説明

盗難抑止システムおよび輸送機器

【課題】ユーザによる煩雑な操作を必要とすることなく迅速にユーザ認証を行うことができる盗難抑止システムおよびそれを備えた輸送機器を提供する。
【解決手段】発信装置1は、ユーザにより携帯可能な携帯部材10、トランスポンダ11および磁石15を含む。磁石15は携帯部材10に設けられる。認証装置2は、CPU21、ホールIC22、充電発振素子23およびLFアンテナ24を含む。この認証装置2は、自動二輪車100に設けられる。ユーザが携帯部材10を認証装置2のホールIC22に近づけると、磁石15による磁力がホールIC22により検出される。それにより、CPU21により充電発振素子23に電力が供給され、LFアンテナ24から電波が発信される。トランスポンダ11により電波が受信されると、トランスポンダ11によりIDコードが発信される。LFアンテナ24によりIDコードが受信されると、CPU21によりIDコードに基づいて認証動作が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送機器の盗難を抑止する盗難抑止システムおよびそれを備えた輸送機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが正規ID(識別子)の所有者であるか否かのユーザ認証を行うことにより車両の盗難を抑止する種々の盗難抑止システムが開発されている。
【0003】
盗難抑止システムは、例えば、ユーザが携行可能なトランスポンダ(無線式IDタグ)、および車両に設けられるID照合装置を備える。トランスポンダからID照合装置へは、低い周波数(例えば134kHz)の電波を用いたLF(低周波)通信によりIDコードが送信される。LF通信の範囲は狭く、数cm程度である。そのため、通常、トランスポンダはキーに設けられる。
【0004】
ユーザがキーを鍵穴に差し込んで回すことによりメインスイッチをオン状態にすると、ID照合装置が電波を発信する。トランスポンダは、電波を受けると、IDコードをID照合装置に送信する。ID照合装置は、受信したIDコードを正規IDと照合する。受信したIDコードが正規IDに一致しない場合には、エンジンの始動ができない。
【0005】
特許文献1に記載された無断運転防止装置では、車両のエンジンの始動により発電機の電圧が上昇すると、ID照合装置が動作する。それにより、ID照合装置から質問電波が発信される。トランスポンダは、質問電波を受けると、IDコードをID照合装置に送信する。ID照合装置により受信されたIDコードが正規IDに一致しない場合にはエンジンが停止される。
【0006】
上記のように、ID照合装置が認証動作を開始するためには、キーを鍵穴に差し込んで回すか、またはエンジンを始動させるという面倒な操作が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−18753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ユーザによる煩雑な操作を必要とすることなく迅速にユーザ認証を行うことができる盗難抑止システムおよびそれを備えた輸送機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る盗難抑止システムは、輸送機器の盗難を抑止するための盗難抑止システムであって、輸送機器に設けられる認証装置と、ユーザが携帯可能な携帯部材と、携帯部材に設けられる磁石と、トランスポンダとを含み、認証装置は、磁石による磁力を検出する磁力検出器と、磁力検出器により磁力が検出されたときに電波を発信する発振器と、識別情報認証部とを含み、トランスポンダは、認証装置の発振器から発信される電波を受信して識別情報を発信し、識別情報認証部は、トランスポンダにより発信された識別情報に基づいて認証動作を行うものである。
【0010】
その盗難抑止システムにおいては、認証装置が輸送機器に設けられ、携帯部材がユーザにより携帯される。携帯部材には磁石が設けられる。ユーザが携帯部材を認証装置の磁力検出器に近づけると、磁石による磁力が磁力検出器により検出される。それにより、発振器により電波が発信される。トランスポンダにより電波が受信されると、トランスポンダにより識別情報が発信される。トランスポンダにより発信された識別情報に基づいて識別情報認証部により認証動作が行われる。
