説明

相溶性の向上された耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物

(A)ポリカーボネート樹脂約50ないし約90重量部;(B)約1.495ないし約1.590の屈折率を有するメタクリル系共重合体樹脂約1ないし約50重量部;及び(C)(メタ)アクリル系樹脂約0ないし約49重量部よりなる基礎樹脂100重量部に対して、(D)難燃剤約5重量部ないし約40重量部を含む、難燃耐スクラッチ熱可塑性樹脂組成物が開示される。本発明の樹脂組成物は、その改善された相溶性により、優れた難燃性、耐スクラッチ性、着色性及び良好な外観を有し、したがって、前記樹脂組成物から、既存の製品より優れた物性を示すプラスチック成形品を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物に関する。より具体的には、本発明は、ポリカーボネート樹脂および難燃剤に高屈折率を有するメタクリル系共重合体樹脂を加えることにより、相溶化剤を用いずに、良好な難燃性、耐スクラッチ性、着色性及び優れた外観などのような優れた物性バランスを有する、耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱可塑性樹脂は、ガラスや金属に比べて比重が低く、成形性及び耐衝撃性などのような優れた物性を有する。最近、大型、軽量、および経済的な製品が広い傾向になるにしたがって、プラスチック製品は、既存のガラスまたは金属製品を急速に代替しており、電気および電子製品において広く用いられてきている。したがって、プラスチック製品が電気および電子製品の外装材として用いられる場合、プラスチック製品の良好な外観および機能が重要になるため、外部に対する耐スクラッチ性、耐衝撃性、及び火災に対する難燃性を提供することのできるプラスチック材料が要求されている。
【0003】
プラスチック製品の耐スクラッチ性を向上させるため、射出成形された樹脂の表面に有機−無機ハイブリッド材料をコーティングして、熱または紫外光を用いて樹脂の表面の有機−無機ハイブリッド材料を硬化させる段階を含むハードコーティング法が一般に用いられてきた。しかしながら、前記ハードコーティング法を適用する場合、さらなるコーティング工程が必要になるため、工程時間及び製造費用が増加して、環境的な問題をもたらすことがある。最近、環境保護及び製造費用の低減に対する関心が高まってきているため、非コーティング樹脂が要求されている。したがって、ハードコーティング法は使われなくなったが、樹脂は依然として優れた耐スクラッチ性を有する必要がある。また、優れた耐スクラッチ性を有する樹脂の開発は外装材産業において重要である。
【0004】
耐スクラッチ性能及び難燃性を同時に向上させるための方法の一つとして、ポリカーボネート(PC)樹脂とメタクリレート樹脂、好ましくはポリメチルメタクリレート(PMMA)とをアロイ(alloy)にする方法が提案された。
【0005】
ポリカーボネート樹脂は優れた機械的強度、透明性、熱安定性、自己消火性、及び寸法安定性を有し、電気および電子製品ならびに自動車部品に広範囲に用いられている。また、ポリカーボネート樹脂は、化学構造上良好な難燃性の達成が容易なため、通常の重合体に比べて少量の難燃剤でも難燃性を得ることができる。しかしながら、ポリカーボネート樹脂はB程度の低い鉛筆硬度を有するため、ポリカーボネート樹脂のみでは優れた耐スクラッチ性を得ることができない。
【0006】
一方、ポリメチルメタクリレート樹脂は、優れた耐スクラッチ性、すなわち3H〜4Hの高い鉛筆硬度を有するが、既存の難燃剤で難燃性を得るのは難しい。したがって、耐スクラッチ性と難燃性との双方を向上させるために、PC樹脂とPMMA樹脂との混合が提案された。しかしながら、PC樹脂とPMMA樹脂とは、高温で溶融混練されるが、これらの相溶性が低いためそれぞれの相(phase)に分離される。また、PCとPMMAとのアロイを電気および電子製品の外装材に用いることは非常に難しい。PC樹脂およびPMMA樹脂の屈折率が、それぞれ1.59および1.49と差があるため、PC樹脂とPMMA樹脂とのアロイは光を散乱して高彩度を有する色を与えることが難しく、押出時に溶融接合線が明らかに見られる。
【0007】
大韓民国特許出願公開第2004−79118号明細書には、ポリカーボネート樹脂とメタクリレート樹脂との間の相溶性を改善するために、金属ステアリン酸エステルを適用することによって混練工程中にポリカーボネートの分子量を低下させる方法が開示されている。しかしながら、前記方法は、ポリカーボネートとメタクリレート樹脂との混合物が非常に低い機械的物性を有するという短所を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリル系樹脂とを混合する際に、ポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリル系樹脂との相溶性を改善して両樹脂間の屈折率の差を減少させる、高屈折率メタクリル系共重合体樹脂を難燃剤と共に適用し、難燃剤を特定の量で適用することにより、耐熱性の低下の防止に加えて、高い透明性及び高い着色性の双方を有する、耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物を開発した。
【0009】
本発明の一形態は、難燃性に優れた耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0010】
本発明の他の形態は、耐スクラッチ性が向上された耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0011】
本発明の他の形態は、高屈折率アクリル系共重合体を適用してポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂との屈折率の差を減少させることによって、透明性及び着色性の低下を最小化した耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0012】
本発明の他の形態は、耐スクラッチ性を維持しながら、高い着色性及び高い透明性を有する耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0013】
本発明の他の形態は、難燃剤を特定の量で適用することにより、優れた耐熱性に加えて、優れた難燃性、耐スクラッチ性及び透明性を有する耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0014】
