説明

直播機

【課題】トラクタに粉粒体吐出機を連結した場合にトラクタの動力伝達軸が逆転時に粉粒体吐出機を作動させるおそれがない直播機を提供すること。
【解決手段】エンジン20を搭載した走行車体2の後部に複数条分の種子を圃場に播くための直播装置をを走行車体に対して昇降自在に且つ着脱自在に設け、エンジン動力を走行車体2側から直播装置82の繰出回転体88,88’に伝達する動力伝動系を設け、該動力伝動系内において車体2側と直播装置82側に各々一方向クラッチを設けた直播機である。
こうして、車体2に連結する直播装置82などの作業装置へエンジン動力を伝動する動力伝動系において、走行車体2側に着脱しない一方向クラッチを設けることにより、作業装置の着脱により異なる作業装置を装着しても該作業装置が逆転作動しないようにできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、施肥装置、播種装置あるいは薬剤散布装置等の粉粒体吐出機を備えた直播機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車体の座席より後側に複数の粉粒体繰出部を機体左右方向に並べて設けると共に、粉粒体繰出部の上方に粉粒体を貯留するタンクを設け、粉粒体繰出部から送り出される粉粒体を送風器からの送風により送り出して圃場に連続的に吐出する粉粒体吐出機を備え、圃場面を滑る複数のフロートで前記粉粒体繰出部を支持しながら機体左右方向に配置した直播機が知られている。
【0003】
上記直播機は、トラクタ本体に苗植付部を装着した田植機の苗植付部を取り外して、該苗植付部に粉粒体吐出機を装着して使用するものであり、粉粒体吐出機は田植機におけるトラクタ本体のエンジン動力を変速装置を介して作動される。従って直播機の動力伝達系は苗植付部作動用の田植機の動力伝達系と同一である。
田植機の苗植付部はトラクタ本体のエンジン動力を変速装置から植付クラッチを経由して動力伝達される(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−325528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の苗植付部は、トラクタ本体のエンジン動力が植付クラッチを経由して作動するが、該植付クラッチは図示されていないがワンウエイクラッチであり、トラクタ本体の正転と逆転が自在の動力伝達軸から、該動力伝達軸が正転時に苗植付部が作動し、逆転時にはクラッチ爪が外れる一方向クラッチである。
【0005】
この苗植付部を構成するワンウエイクラッチが逆転時にクラッチ爪が摩擦で完全に外れないことがある。苗植付部は粉粒体吐出機に比較して作動時の負荷が大きな装置であるので、上記摩擦力に打ち勝つので、動力伝達軸が逆転時に苗植付部を作動させるおそれはないが、粉粒体吐出機はその作動負荷が比較的小さいため作動してしまうことがある。
そこで本発明の課題はトラクタに粉粒体吐出機を連結した場合にトラクタの動力伝達軸が逆転時に粉粒体吐出機を作動させるおそれがない直播機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
すなわち、エンジン(20)を搭載した走行車体(2)の後部に複数条分の種子を圃場に播くための直播装置(82)を走行車体(2)に対して昇降自在に且つ着脱自在に設け、エンジン(20)からの動力を走行車体(2)側から直播装置(82)の繰出回転体(88,88’)に伝達する動力伝動系を設け、該動力伝動系内において走行車体(2)側と直播装置(82)側に各々一方向クラッチを設けた直播機である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行車体(2)の後部に連結する直播装置(82)などの作業装置へエンジン動力を伝動する動力伝動系において、走行車体(2)側に着脱しない一方向クラッチを設けることにより、作業装置の着脱により異なる作業装置を装着しても該作業装置が逆転作動しないようにできる。この走行車体(2)側に設けた一方向クラッチは、例えば苗植付装置(52)等の駆動抵抗の大きい(例えばトルクで0.1kg・m程度)各種の作業装置を想定しているから、逆転防止の構造は簡単にでき、コストダウンが図れると共に、装着する作業装置の種類に拘らず兼用できる。
【0008】
しかしながら、繰出回転体(88,88’)を回転させて駆動する直播装置(82)は、その駆動抵抗が比較的小さいので、前述した走行車体(2)側に設けた一方向クラッチだけで繰出回転体(88,88’)の逆転を防ごうとしても、小さな負荷で逆転することがある。
【0009】
しかし本発明のように、直播装置(82)側に一方向クラッチを設け、逆転時に該直播装置(82)側の一方向クラッチの面圧で発生する逆回転方向の駆動トルクを直播装置(82)の駆動抵抗に相当するトルクより小さく(例えばトルクで0.0001kg・m以下)すれば、直播装置(82)が逆転しようとしても確実に逆転しないようにできる。この直播装置(82)側の一方向クラッチは、高精度で高価となるが、直播装置(82)側にのみ設けることができるため、直播装置(82)以外の作業装置を装着する場合は不要となり、コストダウンが図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
