説明

皮膚形状転写剤、皮膚形状転写シート及び皮膚形状転写方法

【課題】
本発明は、皮膚表面の形状を転写するための皮膚形状転写剤、皮膚形状転写シート及びこの皮膚形状転写シートを用いる皮膚形状転写方法を提供する。
【解決手段】
アクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステル又はメタクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステルを少なくとも含むモノマーを重合して得られるアクリル系重合体、重合性不飽和基を有するモノマー又はオリゴマー、及び光重合開始剤を含有することを特徴とする皮膚形状転写剤;基材シートの一方の面に、前記皮膚形状転写剤から形成された形状転写層を有することを特徴とする皮膚形状転写シート;及び該皮膚形状転写シートを用いる皮膚形状転写方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面の形状を転写するための、皮膚形状転写剤及び皮膚形状転写シート、並びにこの皮膚形状転写シートを用いる皮膚形状転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美容分野において、化粧料を的確に選択する等のため、皮膚の性状を分析することが広く行われている。特に、皮膚の表面形状は、紫外線等の影響を受けた程度や、皮膚の水分量を反映するものであり、非常に重要な情報を含んでいる。そのため、皮膚の表面形状を、角質剥離を伴うことなく(非侵襲的に)転写し、評価する方法が種々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アクリル酸エチル−メタクリル酸エチル共重合体を含有する皮膚レプリカ剤が開示されている。特許文献2には、アルギン酸及び/又はその水可溶性塩を含む組成物、並びにアルカリ土類金属の水可溶性塩を含む組成物を、使用時に混合して用いる皮膚のレプリカ作製用キットが開示されている。また、特許文献3には、水溶性高分子、特定の粉体、及び/又はシリコーンポリマーを含有する固化性の皮膚粘着組成物が開示されている。
これらの技術は、液体や半固体ペーストを皮膚に塗布した後、水分の蒸発や、化学反応によって固化させることにより皮膚表面のレプリカを作製するものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に記載のレプリカ剤等には、次のような問題があった。
(α)流動性を有するため、皮膚への追従性は優れるものの、皮膚上でゆっくり固化させる間に液だれする等、取り扱い性に劣っていた。
(β)レプリカ剤等を皮膚に直接塗布するため、塗布厚みを一定に制御することが困難であった。塗布厚みがばらついていると、形成された皮膚レプリカをスライドガラス等に置いて観察する場合、塗布厚みの差が凹凸となって表れ、正確な皮膚形状の評価が困難となる。
(γ)施術者による塗布の仕方(圧力、伸ばし方)の差や、塗布量のばらつきが、皮膚への埋め込み性に影響を与え、再現性に劣っていた。
(δ)皮膚にレプリカ剤等を塗布してから該レプリカ剤等が硬化するまでに時間がかかるため、皮膚の筋肉の静止状態を長期間維持しなければならず、被験者の負担が大きく、利便性に劣っていた。
【0005】
よって、どの施術者によっても皮膚に均一に貼付でき、液だれ等が生じることなく、短時間で再現性よく皮膚形状のレプリカを作製することができる皮膚形状転写剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−314146号公報
【特許文献2】特開2004−173801号公報
【特許文献3】特開2009−291232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、皮膚から剥がす際の角質剥離量が少なく(非侵襲的に)、再現性良く確実かつ簡便に皮膚形状を転写可能な、皮膚形状転写剤及び皮膚形状転写シート、並びにこの皮膚形状転写シートを用いる皮膚形状転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した。その結果、基材シートの一方の面に、(メタ)アクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステルを含むモノマーを重合してなるアクリル系重合体、重合性不飽和基を有するオリゴマー、及び光重合開始剤を含有する皮膚形状転写剤から形成された形状転写層を有する皮膚形状転写シートによると、非侵襲的に、再現性良く確実かつ簡便に皮膚形状を転写することができることを見出した。本発明者らは、この知見を一般化することにより本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(5)の皮膚形状転写剤、(6)の皮膚形状転写シート、及び(7)の皮膚形状転写方法が提供される。
【0010】
(1)アクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステル又はメタクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステルを少なくとも含むモノマーを重合して得られるアクリル系重合体、重合性不飽和基を有するモノマー又はオリゴマー、及び光重合開始剤を含有することを特徴とする皮膚形状転写剤。
(2)電離放射線を照射した後の32℃における貯蔵弾性率が、電離放射線を照射する前の32℃における貯蔵弾性率より高いことを特徴とする(1)に記載の皮膚形状転写剤。
