説明

直径が少なくとも1マイクロメートルの粒子を含んでなる走査懸濁液

【課題】粒子が少なくとも1μmの直径からなる、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる粒子を含む、走査懸濁液およびその走査画像を得るための使用の提供。
【解決手段】該粒子はホルミウムおよび照射中にその構造を本質的に維持することのできる組成物を含んでなるのが好ましい。粒子は、診断用および治療用とも、本質的に同一の化学構造の前記粒子を含む組成物であり、治療用組成物は該診断用組成物よりも放射性が高い、パーツキットの製造に好適である。該パーツキットは腫瘍の治療に特に好適である。まず、個体内の粒子の分布を該走査組成物で得た走査画像を用いて測定することができる。次に、放射性治療用組成物を投与することができ、その治療用組成物の好適な用量は該走査画像から導き出される。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は医薬分野に関する。さらに詳しくは、本発明は診断および放射線治療の分野に関する。
【0002】
背景技術
信頼性のある詳細な診断は、疾患の効果的な治療の重要な必要条件であることが多い。特に個々の患者について有意な差異を示す疾患には、非常に慎重かつ正確な診断が必要とされる。このような疾患には、例えば腫瘍関連疾患が含まれる。患者が腫瘍を患っていることが分かっている場合、疾病状態への確かな眼識を得ることが重要である。例えば腫瘍の増殖および位置を確定し、身体の別の部分への転移があるかどうかなどを判断する。さらに、腫瘍への薬剤のターゲティングについての適切な情報は、治療効率を増加させる。
【0003】
個体の内部の状態の情報をもたらす磁気共鳴映像法(MRI)などの、多くの走査技術が知られている。造影剤は、走査画像を取得可能とするためしばしば用いられる。例えばフェライト粒子およびガドリニウム−DTPA(ジエチルアミントリアミン五酢酸)錯体はMRスキャンのための造影剤によく用いられる。このように、腫瘍の存在のような体内の疾患の確かな手応えを得ることができる。
【0004】
診断後、治療は患者への医薬組成物の投与を伴って開始されることが多い。治療中の患者の状態をモニタリングすることも同じく重要であることが多い。例えば、治療の経過および薬剤のターゲティング、ならびに、ある種の治療を終わらせる、または一時的に中断する必要を示すおそれのある、起こり得る副作用をモニタリングすることができる。
【0005】
身体の特定の部分だけへの局部治療が好ましいこともある。例えば、腫瘍増殖は、個体への放射性粒子の投与を含んでなる体内の放射線治療によって対抗することができることもある。もし該放射性粒子が腫瘍内部および/または腫瘍周辺に蓄積するならば、特異的な局所治療が可能である。しかし、放射線に誘発される胃炎および/または放射線肺臓炎(特に肝腫瘍の場合)を防ぐためには、胃十二指腸および肺が著しく短絡している患者は治療から除外しなければならない。従って、放射性粒子の正確な分布は、まず該放射性粒子を含んでなるトレーサー量を投与することによって測定される。これは患者と医療従事者の双方の余分な放射能の被曝を伴い、望ましくない。さらに、放射性イットリウムなどのある種の放射性粒子はγ線カメラで検出することがほとんどできない。このようなイットリウム粒子を治療に用いる場合、γ線カメラで検出でき、該イットリウム粒子とほぼ類似して標的化および分布すると考えられるその他の放射性粒子(例えば、テクネチウム標識アルブミン粒子)を、治療前に投与する。次に、該その他の放射性粒子の分布を測定する。該その他の放射性粒子の分布は、イットリウムの分布とほぼ類似すると考えられるので、イットリウムが胃十二指腸および/または肺に著しい短絡を生じるかどうかを大体推定することができる。
【0006】
従って、このような粒子をどのように用いるか、また分布パターンはどうなるかを決定することは非常に複雑である。このような問題は、現行の非放射性走査技術では解決できない。例えばMRI造影剤の分布は放射性治療化合物の分布と同じでないからである。
【0007】
放射性治療化合物が非放射性(またはほぼ非放射性)となった後は、もはやその分布を追跡することはできない。該化合物がどのように身体から除去されるかモニタリングすることが望まれるため、これは不都合である。該化合物の体内分布に関する情報は、疾病および/または治療の経過に関する、また患者の状態に関する指標となる。
【発明の概要】
【0008】
代わりとなる走査懸濁液を提供することが本発明の目的である。本発明の走査懸濁液は既存の適用に使用できる。本発明の懸濁液を用いる新規な適用も本明細書とともに提供される。
【0009】
本発明は、その粒子が少なくとも1μmの直径からなる、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる粒子を含んでなる走査懸濁液を提供する。該粒子はMRIなどの非放射性走査法により検出できる。該走査懸濁液はMRI走査懸濁液を含んでなるのが好ましい。該粒子はホルミウムを含んでなるのがより好ましい。
【0010】
その粒子が少なくとも1μmの直径からなる、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる粒子の走査懸濁液の製造のための使用も、本明細書で提供される。MRI走査懸濁液などの走査懸濁液を生成する方法は当技術分野に公知であり、ここではさらなる説明は不要である。本発明の走査懸濁液を用いると走査画像を得ることができる。従って、本発明は、その粒子が少なくとも1μmの直径からなる、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる粒子を含んでなる走査懸濁液の、走査画像を得るための使用を提供する。該走査画像はMR走査画像を含んでなるのが好ましい。本願では懸濁液という語の意味は少なくとも分散を含むものと理解される。
【発明の具体的説明】
【0011】
本発明の走査懸濁液は、粒子の流動挙動の測定に好適である。本発明の走査懸濁液は少なくとも1μmの粒子を含んでなるので、このように比較的大きな粒子の流動パターンをシミュレートすることができる。従って、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる少なくとも直径1μmの粒子を含んでなる走査懸濁液の、該粒子の流動挙動を測定するための使用も本明細書で提供される。
【0012】
磁場を少なくとも一部分乱すことのできる少なくとも直径1μmの粒子を含んでなる本発明の走査懸濁液はまた、血管形成部位の検出に非常に好適である。血管形成部位は該粒子の流動挙動を測定することによって検出できる。該粒子はホルミウムを含んでなるのが好ましい。該粒子のサイズは、該粒子が血管内に固着できるように選択することができる。一般的に、該サイズは直径約3〜5μmからなる。血管形成の部位は、個体へ該粒子を投与した後に検出できる。多くの(発達中の)血管のある部位では、身体のその他の部分と比較して固着粒子の濃度が高くなる。従ってこのような部位を検出することは、例えばMRI走査法によって可能である。従って本発明の一つの態様は、本発明の、血管形成の部位を検出するための使用を提供する。
【0013】
本発明の走査懸濁液も腫瘍の検出に非常に好適である。これは例えば、本発明に記載の使用によって、本発明の粒子の流動挙動を測定することにより、および/または血管形成の部位を検出することにより行うことができる。腫瘍は代謝率が高いので多くの酸素および栄養素を必要とすることが多いため、腫瘍が存在すると血管形成の部位を伴っていることが多い。従って、該腫瘍の周囲には新しい血管が生成される。ゆえに、血管形成部位は腫瘍の存在を示すといえる。該腫瘍は放射性物質を用いる必要なく検出することができる。あるいは、放射能の低い粒子を用いることができる。腫瘍を検出した後に、該走査懸濁液と同じ種類の粒子を含んでなる治療用組成物でその腫瘍を治療できる。しかし、該治療用組成物中では、該粒子は(より)放射性となっているのが好ましい。放射能の差異にかかわらず、該診断用組成物および該治療用組成物の該粒子は化学的に同一である。従って、該治療用組成物の放射性粒子の分布は、本発明の走査懸濁液の粒子の分布を測定することにより適切に予測することができる。粒子のサイズは、身体全体の至る所に等しく分布するのを避けるために、十分に大きいのが好ましい。一つの態様では、該治療用組成物は、少なくとも一種類の治療上有効な化合物、例えば腫瘍を治療することのできる化合物とともに提供される本発明の粒子を含んでなる。
