説明

皮膜部の除去方法

【課題】汚水などを含む残留物が発生しないのみならず、簡易迅速に皮膜部を除去しうる皮膜部の除去方法の提供、さらに除去性に優れるとともに残留物の処理が容易な皮膜部の除去方法の提供を課題とする。
【解決手段】
溶剤の施された樹脂ワックスなどからなる皮膜部1において、溶剤により溶解、軟化しかつ粘着性を帯びた皮膜部に対して有機および/または無機の粉体3を施し、回転ブラシ、刷毛、パッドなどの当接体5により粉体3と共に皮膜部1を摺擦して粉体3を皮膜部1に付着および/または混入し、皮膜部1における粘着性を排除する一方、粉体3を含む皮膜部1を粘着性のない小片7に破砕および/または粉砕し、床9面などの固着面10から除去する。また皮膜部1における粘着性を排除する一方、粉体3により増量する皮膜部1を脆弱化し、粉体3を含む皮膜部1を粘着性のない小片7に破砕および/または粉砕し、床9などの固着面10から除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床面の樹脂ワックス皮膜部などの皮膜部の除去方法にかんする。
【背景技術】
【0002】
床面に塗布された樹脂ワックスなどの皮膜部を除去する方法として、従来、湿式除去方法が広く実施されている。湿式除去方法では水を含む洗浄剤組成物(水で希釈された洗浄剤組成物を含む)を皮膜部に塗布し、回転ブラシなどで摺接しながら洗浄し、床面から皮膜部を除去する。すなわち、湿式除去方法は皮膜部に対する「洗浄」を基本とした除去方法であり、この方法によるときは硬化度の大きい皮膜部や厚みの大きな皮膜部の除去に相当な手間と時間を要する。また洗浄の際に発生する汚水などを含む残留物の処理が困難であり、さらに作業環境や衛生環境の観点からも問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−143251
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、湿式除去方式と異なる除去方法を採用したものであり、汚水などを含む残留物が発生しないのみならず、簡易迅速に皮膜部を除去しうる皮膜部の除去方法を提供する。さらに除去性に優れるとともに残留物の処理が容易な皮膜部の除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明にかかる皮膜部の除去方法は、次のような手段を採用する。すなわち溶剤の施された樹脂ワックスなどからなる皮膜部において、溶剤により溶解、軟化しかつ粘着性を帯びた皮膜部に対して有機および/または無機の粉体を施し、回転ブラシ、刷毛、パッドなどの当接体により粉体と共に皮膜部を摺擦して粉体を皮膜部に付着および/または混入し、皮膜部における粘着性を排除するとともに粉体を含む皮膜部を粘着性のない小片に破砕および/または粉砕し、床面などの固着面から除去する。
【0006】
また溶剤を施された樹脂ワックス、接着剤などからなる皮膜部において、溶剤により溶解、軟化しかつ粘着性を帯びた皮膜部に対して有機および/または無機の粉体を施し、回転ブラシ、刷毛、パッドなどの当接体により粉体と共に皮膜部を摺擦して増量剤である粉体を皮膜部に付着および/または混入し、皮膜部における粘着性を排除する一方、粉体により増量する皮膜部を脆弱化し、粉体を含む皮膜部を粘着性のない小片に破砕および/または粉砕し、床面などの固着面から除去する。
【0007】
本発明にかかる皮膜部の除去方法は、従来の湿式除去方法と異なり、溶剤は水を含まず(溶剤を水で希釈することもない)、また皮膜部の除去の際に水を使用することもない。すなわち除去の対象物(皮膜部)に溶剤を施し、皮膜部を溶解し軟化させる。そして溶解し軟化した皮膜部を回転ブラシなどの当接体で摺擦し、これにより皮膜部を小片に粉砕、破砕するとともに床面などの固着面から除去する。この場合、溶剤により溶解、軟化した皮膜部が粘着性を帯びることがあるが、粘着性を帯びた皮膜部を摺擦という手段で粉砕、破砕することは不可能である。このような不都合を解消するため、本発明では、粘着性を帯びた皮膜部に対して粉体を混入し皮膜部の粘着性を排除する一方、粘着性が排除されて軟化した皮膜部を当接体で摺擦することにより皮膜部を小片に粉砕あるいは破砕し、床面のなどの固着面から除去する。
