説明

相分離構造を有する層を表面に備える基板の製造方法

【課題】表面処理剤からなる薄膜のパターンを調整し、ブロックコポリマーの相分離構造を基板表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造状に形成する方法の提供。
【解決手段】基板上に、表面処理剤を含む中性化膜を形成し、前記中性化膜の上に、レジストからなるマスクパターンを形成し、前記マスクパターンを中性化膜に転写し、前記中性化膜から前記マスクパターンを除去し、当該中性化膜を被覆するように、複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を形成した後、当該ブロックコポリマーを含む層を加熱して相分離させる工程を有し、前記表面処理剤が、前記ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有し、前記マスクパターンが、ラインの幅及びスペースの間隔がそれぞれ、前記ブロックコポリマーの周期の0.5倍若しくは1〜10の整数倍であるL/Sパターンである相分離構造を有する層を表面に備える基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックコポリマーの相分離構造を、各相が互いに平行であり、かつ基板表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造状に形成する方法、及び当該方法を利用して高分子ナノ構造体を表面に備える基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)のさらなる微細化に伴い、より繊細な構造体を加工する技術が求められている。このような要望に対して、互いに非相溶性のポリマー同士を結合させたブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用して、より微細なパターンを形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
ブロックコポリマーの相分離を利用するためには、ミクロ相分離により形成された自己組織化ナノ構造を特定の領域のみに形成し、かつ所望の方向へ配列させることが必須となる。これらの位置制御及び配向制御を実現するために、ガイドパターンによって、相分離パターンを制御するグラフォエピタキシーと、基板の化学状態の違いによって相分離パターンを制御するケミカルエピタキシーといった方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−36491号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】プロシーディングスオブエスピーアイイ(Proceedings of SPIE),第7637巻,第76370G−1(2010年).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケミカルエピタキシーでは、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有するように中性化された基板表面に、ガイドパターンとして、当該ブロックコポリマーを構成するいずれかのポリマーと親和性を有する表面処理剤からなる薄膜を、当該基板表面に所定のパターンで配置する。このガイドパターンにより、相分離構造の各相の配向が制御される。このため、所望の相分離構造を形成させるためには、表面処理剤からなる薄膜を、ブロックコポリマーの周期に合わせて配置することが重要である。例えば、表面処理剤からなる薄膜を、ハーフピッチがブロックコポリマーの周期に相当するラインアンドスペースのパターンに超微細加工することによって、ブロックコポリマーの相分離構造を、各相が互いに平行になるように、基板表面に対して垂直方向に配向させることができる。このような薄膜の超微細加工は、電子線描画等を利用して行われており、大掛かりな装置を要し、かつ労力がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、表面処理剤からなる薄膜のパターンのパターンサイズを調整することにより、電子線描画を利用することなく、簡易に、ブロックコポリマーの相分離構造を、各相が互いに平行であり、かつ基板表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造状に形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第一の態様は、基板上に、表面処理剤を含む中性化膜を形成する中性化膜形成工程と、前記中性化膜の上に、レジストからなるマスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、前記マスクパターンを前記中性化膜に転写する転写工程と、前記中性化膜から前記マスクパターンを除去する除去工程と、前記除去工程後、前記中性化膜を被覆するように、複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を形成した後、当該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる相分離工程と、を有し、前記表面処理剤が、前記ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有しており、前記マスクパターンが、ラインの幅及びスペースの間隔がそれぞれ、前記ブロックコポリマーの周期の0.5倍若しくは1〜10の整数倍であるラインアンドスペースパターンであることを特徴とする相分離構造を有する層を表面に備える基板の製造方法である。
