説明

直交横モードダイバーシティを利用した干渉イメージング

【課題】スペックルを低減し、効率的に実装可能な干渉イメージングの技法を提供する。
【解決手段】本発明は、直交横モードダイバーシティを利用した干渉イメージングシステムを提供する。このシステムは、電磁放射の干渉ビームを形成し、該干渉ビームを物体のスポット上に合焦するよう構成された送信システムと、物体から反射された干渉ビームの一部を受信するよう構成された受信システムと、を有する。送信システムおよび受信システムの一方が、物体のスポット上に合焦される干渉ビーム又は物体から反射した干渉ビームの部分を一組の直交横空間モードを介して配列するよう構成されているビームコントローラを含んでいる。また、システムは、受信システムと信号通信状態にあり、干渉ビームの一組の直交横空間モードに応答して生成された信号を加算するよう構成された加算ロジックを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉イメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁放射の干渉ビーム(coherent beam)によって物体の画像を生成する際には、しばしば、スペックル現象(phenomenon of Speckle)(即ち、アパーチャ(aperture、開口部)及び視野上で交互に生じる肯定的(constructive)及び否定的(destructive)干渉に起因する画像の粒状のランダムな明暗の出現)によって苦しむことになる。その電磁放射源が完全に干渉性である場合には、スペックルの程度は、3つの微小なパラメータ(波長の観点における物体の二乗平均粗度(roughness)、波長を単位とする表面特徴間の平均横方向間隔、及び照射領域内の特徴の数)によって左右される。多くの種類のレーザー照明(特に、ホログラフィ)は、スペックル問題を伴っており、これは、光波長の略半分以上だけ、高さが平均高さを逸脱している照射領域内の特徴の数が非常に多いためである。一方、このような干渉イメージング(coherent imaging)とは対照的に、非干渉イメージング(incoherent imaging)の場合には、スペックルに対する耐性を有しており、これは、その供給源から、物体、そして、検出器(例:網膜、フィルム、CCDアレイ)に至る一組の光学経路が否定的に作用するのが、関係する波長の一部においてのみであることによるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
干渉イメージングシステムのスペックルに対処するいくつかの技法においては、周波数ダイバーシティ(diversity、多様性)又は角度ダイバーシティを利用して、交互に変化する肯定的及び否定的な干渉の発生を低減している。しかしながら、これらの技法によれば、スペックルを低減可能であるものの、周波数ダイバーシティの有用性は、対象とする特定のマイクロ波領域内におけるスペクトルの不足によって制限を受け、角度ダイバーシティの有用性も、機械的及び費用的な側面において制限を受けている。
【0004】
従って、以上のような状況に鑑み、スペックルを低減すると共に、効率的に実装可能な干渉イメージングの技法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電磁放射の干渉ビームによって物体の画像を生成する技法は、干渉ビームの少なくも一部を一組の直交横空間モード(orthogonal transverse spatial modes)を介して配列するステップと、この一組の直交横空間モードから結果的に生成される出力信号を加算するステップと、を含む。物体の画像を生成するには、干渉ビームを物体上の複数のスポットに照射し、それぞれのスポットごとに、この干渉ビームを同一の一組の直交横空間モードを介して配列する。そして、この配列から生成された出力信号をスポットごとに加算する。それぞれのスポットにおいて、干渉ビームの少なくとも一部を一組の直行横空間モードを介して配列するステップの結果、イメージングシステムに対して直交横モードダイバーシティが付与され、取得画像情報内のスペックルが低減されることになる。
【0006】
本発明のその他の態様と利点については、本発明の原理を一例として示している添付の図面との関連で、以下の詳細な説明を参照することにより、明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下の説明においては、類似の参照符号を使用して類似の要素を識別している。
【0008】
電磁放射の干渉ビームによって物体の画像を生成する技法は、干渉ビームの少なくとも一部を一組の直交横空間モードを介して配列するステップと、この一組の直交横空間モードから結果的に生成される出力信号を加算するステップと、を含む。物体の画像を生成するには、その物体上の複数のスポットに干渉ビームを照射し、それぞれのスポットにおいて、この干渉ビームを同一の一組の直交横空間モードを介して配列する。そして、この配列するステップから生成される出力信号をスポットごとに加算する。
