説明

監視装置及び監視方法

【課題】ペアレンタルコントロールの回避を抑制することを課題とする。
【解決手段】監視装置は、携帯端末からネットワークを利用する機能に関する処理について遠隔操作の要求を受け付けた場合に、該携帯端末に対応する仮想携帯端末での動作の記録を開始する。このとき、監視装置は、動作の記録データを動作記録蓄積データベース等の所定の記憶装置に格納する。また、監視装置は、仮想携帯端末での動作の記録の開始とともに、仮想携帯端末に対して遠隔操作に対するセッションの起動を命令する。また、監視装置は、携帯端末から遠隔操作の停止要求を受け付けた場合に、仮想携帯端末での動作の記録を終了する。その後、情報処理装置は、動作記録蓄積データベースに格納された動作記録を取得し、携帯端末のネットワークの利用履歴を表示部等に表示出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の携帯端末は、何時でもどこに居ても保護者と連絡をとれる利便性から未成年者にも普及しつつある。ところが、利便性の反面で、未成年者による携帯端末の利用においては、未成年者にとって好ましくないWebコンテンツ等の種々の情報を要因として、未成年者が犯罪に巻き込まれる可能性がある。
【0003】
このため、最近では、未成年者による携帯端末の利用を保護者が監視するペアレンタルコントロールが広がりつつある。ペアレンタルコントロールは、例えば、未成年者の携帯端末によるWebコンテンツへのアクセス履歴や電子メールの送受信履歴等を、保護者がPC(Personal Computer)等から閲覧・監視するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】NTT docomo,“iモードアクセス履歴検索サービス”,[online],[平成22年5月25日検索],インターネット<http://www.nttdocomo.co.jp/charge/online/log/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、ペアレンタルコントロールが回避されてしまうという課題がある。具体的には、従来技術に係るペアレンタルコントロールは、デフォルトのWebブラウザ等の特定のアプリケーションを想定しており、該特定のアプリケーションに対してのみ監視するため、ペアレンタルコントロールが回避されてしまう。換言すると、従来技術では、ペアレンタルコントロールを監視できないアプリケーションがインストールされた携帯端末によるWebコンテンツへのアクセスまで監視することができない。
【0006】
そこで、本願に開示する技術は、上記に鑑みてなされたものであって、ペアレンタルコントロールの回避を抑制することが可能である監視装置及び監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本願に開示する監視装置は、外部装置によって遠隔操作される該外部装置に対応する仮想外部装置を監視する監視装置であって、前記外部装置から遠隔操作の要求を受け付けた場合に、前記仮想外部装置での動作の記録を開始する動作記録開始部と、前記動作記録開始部による記録の開始とともに、前記仮想外部装置に対して前記遠隔操作に対するセッションの起動を命令する起動命令部と、前記外部装置から遠隔操作の停止要求を受け付けた場合に、前記仮想外部装置での動作の記録を終了する動作記録終了部とを有する。
【0008】
また、本願に開示する監視方法は、外部装置によって遠隔操作される該外部装置に対応する仮想外部装置を監視する監視装置で実行される監視方法であって、前記外部装置から遠隔操作の要求を受け付けた場合に、前記仮想外部装置での動作の記録を開始する動作記録開始ステップと、前記動作記録開始ステップによる記録の開始とともに、前記仮想外部装置に対して前記遠隔操作に対するセッションの起動を命令する起動命令ステップと、前記外部装置から遠隔操作の停止要求を受け付けた場合に、前記仮想外部装置での動作の記録を終了する動作記録終了ステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示する監視装置及び監視方法の一つの様態によれば、ペアレンタルコントロールの回避を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施例に係る監視システムの全体構成の例を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係る監視装置の構成例を示す図である。