(3)電離放射線照射前の32℃における貯蔵弾性率が、5.0×10〜5.0×10Paであり、電離放射線照射後の32℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上であることを特徴とする(1)に記載の皮膚形状転写剤。
【0011】
(4)皮膚形状転写剤の固形分全体に対して、アクリル系重合体を74〜95質量%、重合性不飽和基を有するモノマー又はオリゴマーを4〜25質量%、光重合開始剤を0.01〜1質量%含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の皮膚形状転写剤。
(5)アクリル系重合体が、アクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステル又はメタクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステル、及び、活性水素を有する官能基を含むモノマーを重合して得られるものであり、かつ、前記官能基と反応性を有する熱硬化剤をさらに含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の皮膚形状転写剤。
【0012】
(6)基材シートの一方の面に、(1)〜(5)のいずれかに記載の皮膚形状転写剤から形成された形状転写層を有することを特徴とする皮膚形状転写シート。
(7)(6)に記載された皮膚形状転写シートを皮膚表面に貼着する工程と、前記貼着した皮膚形状転写シートに電離放射線を照射する工程と、前記皮膚形状転写シートを前記皮膚から剥がす工程とを有することを特徴とする皮膚形状転写方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の皮膚形状転写剤は、優れた粘着適性を有し、かつ、電離放射線照射により硬化する性質を有している。皮膚表面への貼着時(硬化前)は、貯蔵弾性率が低く、皮膚への追従性、皮膚との密着性に優れ、硬化後は、貯蔵弾性率が高くなり、皮膚からの離型性に優れる。よって、皮膚から剥がす際における角質剥離量が少なく(非侵襲的に)、再現性よく確実かつ簡便に、皮膚表面の形状を転写することができる。
また、本発明の皮膚形状転写剤は離型性に優れるため、皮膚から剥がす際に皮膚にダメージを与えることが少なく、短時間で硬化が完了するため、被験者の負担が軽く、利便性に優れている。
【0014】
本発明の皮膚形状転写シートは取り扱い性に優れる。本発明の皮膚形状転写シートによれば、本発明の皮膚形状転写剤から形成された形状転写層を有するため、非侵襲的に、再現性よく確実かつ簡便に、皮膚表面の形状の転写体を形成することができる。また、得られる転写体は、形状保持性に優れている。
本発明の皮膚形状転写方法によれば、非侵襲的に、再現性よく確実かつ簡便に、皮膚表面形状の転写体を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、1)皮膚形状転写剤、2)皮膚形状転写シート、及び、3)皮膚形状転写方法に項分けして、詳細に説明する。
【0016】
1)皮膚形状転写剤
本発明の皮膚形状転写剤は、(a)アクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステル又はメタクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステル(以下、これらをまとめて「(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステル」という。)を少なくとも含むモノマーを重合してなるアクリル系重合体、(b)重合性不飽和基を有するモノマー又はオリゴマー、及び(c)光重合開始剤を含有することを特徴とする。
【0017】
(a)アクリル系重合体
(a)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステルを少なくとも含むモノマーを重合してなる。ここで、(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステルを少なくとも含むモノマーとは、(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステル一種のみからなるモノマー、(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステルの二種以上からなるモノマー混合物、又は、(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステルと、このものと重合可能な他のモノマーのモノマー混合物のいずれかを意味する。
(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステルのアルキルの炭素数が1、又は5より大きいと、角質剥離量の多い転写剤が得られるおそれがある。
【0018】
用いる(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステルとしては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する(以下にて同じ)。
【0019】
これらの中でも、本発明においては、角質剥離量が少なく、皮膚にダメージを与えることが少ない(非侵襲性に優れる)皮膚形状転写剤が得られることから、(メタ)アクリル酸C2〜4アルキルエステルが好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0020】