【0009】
図1は、直交横モードダイバーシティを利用した干渉イメージングを実行するよう構成されたイメージング(imaging、画像生成)システム10の実施例を示している。このイメージングシステムは、送信システム12、受信システム14、加算ロジック16、システムコントローラ18、及び物体22の画像を生成するよう構成された出力システム20を含んでいる。送信システムは、干渉送信機(coherent transmitter)26と送信ビームコントローラ28を含んでいる。干渉送信機26は、電磁放射の干渉ビーム30を形成し、このビームは、送信ビームコントローラ28に向かって案内される。尚、本明細書においては、この干渉送信機26、送信ビームコントローラ28、及び物体22間に存在している干渉ビームの部分を「送信ビーム」と呼ぶこととする。又、図示されてはいないが、干渉送信機26は、当技術分野において周知の電磁放射源及びアンテナを含むことが可能である。本明細書に記述されている実施例の場合には、干渉送信機26は、高周波(RF)レンジの電磁放射を生成しているが(例:約3kHz〜300GHz)、可視、X線、及び赤外レンジを含むその他のレンジの電磁放射も可能である。
【0010】
送信ビームコントローラ28は、干渉送信機26から送信ビームを受信し、この送信ビームを物体22上のスポット32上に合焦するよう構成されている。又、送信ビームコントローラ28は、物体22を走査するために、送信ビームの焦点を移動させるべく構成されてもいる。この送信ビームコントローラ28は、機械的又は電気的制御メカニズムを利用することにより、送信ビームを合焦及び移動させることができる。使用可能な機械的メカニズムには、ジンバル、レンズ、ミラー、又はこれらの組み合わせが含まれる。一方、使用可能な電気的制御メカニズムには、フェーズドアレイ(phased array)又はリフレクトアレイ(reflect array)が含まれる。又、送信ビームを制御するためのその他のメカニズムも可能であり、これには、機械的及び電気的メカニズムの組み合わせが含まれる。送信ビームコントローラ28は、ライン42によって示されているシステムコントローラ18からの信号に応答して、干渉ビームを制御している。
【0011】
受信システム14は、干渉受信機36と受信ビームコントローラ38を含んでいる。受信ビームコントローラ38は、物体22から反射された干渉ビーム30の一部を受信する。通常、この物体22は、入射する干渉ビームを散乱させるランダムな表面の不規則性を具備しており、この結果、入射した干渉ビームの一部のみが、受信システムに向かって反射されることになる。又、この受信システムに向かって反射される入射干渉ビームの部分は、位相面収差(phase front aberrations)を受け、この結果、実際に受信されるパワーが大幅に減少する場合がある。尚、本明細書においては、物体22、受信ビームコントローラ38、及び干渉受信機36の間に存在している干渉ビームの部分を「受信ビーム」と呼ぶこととする。動作の際には、受信ビームコントローラ38は、結果的に生成される信号強度を極大化するよう、送信ビームコントローラ28と同一の物体22のスポット32上に合焦されることになる。又、この受信ビームコントローラ38は、その焦点と干渉受信機36との関連において、受信ビームが干渉受信機36に向かって反射されるように配置されている。受信ビームコントローラ38は、送信ビームコントローラ28に類似した機械的又は電気的制御メカニズムを利用することにより、焦点を調節し、反射した受信ビームを干渉受信機36に案内している。この受信ビームコントローラ38は、ライン44によって示されているシステムコントローラ18からの信号に応答して調節されている。
【0012】
本発明によれば、受信ビームコントローラ38は、受信ビームを一組の直交横空間モードを介して配列するよう構成されている。ここで、「直交横空間モード(orthogonal transverse spiral modes)」とは、一般的に、焦点面上でその相互オーバーラップの積算がゼロになる電磁モードとして定義されるものである。直交横空間モードの例には、エルミート・ガウシアン(Hermite-Gaussian)モードが含まれ、これについては、図5(A)〜(D)を参照して後程詳述する。この受信ビームを一組の直交横空間モードを介して配列するステップの結果、イメージングシステム10に直交横モードダイバーシティが付与され、この結果、後述するように、取得画像情報内のスペックルが低減することになる。受信ビームコントローラ38は、機械的メカニズム、電気的メカニズム、又はこれらの組み合わせを使用して、これらの直交横空間モードを形成している。干渉ビームの合焦、干渉ビームの操縦、及び干渉ビームの一組の直交横空間モードを介した配列の各作業には、フェーズドアレイやリフレクトアレイなどの電気的メカニズムが特に適している。図1に示されているように、この受信ビームコントローラ38を制御する信号には、モード形成信号が含まれている。
