説明

監視制御システムの試験装置および試験方法

【課題】少ない試験員で試験が可能であり、監視制御システム全体の総合試験の省力化と、安全な試験および試験品質の向上を可能にすること。
【解決手段】制御所側に設置され、釦等の操作入力手段を介して操作指令を入力する制御卓を有する監視制御装置と、監視制御対象機器の存在する被制御所側に設置され、監視制御装置から送られてくる操作指令に基づいて機器へ制御信号を出力する遠方監視制御装置とを備えた監視制御システムを試験する試験装置において、被制御所側で使用され試験操作指令の入力を行う簡易操作手段2bと、試験内容の設定を行う試験端末手段1と、試験端末手段または簡易操作手段から入力された情報を制御所へ伝送する通信手段30と、操作入力手段に装着され、簡易操作手段から送られてくる試験操作指令に基づいて押下等の圧力によって操作入力手段を動作させて操作指令の入力を実行する模擬操作手段2aと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場または遠隔に置かれた監視制御装置と監視制御される機器間のシステム試験を少人数で行うことを可能にする監視制御システムの試験装置および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10に示す監視制御システムは、制御所10側は、操作パネル12とモニタ13を備えた監視制御装置11と遠方の機器を監視制御するための制御所用遠方監視制御装置14aとで構成され、監視制御する対象である遠方の機器21の設置されている被制御所20側は、この機器21を監視制御する被制御所用遠方監視制御装置14bで構成される。従来、このシステム全体を試験するためには、制御所10と被制御所20の両所に試験員A,Bを配置して、その間の連絡を電話40などで行いながら試験を進めている。
【0003】
また、従来、このシステムを構成する各装置を試験するために、監視制御装置やそこに使用されている遠方監視制御装置あるいは配電盤を試験する技術が提案されている。たとえば、特許文献1には、制御所の計算機システムである監視制御装置から試験を行うための監視制御用のデータとプログラムを被制御所の模擬監視装置に通信を介してダウンラインローディングして、同じく被制御所に設置された遠方監視制御装置を試験する方法の技術が提案されている。特許文献2には、前記計算機システムの監視制御装置の機能を試験するにあたり、監視制御装置内に被制御所の機器の応動他を模擬するプログラムを備え、監視制御装置のみで自身の機能を試験する方法が提案されている。特許文献3には、遠方監視制御装置で監視制御される被制御所の配電盤に接続される機器の模擬装置としてパソコンなどで構成する装置が提案されている。
【0004】
しかしながら、全て、監視制御システムを構成する各装置を個別に試験するものであり、制御所の監視制御装置や、被制御所の遠方監視制御装置や配電盤および機器を含めた全体のシステムを試験するときは、制御所と被制御所に多数の試験員を必要とし、しかも、試験の品質を確保するためには、制御所と被制御所内試験員間では綿密な連絡が必要であり、試験時間が長時間に及んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−230141号公報
【特許文献2】特開平11−262175号公報
【特許文献3】特開平10−282170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、少ない試験員で試験が可能であり、監視制御システム全体の総合試験の省力化と、安全な試験および試験品質を向上させることのできる監視制御システムの試験装置および試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係わる監視制御システムの試験装置は、制御所側に設置され、釦スイッチなどの操作入力手段を介して操作指令を入力する制御卓を有する監視制御装置と、監視制御対象の機器の存在する被制御所側に設置され、前記監視制御装置から送られてくる操作指令に基づいて前記機器へ制御信号を出力する遠方監視制御装置とを備えた監視制御システムを試験する試験装置であって、前記被制御所側で使用され試験操作指令の入力を行う簡易操作手段と、試験内容の設定を行う試験端末手段と、前記試験端末手段または前記簡易操作手段から入力された情報を前記制御所へ伝送する通信手段と、前記操作入力手段に装着され、前記簡易操作手段から送られてくる試験操作指令に基づいて押下等の圧力によって前記操作入力手段を動作させて操作指令の入力を実行する模擬操作手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明では、制御卓の釦やスイッチなどの操作入力手段に模擬操作手段を装着して、この模擬操作手段を被制御所の試験員が、試験端末手段や簡易操作手段によって動作させることにより操作入力手段に圧力を加えて、当該手段を動作させることによって操作指令を入力して、監視制御システムの動作確認試験を行う。