説明

直播機

【課題】
直播機において、種子ホッパーの播種装置を作動させるための接地式動力発生装置が、牽引車の後輪類と干渉しないようにすることである。
【解決手段】
接地式動力発生装置Dを、直播機の一例である不耕起直播機Aを牽引するトラクタTの後部に配設された一対のゴムクローラKの間に配置させると共に、該接地式動力発生装置Dを構成する一対の接地駆動輪44が、トラクタTと不耕起直播機Aとを連結する連結装置J及びトラクタTの動力を伝達するためのユニバーサルジョイント22のいずれとも干渉しないように配置させ、前記一対の接地駆動輪44が圃場Gに付勢接地されて従動回転されるときに発生する回転力を、ユニバーサルジョイント22を介して鎖歯車軸47に伝達し、更に前記鎖歯車軸47から鎖歯車式伝動ユニットUを介して種子ホッパーHの種子繰出軸56に伝達して、該種子繰出軸56を駆動回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車に牽引され、前記牽引車の動力によって圃場に播種溝を作溝しながら、該播種溝に種子と必要に応じて肥料とを播くための直播機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直播機の一例である不耕起直播機は、機体の幅方向に支持された作溝輪駆動軸に多数の作溝輪が一定間隔で支持され、前記機体の進行により圃場に多数の播種溝を作溝するための作溝装置と、前記各作溝輪に対応して配置された各種子ホッパーから、種子と必要に応じて肥料とを作溝直後の各播種溝に誘導パイプにより供給して播種するための播種装置と、接地駆動輪が付勢手段により圃場面に付勢接地された状態で前記機体に対して昇降可能に支持され、機体の進行により回転されて、前記各種子ホッパーの下端部を貫通する種子繰出軸を伝動機構を介して駆動させるための接地式動力発生装置とを備えている(例えば、特許文献1参照)。そして、従来の接地式動力発生装置は、伝動機構を簡単にするために、機体の幅方向の一端部に配置されていた。
【0003】
即ち、図10の(イ),(ロ)に示されるように、従来の接地式動力発生装置D’は、前後一対の鎖歯車81a,81b がケース82に内装されて、基端側(後側)の鎖歯車軸83を中心にして前記ケース82が上下方向に回動可能となるように、機体84の幅方向の一端部に前後方向(機体84の走行方向P)に配置された鎖歯車式伝動ユニットU’と、先端側(前側)の前記鎖歯車軸83を機体84の幅方向中央側に突出させて、該突出部に取付けられた接地駆動輪85と、前記機体84に取付けられたアーム86と前記ケース82との間に弾装されて、前記接地駆動輪85を下方に付勢させるための圧縮ばね87とで構成されていた。この結果、従来の接地式動力発生装置D’は、不耕起直播機を牽引するトラクタの後輪(図示せず)の外側に配置される関係となる。なお、鎖歯車式伝動ユニットU’における下側鎖歯車48aよりも後方の部材(動力が伝達される側の部材)の構成は、後述する本発明の不耕起直播機Aにおける鎖歯車式伝動ユニットUの構成と同一である。
【0004】
よって、作溝前の圃場Gに凹凸が存在している場合には、前記凹凸に追従して接地駆動輪85が機体84に対して昇降することにより、前記ケース82が基端側(後側)の鎖歯車軸83を中心にして上下方向に回動して、圃場面の凹凸とは殆ど無関係に接地駆動輪85の回転による動力を、前記鎖歯車式伝動ユニットU’及びこれに接続された別の伝動機構を介して、各種子ホッパーHの下端部を貫通している種子繰出軸56に伝達できる。このため、接地駆動輪85を機体84の幅方向の一端部に配置する最大の利点は、接地駆動輪85により得られた動力を種子繰出軸56に伝達する伝動機構が簡単になることである。なお、接地駆動輪85の動力により種子繰出軸56を駆動しているのは、機体84の進行速度と種子繰出軸56の回転数がほぼ比例して、播種溝Vの単位長さに対する播種量を機体84の進行速度とは無関係にほぼ一定にできるからである。
【0005】