【0013】
干渉受信機36は、受信ビームコントローラ38から反射された受信ビームを受信し、これに応答して、出力信号を生成する。この出力信号は、受信した電磁放射のパワーを表している。そして、この出力信号は、実装に応じて、アナログ又はデジタル信号として処理するよう、加算ロジック16に供給される。尚、図示されてはいないが、干渉受信機36には、当技術分野において周知のアンテナ及び受信機電子回路を含むことができる。
【0014】
加算ロジック16は、干渉受信機36からの出力信号を加算し、受信パワーの合計を表す加算値を生成する。この加算ロジックは、実装に応じて、アナログ又はデジタル信号を加算するよう構成されている。一実施例においては、出力信号は、デジタル信号として処理されている。この加算ロジックは、ハードウェア、ソフトウェア、若しくはファームウェア、またはこれらの組み合わせに基づいたものであってよい。後程詳述するように、加算ロジックは、通常、走査対象のそれぞれの新しいスポットごとに(ライン46によって示されているように、システムコントローラからのリセット信号に応答して)リセットされる。そして、この加算ロジックによって生成された加算値は、ライン48によって示されているように、システムコントローラに対して供給されることになる。
【0015】
システムコントローラ18は、このイメージングシステム10の動作を制御している。特に、システムコントローラ18は、送信ビームコントローラ28及び受信ビームコントローラ38の動作と加算ロジック16のリセットを管理している。又、送信及び受信ビームコントローラに関連し、システムコントローラ18は、これらのビームコントローラが、物体22の同一のスポット32上に同時に合焦し、物体22の所望の領域を走査するよう焦点を移動させるようにする制御信号を供給している。又、システムコントローラ18は、受信ビームを一組の直交横空間モードを介して配列する制御信号(即ち、モード形成信号(mode forming signal))を受信ビームコントローラ38に供給している。更には、システムコントローラ18は、リセット信号を加算ロジックに供給し、加算ロジック16から加算値を受信し、ライン50によって示されているように、出力信号(即ち、イメージング情報(imaging information))を出力システム20に供給している。尚、この図1の実施例においては、システムコントローラ18は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを利用してイメージングシステムを制御しイメージング情報を供給するマイクロプロセッサに基づいたシステムである。
【0016】
出力システム20は、システムコントローラ18からのイメージング情報の出力をサポートしている。この出力システムには、当技術分野において周知のディスプレイ装置、プリンタ装置、メモリ装置、又はこれらの組み合わせを含むことができる。一実施例においては、イメージング情報は、物体22のグラフィカルな表示画像として出力される。例えば、物体22が人間の身体であるセキュリティスクリーニングアプリケーション(security screening application)においては、身体上に存在する特定の物体(例:武器や爆発物)に加えて身体の詳細な画像として、イメージング情報を提示可能である。
【0017】
動作の際には、イメージングシステムの移動、物体の移動、又はこれらの組み合わせにより、イメージングシステム10及び物体22を互いに許容可能な範囲内に配置する。マイクロ波アプリケーションの場合の許容可能範囲は、所望の分解能によって左右される。高い空間分解能を得るには、この範囲を送信/受信コントローラのアパーチャの直径程度にすることができよう。一方、空間分解能の重要性が低い場合には、この範囲は、任意の大きなものにすることができる。干渉送信機26によって電磁放射の干渉ビームが形成され、この結果、この干渉ビーム30(即ち、送信ビーム)が、干渉送信機26から送信ビームコントローラ28に伝播する。送信ビームコントローラ28が、この送信ビームを物体22のスポット32上に反射し、合焦する。そして、この送信ビームの一部が、物体22から受信ビームコントローラ38に向かって反射される。前述のように、本明細書においては、この物体22、受信ビームコントローラ38、及び干渉受信機36間に存在している干渉ビームの部分を「受信ビーム」と呼んでいる。そして、この受信ビームコントローラ38の構成に起因し、受信ビームは、受信ビームコントローラ38から干渉受信機36に向かって案内されることになる。尚、この送信ビームコントローラ28及び受信ビームコントローラ38が物体22の同一スポット上に合焦している際に、受信ビームコントローラ38は、受信ビームを一組の直交横空間モードとして一定の順序で配列し、送信ビームコントローラ28は、厳密に合焦されたノードフリーモードに送信ビームを維持している。一例においては、受信ビームコントローラ38は、それぞれの異なるスポットにおいて、干渉ビームを、実装に応じて、1〜10個の異なる一組の直交横空間モードを介して配列する。そして、この受信ビームの異なるモードが干渉受信機36によって受信され、この干渉受信機36からの出力信号が、加算ロジックに供給されて、個々のスポットごとに加算される。そして、この個々のスポットごとの加算値が、システムコントローラ18に供給されることになる。