また、本発明の第二の態様は、基板上に、表面処理剤を含む中性化膜を形成する中性化膜形成工程と、前記中性化膜の上に、レジストからなるマスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、前記マスクパターンを前記中性化膜に転写する転写工程と、前記中性化膜から前記マスクパターンを除去する除去工程と、前記除去工程後、前記中性化膜を被覆するように、複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を形成した後、当該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる相分離工程と、前記相分離工程後、前記ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する複数種類のポリマーのうちの少なくとも一種類のポリマーからなる相を選択的に除去する選択的除去工程と、を有し、前記表面処理剤が、前記ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有しており、前記マスクパターンが、ラインの幅及びスペースの間隔がそれぞれ、前記ブロックコポリマーの周期の0.5倍若しくは1〜10の整数倍であるラインアンドスペースパターンであることを特徴とする高分子ナノ構造体を表面に備える基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板上に、ブロックコポリマーの相分離構造を、基板表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造状に形成することができる方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪相分離構造を有する層を表面に備える基板の製造方法≫
本発明の相分離構造を有する層を表面に備える基板の製造方法は、中性化能力を有する表面処理剤からなる薄膜に形成されたパターンをガイドパターンとして用いるケミカルエピタキシーにおいて、基板表面に対して垂直方向であり、かつ互いに平行に配向されたラメラ構造状にブロックコポリマーの相分離構造を形成するために、当該ガイドパターンを、ラインの幅及びスペースの間隔がそれぞれ、ブロックコポリマーの周期の0.5倍若しくは1〜10の整数倍であるラインアンドスペースパターンとすることを特徴とする。ガイドパターンのラインの幅とスペースの間隔を、それぞれブロックコポリマーの周期の0.5倍、若しくは1〜10の整数倍にすることにより、ガイドパターンのラインの幅やスペースの間隔を周期とは無関係に調整した場合よりも、より容易に、ブロックコポリマーの相分離構造を、基板表面に対して垂直方向であり、かつ各相が互いに平行になるように配向させることができる。
【0010】
具体的には、本発明の相分離構造を有する層を表面に備える基板の製造方法は、以下の工程を有する。
基板上に、表面処理剤を含む中性化膜を形成する中性化膜形成工程と、
前記中性化膜の上に、レジストからなるマスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、
前記マスクパターンを前記中性化膜に転写する転写工程と、
前記中性化膜から前記マスクパターンを除去する除去工程と、
前記除去工程後、前記中性化膜を被覆するように、複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を形成した後、当該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる相分離工程。
以下、各工程とそこで用いられる材料について、より詳細に説明する。
【0011】
<ブロックコポリマー>
ブロックコポリマーは、複数種類のポリマーが結合した高分子である。ブロックコポリマーを構成するポリマーの種類は、2種類であってもよく、3種類以上であってもよい。本発明においては、ブロックコポリマーを構成する複数種類のポリマーは、相分離が起こる組み合わせであれば特に限定されるものではないが、互いに非相溶であるポリマー同士の組み合わせであることが好ましい。また、ブロックコポリマーを構成する複数種類のポリマー中の少なくとも1種類のポリマーからなる相が、他の種類のポリマーからなる相よりも、容易に選択的に除去可能な組み合わせであることが好ましい。
【0012】
なお、本発明及び本願明細書において、「ブロックコポリマーの周期」は、相分離構造が形成された際に観察される相構造の周期を意味し、互いに非相溶である各相の長さの和である。ブロックコポリマーの周期は、当該ブロックコポリマーの分子1つ分の長さに相当する。
【0013】
ブロックコポリマーの周期は、重合度N及びフローリー−ハギンズ(Flory−Huggins)の相互作用パラメータχなどの固有重合特性によって決まる。すなわち、ブロックコポリマーにおける異なるポリマー・ブロック成分間の相互反発は、χNが大きくなるほど大きくなる。このため、χN>10(以下、強度分離限界点と呼ぶ)のときには、ブロックコポリマーにおける異種類のポリマー・ブロック間の反発が大きく、相分離が起こる傾向が強くなる。そして、強度分離限界点においては、ブロックコポリマーの周期はおよそN2/3χ1/6となる。つまり、ブロックコポリマーの周期は、分子量Mnと、異なるポリマー・ブロック成分間の分子量比とに相関する重合度Nに比例する。従って、用いるブロックコポリマーの組成及び総分子量を調整することにより、ブロックコポリマーの周期を容易に調節することができる。
【0014】
ブロックコポリマーとしては、例えば、スチレン又はその誘導体を構成単位とするポリマーと(メタ)アクリル酸エステルを構成単位とするポリマーとを結合させたブロックコポリマー、スチレン又はその誘導体を構成単位とするポリマーとシロキサン又はその誘導体を構成単位とするポリマーとを結合させたブロックコポリマー、及びアルキレンオキシドを構成単位とするポリマーと(メタ)アクリル酸エステルを構成単位とするポリマーとを結合させたブロックコポリマー等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、α位に水素原子が結合したアクリル酸エステルと、α位にメチル基が結合したメタクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸の炭素原子に、アルキル基やヒドロキシアルキル基等の置換基が結合しているものが挙げられる。置換基として用いられるアルキル基としては、炭素原子数1〜10の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸アントラセン、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメタン、(メタ)アクリル酸プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0016】