不耕起直播機は、トラクタにより牽引されて使用される特殊な作業機の一つであって、年間を通して使用される時期及び使用期間を限られており、牽引するトラクタは他の作業機に対しても当然に使用される。そして、トラクタの大型化(高馬力化)、或いは略三角形状のゴムクローラにより後輪が代替されたトラクタの使用によって接地駆動輪を主体とする接地式動力発生装置がトラクタの後輪の外側に配置された従来配置では、接地駆動輪が後輪又はゴムクローラと干渉する問題が発生するに至った。即ち、トラクタの大型化は、一対の後輪の間隔が広くなることにより接地駆動輪との干渉が発生する。一方、略三角形状のゴムクローラにより後輪が代替されたトラクタは、中央上部のスプロケットを中心にしてゴムクローラ全体が前後に回動すること、及び左右一対のゴムクローラの間隔が広いことにより、接地駆動輪の干渉が発生する。特に、前記略三角形状のゴムクローラの場合、後方の従動車の高さ位置が低いことに加えて、後方への張出量が大きく、干渉が発生し易い。
【0006】
上記した干渉問題の単なる回避のためには、従来の不耕起直播機において、前記鎖歯車式伝動ユニットの外側に接地駆動輪を配置すればよい。しかし、上記した回避手段では、鎖歯車式伝動ユニットの外側に配置された接地駆動輪は、機体の幅方向の端部よりも外側に突出するため、圃場の畦と干渉する。このため、畦の内側の所定幅の部分には播種できなくなって、圃場の本来の栽培可能な面積の全てを使用できなくなり、圃場総面積に対する栽培可能面積が少なくなって、栽培量の低下を来す。
【特許文献1】特開2002−65008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した不具合に鑑み、直播機の接地式動力発生装置がトラクタの後輪類と干渉しないようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、機体の進行により圃場に多数の播種溝を作溝するための作溝装置と、前記作溝装置に対応して配置された各種子ホッパーから、種子と必要に応じて肥料とを作溝直後の各播種溝に誘導パイプにより供給して播種するための播種装置と、接地駆動輪が付勢手段により圃場面に付勢接地された状態で前記機体に対して昇降可能に支持され、機体の進行により回転されて、前記各種子ホッパーの下端部を貫通する種子繰出軸を伝動機構を介して駆動させるための接地式動力発生装置とを備えた直播機であって、前記接地式動力発生装置は、機体を牽引する牽引車の左右の後輪類の間に配置されていることを特徴としている。
【0009】
牽引車が走行すると、該牽引車に牽引されて直播機も同方向に走行される。牽引車の動力がユニバーサルジョイントを介して直播機に伝達され、直播機に取付けられた作溝装置が作動される。これにより、圃場に多数本の播種溝が作溝される。前記直播機には接地式動力発生装置が配設されていて、該装置を構成する接地駆動輪は付勢手段により圃場面に付勢接地されている。直播機の走行に伴って圃場に付勢接地された接地駆動輪が従動回転され、その動力(回転力)が伝達機構を介して各種子ホッパーに伝達され、それらの種子繰出軸を回転させる。これにより、種子ホッパーに収容されている種子と、必要に応じて肥料とが繰り出され、各播種溝に播種される。
【0010】
従来の接地式動力発生装置の場合、直播機における幅方向の端部に取付けられていた。このため、牽引車における左右の後輪類の配置間隔によっては、接地駆動輪と干渉するおそれがある。しかし、本発明の場合、接地式動力発生装置が、牽引車の左右の後輪類の間に配置されているため、接地式動力発生装置と牽引車の左右の後輪類との干渉が回避される。特に、前記牽引車の後輪類がゴムクローラであり、該ゴムクローラが圃場の凹凸部を通過する際に回動して後方への張出し量が大きくなっても、接地式動力発生装置と干渉するおそれは全くない。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明を前提として、前記接地式動力発生装置は、機体の幅方向の中央部に機体前方に突出して一体に設けられた支持フレームと、該支持フレームの先端部に回動軸を介して機体後方に向けて支持された回動アームと、該回動アームの自由端部に支持された接地駆動輪と、該接地駆動輪に接地力が生じ得るように前記回動軸を付勢回動させるばねとを備えていることを特徴としている。