説明

直接焼却ガラス固化装置で処理される廃棄物の鉱物断片の完全燃焼及び酸化を可能にする方法

【課題】装置中に含まれる可燃性廃棄物の鉱物断片の完全燃焼及び酸化を可能にして直接燃焼ガラス固化により廃棄物を処理する方法を提供する。
【解決手段】装置2に廃棄物3を導入し、装置内の溶融ガラス槽1の表面に配置するステップ、ガラス槽1表面上の廃棄物3を燃焼及び酸化処理するステップ、燃焼生成物をガラス中に導入する間に、ガラス槽、燃焼生成物及び任意でガラス槽1に添加されるガラス固化補助剤5を、ペースト状液体が得られるまで加熱するステップ、及び前記液体を装置から除去し、冷却して封じ込めマトリックスを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接焼却ガラス固化装置で処理される廃棄物の鉱物断片の完全燃焼及び酸化を達成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、ガラス質又はガラスセラミック質のマトリックス(いわゆる封じ込めマトリックス)中の可燃性廃棄物又は混合廃棄物(有機物及び無機物)の有害な破片を固定化する問題について、多数の調査及び開発の研究が行われている。このような廃棄物の毒性は、化学的なもの(重金属)であるか又は放射性のものである。
このような調査の利益は、処理する廃棄物の安定化、試験済みで且つ耐久性を有する封じ込めマトリックスの達成、廃棄物の初期容量の低減など多岐に亘るため、世界中の多数のチームがこの種の調査作業に取り組んでいる。
【0003】
公知の従来技術により提案された1つの解決法は、廃棄物の焼却及び廃棄物の鉱物断片のガラス固化の両方を単一装置内で達成することが可能な工業的方法である。適用される種々の技術は、融解によりガラス槽又は溶融マトリックスを形成すること、及びその表面へ処理する廃棄物を添加することを含む。従って、装置内部の雰囲気によって廃棄物の有機物断片が分解又は燃焼し、揮発性部分を除く鉱物断片がある程度均一に溶融マトリックス中に取り込まれる。
これらの結果は、実験室レベル又は産業レベルで複数の技術的経路が探索されてきたことにより得られたものである。
【0004】
頻繁に使用される種々の廃棄物焼却ガラス固化法は、固定されているか又は軸を中心として回転可能な耐火物又は冷却金属構造とすることが可能なるつぼ溶融装置と、電極を浸漬して用いるか、サセプタ中へ誘導するか又は導電性の封じ込めマトリックス中へ直接誘導するか、或いはプラズマを用いることにより得られるガラス質又はガラスセラミックの廃棄物封じ込めマトリックスを加熱及び溶融する手段とを備えるシステムを用いる。複数の加熱モードを組み合わせることにより、封じ込めマトリックスの温度均一性及び焼却効率の増大を図ることができる。これらの構成の各々は明らかに固有の長所及び短所を有するが、全てが焼却ガラス固化法の効率、信頼性及び単純さに焦点を当てたものである。
【0005】
廃棄物焼却ガラス固化法の目的は、元の廃棄物中に含まれる毒性元素の、ガラス型マトリックス中への高性能且つ耐久性を有する封じ込めを確実に行うことである。しかしながら、マトリックス中への廃棄物封じ込め特性、即ち最終的に得られる封じ込めマトリックスの品質及び均一性は、ガラス槽表面上の雰囲気及び処理条件の種類(温度、材料の蓄積、混合など)に大きく依存する。従って、大量の混合されていない複数の金属相、場合によっては異なる種類の層を含む、非常に不均一な封じ込めマトリックスは、廃棄物貯蔵、特に有害廃棄物貯蔵の点で有害である。
焼却の間に生じる化学現象又は処理する廃棄物と溶融マトリックスとの相互作用によりそのような不均一性が発生し得る。
【0006】
例えば、鉱物に富む廃棄物を焼却する場合、この廃棄物は酸化に時間を要し、且つ密度の違いにより槽の表面から底部に亘って拡散し、回復不能となる金属種又は硫化物種を急速に形成する。これは例えばガラス槽の底部に蓄積する硫化ニッケル又は硫化鉄であり、廃棄物が放射性である場合、放射性元素を有している可能性がある。