スチレンの誘導体としては、例えば、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−n−オクチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−ニトロスチレン、3−ニトロスチレン、4−クロロスチレン、4−フルオロスチレン、4−アセトキシビニルスチレン、ビニルシクロへキサン、4−ビニルベンジルクロリド、1−ビニルナフタレン、4−ビニルビフェニル、1−ビニルー2−ピロリドン、9−ビニルアントラセン、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0017】
シロキサンの誘導体としては、例えば、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソプロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
【0018】
本発明においては、スチレン又はその誘導体を構成単位とするポリマーと(メタ)アクリル酸エステルを構成単位とするポリマーとを結合させたブロックコポリマーを用いることが好ましい。具体的には、スチレン−ポリメチルメタクリレート(PS−PMMA)ブロックコポリマー、スチレン−ポリエチルメタクリレートブロックコポリマー、スチレン−(ポリ−t−ブチルメタクリレート)ブロックコポリマー、スチレン−ポリメタクリル酸ブロックコポリマー、スチレン−ポリメチルアクリレートブロックコポリマー、スチレン−ポリエチルアクリレートブロックコポリマー、スチレン−(ポリ−t−ブチルアクリレート)ブロックコポリマー、スチレン−ポリアクリル酸ブロックコポリマー等が挙げられる。本発明においては、特に、PS−PMMAブロックコポリマーを用いることが好ましい。
【0019】
ブロックコポリマーを構成する各ポリマーの質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、相分離を起こすことが可能な大きさであれば特に限定されるものではないが、5000〜500000が好ましく、10000〜400000がより好ましく、20000〜300000がさらに好ましい。
またブロックコポリマーの分散度(Mw/Mn)は1.0〜3.0が好ましく、1.0〜1.5がより好ましく、1.0〜1.2がさらに好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0020】
ブロックコポリマーを構成する各ポリマーの成分比や質量平均分子量比を適宜調整することにより、得られる相分離構造の各相の形状を調整することができる。本発明においては、ブロックコポリマーを構成する一のポリマーと、当該ポリマーと相分離を起こし得るポリマーとにおいて、ブロックコポリマー中に占める各ポリマーの体積分率を同程度にすることが好ましい。互いに非相溶なポリマー間において、体積分率が同定度であることにより、各ポリマーからなる相が、基板表面に対して垂直かつ交互に積層されたラメラ構造を形成させやすくなる。例えば、PS−PMMAブロックコポリマーを用いた場合には、当該ブロックコポリマー中に占めるPSポリマーとPMMAポリマーの体積分率を同程度にすることにより、PSポリマーからなる相とPMMAポリマーからなる相とが交互に積層されたラメラ構造を形成させることができる。
【0021】
<基板>
基板は、その表面上にブロックコポリマーを含む溶液を塗布し得るものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、シリコン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属、ガラス、酸化チタン、シリカ、マイカなどの無機物からなる基板、アクリル板、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、フェノール樹脂などの有機化合物からなる基板などが挙げられる。
また、本発明において用いられる基板の大きさや形状は、特に限定されるものではない。基板は必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な材質や形状の基板を適宜選択することができる。例えば、曲面を有する基板、表面が凹凸形状の平板、薄片状などの様々な形状のものまで多様に用いることができる。
【0022】
また、基板表面には、無機系および/または有機系の膜が設けられていてもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。
【0023】
<基板洗浄処理>
基板に中性化膜を形成する前に、基板表面を洗浄してもよい。基板表面を洗浄することにより、後の中性化膜形成工程が良好に行える場合がある。
洗浄処理としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。例えば、基板を硫酸/過酸化水素水溶液等の酸溶液に浸漬させた後、水洗し、乾燥させる。その後、当該基板の表面に、ブロックコポリマーを含む層を形成することができる。
【0024】
<中性化膜形成工程>