ソフトウェア的に監視制御システムの途中のデータを操作して試験をしないので、試験品質の向上を図ることができる。
【0009】
ここで、「制御所」は一般に遠方の機器の監視または制御を行う箇所を意味し、被制御所は監視制御対象機器あるいはその機器へ制御信号を出力する遠方監視制御装置の存在する箇所を意味し、その名称にはよらない。
【0010】
模擬操作手段は、たとえば試験端末から送られてくる試験操作の入力情報によって励磁されるソレノイド手段によって実現することができる。釦やスイッチ等の操作入力手段の上に被せたソレノイド手段で構成された模擬操作手段の上下に動作させることにより、遠方から運転員が押下するのと同じ操作を実行できる。
【0011】
なお、前記簡易操作手段に替え、試験端末手段によって試験操作の入力を行うようにしても良い。これにより試験端末手段のみで一元的にモード設定や試験操作等の入力を行うことができる。
【0012】
なお、本発明に係わる試験装置の物理的構成としては、監視制御するために制御所(監視箇所などを含む。)にはモニタ、釦スイッチ他の操作パネルを備えた制御卓を持つ計算機などで構成された監視制御装置と、制御所用遠方監視制御装置とを設ける一方、監視制御される機器のある被制御所(分散建物などを含む。)には、被制御所用遠方監視制御装置(分散制御装置などを含む。)を設置してなる監視制御システムに対して、被制御所側に試験内容の設定を行う試験端末手段と、試験操作を行う簡易操作手段と、該簡易操作手段の操作情報を他の装置に伝送するための第1の入出力手段と、該第1の入出力手段と試験端末手段とのバスとなる第1のHUBとを設け、制御所側に制御卓の操作パネルの釦などを押下制御する模擬操作手段と、該模擬操作手段を駆動する第2の入出力手段と、監視制御装置から制御卓のモニタへの表示情報を分配するための分配手段と、該分配手段で分配された情報を他に伝送するための信号に変換するコンバータ手段と、該コンバータ手段と第2の入出力手段のバスになる第2のHUBと、を設け、該第2のHUBと第1のHUB間をシリアル通信手段によって接続することによって実現することができる。
【0013】
好ましくは、監視制御対象の機器ごと、あるいは機器グループごとに試験中か否か等のモードを設定する条件設定手段と、該条件設定手段によって設定されたモード情報に基づいて、前記模擬操作手段の実行を許可または禁止するロック手段とを設けるようにすると良い。試験中の機器を選択あるいは制御する釦やスイッチ(操作入力手段)に装着された模擬操作手段のみを許可状態にして、それ以外を禁止にすることによって、誤って試験端末手段に運用中の機器への試験操作指令が入力されたを出した場合でも、この指令をロックすることができる。ここで、「機器グループ」とは、遮断器や断路器等の機器種別や、機器の設置場所、監視制御単位等によってグループ化された機器群を意味する。
【0014】
ロック手段は、接続をON/OFFするスイッチボックスによって実現することもできるが、制御所側の計算機によってソフトウェア的に接続を行うようにしても良い。なお、この計算機をサーバとして構成し、遠方の試験端末手段をクライアントとして構成することもできる。
【0015】
また、この条件設定手段は、試験端末手段に設けることもできるが、上記計算機に設けるようにしても良い。
【0016】
より好ましくは、試験端末手段は、モード設定時に試験員の識別情報を入力し、条件設定手段は、この識別情報に基づいて試験可能な機器を選択するようにしたり、ロック手段は、モード情報に基づいて試験中の機器以外の機器への試験操作指令を受けた場合は、アラーム信号を出力したりすると良い。
【0017】
これにより、試験員の権限範囲で事前に許可された機器の操作のみが可能となり、万一許可された機器以外の機器への視線操作指令を受けた場合はアラームを出すことによって、条件設定手段の設定ミスや模擬操作手段の取り付けミスなどを検知することができる。
