説明

目地用受樋装置

【目的】 良好な外観を呈し、かつ建築構造物x,xの移動に対する追従性能の優れた目地用受樋装置の提供を目的とする。
【構成】 本考案は、一方の建築構造物xに固定された固定板1に対してホルダー10を回動可能に、かつ発条15により上方付勢して連結することにより保持装置20を構成し、目地yに沿って設けられた複数の保持装置20により受樋21の両側板22の上縁を固定して保持し、目地yから流下する液滴を受樋21で受けて排出するようにしたものであるため、下方からは保持装置20を確認することができず、さらには建築構造物x,x相互が三次元方向へ相対移動した場合にも、保持装置20及び受樋21に歪を生じさせることなく、これに追従できる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は隣接する建築構造物の天井面間に生ずる目地を覆って、該目地から流下する液滴を受けて排出する受樋を備える目地用受樋装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築構造物の天井面間に生ずる目地からは、結露、雨水の流入等により液滴が流下するため、該目地を受樋で覆う場合がある。
この受樋を支持するための目地用受樋装置として、夫々の天井面に受樋の両側板を固定するようにした単純構成になるものがあるが、かかる構成によると、地震や暴風雨によって建築構造物相互が上下、左右及び前後方向に揺れると、これに伴って前記受樋の取付部に亀裂を生じ、場合によっては建築構造物の天井面を損傷させることがある。また前記建築構造物の天井面相互は必ずしも同一平面となっていない場合もある。
そこで、これに対応するものとして図3の構成の目地用受樋装置aが提案された。この受樋装置aは、コ字状受樋bを受け金具cで支持するものであり、該受け金具cはその両端に取付突縁d,eが連成されており、一方の取付突縁dを目地yを介して隣接する建築構造物x,xの一方の天井面zに固定し、他方の取付突縁eを他方の天井面zに固定した挿通金具f内に挿入するようにしてなる。そして、建築構造物x,xが左右方向へ相対移動した場合には、前記取付突縁eが挿通金具f内を移動して、これを吸収するようにしている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、かかる構成はコ字状受樋bを所定間隔で配設した複数の受け金具cで下方から支持するものであるために、各受け金具cが外部に露出して美観を損ねていた。またかかる構成にあっては、建築構造物x,xが上下方向へ相対移動した場合や、目地yに沿って相対移動した場合にはこれに追従できず、追従性能が不充分であり、受け金具cの変形や天上面z,zの損傷を生じ易いという欠点があった。
本考案は、良好な外観を呈し、かつ建築構造物x,xの移動に対する追従性能の優れた目地用受樋装置の提供を目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案は、目地を介して隣接する建築構造物の、一方の天井面に固定される固定体と、両建築構造物の天井面間に差し渡されるホルダーとを備え、前記固定体に回動支持部を形成して、前記ホルダーの内面に形成した回動腕と回動可能に連結し、さらに固定体と、ホルダーの内面間に発条を付装して、該発条によりホルダーを前記連結部を支点として両天井面側に付勢して保持装置を構成し、該保持装置を目地に沿って複数配設して、上方へ開口する受樋の両側板の各端縁を各ホルダーに固定するようにしたことを特徴とするものである。
【作用】
ホルダーは回動支持部と回動腕との連結部を支点として前記発条により付勢され、両天井面に密接して受樋を支持する。この構成にあっては、下方からは前記ホルダーを視認することができず、受樋の底面のみが臨まれる。
かかる構成にあって、前記建築物相互が隣接方向又は目地に沿って相対移動した場合には他方の建築構造物の天井面とホルダーは連結していないから該相対移動を吸収する。また、前記建築物相互が上下方向に相対移動した場合には、前記連結部を支点としてホルダーが傾動し、該相対移動を吸収する。而て、いずれの方向の相対移動が生じてもホルダーに歪を生じることなく受樋は支持される。さらには前記建築構造物の天井面相互の関係がいびつの場合には前記ホルダーの傾斜により、受樋は目地を整一に覆うこととなる。
【0008】
【実施例】
添付図面について本考案の一実施例を説明する。
図1,2にあって、20は、固定板1とホルダー10とからなる保持装置であって、該保持装置20により後述するように受樋21が目地yに沿って固定されされることとなる。
ここで固定板1は図中左側の建築構造物xの角部に当接するL形の短尺板からなり、その天井面zに接する左右辺部の左端には円形溝を有する回動支持部2が形成され、目地y内の天井面zに接する上下辺部の上端には円孔3を穿設された係止片4が設けられている。前記固定板1は、前記左右辺部に設けられた巾方向に長い上下の長孔5,5から天井面zに埋設された固結プラグ7に固定螺子8を螺合することにより、図中右側の角部に沿って適宜間隔で固定される。
