面151a,151b,151cを接合し、凹凸が複合した雫形状の略半球の形状とすることができる。具体的には、上部の曲面151a及び151bは、外方に膨らんだ凸状をなす曲面であり、上下に延びる稜線L51を境として、左右に接合されている。この曲面151a及び151bの部分は、曲面151cよりも面積が大きく、その形状による弾性によって、内部に、上方へ引っ張り上げるような陰圧を生じさせる。一方、曲面151cは、内方に窪んだ凹状をなす曲面とすることができ、内部に、下方から支え上げるような陽圧を生じさせる。
【0059】
このような曲面151a〜151cは、相互に作用・反作用の関係によって全体として陰圧と陽圧とが釣り合った状態となるが、各曲面の面積及び形状の違いにより局所的に作用する力が制御され、身体各部位の複雑な凹凸形状に追従させて、陰圧及び陽圧に部分的な強弱を付けることができ、各部位の特性に合った効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
L(L1,L2,L3,L4,L5)…稜線
P1,P2,P3…稜線上の点
Rb(R1b,R2b,R3b)…第1の曲面における曲率
Ra(R2a,R2a,R3a)…第2の曲面における曲率
R4c…第1の曲面における曲率
R4d…第3の曲面における曲率
S…皮膚
T1,T2,T3…切込線
2…空間
10…皮膚下陰圧維持具
11…保持部
11a,11b…曲面
12…接着面
20…接着部材
110…額用の皮膚下陰圧維持具
120…目元用の皮膚下陰圧維持具
130…口元用の皮膚下陰圧維持具
140…口元用の皮膚下陰圧維持具
150…乳房用の皮膚下陰圧維持具
111,121,131、141,151…保持部
111a,121a,131a,141a…第2の曲面
111b,121b,131b,141b…第1の曲面
112a,122a,132a…第2の曲面の縁部
112b,122b,132b…第1の曲面の縁部
141c…第3の曲面
142c…第3の曲面の縁部
152…孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚下に陰圧が生じた状態を維持するための皮膚下陰圧維持具であって、
弾性を有するとともに、稜線を境として曲率の異なる一対の曲面が接合された形状を有する保持部と、
前記保持部の皮膚に対向する側の天井面に設けられた粘着性を有する接着面と
を備え、
前記保持部は、前記接着面を介して皮膚に貼着されるとともに、前記保持部の弾性による復元力によって、皮膚に貼着された前記接着面を皮膚に貼り付けたままの状態で、該接着面を所定位置まで持ち上げて保持し、前記持ち上げた皮膚下に陰圧が生じた状態を維持する
ことを特徴とする皮膚下陰圧維持具。
【請求項2】
前記一対の曲面は、縁部にサインカーブ状を有する第1の曲面と、該第1の曲面よりも面積が広く、縁部が略円形の第2の曲面とからなることを特徴とする請求項1に記載の皮膚下陰圧維持具。
【請求項3】
前記保持部には、前記稜線上の一点を中心とする放射線状の切込線が表示され、該切込線に沿って、該保持部の一部分を切除することにより、前記皮膚に貼着された状態の前記曲率を調節可能となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚下陰圧維持具。
【請求項4】
前記接着面は、皮膚を接着するための接着剤が塗布されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の皮膚下陰圧維持具。
【請求項5】
前記接着面は、皮膚を接着するための接着テープが貼り付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の皮膚下陰圧維持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−152496(P2012−152496A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16255(P2011−16255)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(300056185)
【Fターム(参考)】