【0018】
また、本発明に係わる監視制御システムの試験方法は、制御所側に設置され、釦スイッチなどの操作入力手段を介して操作指令を入力する制御卓を有する監視制御装置と、監視制御対象の機器の存在する被制御所側に設置され、前記監視制御装置から送られてくる操作指令に基づいて前記機器へ制御信号を出力する遠方監視制御装置とを備えた監視制御システムを試験する試験方法であって、前記操作入力手段を押下等の圧力によって制御する模擬操作手段を前記操作入力手段に装着する工程と、被制御所側から試験端末手段または簡易操作手段から機器の操作指令を入力する工程と、前記操作指令を通信手段を介して制御所側へ伝送する工程と、前記伝送されてきた操作指令を受信して、当該機器が試験操作の許可された機器か否かを判定する工程と、前記判定の結果、該機器が試験操作の許可された機器の場合は、該操作指令に基づいて前記模擬操作手段を介して前記操作入力手段を動作させることによって、機器の選択指令または制御指令を入力することにより、前記監視制御対象の機器への制御が正常に行われるか否かの確認を行う工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明では、被制御所の試験員のみで監視制御システムの機能試験を実施することができる。特に、模擬操作手段によって、制御卓の操作入力手段を直接押下等して操作入力を行うので、試験確認用にデータを設定するのに比べ試験品質が向上する。また、試験操作の許可された機器かどうかを事前に確認し、許可されていない機器への操作要求の場合は模擬操作手段をロックすることにより試験の安全性が担保される。
【0020】
本発明に係わる監視制御システムの試験方法は、模擬操作手段の装着された制御卓や機器状態の表示手段をカメラで撮影し、撮影した映像を通信手段を介して、被制御所の前記試験端末手段へ送信する工程を有することを特徴とする。
【0021】
本発明では、制御所や監視箇所から監視制御される遠方または構内にある機器が設置された箇所から、試験員が、前記試験端末手段と簡易操作手段により、制御所または監視箇所にある制御卓や制御盤を模擬操作手段により遠隔で試験操作することができるとともに、同じく制御卓にあるモニタと同じ画面を前記試験端末手段のモニタで遠隔監視できるので、前記機器の存在する箇所から監視制御システムの試験ができ、試験員の省力化と試験品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、模擬操作手段を持つ試験装置や、現場に設置した模擬監視制御装置によって、少ない対応要員で監視制御システムの試験が安全に実施することが可能となり、また、監視制御システムの機能全体を通して試験を行うので試験品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態による試験システム構成図である。
【図2】図1の機能構成図である。
【図3】図1の模擬操作手段の構造図である。
【図4】図1の入出力手段および第2の実施形態による機能構成図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態による試験システム構成図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態による試験システム構成図である。
【図7】図6の模擬操作手段の構造図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態による試験システム構成図である。
【図9】本発明の第6の実施の形態による試験システム構成図である。
【図10】従来の試験システム構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1、図2は、いずれも第1の実施の形態による監視制御システムを試験するシステム構成図であり、図1は、主な装置の外観を表した図、図2はシステムの機能構成を表した図である。両図の実線の細線で示す部分は、試験をされる監視制御システムであり、太線で示す部分は、本発明の試験装置である。
【0025】