他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステルと重合可能なものであって、本発明の目的を阻害しないものであれば特に制約はない。例えば、
(i)活性水素を有する官能基を含むモノマー
(ii)分子内に重合性不飽和基を複数有するモノマー
(iii)上記(i)、(ii)以外のモノマー
等が挙げられる。
【0021】
(i)活性水素を有する官能基を含むモノマーの活性水素としては、カルボキシル基、水酸基、及びアミノ基等が挙げられる。
活性水素を有する官能基を含むモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシ−n−プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−n−プロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−n−プロピル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシ−イソプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−イソプロピル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシ−イソブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−イソブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−s−ブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−s−ブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシ−n−ペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシ−n−へキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
2−アミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノ−n−プロピル(メタ)アクリレート、4−アミノ−n−ブチル(メタ)アクリレート、2−モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート;等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
上記(i)のモノマーを用いる場合、(a)アクリル系重合体を得るためのモノマー混合物中における(i)のモノマーの割合は、特に限定されないが、0.01〜20モル%であることが好ましく、0.1〜10モル%であることがより好ましい。
【0022】
(ii)の重合性不飽和基を複数有するモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ボリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;ジビニルベンゼン;等が挙げられる。
上記(ii)のモノマーを用いる場合、(a)アクリル系重合体を得るためのモノマー混合物中における(ii)のモノマーの割合は、特に限定されないが、0.001〜0.10モル%であることが好ましく、0.01〜0.05モル%であることがより好ましい。
【0023】
(iii)の(i)、(ii)以外のモノマーとしては、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。
これらのモノマーは、一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(iii)のモノマーを用いる場合、(a)アクリル系重合体を得るためのモノマー混合物中における(iii)のモノマーの割合は、特に限定されないが、0.01〜30モル%であることが好ましく、0.1〜10モル%であることがより好ましい。
【0024】
なかでも、後述するように、さらに熱硬化剤を併用することで、貯蔵弾性率の値をより簡便に制御することが可能なことから、(i)のモノマーの使用が好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用がさらに好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの使用が特に好ましい。
【0025】
他のモノマーを用いる場合、(a)アクリル系重合体を得るためのモノマー混合物中における(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステルの割合は、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。すなわち、(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステル70モル%以上と、残余として上記(i)〜(iii)から選択されるいずれか1種のモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られる(a)アクリル系重合体が好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステルを少なくとも含むモノマーを重合する方法としては、特に制約はなく、例えば、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等が挙げられる。これらの中でも、ラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合法は、有機溶媒中で、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の汎用のラジカル重合開始剤の存在下、前記モノマーを重合させることにより重合体を調製する方法である。