【0014】
従って本発明は腫瘍を検出するための本発明の使用を提供する。該腫瘍は肝臓転移を含むのが好ましい。好ましい態様では、該走査懸濁液がMRI走査懸濁液を含んでなる、本発明の使用が提供される。
【0015】
また別の好ましい態様では、本発明の使用は、該粒子が腫瘍内で固着できるように該粒子が十分大きな直径からなるよう提供される。このような粒子は腫瘍の検出に非常に好適である。該粒子は少なくとも一部分非腫瘍血管中を流動できるのがより好ましい。このような粒子は腫瘍血管中に固着できるが、正常な血管中ではほとんど固着しない。これは、腫瘍血管が主に正常な血管よりも幾分小さく、より不規則に形成されるということから起こり得る。このように、本発明の粒子が高い濃度で腫瘍組織に存在するため、腫瘍組織は非常に適切に正常組織と区別することができる。本発明の該粒子は約1〜10μmの直径からなるのが好ましい。このような粒子は約2〜8μmの直径からなるのがより好ましく、3〜5μmが最も好ましい。
【0016】
腫瘍組織と非腫瘍組織を区別するには、まず、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる小さい直径、例えば約3μmの粒子を含んでなる走査懸濁液を投与するのが好ましい。次にそれらの粒子が腫瘍血管内に固着するかどうかを測定することができる。もし粒子がまだ該腫瘍血管内で固着していない場合(腫瘍血管の大きさは多少異なる)、幾分大きな直径、例えば約4μmの本発明の粒子を含んでなる走査懸濁液の二度目の投与を行ってよい。これらの粒子でも該腫瘍血管内で固着しない場合、さらに大きな直径の本発明の粒子を含んでなる走査懸濁液を投与することもできる。このように、本発明の粒子をある腫瘍内に固着させる一方でなお、非腫瘍血管中では流動できるようにする、最小の直径を決定できる。該最小直径は異なる腫瘍間、および異なる患者間で変動し得る。該最小直径は3〜5μmの間であることが多い。このように、腫瘍血管内で固着するが、非腫瘍血管中ではなお流動することのできる本発明の粒子を含んでなる本発明の走査懸濁液を用いて腫瘍を検出することができる。
【0017】
一つの態様では、本発明は、
その粒子が少なくとも1μmの直径からなる、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる粒子を含んでなる走査懸濁液を個体へ投与し、
走査画像を取得し、かつ
該画像が腫瘍の存在を示すかどうか判断する
ことを含んでなる、腫瘍を検出する方法を提供する。
【0018】
該粒子は約3〜5μmの直径からなるのが好ましい。上記に概説したように、本発明の方法は、サイズの異なる本発明の粒子を含んでなる異なる走査懸濁液を個体へ投与することを含み得る。異なる走査懸濁液の各々は、各懸濁液の投与と投与の間に時間の間隔を置いて別々に投与するのが好ましい。あるいは、異なる走査懸濁液を同時に投与することも、または互いの投与直後に投与することもできる。
【0019】
別の好ましい態様では、本発明の粒子は約15〜200μm、より詳しくは15〜100μm、さらにより詳しくは20〜100μm、より好ましくは20〜50または80〜100μmの直径からなる。このサイズの粒子は放射線治療目的に非常に好適である。該粒子は、該粒子が細動脈内に留まることを可能とするのに十分な大きさの直径からなる。ゆえに、該粒子は血管に塞栓を形成する、好ましくは細動脈に塞栓を形成するのに適している。本発明の粒子を用いて腫瘍の周囲の少なくとも1本の血管で留まることにより、その腫瘍から血液を、また従って酸素および栄養素を奪うことができる。このことは、腫瘍が正常組織と比較して多量の血流を受け取るために可能である。従って、正常組織と比較すると多量の本発明の粒子が腫瘍内および腫瘍の周囲に留まる。一例を挙げると、肝臓内の腫瘍はその血液の大半を肝動脈から受け取るが、正常な肝組織はその血液を主に門脈から受け取る。この結果、多量の本発明の粒子が、肝動脈への投与後に腫瘍内および腫瘍の周囲に留まる。該粒子は例えばカテーテルを用いて肝動脈へ投与することができる。本発明の粒子で血管に塞栓を形成することも、個体の咽喉および/または頭部にある腫瘍の治療に特に好適である。従って本発明は、血管に塞栓を形成するための、約20〜100μmの直径からなる、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる粒子の使用を提供する。比較的大きな粒子、例えば50〜200μmの間の粒子を使用すると、腫瘍、例えば骨癌および結節性硬化症に起因する腫瘍の塞栓形成が可能である。 この後者の疾病の結果、非常に痛みがあり、血管の断裂および患者の死を招きうる非常に大きな良性の腎臓腫瘍をもたらす。本発明に従って該サイズの粒子を使用すると、該腫瘍をもたらす血管の塞栓形成が腫瘍増殖の遅延をもたらし、ならびに患者および従事者の過剰な放射線被曝を防ぐ可能性がある。
【0020】
また別の態様では、本発明の粒子は、目的の粒子または複合体へ投与される。該目的の粒子または複合体は、それが生体内で機能できる所望の機能を有する粒子または複合体を含んでなるのが好ましい。該目的の粒子または複合体は、生物の細胞小器官または細胞を含んでなるのがより好ましい。該目的の粒子または複合体は、リポソームまたは白血球を含んでなるのが最も好ましい。本発明の粒子の目的の粒子または複合体への投与後、該目的の粒子または複合体をMRIなどの走査法によって検出することができる。このように該目的の粒子または複合体の存在および/または移動を検出することができる。例えば、リポソームは遺伝子治療のため目的の核酸を好適な部位へ送達するのに有用である。このようなリポソームへ本発明の粒子とともに提供したならば、該リポソームが生物内部に存在するかどうか判断することができる。次に目的の核酸が所望の部位へ送達されるかどうか評価することができる。別の例として、本発明の粒子を白血球へ投与した後、該白血球の炎症部位または腫瘍への移動をMRIなどの走査法を用いて検出することができる。従って本発明は、目的の粒子または複合体の存在および/または移動を検出するための本発明の粒子の使用を提供する。
【0021】
一つの態様では、該粒子が少なくとも1μmの直径からなる、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる粒子を含んでなる懸濁液を、パーツキットの製造に用いる。該懸濁液は診断用組成物などとして使用できる。あるいは、該懸濁液を診断用組成物の調製に使用できる。該懸濁液は本質的に非放射性であるのが好ましい。該懸濁液の別のアリコートを(より高い)放射性にすることができる。このような別のアリコートは放射線治療に極めて有用である。従って、このような本発明の放射性懸濁液は治療用組成物として使用できる。さらに、このような本発明の放射性懸濁液を含んでなる組成物も治療用組成物として使用できる。一つの態様では、本発明の放射性治療用組成物は、少なくとも1種類の治療上有効な化合物、例えば腫瘍を治療することのできる化合物とともに提供される本発明の粒子を含んでなる。該治療用組成物は、例えば放射線治療によって、また該化合物の治療作用を用いて同時に腫瘍の治療が可能である。もう一つの態様では、本発明の非放射性治療用組成物は、少なくとも1種類の治療上有効な化合物、例えば腫瘍を治療することのできる化合物とともに提供される本発明の粒子を含んでなる。該治療用組成物は、該化合物の治療作用による腫瘍の治療が可能である。当然、本発明の粒子は任意の治療化合物とともに提供され得る。このような粒子は、該治療化合物がその治療作用を行うことのできるいずれの疾病の治療にも好適である。
【0022】
該診断用組成物および該治療用組成物は、パーツキットの製造に好適である。従って、本発明の粒子のパーツキットの製造のための使用も本明細書とともに提供される。
【0023】