更に単純には、化学的還元現象だけでも、この時点での滞留時間が短すぎて期待された酸化が生じない場合、槽表面においてこれら種の金属状態への還元が起こる。
【0007】
使用される種々の従来技術による方法全てがこれらの化学的現象及び相互作用現象に対処する際に同じ能力を有しているわけではない。ガラス槽の表面上に還元雰囲気を発生させる方法は、そのような不均一相の大部分を生成するものである。また、酸素プラズマを用いる方法はこれらの現象を有意に低減するが、それらを完全に防止することはできない。ガラス質マトリックス中のこれらの相の完全酸化に焦点を当てた研究は、これらの現象の定量的排除を達成することができるまでには今までのところ至っていない。
従って、後述する焼却ガラス固化方法の目的は、ガラス槽表面上での廃棄物及びその分解副生成物の十分な酸化を可能にし、るつぼ溶融装置の底部において沈降相を生成することなく鉱物をガラス中に取り込むことを可能にすることにより、上記の欠点を克服することである。
【0008】
発明の詳細な説明
この目的は、直接焼却ガラス固化により廃棄物を処理する装置中に含まれる可燃性廃棄物の鉱物断片の完全燃焼及び酸化を可能にする方法により達成される。本方法は、
−廃棄物を装置に添加することにより、装置中に含まれる溶融ガラス槽の表面上に廃棄物を配置するステップ、
−ガラス槽表面上で廃棄物を焼却及び酸化するステップ、
−ガラス中に燃焼生成物を取り込む間に、ガラス槽、燃焼生成物及び任意でガラス槽に添加されるガラス固化添加剤を、ペースト状液体が得られるまで加熱するステップ、及び
−前記液体を装置から除去し、冷却して、封じ込めマトリックスと呼ばれるものを得るステップ
を含む。本方法は、廃棄物を導入するステップと、ガラス槽表面上の廃棄物を燃焼及び酸化処理するステップとにおいてそれぞれ部分的に、装置中に導入された気体から生じる酸化蒸気の下で所定の長さの時間に亘って廃棄物を保持する保持手段により、及び/又は前記2つのステップの間に酸化剤を廃棄物に添加することにより、ガラス槽表面における廃棄物の完全燃焼及び酸化を実行することを特徴とする。
酸化剤の添加は、1以上の種類の提案された保持システムと相補的に、又は保持システムの代わりに実施することができる。
【0009】
酸素含有気体以外に用いられる酸化剤は、ガラス槽内の処理の過程で廃棄物又は燃焼生成物に添加される液体又は固体とすることができる。従って、廃棄物の保持に用いられる支持体により、前記廃棄物の燃焼及びこの廃棄物の燃焼副生成物の酸化ステップが完了する前に、廃棄物のガラス槽への浸透を遅らせることが可能となる。廃棄物はガラス槽表面上に送られる気体中の酸素の存在下で燃焼し、廃棄物燃焼副生成物の酸化反応を完了させるか又は促進するために、任意で液体又は固体の酸化剤を添加する。この方法により、ガラス質マトリックス中への取り込みに先立ち、可燃性材料の完全燃焼及び鉱物類の十分な酸化が可能となり、それにより、この工程の間の不完全な酸化に起因して還元相が含まれることにより品質が変性した封じ込めマトリックスが得られることが防止される。
有利には、可燃性廃棄物と有機性廃棄物及び鉱物廃棄物とを混合する。
【0010】
有利には、廃棄物保持手段は、添加ステップの間に廃棄物を保持することを可能にする剛性の支持体を備える。
有利には、廃棄物保持手段は、ガラス槽表面上に存在して焼却酸化ステップの間にガラス槽の表面上に廃棄物を維持することを可能にする、一時的保護層と呼ばれる表面層を備え、この保護層の表面張力係数は溶融ガラス槽よりも高い。
【0011】
ガラス槽の一時的保護層は、所定の時間に亘ってガラス槽の表面の上方に燃焼生成物を保持することを可能にする層である。従って、一時的表面保護層は、処理する生成物を確実に保持し、ガラス槽表面上で副生成物が十分な時間に亘って確実に酸化することを可能にする物理化学的特性を有する。