本実施例の直播機は乗用4輪駆動走行形態の直播機であり、図1は、施肥装置付きの乗用型の直播機の左側面図を示すものであり、この乗用型の直播機は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して直播装置82が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。図2には直播装置82に代えて苗植付部4を昇降リンク装置3を介して走行車体2の後部に取り付けた直播機全体の側面図を示し、図3には直播装置82の機体取付部の拡大側面図を示す。
なお、本明細書では、直播機の前進方向に向って左右方向をそれぞれ左、右とし、前進方向を前、後進方向を後とする。
【0011】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪10,10及び後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース(図示せず)が設けられ、該前輪ファイナルケースの操向方向を変えることができる前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸に前輪10,10が取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0012】
原動機となるエンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が第一ベルト伝動装置21などを介して静油圧式変速装置(HST)とミッションケース12内のミッションに伝達される。ミッションケース12内のミッションに伝達された回転動力は、変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース(図示せず)に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、カウンタ軸26を介して走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、図示しない施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0013】
また、植付クラッチケース25内の植付クラッチからドライブシャフト28を介してエンジン動力が直播装置82の伝動ケース29内の直播用クラッチに伝達される。そして、これら苗植付クラッチと直播クラッチは共に一方向クラッチとしている。
【0014】
走行車体2の後部に連結する直播装置82などの作業装置へエンジン動力を伝動する動力伝動系において、着脱しない走行車体2側に一方向クラッチを設けることにより、作業装置の着脱により異なる作業装置を装着しても該作業装置が逆転作動しないようにできる。この走行車体2側に設けた一方向クラッチは、例えば苗植付装置52等の駆動抵抗の大きい(例えばトルクで0.1kg・m程度)各種の作業装置を想定しているから、逆転防止の構造は簡単にでき、コストダウンが図れると共に、装着する作業装置の種類に拘らず兼用できる。
【0015】
しかしながら、繰出回転体88,88’を回転させて駆動する直播装置82は、その駆動抵抗が比較的小さいので、前述した走行車体2側に設けた一方向クラッチだけで繰出回転体88,88’(図4,図5)の逆転を防ごうとしても、小さな負荷で逆転することがある。しかし本発明のように、直播装置82側に一方向クラッチを設け、逆転時に該直播装置82側の一方向クラッチの面圧で発生する逆回転方向の駆動トルクを直播装置82の駆動抵抗に相当するトルクより小さく(例えばトルクで0.0001kg・m以下)すれば、直播装置82が逆転しようとしても確実に逆転しないようにできる。この直播装置82側の一方向クラッチは、高精度で高価となるが、直播装置82側にのみ設けることができるため、直播装置82以外の作業装置を装着する場合は不要となり、コストダウンが図れる。
【0016】
植付クラッチは、駆動側クラッチ体と従動側クラッチ体のクラッチ爪に傾斜面を備え、該傾斜面を滑らせて逆転伝動をさせない形態のクラッチである。直播用クラッチは、外周部に複数の伝動用ローラを備えるローラ型クラッチであり、一般的に市販されているものである。
【0017】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びボンネット32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。
【0018】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、メインフレーム15に固着した支持部材(図示せず)と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、直播装置82がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0019】