本発明は、診断用組成物および治療用組成物を含んでなるパーツキットを提供し、該診断用組成物および該治療用組成物は本質的に同一の化学構造の本発明の粒子を含んでなり、該治療用組成物は該診断用組成物よりも放射性が高い。該診断用組成物は、本質的に非放射性であるのが好ましい。一つの態様では、該粒子はホルミウムを含んでなる。該診断用組成物は、個体の体内の該粒子の分布を測定するのに使用できる。これは例えばMRIによって測定できる。ゆえに、今ではもはや放射性のトレーサーを投与する必要はない。これは患者および医療従事者の双方にとって有益である。(過剰な)放射線照射への被曝に対して特別な予防策をとる必要がない。さらに、もし放射性トレーサーを一定線量用いるとしても、分布パターンは放射能が減衰するまでの限られた時間内に測定しなければならない。しかし、もし本発明の診断用組成物が本質的に非放射性であるならば、該粒子の分布パターンを限られた時間内に測定する必要はない。該分布は、今では該粒子が個体内に存在している間中測定できる。ゆえに、分布パターンを測定するのにより多くの時間が利用できる。
【0024】
続いて、該個体が該治療用組成物での放射線治療を受けることができるかどうか決定することができる。これは例えば肺および胃腸管に対する該粒子の短絡の程度に依存する。また、得られた該診断用組成物の分布パターンを解釈することにより、該個体へ投与する最適な量の放射性治療用組成物を決定することができる。もし粒子が腫瘍の内部に分布しているならば、何個の粒子がその腫瘍に蓄積しているかなどを判断することができる。該治療用組成物の該(より放射性の高い)粒子は該診断用組成物の該粒子と化学的に同一であるので、該治療用組成物の分布は該個体における該診断用組成物の分布と同一となるであろう。
【0025】
ゆえに、好ましい態様では、本発明の放射性粒子を含んでなる本発明の治療用組成物が提供される。該本発明の粒子は放射性ホルミウムなどの放射性成分を用いて直接に生成することができる。しかし、本発明の非放射性粒子を最初に生成し、その後該粒子を照射するのが好ましい。これは高用量の放射性成分の使用、特別に装備した(高価な)設備の必要性などを回避する。例えば、本発明の診断用組成物を用いて走査画像を得た後、本発明の粒子の放射線治療に最適な用量を見積もることができる。このような用量の本発明の非放射性粒子を提供できる。続いて該粒子に放射線を照射することができる。本発明者らは、オランダのPettenにある高中性子束設備を使用した。照射 (中性子束5×1013cm−2・s−1)は少なくとも0.5時間、好ましくは約1時間行われた。当然、本発明の粒子が照射の間に本質的にその構造を維持するのであれば、その他の設備およびその他の照射時間を用いてもよい。「本質的にその構造を維持する」とは、本明細書において、該粒子がその含有量、形状、および/または密度の少なくとも50%、より好ましくは75%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%を維持することを意味する。5×1013cm−2・s−1の中性子束で少なくとも0.5時間照射される間に、該粒子がその構造を本質的に維持することのできる組成物を含んでなる本発明の走査懸濁液を提供するのが好ましい。5×1013cm−2・s−1の中性子束で約0.5〜2時間照射される間に、該組成物がその構造を本質的に維持することのできるのがより好ましい。5×1013cm−2・s−1の中性子束で約1時間照射される間に、該組成物がその構造を本質的に維持することのできるのが最も好ましい。
【0026】
別の好ましい態様では、該組成物は、結合および/または非結合のいずれであっても本質的に水を含まない。水の存在は照射中に破壊的な効果があると思われるためである。
【0027】
また別の好ましい態様では、該粒子は生分解性であり、例えばMRIおよび/または(放射線)治療のために使用された後に動物の体内で分解することができる。
【0028】
一つの態様では、該診断用組成物に本発明の懸濁液を含む、パーツキットが提供される。
【0029】
また別の態様では、診断用組成物および治療用組成物を含んでなるパーツキットが提供され、該診断用組成物および該治療用組成物は、少なくとも1μmの直径からなる、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる本質的に同一の化学構造の粒子を含んでなり、該治療用組成物は少なくとも1種類の治療上有効な化合物とともに提供される本発明の粒子を含んでなる。該治療用組成物の分布は、MRIなどの走査法を用いて経時的に追跡することができる。一つの態様では、該治療用組成物は本質的に非放射性である。
【0030】
一つの態様では、本発明の粒子は微粒子を含んでなる。該微粒子はホルミウムを含んでなるのが好ましい。別の好ましい態様では、該粒子はポリ(L)−乳酸を含んでなる。引用することにより本明細書の一部とされる、参照文献[14]に見られるように、ポリ(L)−乳酸微粒子は5×1013cm−2・s−1の中性子束で少なくとも約1時間照射される間にその構造を本質的に維持することができる。
【0031】
ホルミウムを含んでなる本発明の粒子は、照射後および/または照射中にホルミウムを10%未満放出するのが好ましく、5%未満がより好ましく、1%未満が最も好ましいが、これはホルミウムが放出されると走査画像が該本発明の粒子の分布を完全に示さない可能性があるからである。さらに、放出された放射性ホルミウムは、該粒子の到達できない組織(の部分)を害するおそれがある。また別の好ましい態様では、その組成物が、5×1013cm−2・s−1の中性子束で1時間照射される間にその構造を本質的に維持することのできる化合物と化学結合したホルミウムを含んでなる、本発明の走査懸濁液が提供される。ホルミウムの化学結合は、ホルミウムの放出を少なくとも一部分避けることができるため都合がよい。照射されたホルミウムを付加したポリ−(L)−乳酸微粒子は、PBSおよびブタ肝臓ホモジネート中で37℃で288時間のインキュベーションの後に、99.3%を超える166Ho活性を維持することができる[14]。ホルミウムは該微粒子と化学的に結合している[34]。本発明の粒子、本発明の走査懸濁液、および/または本発明のパーツキットは従って、該微粒子を含んでなるのが好ましい。
【0032】
一つの態様では、生分解性のポリ(L−乳酸)微粒子(PLLA−MS)を、4枚のバッフルのついたガラス製ビーカー中で製造し、ホルミウムアセチルアセトネート(Ho−AcAc)複合体(10g)およびPLLA(6g)を継続的に攪拌したクロロホルム186gへ加えた。PVA(20g)を継続的に攪拌した40℃の水1000gに溶解し、冷却後ガラスビーカーに注入した。この溶液およびビーカーを25℃に保った。クロロホルム溶液をPVA溶液に加え、クロロホルムが完全に蒸発するまで継続的に攪拌した(500rpm)。残りのPVAおよび組み込まれなかったHo−AcAcを除去するため、生じた微粒子を水、0.1N HClおよび水で順次洗浄した。この微粒子を、散水下で20および50マイクロメートルのステンレススチール篩(20マイクロメートル篩、S/Steel, NEN 2560, Endecotts, London;50マイクロメートル篩、S/Steel, ASIM E 11-87; B. V. metaalgaasweverij, Twente, The Netherlands)で類別し、大きさに従って回収し、窒素下で乾燥させた。照射されていない微粒子と照射された微粒子の特性決定は、走査型電子顕微鏡(SEM)、レーザー粒度分析、およびPLLA−MS中に組み込まれた165 Hoの中性子放射化後で166 Hoのγ線スペクトロメトリによって行った。PLLA分子量の測定のため、微粒子をクロロホルムに溶解し、Showa Benco, Japanより入手したゲル浸透クロマトグラフィーカラム(Shodex KD 800)を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。反応装置の条件をできる限り厳密に比較できるようにするため、サンプルを1日以内に個別に照射した。治療のための完全性および安定性をそこで維持する間、治療量の166 Ho−PLLA−MSを製造するのに明確な照射条件が必要であるように思われた。照射されていない165 Ho−PLLA−MSは滑らかで球形の外観をしている。PRS設備(中性子束5×1013cm−2・s−1)でポリエチレンバイアル中での1時間の照射後、SEMでわずかに表面変化が見られ、小さなPLLA断片が生じた。これらはより多数の、20マイクロメートル未満の粒子となった。構造全体の完全性は、形態および大きさに関して維持されたが、微粒子は最小の凝集傾向を示した。しかしながらやはり、これらはPBS中に容易に懸濁でき、動脈内治療に好適であるだろう。
【0033】
