説明

相変化物質熱交換器

本発明は、蓄熱対向流原理で動作する熱交換器セル(1a、1b)と、熱交換器セルの中に設けられた相変化物質(PCM)蓄熱器(2、3)と、ボルテックス・チューブ(6、7、8)とを備える相変化物質(PCM)熱交換器装置に関する。空気、気体、および液体の流れの方向が本装置の中で周期的に逆転されるとき、エネルギーが熱交換器セルおよびPCM蓄熱器の中へ回収され、引き続くサイクルの間に、そのエネルギーは熱交換器セルおよびPCM蓄熱器から放出される。一方の熱交換器セルおよびPCM蓄熱器が蓄熱されている間に、同時に他方の熱交換器セルおよびPCM蓄熱器が放熱される。ボルテックス・チューブからの低温/高温の流れは、必要とされる温度差を増大/創出するために使用される。本発明は、建物、車両、空気調和室、コンピュータのような単一または複数の装置に、限定するものではないが、極低温方法のような様々なプロセスで、ならびに宇宙技術および超臨界二酸化炭素用途で応用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向流原理に基づいて動作する蓄熱式熱交換器、熱交換器の中の相変化物質(PCM)エンタルピー蓄熱器、および/またはベンチュリ現象を利用するボルテックス・チューブを備える熱交換器に関する。本システムは、夏季に新鮮な換気空気を予め冷却しかつ予め乾燥すること、および冬季に新鮮な換気空気を予め加熱しかつ予め加湿することを行う。本システムは換気を伴わなくても同様に使用可能である。本発明は、建物に加えて、車両、工業的および商業的機器室ばかりでなく、例えば、プロセスならびにコンピュータおよび電気通信機器のような装置における冷却のために、制御された空気調和条件を必要とする任意の密閉隔室でも使用可能である。空気または気体の冷却の他に、本熱交換器は、液体における熱移転を向上させるために応用可能である。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーはより低温の物体に向かって移動するという自然の傾向に反して、エネルギーが、地球規模で冷却用に大量に使用される。気候が温暖化するにつれて、冷却および除湿にはより多くのエネルギーが必要になろう。従来の圧縮機冷却は大量に電力を消費する/エネルギーを要求する方法である。とりわけ吸収型冷却は廃熱を効率的に利用する。ゼーベック現象に基づく熱電ユニットは熱を電気に変換するが、それは生産費用が高く、よってより大量のエネルギーが必要な目的には不適切となる。
【0003】
建物、車両、および工業プロセスに加えて、コンピュータのような発熱する装置では温度制御も不可欠である。
【0004】
換気は重要であるが、それは、例えば、街路に面した店舗内のような、汚染空気が存在する場所では、利用することがしばしば不可能である。数多くの用途では、コンピュータの冷却のように換気が不要である。
【0005】
それ自体が知られているPCM熱貯蔵では、物質の相変化が一般に固体状態と液体状態との間におけるものである。このような貯蔵は通常では0〜100℃の温度範囲内に維持され、よって加熱器および冷却器に連結されるとき、短期的なエネルギー貯蔵に適切である。典型的な媒体には、水/氷、塩水、無機塩水和物、飽和炭化水素、高分子量の脂肪酸が含まれる。PCM貯蔵ユニットは、例えば、水専用の貯蔵ユニットに比べて、小型であるという利点を有し、かつ可動部分をいずれも有していない。PCM物質は、近年では衣料品用に使用された布地の加熱および冷却に利用されている。PCM貯蔵の1つの欠点は、その乏しい熱伝導性によりもたらされる。PCM貯蔵はまた、板様の形状で設けられる。最初に放熱されない限り、さらなる熱が蓄積され得ないので、PCM貯蔵からの熱放出が主要な問題を構成する。したがってPCMの動作は、周期的な蓄熱および放熱に基づく。PCM物質の利点の1つは、それが僅かな温度差で動作することである。換気の屋外空気と屋内空気との間の温度が同じであれば、当然のことであるが相変化は起こらない。
【0006】
建物内の冷房需要は、3つの構成要素、すなわち、屋外空気によってもたらされる熱負荷、屋内空気によってもたらされる熱負荷、および換気によってもたらされる熱負荷に応じる。対向流原理に基づいて動作する熱回収は、順方向流原理に基づいて動作するシステムよりも高い効率を生み出すことが証明されている(例えば、第7059385号参照)。蓄熱式システムでは、熱が熱回収セルの中に効果的に貯蔵される。