この両図で、制御部10の監視制御システムは、情報を処理する監視制御装置11と、監視制御するためのモニタ13と釦で構成された操作パネル12とで主に構成される制御卓11aと、遠方の電気所などの被制御所20の機器21を遠方監視制御する遠方監視制御装置の制御所装置(以下TCMと略す)14aとで構成される。前記被制御所20に設置される監視制御システムの装置は、被制御所用の遠方監視制御装置(以下TCRと略す)14bと、これに入出力される機器21とで構成される。この監視制御システムを被制御所20から試験するための試験装置は、被制御所20には、マウス16とモニタ13bを備えたパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという。)などに構成される試験端末手段1と、試験操作を行う簡易操作手段2bと、この情報を入出力してLAN30などで必要な箇所に伝送する第1の入出力手段(以下1PIO)3bと、この手段3bと、前記試験端末手段1とのバスとなる第1のHUB(以下1HUBと略す)4bとで構成される。なお、LAN30は、通信距離等によって広域ネットワークWANなど、専用あるいは汎用の通信手段を適宜使用するものとする。
【0026】
制御所10の試験装置は、監視制御装置11のモニタ13の情報を分岐する分配手段5と、分配された情報をLAN30などで伝送できるようにするコンバータ(以下KVMと称す)6と、監視制御装置11の前記操作パネル12の釦を試験押下する模擬操作手段2aと、それをLAN30などから伝送されてくる情報により動作させる第2の入出力手段(以下2PIOと略す)3aと、この手段3aと前記KVM6とのバスとなる第2のHUB(以下2HUBと略す)4aで構成される。そして、制御所10と被制御所20の両HUB4a,4bは、シリアル通信や光LAN30などで接続される。
【0027】
次に、制御所10と被制御所20に設置される前記試験装置の概略機能と動作について説明する。監視制御システムを試験するために試験員Bが、被制御所20に設置された前記試験端末手段1と簡易操作手段2bにより試験操作を行うと、その操作情報が、制御所10と被制御所20の間に設置された前記1PIO3b,1HUB4b,LAN30等の通信手段,2HUB4a,2PIO3aとを介して伝送され、制御所10の模擬操作手段2aを動作させ、該当する操作パネルの釦を遠隔操作する。一方機器の動作などを監視する制御所10の制御卓11aのモニタ13の表示情報は、分配器5とKVM6により、同じく前記通信手段を介して試験端末手段1のモニタに表示される。この試験装置により制御所10の制御卓11aで行う監視制御機能の試験を被制御所20から実施することができる。
【0028】
図3は、模擬操作手段2aの構造図であり、図4は、この模擬操作手段2aを制御する2PIO3aの構成図である。図3では、操作パネル12の各釦121,122,123,・・の上に被さり、前記2PIO3aからの電気信号で動作する模擬操作手段2aは、前記各釦121,122,123,・・・を押下できるソレノイド型スイッチ2a1、2a2、2a3、・・・で構成される。図4では、2PIO3aは、LAN30などからの伝送された情報により入出力処理を行う処理部3a1と、入出力部3a2とで構成され、入出力部3a2は、これにより制御される前記模擬操作手段2aの各ソレノイド型スイッチ2a1,2a2,2a3,・・・に接続される。
【0029】
また、この2PIO3aと模擬操作手段2aの間に、後記する誤操作防止のための出力をロックするか否かを設定するロック手段3a3が挿入される。
被制御所20の前記1PIO3bは、図4における処理部3a1と入出力部3a2の機能のみを有する。入出力として模擬操作手段2aの代わりに簡易操作手段2bが接続されている。
【0030】
本実施の形態における監視機能と制御機能について説明する。まず、監視制御システムでは、制御所10から被制御所20の機器21を監視制御するために制御所の監視制御装置11とTCM14aと、被制御所のTCR14bにより機器21の制御情報や監視情報が伝送され処理される。監視機能では、機器21が動作すると、その情報はTCR4bから制御所10に伝送され、TCM14aを介して監視制御装置11に入力されて処理され、モニタ13の画面に表示され、警報出力などが行われる。運転員は、この警報などを確認して停止するため操作パネル12にある停止釦を押下する。
【0031】
制御機能では、運転員が、制御卓11aの操作パネル12の釦により該当する機器の釦を押下して選択し、選択が完了後、同じく操作パネル12にある入り切りを行う釦を押下して制御を行い、その応動をモニタ13の画面の機器表示で確認する。
【0032】