直播装置82の下部には複数のフロート55が設けられている。フロート55を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に直播装置82,…により種子が播かれる。各フロート55は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、直播作業時にはフロート55の前部の上下動が図示しない上下動検出機構により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて直播装置82を昇降させることにより、種子の播種深さを常に一定に維持する。
【0020】
施肥装置5は、肥料貯留タンク(粉粒体貯留タンク)60に貯留されている肥料(粉粒体)を走行車体2の左右方向に複数設けられた肥料繰出部(粉粒体繰出部)61,…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を図示しない施肥ホース(粉粒体移送ホース)…でフロート55の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた播種用作溝器64,…によって播種条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。図示していないがモータで駆動されるブロアで発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバを経由して施肥ホース内に吹き込み、施肥ホース内の肥料を植付部側の肥料吐出口へ強制的に移送するようになっている。
【0021】
また、フロート55の前側には整地用の整地ロータ27a,27bを設けている。
図3に示すように、整地ロータ27a,27bは、縦リンク43に着脱自在に取り付け可能な着脱ヒッチ65に設けられるロータ昇降リンク66に支持されている。ロータ昇降リンク66は、着脱ヒッチ65の基部側面に取り付けた機体横方向に伸びるロータフレーム76に「く」字状部材67の中央部を回転自在に取り付け、該「く」字状部材67の上端部には上リンク68の一端を回動自在に接続し、「く」字状部材67の下端部には下リンク69の一端を回動自在に接続している。また上リンク68の中央部にはロータ昇降レバー81側のアーム70に連結するロッド71が接続され、また下リンク69の他端は鉛直方向を向いたロータ支持フレーム73の中間部に回動自在に連結している。
ロータ支持フレーム73の上端には短いアーム74の一端が回動自在に連結し、該短いアーム74の他端が上リンク68の一端に回動自在に連結している。
【0022】
ロータ支持フレーム73の下端には整地ロータ27aの駆動軸(図示せず)が取り付けられ、該駆動軸は後輪伝動ケース18からの動力が伝動軸78(図1)を経由して伝達される。また、機体横幅のセンタにあるフロート55の前方に配置されるロータ27bは機体両サイドにあるフロート55の前方にあるロータ27aより前方に配置され、伝動部材を収納した伝動ケース56を介してロータ27bの駆動系に連結している。
【0023】
上記構成からなる整地ロータ昇降機構では、ロータ昇降レバー81を引っ張ると、上リンク68と下リンク69の各一端が、「く」字状部材67の回動中心軸であるロータフレーム76を中心に上動し、ロータ支持フレーム73と共に整地ロータ27a,27bが上昇する。
【0024】
整地ロータ27a,27bの上下位置の調整はロータ昇降レバー81により上下動させることができる。なお、ローリング軸96に設けられる水平センサ81aは整地ロータ27a,27b及び直播装置82の左右傾斜角度を検出するもので、別途設けたローリング用モータ(図示せず)により整地ロータ27a,27b及び直播装置82が左右ローリングする。
【0025】
直播装置82は、上部の種子タンク85から種子を繰り出す種子繰出部87、該種子繰出部87から繰出案内される種子を下方へ空気搬送により放出する放出筒90と播種口91等からなり、左右方向に延びるフレーム83により支持されている。
種子は、ブロア86から放出筒90に供給される空気により圃場に植え付けられる。
本実施例の直播装置82を用いると、ブロア86から供給される空気が播種口91内で上方から下方に向けて鉛直方向を向き、しかも種子の播種深度を確保するための空気流で種子の流下速度を加速させた状態で土中に種子を打ち込むことができる。
【0026】
直播装置82の下方には、播種フレーム33(図1、図8参照)の下方に吊持され、土壌面に接地して滑走するフロート55を配置しており、また、フロート55の両側には一対の播種用作溝器64と該播種用作溝器64でできた圃場の溝を埋める一対の覆土板59が設けられているので、圃場の溝内に打ち込まれた種子の上を覆土板59により土で覆うことができる。
直播装置82は図3に示すローリング軸96により圃場面に合わせて機体左右方向にローリングできる。