重合形式も特に制約はなく、溶液重合、塊状重合、エマルジョン重合等のいずれであってもよい。
【0027】
また、得られるアクリレート系重合体が共重合体である場合、共重合体の形態は特に制限はなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0028】
得られる(a)アクリル系重合体の、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC法)にて、標準ポリスチレンで換算して測定される質量平均分子量(Mw)は、通常400,000〜2,000,000であり、好ましくは600,000〜1,600,000である。
【0029】
(a)アクリル系重合体の含有量は、本発明が目的とする転写剤をより簡便に得られる観点から、皮膚形状転写剤の固形分全体に対して74〜95質量%であるのが好ましい。
【0030】
(b)重合性不飽和基を有するモノマー又はオリゴマー
本発明の皮膚形状転写剤は、重合性不飽和基を有するモノマー又はオリゴマー(以下、「オリゴマー等」ということがある。)を含有する。このようなオリゴマー等を用いることで、皮膚への追従性、皮膚との密着性に優れる皮膚形状転写剤を得ることができる。
【0031】
ここで、重合性不飽和基は、光重合開始剤の存在下、電離放射線が照射されることにより重合する性質を有する不飽和基を意味する。
重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いる(b)オリゴマー等としては、例えば、重合性不飽和基を1つ有するモノマー、重合性不飽和基を複数有するモノマー、重合性不飽和基を有するオリゴマーが挙げられる。
【0033】
重合性不飽和基を1つ有するモノマーとしては、上述した(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステル、ビニルベンゼン、ビニルスルホン、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
重合性不飽和基を複数有するモノマーとしては、例えば、ジビニルエーテル、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド等のビスアクリルアミド化合物;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型(メタ)アクリレート;テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型(メタ)アクリレート;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0035】
重合性不飽和基を有するオリゴマーとしては、質量平均分子量(Mw)が500〜5,000程度のものが好ましい。具体例としては、上述した(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステルのオリゴマー;ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー;等が挙げられる。
【0036】
これらの中でも、取り扱い性に優れ、後述する好ましい貯蔵弾性率を有する目的物が得られることから、重合性不飽和基を複数有するモノマー及び重合性不飽和基を有するオリゴマーが好ましく、重合性不飽和基を有するオリゴマーがより好ましく、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが特に好ましい。
【0037】
(b)オリゴマー等の含有量は、本発明が目的とする転写剤をより簡便に得られる観点から、皮膚形状転写剤の固形分全体に対して4〜25質量%であるのが好ましい。
【0038】
(c)光重合開始剤
本発明の皮膚形状転写剤は(c)光重合開始剤を含有する。光重合開始剤の存在下、電離放射線を照射することにより、皮膚形状転写剤を硬化させ、後述する好適な貯蔵弾性率を有する皮膚形状転写体を確実かつ簡便に得ることができる。
【0039】
光重合開始剤としては、電離放射線を照射することにより、用いる(a)アクリル系重合体、(b)オリゴマー等の、重合及び/又は架橋を開始させる働きを有するものであれば特に制約はない。
【0040】
例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソフチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンジルジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパン}等が挙げられる。
【0041】
(c)光重合開始剤の含有量は、皮膚形状転写剤の固形分全体に対して0.01〜1質量%であるのが好ましい。(c)光重合開始剤の添加量があまりに少ないと、電離放射線を照射しても貯蔵弾性率の上昇がみられず、好ましくない。