次に、監視制御システムの監視機能の試験を行うときの動作を説明する。被制御所20に居る試験員Bが、TCR14bに状態が入力される機器21を試験動作させたり、TCR14bの入力端子台に直接試験入力したりすると、TCR14bは、この情報を制御所10のTCM14aに伝送路を介して伝送する。TCM14aは、この情報を監視制御装置11に入力し、この監視制御装置11により情報が処理され、モニタ13の画面に表示される。このとき、故障情報などの場合、警報出力やモニタ13の画面に表示される該当機器のシンボルのフリッカなどがなされる。このモニタ13に表示された画面情報は、分配器5でKVM6に分配され、KVM6は、この画面情報を2HUB4aを介してLAN30などで伝送できる形に変換して被制御所20に伝送する。被制御所20では、この情報が、1HUB4bを経由して試験端末手段1で受信され、モニタ13bに制御所10のモニタ13と同じ画面が表示される。そして警報やフリッカなども行われる。試験員Bは、簡易操作手段2bに装備された警報停止釦や、フリッカ停止釦などを押下する。この操作情報はこの簡易操作手段2bに接続されている1PIO3bに入力され、1HUB4bを介して前記の試験端末手段1と、制御所10の2PIO3aにLAN30と制御所10の2HUB4aを介して伝送される。この2PIO3aが接続された図3に示す模擬操作手段2aの該当するソレノイドスイッチ121または122,または123、・・・を動作させ、警報停止やフリッカ停止などの釦を遠隔押下する。この遠隔操作により制御所10の試験に伴う操作が、被制御所20に居る試験員Bによって遠隔操作される。被制御所20の前記試験端末手段1に表示された画面も、この操作情報により必要な処理がなされる。
【0033】
次に、ある機器の制御を試験する制御機能の試験動作を説明する。被制御所20に居る試験員Bは、試験端末手段1のモニタ13bに表示されている該当機器のシンボルをマウス16でクリックして選択する。この選択情報が、1HUB4bとLAN30および制御所10の2HUB4aを介して2PIO3aに伝送される。この2PIO3aは、LAN30からの情報を図4に示す処理部3a1に入力し、前記選択情報に該当する監視制御装置11の操作パネル12の選択釦を、模擬操作手段2aのソレノイドスイッチ2a1他を動作させて押下させ、遠隔選択する。監視制御装置11は、この操作により該当する機器の選択情報をTCM4aから被制御所20のTCR4bに伝送し、該当する機器21の選択を行う。これと同時に監視制御装置11は、制御所10のモニタ13に該当する機器のシンボルが選択されたことを示す表示を行う。この表示は、被制御所20の試験端末手段1のモニタ13bにも、前記した分配手段5とKVM6経由で伝送され、同じ表示がなされる。このことにより被制御所20に居る試験員Bは、正しく機器が選択されたことを確認し、次に入り切り操作を、前記簡易操作釦手段2bにある入りまたは切り釦を押下して行う。この操作情報が前記の警報停止などの操作と同様に1PIO3bを介して制御所10の2PIO3aに伝送され、入り切り操作釦を押下する模擬操作手段2aの該当するソレノイドスイッチを動作させ、釦を押下させる。この動作により監視制御装置11から制御情報が、TCM14a介してTCR14bから選択された機器への制御がなされ、該当する機器が制御される。この動作を被制御所20に居る試験員Bが直接確認する。また、この動作による機器21の状態情報が、前記TCR14bに入力され、前記の監視機能の動作により制御所10のモニタ13の該当する機器のシンボルの状態を表示変化させる。この表示変化は、被制御所20の試験端末手段1のモニタ13bでも前記した動作で表示され、これを試験員は確認する。
【0034】
この試験装置により監視制御される機器がある被制御所からシステムの総合試験が少人数の試験員で実施できる。
【0035】
第1の実施形態に加えた第2、第3の実施形態として制御試験をするにあたり、試験対象以外の機器を誤操作させない安全な方法を図4および図5により説明する。
【0036】
第2の実施形態の図4は、模擬操作手段2aを動作させる2PIO3aの出力に、手動で設定できるロック手段3a3を設け、試験員が、予め試験対象の操作パネル12の釦の押下の可否を前記ロック手段3a3の該釦に対応するスイッチをON/OFFすることにより設定する。スイッチがOFFの場合は、PIO3a2から出力される電気信号が、模擬操作手段2aの当該出力に対応するソレノイドスイッチに伝わらないので、当該ソレノイドスイッチが動作せず、釦の誤動作を防止することができる。