本発明においては、まず、基板を中性化処理する。なお、中性化処理とは、基板表面を、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有するように改変する処理をいう。中性化処理を行うことにより、相分離によって特定のポリマーからなる相のみが基板表面に接することを抑制することができる。このため、相分離によって基板表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造を形成させるためには、ブロックコポリマーを含む層を形成する前に、基板表面に、用いるブロックコポリマーの種類に応じた中性化膜を形成しておく。
【0025】
具体的には、基板表面に、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有する表面処理剤を含む薄膜(中性化膜)を形成する。
このような中性化膜としては、樹脂組成物からなる膜を用いることができる。表面処理剤として用いられる樹脂組成物は、ブロックコポリマーを構成するポリマーの種類に応じて、薄膜形成に用いられる従来公知の樹脂組成物の中から適宜選択することができる。表面処理剤として用いられる樹脂組成物は、熱重合性樹脂組成物であってもよく、ポジ型レジスト組成物やネガ型レジスト組成物等の感光性樹脂組成物であってもよい。
その他、化合物を表面処理剤とし、当該化合物を塗布して形成された非重合性膜を中性化膜としてもよい。例えば、フェネチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等を表面処理剤として形成されたシロキサン系有機単分子膜も、中性化膜として好適に用いることができる。
これらの表面処理剤からなる中性化膜は、常法により形成することができる。
【0026】
このような表面処理剤としては、例えば、ブロックコポリマーを構成する各ポリマーの構成単位をいずれも含む樹脂組成物や、ブロックコポリマーを構成する各ポリマーと親和性の高い構成単位をいずれも含む樹脂等が挙げられる。
例えば、PS−PMMAブロックコポリマーを用いる場合には、表面処理剤として、PSとPMMAの両方を構成単位として含む物樹脂組成物や、芳香環等のPSと親和性が高い部位と、極性の高い官能基等のPMMAと親和性の高い部位の両方を含む化合物又は組成物を用いることが好ましい。
PSとPMMAの両方を構成単位として含む樹脂組成物としては、例えば、PSとPMMAのランダムコポリマー、PSとPMMAの交互ポリマー(各モノマーが交互に共重合しているもの)等が挙げられる。
【0027】
また、PSと親和性が高い部位とPMMAと親和性の高い部位の両方を含む組成物としては、例えば、モノマーとして、少なくとも、芳香環を有するモノマーと極性の高い置換基を有するモノマーとを重合させて得られる樹脂組成物が挙げられる。芳香環を有するモノマーとしては、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いた基、及びこれらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等を有するモノマーが挙げられる。また、極性の高い置換基を有するモノマーとしては、トリメトキシシリル基、トリクロロシリル基、カルボキシ基、水酸基、シアノ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等を有するモノマーが挙げられる。
その他、PSと親和性が高い部位とPMMAと親和性の高い部位の両方を含む化合物としては、フェネチルトリクロロシラン等のアリール基と極性の高い置換基の両方を含む化合物や、アルキルシラン化合物等のアルキル基と極性の高い置換基の両方を含む化合物等が挙げられる。
【0028】
<マスクパターン形成工程>
次いで、前記中性化膜の上に、レジストからなるマスクパターンを形成する。当該工程で形成されたマスクパターンが前記中性化膜に転写されたものが、ガイドパターンとして機能する。
【0029】
本発明においては、当該マスクパターンは、いわゆるL/S(ラインアンドスペース)パターンであって、ラインの幅及びスペースの間隔が、それぞれ、前記ブロックコポリマーの周期の0.5倍、若しくは1〜10の整数倍である。マスクパターンのラインの幅及びスペースの間隔は、同じ長さであってもよく、長さが相違してもよい。また、マスクパターンのラインの幅は、前記ブロックコポリマーの周期の1〜6の整数倍であることが好ましく、1〜5の整数倍であることがより好ましい。同様に、マスクパターンのスペースの間隔は、当該マスクパターンのラインの幅とは独立に、前記ブロックコポリマーの周期の1〜6の整数倍であることが好ましく、1〜5の整数倍であることがより好ましい。
【0030】
マスクパターンの形成方法は特に限定されるものではなく、レジスト膜にL/Sパターンを形成するために用いられる公知の手法の中から適宜選択することができる。フォトリソグラフィ法による場合には、例えば、前記中性化膜の上に、マスクパターン形成用のレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成した後、ピッチ(ラインの幅及びスペースの間隔)が所望のL/Sパターンが形成されたマスクを介して、適当な波長の光にて選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、当該L/Sパターンが転写されたマスクパターンが形成される。
【0031】
マスクパターンを形成するレジスト組成物は、一般的にレジストパターンの形成に用いられるレジスト組成物やその改変物の中から適宜選択して用いることができる。当該レジスト組成物としては、ポジ型レジスト組成物とネガ型レジスト組成物のいずれであってもよい。また、現像の際に用いる現像液は、アルカリ現像液であってもよく、有機溶剤を含有する有機系現像液であってもよい。
【0032】