【0007】
再生式直交流プレート型熱交換器では空気流が逆転されず、よって空気流は、PCM貯蔵とも、また蓄熱式回転熱回収セルとも最適に相互作用できるとは限らない。
【0008】
対向流原理で動作する静止型の再生および蓄熱式貯蔵セル・システムが、単純明快でかつ効果的である。このセル・システムは、アルミニウムまたは銅のような高い熱貯蔵(熱容量)を有する任意の物質から作製されてもよい。2つの対向(空気)流間で交互に回転し、それによって2つの熱交換器セルの代用となる1つの回転型の蓄熱式熱交換器も、効率がより低くかつその構成は非常に複雑で費用が掛かるけれども使用可能である。
【0009】
それ自体が知られているボルテックス・チューブ(Vortex tube)または同様の装置は、ベンチュリ現象を利用する。ウィキペディア(Wikipedia)http://en.wikipedia.org/wiki/Vortex_tubeを参照されたい。ボルテックス・チューブは、1つの注入口と、この注入口に対して直角に配置された管の両端の第1および第2の噴出口とを有する。空気のような圧縮可能な流体が注入口から進入し、加熱された空気が第1の噴出口を噴出し、他方では冷却された空気が第2の噴出口を噴出する。ボルテックス・チューブには可動部分が存在しない。例えば、21℃の空気が注入口に進入すれば、76℃の空気が第1の噴出口を噴出することが可能であり、かつ−34℃の空気が第2の噴出口を噴出することが可能である。
【0010】
ボルテックス・チューブではなく、圧縮機のような従来の技術が温度差を創出するために使用可能であるが、その場合には効率がより低い。ボルテックス・チューブのみが使用される場合では、その容量は、一般に大きな空間を冷却/加熱するには経済的ではない。
【0011】
ドイツ特許第3825155号、米国特許第4407134号、および米国特許出願公開第2002073848号では、ボルテックス・チューブが、一方の側で低温の空気流を生み出し、他方の側で高温の空気流を生み出すために使用される別体の装置であると言及されている。このチューブはまた、その連続動作原理が、本発明におけるように、ボルテックス・チューブと周期的に動作する装置との連結を許容しないので、PCMの有無に関係なく熱交換器のいずれにも連結されない。欧州特許第1455157号では、PCMが熱貯蔵媒体であると言及されているだけで、それは、本発明とは異なり、外部のボルテックス・チューブに連結されることはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ほとんどの状況で、たとえ外部流体が利用できない場合でも、特に、流出および流入する流体の温度差がPCMの相変化効果を保証するほどに十分ではない状況でも使用可能である蓄熱式熱交換器を創出するという目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は空気間、他の気体間および液体間の熱移転に応用可能である。
【0014】
潜熱は、それが、氷から水におよび水から水蒸気にというように、1つの物理的状態から別の物理的状態に物質が移行するために必要なエネルギーであるので、温度上昇として観察されることはない。このような状態変化は吸熱的であってもよく、すなわち、その変化が熱エネルギーを結合(吸収)するか、または発熱的であってもよく、すなわち、その変化が熱エネルギーを放出する。よって、例えば、水の蒸発に必要なエネルギーは、蒸気が液体の水の形態で再凝縮されるときに放出される。
【0015】
本発明によれば、1つのPCM蓄熱器が少なくとも1つの熱回収セルに追加され、この蓄熱器の中に貯蔵された熱は、空気の流れ方向が逆転されるときに放出される。各蓄熱器と熱回収材とは、熱移転が可能な限り効率的に行われ得るように連結される。これは、水分の凝縮および蒸発のために、空気および気体の取り扱いに関して重要である。熱回収材を利用することは、液体の取り扱いに関してはさほど重要ではないことに留意されるべきである。本装置は2つのエンタルピー回収セルを備え、これらのセルの中では、流体の流れ方向が交互に逆転される。本装置の第1の端部にはボルテックス・チューブが配置可能であり、このボルテックス・チューブから高温/低温の流体が、第1の噴出口からチャンバを介してPCMに導かれる。同時に、ボルテックス・チューブからの第2の流れが、第2の噴出口から第2のPCMに(存在する場合には)または外側空間に導かれる。