本発明の他の形態は、難燃性、耐スクラッチ性、着色性及び外観のような物性バランスに優れることにより、各種電気および電子製品、自動車部品、レンズ、窓ガラスなどに適用することができる耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0015】
本発明の他の形態は、前記耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物から製造された成形品を提供する。
【0016】
本発明の他の形態および利点は、以下の開示および添付の特許請求の範囲によって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一形態は、耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供する。前記樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂約50ないし約90重量部;(B)約1.495ないし約1.590の屈折率を有するメタクリル系共重合体樹脂約1ないし約50重量部;及び(C)(メタ)アクリル系樹脂約0ないし約49重量部からなる基礎樹脂100重量部に対して、(D)難燃剤約5重量部ないし約40重量部を含む。
【0018】
本発明の例示的な実施形態において、前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は、芳香族または脂肪族メタクリレートに変性された樹脂である。具体的には、前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は、(b1)芳香族または脂肪族メタクリレート約10ないし約100重量%;及び(b2)単官能性不飽和単量体約0ないし約90重量%を含む。前記単官能性不飽和単量体(b2)は、(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸エステル類;不飽和カルボン酸類;酸無水物類;ヒドロキシル基含有エステル類;(メタ)アクリルアミド類;不飽和ニトリル類;アリルグリシジルエーテル類;グリシジルメタクリレート類;及びスチレン系単量体よりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0019】
前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は、重量平均分子量が約5,000ないし約300,000でありうる。例示的な実施形態においては、前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は、重量平均分子量が約5,000ないし約100,000または約8,000ないし約145,000でありうる。他の例示的な実施形態においては、前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は重量平均分子量が約130,000ないし約200,000でありうる。また他の例示的な実施形態においては、前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は、重量平均分子量が約200,000ないし約300,000でありうる。
【0020】
前記(メタ)アクリル系樹脂(C)は、(メタ)アクリル系単量体の単独重合体、共重合体またはこれらの混合物でありうる。
【0021】
前記難燃剤(D)は、リン含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤及び無機難燃剤から選択される少なくとも1種でありうる。
【0022】
前記樹脂組成物は、界面活性剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、無機充填剤、着色剤、安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、顔料、色素、および防炎剤よりなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。
【0023】
例示的な実施形態において、前記樹脂組成物は、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(BSP test)によって測定したスクラッチ幅が約220ないし約340μmの範囲であり、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH2000を用いて測定した全光透過率が約25ないし約45%であり、UL−94Vに従って2.5mm厚さで測定した難燃性がV0またはV1であり、ASTM D−1525規格により測定したビカット軟化温度(VST)が約75ないし約99℃である。
【0024】
他の例示的な実施形態においては、前記樹脂組成物は、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(BSP test)によって測定したスクラッチ幅が約288ないし約340μmの範囲であり、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH2000を用いて測定した全光透過率が約38ないし約45%であり、UL−94Vに従って2.5mm厚さで測定した難燃度がV0またはV1であり、ASTM D−1525規格により測定したビカット軟化温度(VST)が約78ないし約99℃である。
【0025】
他の例示的な実施形態においてにおいては、前記樹脂組成物は、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(BSP test)によって測定したスクラッチ幅が約225ないし約289μmの範囲であり、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH2000を用いて測定した全光透過率が約25ないし約35%であり、UL−94Vに従って2.5mm厚さで測定した難燃度がV0またはV1であり、ASTM D−1525規格により測定したビカット軟化温度(VST)が約78ないし約99℃である。
【0026】