請求項2の発明では、接地駆動輪は、支持フレームの先端部に回動可能に取付けられた回動アームの自由端部に支持されている。前記回動アームは、ばねの付勢力によって、前記接地駆動輪に接地力が生じ得るように付勢されている。このため、接地駆動輪は、常に圃場に付勢接地されてスリップすることが防止される。また、接地駆動輪が、機体後方に向けて支持された回動アームの自由端部に取付けられていて、機体の前進に伴って牽引走行される形態である。このため、接地駆動輪が圃場の凹凸に対応し易く、該接地駆動輪に無理な力を作用させずにスムーズに走行させることができる。また、圃場が軟弱であっても、接地駆動輪が土中に突っ込むおそれもない。そして、上記した理由により、接地駆動輪の直径を小さくできるため、接地式動力発生装置をコンパクトなものにすることができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明を前提として、前記接地駆動輪の駆動軸と、前記機体の幅方向の端部に配設された伝動機構の入力軸とは、ユニバーサルジョイントを介して連結されていることを特徴としている。請求項3の発明では、接地駆動輪が従動回転することにより発生する動力(回転力)は、伝動機構を介して各種子ホッパーに伝達され、各種子ホッパーに設けられた種子繰出軸を駆動回転させる。接地駆動輪の駆動軸と伝動機構の入力軸とは、ユニバーサルジョイントを介して連結されているため、接地駆動輪の高さ位置に関係なくその動力を確実に伝達できると共に、従来の直播機に設けられていた伝動機構をそのまま使用することができる。このため、本発明の接地式動力発生装置を、従来の直播機に取付けることもできる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明を前提として、前記接地駆動輪は左右一対で構成されて、機体の幅方向の中央に配置されていることを特徴としている。請求項4の発明では、接地駆動輪が、機体の幅方向の中央に左右一対にして取付けられているため、該接地駆動輪が1本の場合と比較してスリップが生じにくくなり、動力を確実に発生させることができる。また、トラクタと機体とを連結するユニバーサルジョイントとが干渉することも回避できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、機体の進行により圃場に多数の播種溝を作溝するための作溝装置と、前記作溝装置に対応して配置された各種子ホッパーから、種子と必要に応じて肥料とを作溝直後の各播種溝に誘導パイプにより供給して播種するための播種装置と、接地駆動輪が付勢手段により圃場面に付勢接地された状態で前記機体に対して昇降可能に支持され、機体の進行により回転されて、前記各種子ホッパーの下端部を貫通する種子繰出軸を伝動機構を介して駆動させるための接地式動力発生装置とを備えた直播機であって、前記接地式動力発生装置は、機体を牽引する牽引車の左右の後輪類の間に配置されていることを特徴としている。このため、接地式動力発生装置、特に、該装置を構成する接地駆動輪と牽引車の左右の後輪類とが干渉するおそれはない。圃場の凹凸によって牽引車の後輪類が後方に大きく張り出した場合であっても、同様の効果が奏される。この結果、本発明に係る直播機を、殆どすべての牽引車(トラクタ等)に取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1はトラクタTに連結された不耕起直播機Aの側面図、図2は同じく平面図、図3は不耕起直播機Aの全体斜視図、図4は同じく正面図、図5は平面視における不耕起直播機Aの駆動系統図、図6は側面視における不耕起直播機Aの駆動系統図、図7は本実施例の接地式動力発生装置Dの斜視図である。
【実施例1】
【0016】