【0018】
受信ビームコントローラ38が、一組の直交横空間モードを介して配列するステップを完了したら、物体22上の次のスポット上に同時に合焦するよう、送信ビームコントローラ28及び受信ビームコントローラ38を調節する。そして、次のスポット上に合焦されたら、その受信ビームを同一の一組の直交横空間モードを介して配列し、新しい合計値を蓄積して、システムコントローラ18に供給する。このプロセスは、必要に応じたスポットの回数だけ反復される。走査動作においては、本システムは、ラインごとに、直線状で、物体22の複数のスポット上に送信及び受信システムを連続的に合焦する。そして、それぞれのスポットにおいて、受信ビームを一組の直交横空間モードを介して配列し、スポットごとに出力信号を加算することによって得られるダイバーシティにより、電磁放射の干渉ビームによるイメージングの結果生じるスペックルを低減している。
【0019】
この図1の実施例においては、受信ビームを一組の直交横空間モードを介して配列する責任は、受信ビームコントローラ38が担っている。この代わりに、干渉ビームの少なくとも一部を一組の直交横空間モードを介して配列する責任を、送信ビームコントローラ28に移管することも可能である。図2は、受信ビームコントローラ38の代わりに、送信ビームコントローラ28が、送信ビームを一組の直交横空間モードを介して配列するよう構成されているイメージングシステム10の一実施例を示している。この図2のイメージングシステムの動作は、システムコントローラ18からのモード形成信号に応答して、送信ビームコントローラ28が直交横空間モードを形成していることを除いて、図1のイメージングシステムの動作に類似している。
【0020】
図3は、前述のイメージング動作の概略プロセスフローチャートである。物体22の走査ステップ100の開始時点において、まず、干渉ビームを形成する(ブロック102)。そして、ブロック104において、送信システム及び受信システムによって、物体22の同一スポット上に合焦する。ブロック106において、干渉ビームの少なくとも一部を一組の直交横空間モードを介して配列する。尚、図2及び図3を参照して前述したように、この直交横空間モードは、実装に応じて、送信システム又は受信システムのいずれかにおいて生成可能である。そして、ブロック108において、この一組の直交横空間モードを介して配列するステップの結果として生成された出力信号を個々のスポットごとに加算する。判定ステップ110において、走査が完了したかどうかを判定する。そして、走査がまだ完了していない場合には、ブロック112において、送信システム及び受信システムを物体22上の次のスポット上に合焦される。そして、送信システム及び受信システムが次のスポット上に合焦したら、本プロセスは、ブロック106に戻り、干渉ビームの少なくとも一部を一組の直交横空間モードを介して配列する。このブロック106、108、及び112の動作は、走査が完了するまで反復され、これが完了した時点で、走査は終了することになる(ブロック114)。
【0021】
図4は、物体22の画像を生成する方法のプロセスフローチャートである。ブロック120において、電磁放射の干渉ビームを物体22上のスポットに照射する。ブロック122において、この干渉ビームの少なくとも一部を一組の直交横空間モードを介して配列する。ブロック124において、干渉ビームを物体22に照射した後の干渉ビームの一組の直交横空間モードを受信する。そして、ブロック126において、この干渉ビームの一組の直交空間モードを受信するステップの結果生成された信号を加算する。
【0022】
前述のように、特に好適な直交横空間モードの選択肢は、一組のエルミート・ガウシアンモードである。エルミート・ガウシアン関数は、量子力学には、調和振動子問題の固有関数(eigenfunctions)として表れ、光ファイバの場合には、2次屈折率分布を有するファイバの固有モード(eigenmodes)として表れる。この固有関数と固有モードは、数学的に等価な問題である。これらの関数のいくつかの非常に魅力的な特性は、(1)局所性(Locality)、(2)正規直交性(Orthonormality)、(3)分離性(Separability)、及び(4)それが自身のフーリエ変換である、という点にある。特性(1)及び(4)は、現実的なオプティクスを使用してビームを合焦可能であることを意味しており、実際に、特性(4)は、方法を示している。特性(2)は、モード間における大きな反相関を意味している。特性(3)は、これらの関数が、2つの1次元微分方程式に分離される2次元微分方程式を満足することを示している。実際に、2次元のエルミート・ガウシアンは、1次元のエルミート・ガウシアンのちょうど積になっている。これは、必須ではないが、共通的な有用な特性である。