例示的な実施形態において、前記樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂及び(B)約1.495ないし約1.590の屈折率を有するメタクリル系共重合体樹脂が互いに分離されず、均一な連続相をなし、(D)難燃剤がこれらに分散された構造を有する。
【0027】
本発明の他の形態は、前記樹脂組成物から製造された成形品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1(a)は、実施例4で調製された試片のボールタイプスクラッチプロファイル(BSP)テストにより測定されたスクラッチプロファイルであり、(b)は比較例6で調製された試片のボールタイプスクラッチプロファイル(BSP)テストにより測定されたスクラッチプロファイルである。
【図2】図2(a)は実施例4で調製された試片の相挙動の透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、(b)は比較例4で調製された試片の相挙動の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(A)ポリカーボネート樹脂
本発明のポリカーボネート樹脂は、当業者によく知られた任意の通常の方法により調製されうる。すなわち、前記ポリカーボネート樹脂は、触媒と分子量調節剤との存在下で、二価フェノール化合物をホスゲンと反応させることによって調製されうる。また、前記ポリカーボネート樹脂は、二価フェノール化合物およびジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体のエステル相互交換反応によって調製されうる。
【0030】
前記二価フェノール化合物は、ビスフェノール化合物、好ましくは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)でありうる。前記ビスフェノールAは部分的または全体的に他の二価フェノールで置換されうる。ビスフェノールAに加えて、二価フェノールの例としては、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ハイドロキシフェニル)エーテルなどが挙げられ、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノールも含まれる。
【0031】
しかしながら、前記ポリカーボネート樹脂の調製のために用いることができる二価フェノール化合物は前記化合物に限定されない。
【0032】
また、本発明で用いられるポリカーボネート樹脂は、単独重合体または2種以上の二価フェノールの共重合体、またはこれらの混合物でありうる。
【0033】
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、特に制限されず、線状ポリカーボネート樹脂、分枝状ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート共重合体樹脂などが挙げられる。
【0034】
前記線状ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂でありうる。前記分枝状ポリカーボネート樹脂は、トリメリチック無水物、トリメリチック酸などの多官能性芳香族化合物を二価フェノール化合物及びカーボネート前駆体と反応させることによって調製されうる。前記ポリエステルカーボネート共重合体樹脂は、二官能性カルボン酸を二価フェノール化合物及びカーボネート前駆体と反応させて調製することができる。
【0035】
例示的な実施形態においては、前記ポリカーボネート樹脂は、約10,000〜約200,000g/mol、好ましくは約15,000〜約80,000g/molまたは約20,000ないし約50,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0036】
本発明によれば、前記ポリカーボネート樹脂は約50ないし約90重量部、好ましくは約55ないし約85重量部、より好ましくは約60ないし約80重量部の範囲で用いられうる。約50重量部未満の場合、優れた機械的特性及び難燃性が得られにくい。約90重量部を超過する場合、向上された耐スクラッチ性が得られにくい。前記ポリカーボネート樹脂をアクリル系樹脂と混合する場合、それらの相溶性のため約50ないし約90重量部の範囲で低い着色性及び外観の問題が発生して、前記範囲での相溶性を改善する必要がある。例示的な実施形態においては、前記ポリカーボネート樹脂は約55ないし約85重量部の量で用いられうる。例示的な他の実施形態においては、前記ポリカーボネート樹脂は約75ないし約90重量部の量で用いられうる。また他の例示的な実施形態においては前記ポリカーボネート樹脂は約50ないし約70重量部の量で用いられうる。
【0037】
(B)高屈折率メタクリル系共重合体樹脂
本発明の高屈折率(メタ)アクリル系樹脂は約1.495ないし約1.590の屈折率を有する。前記高屈折率(メタ)アクリル系樹脂は芳香族または脂肪族メタクリレートに変性された樹脂である。前記高屈折率(メタ)アクリル系樹脂は、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合などの通常の方法により調製されうる。
【0038】
例示的な実施形態において、前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は、(b1)芳香族または脂肪族メタクリレート約10ないし約100重量%及び(b2)単官能性不飽和単量体約0ないし約90重量%を含みうる。前記芳香族または脂肪族メタクリレートの量が約10重量%未満の場合、重合されたアクリル系共重合体樹脂の平均屈折率は約1.495以下に低下しうる。他の例示的な実施形態においては、前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は、(b1)芳香族または脂肪族メタクリレート約10ないし約49重量%及び(b2)単官能性不飽和単量体約51ないし約90重量%を含みうる。また他の例示的な実施形態においては、前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は、(b1)芳香族または脂肪族メタクリレート約50ないし約100重量%及び(b2)単官能性不飽和単量体約0ないし約50重量%を含みうる。また他の例示的な実施形態においては、前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は、(b1)芳香族または脂肪族メタクリレート約25ないし約75重量%及び(b2)単官能性不飽和単量体約25ないし約75重量%を含みうる。