【0016】
本発明によれば、熱交換器では、PCMの最初の相変化が、ボルテックス・チューブを噴出する空気の温度によって急速に創出される。相状態が変化したとき、ボルテックス・チューブは動作停止され(例えば、それは温度によって制御可能である)、その動作はもはや必要ではない。ボルテックス・チューブの高温および低温の流れを利用するための数多くの様態が存在するが、すなわち、その場合に加熱された空気または冷却された空気は、本装置の出口または入口に導かれ得る。どの様態を利用するかは経済性に応じる。ボルテックス・チューブからの第2の噴出口の流れはセルに至ってもよい。そうでなければ、その流れは外側空間に、または水のような何か他のものを加熱/冷却するために導き出される。第1の噴出口からの流れは、PCMが配置されている本装置の熱交換器に導かれる。第2のサイクルの間に、第1の流れの冷たいまたは暖かい流体は、他方の熱交換器/PCMに通して導かれ得る。熱交換器/PCMに通して導かれない流れは、外側空間に導かれ得る。そのときに空気は高温または低温である。こうして、温度差がボルテックス・チューブによって急速かつ効率的に創出される。
【0017】
PCM蓄熱器物質は、ある一定の温度範囲に対応している。空気調和ユニットは、寒いおよび暖かい屋外条件の中で使用され得る。したがって、幾つかのPCM蓄熱器物質が必要である。さらには、例えば、排気熱ポンプは低温条件の中では効率的に動作しない。上で言及したボルテックス・チューブを予熱器/予冷器として使用すると、PCM蓄熱器物質の前に、流入する流体の温度を極めて安定的にし、かつ最適にするボルテックス・チューブにより、少数のPCM蓄熱器物質で足りる。
【0018】
ボルテックス・チューブは、例えば、本装置の両端部に、または熱交換器とPCMとの間の中間に配置可能である。相変化熱交換器装置は、請求項1においてより厳密に論じられる。
【0019】
本発明によれば、ボルテックス・チューブは、屋内および屋外の空気の温度差がPCMの相変化を創出するほど十分ではない場合に、換気に使用可能である。
【0020】
本発明のシステムは、従来の冷房装置の効率、すなわち、平均2.7の成績係数(COP)よりも高い効率、すなわち、9.0に達するCOPを有する。本発明の季節エネルギー効率比(SEER)は、冬季に凍結しないことおよび夏季の費用の掛からない蒸発により、相対的により平坦である。本発明は、冬季および夏季の両方において電力のピーク負荷を顕著に低減する。これは、十分な電力がしばしば不足する国々(例えば、中国)に関して非常に重要な課題である。
【0021】
本発明の装置は費用が安く、相対的に静かで、軽量で、保守が容易であり、しかもそれは危険物質を含んでいない。
【0022】
本発明によれば、本装置は、動作するための3つのファンのみが、すなわち、空気/流体を循環または換気するための2つのファン(ほとんど等しい容量の2つのファン/ポンプが流体の流れを均衡させ、かつ圧力降下を回避するために必要である)と、ボルテックス・チューブ用の1つのファンとが必要であるにすぎない。エネルギーの使用は非常に低く、したがって所用電気接続電力も低い。これは、例えば、輸送コンテナばかりでなく遠隔の電気通信基地局において、太陽パネルのような低電力源の使用を可能にする。
【0023】
車両の圧縮機駆動式冷却器は、圧縮機を使用しているときにエンジンが回転していることが必要である。その場合に、たとえ車両が移動していなくても、空気が汚染される。本発明によれば、たとえエンジンが切られていても、内部空気の冷房が低い電力消費で可能である。潜水艦または無塵室のような密閉隔離環境では、新鮮な空気供給源が利用できないときに、低い騒音水準が追加的な基本要件である。この低い騒音水準が本発明で実現可能である。
【0024】