最初に、牽引車(トラクタT)について簡単に説明する。図1に示されるように、本実施例のトラクタTの後部には、幅方向に所定の間隔をおいて一対のゴムクローラKが配設されている。各ゴムクローラKは、トラクタTの機体1の後部に幅方向Q(図2参照)に沿って取付けられた駆動スプロケット軸2の両端部に装着された一対の駆動スプロケット3と複数本(本実施例の場合、片側6本)の遊動スプロケット4がクローラ帯5によって一体に構成されたものであり、側面視において略三角形状を呈している。トラクタTが圃場Gの凹凸部を通過するとき、前記圃場Gの凹凸部に倣って一対のゴムクローラKが、駆動スプロケット軸2の軸心を中心として回動する。これにより、トラクタTは、凹凸部が存する圃場Gであっても安定走行する。なお、図1において、6はトラクタTの前輪、PはトラクタTの走行方向である。
【0017】
図1及び図2に示されるように、トラクタTの機体1の背面部1aには、三点リンクヒッチ機構による連結装置Jが取付けられていて、連結装置JによってトラクタTとその後方に配置された不耕起直播機A(以下、単に直播機Aと記載する)とが連結されている(後述)。連結装置Jについて説明する。トラクタTの機体1の背面部1aから後方に向かって1本の上側リンク7と、2本の下側リンク8が突設されている。そして、直播機Aの機体9の前部(トラクタTの側)で高さ方向のほぼ中央部には、幅方向に一定の間隔をおいて一対の第1ブラケット11が突設されていると共に、該機体9の上部に配設された中央ケーシング体12(図3参照)の上面部には、前方斜め上方に向かってカプラ支持部13が延設されている。一対の第1ブラケット11には、更に一対の第2ブラケット14が延設されている。そして、前記カプラ支持部13と前記一対の第2ブラケット14に、迅速取付けヒッチ(クイックカプラ15)が装着されている。上側リンク7は、クイックカプラ15の上側リンクピン15aに連結され、同じく一対の下側リンク8は、対応するクイックカプラ15の各下側リンクピン15bに連結されている。これにより、トラクタTと直播機Aが連結される。
【0018】
次に、直播機Aについて説明する。図3及び図4に示されるように、本発明に係る直播機Aは、機体9の幅方向に支持される多数(本実施例の場合、8本)の作溝輪16より成る作溝装置Bと、機体9の後部に多数の作溝輪16と対応して配設された各種子ホッパーHから種子Sと肥料(図示せず)とを落下させるための播種装置Cと、前記作溝装置Bの前方に配設され、前記播種装置Cを作動せるための接地式動力発生装置Dとから構成されている。図2に示されるように、本実施例の接地式動力発生装置Dは、作溝装置Bの前方で、幅方向における直播機Aの機体9のほぼ中央部に配設されていて、その幅W1 は、トラクタTの後部に配設された一対のゴムクローラKの内幅Wよりも小さい。このため、接地式動力発生装置Dは、前記一対のゴムクローラKの間に配置される。
【0019】
最初に、作溝装置Bについて説明する。図3及び図4に示されるように、前記中央ケーシング体12の両側部から左右方向に一対の円筒ケーシング体17a,17b が延設されていて、各円筒ケーシング体17a,17b の先端部には、それぞれサイドフレーム18a,18b が下方に向かって取付けられている。また、トラクタTの機体1における上側リンク7の直下には、トラクタTのPTO軸19(図5参照)と直播機Aの入力軸21とを連結するユニバーサルジョイント22が配設されている。トラクタTの動力は、前記PTO軸19からユニバーサルジョイント22を介して直播機Aの入力軸21に伝達される。即ち、図5に示されるように、直播機Aの入力軸21の後端部には、中央ケーシング体12に収容される傘歯車23aが装着されていて、該傘歯車23aは、直交して配置された別の傘歯車23bと噛合されている。前記別の傘歯車23bは、一方側(図4の図面視における右側)の円筒ケーシング体17aに収容される連結軸24の一端部に装着されていて、該連結軸24の他端部には上側鎖歯車25aが装着されている。該上側鎖歯車25aは、一方側のサイドフレーム18aの上部に収容されていて、前記一方側のサイドフレーム18aの下部に収容された下側鎖歯車25bとの間に鎖26が掛装されている。そして、前記下側鎖歯車25bは、多数の作溝輪16を一定間隔で支持する作溝輪駆動軸27の端部に装着されている。各作溝輪16は、図4に示されるように、僅かに外径の異なる一対のわん曲円板28a,28b が、それらの各凹面を対向させて固着されていると共に、前記一対のわん曲円板28a,28b の外周縁から所定長の部分のみが地中に入り込めるように、同一外径の鍔リング体29を一体に取付けた形態である。