【0039】
ある例示的な実施形態において、前記芳香族または脂肪族メタクリレートは下記化学式1または化学式2で表される。
【0040】
【化1】

【0041】
(式中、mは0〜10の整数であり、Xはシクロヘキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、プロピルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基及びベンジルフェニル基よりなる群から選択される)。
【0042】
【化2】

【0043】
(式中、mは0〜10の整数であり、Yは酸素(O)または硫黄(S)であり、Arはシクロヘキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基及びベンジルフェニル基よりなる群から選択される)。
【0044】
前記芳香族または脂肪族メタクリレートの例としては、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、(2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、及び2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートが挙げられるが、これらに制限されない。これらは単独で、または互いに組み合わせて用いられる。
【0045】
前記単官能性不飽和単量体(b2)は、特に制限されず、(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸エステル類;不飽和カルボン酸類;酸無水物類;ヒドロキシル基含有エステル類;(メタ)アクリルアミド類;不飽和ニトリル類;アリルグリシジルエーテル類;グリシジルメタクリレート類;及びスチレン系単量体よりなる群から選択されうる。
【0046】
ある例示的な実施形態において、前記単官能性不飽和単量体(b2)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びベンジルメタクリレートを含むメタクリル酸エステル単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートを含むアクリル酸エステル単量体;アクリル酸及びメタクリル酸を含む不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸を含む酸無水物単量体;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、及びモノグリセロールアクリレートを含むヒドロキシル基含有エステル単量体;アクリルアミド及びメタクリルアミドを含むアミド単量体;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを含むニトリル単量体;アリルグリシジルエーテル類;グリシジルメタクリレート類;及びスチレン及びα−メチルスチレンを含むスチレン系単量体よりなる群から選択されうる。これらは単独で、または互いに組み合わせて用いられうる。
【0047】
前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂は、前記化学式1または化学式2で表される構造を有する少なくとも一つの芳香族または脂肪族メタクリレートを含む単独重合体でありうる。例示的な実施形態において、前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂は前記化学式1または化学式2で表される構造を有する少なくとも一つの芳香族または脂肪族メタクリレートを含む共重合体でありうる。他の例示的な実施形態においては、前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂は、前記単官能性不飽和単量体と、前記化学式1または化学式2で表される構造を有する少なくとも一つの芳香族または脂肪族メタクリレートとを含む共重合体でありうる。また他の例示的な実施形態においては、前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂は前記単独重合体または共重合体の混合物でありうる。
【0048】
前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂は、通常のアクリル系共重合体の屈折率より高い屈折率を有する。通常のポリカーボネート樹脂の屈折率は約1.59で、ポリメチルメタクリレートの屈折率は約1.49であるのに対して、前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂は約1.495ないし1.590の屈折率を有するように調製されうる。例示的な実施形態においては、前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂(B)は屈折率が約1.51ないし1.58でありうる。他の例示的な実施形態においては、前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂(B)は、1.50、1.51、1.515、1.52、1.525、1.53、1.535、1.54、1.545、1.55、1.555、1.56、1.565、1.57、1.575、1.58または1.585の屈折率を有しうる。
【0049】
前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂(B)は線状構造を有しうる。
【0050】
前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂(B)は、重量平均分子量が約5,000ないし約300,000g/molでありうる。例示的な実施形態において、前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂(B)は重量平均分子量が約5,000ないし約100,000g/molまたは約8,000ないし約145,000g/molでありうる。他の例示的な実施形態では、前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂(B)は重量平均分子量が約130,000ないし約200,000g/molでありうる。また他の例示的な実施形態においては、前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂(B)は重量平均分子量が約200,000ないし約300,000g/molでありうる。