【0011】
このように、ユーザが携帯部材に設けられた磁石を輸送機器に設けられた認証装置の磁気検出器に近づけることにより、認証装置による認証動作が行われる。したがって、ユーザによる煩雑な操作を必要とすることなく迅速にユーザ認証を行うことができる。また、携帯部材に電源を設ける必要ないので、携帯部材の重量が大きくならない。その結果、ユーザの負担を軽減しつつ輸送機器の盗難を抑止することができる。
【0012】
(2)磁力検出器は、ホール素子を含んでもよい。この場合、ホール素子の出力電圧の変化に基づいて磁石が近づいたことを容易に検出することができる。
【0013】
(3)磁力検出器は、磁気抵抗素子を含んでもよい。この場合、磁気抵抗素子の抵抗の変化に基づいて磁石が近づいたことを容易に検出することができる。
【0014】
(4)トランスポンダは携帯部材に設けられ、認証装置の発振器は、発振素子と、発振素子の出力を電波として放射するアンテナとを含み、磁石による磁力が磁力検出器により検出される状態でアンテナとトランスポンダとの間で電波および識別情報の通信が可能となるようにアンテナが輸送機器に配置されてもよい。
【0015】
この場合、ユーザが携帯部材を認証装置の磁力検出器に近づけると、認証装置のアンテナと携帯部材に設けられるトランスポンダとの間で電波および識別情報の通信が可能となる。そのため、磁石による磁力が磁力検出器により検出されると、発振素子の出力が電波としてアンテナから放射される。トランスポンダにより電波が受信されると、トランスポンダにより識別情報が発信される。そして、トランスポンダにより発信された識別情報に基づいて識別情報認証部により認証動作が行われる。
【0016】
このように、ユーザが携帯部材を認証装置の磁力検出器に近づけることにより、認証装置による認証動作が迅速に行われる。また、アンテナとトランスポンダとの間の距離が接近するので、アンテナとトランスポンダとの間で低周波通信により電波および識別情報の発信および受信が可能となる。したがって、認証装置における電力消費が低減される。
【0017】
(5)トランスポンダは、認証装置の発振器から発信される電波を受けるコイルと、コイルの誘導電流により充電されるコンデンサと、コンデンサに充電された電力により駆動され、識別情報を発信する識別情報発信部とを含んでもよい。
【0018】
この場合、トランスポンダのコイルが認証装置の発振器から発信される電波を受けると、コイルの誘導電流によりコンデンサが充電される。コンデンサに充電された電力により識別情報発信部が駆動され、識別情報が発信される。このように、トランスポンダが簡単な構成を有するので、トランスポンダを小型化および軽量化することができる。
【0019】
(6)認証装置は、輸送機器の電源部により駆動されてもよい。この場合、認証装置を動作させるために電源部を追加する必要がない。
【0020】
(7)携帯部材はユーザの身体に装着可能に構成され、磁力検出器は輸送機器を操作するための操作部に設けられてもよい。
【0021】
この場合、ユーザが輸送機器の操作部を操作する際に携帯部材の磁石が認証装置の磁力検出器に近づくので、ユーザは認証動作を開始させるために特別な操作を行う必要がない。それにより、ユーザの負担がさらに軽減される。
【0022】
(8)第2の発明に係る輸送機器は、本体部と、本体部を移動させる駆動部と、盗難を抑止する盗難抑止システムとを備え、盗難抑止システムは、輸送機器に設けられる認証装置と、ユーザが携帯可能な携帯部材と、携帯部材に設けられる磁石と、トランスポンダとを含み、認証装置は、磁石による磁力を検出する磁力検出器と、磁力検出器により磁力が検出されたときに電波を発信する発振器と、識別情報認証部とを含み、トランスポンダは、認証装置の発振器から発信される電波を受信して識別情報を発信し、識別情報認証部は、トランスポンダにより発信された識別情報に基づいて認証動作を行い、認証が成功しない場合に駆動部の動作を抑止するものである。
【0023】
その輸送機器においては、駆動部により本体部が移動する。また、盗難抑止システムが設けられる。
【0024】