【0042】
本発明の皮膚形状転写剤は、(a)アクリル系重合体、(b)オリゴマー等、及び(c)光重合開始剤の他、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、熱硬化剤、溶媒、薬剤、酸化防止剤、粘度調整剤、可塑剤、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
【0043】
特に、アクリル系重合体が、(メタ)アクリル酸C2〜5アルキルエステルの他に、前記(i)活性水素を有する官能基を含むモノマーを用いて得られたものである場合、該官能基と反応しうる熱硬化剤を含有するのが好ましい。このような場合に熱硬化剤を用いることで、後述する皮膚形状転写剤の貯蔵弾性率をより容易に好ましい値に調整することができる。
【0044】
熱硬化剤としては、用いるアクリル系重合体の種類に応じて選択されればよいが、エポキシ系熱硬化剤、金属塩系熱硬化剤、尿素系熱硬化剤、イソシアネート系熱硬化剤、金属キレート系熱硬化剤、メラミン系熱硬化剤、アジリジン系熱硬化剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系熱硬化剤を用いるのが好ましい。
【0045】
イソシアネート系熱硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート等;及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体;等が挙げられる。
【0046】
熱硬化剤を用いる場合、熱硬化剤の含有量は、皮膚形状転写剤の固形分全体に対して0.01〜5質量%であるのが好ましい。
【0047】
また、本発明の皮膚形状転写剤は溶媒を含有するのが好ましい。用いる溶媒としては、反応に不活性で、(a)アクリル系重合体、(b)オリゴマー等、(c)光重合開始剤等を均一に溶解又は分散でき、微量に残存した場合であっても皮膚に安全であるものが好ましい。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、特に安全性の観点からエステル類が好ましい。
【0048】
溶媒の使用量は、(a)アクリル系重合体100質量部に対して、通常100〜1000質量部、好ましくは400〜700質量部である。
【0049】
本発明の皮膚形状転写剤は、(a)アクリル系重合体、(b)オリゴマー等、(c)光重合開始剤、及び所望によりその他の成分を、公知の方法で混合することにより得ることができる。
【0050】
以上のようにして得られる本発明の皮膚形状転写剤は、電離放射線を照射した後の32℃における貯蔵弾性率が、電離放射線を照射する前の32℃における貯蔵弾性率より高いものが好ましい。より具体的には、電離放射線照射前の32℃における貯蔵弾性率が、5.0×10〜5.0×10Paであり、電離放射線照射後の32℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上であることがより好ましく、電離放射線照射前の32℃における貯蔵弾性率が、5.0×10〜1.0×10Paであり、電離放射線照射後の32℃における貯蔵弾性率が、1.0×10〜1.0×10Paであるのがさらに好ましく、電離放射線照射前の32℃における貯蔵弾性率が、5.0×10〜1.0×10Paであり、電離放射線照射後の32℃における貯蔵弾性率が、1.0×10〜1.0×10Paであるのが特に好ましい。
【0051】
電離放射線を照射する前の32℃における貯蔵弾性率が、5.0×10Pa以下だと液だれが生じる等取り扱い性に劣り、5.0×10Pa以上だと皮膚の凹凸への追従性に劣る。また、電離放射線を照射した後の貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満だと硬化が十分とはいえず、形状を長時間保持することができない。
【0052】
貯蔵弾性率(Pa)は、JIS K7244に準拠して、貯蔵弾性率測定装置を用いて測定することができる。
【0053】
上記のような貯蔵弾性率を有する皮膚形状転写剤は、皮膚表面への貼着時(電離放射線照射前)においては、皮膚への追従性、皮膚との密着性に優れ、硬化後(電離放射線照射後)は、皮膚からの離型性に優れる。よって、皮膚表面の角質剥離量が少なく(非侵襲的に)、再現性よく確実かつ簡便に、皮膚表面の形状を転写することができる。また、転写後の形状保持性にも優れる。
【0054】
本発明の皮膚形状転写剤の貯蔵弾性率は、用いる(a)アクリル系重合体、(b)オリゴマー等、(c)光重合開始剤、その他の成分の種類、使用量、及び、電離放射線の種類、照射時間等の照射条件を適宜選定することにより、上記のような値に調整することができる。
【0055】
本発明において用いる電離放射線としては、紫外線、近紫外線、可視光線等が挙げられる。なかでも、皮膚に損傷を与えない観点から、240〜600nmの波長を有する光線が好ましい。
【0056】
2)皮膚形状転写シート
本発明の皮膚形状転写シートは、基材シートの一方の面に、本発明の皮膚形状転写剤から形成された形状転写層を有することを特徴とする。
用いる基材シートとしては、皮膚形状転写層を支持することができるものであって、電離放射線を透過するものであれば、特に制約はない。
【0057】
基材シートに要求される電離放射線透過性としては、前記(c)光重合開始剤が近紫外線領域(波長240nm以上380nm未満)に吸収を有する場合には、該近紫外線領域の波長範囲における電離放射線透過率の最小値が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