【0008】
また皮膜部の粘着性を排除する粉体は増量剤としての機能も有するから、粘着性を帯びた皮膜部に対して増量剤である粉体を混入することにより皮膜部から粘着性を排除する一方、粉体により増量する皮膜部を脆弱化する。そして粘着性が排除されて脆弱化した皮膜部を当接体で摺擦することにより皮膜部を小片に粉砕あるいは破砕し、床面のなどの固着面がら除去する。いずれの場合も当接体による皮膜部の摺擦という同一手段により、粉体の皮膜部への混入とそれに伴う粘着性の排除と、皮膜部の破砕、粉砕による皮膜部の除去とを連続しておこなうことができる。
【効果】
【0009】
本発明の皮膜部の除去方法によれば、粉体の含有により粘着性を帯びた皮膜部から粘着性が排除され、当接体の摺擦による皮膜部の除去が可能となる。同様に粉体の含有により皮膜部が脆弱化し、当接体の摺擦による皮膜部の除去が容易になる。皮膜部の除去後に生じる残留物は汚水を含まないから残留物の処理が容易である。皮膜部を小片に粉砕、破砕する際に小片が周囲に飛散せず作業環境は良好であり、残留物の処理の容易性とも相まって環境汚染の防止上も有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
皮膜部1は、水性ポリマータイプなどの樹脂ワックス皮膜層であり、床9(フローリング、石床、リノリウム、プラスチックタイルなど)の表面である固着面10に形成されている。また壁紙、プラスチックタイル、カーペットなどの貼付用の接着剤を施した接着層などである。皮膜部1に対しては溶剤2を施す。例えば、溶剤2を含むモップ6を用いて皮膜部1に溶剤2を塗布し(図2参照)、表面側から溶剤を吹き付け(図示せず)などするが、皮膜部1に溶剤2を施す手段およびこれに使用器具に限定はない。溶剤2の施された皮膜部1は溶剤により溶解し軟化する(図3以下参照)。ここで溶剤とは皮膜部(具体的には皮膜部の構成素材)に対して溶解性を有するものである。例えば、炭化水素系溶剤、炭化水素系テルペン類、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤などの有機溶剤である。溶解性を有するものであればよく、その種類を問わない。またこれら溶剤の2以上の組み合わせでもよい。溶剤は皮膜部の種類、硬化度、厚みなどの条件により適宜に選択する。水性ポリマータイプなど樹脂ワックス皮膜層の皮膜部の場合は溶解性に優れた有機溶剤が好ましい。
【0011】
除去の対象物となる皮膜部1は通常、硬化している。床面に形成された樹脂ワックスの皮膜部1は厚み、硬化度がかなり大きい。しかし未硬化の皮膜部も除去の対象物となり、例えば、接着剤を塗布した直後の高い粘着性をもつ接着部も対象物となる。皮膜部に施す溶剤の量は皮膜部の種類、硬化度、厚みなどの条件により適宜に選択されるが、通常、皮膜部の全体あるいはほぼ全体に溶剤が浸透するように施す。なお一度の塗布により溶剤の浸透が充分でないときは、複数回に分けて塗布してもよい。
【0012】
皮膜部1に溶剤を施すと皮膜部が溶解し軟化する。また溶解、軟化の段階で溶剤の皮膜部1への浸透、皮膜部1の膨潤などが生じる。溶剤により溶解し軟化した皮膜部は機械的な力により分離しやすくなる。そこで回転ブラシ、刷毛、パッドなどの当接体で皮膜部をその表面から摺擦すると、摺擦の際に加えられる力で皮膜部が小片に破砕あるいは粉砕される。しかし皮膜部が溶解し軟化する場合、溶解した皮膜部が「粘ばついた」り、「べとついた」りすることがある(以下、これを「粘着性を帯びる」という)。粘着性の程度は溶剤の種類などにより異なるが、非揮発性の溶剤を用いた場合に粘着性が発生しやすい。粘着性を帯びた皮膜部に対しては当接体(回転ブラシなど)の摺接により粉砕、破砕することが著しく困難かあるいは不可能である。また粘着性を帯びた皮膜部に当接体(回転ブラシなど)が接触すると、粘着性を帯びた部分が当接体に付着あるいは固着し、ブラシの場合は使用不能となり、またパッドの場合も目づまりを生じ同様に使用不能となる。
【0013】