その盗難抑止システムにおいては、認証装置が輸送機器に設けられ、携帯部材がユーザにより携帯される。携帯部材には磁石が設けられる。ユーザが携帯部材を認証装置の磁力検出器に近づけると、磁石による磁力が磁力検出器により検出される。それにより、発振器により電波が発信される。トランスポンダにより電波が受信されると、トランスポンダにより識別情報が発信される。トランスポンダにより発信された識別情報に基づいて識別情報認証部により認証動作が行われる。認証が成功しない場合には駆動部の動作が抑止される。
【0025】
このように、ユーザが携帯部材に設けられた磁石を輸送機器に設けられた認証装置の磁気検出器に近づけることにより、認証装置による認証動作が行われる。したがって、ユーザによる煩雑な操作を必要とすることなく迅速にユーザ認証を行うことができる。また、携帯部材に電源を設ける必要ないので、携帯部材の重量が大きくならない。その結果、ユーザの負担を軽減しつつ輸送機器の盗難を抑止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ユーザの負担を軽減しつつ輸送機器の盗難を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係る盗難抑止システムを備えた自動二輪車の側面図である。
【図2】図1の自動二輪車の一部の平面図である。
【図3】実施の形態に係る盗難抑止システムの発信装置および認証装置を示す概略図である。
【図4】実施の形態に係る盗難抑止システムの構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態に係る盗難抑止システムの認証装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、本発明に係る盗難抑止システムを輸送機器の一例として自動二輪車に適用した場合について説明する。
【0029】
(1)盗難抑止システムおよび自動二輪車の構成
図1は本発明の一実施の形態に係る盗難抑止システムを備えた自動二輪車の側面図、図2は図1の自動二輪車の一部の平面図である。図3は実施の形態に係る盗難抑止システムの発信装置および認証装置を示す概略図である。図4は実施の形態に係る盗難抑止システムの構成を示すブロック図である。
【0030】
図1に示す自動二輪車100は、車体フレームおよびフレームカバーからなる車体30を備える。車体30の前部にヘッドパイプ(図示せず)が設けられ、ヘッドパイプの上端にハンドル31が設けられる。ヘッドパイプの下端にフロントフォーク32が取り付けられる。この状態で、フロントフォーク32は、ヘッドパイプの軸心を中心として所定の角度範囲内で回転可能となっている。フロントフォーク32の下端に前輪33が回転可能に支持される。車体30の後部には後輪34が回転可能に支持される。車体30の中央部には、ECU(電子制御ユニット)60およびエンジン35が設けられる。エンジン35の回転力により後輪34が回転する。
【0031】
車体30の前端部にヘッドライト38が取り付けられ、車体30の後端部にテールライト39が取り付けられる。
【0032】
ハンドル31の中央部の下方には、スイッチングパネル50が設けられる。ハンドル31の下方における車体30の位置に開閉可能な蓋を有するフロントボックス53が設けられ、車体30の上部中央にシートカバー54が開閉可能に取り付けられる。シートカバー54の前方における車体30の位置にフューエルリッド55が設けられる。車体30の後部には、バッテリ51が内蔵される。
【0033】
図2に示すように、スイッチングパネル50に認証装置2が設けられ、認証装置2の両側にボックススイッチ61およびシートカバースイッチ62が設けられる。認証装置2の近傍にLED(発光ダイオード)56が設けられる。ハンドル31にはハンドルスイッチ31aが設けられる。ハンドルスイッチ31aには、スタータスイッチおよびその他のスイッチが設けられる。
【0034】
図3に示すように、盗難抑止システムは、発信装置1および認証装置2により構成される。
【0035】
発信装置1は、ユーザの腕に装着可能な携帯部材10、チップ状のトランスポンダ11および磁石15を含む。携帯部材10は、例えば腕輪である。携帯部材10は、カード状部材であってもよく、または装身具(指輪または手袋)に類似する部材であってもよい。磁石15は、例えば永久磁石である。トランスポンダ11のサイズは、例えば縦10mm程度、横5mm程度および高さ3mm程度である。トランスポンダ11の内部の構成については後述する。携帯部材10にトランスポンダ11および磁石15が取り付けられる。