また、エッチング処理を利用して、マスクパターンを形成することもできる。例えば、前記中性化膜の上に、マスクパターン形成用のレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成した後、当該レジスト膜上に、ピッチ(ラインの幅及びスペースの間隔)が所望のL/Sパターンが形成されている耐ドライエッチング耐性を備えるマスクを設置し、その後ドライエッチング処理を行うことにより、マスクパターンを形成することができる。ドライエッチング処理としては、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、オゾン処理、及びUV照射処理等が挙げられる。
【0033】
その他、マスクパターン形成用のレジスト組成物からなるレジスト膜上にL/Sパターンを形成した後、ウェットエッチング処理により、マスクパターンを形成することもできる。具体的には、まず、前記中性化膜の上に、非感光性レジスト膜を形成し、当該非感光性レジスト膜上にさらに感光性レジスト膜を積層させた後、当該感光性レジスト膜にL/Sパターンを形成する。その後、当該感光性レジスト膜よりも当該非感光性レジスト膜のほうが溶解性の高い有機溶剤によって、当該非感光性レジスト膜のうち、当該L/Sパターンによってマスクされていない領域を溶解除去することにより、当該非感光性レジスト膜に当該L/Sパターンからなるマスクパターンが形成される。非感光性レジスト膜としては、SiOを主成分とする膜等のシリカ系被膜を好適に用いることができる。SiOを主成分とする膜は、例えば、ケイ素化合物を有機溶剤に溶解した溶液を塗布し、加熱処理するSOG(spin−on−glass)法、化学気相成長法等により形成することができる。また、感光性レジスト組成物としては、一般的にレジストパターンの形成に用いられるレジスト組成物やその改変物の中から適宜選択して用いることができる。
【0034】
<中性化膜への転写工程>
前記マスクパターンを、中性化膜に転写する。転写方法は、中性化膜中の、マスクパターンによって被覆されていない領域の中性状態を失わせられる方法であればよい。例えば、中性化膜中の、マスクパターンによって被覆されていない領域のみを選択的に除去することにより、前記マスクパターンを、中性化膜に転写することができる。マスクパターンによって被覆されていない領域のみを選択的に除去する方法は、中性化膜を構成する組成物の種類、マスクパターンを構成するレジストの種類等を考慮して、パターン形成に用いられる公知の手法の中から適宜選択することができる。例えば、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理等のドライエッチング処理により、中性化膜のうち、マスクパターンによって被覆されている領域よりも、露出している領域を選択的に除去することができる。また、中性化膜がポジ型レジスト組成物からなる膜である場合には、当該中性化膜に適当な波長の光を照射することにより、マスクパターンによって被覆されていない領域のみが選択的に露光され、現像処理を施すことにより、露光部が除去される結果、中性化膜にマスクパターンが転写される。その他、中性化膜上にマスクパターンが形成された基板表面を、酸処理やアルカリ処理したり、露出している中性化膜表面に中性化能のない自己組織化単分子膜(SAM)を吸着させたりすることによっても、マスクパターンを、中性化膜に転写することができる。酸処理やアルカリ処理に用いられる酸やアルカリは、マスクパターンを中性化膜表面から剥離させないものであればよく、例えば、希硫酸やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等を用いることができる。また、SAMとしては、例えばヘキサメチルジシラザン等を用いることができる。
【0035】
<マスクパターンの除去工程>
マスクパターンを中性化膜へ転写した後、当該マスクパターンを中性化膜から除去する。マスクパターンが除去された結果、基板表面には、表面処理剤を含む中性化膜が前記マスクパターンと同じピッチのL/Sパターンに配置された平面的なガイドパターンが形成される。
【0036】
除去方法は、中性化膜にはほとんど影響を与えず、マスクパターンが形成されているレジストのみを除去可能な方法であれば特に限定されるものではなく、中性化膜を構成する組成物の種類、マスクパターンを構成するレジストの種類等を考慮して、パターン形成に用いられる公知の手法の中から適宜選択することができる。例えば、中性化膜を構成する組成物に対する溶解性が低く、マスクパターンを構成するレジスト組成物に対する溶解性が高い有機溶剤等を用いて、基板表面を洗浄することにより、マスクパターンを選択的に溶解除去することができる。また、マスクパターンを形成するレジスト膜を適当な波長の光で露光した後、露光後加熱(PEB)処理を行い、さらにTMAH等を用いて現像することによっても、マスクパターンを選択的に溶解除去することができる。その他にも、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理等のドライエッチング処理により、中性化膜を被覆しているマスクパターンから選択的に除去することもできる。
【0037】
<ブロックコポリマーを含む層の相分離工程>
まず、マスクパターンが除去され、L/Sパターンに中性化膜が配置された基板表面に、当該中性化膜を被覆するように、複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する。具体的には、適用な有機溶剤に溶解させたブロックコポリマーを、スピンナー等を用いて基板上に塗布する。
ブロックコポリマーを溶解させる有機溶剤としては、用いるブロックコポリマーを溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、ブロックコポリマーを構成する各ポリマーのいずれとも相溶性の高いものを用いることができる。有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0038】
ブロックコポリマーを溶解させる有機溶剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;
エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];
ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;
アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などを挙げることができる。
例えば、ブロックコポリマーとしてPS−PMMAブロックコポリマーを用いる場合には、トルエン等の芳香族系有機溶剤、PGMEA等に溶解させることが好ましい。
【0039】
本発明においては、ブロックコポリマーを含む層の厚さは、相分離が起こるために十分な厚みであればよく、当該厚さの下限値としては、特に限定されないが、形成される相分離構造の構造周期サイズ、ナノ構造体の均一性等を考慮すると、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。
【0040】
ブロックコポリマーを含む層が形成された基板をアニール処理することにより、当該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる。この結果、基板表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造状の相分離構造が形成される。
【0041】
アニール処理としては、熱アニール処理や溶媒アニール処理等の、ブロックコポリマーを相分離させるために用いられるいずれの処理であってもよい。熱アニール処理は、具体的には、ブロックコポリマーを含む層が形成された基板を熱処理する。熱処理の温度は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ熱分解温度未満で行うことが好ましい。また、熱処理は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。また、溶媒アニール処理は、ブロックコポリマーを含む層が形成された基板を、高分子ブロック共重合体組成物の良溶媒蒸気に暴露した状態でアニール処理する方法である。溶媒アニール処理においては、良溶媒蒸気に暴露した状態の基板をさらに熱処理してもよい。具体的には、例えば、ブロックコポリマーを含む層が形成された基板を、デシケーター内に高分子ブロック共重合体組成物の良溶媒とともに入れて放置する。また、高分子ブロック共重合体組成物の良溶媒に窒素ガスをバブリングさせて得られた良溶媒蒸気含有窒素ガスを導入した状態で、ブロックコポリマーを含む層が形成された基板を熱処理してもよい。
【0042】
≪高分子ナノ構造体を表面に備える基板の製造方法≫
ブロックコポリマーを構成する複数種類のポリマー中の少なくとも1種類のポリマーからなる相が、他の種類のポリマーからなる相よりも、容易に選択的に除去可能な組み合わせとすることにより、高分子ナノ構造体を表面に備える基板を製造することができる。
【0043】
なお、以下において、ブロックコポリマーを構成するポリマーのうち、選択的に除去されないポリマーをPポリマー、選択的に除去されるポリマーをPポリマーという。例えば、PS−PMMAブロックコポリマーを含む層を相分離した後、当該層に対して分解処理及び現像液処理を行うことにより、PMMAからなる相が選択的に除去される。この場合、PSがPポリマーであり、PMMAがPポリマーである。
【0044】
本発明の高分子ナノ構造体を表面に備える基板の製造方法(以下、「本発明の高分子ナノ構造体含有基板製造方法」ということがある。)は、本発明の相分離構造を有する層を表面に備える基板の製造方法により得られた基板に対して、さらに、前記ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する複数種類のポリマーのうちの少なくとも一種類のポリマーからなる相を選択的に除去する工程を有する。
【0045】
<相分離構造中のPポリマーからなる相の選択的除去>
基板表面上のブロックコポリマーの相分離構造を有する層の表面のうち、露出しているPポリマーからなる相を選択的に除去する。これにより、Pポリマーからなる相のみが、基板の露出面に残る。すなわち、基板上には、Pポリマーのみから形成されるライン状のナノ構造体が形成される。
【0046】
選択的除去処理は、Pポリマーに対しては影響せず、Pポリマーを分解除去し得る処理であれば、特に限定されるものではなく、ドライエッチング法であってもよく、溶液エッチング法であってもよい。ドライエッチングは、ナノ相分離構造に反応性のガスを吹き付け、当該ドライガスに対するポリマーの分解速度の違いによって選択的に除去する方法である。具体的には、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、オゾン処理等が挙げられる。
【0047】
一方、溶液エッチング法は、必要に応じてナノ相分離構造中の特定のポリマー領域のポリマーを選択的に分解させた後、当該ナノ相分離構造を、主に有機溶媒を主成分とする現像液に浸漬させ、特定の相部分を優先的に溶解除去する方法である。溶液エッチング法の場合には、現像液に浸漬させる前に、相分離構造を形成させた後の基板上のブロックコポリマーを含む層のうち、Pポリマーからなる相中のポリマーの少なくとも一部を分解(低分子量化)する。予めPポリマーの一部を分解することにより、現像液に対する溶解性を高められる結果、Pポリマーからなる相がPポリマーからなる相よりも選択的に除去しやすくなる。
【0048】
分解処理は、PポリマーよりもPポリマーを優先的に分解可能な処理であれば特に限定されるものではなく、ポリマーの分解に用いられる手法の中から、PポリマーとPポリマーの種類に応じて、適宜選択して行うことができる。当該分解処理としては、例えば、UV(紫外線)照射処理、熱分解処理、及び化学反応処理等が挙げられる。
【0049】
このようにして製造された高分子ナノ構造体を表面に備える基板は、そのまま半導体素子等として用いることもでき、金属からなるナノ構造体を形成する際の鋳型として用いることもできる。例えば、レジストパターンよりも微細なパターンを形成することが可能な相分離構造を鋳型として用いることにより、非常に微細な形状の金属ナノ構造体を備える基板を形成することができる。