【0027】
本実施例の種子繰出部87の繰出ロール88には図4(a)の斜視図に示すように繰出ロール88の回転軸に平行する方向に伸びた溝88aを繰出ロール外周の円周方向に均等に4個設けることで繰出ロール88の一回転で4回の種子の点播ができる。
またこの繰出ロール88に図4(b)の平面図と、図4(b)のA−A線断面図であるC(c)と、図4(b)の矢印B方向から見た図である図4(d)に示すように外周に均等に4カ所に切り込み88bを設け、該切り込み88bの一部に入り込む筒体89を繰出ロール88に蓋をするように差し込むことで円筒体が得られ、溝88aの損傷を防止する。
【0028】
また図5(a)に示す平面図と図5(b)に示す図5(a)のA−A線断面図に示すように、繰出ロール88’の回転軸に平行する方向に伸びた溝88’aを繰出ロール外周の円周方向に均等に8個設けることで繰出ロール88’の一回転で8回の種子の直播ができ、条播ができる。
またこの繰出ロール88’に図5(b)と図5(a)の矢印B方向から見た図である図5(c)に示すように、繰出ロール88’の外周に均等に8カ所に切り込み88’bを設け、該切り込み88’bに入り込む図4(b)に示す筒体89’を差し込むことで円筒体が得られ、溝88’aの損傷を防止する。8カ所の溝88’aを繰出ロール88’の外周部に設けた場合は、点播というより条播に近い播種ができる。
【0029】
また図6の一部縦断面図に示す放出筒90とその上方に繰出ロール88を配置する構成により、播種態様を点播と条播に近い点播に簡単に切り替えることができる。すなわち図6で示す放出筒90内の中央に設けた流路を二分する壁面94の頂部に回動自在のシャッタ93を放出筒中央下部に固定した仕切壁94の頂部に取り付け、該シャッタ93を切り替えて図6に示す繰出ロール88の溝88aが少ない部分に種子を落下させることで点播とし、繰出ロール88の溝88aが多い部分に種子を落下させることで条播に近い点播とすることができる。
【0030】
また図7の一部縦断面図に示す別実施例の放出筒90とその上方に繰出ロール88を配置する構成を採用することにより、エアーで繰出ロール溝88aの清掃と表土の泥水を除去できる。
すなわち放出筒90の上方に配置した繰出ロール88に隣接してエアー流路92を設け、該エアー流路92の一部壁面に穴92aを設け、該穴92aには繰出ロール88の外表面がエアー通路側に露出するような構成にしてあるので、エアー流路92にエアーを流すと、ロール溝88a内の清掃ができ。また圃場面にある泥水をエアーで吹き飛ばすことができる。
【0031】
また、直播装置82から種子を圃場に播く場合、従来は例えばカルパー材をコーティングする等、予め種子のコーティングが行われていたが、このコーティングには時間や手間がかかり、又はせっかくのコーティングが衝撃等により剥がれる事があった。
そこで粘性の高い泡材を用いて、播種の前に種子を泡材でコーティングしておき、これを直播装置82を用いて圃場に播くことで、圃場に播かれた種子の周りに泡材を介して土がコーティングされた状態となり、予備的なコーティングを行う手間とコストを省いて簡単に種子を圃場に播くことができる。
【0032】
直播装置82には図8に示す溝切り装置95を取り付けることができる。
溝切り装置95は図8(a)の側面図、図8(b)の平面図及び図8(c)の前端部の斜視図に示す構成を有している。
すなわち、溝切り装置95は伝動ケース29(図1参照)に支持された横幅方向に伸びる播種フレーム33に端部を支持固定された基盤97上にロッド98の一端を回動可能に取り付け、該ロッド98の他端部側に底面側が鋭角状になった溝切り板99を固定して取り付けた構成である。
【0033】
該溝切り板99は図8(c)に示すように縦断面がM字状に折れ曲がった板であり、中央部底面側が鋭角状になっている。またM字状の溝切り板99の上面側の両方の傾斜面に端部がそれぞれ支持された板材100が配置され、該板材100の下面にロッド98の先端部が固定されている。
【0034】
基盤97に一端が回動自在に取り付けられ、他端がロッド98の中間部の下面に設けたピン98aに係止された第1のアーム103を設ける。また、板材100の上面に端部が固定された一対のL字状折れ曲がりロッド101を設け、該一対のロッド101の先端部同士に第2のアーム102を掛け渡している。溝切り板99が図8(a)の一点鎖線位置(上方に溝切り装置95を上げた位置)にある時、第2のアーム102を直播装置82の適宜の部材に係止させておくと、溝切り装置95を上げたまま保持できる。このとき、第1のアーム103の先端にはL字状の孔103aが設けられており、該孔103a内を摺動するようにピン98aがロッド98に取り付けられているので、図8(a)の溝切り板99を圃場面に下げた状態(実線)のピン98aの位置と溝きり板99を圃場面から上昇させた状態(破線)のピン98aの位置が第1アーム103の先端のL字状孔103aのそれぞれ反対側の先端部に移動することでロッド98をそれぞれの位置で保持できる。
【0035】