本発明者は、MRIでの検出が可能な、ホルミウムを付加したポリ(L−乳酸)微粒子(本明細書中では「ホルミウム微粒子」とも呼ばれる)を開発した。これらの微粒子は、本質的に非放射性の診断用組成物の生成に使用できる。この診断用組成物を用いて、例えば本発明の粒子の流動挙動、血管形成の部位、一以上の腫瘍の存在および/または腫瘍の内部および周囲の該組成物の分布を測定することができる。さらに、これは胃十二指腸および肺への著しい短絡が生じるかどうかを評価できる。従って一つの態様では、本発明は、本発明の粒子の診断用組成物の製造のための使用を提供する。一度該組成物の患者の体内分布が分かれば、ホルミウムを付加したポリ(L−乳酸)微粒子の別のサンプルを、例えば中性子放射化によって放射性にすることができる。これらの放射性ホルミウム微粒子を用いて治療用組成物を生成することができる。該微粒子は化学的に同一であるので、該治療用組成物の該患者の体内分布は該診断用非(または低)放射性組成物の分布と同一となる予定である。従って、診断用組成物の分布について得た(MRI)情報から、最適な量の治療用組成物を決定できる。あるいは、投与した本質的に非放射性の微粒子をin vivoで放射性にすることができる。これは例えば中性子放射化によってなし得る。しかし、異なる患者は異なる分布パターンを提示し得るので、診断用組成物の用量が、関係する患者にとって最適な量でないと思われることもあり得る。従って、該非放射性診断用組成物の分布が測定された後で最適な量の放射性治療用組成物を投与するのが好ましい。また、MRI介入の際に、本発明に従って微粒子を投与および投薬することも可能である。
【0034】
本発明に関して、個体とは動物、好ましくはヒトを意味する。
【0035】
本発明の粒子とは、本明細書において少なくとも1μmの直径からなる、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる粒子を意味する。該粒子は、例えばホルミウム、ガドリニウムおよび/またはジスプロシウムを含んでなる常磁性体であるのが好ましい。本発明の粒子は環境と比較して磁場に対する感受性が異なる。本発明の粒子は、例えば少なくとも一部分磁場を乱すことのできる元素との分子結合を含んでなる。該分子は、該元素の存在する腔部(cave)を形成してよい。例えば、該粒子は微粒子を含んでなる。しかし、該元素を含むどの粒子も本発明の粒子の範囲内にある。該元素のみを含む粒子もまた本発明の粒子の範囲内にある。該元素はホルミウムを含んでなるのが好ましい。本発明の懸濁液とは、本発明の粒子を含んでなる懸濁液を意味する。
【0036】
別の組成物または粒子よりも放射性の高い組成物または粒子とは、モルあたりの放射能量が多いことを意味する。この放射能量は標準的にベクレルで表される。本質的に非放射性であるとは、放射能が、一般に存在する標準的な自然放射能の値と本質的に同一であることを意味する。
【0037】
本発明に特有の表現で、化学的に同一とは、化学式が本質的に同一、または粒子が本質的に類似の形状を含んでなると同時に、本質的に同種のサブ粒子を含んでなることを意味する。このようなサブ粒子は例えば本発明の粒子を含んでなる。しかし、化学的に同一である元素または化合物は、異なる同位元素を含んでなる可能性がある。ある元素のある種の同位元素は、同じ化合物の別の同位元素と比較して本質的に同一の化学特性を有すると考えられる。
【0038】
「直径1μmの粒子」という表現とは、一回分の該粒子が平均値約1μmの粒子を含んでなるという意味である。例えば、もし該一回分に微粒子を含む場合、各個別の微粒子の大きさは約0.5〜2μmの間で変動し得る。同じことが本願中に記載されるその他の直径サイズにも適用される。
【0039】
「腫瘍を治療する」とは、本明細書において該腫瘍に対抗することを意味する。これは該腫瘍の増殖停止をもたらし得る。場合によっては増殖を停止させることができる。必ずしもそうではないが、該腫瘍を死滅させる可能性もある。
【0040】
本発明はさらに、
磁場を少なくとも一部分乱すことのできる粒子を含んでなる走査懸濁液を、個体へ投与し、
個体の走査画像を得、
個体内の該粒子の分布を測定し、
該粒子を含んでなる治療用組成物を個体へ投与する
ことを含んでなる、腫瘍を患う個体を治療する方法を提供する。該治療用組成物中の粒子は、診断用組成物中の粒子よりも放射性が高く、かつ/または、少なくとも1種類の治療上有効な化合物とともに提供される。
【0041】
該粒子は、ホルミウムを含んでなるのが好ましい。該粒子は、少なくとも1μmの直径からなるのがより好ましい。該治療用組成物の最適な量は、該走査懸濁液の該粒子の分布から導き出すのが最も好ましい。一つの態様では、該走査懸濁液は本発明の走査懸濁液を含んでなる。
【0042】
本発明の方法は、肝腫瘍、例えば肝臓転移の治療に特に好適である。
【0043】
肝臓転移は、種々の固形腫瘍、特に結腸直腸癌の進行中にしばしば生じ、全ての癌死のうちの25〜50%の原因となっている。肝臓転移患者の生存期間の中央値は、転移量および最初の腫瘍の組織構造にもよるが2〜12ヶ月にわたる。外科的切除が、現在のところ肝臓転移患者へ治癒の可能性をもたらす唯一のアプローチである。しかし、これは患者のうち10〜20%だけに与えられる選択肢である。
【0044】
肝悪性腫瘍の治療において外から放射する放射線治療は、肝臓全体の照射に対してわずかに最大30Gyの線量にしか耐えることのできない肝実質の耐性により制限される。従ってこの治療様式は効果がない。本発明の方法を用いれば、肝臓転移の治療は改善される。
【0045】
特に有用な治療様式は、細動脈内に留まるのに十分なサイズの動脈内注射された本発明の放射性粒子の使用である。このような治療の基礎は、腫瘍が通常脈管構造内に豊富にあること、および肝臓転移はほぼ例外なく動脈血の供給に依存していることにある。これはその血流の大部分を門脈から得ている正常な肝臓と対照をなす。この選択性はまた、正常な肝臓の細動脈には血管収縮を引き起こすが、平滑筋に乏しい腫瘍の血管には感受性のない血管作動性薬の使用によって増加させることができる。当然、その他の種類の腫瘍もまた、本発明の粒子が血管が留まることによって治療できる。
【0046】
別の態様では、本発明は、その粒子の用量が本質的に同一の化学構造の粒子を用いて得た走査画像から導き出された、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる粒子の、薬物としての使用を提供する。該薬物は、腫瘍、より好ましくは肝臓転移を少なくとも一部分治療することができるのが好ましい。その粒子の用量が本質的に同一の化学構造の粒子を用いて得た走査画像から導き出された、磁場を少なくとも一部分乱すことのできる粒子の、腫瘍の治療のための薬物の製造のための使用もまた従って本明細書とともに提供される。該粒子は少なくとも1μmの直径からなるのが好ましく、該粒子が血管内に固着するのを可能にする約3〜5μmの直径からなるのがより好ましい。本発明の粒子は走査画像を得るため、ならびに放射線治療のために用いるのが好ましく、本発明の方法または使用は、該粒子が5×1013cm−2・s−1の中性子束で少なくとも0.5時間、好ましくは約1時間照射される間にその構造を本質的に維持することのできる組成物を含んでなるように提供されるのが好ましい。該粒子は微粒子を含んでなるのがより好ましく、ポリ(L−乳酸)微粒子を含んでなるのが最も好ましい。また別の好ましい態様では、該組成物は5×1013cm−2・s−1の中性子束で1時間照射される間にその構造を本質的に維持することのできる化合物と化学結合したホルミウムを含んでなる。上記に説明したように、化学結合が該粒子の安定性を向上させ、少なくとも部分的に該粒子からのホルミウムの放出を回避する。
【0047】
本発明はさらに、
第一の工程で、走査画像、より詳しくは本発明の走査懸濁液を与えた患者のMRI画像を得、
第二の工程で、該走査懸濁液中の該粒子と本質的に同一の化学構造を持ち、該走査懸濁液よりも放射性が高くなるようにした粒子を用いて、腫瘍の治療のための治療用懸濁液を製造する
ことを含んでなる、腫瘍を治療するための治療用組成物の製造方法を提供する。
【0048】
一つの態様では、該走査画像を得る前に一定量の粒子を製造し、該粒子量の第一部分を該走査懸濁液の製造に用い、該粒子量の第二部分を該治療用懸濁液の製造に用いる。バッチの異なる粒子の分布パターンの変動を回避するため、該走査懸濁液および該治療用懸濁液の双方に同じ起源の本発明の粒子を用いること、特に該治療用懸濁液の中の該粒子の用量が得られる走査画像から導き出されることが好ましい。