また、(c)光重合開始剤が可視光線領域(波長380nm以上780nm以下)に吸収を有する場合には、該可視光線領域の波長範囲における電離放射線透過率の最小値が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0058】
基材シートの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン;ポリウレタン、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー;等が挙げられる。
【0059】
また、本発明においては、基材シートとして、上記した材質からなる樹脂フィルムの積層体も用いることができる。
これらの中でも、電離放射線透過性に優れ、前記(c)光重合開始剤が反応する波長を吸収することがない、ポリオレフィン系フィルムが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
【0060】
基材シートの平均厚みは、特に限定されないが、通常5〜250μm、好ましくは10〜100μmである。
【0061】
基材シートに皮膚形状転写層を形成する方法としては、例えば、(I)基材シートの一方の面上に、前記皮膚形状転写剤を均一に塗布し、得られた塗膜を加熱乾燥させる方法、(II)離型シートの離型面に、前記皮膚形状転写剤を均一に塗布し、得られた塗膜を加熱乾燥させて形状転写層を形成し、形成された形状転写層側を基材シート上にラミネートし、後に離型シートを剥離する方法等が挙げられる。
【0062】
これらの中でも、本発明においては(II)の方法が好ましい。離型シートは、皮膚形状転写シート使用時に剥がせばよく、使用時まで保護シートとしての役目を有するため、保存、運搬する際に有益である。
【0063】
(II)の方法において用いる離型シートの材質としては、前記基材シートの材質として例示したのと同様のものが挙げられ、必要に応じてシリコーン樹脂等により離型処理が施された離型シートを使用してもよい。
【0064】
皮膚形状転写剤の塗布は、既存の塗工装置を用いて行うことができる。塗工装置としては、グラビアコーター、マイヤーバーコーター、アプリケーター、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、スクリーンコーター等が挙げられる。
【0065】
皮膚形状転写剤の塗膜を加熱乾燥する温度は、通常60℃〜130℃程度である。
形成される皮膚形状転写層の平均厚みは、効率よく確実に皮膚の形状を転写できる観点から、通常10〜100μm、好ましくは30〜50μmである。
【0066】
シートの形、大きさは、特に制約はなく、用途に合わせて決定すればよく、例えば、四角状物である場合、大きさは、通常20×20mm以内の大きさである。
【0067】
本発明の皮膚形状転写シートによれば、皮膚から剥がす際において、皮膚からの角質剥離量が少なく、非侵襲的に皮膚の形状を転写することができる。また、皮膚の形状への追従性、密着性に優れるため、得られる転写体は皮膚の形状に忠実で(形状転写性に優れ)、転写後も形状保持性に優れる。
【0068】
本発明の皮膚形状転写シートが形状転写性に優れることは、例えば、皮膚形状転写シートを、アルミシートに貼付し、その後、紫外線を照射して硬化した後、皮膚形状転写シートをアルミシートから剥離する。皮膚形状転写シートの算術平均粗さ(Ra(サンプル))と、アルミシートの算術平均粗さ(Ra(アルミシート))を測定し、下記式により転写率を算出し、その値が大きいことから確認することができる。
本発明の皮膚形状転写シートの転写率は、通常80%以上である。
算術平均粗さ(Ra)は、例えば、広視野コンフォーカル顕微鏡(倍率100倍)で測定することができる。
【0069】
【数1】

【0070】
本発明の皮膚形状転写シートが非侵襲的であることは、例えば、タンパク質定量法(Lowry法)に準拠し、皮膚表面に貼着し、硬化させた後、該転写シートを皮膚から剥がしたときの角質剥離層の破壊度合いが低い(すなわち、角質剥離量が少ない)ことから確認することができる。
【0071】
本発明の皮膚形状転写シートが、転写した形状の保持性に優れることは、例えば、前記のように形状転写性を測定したサンプルを室温で放置し、1週間後に再度同じ試験を行い算術平均粗さ(Ra)を測定し、下記式により変化率を算出し、その値が小さいことから確認することができる。
本発明の皮膚形状転写シートの変化率は、通常10%未満である。
【0072】
【数2】

【0073】
3)皮膚形状転写方法
本発明の皮膚形状転写方法は、本発明の皮膚形状転写シートの形状転写層側を皮膚表面に貼着する工程(1)、貼着した皮膚形状転写シートに電離放射線を照射する工程(2)、及び、前記皮膚形状転写シートを前記皮膚から剥がす工程(3)を有することを特徴とする。本発明の皮膚形状転写方法によれば、分析調査対象の皮膚表面の忠実な転写体を、非侵襲的に、再現性よく確実かつ簡便に作製することができる。
【0074】
〔工程(1)〕
まず、本発明の皮膚形状転写シートの形状転写層側を、転写体を作製すべき皮膚表面上に貼着する。
本発明の皮膚形状転写シートは、形状転写層に本発明の皮膚形状転写剤を用いて得られたものであるため、皮膚の形状に対し追従性、密着性に優れる。よって、隙間ができたりすることなくぴったりと皮膚に均一に貼着することができる。また、シート状であるため、貼着が容易である。
【0075】
〔工程(2)〕