【0023】
スペックルを完全に抑圧するのに必要な直交横空間モードの数は、照射領域当たりの表面特徴の数程度である。ホログラフィの場合には、この基礎は、非常に大きなものでなければならない。厳密に合焦された走査マイクロ波の場合には、このモードの数は、1〜10個程度であってよい。即ち、スペックルは、一般的なレーザー照射の場合には、非常に非局所的な問題であり、ホログラフィの場合には、グローバルな問題であるというより、厳密に合焦されたケースにおいては、実際には局所的な問題である。図6に示されている1次元(曲線)の別個の例は、実際の2次元(表面)の連続したケースにおける振る舞いを説明するのに有用である。物体22の3つの特徴に跨る1D照射スポットを想定しよう(これは、図6の実数/虚数平面内のベクトルとして表された複素振幅a、b、及びcを有する3つのエミッタと等価である)。その位相とは無関係に、これらのエミッタの非干渉合計|a|^2+|b|^2+|c|^2を推定することが望ましい。次のように、3つのウェーブレット関数を定義可能である。
【0024】
W0 =(1,1,1)/√3
W1 =(-1,0,1)/√2
W2 =(1,-2,1)/√6
これらのウェーブレットは、この曲線をサンプリングし、この結果、内積Vi=Wi・(a,b,c)が形成される。|V1|^2+|V2|^2+|V3|^2=|a|^2+|b|^2+|c|^2を算出することにより、非干渉合計が正確に得られる。尚、図4に示されているように、W0のみを使用した場合には(これは、ダイバーシティを有していない通常の信号チャネルに類似している)、ゼロが得られたであろう(例:スペックルパターン内の完全に暗いスポット)。
【0025】
上述の結果は、フーリエ分析において、パーセヴァルの定理(Parseval’s theorem)と呼ばれている。或いは、この代わりに、これは量子力学又は散乱理論におけるユニタリ性である。これは、その基礎が、正規直交性を有しているのみならず、完全であったという事実からもたらされるものである。この定理は、任意の数の次元に一般化される。又、これは、連続したケースにも一般化されるが、この場合には、厳密な完全性のために無限数の基本関数が必要となる。しかしながら、目標としているのは、放射の(完全な)非干渉合計の正確な計測ではなく、単にその推定であり、無限展開における最初のいくつかの低次項だけで十分であろう。
【0026】
直交横モードダイバーシティの場合には、追加的なコストは発生しない。それぞれのエルミート・ガウシアンは、無関係なグローバルフェーズにまで至るそれ自体のフーリエ変換であるため、最低次数モードに使用されるものと同じオプティクスが、単に空間位相(及び振幅)変調によって機能することになる。これは、機械的にも実現可能であるが、フェーズドアレイやリフレクトアレイによって電子的に実現するほうが更に容易であろう。空間分解能は、送信及び受信ビームスポットの積によって決定されるため、わずかに劣化するのみである。エルミート・ガウシアンを使用する場合には、これらのビームの1つ(例えば、送信)は、最低次数の00モードであり、もう一方(受信)は、例えば、{00,10,01}、あるいは{00,10,01,20,11,02}などの有限組のモードを介して配列する。mnモードが、パワーの大部分を搬送している場合には、x及びy方向における分解能ペナルティ(resolution penalty)Px及びPyは、次の式によって与えられる。
【0027】
Px =(4m-1)/√(2m-1)
Py =(4n-1)/√(2n-1)
ラジアル分解能(radial resolution)は、ダイバーシティの基礎として完全無限組のエルミート・ガウシアンを必要とするという限界により、00受信モードのみを使用する場合と比べて、√2悪くなるだけである(分解領域は2倍である)。そして、直交横モードダイバーシティにおける唯一のその他のペナルティは、同一のSNRの場合に、走査時間がダイバーシティファクタに比例するということである。
【0028】
尚、図1及び図2の機能ブロックダイアグラムを参照して説明した機能は、図示したものとは別の方式で分割可能である。例えば、システムコントローラ18と加算ユニットは、同一のマイクロプロセッサに基づいたコンピュータシステム内に統合可能である。又、図1及び図2を参照して特定の構成について説明しているが、特定の要素のその他の構成も可能である。