【0049】
また別の態様では、該粒子を該治療用放射性懸濁液に用いるための放射線の線量、および/または該治療用懸濁液に用いる粒子の量が、少なくとも一部は取得した該走査画像に基づく、治療用組成物を製造するための方法が提供される。
【0050】
一つの態様では、該粒子が微粒子、例えばポリ(L−乳酸)微粒子を含んでなる、本発明の方法が提供される。
【0051】
該粒子はホルミウムを含んでなるのが好ましい。
例えば、中性子放射化した放射性ホルミウム付加ポリ(L−乳酸)微粒子(Ho−PLLA−MS)は、患者の治療のためのγ線カメラおよびβ粒子を用いるイメージングに使用できるγ線を放射する。動物試験では、これらの微粒子を腫瘍に対し標的化でき、γ線カメラで容易にイメージングされうることが分かった。ホルミウムは常磁性体なので、MRIなどの非放射性走査法によっても見ることができる。従って、非放射性ホルミウム付加微粒子をイメージングすることが可能である。放射性微粒子での治療の前に非放射性ホルミウム付加微粒子をイメージングすることは、患者および医療関係者への放射線を減少することにつながる。その場合、上記に説明したように、電離放射線への(過度の)被曝に対して特別な予防策を講じる必要はない。さらに、これならば分布パターンの測定により多くの時間を使うことができる。これならば該粒子が個体の体内に存在している間中該分布を測定できるのに対し、放射性トレーサー量は放射能が減衰する前に検出するべきである。
【0052】
さらに、ホルミウム付加微粒子の分布もまた経時的に追跡できる。
【0053】
また別の態様では、本発明は、走査懸濁液を個体へ投与し、その後該個体の走査画像を生成することを含んでなる走査画像を得る方法を提供する。ここで該走査懸濁液は本発明の走査懸濁液を含んでなる。
【0054】
以下の実施例は本発明を説明するためのものである。いずれの態様においても本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0055】
本研究の目的は、MRIでホルミウム付加微粒子の体内分布を測定することの可能性を調査することであった。測定は、ファントム、ex-vivoウサギ肝臓およびウサギにおいて行った。ウサギのMR画像をガンマシンチグラム画像と比較した。
【0056】
方法および材料
微粒子の製造
放射性ホルミウム付加微粒子を、既に述べたように調製した[14]。要するに、ホルミウムアセチルアセトネート[20]を、溶媒蒸発によりポリ(L−乳酸)へ組み込み、篩にかけた後、20〜50μmの微粒子を得た。オランダ国ペッテン(Petten)の高中性子束原子炉のPRS施設において1時間の照射によって微粒子の中性子放射化を行った。イン・ビボ(in-vivo)およびエクス・ビボ(ex-vivo)実験中の投与の前に、この微粒子を超音波洗浄器中で10分間超音波処理し、Gelofusine(商標)(Vifor Medical SA, Switzerland)中に懸濁した。
【0057】
ファントム
寒天ゲルマトリックスの調製のため、乾燥寒天粉末(20g;Life technologies GIBCO BRL, Paisley, Scotland)を塩化マンガン(II)四水和物(900mg; Merck, Darmstadt, Germany)とともに冷脱イオン水(1000g)中に混入した。このマンガン−塩化物を用いて肝臓NMR特性をシミュレートした。ホルミウムまたはイットリウムを付加したポリ(L−乳酸)微粒子(Ho−PLLA−MSまたはY−PLLA−MS)を寒天液中に攪拌しながら懸濁した。この微粒子懸濁液および寒天懸濁液を100℃になるまで10分間加熱した結果、透明な流動ゲルを得た。このゲルを互いに異なる割合で加えてHo−PLLA−MSおよびY−PLLA−MS濃縮物を生じた。混合したゲルを冷却しながら超音波処理した。室温まで冷却してしまうと、このゲルは光学的に透明で、均一に分布した微粒子が目に見える。
【0058】
腹部領域の灌流ファントムでは、肝臓を横切るA−V短絡の検出が試験された。内径12mmの管を、直径約24mmのヒト下静脈のスケールモデルとして選択した。この管をPle×iglas容器の中に置き、バックグラウンドとしてマンガンをドープした水を満たし、筋肉組織を模倣した。17ml/sの一定の流量を生成する、空気圧で流れを押し出すポンプをファントムに接続し、平均的なヒト大静脈に予想される速度である流速15cm/sを得た。循環およびバックグラウンド液はマンガン−塩化物を含む水からなる(19.2mg/l MnCl・4H0)。このマンガン溶液を用いてヒト血液の緩和時間を概算した。ホルミウム付加微粒子の通過を検出するため、ホルミウムに感受性のある動的シーケンス(MR画像の項で説明した通り)を用いた。ベースライン値を取得した後、5F注入カテーテルを経由して微粒子を短く注入し、これをその後約4mlの血液を模倣した流体でフラッシュした。微粒子の注入量は4.4〜31mgの間であった。より多い量および徐々に注入した量に関する短絡実験も実施した(それぞれ40、48および53mg)。
【0059】
ウサギ
全ての実験は、オランダ動物実験法(The Netherlands Experiments on Animals Act)(1977)および欧州条約のガイドライン(the European Convention guidelines )(86/609/EC)に従って行われた。承認は大学動物実験委員会より得た。実験は、3000〜4000gの雌の病原体フリーのニュージーランド・ホワイト近交系hsdIFウサギを用いて行った(Harlan, Horst, The Netherlands)。このウサギを個別にスチールのケージに入れ、毎日約100gのウサギ用「完全食」ペレットを与えた。水は自由に与えた。腫瘍を有する3匹のウサギを3または4週間後に犠牲にした。腫瘍のないウサギはSPECTおよびMRI画像を撮った直後に屠殺した。
【0060】
鎮痛、鎮静および安楽死
開腹手術(laparatomies)中の鎮痛および鎮静を、0.5mlのメサドン(10mg/ml; Veterinary Pharmacy, University of Utrecht, The Netherlands)および0.5ml Ventranquil(商標)(アセプトマジン、10mg/ml; Sanofi Sante Animale Benelux BV, Maassluis, The Netherlands)で達成した。その後、吸入麻酔薬(anasteticum)としてHypnomidate(商標)(2mg/ml; B. Braun Melsungen AG, Melsungen, Germany)ならびにN0およびハロタン(Albic BV, Maassluis, The Netherlands)の静脈注射によってウサギを麻酔した。3mlのEuthesate(ペントバルビタール、200mg/ml; Apharmo b. v., Arnhem The Netherlands)を用いてウサギを屠殺にした。
【0061】
腫瘍細胞
VX2細胞系統[21]を、オランダ、ユトレヒト大学医療センターの口腔顎顔面外科(the Department of Oral and Maxillofacial Surgery of the University Medical Center, Utrecht, The Netherlands)[22]から得た。ウサギの臀部領域での皮下継代によってVX2腫瘍を増殖させた。腫瘍を解剖した後、小さい部分(直径2mm)を移植用に選んだ。
【0062】
腫瘍の移植
腫瘍の(2または3)部分をAbbocath(商標)18G(Abbocath Ltd., Ireland)を用いて外側左葉(left lateral lobe)に注入した。注射傷を組織グルー(Histoacryl, B. Braun Melsungen AG, Melsungen, Germany)で塞いだ。約12日後、最初の超音波検査(HDI 3000 ATL, EntosTM CL10-5 transducer)を行って腫瘍増殖をチェックした。
【0063】
微粒子の投与