従来の換気では、熱回収装置および冷却器には長い資金回収期間が必要である。屋外空気を利用する伝統的な熱回収換気装置および熱ポンプは、初期費用に加えて、追加的な外部エネルギーなしでは摂氏零度を下回る温度で動作することができない。屋内空気熱ポンプはまた、屋外空気が屋内空気よりも暖かいときには役に立たない。その結果として、このような装置は年間運転期間が非常に短くなる(冬季または夏季のいずれかであり、1年中ではない)。もし両方のシステムを空気乾燥機または除湿機と一緒に使用することが必要になったら、その費用はさらに嵩むことになろう。米国における高温地帯およびその平均電気料金で計算すると、本発明の換気装置は、資金回収期間が1年足らずであり得る。卓越した季節成績係数(SPF)は、本装置が冬季および夏季の両方で動作するので、毎年の長い使用期間、すなわち、実質的に年間を通じた稼働によるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るPCM熱交換器装置における流体の流れを示すPCM熱交換器装置の概略説明図である。
【図2】ボルテックス・チューブにおける本発明による流体の流れと、熱交換器および異なる動作温度に関する相変化物質とを、それぞれ示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1に示すように、本発明によるPCM熱交換器装置は、蓄熱対向流原理で動作する少なくとも2つの蓄熱式熱交換セル1aおよび1bを備え、これらのセルに通して、交互しかつ周期的に逆転する対向流動方向を有する空気、気体、または液体の流れが、本装置からかつ本装置まで誘導される。空気流が矢印22および24によって示されている。実線の矢印22は一方のサイクルにおける空気流を示し、他方で破線の矢印24は第2のサイクル時における空気流を示す。セル1aおよび1bの中の空気流に関する流れの方向の変化は、知られた技法、例えば、ダイバーター(Diverter)、ファン、反射板、フラップ、または回転ホイールダイバーターによって実行されてもよい。セル1aおよび1bの中で空気流の方向を変化させるこれらの知られた技法が、品目26aおよび26bによって模式的に示されている。
【0027】
別法として、2つのセル空気流に合わせて変更が行われるとき、単一の回転型の蓄熱式熱交換器が使用可能であるが、効率は2つの熱交換器ほど良くはない。
【0028】
熱交換器(セル)(1aおよび1b)は、相互に隣り合わせにまたは相互に近接して配置され、かつこれらの流れの混合および過剰な熱伝達を防止するように分離される。何らかの相変化物質から作製されるか、またはその物質を含有する1つまたは複数のセル、すなわち、PCM蓄熱器(2、3)が、熱交換器(1aおよび1b)の中に取り付けられる。高温の流体がセルの一方(例えば、1a)に進入するとき、その流体は、そのエネルギー(エンタルピー)をこの熱交換器セル(1a)に移転し、PCM蓄熱器(2)の中の物質の状態を変化させ得る。これは流動流体の温度変化を伴う。熱交換器は、アルミニウムまたは銅のような高度に熱伝導性の、好ましくは高い熱容量も有する物質から作製され得る。熱交換器(1a、1b)は本装置の中間に存在し得る。これら(1a、1b)は、壁(30)と、セルの両端にあって、例示された空気流のための開口部を備える壁(31および32)とによって、相互から分離されかつ本装置から分離される。PCM蓄熱器(2、3)は、移動流体に十分な乱流を生成するように設計され得る。進入する流体からの十分な熱が蓄積されたとき、またはPCM蓄熱器(2、3)の相が変化するとき、より冷たい流体は、暖かいセル(1a、1b)を通過する間に加熱され、逆の場合も同様であるように流体の流れの方向が逆転される。熱はまた、それが前のサイクルで相変化効果により貯蔵されていれば、PCM蓄熱器(2または3)から流体の流れの中に放出される。
【0029】
この周期的動作は、とりわけ温度の点で最適化され得る。空気流の場合には、このようなサイクルの間に空気中に含有された水蒸気が、対応するセルの表面上に凝縮され、引き続くサイクルの間に、その凝縮水は蒸発によって空気中に戻る。蒸発に必要とされるエネルギーは、セルおよびPCM蓄熱器(2または3)から供給され、よって空気が冷却され、PCM蓄熱器(2または3)の相が、例えば、液体から固体に変化する。次のサイクルの間に、高温の空気は、低温のセルおよびPCM蓄熱器(2または3)に到達すると冷却され、このサイクルの終わりに、低温のセルは加熱され、PCM蓄熱器(2または3)の相は、今度は固体から液体に再び変化して、空気の流れ方向がもう1度逆転されることになる。従って、複数のPCM蓄熱器(2、3)を異なる温度範囲内で設けることが可能であり、言ってみれば、一方の蓄熱器はもう1つの方が停止したときに動作を開始するか、または一方が冷たい条件で動作するのに対して他方は暖かい条件で動作する。PCM蓄熱器(2、3)は熱交換器セルの一方のみの中に設けられてもよいが、しかし、1つの蓄熱器が連続して蓄熱され、同時に他方の蓄熱器が放熱されるように、両方の熱交換器セル(1aおよび1b)の中に少なくとも1つのPCM蓄熱器(2、3)を設けることによってより高い効率が実現される。熱はまた、追加的な液体循環システム(副回路)を使用して、PCM蓄熱器(2、3)に蓄熱され/PCM蓄熱器から放熱されてもよく、水の加熱のような他の目的に熱が利用されることを可能にする。本発明は建物および車両に適するが、コンピュータ、パワーエレクトロニクスなどのような、工業的プロセスおよび装置における熱管理にも適切である。