【0051】
前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂(B)は、約1ないし約50重量部の量で用いられうる。量が50重量部を超過する場合、成形工程の際にフローマーク(flow mark)が生じる場合があり、難燃性及び耐熱性が低下しうる。前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂(B)は、好ましくは約15ないし約50重量部、より好ましくは約20ないし約50重量部の量で用いられうる。前記範囲内で優れた物性バランスを得ることができる。ある例示的な実施形態においては、前記高屈折率メタクリル系共重合体樹脂(B)は、約18ないし約45重量部の量で用いられうる。
【0052】
(C)(メタ)アクリル系樹脂
本発明の(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を用いて調製される共重合体樹脂である。前記(メタ)アクリル系樹脂は、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合などの通常の方法により調製されうる。
【0053】
また、前記(メタ)アクリル系樹脂は単独重合体もしくは2種類以上の(メタ)アクリル系単量体を用いた共重合体、またはこれらの混合物でありうる。
【0054】
例示的な実施形態において、前記(メタ)アクリル系樹脂(C)は約5,000〜300,000の重量平均分子量を有することができる。他の例示的な実施形態では、前記(メタ)アクリル系樹脂(C)は約5,000〜100,000の重量平均分子量を有しうる。また他の例示的な実施形態においては、前記(メタ)アクリル系樹脂(C)は約95,000〜150,000または約120,000〜250,000の重量平均分子量を有しうる。
【0055】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂(C)は線状構造を有することができる。前記(メタ)アクリル系樹脂(C)は屈折率が約1.45ないし約1.494であり、好ましくは約1.47ないし約1.494でありうる。
【0056】
前記(メタ)アクリル系単量体の例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、及び2−エチルヘキシルメタクリレートが挙げられるが、これらに制限されない。これらのアクリル系単量体は単独で、または互いに組み合わせて用いることができる。
【0057】
前記(メタ)アクリル系樹脂(C)は選択的な構成要素であり、基礎樹脂100重量部に対して約0ないし約49重量部、好ましくは約10ないし約49重量部、より好ましくは約20ないし約49重量部の量で用いられる。ある例示的な実施形態においては、前記(メタ)アクリル系樹脂(C)は約1ないし約18重量部の量で用いられうる。
【0058】
前記高屈折率メタクリル系共重合体(B)と(メタ)アクリル系樹脂(C)との混合物をポリカーボネート樹脂と混合する場合、高屈折率メタクリル系共重合体樹脂(B)の高い屈折率により(メタ)アクリル系樹脂(C)の屈折率とポリカーボネートの屈折率との差を減少させることができる。そのため、既存の(メタ)アクリル系樹脂(例えば、PMMA樹脂)とポリカーボネート樹脂との混合物において二つの樹脂間の屈折率の差により通常生じる透明性及び着色性の低下を防止することにより相溶性及び透明性を向上させることができる。さらに、既存のポリカーボネート樹脂の耐スクラッチ性を向上させることにより高い着色性及び透明性を有する樹脂組成物を調製することができる。
【0059】
(D)難燃剤
本発明の難燃剤は、当該技術分野で用いられる通常の難燃剤であることができ、リン含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤及び無機難燃剤から選択される少なくとも一つでありうるが、これらに制限されない。
【0060】
例示的な実施形態において、前記難燃剤はリン含有難燃剤でありうる。リン含有難燃剤の例としては、ホスフェート、ホスフォネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシド、ホスファゼン、これらの金属塩などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0061】
リン含有難燃剤の中で代表的な化合物はリン酸エステル化合物またはホスフェートであることができ、下記化学式3で表されうる。
【0062】
【化3】

【0063】
(式中、R、R、R、及びRは独立してC〜C20のアリール基またはC〜Cアルキル置換アリール基であり;Rはレゾルシノール、ヒドロキノール、ビスフェノール−A、ビスフェノール−Sなどの誘導体であり;nは約0〜5である。例示的な実施形態においては、nは約1〜5でありうる)。
【0064】
前記芳香族リン酸エステル化合物は単独で用いられてもよく、または他のリン含有難燃剤との混合物で、基礎樹脂100重量部に対して約5ないし40重量部、好ましくは約10ないし約35重量部の量で用いられうる。ある例示的な実施形態においては、前記芳香族リン酸エステル化合物は約12ないし約37重量部の量で用いられうる。
【0065】
他の例示的な実施形態においては、前記難燃剤はハロゲン含有難燃剤であることができる。ハロゲン含有難燃剤の例としては、特に制限されず、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−エポキシオリゴマー、オクタブロモトリメチルフェニルホスフェート、エチレンビステトラブロモフタルイミド、トリス(トリブロモフェノール)トリアジン、臭化ポリスチレンなどが挙げられる。これらは単独で、または互いに組み合わせて用いられうる。
【0066】
ある例示的な実施形態においては、通常の加工温度で溶融が可能であるハロゲン含有化合物、例えば、約250℃より低い融点または軟化点を有するハロゲン含有化合物が好ましい。前記ハロゲン系化合物が使用される場合、用途に応じて三酸化アンチモン及び五酸化アンチモンのような無機化合物が用いられうる。