腫瘍が直径20mm以上に達したら、ホルミウム付加微粒子を投与するために2回目の開腹手術を行った。胃十二指腸動脈をAbbocath(商標)24G(Abbott Ltd., Ireland)でカニューレ留置した。逆流を、5%グルコース中の0.1%メチレンブルーで確認した。Herba et al.[23]に記載されるものと類似のフラッシュ前の投与系をAbbocath(商標)と接続した。懸濁した微粒子を投与し、注射量を算出するため、注射前および後の放射線量についてシリンジを計量した。胃十二指腸動脈を組織グルー(Histoacryl, B. Braun Melsungen AG, Melsungen, Germany)と連結した、または可能であればそれで塞いだ。放射性の微粒子の投与前、投与後3日および17日に、MR画像を撮影した。SPECT画像は投与後3日に撮影した。微粒子の存在を検証するため、肝臓をパラフィンで包埋し、ヘマトキシリン−エオシンで染色した後に組織学的に評価した。
【0064】
Ex-vivo 肝臓
肝臓はターミナル動物実験で用いたウサギから得た。これらのex-vivo実験を行うために余分なウサギは屠殺していない。針を心臓の左心室に突き刺し、右外耳を切り取った。ウサギを生理食塩水およびヘパリン、つまり500mlにヘパリン1ml(Leo Pharma BV, Weesp, 5000IE/1ML)でフラッシュした。肝臓を取り出し、肝動脈をAbbocath(商標)24Gでカニューレ留置した。肝動脈を経由して生理食塩水およびヘパリンで再び肝臓をフラッシュした。この肝臓を生理食塩水中に5℃で最長30時間保存した。動的MRイメージング実験中に、懸濁した微粒子を肝動脈を経由して投与した。
【0065】
磁気共鳴映像法
全てのMR検査は1.5T(Gyroscan ACS-NT 15, Philips Medical Systems)で操作して全身の系について行った。イメージングプロトコールにはT1を強調したSEのイメージングおよびT2を強調したSEのイメージングが含まれた。異なる濃度に対するホルミウムおよびイットリウム微粒子の緩和特性の測定を、反転回復シーケンスと組み合わせたマルチエコースピンエコー(SE)測定法を用いて行った。長期的緩和(R1=1/T1)および横緩和(R2=1/T2)率を、得られたシグナルの最小2乗適合によって決定した。グラジエントエコー(FFE)イメージングに関する横緩和率(R2*=1/T2*)を、0.91msのエコー間隔に25エコーを得るマルチグラジエントエコーシーケンスを用いて測定した。
【0066】
注入した微粒子ボーラスを検出するため、大静脈の模型を通過させて動的横T2*強調FFE(解像度2mm、スライス30mm、エコー時間(TE)15ms、0.352s/動的)を行った。微粒子の通過による横緩和率(△R2*)の増加を、獲得したベースライン値と相対的な、観察したシグナル変化によって算出した。ホルミウム付加微粒子の投与前および投与後のex-vivoおよびin-vivo双方のMR測定のためのイメージングプロトコールには、解剖上のT1強調SE(TE 9.5ms)イメージング、腫瘍感受性T2強調SEイメージング(TE 90ms)およびホルミウム感受性T2強調FFEイメージング(TE 4.6、9.2ms)が含まれる。ex-vivo実験のためには、動的T2*強調FFEイメージ(解像度2mm、TE 9.2ms、スライス厚4または10mm、スライスあたり1s)シーケンスも用いて微粒子の投与を描写した。
【0067】
シンチグラフィー・イメージング
放射性微粒子の投与後、デュアルヘッドカメラ(Vertex-MCD, ADAC, Milpitas, CA)を用いてウサギの全身および腹部のイメージングを行った。平面およびSPECT画像を生成した。SPECT取得には180℃の検出器がそれぞれ1停止ごとに30sで32回停止する回転を必要とした。
【0068】
結果
微粒子
溶媒の蒸発によって調製した微粒子は、篩にかけた後、直径20〜50μmの3〜5グラムの球形の粒子となり(図1)、ホルミウム含有量は15〜17%(w/w)となった。
ファントム 反転回復実験でのマルチスピンエコーにより測定したR1およびR2は、ホルミウム微粒子の濃度に主に依存していた、図2。最小2乗適合は、ΔR2=1.93×[HoMS]s-1を意味し、[HoMS]はmg/gである。これは撹乱する粒子がプロトンの拡散距離と比較して大きいので[24]、静止した常磁性体がこのサイズを乱すためと予想される。図3はR2*のHoMS濃度への依存を示す。横緩和は、HoMSの磁化率を、キュリーの法則を用いて分離したHoイオン(10.4 ボーア磁子)の磁気モーメントおよび微粒子のHo含有量から算出する、静的ディフェージング型(static dephasing regime)[25]を予測したものに一致する。平均的なヒト大静脈のスケールモデルにおける肺の短絡を評価するため、ホルミウム付加微粒子の通過を検出すると、動的MRIが一注入量全てを検出する能力があることが分かった(表1)、これは6.7mgおよび48mgの用量に関して図9に説明されている。後者の用量を徐々に注入して経時的な微粒子の短絡をシミュレートした。この図はベースライン値の取得後、数ミリグラムの用量が容易に検出されることを示している。その他の全ての注入用量について、測定された緩和率の変化は投与された微粒子の量に直線的に比例した。
【0069】
腫瘍移植および166Ho微粒子の投与
腫瘍の移植の結果、「受容」率は100%となった。16日後この腫瘍は直径約23mmに達した。この腫瘍を超音波で見られるように十分血管新生させた。腫瘍サイズは、ルーラーで測定した体積で10〜17cm(12.7±4.1cm)変化した(図4)。
投与後、投与系には約6%の放射能が付着した。560〜640MBqの放射能に対応する48〜50mg量の放射性ホルミウム微粒子を腫瘍を有する肝臓へ効果的に投与した。
【0070】
肝臓腫瘍を有するウサギでの体内分布
シンチグラム画像上で放射能は特に腫瘍および肝臓に見られた(図5)。肝臓で放射能は不均一に分布した。微粒子の蓄積増加が腫瘍内および腫瘍の周囲に見られた。
ホルミウム付加微粒子の投与前のウサギのMRIは、VX2腫瘍を視覚化するのに理想的な診断ツールという結果となった(図6a)。腫瘍は均質的で丸く、くっきりと縁取られた病変のように見える。肝臓組織と比較して腫瘍は、T1強調画像では低信号、T2強調画像上では高信号の病変のように現れる。ホルミウム付加微粒子の投与後の、ホルミウム付加微粒子の蓄積によってもたらされる磁場の攪乱は、腫瘍内および肝臓内に見られた(図6b〜c)。T2強調画像は、肝臓および特に腫瘍の周囲の黒い部分の増加によって示されるようにホルミウムに対してより感受性が高くなっている。腫瘍の核内にはホルミウムの蓄積は見られなかった(図6d)。
【0071】
追加のMRスキャンを微粒子の投与後17日に得た。腫瘍の進行は見られなかった。実質的なホルミウム付加微粒子の再分布は見られなかった。2枚のウサギMR画像は、外側右葉(right lateral lobe)が本来の体積の2〜4倍増加したことが分かった。内側右葉(right medial lobe)および内側左葉ならびに外側左葉では肝臓組織の損傷が見出された。これらの葉は胆汁の蓄積によって生じた広い壊死部分および黄色くなった部分を示した。胃および十二指腸には明白な病巣は見られなかった。この腫瘍は完全に壊死状態であった。MR画像がホルミウム付加微粒子の蓄積および従って腫瘍の同定に非常に役立った。組織構造によって壊死腫瘍内および壊死腫瘍の周囲の蓄積を確認した。
【0072】
Ex-vivo肝臓
微粒子の投与の処理は3つのex-vivoウサギ肝臓で行った。動脈中の蓄積を動的MRを用いて観察した。最初に小さい血管を肝臓の縁まで微粒子で満たした(図8c 1〜4)。その後微粒子の蓄積が大きな血管に現れ、肝臓の中心に現れた(図8c 4〜8)。これらの実験中、0〜100mgの微粒子を用いた。図8中の画像5の後、塞栓形成した新しい血管はほとんどなかった(その時約40mgの微粒子が投与された)。
【0073】
考察
この研究でMRIを放射性および非放射性ホルミウム付加微粒子のイメージングに使用することの実現可能性を調査した。in-vivoおよびex-vivo実験中、肝臓での体内分布を検査し、その後、VX2腫瘍を移植したウサギ肝動脈へ動脈内投与した。
【0074】