【0030】
PCM蓄熱器は潜熱を利用する。他方では、相変化に大量のエネルギーが必要である。この温度差/熱は、中空管を備えるボルテックス・チューブ(6〜8)によって創出/増大される。ボルテックス・チューブは、流体密チャンバ(4)の中に、または、セル(1aおよび1b)間の領域(チャンバ)4’の中に配置され得る。圧縮された空気は、正接方向に注入口(40)の中へ導かれてボルテックス・チューブ(6〜8)の中に進入する。暖かい空気は第1の噴出口(42)を噴出し、他方で冷たい空気は第2の噴出口44を噴出する。流体の流れは、セル(1aおよび1b)および関連するPCM蓄熱器(2、3)を加熱または冷却する。この過程で利用されなかった、ボルテックス・チューブ(6〜8)からの流れは、外側空間(50)に導かれてもよいし、またはその流れを使用して、例えば、水を冷却/加熱することができる。ボルテックス・チューブ(6〜8)からのこの他の流れはまた、プロセスで使用されてもよい。通常は、1つのボルテックス・チューブのみ(6〜8)が装置の中で使用される。
【0031】
例えば、図2で示されているように、21℃(9)の空気が、ファン/圧縮機/ポンプ(52)(6〜7barの圧力)によって、1つのボルテックス・チューブ(6〜8)の注入口(40)の中へ導かれる。ボルテックス・チューブの第1の噴出口(42)からの流動流体は、それが熱交換器セル(1b)に進入するとき、+76℃(12)にある。PCM蓄熱器(3)は固体の形態にある。暖かい流体が熱交換器セル(1b)およびPCM蓄熱器(3)を通過して流れるとき、PCM蓄熱器(3)の相は固体から液体に変化する。流体が熱交換器セル(1b)から流出しているとき、その温度は+32℃(13)に降下している。熱エネルギーおよびエンタルピーは、アルミニウムまたは銅のような熱回収材およびPCM蓄熱器物質(3)の中に吸収される。他方のPCM蓄熱器(2)は、それが異なる温度範囲内で動作するので、当該温度には反応しない。ボルテックス・チューブの第2の噴出口(44)からの流動流体は、−34℃(10)の噴出口(44)温度を有する。この配置は、PCM蓄熱器物質(2)が、冷たい流体(10)により液体から固体に相変化すること以外、上で言及したボルテックス・チューブの他方の側におけるようになっている。この過程の間に、流体の温度は、−34℃から+10℃に上昇する。PCM蓄熱器(2)は、前のサイクルの間に貯蔵された熱エネルギーを放出し終えている。他方のPCM蓄熱器(3)は、当該温度がその相変化に適切なものではないので反応しない。
【0032】
本発明は、例えば、固体と液体との間で、この過程を周期的に反転して物質(PCM)の相変化、すなわち、融解の潜熱を利用する。
【0033】
物質の相変化に使用されたエネルギーは、潜熱と呼ばれる。本発明は、同時に2つの相変化、すなわち、ボルテックス・チューブ(6〜8)の第1の噴出口(42)では、例えば、固体から液体の相変化(2)を創出し、かつ同時にボルテックス・チューブ(6〜8)の第2の噴出口(44)では、液体から固体の相変化(3)を創出するために熱を利用(吸収)する。さらには、本発明は、熱交換器(1a、1b)の表面上における凝縮および蒸発時に水分の相変化を利用する。これに基づいて、本発明の効率は非常に高い。
【0034】
これらの相変化が行われたとき、熱交換器(1)を通過する流れは逆転される。ボルテックス・チューブ(6〜8)の流れ(10、12)も変更されなければならない。これは、例えば、流動流体を弁、配管、またはプレートにより熱交換器(1)の中へ案内することによって(破線の矢印56を参照されたい)、または周期的に使用される幾本かの異なるボルテックス・チューブ(7、8)を使用する(第1のボルテックス・チューブが動作中のときに他方が動作停止し、逆も同様である)ことによって、もしくは単一のボルテックス・チューブ(7)が、例えば、180度の増分刻みで回転され得ることによって、解決可能である。