【0020】
前記ユニバーサルジョイント22を介して入力軸21に入力されたトラクタTの動力は、各傘歯車23a,23b,連結軸24,上下の各鎖歯車25a,25b を介して作溝輪駆動軸27に伝達される。これにより、作溝装置Bが作動され、多数本の作溝輪16が駆動回転され、圃場Gに断面V字状の各播種溝Vが作溝される。
【0021】
次に、播種装置Cについて説明する。図3及び図5に示されるように、直播機Aの機体9の後部で各作溝輪16と対応する位置(各作溝輪16の直後方の位置)の上方には、該作溝輪16と同数(本実施例の場合、8基)の種子ホッパーHが搭載されている。図6に示されるように、本実施例の各種子ホッパーHには、種子Sと肥料とを別々に収容する2つの収容室31が設けられている。各収容室31の下部には、各収容室31に収容されている種子Sと肥料を定量ずつ繰り出すための播種装置Cが取付けられていて、該播種装置Cによって繰り出された種子Sと肥料は、各種子ホッパーHの下部に取付けられている受け器31aで混ざり合い、播種ホース32を通って播種溝Vに落下される。なお、図6において、33は、播種溝Vに落下された種子Sと肥料に僅かな土を落として覆土するための覆土チェーンである。播種装置Cを作動させるための動力は、接地式動力発生装置Dから伝達される(後述)。
【0022】
次に、接地式動力発生装置Dについて説明する。本実施例の直播機Aの機体9における幅方向の中央部で、トラクタTの一対のゴムクローラKの間には、接地式動力発生装置Dが配設されている。即ち、図7及び図8に示されるように、直播機Aの機体9から前方に向かって一対の第1及び第2の各ブラケット11,14が延設されている。そして、各第2ブラケット14の内側部分には、正面視において略S字状の各支持部材34が固着されている。各支持部材34の下端部には、支持フレーム35が取付けられている。該支持フレーム35は、幅方向に所定間隔をおいて配置された2枚の側板35aの長手方向の両端部に、前後の各ロッド36,37が取付けられた方形枠状である。前ロッド36には、円筒体38が回動可能にして装着されている。そして、前記後ロッド37と前記円筒体38の上部には、それぞればね支持部37a,38a が固着されていて、両者の間に引張りばね39が弾装されている。該引張りばね39の引張力により、円筒体38のばね支持部38aは、常に後方に引っ張られている。
【0023】
前記円筒体38の外周部分で軸方向の両端部には、後方に向かって一対の回動アーム41が固着されており、前記一対の回動アーム41には常に下向きの付勢力が作用している。この一対の回動アーム41の自由端部には、円筒状の軸支持部材42が固着されていて、該軸支持部材42に支承軸43が挿通されている。該支承軸43は、前記軸支持部材42に内装された軸受(図示せず)により回転自在である。そして、前記支承軸43の両端部には、一対の接地駆動輪44が装着されている。このため、一対の接地駆動輪44は、常に一体となって回転される。前述したように、円筒体38には後方に向かって一対の回動アーム41が取付けられていて、該一対の回動アーム41は常に下方に向けて付勢力(接地力F)を作用させながら、一対の接地駆動輪44を牽引走行させるため、一対の接地駆動輪44は常に圃場Gに押し付けられている。換言すれば、一対の接地駆動輪44は、常に下方への付勢力(接地力F)を作用させながら走行し、トラクタTの走行に伴い従動回転されたときにスリップすることが防止されている。また、圃場Gに凹凸部が存在する場合であって、一対の又はいずれかの接地駆動輪44が凹部に入り込もうとするとき、凸部に乗り上げようとするとき、或いは圃場Gが軟弱なときであっても、前記一対の接地駆動輪44が確実に凹凸部の傾斜に追従して回転される。なお、図8において、45は、一対の接地駆動輪44の下限位置を定めるためのストッパ部材である。