ホルダー10は矩形板状からなりその図中左右端には当接片11,11が直角状に後方突出している。また前記ホルダー10の図中左端部には先端が回動支持部2の円形溝と同径の円形隆部を有する連結腕12が直角突出し、該隆部を前記回動支持部2の円形溝内に嵌入している。さらにホルダー10の略中央部には円孔14が穿設されたL形の係止鈎片13が設けられていて、前記固定板1の係止片4の円孔3と、前記円孔14に発条15の両端が掛けられ、これによりホルダー10を回動支持部2と連結腕12との連結部を支点として、天井面z側に付勢している。そして該付勢によりホルダー10の右端の当接片11は天井面zに圧接することとなる。
この取付け状態において、前記ホルダー10は回動支持部2と連結腕12による連結部に支持され、かつ係止鈎片13を発条15により引張され、その巾方向において二点支持となって、固定板1に確実に保持される。
前記固定板1とホルダー10とからなる保持装置20は、目地yに沿って適宜間隔で配設され、前記ホルダー10に受樋21が固定される。この受樋21は断面コ字状の上方に開口するステンレス等からなる長尺金物によって構成されており、その両側板22,22の上端をL形に屈曲させて取付け縁23,23を生じさせている。そして、前記ホルダー10の上端部に固定したL形アングル17,17に前記取付け縁23,23を側面から当ててビス24で固定するようにしている。
而して、受樋21は、複数の保持装置20によって支持されて取付けられ、目地yから流下する液滴を受けることとなる。
かかる構成にあって、地震や暴風雨等によって建築構造物x,x相互が揺動した場合において、図1の二点鎖線のように建築構造物x,x間に図中左右方向の近接又は離間が生じたときには、前記ホルダー10の右端は右の建築構造物xの天上面zに対して開放状態にあるから、前記ホルダー10の右側の11が天井面zに摺擦するだけで、該ホルダー10に歪を生じることなく該移動を許容し得る。また建築構造物x,xに図中上下方向への相対移動を生じたときには、図1の一点鎖線のように前記連結部を支点としてホルダー10は傾動可能であるから、該移動に伴って前記ホルダー10の傾動を生ずるのみで前記移動を許容し得る。
同様に前記建築構造物x,xの天井面z,z相互が図中上下にずれている場合でも、前記連結部を支点とする傾斜により、ホルダー10は該天井面z,zに整一に当接し得る。
而して、この保持装置20の作用により受樋21は、常に安定して保持されることとなる。
前記実施例において回動支持部2に円形隆部を設け、連結腕12に該円形隆部に外嵌する円形溝を設けてもよい。その他、回動支持部2と連結腕12は回動可能に連結され得るもの、例えば軸支持によるもの等種々任意に適用できる。
【0009】
【考案の効果】
本考案は、上述したように、一方の建築構造物xに固定された固定板1に対してホルダー10を回動可能に、かつ発条15により上方付勢して連結することにより保持装置20を構成し、目地yに沿って設けられた複数の保持装置20により受樋21の両側板22の上縁を固定して保持し、目地yから流下する液滴を受樋21で受けて排出するようにしたものであるため、下方からは保持装置20を確認することができず、受樋21の底面のみが露呈することとなって、美麗な取付け状態を維持でき、さらには建築構造物x,x相互が三次元方向へ相対移動した場合にも、保持装置20及び受樋21に歪を生じさせることなく、これに追従でき、整一な受樋21の取付け状態を維持できる等の優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】取付け状態を示す縦断側面図である。
【図2】保持装置20の分離斜視図である。
【図3】従来構成の縦断側面図である。
【符号の説明】
1 固定板
2 回動支持部
10 ホルダー
12 連結腕
15 発条
20 保持装置
21 受樋
22,22 両側板
x,x 建築構造物
y 目地
z,z 天井面

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】目地を介して隣接する建築構造物の、一方の天井面に固定される固定体と、両建築構造物の天井面間に差し渡されるホルダーとを備え、前記固定体に回動支持部を形成して、前記ホルダーの内面に形成した回動腕と回動可能に連結し、さらに固定体と、ホルダーの内面間に発条を付装して、該発条によりホルダーを前記連結部を支点として両天井面側に付勢して保持装置を構成し、該保持装置を目地に沿って複数配設して、上方へ開口する受樋の両側板の各端縁を各ホルダーに固定するようにしたことを特徴とする目地用受樋装置

【図1】
image rotate


【図3】
image rotate


【図2】
image rotate


【公開番号】実開平5−61303
【公開日】平成5年(1993)8月13日
【考案の名称】目地用受樋装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−73853
【出願日】平成3年(1991)8月20日
【出願人】(592094243)カネソウ株式会社 (73)