【0067】
前記ハロゲン含有化合物は、単独で、または他のハロゲン含有化合物もしくは無機化合物との混合物で、基礎樹脂100重量部に対して5ないし40重量部、好ましくは約10ないし約35重量部の量で用いられうる。ある例示的な実施形態においては、前記ハロゲン含有化合物は、約12ないし約37重量部の量で用いられうる。
【0068】
前記難燃剤の含量が5重量部未満である場合、V0またはV1の難燃度が得られないだけでなく、相溶性が低下してフローマークが生じうる。前記難燃剤の含量が40重量部を超過すると、耐熱性及び相溶性が低下してフローマークが生じうる。
【0069】
前記熱可塑性樹脂組成物は、その用途に応じて、界面活性剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、無機充填剤、着色剤、安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、顔料、色素、及び防炎剤よりなる群から選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含みうる。これらの添加剤は単独で、または互いに組み合わせて用いられうる。
【0070】
本発明の樹脂組成物を、X7.5K TEM像において観察すると、(メタ)アクリル系樹脂とポリカーボネート樹脂とが分離した相を形成せず、均一な相をなすことがわかる。ある例示的な実施形態において、X7.5K TEM像によって、(メタ)アクリル系樹脂とポリカーボネート樹脂とが実質的に均一な連続相を形成し、難燃剤がその中に分散された相を形成しうることが確認された。
【0071】
ある例示的な実施形態において、前記樹脂組成物は、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(BSP test)によって測定したスクラッチ幅が約220μmないし約340μmである。例示的な実施形態においては、前記樹脂組成物は約225ないし約290μm、または225ないし約285μmのスクラッチ幅を有する。他の例示的な実施形態においては、前記樹脂組成物は約295ないし約335μmまたは300ないし約330μmのスクラッチ幅を有する。
【0072】
前記熱可塑性樹脂組成物は、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH2000を用いて測定した全光透過率が約25ないし約45%である。一実施形態においては、全光透過率が約27ないし約35%でありうる。他の実施形態においては、全光透過率が約34ないし約38%でありうる。また他の実施形態においては、全光透過率が約37ないし約42%でありうる。
【0073】
例示的な実施形態においては、前記樹脂組成物は、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(BSP test)によって測定したスクラッチ幅が約220ないし約340μmの範囲であり、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH2000を用いて測定した全光透過率が約25ないし約45%であり、UL−94Vに従って2.5mm厚さで測定した難燃度がV0またはV1であり、ASTM D−1525規格に従って測定したビカット軟化温度(VST)が約75ないし約99℃である。
【0074】
他の例示的な実施形態においては、前記樹脂組成物は、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(BSP test)によって測定したスクラッチ幅が約288ないし約340μmの範囲であり、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH2000を用いて測定した全光透過率が約38ないし約45%であり、UL−94Vに従って2.5mm厚さで測定した難燃度がV0またはV1であり、ASTM D−1525規格に従って測定したビカット軟化温度(VST)が約78ないし約99℃である。
【0075】
また他の例示的な実施形態においては、前記樹脂組成物は、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(BSP test)によって測定したスクラッチ幅が約225ないし約289μmの範囲であり、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH2000を用いて測定した全光透過率が約25ないし約35%であり、UL−94Vに従って2.5mm厚さで測定した難燃性がV0またはV1であり、ASTM D−1525規格に従って測定したビカット軟化温度(VST)が約78ないし約99℃である。
【0076】
本発明の樹脂組成物は通常の方法により調製されうる。例えば、上述の成分と選択的に他の添加剤とを合わせてミキサーで混合し、混合物を通常の押出機を用いてペレットの形態に溶融押出して、次いで樹脂ペレットを用いて射出及び押出によってプラスチック成形品を調製することができる。
【0077】
本発明は前記熱可塑性樹脂組成物から製造された成形品を提供する。前記熱可塑性樹脂組成物は透明性、耐熱性、耐スクラッチ性、着色性及び相溶性に優れるため、前記熱可塑性樹脂組成物は、電気および電子製品の外装材ならびに部品などの各種製品に成形されうる。
【0078】
ある例示的な実施形態においては、前記熱可塑性樹脂組成物はテレビ、オーディオ、洗濯機、ブレンダー、電気オーブン、カセットプレーヤー、MP3プレーヤー、電話機、携帯電話、ゲーム機、ビデオプレーヤー、コンピューター、プリンター、複写機などに成形されうる。
【0079】
成形方法は、特に制限されないが、押出、射出、またはキャスティング成形であってよく、当業者によって容易に実施されうる。
【0080】
本発明は、下記の実施例を参照してより理解されうるであろう。下記実施例は説明のためのものであって、添付の特許範囲において定義される本発明の技術的範囲をいかようにも限定しようとするものではない。
【実施例】
【0081】
実施例
(A)ポリカーボネート樹脂
日本の帝人化成株式会社製の重量平均分子量(Mw)が25,000のビスフェノール−A線状ポリカーボネート(商品名:PANLITE L−1250WP)を用いた。
【0082】
(B)高屈折率メタクリル系共重合体樹脂
(B1)高屈折率メタクリル系共重合体