【0024】
一対の接地駆動輪44が従動回転することにより発生する回転力は、鎖歯車式伝動ユニットUを介して前述した播種装置Cに伝達され、該播種装置Cを作動させる。鎖歯車式伝動ユニットUについて説明する。図3に示されるように、直播機Aの機体9における他方側のサイドフレーム18bの前方には、角筒状の歯車ケース46が高さ方向にほぼ沿って取付けられている。図6ないし図8に示されるように、歯車ケース46の下部に回転自在に支承された鎖歯車軸47の一端部(外側の部分)には下側鎖歯車48aが装着されていると共に、他端部は、ユニバーサルジョイント49を介して、一対の接地駆動輪44の支承軸43と連結されている(後述)。
【0025】
図5及び図6に示されるように、前記歯車ケース46の上部には、上側鎖歯車48bが取付けられていて、上下の各鎖歯車48a,48b に鎖51が掛装されている。上側鎖歯車48bに伝達された接地駆動輪44の動力(回転力)は、前記上側鎖歯車48bと同軸にして取付けられた鎖歯車52aと、該鎖歯車52aと対応してその後方位置に取付けられた鎖歯車52bとに掛装された鎖53によって伝達される。そして、前記鎖歯車52bと同軸に取付けられた鎖歯車54aと、該鎖歯車54aと対応してその後方位置に取付けられた鎖歯車54bとに掛装された鎖55によって伝達される。前記鎖歯車54bは、各種子ホッパーHに設けられた播種装置Cを作動する種子繰出軸56に支承されている。接地式動力発生装置Dを構成する一対の接地駆動輪44からの動力が、ユニバーサルジョイント49及び鎖歯車式伝動ユニットUを介して種子繰出軸56に伝達され、該種子繰出軸56が駆動回転されて各種子ホッパーHの播種装置Cが作動される。各種子ホッパーHの収容室31に収容されていた種子Sと肥料とが受け器31aに落下される。受け器31aにおいて混ざり合った種子Sと肥料は、該受け器31aに取付けられた播種ホース32を通って、各作溝輪16によって形成された播種溝Vに播種される。一対の接地駆動輪44の動力により種子繰出軸56を回転させているため、直播機Aの機体9の進行速度と種子繰出軸56の回転数がほぼ比例して、播種溝Vの単位長さに対する種子S及び肥料の播種量を、機体9の進行速度とは無関係にほぼ一定にできる。
【0026】
次に、一対の接地駆動輪44の支承軸43と下側鎖歯車48aの鎖歯車軸47とを連結するユニバーサルジョイント49について説明する。図7及び図8に示されるように、本実施例のユニバーサルジョイント49は、角筒状のロッド受け部57と、該ロッド受け部57に摺動自在に挿入されたロッド58と、それらの端部に取付けられた各自在継手部59a,59b とから構成されている。前記ロッド受け部57と一方側(直播機Aの機体9の側)の自在継手部59a及びロッド58と他方側(一対の接地駆動輪44の側)の自在継手部59bとは、それぞれ十字状のクロス連結部材61を介して連結されている。ロッド受け部57に挿入されるロッド58の挿入量は、可変である。また、ロッド受け部57と一方側の自在継手部59a及びロッド58と他方側の自在継手部59bとは、前記クロス連結部材61の中心部分(交差部分)を中心とする球面内で回動自在である。このため、一対の接地駆動輪44の支承軸43と下側鎖歯車48aの鎖歯車軸47は、平面視における双方の軸心が合致しない状態であっても、回転自在である。更に、前述したように、圃場Gの凹凸に追従して一対の接地駆動輪44の支承軸43の高さ位置が変化しても、それに対応してロッド受け部57に挿入されるロッド58の挿入量が変化することによって双方の高さ位置の変化が吸収されるため、一対の接地駆動輪44の動力の伝達に支障は生じない。なお、図7において、62は泥除けカバーである。
【0027】