【0036】
認証装置2は、配線回路基板20、CPU(中央演算処理装置)21、ホール素子を含むホールIC(集積回路)22、充電発振素子23、およびLF(低周波)アンテナ24を含む。
【0037】
認証装置2は、スイッチングパネル50にはめ込まれる。LFアンテナ24は、スイッチングパネル50の表面の近傍に配置される。スイッチングパネル50の内部に配線回路基板20が取り付けられる。配線回路基板20上に、CPU21、ホールIC22および充電発振素子23が実装される。
【0038】
図4に示すように、発信装置1のトランスポンダ11は、IDコード発信器12、コンデンサ13およびコイル14を含む。
【0039】
認証装置2は、CPU21、ホールIC22、充電発振素子23、LFアンテナ24、電源回路26および複数のI/F(インターフェース)回路27a〜27jを含む。
【0040】
電源回路26は、バッテリ51に接続される。電源回路26は、バッテリ51からの電力をCPU21、ホールIC22および充電発振素子23に供給する。
【0041】
CPU21は、正規のIDコードを記憶するメモリ21aを内蔵する。CPU21は、I/F回路27aおよびボックススイッチ61を介してバッテリ51に接続されるとともに、I/F回路27bおよびシートスイッチ62を介してバッテリ51に接続される。また、CPU21は、I/F回路27cを介してホールIC22に接続され、I/F回路27dを介して充電発振素子23に接続される。充電発振素子23には、LFアンテナ24が接続される。
【0042】
また、CPU21は、I/F回路27eを介してシステムリレー63に接続され、I/F回路27fを介してハンドルロック機構64に接続され、I/F回路27gを介してモータユニット65に接続される。システムリレー63は、電気負荷52に接続される。電気負荷52は、例えば、図1のヘッドライト38、テールライト39、ブレーキランプ、およびウインカー等を含む。
【0043】
さらに、CPU21は、I/F回路27hを介してフューエルリッド55に接続され、I/F回路27iを介してLED56に接続され、I/F回路27jを介してECU60に接続される。ECU60には、バッテリ51から電力が供給される。CPU21とECU60とは通信を行う。
【0044】
システムリレー63、ハンドルロック機構64、モータユニット65、電気負荷52、ハンドル31、フロントボックス53、シートカバー54、フューエルリッド55、LED56およびECU60が機能部6を構成する。盗難抑止システムによるユーザ認証の結果に基づいて機能部6の動作が許可または抑止される。
【0045】
(2)盗難抑止システムの動作
図5は本実施の形態に係る盗難抑止システムの認証装置の動作を示すフローチャートである。次に、図3〜図5を参照しながら本実施の形態に係る盗難抑止システムの動作を説明する。
【0046】
運転者が発信装置1の磁石15を認証装置2のホールIC22に近づける。それにより、磁石15から発生される磁力によりホールIC22の出力電圧が変化する。CPU21は、ホールIC22の出力電圧に基づいてホールIC22が磁力を検出したか否かを判定する(ステップS1)。
【0047】
CPU21は、ホールIC22が磁力を検出した場合に、充電発振素子23に電源回路26からの電力を供給する(ステップS2)。それにより、充電発振素子23が発振動作を行い、LFアンテナ24から充電用の電波が発信される。
【0048】
発信装置1のトランスポンダ11がLFアンテナ24から発信された電波を受信すると、トランスポンダ11内のコイル14に誘導電流が流れ、コンデンサ13が充電される。それにより、トランスポンダ11内のIDコード発信器12がコンデンサ13から供給される電力により動作する。すなわち、コンデンサ13がIDコード発信器12の電源として働く。IDコード発信器12は、予め設定されたIDコードを発信する。
【0049】