寒天中に懸濁したホルミウムを付加したポリ(L−乳酸)微粒子を用いるファントム実験は、キュリーの法則によって説明することのできるHoMSの磁化率を示し、Ho−イオン間に磁気的相互作用がないことを示す。Hoの磁化率はDyのものに匹敵する[17]。MRイメージングは、腹部の解剖学的構造を確認するのに非常に有用である。腫瘍は外側左葉中に球形の組織塊として目に見える。エコーおよびルーラーで測定した腫瘍のサイズはMRIを用いる測定に匹敵する。放射性ホルミウム付加微粒子の投与後、腫瘍内、特に腫瘍の周囲に蓄積が見られた。これは肝臓転移の腫瘍血管形成によるものと説明できる。肝臓腫瘍は血管過多の縁を有することが多く、その血液供給をほぼ独占的に肝動脈から引き出す[32]。肝動脈へ注入された微粒子は従って腫瘍の周囲に蓄積する。
【0075】
シンチグラム画像およびMR画像の双方で、肝臓でのホルミウム微粒子の不均一な分布が見出された。この不均一な分布はヒト患者についても記載され、高い放射能量に対する肝臓の耐性の説明となり得る[32;33]。肝臓の大部分が受ける放射能は、大部分の肝臓組織が残存する結果となる放射能の均一な分布に対して予測されるものよりも少ないであろう。MR画像およびシンチグラム画像は、双方とも動物におけるホルミウムの蓄積を示す。しかしMRIはこの画像を動物の形態についての詳細な情報と組み合わせ、その結果体内のどこにホルミウム微粒子が蓄積するかの直接的な証明をもたらす。腫瘍を有する標的器官におけるホルミウム微粒子の量的MRから、容易で正確な処方学的研究を行うことができる。
【0076】
ex-vivo肝臓実験では、投与中のリアルタイムMR画像の実現可能性を証明した。明確な時点で微粒子をもたらすさらなる血管はなかったこと、および最初に小さな血管が球体で満たされたことがはっきりと見出された。これは維管束組織の球体を集める能力が制限されていること、また余分な微粒子の投与は大きな血管を満たすだけに終わることを示す。一般に、これらの大きな血管は非腫瘍血管であり、従って球体の蓄積後に腫瘍の治療に関与しない。リアルタイム制御および投与位置の変更、MR画像に基づく微粒子の流れおよび量は、結果として放射性のホルミウム付加微粒子の治療特性の最適化となるであろう。各個別の患者に応じて治療を変更することは、肝臓の損傷を減少させ、腫瘍対肝臓比を増加させる、よりよい治療をもたらす。腫瘍対肝臓比は、肝臓中の粒子の放射能および/または粒子の数に対する腫瘍中の粒子の放射能および/または粒子の数の間の比として理解される。比が高いほど従ってより有効である。さらなる研究および観察した効果の臨床説明のため、患者の経過観察は望ましい。ホルミウム微粒子は、体内に蓄積している限り治療後にイメージングできる。このような粒子に関する再分布および組織反応についての情報は、MRで見出すことができる。ウサギでの動物実験は、最初の17日間は再分布が見られないことを示す。
【0077】
結論として、本研究は、体内の放射性核種治療に使用されうるホルミウム付加PLLA微粒子をin-vivoでイメージングできることを証明した。MRでの非放射性および放射性ホルミウム付加球体のイメージングの可能性は、正確な投与および治療の経過観察の道を開くものである。
【0078】
表 1
SPECTおよびMRIでのHo−PLLA−MSの検出比較
SPECT MRI
治療用微粒子のイメージング + +
治療用微粒子の定量化 + +
肺の短絡を評価するための放射性トレース量 + +
肺の短絡を評価するための非放射性のトレース量 − +
直接解剖学的基準 − +
高解像度 − +
軟組織のコントラスト(腫瘍) − +
長期の治療後イメージング − +
高選択性投与 − +
投与中の干渉可能性 − +
【0079】
参照文献
【表2】


【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】a)ホルミウム付加PLLA微粒子の走査電子顕微鏡写真 b)篩にかけた微粒子量の分布。実験に用いた微粒子の直径は平均30μmであり、96%の粒子の直径は20〜40μmの間であった。
【図2】HoMS濃度に対するa)Rおよびb)R。実線はデータポイントに適合する最小2乗である。
【図3】HoMS濃度に対するR。実線は、球体のホルミウム含有量から算出した静的ディフェージング型(参照番号25中のEq.11)における理論上の結果を表す。
【図4】a)肝臓外側左葉の腫瘍の写真。b)ウサギの肝臓の全体像。肝臓外側左葉において(I)腫瘍を葉の縁(白点)から10mmに移植した。胃の上にあるこの肝臓葉は容易に移植することができる。内側左葉(II)および内側右葉(III)は互いに一部融合し、胃の上にある。胆嚢は内側右葉の後方に位置する。外側右葉(IV)は図6にも見られる背骨に近い胃に隣接している。
【図5】腫瘍を有するウサギのMRおよびシンチグラム画像。a)微粒子の投与後のT1強調SE画像。ホルミウムの蓄積により生じる磁場の攪乱が黒い部分として見られる。b)微粒子の投与後のT2強調FFE(TE=4.6および9.2msec)画像。黒い部分の増加が示されることから、T2強調画像のほうがホルミウムに対してより感受性が高いことが明白である。ホルミウム(従って微粒子)の蓄積の増加は小さい矢印で示されている。大きい矢印は腫瘍内および周囲の微粒子を示す。c)ウサギの器官および腫瘍を示すMR画像aの模式図。d)肝動脈への放射性微粒子(48mg;560MBq)注入後3日のウサギの全身のシンチグラム画像。右上角の小さなシンチグラム画像は「一様面線源」を使って得たウサギの輪郭を示す。ウサギの輪郭は「一様面線源」を使って得た。放射能(従ってホルミウム付加微粒子)の蓄積の増加は小さい矢印で示される。大きな矢印は腫瘍内および周囲の放射線量を示す。
【図6】ウサギの横断面の磁気共鳴画像。b)画像中に見られる期間を示す模式図。器官の色および位置は、各MRI画像中の小さな図に一致する。a)ホルミウム付加微粒子の投与前の代表的なT1強調SE画像。c)微粒子の投与後のT1強調SE画像。ホルミウムの蓄積により生じた磁場の攪乱が小さな矢印で示された黒い部分として見られる。大きな矢印で示した腫瘍内および周囲にホルミウムの蓄積増加が見られる。d)微粒子の投与後のT2強調FFE(TE=4.6および9.2msec)画像。
【図7】腫瘍を有するウサギ肝臓の治療後4週間の磁気共鳴画像。a)T1強調SE画像。b)ホルミウムの蓄積により生じた磁場の攪乱を有するT2強調FFE画像。白矢印は腫瘍の端を示す。c)腫瘍を有するex-vivo肝臓(黒矢印)。外側右葉が増加しているが、その他の葉および腫瘍は互いに増殖している。
【図8】ウサギ(a−b)の(腫瘍のない)ex-vivo肝臓へのホルミウム付加微粒子の投与の動的磁気共鳴画像(c)。投与は主に内側葉に選択的であった。T2強調FFE画像は正常肝臓中の微粒子の流れを示す。画像8c 1〜3(Dyn−T2FFE、厚さ4mm、時間分解能=5s/スライス、TE=9.2)および画像8c 4〜8(Dyn−T2FFE、厚さ10mm、時間分解能=1s/スライス、TE=9.2)。
【図9】ヒト大静脈のスケールモデルを通過するホルミウム付加微粒子の検出。破線はボーラス注入前のベースライン値を意味する。少ない用量には(5.5 mg)、A点で急速注入を行ったが、大きい用量はB点からC点で注入した。D点は循環流体での注入カテーテルの急速フラッシュである。ベースラインと曲線との間の部分は、注入した用量に比例する。a.u.:任意の単位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を少なくとも一部分乱すことの可能な粒子を含んでなり、該粒子が少なくとも1μmの直径からなる走査懸濁液。
【請求項2】
MRI走査懸濁液を含んでなる、請求項1に記載の走査懸濁液。
【請求項3】
該粒子がホルミウムを含んでなる、請求項1または2に記載の走査懸濁液。
【請求項4】
該粒子が、5×1013cm−2・s−1の中性子束で1時間照射される間にその構造を本質的に維持することの可能な組成物を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の走査懸濁液。
【請求項5】
該粒子が微粒子を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の走査懸濁液。
【請求項6】
該粒子がポリ(L)−乳酸を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の走査懸濁液。
【請求項7】
該組成物が、5×1013cm−2・s−1の中性子束で1時間照射される間にその構造を本質的に維持することの可能な化合物と化学結合したホルミウムを含んでなる、請求項3〜6のいずれか一項に記載の走査懸濁液。
