説明

目地隙のないタイルカーペット及びその製造方法

【課題】タイルカーペットを床に敷いたとき、隣あうタイルカーペットの周辺縁部に隙間(目地隙)ができないタイルカーペットを得ることを課題とする。
【解決手段】本発明は、裁断したタイルカーペットの周辺縁部のパイル糸を、裏打ち層及び基布の端よりも外側に出るように押さえローラーで倒すことによって、隣あうタイルカーペットに隙間(目地隙)のできないタイルカーペットが得られることを見出し、本発明に至ったものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイルカーペットを床に敷いたとき、隣あうタイルカーペットの周辺縁部に隙間(目地隙)と毛羽立ちの目立たないタイルカーペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイルカーペットの一般的な製造方法としては、パイル糸と基布からなる表皮層に、樹脂組成物からなる裏打ち層を積層してパイル糸と基布を樹脂組成物で固定し、さらに寸法安定性を付与するために、ガラス基布等が樹脂組成物中に挿入され、安定した状態にしてから、50cm角に打ち抜き裁断して作られる。打ち抜き裁断をする位置は、必ずしもカーペットの同じ位置で打ち抜かれるわけではなく、タイルカーペットの周辺縁部のパイル糸の根元近くであったり(図1のA B Cの位置)、パイル糸の根元から離れた位置(図1のDの位置)であったりして一定していしない。このため、特にパイル長の低いループタイルカーペットを、ランダムに床に敷いたとき、隣あうタイルカーペットの周辺縁部に隙間(目地隙)ができることがあり、好ましいものではなかった。
【0003】
また、パイル糸が、図1のA B Cの位置のようにパイル糸の途中で裁断された場合は使用中に毛羽立ちと称して、周辺縁部にフィラメントが出てくることがあり、好ましいものではなかった。なお、本明細書において最も端のパイル糸列とは、タイルカーペットの周辺縁部のパイル糸列の中で最も外側に植設されたパイル糸の列部分(図2の8の位置)をいうものである。
【0004】
特許文献1においては、裏打ち層の上層部の明度(L値)を60以上にすることにより、タイルカーペットの結合部の明度の低下を防ぎ目地がきれいになる技術を開示している。しかし、該技術では、裏打ち層の上層部の明度(L値)をパイル糸の色相との組み合わせに合わせて何種類もの裏打ち層用の樹脂を用意しなければならず、管理や樹脂交換等の作業がたいへんで満足のいくものではなかった。
【0005】
特許文献2においては、カーペットを所定の形状及び寸法に裁断した後、水蒸気または水で加湿し、熱処理することにより、パイル糸を膨らますことになり、タイルカーペット間のパイルに隙間がなく、美観に優れたタイルカーペットを得る技術を開示している。しかしながら該技術では、大量の熱量を必要とすることからコストが嵩み満足のいくものではなかった。
【特許文献1】特開2001−192982号公報
【特許文献2】特開2004−81283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイルカーペットを床に敷いたとき、隣あうタイルカーペットの周辺縁部に隙間(目地隙)ができなくて毛羽立ちの目立たないタイルカーペットを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、裁断したタイルカーペットの周辺縁部のパイルを、基布及び裏打ち層の端よりも外側に出るように倒すことによって、隣あうタイルカーペットに隙間(目地隙)のできないタイルカーペットが得られることを見出し、本発明に至ったものである。上記課題を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]パイル糸と基布と裏打ち層とからなるタイルカーペットにおいて、全ての周辺縁部の前記パイル糸のうち少なくとも最も端のパイル糸列が、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に出ていることを特徴とするタイルカーペット。
【0009】
[2]パイル糸と基布と裏打ち層とからなるタイルカーペットにおいて、全ての周辺縁部の前記パイル糸のうち少なくとも最も端のパイル糸列が、加熱しながら押さえられ、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に出ていることを特徴とするタイルカーペット。
【0010】
[3]パイル糸と基布と裏打ち層とからなるタイルカーペットにおいて、全ての周辺縁部の前記パイル糸のうち少なくとも最も端のパイル糸列が、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に押さえられ、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に出るようにしたタイルカーペットの製造方法。
【0011】
[4]パイル糸と基布と裏打ち層とからなるタイルカーペットにおいて、全ての周辺縁部の前記パイル糸のうち少なくとも最も端のパイル糸列が、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に加熱しながら押さえられ、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に出るようにしたタイルカーペットの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
[1]の発明では、パイル糸と基布と裏打ち層とからなるタイルカーペットにおいて、周辺縁部の前記パイル糸の少なくとも一列のパイル糸端が、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に出ているので、タイルカーペットを敷設するときに隣どうしのパイル糸端が接触するようになり、隙間(目地隙)が目立たないタイルカーペットとすることができる。
【0013】
[2]の発明では、周辺縁部のパイル糸が、加熱しながら押さえられ、基布及び記裏打ち層の端よりも外側に出るようにセットされるので、毛羽立ちがおさえられ、隙間(目地隙)が目立たないタイルカーペットとすることができる。
【0014】
[3]の発明では、タイルカーペットの全ての周辺縁部の前記パイル糸のうち少なくとも最も端のパイル糸列が、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に出るように押さえるので、タイルカーペットの隣どうしのパイル糸端が接触するようになり、隙間(目地隙)が目立たないタイルカーペットの製造方法とすることができる。