この場合、トランスポンダ11は、認証装置2のLFアンテナ24に接近している。それにより、IDコード発信器12により発信されたIDコードは、認証装置2のLFアンテナ24により受信される。認証装置2のLFアンテナ24と発信装置1のトランスポンダ11との間で電波およびIDコードの送受信はLF通信により行われる。
【0050】
CPU21は、充電発振素子23への電力の供給開始から一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS3)。一定時間が経過していない場合には、CPU21は、トランスポンダ11からIDコードを受信したか否かを判定する(ステップS4)。
【0051】
トランスポンダ11からIDコードを受信していない場合には、CPU21は、ステップS3の処理に戻り、トランスポンダ11からIDコードを受信するまで待機する。
【0052】
トランスポンダ11からIDコードを受信した場合には、CPU21は、ユーザ認証を開始し、受信したIDコードとメモリ21a内に記憶された正規のIDコードとを照合し(ステップS5)、受信したIDコードと正規のIDコードとが一致するか否かを判定する(ステップS6)。
【0053】
受信したIDコードと正規のIDコードとが一致する場合には、CPU21は、受信したIDコードをECU60に送信する(ステップS7)。ECU60は、CPU21から受信したIDコードを予め記憶された正規のIDコードと比較し、受信したIDコードと正規のIDコードとが一致した場合に一致信号をCPU21に送信し、受信したIDコードと正規のIDコードとが一致しない場合に不一致信号をCPU21に送信する。
【0054】
CPU21は、ECU60から一致信号を受信したか否かを判定する(ステップS8)。ECU60から一致信号を受信した場合には、CPU21は、ユーザ認証が成功したと判定する。
【0055】
この場合、CPU21は、システムリレー63をオンにする。すなわち、メインスイッチをオンにする。それにより、バッテリ51からの電力が電気負荷52に供給される。また、バッテリ51からの電力がハンドルロック機構64に供給される。それにより、ハンドルロック機構64によるハンドル31のロックが解除される。ユーザは、ハンドル31を操作することができる。
【0056】
さらに、ユーザがボックススイッチ61を押すことによりバッテリ51からの電力がモータユニット65に供給される。それにより、モータユニット65によりフロントボックス53が開かれる。また、ユーザがシートスイッチ62を押すことによりバッテリ51からの電力がモータユニット65に供給される。それにより、モータユニット65によりシートカバー54が開かれる。また、ユーザがシートスイッチ62を一定時間押しつづけることによりバッテリ51からの電力がフューエルリッド55に供給される。それにより、フューエルリッド55が開く。
【0057】
また、CPU21は、ECU60をエンジン35の点火制御が可能な状態に設定する。また、CPU21は、ECU60をスタータスイッチによるエンジン35の始動が可能な状態に設定する。それにより、ユーザは、スタータスイッチを操作することによりエンジン35を始動させることができる。
【0058】
また、CPU21は、LED56を所定の方法または色で点灯または点滅させる。それにより、ユーザはユーザ認証が成功したことを認識することができる。
【0059】
ステップS3で一定時間が経過した場合、ステップS6で受信したIDコードと正規のIDコードとが一致しない場合、およびステップS8でECU60から不一致信号を受信した場合には、CPU21は、LED56を所定の方法で点滅または点灯させることにより、エラー表示を行う(ステップS9)。それにより、ユーザは、ユーザ認証が失敗したことを認識することができる。
【0060】
以上のようにして、正規のユーザは、自動二輪車100の各部を操作することにより自動二輪車100を運転することが可能となる。
【0061】
上記の場合、CPU21によるIDコードの照合およびECU60によるIDコードの照合によりユーザ認証が行われる。したがって、盗難抑止効果が高められる。
【0062】
なお、ユーザは、エンジン35を始動することなく、フロントボックス53を開きたい場合には、ボックススイッチ7を押した後、トランスポンダ11をLFアンテナ24に近づける。それにより、磁石15とは関係なく、上記のユーザ認証が行われる。ユーザ認証が成功した場合には、モータユニット65によりフロントボックス53が開かれる。