【0035】
逆の過程は、先に吸収されたエネルギーと同量のエネルギーを放出する。
【0036】
物質の相変化(潜熱)には、加熱または冷却よりもかなり多くのエネルギーを必要とするので、本発明の目的は、可能な限り相変化点/温度の近くで動作することである。換言すれば、本発明は、ある一定の時間内に、PCM蓄熱器(2、3)にその状態を可能な限り数多くの回数変化させるように強制することである。
【0037】
一旦、屋内および屋外空気/気体/流体の温度差が物質の相変化を利用可能にするほど十分になると、ボルテックス・チューブ(6〜8)は動作停止され得る。
【0038】
その一方では、ボルテックス・チューブ(6〜8)を使用すると、屋外および屋内条件の温度差が相変化を行わせるほどには十分でなとき、または目標が温度差を利用することではないときに、本発明の使用を可能とする。流体が、本発明を貫通する空間の中で循環する場合、そこでは流体の温度が上昇/下降する。空気に関して言えば、換気が存在せず、本発明は加熱器/冷却器のみである。
【0039】
本発明の好ましい実施形態に応用された本発明の基本的な新規の特徴を示し、説明し、かつ指摘してきたが、説明された本装置および方法の形態および細部には、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な割愛、代用、および変更が当業者によって実施されてもよいことが理解されよう。例えば、同じ結果を実現するために実質的に同じ様態で実質的に同じ機能を実行する当該要素および/または方法ステップのすべての組合せが、本発明の範囲内であることが明示的に意図されている。さらには、本発明の開示された形態または実施形態のいずれに関しても、提示されかつ/または説明された構造および/または要素および/または方法ステップは、他の開示または説明または示唆された形態または実施形態のいずれにおいても、設計上の選択という一般的事柄として組み込まれてもよいことが認識されるべきである。したがって、本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲によって示したものだけに限定されることが意図されている。さらには、特許請求の範囲において、手段および機能の説明は、開示された機能を実行するものとして本明細書に説明された構造および構造的な均等物ばかりでなく均等な構造をも網羅しようとするものである。よって、釘およびねじは、釘が木製部品を一体に固定するために円筒表面を使用し、他方でねじが螺旋表面を使用する点で構造的な均等物とは言えない恐れもあるが、木製部品を固定するという状況では、釘およびねじは均等な構造であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化物質熱交換器装置であって、
少なくとも第1および第2の熱交換器セル(1aおよび1b)であって、それぞれのセルの内部で、相互に対向状態に留まりながら交互に逆転する流体の流れ方向を有する、前記セルを通過する流体の流れに合わせてそれぞれが寸法決めされ、前記第1および第2の熱交換器セル(1a、1b)の少なくとも一方が相変化物質(PCM)蓄熱器(2、3)を備える、少なくとも第1および第2の熱交換器セルと、
注入口(40)、第1の噴出口(42)、および第2の噴出口を有するボルテックス・チューブ(6、7、8)と、
前記ボルテックス・チューブ(6、7、8)が内設される流体密チャンバ(4、4’)と、を備え、
前記ボルテックス・チューブ(6、7、8)の前記噴出口(42、44)からの2つの流体の両方の流れが、前記第1および第2の熱交換器セル(1a、1b)と、前記セルの中に配置されたいずれかの相変化物質(PCM)蓄熱器(2、3)とを介して空間または外側空間に導かれるように構成してなる相変化物質熱交換器装置。
【請求項2】
前記装置からのおよび前記装置への前記流体の流れの温度差が、前記相変化物質(PCM)蓄熱器(2、3)を駆動するのに十分であるとき、前記ボルテックス・チューブ(6、7、8)の動作が停止されることを特徴とする請求項1に記載の相変化物質(PCM)熱交換器装置。
【請求項3】
複数の周期的に動作する相変化物質(PCM)蓄熱器(2、3)が、それぞれのセルの中に設けられることを特徴とする請求項1に記載の相変化物質(PCM)熱交換器装置。