有利には、一時的保護層は、
−ガラス槽の表面温度を低下させるステップ、及び
−ガラス槽の表面に材料を添加するステップ
の内の少なくとも1つにより得られる。
【0012】
特定の一実施形態によれば、一時的保護層は、少なくとも1つの別の表面層、いわゆる一時的保護上層を追加することにより完成し、前記少なくとも1つの一時的保護上層は、
−その上に重ねられる廃棄物の重量の影響下で、一時的保護層との間に界面力を発生させることにより、前記廃棄物から得られる粒子のガラス槽中への不浸透を向上させる作用、
−一時的保護上層の成分を混合することにより、又は一時的保護上層を強化する化学結合により、一時的保護層表面全体への機械的応力の分散を向上させる作用、及び
−廃棄物による化学的攻撃から一時的保護層を保護する作用
の内の少なくとも1つを有する。
特定の場合、少なくとも一時的保護層、或いは一又は複数の一時的保護上層を、取り込みステップの前に化学的作用により除去する。この化学的作用は、周囲、即ち他の上層の元素、又はこのために特に添加した元素の化学的作用とすることができる。
【0013】
また別の特定の場合には、少なくとも一時的保護層、或いは一又は複数の一時的保護上層を、取り込みステップの前に、ガラス槽の温度の上昇、ガラス槽表面のバブリング、機械的方法及びガラス槽の熱流体圧運動を用いる方法の中から選択される手段により除去する。
有利には、一時的保護層、或いは一又は複数の一時的保護上層は、ガラス槽の組成と適合性を有する化学組成を有する。従って、これら保護層の成分が最終的にガラス槽中に取り込まれる。
【0014】
第1の特定の実施形態によれば、一時的保護層、及び一又は複数の一時的保護上層は、粉末、フリット、フレーク及び繊維の中から選択される粒子状物質を、ガラス槽表面上に分散させることにより得られる。
第2の特定の実施形態によれば、一時的保護層、及び一又は複数の一時的保護上層は、ゲル状の物質を、ガラス槽表面上又は前もって配置した層の表面上に分散させることにより得られる。ゲルは、粒子状物質より容易に拡散して保護すべき表面全体を容易に覆うことができるという利点を有する。
第3の特定の実施形態によれば、一時的保護層、及び一又は複数の一時的保護上層をプレハブ生産し、ガラス槽の表面又は前もって配置した層の表面上に直接配置する。
【0015】
このような可燃性廃棄物中の鉱物断片の完全酸化方法の利点の1つは、実行が容易であること、並びに、廃棄物を処理工程に加える際に廃棄物の保持に用いる支持体の種類を様々に変更可能であることにより、保護層の物理化学的性質、使用される酸化剤の化学的性質、及び保護層の分解モードに生じるあらゆる問題に容易に適用できることである。この方法は大抵の場合、ガラス固化を行うことが望ましい可燃性放射性廃棄物の処理に使用できる。例えば、焼却の間にガラス槽と反応する可能性か又は硫化物を生成する可能性を有する硫黄分に富む物質の処理、イオン交換樹脂類、有機物マトリックスで被覆された塩類、スラッジ類などの処理を挙げることができる。
これを拡張して、特殊な工業廃棄物に応用することも考慮可能である。
【0016】
更に本発明は、以下の特定の態様に関する。
1. 直接焼却ガラス固化による廃棄物(3)の処理を行う装置(2)中に含まれる可燃性廃棄物の鉱物断片の完全燃焼及び酸化を可能にする方法であって、
−装置に廃棄物を添加することにより、装置中に含まれる溶融ガラス槽(1)の表面上に廃棄物を配置するステップ、
−ガラス槽の表面上で廃棄物を焼却及び酸化するステップ、
−ガラス中に燃焼生成物を取り込む間に、ガラス槽、燃焼生成物、及びガラス槽に添加されるガラス固化添加剤を、ペースト状液体が得られるまで加熱するステップ、及び
−前記液体を装置から除去し、冷却して、いわゆる封じ込めマトリックスを最終的に得るステップ