【請求項8】
走査懸濁液の製造のための、磁場を少なくとも一部分乱すことの可能な粒子であって、少なくとも1μmの直径からなる粒子の使用。
【請求項9】
走査画像を得るための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の走査懸濁液の使用。
【請求項10】
該粒子の流動挙動を測定するための、請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
血管形成部位を検出するための、請求項8〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
腫瘍を検出するための、請求項8〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
該腫瘍が肝臓転移を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
該走査懸濁液がMRI走査懸濁液を含む、請求項8〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
該粒子が、腫瘍内で該粒子の固着を可能にするのに十分な大きさの直径からなる、請求項8〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
該粒子が、少なくとも一部分、非腫瘍血管を流動することの可能なものである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
該粒子が1〜10μmの直径からなる、請求項8〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
該粒子が3〜5μmの直径からなる、請求項8〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
該粒子が10〜200μmの直径からなる、請求項8〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
該粒子が20〜50μmの直径からなる、請求項8〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
該粒子が微粒子を含んでなる、請求項8〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
該微粒子がポリ(L−乳酸)微粒子を含んでなる、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
該粒子がホルミウムを含んでなる、請求項8〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
腫瘍を検出する方法であって、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の走査懸濁液を個体へ投与し、
走査画像を得、かつ
その画像が腫瘍の存在を示すかどうかを判断する
ことを含んでなる、方法。
【請求項25】
診断用組成物および治療用組成物を含んでなるパーツキットであって、
診断用組成物および治療用組成物が、磁場を少なくとも一部分乱すことの可能な、本質的に同一の化学構造の粒子を含んでなり、治療用組成物が診断用組成物よりも放射性の高い、パーツキット。
【請求項26】
診断用組成物が本質的に非放射性である、請求項25に記載のパーツキット。
【請求項27】
該粒子がホルミウムを含んでなる、請求項25または26の記載のパーツキット。
【請求項28】
走査懸濁液を個体へ投与し、その後該個体の走査画像を生成することを含んでなる、走査画像を得る方法であって、
走査懸濁液が請求項1〜7のいずれか一項に記載の走査懸濁液を含んでなる、方法。
【請求項29】
腫瘍を患う個体を治療する方法であって、
磁場を少なくとも一部分乱すことの可能な粒子を含んでなる走査懸濁液を、個体へ投与し、
個体の走査画像を得、
個体内での該粒子の分布を測定し、
個体へ該粒子を含んでなる治療用組成物を投与し、ここで、治療用組成物中の該粒子は診断用組成物中の粒子よりも放射性が高い
ことを含んでなる、方法。
【請求項30】
請求項25に記載のパーツキットの製造のための、磁場を少なくとも一部分乱すことの可能な粒子の使用。
【請求項31】
磁場を少なくとも一部分乱すことの可能な粒子の薬剤としての使用であって、
該粒子の用量が本質的に同一の化学構造を有する粒子を用いて得られた走査画像から導き出されたものである、使用。
【請求項32】
磁場を少なくとも一部分乱すことの可能な粒子の、腫瘍治療用薬剤の製造のための使用であって、
該粒子の用量が本質的に同一の化学構造を有する粒子を用いて得られた走査画像から導き出されたものである、使用。
【請求項33】
該腫瘍が肝臓の転移を含む、請求項29または32に記載の方法または使用。
【請求項34】
該粒子が少なくとも1μmの直径からなる、請求項29〜33のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項35】
該粒子がホルミウムを含んでなる、請求項29〜34のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項36】
該粒子が、5×1013cm−2・s−1の中性子束で1時間照射される間にその構造を本質的に維持することの可能な組成物を含んでなる、請求項29〜35のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項37】
該粒子が微粒子を含んでなる、請求項29〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
該粒子がポリ(L−乳酸)微粒子を含んでなる、請求項29〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
該組成物が、5×1013cm−2・s−1の中性子束で1時間照射される間にその構造を本質的に維持することの可能な化合物と化学結合したホルミウムを含んでなる、請求項29〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
腫瘍の治療のための治療用組成物の製造方法であって、
第一の工程で、走査画像、より詳しくは、請求項1〜7のいずれか一項に記載の走査懸濁液を与えた患者のMRI画像を得、
第二の工程で、該走査懸濁液中の該粒子と本質的に同一の化学構造を持ち、該走査懸濁液中の粒子よりも放射性が高くなるようにした粒子を用いて、腫瘍の治療のための治療用懸濁液を製造する、
ことを含んでなる、方法。
【請求項41】
走査画像の取得の前に一定量の粒子を製造し、該粒子量の第一部分を走査懸濁液の製造に用い、該粒子量の第二部分を治療用懸濁液の製造に用いる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
該粒子を治療用放射性懸濁液に用いるための放射線の線量、および/または治療用懸濁液に用いる粒子の量が、少なくとも一部は取得した走査画像に基づく、請求項40または41に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−68667(P2011−68667A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267300(P2010−267300)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2004−519358(P2004−519358)の分割
【原出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【出願人】(502006069)ユニベルシテア、メディッシュ、セントラム、ユトレヒト (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAIR MEDISCH CENTRUM UTRECHT
【出願人】(503208194)ユニベルシテイト、ユトレヒト、ホールディング ベスローテン、フェンノートシャップ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT UTRECHT HOLDING B.V.
【Fターム(参考)】