【0063】
同様に、ユーザは、エンジン35を始動することなく、シートカバー54を開きたい場合には、シートスイッチ8を押した後、トランスポンダ11をLFアンテナ24に近づける。それにより、磁石15とは関係なく、上記のユーザ認証が行われる。ユーザ認証が成功した場合には、モータユニット65によりシートカバー54が開かれる。
【0064】
本実施の形態では、フューエルリッド55を開くためのスイッチをシートスイッチ62と兼用しているが、フューエルリッドスイッチを別に設けてもよい。その場合には、ユーザがフューエルリッドスイッチを押した場合に上記のユーザ認証が行われ、ユーザ認証が成功した場合にフューエルリッド55が開かれる。
【0065】
(3)盗難抑止システムの効果
本実施の形態に係る盗難抑止システムにおいては、ユーザが携帯部材10に設けられた磁石15を自動二輪車100のスイッチングパネル50に設けられた認証装置2のホールIC22に近づけることにより、認証装置2による認証動作が開始される。したがって、ユーザによる煩雑な操作を必要とすることなく迅速にユーザ認証を行うことができる。また、携帯部材10に電源を設ける必要ないので、携帯部材10の重量が大きくならない。その結果、ユーザの負担を軽減しつつ輸送機器の盗難を抑止することができる。
【0066】
また、ユーザが携帯部材10を認証装置2に近づけたときに、携帯部材10に設けられたトランスポンダ11が認証装置2のLFアンテナ24に接近する。それにより、認証装置2による認証動作が迅速に行われる。また、LFアンテナ24とトランスポンダ11とが接近した状態でLF通信により電波およびIDコードの送受信が可能となる。したがって、認証装置2における電力消費が低減される。
【0067】
さらに、トランスポンダ11は簡単な構成を有するので、トランスポンダ11を小型化および軽量化することができる。
【0068】
また、認証装置2は、自動二輪車100のバッテリ51により駆動されるので、認証装置2を動作させるために電源部を追加する必要がない。
【0069】
また、携帯部材10はユーザの腕に装着され、ホールIC22は自動二輪車100のスイッチングパネル50に設けられているので、ユーザは認証動作を開始させるために特別な操作を行う必要がない。それにより、ユーザの負担がさらに軽減される。
【0070】
(4)他の実施の形態の形態
(a)上記の実施の形態では、磁力検出器としてホール素子を含むホールIC22が用いられているが、これに限定されない。例えば、磁力検出器として磁気抵抗素子を用いてもよい。この場合には、磁気抵抗素子の抵抗の変化を検出することにより、磁石15による磁力を検出することができる。
【0071】
(b)上記の実施の形態では、認証装置2の電源部としてバッテリ51が用いられているが、これに限定されない。例えば、輸送機器に設けられる発電機を認証装置2の電源部として用いてもよい。
【0072】
(c)上記の実施の形態では、盗難抑止システムを輸送機器の一例として鞍乗型の自動二輪車1に適用しているが、これに限定されない。盗難抑止システムを他の種々の鞍乗型の輸送機器に適用してもよい。
【0073】
また、盗難抑止システムは、自動三輪車、自動四輪車、および船舶等の種々の輸送機器に適用することも可能である。
【0074】
(5)請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0075】
上記実施の形態では、携帯部材10が携帯部材の例であり、磁石15が磁石の例であり、トランスポンダ11がトランスポンダの例であり、認証装置2が認証装置の例であり、ホールIC22または磁気抵抗素子が磁力検出器の例であり、充電発振素子23が発振器の例であり、CPU21が識別情報認証部の例であり、IDコードが識別情報の例である。
【0076】
また、充電発振素子23が発振素子の例であり、LFアンテナ24がアンテナの例であり、コイル14がコイルの例であり、コンデンサ13がコンデンサの例であり、IDコード発信器12が識別情報発信部の例である。
【0077】
さらに、自動二輪車100が輸送機器の例であり、バッテリ51が電源部の例であり、車体30が本体部の例であり、エンジン35および後輪34が駆動部の例である。