を含み、部分的には廃棄物添加ステップの間に、部分的にはガラス槽表面上での廃棄物の焼却及び酸化ステップの間に、装置に添加される気体から誘導される酸化蒸気の下で所定の時間に亘って廃棄物を保持することを可能にする保持手段により及び/又は前記二つのステップの間に廃棄物に酸化剤を添加することにより、廃棄物の完全燃焼及び酸化を行うことを特徴とする方法。
2. 可燃性廃棄物が有機性廃棄物と鉱物廃棄物との混合物であることを特徴とする、上記態様1に記載の方法。
3. 廃棄物保持手段が、添加ステップの間に廃棄物を保持することを可能にする剛性の支持体を備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
4. 廃棄物保持手段が、ガラス槽の表面に存在し、焼却及び酸化ステップの間にガラス槽の表面上に廃棄物を維持することを可能にする一時的保護層(4)と呼ばれる表面層を含み、前記層が溶融ガラス槽より高い表面張力係数を有することを特徴とする、上記態様1に記載の方法。
5. 一時的保護層(4)が、
−ガラス槽(1)の表面温度を低下させるステップ、及び
−ガラス槽の表面に材料を添加するステップ
の少なくとも一方により得られることを特徴とする、上記態様4に記載の方法。
6. 一時的保護層(4)が、一時的保護上層と呼ばれる少なくとも1つの別の表面層を追加することにより完成し、前記少なくとも1つの一時的保護上層が、
−その上に重ねられる廃棄物の重量の影響下で、一時的保護層との間に界面力を発生させることにより、前記廃棄物から得られる粒子のガラス槽中への不浸透を向上させる作用、
−一時的保護上層の成分を混合することにより、又は一時的保護上層を強化する化学結合により、一時的保護層表面全体への機械的応力の分散を向上させる作用、及び
−廃棄物による化学的攻撃から一時的保護層を保護する作用
の内の少なくとも1つを有することを特徴とする、上記態様4に記載の方法。
7. 少なくとも一時的保護層或いは一又は複数の一時的保護上層を、取り込みステップの前に化学的作用により除去することを特徴とする、上記態様4又は6に記載の方法。
8. 少なくとも一時的保護層あるいは一又は複数の一時的保護上層を、取り込みステップの前に、ガラス槽(1)の温度の上昇、ガラス槽(1)表面のバブリング、機械的方法及びガラス槽の熱液圧運動を用いる方法の中から選択される手段により除去することを特徴とする、上記態様4又は6に記載の方法。
9. 一時的保護層、及び一又は複数の一時的保護上層が、ガラス槽(1)の組成と適合性の化学組成を有することを特徴とする、上記態様4ないし8のいずれか1項に記載の方法。
10. 一時的保護層、及び一又は複数の一時的保護上層が、粉末、フリット、フレーク及び繊維の中から選択される粒子状物質をガラス槽の表面に分散させることにより得られることを特徴とする、上記態様4ないし9のいずれか1項に記載の方法。
11. 一時的保護層、及び一又は複数の一時的保護上層が、ゲル状の物質を、ガラス槽の表面又は前もって配置した層の表面に分散させることにより得られることを特徴とする、上記態様4ないし9のいずれか1項に記載の方法。
12. 一時的保護層、及び一又は複数の一時的保護上層をプレハブ生産し、ガラス槽(1)の表面に又は前もって配置した層の表面に直接配置することを特徴とする、上記態様4ないし9のいずれか1項に記載の保護方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による方法を実行するために使用される装置の断面を示す概略図である。
【実施例】
【0018】
添付図面と共に例示的且つ非限定的に提供される以下の記述により、本発明を詳細に説明し、その他の利点及び特徴を明らかにする。
発明の詳細な説明