【0015】
[4]の発明では、タイルカーペットの全ての周辺縁部の前記パイル糸のうち少なくとも最も端のパイル糸列が、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に加熱しながら押さえられるので熱セットされ、隙間(目地隙)が目立たなく毛羽立ちのおさえらた、タイルカーペットの製造方法とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のタイルカーペットについて、図面を参照して詳細に説明する。図1は通常に加工され裁断される状態のタイルカーペットの裁断位置の例を示しており、裁断される位置によって様々な周辺縁部の形状となる。最大では、タフティング機のゲージ分(ニードル間隔)の幅分だけ、基布及び裏打ち層の端から入った位置で裁断されることもある。また、裁断される位置により、パイル糸の切られ方も位置がずれることにより、AからDのように様々なパイル糸の形状となっている。Aのような場合、タイルカーペットを使用していると、周辺縁部からパイル糸がかきあげられて毛羽立った状態となり好ましくない。Dのような状態は丁度パイルとパイルの中間で裁断され、パイル糸がカットされていないので、毛羽立ちのような問題は避けられる。
【0017】
図2は本発明のタイルカーペットを示している。本発明はタイルカーペットの周辺縁部にあてられる押さえローラー5によってパイル糸2を外側に倒すように押さえることにより、パイル糸を横に広げ、パイル糸を基布及び裏打ち層の端(6,7)よりも外側に出るように押さえるものである。押さえローラーは5傾斜していることから、タイルカーペットの周辺縁部から一列目のパイル糸が最も強く押さえられ、パイル糸端は、基布及び裏打ち層の端(6,7)よりも外側に出るようにセットされる。この時、押さえローラー5をパイル糸がやわらかくなる程度に加熱して押さえるとさらに効果的にセットすることができ、毛羽立ちを効果的に防ぐことができる。
【0018】
また、本発明はタイルカーペットの製造ラインにおいて、裁断工程に引き続きおこなってもよいし、裁断後に別工程として行ってもよいが、加工工程の余熱が僅かに残っている状態で、裁断工程に引き続き行うほうが効率的である。始めに加工時の進行方向の両サイドを押さえローラーで押さえ、次にタイルカーペットの方向をかえ、まだ押さえていない二辺を押さえローラーで押さえるようにしてやればよい。
【実施例】
【0019】
<実施例1>
1/8ゲージループパイルのタフティング機において、ポリエステルスパンボント基布に、2770デシテックス132fのナイロン原着糸を植設し、パイル目付680g/m、パイル長4mmのループパイルのカーペット表皮層を作成した。次にこの表皮層の裏面側に目止め用樹脂組成物(PVC)を80g/mで塗工して目止めを施したカーペット基材層を作成した。次に、ガラス基布(目付け40g/m)を挿入した裏打ち層(PVCと充填剤)に重ねあわせ、加熱圧着の後、冷却工程を経て、50cm角の大きさに裁断しタイルカーペットを作成した。引き続き、このタイルカーペットの周辺縁部のパイル部分に押さえローラーを45度にあて、パイル糸の端が、裏打ち層の端よりも外側に出るように押さえタイルカーペットを得た。このタイルカーペットを床に敷いてみたところ、目地隙の目立たない良好なつなぎ目となっていた。
【0020】
<実施例2>
実施例1において、押さえローラーとして130度に加熱した押さえローラーとした以外は実施例1と同様にしてタイルカーペットを得た。このタイルカーペットを床に敷いてみたところ、目地隙の目立たない良好なつなぎ目となり、毛羽立ちも目立たなかった。
【0021】
<比較例1>
実施例1において、押さえローラーをタイルカーペットの周辺縁部のパイル部分にあてないタイルカーペットとした以外は実施例1と同様にしてタイルカーペットを得た。このタイルカーペットを床に敷いてみたところ、目地隙のよく目立ったつなぎ目となっていた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一般的なタイルカーペットにおける裁断位置の代表例を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態の関係を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態の関係を示す概略図である。
【符号の説明】
【0023】
1 タイルカーペット
2 パイル糸
3 基布
4 裏打ち層
5 押さえローラー
6 基布の端
7 裏打ち層の端
8 パイル糸端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイル糸と基布と裏打ち層とからなるタイルカーペットにおいて、全ての周辺縁部の前記パイル糸のうち少なくとも最も端のパイル糸列が、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に出ていることを特徴とするタイルカーペット。
【請求項2】
パイル糸と基布と裏打ち層とからなるタイルカーペットにおいて、全ての周辺縁部の前記パイル糸のうち少なくとも最も端のパイル糸列が、加熱しながら押さえられ、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に出ていることを特徴とするタイルカーペット。
【請求項3】
パイル糸と基布と裏打ち層とからなるタイルカーペットにおいて、全ての周辺縁部の前記パイル糸のうち少なくとも最も端のパイル糸列が、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に押さえられ、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に出るようにしたタイルカーペットの製造方法。
【請求項4】
パイル糸と基布と裏打ち層とからなるタイルカーペットにおいて、全ての周辺縁部の前記パイル糸のうち少なくとも最も端のパイル糸列が、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に加熱しながら押さえられ、前記基布及び前記裏打ち層の端よりも外側に出るようにしたタイルカーペットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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