次に、貼着した皮膚形状転写シートに電離放射線を照射する。
用いる電離放射線としては、紫外線、近紫外線、可視光線等が挙げられる。なかでも、皮膚に損傷を与えない観点から、240〜600nmの波長を有する光線が好ましい。
【0076】
照射時間、照度、光量等の照射条件は、用いた(a)アクリル系重合体、(b)オリゴマー等、(c)光重合開始剤等の種類等に合わせ、皮膚形状転写シートの形状転写層が硬化して、貯蔵弾性率が好ましい値のものとなるように、適宜選択し決定すればよい。
【0077】
〔工程(3)〕
電離放射線照射後は、硬化した皮膚形状転写シートを皮膚から剥がすことにより、皮膚の転写体を作製することができる。
【0078】
本発明の皮膚形状転写シートは、形状転写層が本発明の皮膚形状転写剤から得られたものであるため、剥がしやすく、角質剥離量が少なく(非侵襲的に)、しかも皮膚表面の形状に忠実な転写体を簡便に作製することができる。また、一度転写した形状は、長期間保持される。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
n−ブチルアクリレート(BA)と2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)とのモル比、(BA):(2HEA)=99:1からなるモノマー混合物を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の存在下、ランダム共重合させて得られたアクリル系重合体(BA/2HEAランダム共重合体)の酢酸エチル溶液(固形分:15質量%)を調製した。
得られたBA/2HEAランダム共重合体の質量平均分子量(Mw)は、100万であった。
【0081】
次いで、上記で得たアクリル系重合体の酢酸エチル溶液に、アクリル系重合体100質量部に対して、重合性不飽和基を有するオリゴマーとして多官能アクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製、商品名「シコウUV−5806」)27質量部、及び、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・ジャパン社製、商品名「IRGACURE651」)0.729質量部を添加し混合した。さらに、熱硬化剤としてトリレンジイソシアネート(TDI)系化合物(総研化学社製、商品名「コウカザイ TD−75」)0.03質量部を添加、混合して、皮膚形状転写剤1を得た。
【0082】
次に、離型シートとしてポリエチレンテレフタラート(PET)製リリースライナー(リンテック社製、商品名「SP−PET3811」)を用意し、その離型面に、上記皮膚形状転写剤1を乾燥後の平均厚さが30μmとなるように、アプリケーターで塗布した後、得られた塗膜を90℃で加熱乾燥し、形状転写層付離型シートを得た。
【0083】
その後、基材シートとして平均厚み:40μmのポリプロピレン(PP)フィルム(王子特殊紙社製、商品名「アルファンPP40」)を、上記で得た形状転写層付離型シートの形状転写層側にラミネートして、離型シート付きの皮膚形状転写シート1を得た。
なお、用いた基材シートの近紫外線領域(波長240nm以上380nm未満)における光線透過率の最小値は81.2%であった。測定は、紫外・可視分光光度計(島津製作所社製、装置名「UV−3600」)を用いて行った。
【0084】
(実施例2、3)
実施例1において、アクリル系重合体に添加する重合性不飽和基を有するオリゴマー及び光重合開始剤の配合量を、下記第1表に示す量とした以外は、実施例1と同様にして皮膚形状転写シート2、3を製造した。
【0085】
(比較例1)
市販の硬化型シリコーン樹脂からなるレプリカ剤(Flexico社製、商品名「SILFLO」)を、レプリカ剤1rとした。
【0086】
(比較例2)
実施例1において、重合性不飽和基を有するオリゴマー及び光重合開始剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして皮膚形状転写シート2rを製造した。
【0087】
(比較例3)
実施例1において、n−ブチルアクリレートの代わりに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を用いた以外は、実施例2と同様にして皮膚形状転写シート3rを製造した。
【0088】
【表1】

【0089】
実施例1〜3、比較例2、3で得られた皮膚形状転写シート1〜3、2r、3r、比較例1のレプリカ剤1rにつき、以下のようにして、非角質剥離性試験、形状転写性試験、及び形状保持性試験を行った。試験を行うに際し、皮膚形状転写シート、レプリカ剤としては、15×15mmの大きさのサンプルを用いた。
また、紫外線照射前後の32℃における貯蔵弾性率を測定した。その結果を下記第2表に示す。なお、貯蔵弾性率(Pa)は、JIS K7244に準拠して、貯蔵弾性率測定装置(Dynamic analyzer RDAII、Rheometrics社製)を用いて測定した。
【0090】
〈非角質剥離性試験〉
タンパク質定量法(Lowry法)に準拠する以下の方法で、皮膚形状転写シート及びレプリカ剤を肌から除去した後の皮膚のバリア層の破壊度合いを測定した。
まず、実施例1〜3及び比較例2、3の皮膚形状転写シート1〜3、2r、3r、並びにコントロールとして角質細胞サンプリング用D−Squameテープ(CuDerm社製)を、ブタ皮膚(ユカタンマイクロピッグ(YMPスキンキット)、日本チャールズ・リバー社より購入)に5分間貼着した。その後、紫外線(光源:フュージョン製Hバルブ)を、フィルム側から、照度:400W/cm、光量:400mJ/cmの照射条件で5秒間照射した後、皮膚形状転写シート及びコントロールのD−Squameテープを剥がした。