高屈折率メタクリル系共重合体は、フェニルメタクリレート70重量部とメチルメタクリレート単量体30重量部とを懸濁重合することによって調製した。得られた共重合体は屈折率が1.546であり、重量平均分子量は120,000g/molであった。
【0083】
(B2)高屈折率メタクリル系共重合体
高屈折率メタクリル系共重合体は、フェニルメタクリレート50重量部とメチルメタクリレート単量体50重量部とを懸濁重合することによって調製した。得られた共重合体は屈折率が1.530であり、重量平均分子量は120,000g/molであった。
【0084】
(B3)高屈折率メタクリル系共重合体
高屈折率メタクリル系共重合体は、フェニルメタクリレート30重量部とメチルメタクリレート単量体70重量部とを懸濁重合することによって調製した。得られ共重合体は屈折率が1.514であり、重量平均分子量は120,000g/molであった。
【0085】
(C)(メタ)アクリル系樹脂
韓国のLG MMA社製の重量平均分子量(Mw)が92,000のポリメチルメタクリレート樹脂(商品名:L84)を用いた。
【0086】
(D)難燃剤
日本の大八化学工業株式会社製のビスフェノール−Aジホスフェート(商品名:CR−741)を用いた。
【0087】
実施例1〜8及び比較例1〜6
下記表1に表した構成成分とMBS系衝撃補強剤6重量部とを通常のミキサーに加えて、その混合物を通常の二軸押出機(L/D=29、Φ=45mm)を用いて押出してペレットの形態の製品を調製した。該ペレットを80℃で6時間乾燥させて、次いで6Oz射出成形機で射出してL90mm×W50mm×t2.5mmの大きさの試片に成形した。
【0088】
(1)フローマーク:熱可塑性樹脂組成物の相溶性の評価のためにL90mm×W50mm×T2.5mmの大きさの試片を用いてフローマークを測定した。試片にフローマークが現れたか否かを肉眼で評価した。
【0089】
(2)全光透過率:全光透過率は、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH2000を用いて測定し、拡散透過率(DF)と平行透過率(PT)とを加算することによって計算された。全光透過率が高いほど透明性に優れると評価される。
【0090】
(3)難燃度:難燃度は、2.5mm厚さの試片を用いてUL94V規格に従って測定した。
【0091】
(4)耐熱性:ASTM D−1525規格に従ってビカット軟化温度(VST)を測定した。
【0092】
(5)耐スクラッチ性:耐スクラッチ性は、ボールタイプスクラッチプロファイル(BSP)テストにより測定した。BSPは、L90mm×W50mm×T2.5mmの大きさの樹脂試片上に直径0.7mmの球形の金属チップを用いて1,000gの荷重、スクラッチ速度75mm/分で長さ10〜20mmのスクラッチを加えて、加えられたスクラッチプロファイルを、直径2μmの金属スタイラスチップを用いて表面スキャンを通じてスクラッチプロファイルを提供するAmbios社製の表面プロファイル分析器(XP−I)を通じて測定することにより行われた。耐スクラッチ性は測定されたプロファイルによるスクラッチ幅から評価された。スクラッチ幅の結果を下記表1に示し、実施例4及び比較例6で調製された試片のスクラッチプロファイル写真をそれぞれ図1(a)及び(b)に示した。測定されたスクラッチ幅が小さいほど耐スクラッチ性が高い。スクラッチ幅の単位はμmである。
【0093】
一方、相挙動を分析するために、実施例4及び比較例4の樹脂組成物のTEM写真を図2(a)及び(b)にそれぞれ示した。
【0094】
【表1】

【0095】
表1に示すように、ポリカーボネートとアクリル系樹脂とを混合すると、比較例6でポリカーボネートのみを加えた場合に比べ、向上された耐スクラッチ性を示し、これはスクラッチプロファイル(図1)からも確認される。
【0096】
難燃性に関しては、50重量%を超えるポリカーボネートを有する樹脂組成物は、本発明において決定された量で難燃剤を用いつつ、UL94規格に従って測定された難燃度が、V0またはV1の高い水準を示すが、一方、50重量%未満の量でポリカーボネートを用いる比較例5では難燃性を得られない。また、5重量部の量で難燃剤を用いる比較例2も難燃性を得られない。さらに、難燃剤を45重量部の量で用いる比較例3は、難燃性を得ることができるが、非常に低い耐熱性を示し、応用に十分ではない。
【0097】
高屈折率メタクリル系共重合体樹脂が加えられなかった比較例1及び4は、ポリカーボネートのみを用いる比較例6よりも良好な耐スクラッチ性を示すが、樹脂間の低い相溶性のためフローマーク及び不透明な外観を示す。同程度の量のポリカーボネートを用いる実施例1〜8ならびに比較例1及び4は、同程度の水準の耐スクラッチ性を示すが、実施例1〜8は、透明性、フローマーク、および高い全光透過率の点で改善を示す。
【0098】
また、高屈折率アクリル系共重合体を用いた実施例4は、実施例5及び実施例6に比べてより優れた透明性、相溶性、及び高い全光透過率を示す。アクリル系樹脂を用いない樹脂組成物は、高屈折率メタクリル系共重合体をアクリル系樹脂に50対50の比率で混合した樹脂組成物に比べて、より優れた透明性及び相溶性を示す。
【0099】
ポリカーボネートとポリメチルメタクリレートとの間の改善された相溶性はTEM写真によって確認され、図2にも示される。比較例4は、低下された相溶性により、ポリカーボネートベースにおけるポリメチルメタクリレート連続相及び大きいドメインを示すが、実施例4は、ポリメチルメタクリレートの相分離が見られず、ポリカーボネートとの均一相が見られるため、向上された相溶性を表す。
【0100】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その向上された相溶性により、優れた難燃性及び耐スックラッチ性、着色性及び良好な外観を有し、これによって、既存の製品より優れた物性を示すプラスチック成形品に成形され、各種電気および電子製品、自動車部品、レンズ、窓ガラスなどに適用することができる。
【0101】
本発明の多くの変更および他の実施形態は、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に想起され、上述の説明において与えられた教示の利益を得られうるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されるものではなく、変更および他の実施形態が添付の特許請求の範囲の技術的範囲に含まれることを意図するものであると理解される。本明細書中で特定の用語が用いられているが、これらは一般的な、記述的な意味のみで用いられており、限定するためのものではなく、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂約50ないし約90重量部;