【0037】
この機能により試験時の誤操作によるPIO3a2からの出力をロック(すなわち、電気信号を遮断)でき、安全に試験ができる。たとえば、現地試験員にが誤って本来選択すべきでない機器を選択した場合でもロック手段によって制御信号が出力されるのを防止することができる。また現地のインターロック作業を簡略化することができる。
【0038】
第3の実施形態の図5では、制御所10の監視制御装置11が二重化されており、一方の監視制御装置11xを運用系に、他方の監視制御装置11yを試験系に設定できるシステムにおいての安全な試験方法を示す。図5において、試験系の制御卓11ayと、試験を行う被制御所20に前記した試験装置1を設ける。まず。試験を開始する前に、運転員は、運用系の制御卓11axなどから試験対象の機器や範囲を設定するために、運用系のCPU機能である操作ボックス設定手段101によって、試験用操作ボックス(ロック手段)の設定を行い、試験エリア設定手段102によって、試験員の操作可能な試験範囲の設定を行い、試験形態設定手段103によって機器ごとあるいはグループ単位で試験中か否か等の試験形態(モード)の設定を行う。各設定手段(これらを総称して条件設定手段という。)101〜103によって設定されたデータは、試験処理の各種設定データを格納する試験系のデータベース(以下DBと略す)202に保存され、各情報や機器を管理するポジション情報と呼ばれるデータに運用用か試験用かのデータなどとして設定される。このデータは、監視制御される各機器21などの内容を表す設備管理データ202a,モニタ13への画面を作成する画面表示データ202b,試験を行う範囲内の機器の個別のデータである試験エリア個別データ202c,前記簡易操作手段2aを操作するための試験ボックスデータ202d,操作の手順などを設定する操作設定データ202eなどに反映され記憶される。これらの情報により、運用系と試験系の制御卓11ax,11ayの両モニタ13には、運用と試験範囲を示す表示が表示エリア処理手段203により行われる。
【0039】
この状態で試験を被制御所20に設置した前記した試験端末手段1と簡易操作手段2bなどから開始する。たとえば、制御試験として、ある機器21の選択制御を試験端末手段1により選択し、制御所10の模擬操作手段2aを動作させて試験系の制御卓11ayの操作パネル12の該当の機器選択釦を押下する。このとき押下されたボタン情報を試験系の監視制御装置11yは、前記DB202の中の試験ボックスデータ202dなどと操作設定照合処理手段205で照合して試験操作が可であれば、信号出力処理手段206を介して前記した通常の選択処理を行う。もしも、試験範囲の機器でなく、試験禁止の運用系のものであれば前記操作設定照合処理手段205ではねられ、通常処理を行われず、誤操作としてロックされる。このため正常に選択された場合は、この操作が、試験系制御卓11ayのモニタ13に表示されるが、誤操作の場合は、ロックされるため正常に表示されず、これと同じ表示を行う被制御所20の試験端末1のモニタ13bにも表示されないので、試験員は誤操作でロックされたか否かを認識することができる。もしくは、この表示以外に、誤操作をしたことの警報をする機能を設けて、試験端末手段1でその旨警報する。正常に選択されたなら、次に入り切り操作が、前記簡易操作手段2bから行われる。この情報も前記操作設定照合処理手段205で照合され良好であれば、制御信号が前記した同様な処理で行われる。
この機能により、試験を運用系に支障を与えず、被制御所から安全に試験が実施できる。
【0040】
図6は、第4の実施形態として、一つの電気所内の構内監視制御システムでの試験構成図である。この図では、監視制御システムの構成は、電気所20内には、監視制御を行う監視箇所20xと、2つの分散した建物20y,20zに機器が分散設置されている。