本実施例の直播機Aの作用を説明する。図1及び図2に示されるように、トラクタTに牽引されて直播機Aが走行される。トラクタTの動力は、トラクタTのPTO軸19に取付けられたユニバーサルジョイント22を介して、直播機Aの入力軸21に入力される。そして、各傘歯車23a,23b,連結軸24、各鎖歯車25a,25b 及び鎖26を介して作溝輪駆動軸27に伝達される。これにより、各作溝輪16が駆動回転され、圃場Gに断面V字状の播種溝Vが形成される。また、引張りばね39の引張り力により、圃場Gに付勢接地されて従動回転される一対の接地駆動輪44の動力(回転力)が鎖歯車式伝動ユニットUを介して伝達され、播種装置Cの種子繰出軸56を駆動回転させる。これにより、種子ホッパーHの各収容室31に収容されていた種子Sと肥料とが混ざり合った状態で前記播種溝Vに播種される。
【0028】
本実施例の直播機Aの場合、接地式動力発生装置Dは、幅方向における直播機Aの機体9のほぼ中央部で、トラクタTに取付けられた一対のゴムクローラKの間に配置されている。更に、接地式動力発生装置Dを構成する一対の接地駆動輪44は、各上側リンク7と下側リンク8どうしの間に配置されている。このため、一対の接地駆動輪44と各ゴムクローラK、上下の各リンク7,8、及びユニバーサルジョイント22と干渉するおそれはない。前記各ゴムクローラKが、圃場Gの凹凸に追従して回動され、各ゴムクローラKが後方に大きく張り出した場合であっても同様である。しかも、一対の接地駆動輪44の支承軸43と鎖歯車式伝動ユニットUを構成する下側鎖歯車48aの鎖歯車軸47とは、ユニバーサルジョイント49を介して連結されている。このため、一対の接地駆動輪44が圃場Gの凹凸に追従することにより前記支承軸43の高さ位置が変化しても、一対の接地駆動輪44の動力の伝達に支障はない。
【0029】
上述した本実施例の接地式動力発生装置Dの場合、2本の接地駆動輪44が取付けられていて、各接地駆動輪44が圃場Gに付勢接地されている。このため、前記接地駆動輪44が1本の場合と比較して確実に従動回転され、動力がより確実に伝達される。また、本実施例の接地式動力発生装置Dでは、図8に示されるように、一対の接地駆動輪44の支承軸43の軸心が円筒体38よりも、走行方向Pに対して後方に配置されている。もし、一対の接地駆動輪44の支承軸43の軸心が円筒体38よりも前方に配置されていると、機体1の前進に伴い、一対の接地駆動輪44が圃場Gから大きな抵抗を受けるおそれがある。特に、圃場Gが軟弱である場合には、土中に沈み込むおそれがある。しかし、本実施例では、一対の接地駆動輪44の支承軸43の軸心が、前記円筒体38よりも後方に配置されていて、一対の接地駆動輪44が牽引走行される形態となっている。このため、一対の接地駆動輪44が、圃場Gの凹凸に対応し易く、前記一対の接地駆動輪44に無理な力が作用せず、スムーズに走行させることができる。また、圃場Gが軟弱であっても、一対の接地駆動輪44が土中に突っ込むおそれもない。そして、上記した理由により、一対の接地駆動輪44の直径を小さくできるため、接地式動力発生装置Dをコンパクトなものにすることができる。
【0030】
更に、前記接地駆動輪44を、直播機Aの機体9の外側に取付けた場合と比較して、圃場Gの畦端であっても播種をすることができるという利点を損なわない。これにより、圃場Gの全域に対して播種をすることができる。
【0031】
本明細書では、接地式動力発生装置Dを不耕起直播機Aに配設した場合について説明したが、不耕起直播機A以外のもの、例えば耕起直播機、種芋の植付機においても使用することができる。図9に、本実施例の接地式動力発生装置Dを、耕起直播機A1 に配設した場合の概略側面図を示す。耕起直播機A1 を構成するロータリー装置63の前方に、接地式動力発生装置Dが配設されていると共に、後方に播種装置Cが配設されている。前記播種装置Cの種子ホッパーHから延設された播種ホース32の下端部には、横断面略V字状の作溝板64が取付けられている。ロータリー装置63によって膨軟にされた圃場Gに、作溝板64によって播種溝Vが形成され、種子Sと、必要に応じて肥料が播かれる。この場合であっても、接地式動力発生装置Dは、一対のゴムクローラKの間に配置されているため、一対の接地駆動輪44とゴムクローラKとが干渉するおそれはない。
【0032】
本明細書では、付勢手段が引張りばね39の場合について説明した。しかし、前記付勢手段は、圧縮ばねであっても構わない。
【0033】