(B)約1.495ないし約1.590の屈折率を有するメタクリル系共重合体樹脂約1ないし約50重量部;及び
(C)(メタ)アクリル系樹脂約0ないし約49重量部よりなる基礎樹脂100重量部に対して、
(D)難燃剤約5重量部ないし約40重量部;
を含む、耐スクラッチ性難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は、(b1)下記化学式1または化学式2で表される芳香族または脂肪族メタクリレート約10ないし約100重量%;及び(b2)単官能性不飽和単量体約0ないし約90重量%を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【化1】

式中、mは0〜10の整数であり、Xはシクロヘキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、プロピルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基、及びベンジルフェニル基よりなる群から選択される;
【化2】

式中、mは0〜10の整数であり、Yは酸素(O)または硫黄(S)であり、Arはシクロヘキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基、及びベンジルフェニル基よりなる群から選択される。
【請求項3】
前記芳香族または脂肪族メタクリレートは、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、(2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、及び2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記単官能性不飽和単量体は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びベンジルメタクリレートを含むメタクリル酸エステル単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートを含むアクリル酸エステル単量体;アクリル酸及びメタクリル酸を含む不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸を含む酸無水物単量体;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、及びモノグリセロールアクリレートを含むヒドロキシル基含有エステル単量体;アクリルアミド及びメタクリルアミドを含むアミド単量体;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを含むニトリル単量体;アリルグリシジルエーテル;グリシジルメタクリレート;及びスチレン及びα−メチルスチレンを含むスチレン系単量体よりなる群から選択される、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記メタクリル系共重合体樹脂(B)は、重量平均分子量が約5,000ないし約300,000である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記アクリル系樹脂(C)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート及びこれらの混合物よりなる群から選択されるアクリル系単量体の単独重合体または共重合体である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記難燃剤(D)は、リン含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤、及び無機難燃剤から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物は、界面活性剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、無機充填剤、着色剤、安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、顔料、色素、及び防炎剤よりなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物は、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(BSP test)によって測定したスクラッチ幅が約220μmないし約340μmの範囲であり、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH2000を用いて測定した全光透過率が約25ないし約45%であり、UL−94Vに従って2.5mm厚さで測定した難燃度がV0またはV1であり、ASTM D−1525に従って測定したビカット軟化温度(VST)が約75ないし約99℃である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリカーボネート樹脂(A)及び前記約1.495ないし約1.590の屈折率を有するメタクリル系共重合体樹脂(B)が互いに分離されず、均一な連続相をなし、前記難燃剤(D)がこれに分散される、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物から製造された成形品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−506745(P2011−506745A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539284(P2010−539284)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006870
【国際公開番号】WO2009/078593
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】