監視箇所20xの装置は、監視制御装置11と、これに制御される操作盤23に釦とランプなどの表示器で構成された複数の機器選択スイッチ24と、同じくランプの点灯で文字を表示する表示板25とで構成される。各分散建物20yまたは20zには、機器21を監視制御する監視制御装置11と通信ケーブル26などで接続された分散制御装置22が設置される。このシステムを試験するための試験装置として、前記した制御所10と被制御所20間の監視制御システムにおける制御所が、監視箇所20xであり、被制御所20が分散建物20y,20zに相当する。また、表示機能が前記機器選択スイッチ24や表示板25のランプ表示器ため、前記のモニタ13の画面を試験装置に分配して見ることはできない。このため試験装置は、これらのランプ表示器の状態をLAN30などで伝送できる通信仕様のカメラ7で撮影して、前記2HUB4aを介して試験端末手段1に送信し、この試験端末手段1が、モニタ13bに撮影画像を表示する方法で行う。このカメラにより撮影された画面で監視する以外の動作は、前記した実施形態と同様なので作用の説明は省略する。ただし、模擬操作手段2aの構造は、前記機器選択スイッチ24が個々に垂直の盤に装備されているため、図7に示すような個々に垂直に装備できる構造にする。また、誤操作防止方法は、必要な機器選択スイッチ24のみに前記模擬操作手段2aを装備することにより行う。ただし、図4に示す2PIO3aのロック手段3a3を併せて使用することもできる。
【0041】
この試験装置により機器のある分散建物に居る試験員だけで構内監視制御システムの試験が安全にできる。
【0042】
第5の実施形態として図8は、前記制御所10や監視箇所20xに操作パネル12はなく、全ての操作をマウス16などで行う監視制御システムに対する試験装置である。この形態では、第1の実施形態での構成と異なり、試験装置は、制御所10には、操作時に操作パネル12の釦を押下する必要がないため模擬操作手段2aや2PIO3aなどの手段がなく、試験端末手段1からの操作情報を監視制御装置1へ入力させるKVM6と分配手段5で構成される。被制御所20の試験装置の構成も、簡易操作手段2bや1PIO3bを省いた構成とする。
【0043】
動作は、試験端末手段1からの操作も全てこの試験端末手段1のマウス16で行い、その情報が、LAN30からKVM6と分配手段5を介して監視制御装置11に送信され、制御所10のマウス16で行ったと同じ操作が行われる。その他の作用は、前記した他の実施形態と同じである。誤操作防止方法は、監視制御装置11に第3の実施形態で記載した試験用のデータを予め設定し、試験対象以外の操作をロックする処理を実装しておく。
このことにより、試験装置の構成が少なくなり、試験が効率よく安全に実施できる。
【0044】
図9は、第6の実施形態としてクライアント・サーバ型の分散監視制御システム(以下C/Sと略す)でのシステム構成図である。このC/Sでは、サーバ11と、これにLANなどのHUB17で接続されるモニタ13とマウス16などを装備したクライアントの処理装置15が複数設置されているのが一般的である。試験装置は、このクライアント装置(15)1式相当の試験端末手段1を被制御所20に設置し、LAN30経由で前記サーバとクライアント間のHUB17に接続した構成とする。
【0045】
上記の構成において、前記第5の実施形態でのKVM6と分配手段5を介して試験端末手段1との情報の授受を行う代わりに、直接サーバ11とHUB17を介して情報の授受を実行する。すなわち、全ての操作や監視情報は、サーバ11のクライアントである試験端末手段1と前記HUB17とLAN30を介して伝送され、試験端末手段1は、制御所10に設置されているクライアントの処理装置15と同様の操作や監視ができる。このため、当然制御所10の前記処理装置15で行う試験も、被制御所20に設置された前記試験端末手段1からもできることになる。
【0046】
この構成により、簡単に試験装置を組むことができ、機器のある被制御所から総合試験を安全に実施できる。
【0047】
以上、各実施形態によれば、監視制御システムの総合試験が、監視制御される機器が設置されている被制御所や分散建物から全ての試験操作ができ、その結果の確認ができる。併せて、試験時の誤操作をロックすることができるため、従来より少ない人員で、しかも一カ所に試験員を配置するだけで効率よく、品質よく監視制御システムの試験が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、監視制御システムにおける総合試験に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 試験端末手段
2b 簡易操作手段
2a 模擬操作手段
3a 第2の入出力手段(2PI/O)
3b 第1の入出力手段(1PI/O)
4a 第2のHUB(2HUB)
4b 第1のHUB(1HUB)
5 分配手段
6 コンバータ(KVM)
7 カメラ
10 制御所
11 監視制御装置(CPU)
11a,11ax,11ay 制御卓