本実施例の播種装置Cでは、種子Sと肥料とを混ぜて1本の播種ホース32で同時に播く形態である。しかし、播種と施肥とを別々に行うもの、或いは、別々の播種ホースと施肥ホースで一度に播く形態であっても構わない。
【0034】
本明細書では、後部にゴムクローラKが配設されたトラクタTの場合を説明したが、後輪(ゴムタイヤ)が配設されたトラクタTの場合であっても、同様な効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】トラクタTに連結された不耕起直播機Aの側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】不耕起直播機Aの全体斜視図である。
【図4】同じく正面図である。
【図5】平面視における不耕起直播機Aの駆動系統図である。
【図6】側面視における不耕起直播機Aの駆動系統図である。
【図7】本実施例の接地式動力発生装置Dの斜視図である。
【図8】接地式動力発生装置Dの作用説明図である。
【図9】本実施例の接地式動力発生装置Dが配設された耕起直播機A1 の概略側面図である。
【図10】(イ)は、従来の接地式動力発生装置D’の概略平面図、(ロ)は、同じく概略側面図である。
【符号の説明】
【0036】
A:不耕起直播機(直播機)
1 :耕起直播機(直播機)
B:作溝装置
C:播種装置
D:接地式動力発生装置
F:接地力
G:圃場
H:種子ホッパー
K:ゴムクローラ(後輪類)
S:種子
T:トラクタ(牽引車)
U:鎖歯車式伝動ユニット(伝動機構)
V:播種溝
9:機体
32:播種ホース(誘導パイプ)
35:支持フレーム
38:円筒体(回動軸)
39:引張りばね(付勢手段)
41:回動アーム
43:支承軸(接地駆動輪の駆動軸)
44:接地駆動輪
47:鎖歯車軸(伝動機構の入力軸)
49:ユニバーサルジョイント
56:種子繰出軸
64:作溝板(作溝装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の進行により圃場に多数の播種溝を作溝するための作溝装置と、
前記作溝装置に対応して配置された各種子ホッパーから、種子と必要に応じて肥料とを作溝直後の各播種溝に誘導パイプにより供給して播種するための播種装置と、
接地駆動輪が付勢手段により圃場面に付勢接地された状態で前記機体に対して昇降可能に支持され、機体の進行により回転されて、前記各種子ホッパーの下端部を貫通する種子繰出軸を伝動機構を介して駆動させるための接地式動力発生装置と、
を備えた直播機であって、
前記接地式動力発生装置は、機体を牽引する牽引車の左右の後輪類の間に配置されていることを特徴とする直播機。
【請求項2】
前記接地式動力発生装置は、機体の幅方向の中央部に機体前方に突出して一体に設けられた支持フレームと、該支持フレームの先端部に回動軸を介して機体後方に向けて支持された回動アームと、該回動アームの自由端部に支持された接地駆動輪と、該接地駆動輪に接地力が生じ得るように前記回動軸を付勢回動させるばねとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の直播機。
【請求項3】
前記接地駆動輪の駆動軸と、前記機体の幅方向の端部に配設された伝動機構の入力軸とは、ユニバーサルジョイントを介して連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の直播機。
【請求項4】
前記接地駆動輪は左右一対で構成されて、機体の幅方向の中央に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の直播機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−59(P2007−59A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182870(P2005−182870)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000183967)鋤柄農機株式会社 (20)
【Fターム(参考)】