【0029】
又、干渉イメージングシステムについて、マイクロ波及びミリメートル波スペクトルのアプリケーションの観点において説明したが、電磁放射のその他のスペクトル帯域において、この干渉イメージングシステムを使用することも可能であろう。
【0030】
以上、本発明による特定の実施例について説明及び図示したが、本発明は、これらの説明及び図示された特定の形態と部品の構成に限定されるものではない。本発明を限定するものは、添付の請求項のみである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例による直交横モードダイバーシティを利用した干渉イメージングを実行するよう構成されたイメージングシステムの一実施例を示している。
【図2】受信ビームコントローラの代わりに、送信ビームコントローラが干渉ビームを一組の直交横空間モードを介して配列するよう構成されているイメージングシステムの一実施例を示している。
【図3】本発明の一実施例による干渉イメージング動作の概略プロセスフローチャートである。
【図4】本発明の一実施例による物体の画像を生成する方法のプロセスフローチャートである。
【図5】干渉ビームのエルミート・ガウシアンモードの例を示している。
【図6】実数/虚数平面内におけるビームベクトルの例を示している。
【符号の説明】
【0032】
12 送信システム
14 受信システム
16 加算ロジック
18 システムコントローラ
22 物体
28 送信ビームコントローラ
30 干渉ビーム
38 受信ビームコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射の干渉ビームを形成し、該干渉ビームを物体のスポット上に合焦するよう構成された送信システムと、
前記物体から反射された前記干渉ビームの一部を受信するよう構成された受信システムと、を有し、
前記送信システムおよび前記受信システムの一方が、前記物体のスポット上に合焦される前記干渉ビーム又は前記物体から反射した前記干渉ビームの前記部分を、一組の直交横空間モードを介して配列するよう構成されているビームコントローラを含んでおり、
前記受信システムと信号通信状態にあり、前記一組の干渉ビームの直交横空間モードに応答して生成された信号を加算するよう構成された加算ロジックと、
を有するイメージングシステム。
【請求項2】
前記送信システムが、前記干渉ビームを前記一組の直交横空間モードを介して配列するよう構成された送信ビームコントローラを含む、請求項1記載のイメージングシステム。
【請求項3】
前記受信システムが、前記干渉ビームの一部を前記一組の直交横空間モードを介して配列するよう構成された受信ビームコントローラを含む、請求項1記載のイメージングシステム。
【請求項4】
前記送信システム及び受信システムが、送信ビームコントローラ及び受信ビームコントローラをそれぞれ含む、請求項1記載のイメージングシステム。
【請求項5】
前記物体の同一スポット上に前記送信ビームコントローラ及び前記受信ビームコントローラを同時に合焦するよう構成されたシステムコントローラを更に含む、請求項4記載のイメージングシステム。
【請求項6】
前記システムコントローラが、前記物体上の異なるスポットに焦点を連続的に移動させることによって前記物体の領域を走査するよう更に構成されている、請求項5記載のイメージングシステム。
【請求項7】
前記システムコントローラが、前記焦点が移動するたびに、前記加算ロジックをリセットするよう更に構成されている、請求項6記載のイメージングシステム。
【請求項8】
電磁放射の干渉ビームを物体上のスポットに照射するステップと、
前記干渉ビームの少なくとも一部を一組の直交横空間モードを介して配列するステップと、
前記干渉ビームを前記物体に照射した後、前記干渉ビームの前記一組の直交横空間モードを受信するステップと、
前記干渉ビームの前記一組の直交空間モードを受信するステップから結果的に生成される信号を加算するステップと、
を有する物体の画像を生成する方法。
【請求項9】
前記干渉ビームを前記物体の次のスポットに照射するステップと、前記次のスポットに対する前記干渉ビームの前記照射に対応するよう、前記加算をリセットするステップと、を更に有する請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記干渉ビームが、前記物体に照射された後に、前記一組の直交横空間モードを介して配列される、請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−113584(P2006−113584A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296057(P2005−296057)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】