【0050】
金属ナノ構造体の形成方法は特に限定されるものではなく、高分子からなる鋳型を用いて金属構造体を形成する際に用いられる方法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、鋳型表面に無電解めっき法やスパッタ法等で金属薄膜を形成する方法(例えば、特開2009−57518号公報又は特開2009−297837号公報参照。)や、ガルバニック置換反応を利用して金属を析出させる方法等が挙げられる。
【0051】
なお、選択的除去処理後、金属ナノ構造体形成前に、露出された基板表面を洗浄処理することも好ましい。当該処理としては、前述の基板洗浄処理で挙げられたものと同様の処理を行うことができる。
【0052】
また、金属ナノ構造体を形成させた基板は、そのまま使用してもよく、その後、Pポリマーからなる相等の基板上に残存しているブロックコポリマーを含む層を除去してもよい。例えば、金属ナノ構造体を形成させた基板を水素プラズマ処理することにより、当該基板からPポリマーからなる相等を除去することができる。
【実施例】
【0053】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0054】
[製造例1]
表面処理剤として使用するネガ型レジスト組成物溶液を製造した。
具体的には、下記式(A)−1で表されるポリマー(Mw=40000)100質量部をPGMEAに溶解して、ネガ型レジスト組成物溶液(2%PGMEA溶液)を調製した。なお、式(A)−1中、( )の右下の数値は各構成単位の割合(モル%)を示す。
【0055】
【化1】

【0056】
[製造例2]
製造例1と同様の組成で、ネガ型レジスト組成物溶液(0.04%PGMEA溶液)を調製した。
【0057】
[実施例1]
まず、有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚85nmの有機系反射防止膜を形成した。
該有機系反射防止膜上に、前記製造例1において製造したネガ型レジスト組成物溶液をスピンコート(回転数:2000rpm、60秒間)した後、250℃で600秒間加熱した。これにより、当該基板表面には、前記ネガ型レジスト組成物からなる膜厚40nmの薄膜が形成された。
当該薄膜上に、TARF−6a813PH(商品名、東京応化工業社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、105℃、60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚90nmのマスクパターン形成用レジスト膜を形成した。
次いで、当該マスクパターン形成用レジスト膜に対して、ArF露光装置NSR−S308F(ニコン社製;NA(開口数)=0.92)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターン(6%ハーフトーン)を介して選択的に照射した。そして、95℃、60秒間の条件で露光後加熱(PEB)処理を行い、さらに23℃にて2.38質量%TMAH水溶液(商品名:NMD−3、東京応化工業社製)で30秒間の条件で現像し、その後30秒間、純水を用いて水リンスし、振り切り乾燥を行った。その結果、ライン幅56nm、スペース間隔56nmのL/Sパターンが形成された。
さらに、TCA−3822(商品名、東京応化工業社製)を用いて、当該基板に対して酸素プラズマ処理(200sccm、40Pa、200W、40秒間、40℃)を行い、前記ネガ型レジスト組成物からなる薄膜のうち、前記マスクパターン形成用レジスト膜に被覆されていない領域を選択的に除去した。
その後、PGMEAで60秒間パドル現像した後、60秒間アセトンでリンスし、前記マスクパターン形成用レジスト膜のみを選択的に溶解除去した。
この結果、基板表面に、前記製造例1において調製したネガ型レジスト組成物溶液からなる薄膜によってライン幅56nm、スペース間隔56nmのL/Sパターンが形成された基板が得られた。
【0058】
次いで、当該基板表面に、前記薄膜を被覆するように、PS−PMMAブロックコポリマー(PSの分子量:18000、PMMAの分子量:18000、分散度(Poly dispersity index:PDI):1.06、周期:28nm)のPGMEA溶液(1.9質量%)をスピンコート(回転数:1000rpm、60秒間)した。PS−PMMAブロックコポリマーが塗布された基板を、窒素気流下、240℃で1時間加熱させてアニールすることにより、相分離構造を形成させた。
その後、TCA−3822(商品名、東京応化工業社製)を用いて、当該基板を酸素プラズマ処理(200sccm、40Pa、200W、30秒間、40℃)を行ってPMMAからなる相を選択的に除去した。
【0059】
走査型電子顕微鏡(加速電圧800V、商品名:SU8000、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、得られた基板の断面形状を観察したところ、ライン幅14nm、スペース間隔14nmのL/Sパターンが形成されており、基板表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造状の相分離構造が形成されたことが確認された。
【0060】
[実施例2]
マスクパターン形成用レジスト膜に、ライン幅84nm、スペース間隔84nmのL/Sパターンを形成し、基板表面に、前記製造例1において調製したネガ型レジスト組成物溶液からなる薄膜によってライン幅84nm、スペース間隔84nmのL/Sパターンを形成した以外は、実施例1と同様にして、PS−PMMAブロックコポリマーからなる層を相分離した後、PMMAからなる相を選択的に除去した。
【0061】
実施例1と同様にして、得られた基板の断面形状を観察したところ、ライン幅14nm、スペース間隔14nmのL/Sパターンが形成されており、基板表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造状の相分離構造が形成されたことが確認された。