12 操作パネル
13 モニタ
14a 制御所用遠方監視制御装置
14b 被制御所用遠方監視制御装置
15 クライアント装置
16 マウス
20 被制御所
21 機器
22 分散制御装置
23 制御盤
24 選択スイッチ
25 表示板
26 伝送路
30 LAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御所側に設置され、釦スイッチなどの操作入力手段を介して操作指令を入力する制御卓を有する監視制御装置と、監視制御対象の機器の存在する被制御所側に設置され、前記監視制御装置から送られてくる操作指令に基づいて前記機器へ制御信号を出力する遠方監視制御装置とを備えた監視制御システムを試験する試験装置であって、
前記被制御所側で使用され試験操作指令の入力を行う簡易操作手段と、
試験内容の設定を行う試験端末手段と、
前記試験端末手段または前記簡易操作手段から入力された情報を前記制御所へ伝送する通信手段と、
前記操作入力手段に装着され、前記簡易操作手段から送られてくる試験操作指令に基づいて押下等の圧力によって前記操作入力手段を動作させて操作指令の入力を実行する模擬操作手段と、
を備えたことを特徴とする監視制御システムの試験装置。
【請求項2】
監視制御対象の機器ごと、あるいは機器グループごとに試験中か否か等のモードを設定する条件設定手段と、
該条件設定手段によって設定されたモード情報に基づいて、前記模擬操作手段の実行を許可または禁止するロック手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の監視制御システムの試験装置。
【請求項3】
前記ロック手段は、前記モード情報に基づいて、試験中の機器以外の機器への試験操作指令を受けた場合は、アラーム信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の監視制御システムの試験装置。
【請求項4】
前記試験端末手段は、モード設定時に試験員の識別情報を入力し、前記条件設定手段は、該識別情報に基づいて、試験可能な機器を選択することを特徴とする
【請求項5】
前記模擬操作手段は、前記試験端末から送られてくる試験操作の入力情報によって励磁されるソレノイド手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の監視制御システムの試験装置。
【請求項6】
前記簡易操作手段に替え、前記試験端末手段によって試験操作の入力を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の監視制御システムの試験装置。
【請求項7】
制御所側に設置され、釦スイッチなどの操作入力手段を介して操作指令を入力する制御卓を有する監視制御装置と、監視制御対象の機器の存在する被制御所側に設置され、前記監視制御装置から送られてくる操作指令に基づいて前記機器へ制御信号を出力する遠方監視制御装置とを備えた監視制御システムを試験する試験方法であって、
前記操作入力手段を押下等の圧力によって制御する模擬操作手段を前記操作入力手段に装着する工程と、
被制御所側から試験端末手段または簡易操作手段から機器の操作指令を入力する工程と、
前記操作指令を通信手段を介して制御所側へ伝送する工程と、
前記伝送されてきた操作指令を受信して、当該機器が試験操作の許可された機器か否かを判定する工程と、
前記判定の結果、該機器が試験操作の許可された機器の場合は、該操作指令に基づいて前記模擬操作手段を介して前記操作入力手段を動作させることによって、機器の選択指令または制御指令を入力することにより、前記監視制御対象の機器への制御が正常に行われるか否かの確認を行う工程と、
を有することを特徴とする監視制御システムの試験方法。
【請求項8】
前記模擬操作手段の装着された制御卓や機器状態の表示手段をカメラで撮影し、撮影した映像を通信手段を介して、被制御所の前記試験端末手段へ送信することを特徴とする請求項7記載の監視制御システムの試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−38044(P2012−38044A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176800(P2010−176800)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】