【図3】図3は、本実施例に係る全体処理の流れの例を示す処理シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本願に開示する監視装置及び監視方法の実施例を説明する。なお、以下の実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
[監視システムの全体構成]
最初に、図1を用いて、本実施例に係る監視システムの全体構成を説明する。図1は、本実施例に係る監視システムの全体構成の例を示す図である。
【0013】
例えば、図1に示すように、監視システムは、携帯端末10と、仮想携帯端末20と、動作記録蓄積データベース30と、情報処理装置40と、監視装置100とを有する。このうち、仮想携帯端末20、動作記録蓄積データベース30及び監視装置100は、データセンタに含まれる。また、仮想携帯端末20及び監視装置100は、データセンタの仮想化環境に含まれる。なお、仮想携帯端末は、各携帯端末に対応して複数存在するが、以下では、仮想携帯端末の1つである仮想携帯端末20を例に挙げて説明する。
【0014】
上記構成において、携帯端末10は、例えば、通話や各種通信等を行なう携帯電話機等の携帯端末であり、シンクライアント処理部11と、音声通話処理部12とを有する。また、本願では、携帯端末10の利用者を例えば未成年者であることを想定している。
【0015】
シンクライアント処理部11は、携帯端末10における音声通話以外で、ネットワークを利用する各種機能に関する処理を、遠隔操作によりデータセンタに含まれる仮想化環境で実行させる。具体的には、シンクライアント処理部11は、電子メール、Webコンテンツの閲覧、ゲーム、チャット及び所定のアプリケーション等のネットワークを利用する各種機能に関する処理を、遠隔操作により実行させる。
【0016】
例えば、シンクライアント処理部11は、上記の各種機能に関する処理を仮想化環境で実行させる場合に、監視装置100に対して遠隔操作要求を送信する。そして、シンクライアント処理部11は、遠隔操作要求に対する応答を受信した後、仮想携帯端末20に対して各種機能に関する処理の遠隔操作を実行する。また、シンクライアント処理部11は、遠隔操作で実行している処理を終了する場合に、監視装置100に対して遠隔操作を停止する旨を送信して、遠隔操作を終了する。なお、遠隔操作についてシンクライアント処理部11は、例えば、VNC(Virtual Network Computing)等の画面転送プロトコルを利用し、仮想化環境に様々なイベント(キー、タッチスクリーン、センサ等)を通知する。
【0017】
すなわち、携帯端末10は、仮想化環境を利用してシンクライアント化されているため、該携帯端末10によって本来実行されるネットワークを利用する各種処理は、実際にはデータセンタの仮想化環境で実行されることとなる。携帯端末10は、仮想化環境での処理結果画面を受け取り、該携帯端末10上で結果画面の更新を行なう。なお、携帯端末の各種処理を仮想化環境で実行する技術については、例えば、“「Virtual Smartphone over IP技術」,NTT技術ジャーナル,Vol.22,No.3,pp.45‐48,2010.”を参照すること。
【0018】
音声通話処理部12は、例えば、携帯端末10のアンテナ(図示せず)等を介して他の携帯端末との音声通話に係る処理を実行する。携帯端末10による音声通話は、図1に示すように、仮想化環境を経由せずに該携帯端末10で処理される。
【0019】
仮想携帯端末20は、例えば、携帯端末10から画面転送プロトコル経由で操作され、該携帯端末10のネットワークに関する各種処理を実行するとともに、監視装置100による動作記録の取得要求に対して動作記録を送信する。かかる動作記録とは、画面、キー入力及びインターネットアクセス等の動作に関する記録の情報である。この仮想携帯端末20は、例えば、ネットワーク処理部21を有する。ネットワーク処理部21は、例えば、シンクライアント処理部11からの遠隔操作を受け付けるとインターネットに接続して、ネットワークに関する各種処理を実行し、処理結果を該シンクライアント処理部11に通知する。
【0020】
監視装置100は、仮想携帯端末を監視するVMM(Virtual Machine Monitor)である。具体的には、監視装置100は、シンクライアント処理部11から遠隔操作要求を受け付けた場合に、携帯端末10に対応する仮想携帯端末である仮想携帯端末20の動作の記録を開始するとともに、該仮想携帯端末20に遠隔操作セッションの起動を命令する。そして、監視装置100は、遠隔操作セッション起動を命令すると、シンクライアント処理部11に対して遠隔操作要求に対する応答を送信する。