【0078】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、自動二輪車、自動三輪車、自動四輪車および船舶等の種々の輸送機器の盗難を抑止するため等に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 発信装置
2 認証装置
6 機能部
10 携帯部材
11 トランスポンダ
12 IDコード発信器
13 コンデンサ
14 コイル
15 磁石
20 配線回路基板
21 CPU
21a メモリ
22 ホールIC
23 充電発振素子
24 LFアンテナ
26 電源回路
27a〜27j I/F回路
30 車体
31 ハンドル
32 フロントフォーク
33 前輪
34 後輪
35 エンジン
38 ヘッドライト
39 テールライト
50 スイッチングパネル
51 バッテリ
52 電気負荷
53 フロントボックス
54 シートカバー
55 フューエルリッド
56 LED
60 ECU
61 ボックススイッチ
62 シートカバースイッチ
63 システムリレー
64 ハンドルロック機構
65 モータユニット
100 自動二輪車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送機器の盗難を抑止するための盗難抑止システムであって、
前記輸送機器に設けられる認証装置と、
ユーザが携帯可能な携帯部材と、
前記携帯部材に設けられる磁石と、
トランスポンダとを含み、
前記認証装置は、
前記磁石による磁力を検出する磁力検出器と、
前記磁力検出器により磁力が検出されたときに電波を発信する発振器と、
識別情報認証部とを含み、
前記トランスポンダは、前記認証装置の前記発振器から発信される電波を受信して識別情報を発信し、
前記識別情報認証部は、前記トランスポンダにより発信された識別情報に基づいて認証動作を行う、盗難抑止システム。
【請求項2】
前記磁力検出器は、ホール素子を含む、請求項1記載の盗難抑止システム。
【請求項3】
前記磁力検出器は、磁気抵抗素子を含む、請求項1記載の盗難抑止システム。
【請求項4】
前記トランスポンダは前記携帯部材に設けられ、
前記認証装置の前記発振器は、発振素子と、発振素子の出力を電波として放射するアンテナとを含み、
前記磁石による磁力が前記磁力検出器により検出される状態で前記アンテナと前記トランスポンダとの間で電波および識別情報の通信が可能となるように前記アンテナが前記輸送機器に配置される、請求項1〜3のいずれかに記載の盗難抑止システム。
【請求項5】
前記トランスポンダは、
前記認証装置の前記発振器から発信される電波を受けるコイルと、
前記コイルの誘導電流により充電されるコンデンサと、
前記コンデンサに充電された電力により駆動され、前記識別情報を発信する識別情報発信部とを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の盗難抑止システム。
【請求項6】
前記認証装置は、前記輸送機器の電源部により駆動される、請求項1〜5のいずれかに記載の盗難抑止システム。
【請求項7】
前記携帯部材は、ユーザの身体に装着可能に構成される、請求項1〜6のいずれかに記載の盗難抑止システム。
【請求項8】
本体部と、
前記本体部を移動させる駆動部と、
盗難を抑止する盗難抑止システムとを備え、
前記盗難抑止システムは、
前記輸送機器に設けられる認証装置と、
ユーザが携帯可能な携帯部材と、
前記携帯部材に設けられる磁石と、
トランスポンダとを含み、
前記認証装置は、
前記磁石による磁力を検出する磁力検出器と、
前記磁力検出器により磁力が検出されたときに電波を発信する発振器と、
識別情報認証部とを含み、
前記トランスポンダは、前記認証装置の前記発振器から発信される電波を受信して識別情報を発信し、
前記識別情報認証部は、前記トランスポンダにより発信された識別情報に基づいて認証動作を行い、認証が成功しない場合に前記駆動部の動作を抑止する、輸送機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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