【0062】
[実施例3]
製造例1において調整したネガ型レジスト組成物溶液に代えて製造例2において調整したネガ型レジスト組成物溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、基板表面に当該ネガ型レジスト組成物からなる薄膜を形成した。当該薄膜の膜厚は数nm程度と非常に薄く、測定装置の測定限界(約10nm)を超えており正確な測定は不可能であった。
実施例1と同様にして、当該薄膜上にマスクパターンを形成し、酸素プラズマ処理、及びマスクパターン形成用レジスト膜の選択的溶解除去を行い、基板表面に、前記製造例2において調製したネガ型レジスト組成物溶液からなる薄膜によってライン幅56nm、スペース間隔56nmのL/Sパターンが形成された基板を得た。
その後、実施例1と同様にしてPS−PMMAブロックコポリマーからなる層を相分離した後、PMMAからなる相を選択的に除去し、得られた基板の断面形状を観察したところ、ライン幅14nm、スペース間隔14nmのL/Sパターンが形成されており、基板表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造状の相分離構造が形成されたことが確認された。また、パターンの均一性も良好であった。
【0063】
[比較例1]
マスクパターン形成用レジスト膜に、ライン幅180nm、スペース間隔180nmのL/Sパターンを形成し、基板表面に、前記製造例1において製造したネガ型レジスト組成物からなる薄膜によってライン幅180nm、スペース間隔180nmのL/Sパターンを形成した以外は、実施例1と同様にして、PS−PMMAブロックコポリマーからなる層を相分離した後、PMMAからなる相を選択的に除去した。
【0064】
実施例1と同様にして、得られた基板の断面形状を観察したところ、ライン上では指紋状の相分離構造が形成されたことが確認された。また、スペース上では、上空からは相分離構造が確認されず、水平ラメラが形成されたと推測された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、表面処理剤を含む中性化膜を形成する中性化膜形成工程と、
前記中性化膜の上に、レジストからなるマスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、
前記マスクパターンを前記中性化膜に転写する転写工程と、
前記中性化膜から前記マスクパターンを除去する除去工程と、
前記除去工程後、前記中性化膜を被覆するように、複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を形成した後、当該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる相分離工程と、
を有し、
前記表面処理剤が、前記ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有しており、
前記マスクパターンが、ラインの幅及びスペースの間隔がそれぞれ、前記ブロックコポリマーの周期の0.5倍若しくは1〜10の整数倍であるラインアンドスペースパターンであることを特徴とする相分離構造を有する層を表面に備える基板の製造方法。
【請求項2】
前記マスクパターンのラインの幅又はスペースの間隔が、前記ブロックコポリマーの周期の1〜6の整数倍である請求項1に記載の相分離構造を有する層を表面に備える基板の製造方法。
【請求項3】
前記マスクパターンの形成を、フォトリソグラフィ又はエッチングにより行う請求項1又は2に記載のナノ構造体を表面に備える基板の製造方法。
【請求項4】
前記マスクパターンの転写を、エッチング又はフォトリソグラフィにより行う請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノ構造体を表面に備える基板の製造方法。
【請求項5】
前記ブロックコポリマーを含む層の相分離を、熱アニール又は溶媒アニールにより行う請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノ構造体を表面に備える基板の製造方法。
【請求項6】
前記ブロックコポリマーが、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートからなる請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノ構造体を表面に備える基板の製造方法。
【請求項7】
基板上に、表面処理剤を含む中性化膜を形成する中性化膜形成工程と、
前記中性化膜の上に、レジストからなるマスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、
前記マスクパターンを前記中性化膜に転写する転写工程と、
前記中性化膜から前記マスクパターンを除去する除去工程と、
前記除去工程後、前記中性化膜を被覆するように、複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を形成した後、当該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる相分離工程と、
前記相分離工程後、前記ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する複数種類のポリマーのうちの少なくとも一種類のポリマーからなる相を選択的に除去する選択的除去工程と、
を有し、
前記表面処理剤が、前記ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有しており、
前記マスクパターンが、ラインの幅及びスペースの間隔がそれぞれ、前記ブロックコポリマーの周期の0.5倍若しくは1〜10の整数倍であるラインアンドスペースパターンであることを特徴とする高分子ナノ構造体を表面に備える基板の製造方法。