【0021】
このとき、監視装置100は、仮想携帯端末20の動作の記録データを動作記録蓄積データベース30に格納する。動作記録蓄積データベース30に格納される記録データは、例えば、画面、キー入力及びインターネットアクセス等の動作記録を動画形式等で記録(録画)した記録データである。また、監視装置100は、シンクライアント処理部11から遠隔操作の停止要求を受け付けた場合に、仮想携帯端末20の動作の記録を終了する。
【0022】
動作記録蓄積データベース30は、例えば、仮想携帯端末20で実行された動作の記録データを記憶する。情報処理装置40は、例えば、動作記録蓄積データベース30へのアクセス権限が付与されたPC等であり、任意にアクセスして動作記録を取得し、携帯端末10のネットワークの利用状況を表示部に出力する。また、本願では、情報処理装置40の利用者を例えば携帯端末10を利用する未成年者の保護者であることを想定している。つまり、保護者は、情報処理装置40を適宜利用して、子供の携帯電話機のネットワークに関する利用履歴を閲覧及び把握する。
【0023】
[監視装置の構成]
次に、図2を用いて、本実施例に係る監視装置100の構成を説明する。図2は、本実施例に係る監視装置100の構成例を示す図である。例えば、図2に示すように、監視装置100は、携帯端末等の外部装置によって遠隔操作される該携帯端末に対応する仮想携帯端末を監視するVMMであり、記憶部110と制御部120とを有する。
【0024】
記憶部110は、例えば、制御部120による各種処理に要するデータや、制御部120による各種処理結果を記憶する。なお、図1に示した動作記録蓄積データベース30は、記憶部110に含まれていても良いし、監視装置100の外部に配置されていても良い。
【0025】
制御部120は、例えば、制御プログラム、各種の処理手順等を規定したプログラム及び所要データを格納するための内部メモリを有するとともに、動作記録開始部121と、起動命令部122と、動作記録終了部123とを有する。
【0026】
動作記録開始部121は、例えば、携帯端末から遠隔操作の要求を受け付けた場合に、該携帯端末に対応する仮想携帯端末での動作の記録を開始する。このとき、動作記録開始部121は、仮想携帯端末の動作の記録データを記憶部110又は外部の記憶装置に格納する。
【0027】
起動命令部122は、例えば、動作記録開始部121による記録の開始とともに、仮想携帯端末に対して遠隔操作に対するセッションの起動を命令する。なお、起動命令部122は、遠隔操作セッションの起動を命令した場合に、携帯端末に対して遠隔操作要求に対する応答を送信する。
【0028】
動作記録終了部123は、例えば、携帯端末から遠隔操作の停止要求を受け付けた場合に、仮想携帯端末での動作の記録を終了する。このとき、動作記録終了部123は、動作の記録の終了とともに、仮想携帯端末に対して遠隔操作に対するセッションの停止を命令する。なお、動作記録終了部123は、遠隔操作セッションの停止を命令した場合に、携帯端末に対して遠隔操作の停止要求に対する応答を送信する。
【0029】
[処理シーケンス]
次に、図3を用いて、本実施例に係る全体処理を説明する。図3は、本実施例に係る全体処理の流れの例を示す処理シーケンス図である。なお、図3では、携帯端末10と、監視装置100と、仮想携帯端末20と、情報処理装置40とを示している。
【0030】
例えば、図3に示すように、携帯端末10は、音声通話以外のネットワーク機能を利用する際に、該携帯端末10に対応する仮想携帯端末20を監視する監視装置100に対して、遠隔操作要求を送信する(ステップS101)。遠隔操作要求を受信した監視装置100は、仮想携帯端末20の動作の記録を開始する(ステップS102)。
【0031】
このとき、監視装置100は、仮想携帯端末20に遠隔操作セッションの起動を命令する(ステップS103)。なお、監視装置100は、仮想携帯端末20からセッション起動に対する応答を受け付けると、携帯端末10に対して遠隔操作要求の応答を送信する。つまり、携帯端末10は、監視装置100からの応答を受け付けてから遠隔操作が可能となる。
【0032】
その後、携帯端末10は、仮想携帯端末20に対して、ネットワークを利用する各種機能に関する遠隔操作を実行する(ステップS104)。遠隔操作を受け付けた仮想携帯端末20は、該当する機能に関する処理を実行するとともに、監視装置100に対して動作記録のデータを送信する(ステップS105)。動作記録のデータを受信した監視装置100は、受信された動作記録のデータを動作記録蓄積データベース30等の所定の記憶装置に格納する(ステップS106)。