また、図2に示すように苗植付部4を支持枠体62に支持させて装着することができる。苗植付部4を設ける場合には直播装置82は取り外す。上記直播装置82の着脱ヒッチ65を縦リンク43から外して、図2に示す田植用の苗植付部4を取り付けると直播機は田植機として利用出来る。
図2に示す本実施例の苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50などを備えている。また、苗載台51の図示しない苗取出口、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付具53を有する苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。
【0036】
苗植付部4の下部の中央部と左右両側にはフロート55が設けられることになるが、これらフロート55を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時には中央のフロート55の前部の上下動が迎い角センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は田植機をはじめとして各種の施肥用、直播用又は薬剤散布用の粉粒体の吐出機である直播装置を備えた作業機として利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例の直播機の側面図である。
【図2】図1の直播機の直播装置を田植装置に代替した場合の側面図である。
【図3】図1の直播機の直播装置部分の機体への取付部の側面図である。
【図4】図1の直播機の種子繰出部の繰出ロールの斜視図(図4(a))、平面図(図4(b))、図4(b)のA−A線断面(図4(c))、図4(b)の矢印B方向から見た図(図4(d))である。
【図5】図1の直播機の種子繰出部の繰出ロールの平面図(図5(a))、図5(a)のA−A線断面(図5(b))、図5(a)の矢印B方向から見た図(図5(c))である。
【図6】図1の直播機の放出筒とその上方に繰出ロールを配置する構成を示す一部縦断面図である。
【図7】図1の直播機の放出筒とその上方に繰出ロールを配置する構成を示す一部縦断面図である。
【図8】図1の直播機の直播装置の溝切り装置の側面図(図8(a))と平面図(図8(b))及び溝切り装置前端部の斜視図(図8(c))である。
【符号の説明】
【0039】
2 走行車体 3 昇降リンク装置
4 苗植付部 5 施肥装置
10 前輪 11 後輪
12 ミッションケース 15 メインフレーム
18 後輪ギヤケース 20 エンジン
21 第一ベルト伝動装置 25 植付クラッチケース
26 カウンタ軸 27a,27b 整地ロータ
28 ドライブシャフト 29 伝動ケース
30 エンジンカバー 31 座席
32 ボンネット 33 フレーム
34 ハンドル 35 フロアステップ
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム
43 縦リンク 45 スイングアーム
46 昇降油圧シリンダ 50 伝動ケース
51 苗載台 52 苗植付装置
53 苗植付具 55 フロート
56 伝動ケース 59 覆土板
60 肥料貯留タンク 61 肥料繰出部
62 支持枠体 64 播種用作溝器
65 着脱ヒッチ 66 ロータ昇降リンク
67 「く」字状部材 68 上リンク
69 下リンク 70 アーム
71 ロッド 73 ロータ支持フレーム
74 短いアーム 76 ロータフレーム
78 伝動軸 81 ロータ昇降レバー
81a 水平センサ 82 直播装置
83 フレーム 85 種子タンク
86 ブロア 87 種子繰出部
88,88’ 繰出ロール
88a,88’a 繰出ロール溝
88b,88’b 切り込み
89,89’筒体 89 筒体
90 放出筒 91 播種口
92 エアー流路 92a 穴
93 シャッタ 94 仕切壁
95 溝切り装置 96 ローリング軸
97 基盤 98 ロッド
98a ピン 99 溝切り板
100 板材 101 折れ曲がりロッド
102 第2のアーム 103 第1のアーム
103a L字状の孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(20)を搭載した走行車体(2)の後部に複数条分の種子を圃場に播くための直播装置(82)を走行車体(2)に対して昇降自在に且つ着脱自在に設け、
エンジン(20)からの動力を走行車体(2)側から直播装置(82)の繰出回転体(88,88’)に伝達する動力伝動系を設け、
該動力伝動系内において走行車体(2)側と直播装置(82)側に各々一方向クラッチを設けたことを特徴とする直播機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−136629(P2010−136629A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313172(P2008−313172)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】