【請求項4】
前記装置は、いずれかの熱交換器セル(1a、1b)が相変化物質(PCM)蓄熱器(2、3)から成るとき、最も効率的であることを特徴とする請求項1に記載の相変化物質(PCM)熱交換器装置。
【請求項5】
前記蓄熱器(2、3)の少なくとも一部が、異なる動作温度範囲を有してなる請求項3に記載の相変化物質熱交換器装置。
【請求項6】
前記相変化物質(PCM)熱交換器セル(1a、1b)は、次の1つ、すなわち、建物、車両、潜水艦、航空機、輸送コンテナ、コンピュータ、極低温装置、宇宙技術で、および超臨界二酸化炭素応用装置で使用するために寸法決めされることを特徴とする請求項1に記載の相変化物質(PCM)熱交換器装置。
【請求項7】
注入口、第1の噴出口、および第2の噴出口を有する少なくとも1つのボルテックス・チューブ(6、7、8)を備える装置であって、前記ボルテックス・チューブは、該ボルテックス・チューブの前記第1の噴出口からの第1の流体の流れが、前記装置の外側から相変化物質蓄熱器を通過して導かれ、他方では同時に、前記ボルテックス・チューブの前記第2の噴出口からの流れが、他方の熱交換器セルに対して対向する方向に導かれるように、流体密チャンバの中に位置決めされた構成からなる装置。
【請求項8】
前記ボルテックス・チューブの前記第2の噴出口からの前記流れは、前記装置の外側に案内されてなる請求項7に記載の装置。
【請求項9】
第2の熱交換器セルの中に位置決めされた少なくとも第2の相変化物質蓄熱器をさらに備え、前記ボルテックス・チューブの前記第1の噴出口からの前記第1の流体の流れは、第1の熱交換器セルの中の前記相変化物質蓄熱器と、次いで前記第2の熱交換器セルとに交互に案内されるように構成してなる請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記ボルテックス・チューブの前記第1の噴出口の前記交互する流体の流れは、前記ボルテックス・チューブ第1の噴出口に関連する配管またはプレートによって、前記第1および第2の熱交換器セルの中の前記相変化物質蓄熱器に対して交互に位置決めされてなる請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ボルテックス・チューブの前記第1の噴出口の前記交互する出力は、前記ボルテックス・チューブを交互に180°回転させることによって、前記第1および第2の熱交換器セルの中の前記相変化物質蓄熱器に対して位置決めされてなる請求項9に記載の装置。
【請求項12】
第2のボルテックス・チューブであって、該第2のボルテックス・チューブの第1の噴出口からの第1の流体の流れが、前記第2の熱交換器セルに関連する前記相変化物質蓄熱器を通過して導かれるように、前記流体密チャンバの中に位置決めされた第2のボルテックス・チューブをさらに備え、前記第1および第2のボルテックス・チューブは、該ボルテックス・チューブの前記第1の噴出口からの唯一のボルテックス・チューブ流体の流れが任意所与の時間に流れるように周期的に動作および動作停止されるように構成してなる請求項9に記載の装置。
【請求項13】
単一の回転型の蓄熱式熱交換器セルが、前記第1および第2の熱交換器セルの代わりに使用され、前記回転型の蓄熱式熱交換器セルは、流体の流れが交互に逆転しないように、かつ前記蓄熱式熱交換器セルが回転しているときに、前記ボルテックス・チューブの前記第1の噴出口からの前記第1の流体の流れが、前記相変化物質蓄熱器を通過するように、暖かい流体の流れと冷たい流体の流れとの間に位置決めされてなる請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−511848(P2009−511848A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534041(P2008−534041)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【国際出願番号】PCT/FI2006/050434
【国際公開番号】WO2007/042621
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(503340760)エムジー イノベーションズ コーポレーション (1)