図に示するつぼ溶融装置2は溶融ガラス槽1を含み、ガラス槽の表面上には保護層4を形成することができる。供給システム6を用いて廃棄物をガラス槽の表面上に注ぐ。この供給システム6は、廃棄物3を保持する支持体又はシステムとしても作用することができ、これによりるつぼ溶融装置2中への廃棄物取り込みステップの間に廃棄物3の燃焼を部分的に実行することが可能となる。参照番号5は、廃棄物3の酸化及び燃焼に作用するためにるつぼに添加される気体、固体又は液体を示す。これらは、廃棄物3に適用される酸素プラズマ(反応性充填剤とも呼ばれる)及び/又は気体状酸素、及び/又は固体又は液体の酸化剤、及び/又はガラス固化添加剤(ガラスフリット、シリカ、炭酸塩、種々の酸化物等)の流れとすることができる。
【0019】
目標を達成するため、即ち例えば金属又は硫化物の還元種がガラス槽に混入することを防止し、続いて沈降現象を防止するため、ガラス槽の上方で廃棄物を燃焼させる場合、含まれる鉱物類が完全に酸化されるまで確実に燃焼を行わなければならない。装置中への廃棄物の取り込み又は供給ステップの間に機械的部品によって行われる廃棄物の支持、又は保護層4による燃焼生成物の保持により、特に可燃性物質の完全燃焼及び鉱物物質の十分な酸化が確実に行われ、それらを封じ込めマトリックス中に取り込むことができる。これら2つの保持モードにより、ガラス槽表面の上方で廃棄物を酸素含有気体、或いは固体又は液体酸化剤(硝酸塩、硫酸塩、硝酸、硫酸等)と反応させることが可能になる。気体、液体又は固体の酸化剤は、順次に又は同時に反応性充填剤に添加することができる。これらの選択は、対象の廃棄物、方法に関する制約、酸化剤がもたらす化学元素と最終的に得られるガラス組成との適合性等に応じて行われる。
上述のように、保護層4の主要な機能はガラス槽1の表面の表面張力を増大することである。この機能を確保するために、一時的保護層は、その生成温度において、ガラス槽より高い表面張力係数(約100dPaの粘度に相当)を有する。この層は、接触する粒子との間に界面力を生じることにより、望ましくない物質がガラス槽に侵入することを防ぐ。
【0020】
また、装置中への廃棄物の取り込みステップの間に剛性の支持体6により、又はガラス槽表面上の保護層により確実に行われる、ガラス槽表面の上方での保護層4の保持は、当然ながら一時的なものである。廃棄物の支持は、廃棄物の焼却及び酸化期間の間に行われる。保護層は最終的には分解されて、製造されるガラス質マトリックスの最終組成に入る。保護層の分解は、自然に行うことができる。即ち、層は腐食により除去される。それは、焼却ガラス固化の実行に用いられる方法(例えば、特にプラズマトーチを用いてガラス槽の温度を上昇させる)の効果、又はこれら保護層の望ましい寿命に相当する滞留時間の後に保護層を溶解する薬剤を保護槽に添加することにより行われる。焼却期間の終了時に添加される元素が最終的に得られるガラスの組成中に入り込む場合は、それら元素による化学的攻撃が特に重要となる。従って、一又は複数の保護層の化学組成は、好適には、前記マトリックスの組成と適合性を有しなければならない。よって、保護層及び保護上層の組成に関し、ガラス質マトリックスの組成に入り込む元素を選択することが好ましい。これら添加される元素はまた、それらが添加されるときの化学的形態(酸化剤、還元剤等)に従って、及び保護層又は保護上層の分解に先立って、廃棄物3から誘導される生成物との反応に関与する。
【0021】
本発明の方法の実施例
ホウケイ酸塩型の溶融ガラスは、主に41.5%のSiO(シリカ)、18.5%のB(無水ホウ酸)、10%のAl(アルミナ)、20%のNaO(酸化ナトリウム)、5%のFeから成るものを用いる。この溶融ガラスは1200℃において約40dPaの粘度を有する。実験に用いた溶融ガラスの重量は300gであり、表面積は7.3×10−3であった。この溶融ガラスで形成されたガラス槽の表面に堆積させた廃棄物3は、コークス(焼却可能廃棄物の有機物断片を模したもの)、硫酸バリウム、酸化ニッケル、酸化鉄及び酸化銅を含む25gの混合粉末であった。それに、直径5mmの硫化物ビーズを2つ加えた。
1200℃で且つ保護層4の不在下において空気中で1時間処理した後に、金属の外観を有する多数のビーズがるつぼの底部に生じた。これは、発生を回避すべき現象が発生したことを明示するものであった。