【0033】
また、携帯端末10は、ネットワーク機能の利用を中止する際に、監視装置100に対して遠隔操作の停止の旨を送信する(ステップS107)。遠隔操作停止の旨を受信した監視装置100は、仮想携帯端末20の動作の記録を停止する(ステップS108)。このとき、監視装置100は、動作の記録の停止とともに、仮想携帯端末20に対して遠隔操作に対するセッションの停止を命令し、携帯端末10に対して遠隔操作の停止要求に対する応答を送信する。
【0034】
また、情報処理装置40は、任意のタイミングで監視装置100又は動作記録蓄積データベース30にアクセスして、携帯端末10に対応する動作記録を取得する(ステップS109)。なお、情報処理装置40は、取得された動作記録について、携帯端末10のネットワークの利用状況として表示部に出力する。
【0035】
[実施例による効果]
上述したように、監視装置100は、携帯端末によって遠隔操作される仮想携帯端末上で実行されるネットワークを利用する各種機能について、動作記録を保存するので、携帯端末上での特定のアプリケーションによる実行のみを監視する従来技術と比較して、ペアレンタルコントロールの回避を抑制することができる。
【0036】
なお、上記文書中や図面中などで示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータなどを含む情報(例えば、動作記録蓄積データベース30の具体的名称等)については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0037】
また、図示した各装置の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は、図示のものに限られず、その全部または一部を各種の負担や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る監視装置及び監視方法は、外部装置によって遠隔操作される該外部装置に対応する仮想外部装置を監視する場合に有用であり、特に、ペアレンタルコントロールの回避を抑制することに適する。
【符号の説明】
【0039】
100 監視装置
110 記憶部
120 制御部
121 動作記録開始部
122 起動命令部
123 動作記録終了部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置によって遠隔操作される該外部装置に対応する仮想外部装置を監視する監視装置であって、
前記外部装置から遠隔操作の要求を受け付けた場合に、前記仮想外部装置での動作の記録を開始する動作記録開始部と、
前記動作記録開始部による記録の開始とともに、前記仮想外部装置に対して前記遠隔操作に対するセッションの起動を命令する起動命令部と、
前記外部装置から遠隔操作の停止要求を受け付けた場合に、前記仮想外部装置での動作の記録を終了する動作記録終了部と
を有することを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記動作記録終了部は、前記外部装置から遠隔操作の停止要求を受け付けた場合に、前記仮想外部装置に対して前記遠隔操作に対するセッションの停止を命令するとともに、前記仮想外部装置での動作の記録を終了することを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記動作記録開始部は、記録された動作記録を所定の記憶部に格納することを特徴とする請求項1又は2に記載の監視装置。
【請求項4】
外部装置によって遠隔操作される該外部装置に対応する仮想外部装置を監視する監視装置で実行される監視方法であって、
前記外部装置から遠隔操作の要求を受け付けた場合に、前記仮想外部装置での動作の記録を開始する動作記録開始ステップと、
前記動作記録開始ステップによる記録の開始とともに、前記仮想外部装置に対して前記遠隔操作に対するセッションの起動を命令する起動命令ステップと、
前記外部装置から遠隔操作の停止要求を受け付けた場合に、前記仮想外部装置での動作の記録を終了する動作記録終了ステップと
を含んだことを特徴とする監視方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−49690(P2012−49690A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188268(P2010−188268)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】