本発明おける除去方法においてはこのような不都合を解消する。すなわち粘着性を帯び摺接による分離(破砕、粉砕による分離)が不可能な皮膜部に対して、粉体3を施す一方、粉体3と共に皮膜部1を摺擦して粉体3を皮膜部1に付着および/または混入し、皮膜部における粘着性を排除する。皮膜部1における粘着性の排除は主に混入された粉体3の吸着作用による。粉体3の含有により粘着性が排除された皮膜部1をさらに摺擦すると、皮膜部1は小片7となって粉砕あるいは破砕され、床9などの固着面10から除去される。
【0014】
まず粘着性を帯びた皮膜部1に対して粉体3を施す。粉体を施す具体的な手段に制限はない。例えば、皮膜部1の表面に散布しあるいは圧搾空気とともに吹き付けてもよい(図示せず)。粉体3は皮膜部1の表面全体にほぼ均一となるように施す(図4参照)が、小さく盛り上がる粉体5を皮膜部1の表面に部分的に施してもよい(図5参照)。皮膜部1に施された粉体3は皮膜部の表面に接触する部分が粘着性により皮膜部1に付着する。そして粉体3の施された皮膜部1を回転ブラシ、刷毛、パッドなどの当接体5で摺擦する。すなわち粉体3と共に皮膜部1を当接体5で摺擦すると、表面に付着した粉体3あるいは未付着の粉体3が皮膜部1内部に押し込まれるように混入され、皮膜部1は表面および/または内部に粉体3を有する状態となる(図6、7参照)。粉体3を含有する皮膜部1においては溶剤2が粉体3に吸着され、皮膜部1の粘着性が排除される。なお粉体3と共に皮膜部1を摺擦するから、摺擦の際に回転ブラシなど(当接体5)に皮膜部が付着することはない。
【0015】
粉体は有機および/または無機の粉体であり、特に制限はない。無機の粉体としては炭酸カルシュウム、タルク、ゼオライトなどがあり、有機の粉体としてはセルローズ、パルプ、などがある。またこれらの2以上の組み合わせでもよい。粉体は皮膜部の粘着性を排除するものであり、皮膜部に対する研磨機能を付与するものではない。また粉体は増量剤としても機能する。
【0016】
皮膜部の粘着性を排除するために施す粉体の量は粘着性の程度に応じて適宜に調整する。すなわち粘着性(「粘つき」や「べとつき」)がなくなる程度に加えればよい。具体的には、例えば、当接体を皮膜部に直接に接触させたとき、当接体(回転ブラシ、パッドなど)に皮膜部(の一部分)が付着、固着しないような状態である。粉体3は皮膜部1の内部にほぼ均一に分布するように混入するのが好ましいが、多少の偏在があっても支障はない(図7参照)。当接体(回転ブラシ、パッドなど)5は弾性状に当接しながら皮膜部を摺擦するから、粉体の皮膜部への混入が容易であるだけでなく、粉体は皮膜部の内部にほぼ均一状態で分布するように混入される。
【0017】
粉体3の含有により粘着性が排除され軟化した皮膜部1をさらに当接体5(回転ブラシ、刷毛、パッドなど)により摺擦すると、皮膜部1は小片7へと容易に破砕あるいは粉砕され、床9などの固着面10から除去することができる。ここで小片とは粉状のもの、粒状のもの、紐状のものなど、その大きさ、形状、形態は一様でないが、皮膜部(全体)より小さいものである。前記のように、当接体5の摺擦により、粉体3の皮膜部1への混入と皮膜部の粘着性の排除が行われるが、同じく当接体の摺擦により、粘着性の排除された皮膜部の粉砕、破砕がなされる。すなわち前者のステップ(粉体の混入と粘着性の排除)と、後者のステップ(皮膜部の粉砕、破砕)は、当接体5で皮膜部1を摺擦するという同一の手段により連続的に行うことができるから、皮膜部の除去作業は簡易、迅速となる。
【0018】
また粉体の混入は皮膜部における粘着性の排除と同時に、一定の度合いでの皮膜部1の脆弱化をもたらす。すなわち粉体は増量剤としての機能も有するから、粉体の混入により皮膜部が全体的あるいは部分的に増量状態となり脆い組織となる。このように脆弱化した皮膜部は機械的な力により分離しやすく、当接体5の摺擦により簡易、迅速に粉砕あるいは破砕される。すなわち皮膜部の除去性はさらに向上し、皮膜部の一部が固着面に残留するようなこともない。混入する粉体の量については、皮膜部の粘着性を排除するに足る量を超えてさらに粉体を混入し、皮膜部の脆弱性を大きくすることができる。粘着性を帯びた皮膜部が粉体を受容できる範囲内、つまり混入された粉体が皮膜部に一体化して含有されるかぎりにおいて、粉体の量を任意に選択できる。