【0091】
また、比較例1のレプリカ剤1rを、ブタ皮膚(ユカタンマイクロピッグ(YMPスキンキット)、日本チャールズ・リバー社より購入)に塗布し、5分間保持した。その後、硬化したレプリカ剤を剥離した。
【0092】
皮膚から剥離した実施例1〜3及び比較例2、3の皮膚形状転写シート、比較例1のレプリカ剤、及びコントロールのD−Squameテープを規定のサイズに打ち抜き、DCプロテインアッセイキット(バイオラッドラボラトリーズ社製)にて角質剥離量を測定した。コントロールのD−Squameテープの角質剥離量をDとしたとき、各サンプルの角質剥離量が、Dの80%以上である場合を×、Dの50%から80%未満である場合を△、Dの30%から50%未満である場合を○、Dの30%未満である場合を◎と評価した。その結果を下記第2表に示す。
【0093】
〈形状転写性試験〉
形状転写性を以下の方法で比較した。
実施例1〜3及び比較例2、3の皮膚形状転写シート1〜3、2r、3rを、算術平均粗さ(Ra)=34.5μmであるアルミシートに貼付した。その後、紫外線(光源:フュージョン製Hバルブ)を、フィルム側から、照度:400mW/cm、光量:400mJ/cmの照射条件で5秒間照射した後、皮膚形状転写シートをアルミシートから剥がした。
【0094】
また、比較例1のレプリカ剤1rを、算術平均粗さ(Ra)=34.5μmであるアルミシートに塗布し、5分間保持した。その後、硬化したレプリカ剤をアルミシートから剥がした。
アルミシートから剥がした皮膚形状転写シート及びレプリカ剤の表面粗さ(Ra(サンプル))、及びアルミシートの表面粗さ(Ra(アルミシート))を測定し、下記式により転写率を算出し、下記に示す基準で評価した。その結果を下記第2表に示す。
なお、算術平均粗さ(Ra)は広視野コンフォーカル顕微鏡(HD100D、レーザーテック社製)で測定した(倍率100倍)。
【0095】
【数3】

【0096】
◎:転写率80%以上
○:転写率60%以上80%未満
△:転写率40%以上60%未満
×:転写率40%未満
【0097】
〈形状保持性試験〉
一度転写した形状の保持性を以下の方法で確認した。
形状転写性試験を実施したサンプルを室温で一週間放置した後、再度同じ試験を行い算術平均粗さ(Ra)を測定し、下記式により変化率を算出し、下記に示す基準で評価した。その結果を下記第2表に示す。
【0098】
【数4】

【0099】
◎:変化率10%未満
○:変化率10%以上25%未満
△:変化率25%以上50%未満
×:変化率50%以上
【0100】
【表2】

【0101】
第2表から、実施例1〜3の皮膚形状転写シート1〜3は、比較例1〜3の皮膚形状転写シート及びレプリカ剤に比して、非角質剥離性、形状転写性、形状保持性のすべてに優れることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステル又はメタクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステルを少なくとも含むモノマーを重合して得られるアクリル系重合体、重合性不飽和基を有するモノマー又はオリゴマー、及び光重合開始剤を含有することを特徴とする皮膚形状転写剤。
【請求項2】
電離放射線を照射した後の32℃における貯蔵弾性率が、電離放射線を照射する前の32℃における貯蔵弾性率より高いことを特徴とする請求項1に記載の皮膚形状転写剤。
【請求項3】
電離放射線照射前の32℃における貯蔵弾性率が、5.0×10〜5.0×10Paであり、電離放射線照射後の32℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚形状転写剤。
【請求項4】
皮膚形状転写剤の固形分全体に対して、アクリル系重合体を74〜95質量%、重合性不飽和基を有するモノマー又はオリゴマーを4〜25質量%、光重合開始剤を0.01〜1質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚形状転写剤。
【請求項5】
アクリル系重合体が、アクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステル又はメタクリル酸の炭素数2〜5アルキルエステル、及び、活性水素を有する官能基を含むモノマーを重合して得られるものであり、かつ、前記官能基と反応性を有する熱硬化剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚形状転写剤。
【請求項6】
基材シートの一方の面に、請求項1〜5のいずれかに記載の皮膚形状転写剤から形成された形状転写層を有することを特徴とする皮膚形状転写シート。
【請求項7】
請求項6に記載された皮膚形状転写シートの形状転写層側を皮膚表面に貼着する工程と、前記貼着した皮膚形状転写シートに電離放射線を照射する工程と、前記皮膚形状転写シートを前記皮膚から剥がす工程とを有することを特徴とする皮膚形状転写方法。

【公開番号】特開2011−239853(P2011−239853A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112817(P2010−112817)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】