【0022】
この試験を、今度はガラス槽1上に厚さ約2mmのシリカに富む保護層を配置して再現した。保護層は溶融ガラスと共に毛管現象により上昇し、一部溶解した微細なシリカ粒子を含む粘性の混合物を形成した。空気中において1200℃で1時間処理した後、ガラス槽表面にはビーズが生じなかったことが判明した。廃棄物3の大部分が焼却されて多数の金属ビーズが形成され、これらのビーズは一時的保護層4によりガラス槽の表面上に留まった。これらのビーズの存在は、酸素供給量が廃棄物の完全酸化に不十分であったという事実を説明することができる。
上記の場合、廃棄物及び燃焼生成物をガラス槽表面上に保持するために上層を保護層4に追加する必要がないことに注意されたい。
この保護層は、Naの添加により同じ温度条件下で除去される。保護層の破壊用のこれらの化学種は、最終的に得られるガラスの組成に入るように選択されたことに注意されたい。
【0023】
同様の実験を工業的規模で再現した。溶融ガラス30kgを冷却した金属るつぼ中への直接誘導により加熱した。るつぼの上に、一対の金属トーチ間で伝達される酸素プラズマアークを発生する装置を設置し、前述と同じ種類の廃棄物3kgを保護層上で処理した。焼却ガラス固化工程の完了時に、前述の試験と同じ結論が得られた。即ち、工程の間に形成された多数の金属ビーズは、シリカに富む粒子からなる厚さ数ミリメートルの層の生成により、ガラス槽の表面に留まった。
多数の金属ビーズの存在は、鉱物類の部分酸化の兆候である。これは、雰囲気の酸化が不十分であるという事実によるものである。
【0024】
別の実施例においては、硫酸バリウム、酸化鉄、酸化ニッケル、及び酸化銅を含む鉱物類を120g含む、300gの有機性廃棄物の完全燃焼が、廃棄物を7分未満の時間に亘ってプラズマトーチ下に保持した後で得られた。
その後、耐火性るつぼ溶融装置中で燃焼生成物のサンプル22.45gを、ホウケイ酸塩ガラス200gの上に配置し、次いでホウケイ酸塩ガラス60g及び硝酸ナトリウム107gで覆った。この混合物を1200℃の炉の中に配置した。鉱物類はガラス中に完全に取り込まれ、注目すべきことに、るつぼ底部にはビーズが全く沈殿しなかった。プラズマトーチの酸素下において滞留時間を延長し、酸化剤を添加することにより、還元種からなる沈殿物の生成が防止された。液体又は気体の酸化剤が不在であること、プラズマトーチ下での滞留時間が短すぎること、及びガラス槽の上方での廃棄物の保持が不十分であることにより、同様の結果を得ることが不可能となる。
【0025】
1以上の保護層を溶融ガラス槽上に生成することを含む本発明の方法の一実施例において、焼却ガラス固化炉は複数の区域を持つように設計することが好ましい。特に、るつぼ溶融装置の一部を廃棄物の実際の焼却(廃棄物の添加及び保持手段、保護層の生成、及び酸化剤の添加を含む)に使用し、別の部分をガラスの精製(同時に洗浄集じんガスのリサイクル)に使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明である。

【図1】
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【公開番号】特開2012−196672(P2012−196672A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−112288(P2012−112288)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【分割の表示】特願2007−514040(P2007−514040)の分割
【原出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【出願人】(591015050)アレヴァ・エンセ (20)
【Fターム(参考)】