【0019】
皮膜部1は小片7に破砕および/または粉砕されるが、粉体は皮膜部に一体化して含有されているから、破砕、粉砕の際に皮膜部に含有される粉体が周囲へと飛散することはない。また破砕、粉砕された小片も同様に粉体の含有により粘着性が排除されており、固着面から除去され小片が互いに付着したり床面などに付着するというような弊害もない。また小片などの残留物が汚水を含まないことも相まって残留物の一括処理や扱いがきわめて容易である。
【産業上の利用分野】
【0020】
溶剤、粉体の製造にかんする産業分野をはじめ、建築物の内装、外装、清掃にかんする産業分野などにおける利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 本発明にかかる皮膜部の除去方法の工程であり、その工程のうちのまず床面などの固着面に固着された皮膜部を示す説明図である。
【図2】 皮膜部に溶剤を塗布する状態を示す説明図である。
【図3】 溶剤の塗布後、皮膜部に溶剤が浸透する状態を示す説明図である
【図4】 溶剤が皮膜部にほぼ浸透した後皮膜部の表面に粉体をほぼ均一に配した状態を示す説明図である。
【図5】 溶剤が皮膜部にほぼ浸透した後、皮膜部の表面に盛り上げた粉体を4箇所に配した状態を示す説明図である。
【図6】 溶剤が皮膜部に浸透した後、ブラシで粉体と共に皮膜部を摺擦するとともに、粉体を皮膜部に混入する状態を示す説明図である。
【図7】 摺擦により粉体が皮膜部に混入された状態を示す説明図である。
【図8】 粉体を含有する皮膜部をブラシで摺擦し、皮膜部を小片に破砕する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 皮膜部
2 溶剤
3 粉体
5 モップ
6 当接体
7 小片
10 固着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤の施された樹脂ワックスなどからなる皮膜部において、溶剤により溶解、軟化しかつ粘着性を帯びた皮膜部に対して有機および/または無機の粉体を施し、回転ブラシ、刷毛、パッドなどの当接体により粉体と共に皮膜部を摺擦して粉体を皮膜部に付着および/または混入し、皮膜部における粘着性を排除する一方、粉体を含む皮膜部を粘着性のない小片に破砕および/または粉砕し、床面などの固着面から除去する皮膜部の除去方法。
【請求項2】
溶剤の施された樹脂ワックスなどからなる皮膜部において、溶剤により溶解、軟化しかつ粘着性を帯びた皮膜部に対して有機および/または無機の粉体を施し、回転ブラシ、刷毛、パッドなどの当接体により粉体と共に皮膜部を摺擦して粉体を皮膜部に付着および/または混入し、皮膜部における粘着性を排除する一方、さらに摺擦を連続して粉体を含む皮膜部を粘着性のない小片に破砕および/または粉砕し、床面などの固着面から除去する皮膜部の除去方法。
【請求項3】
溶剤を施された樹脂ワックス、接着剤などからなる皮膜部において、溶剤により溶解、軟化しかつ粘着性を帯びた皮膜部に対して有機および/または無機の粉体を施し、回転ブラシ、刷毛、パッドなどの当接体により粉体と共に皮膜部を摺擦して増量剤である粉体を皮膜部に付着および/または混入し皮膜部における粘着性を排除する一方、粉体により増量する皮膜部を脆弱化し、粉体を含む皮膜部を粘着性のない小片に破砕および/または粉砕し、床面などの固着面から除去する皮膜部の除去方法。
【請求項4】
溶剤を施された樹脂ワックス、接着剤などからなる皮膜部において、溶剤により溶解、軟化しかつ粘着性を帯びた皮膜部に対して有機および/または無機の粉体を施し、回転ブラシ、刷毛、パッドなどの当接体により粉体と共に皮膜部を摺擦して増量剤である粉体を皮膜部に付着および/または混入し、皮膜部における粘着性を排除する一方、粉体により増量する皮膜部を脆弱化し、さらに摺擦を連続して粉体を含む皮膜部を粘着性のない小片に破砕および/または粉砕し、床面などの固着面から除去する皮膜部の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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