説明

真偽判別媒体及びその製造方法

【課題】媒体のデザインを損なうことなく、真偽判別が可能となる真偽判別媒体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の真偽判別媒体は、基体と上記基体上に形成された導電膜とを含み、上記導電膜は、透明導電膜であり、上記透明導電膜は第一の導電性領域と第二の導電性領域とを含み、上記第二の導電性領域の表面抵抗値が、上記第一の導電性領域の表面抵抗値より小さい。本発明の真偽判別媒体の製造方法は、透明導電性粒子とバインダ樹脂を含むコーティング組成物で透明導電膜を形成する工程と、上記透明導電膜上に、第一の導電性領域と、第二の導電性領域とを形成する工程を含み、上記第二の導電性領域の表面抵抗値が、上記第一の導電性領域の表面抵抗値より小さく、上記第二の導電性領域は、上記透明導電膜上の所定の領域をエネルギー線で照射して表面抵抗値を下げることにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真偽判別媒体に関し、詳しくは透明導電膜を含む真偽判別媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行カードなどのカード、香粧品などのパッケージ、及び有価証券などの貴重文書などについては、その性質上、偽造防止のための様々な対策が図られており、最近では、表面抵抗値の変化を利用して真偽判別を行うことにより偽造防止を図った真偽判別媒体が提案されている。例えば、特許文献1には、基体上に金属コロイド粒子含有インキを塗布してインキ被膜を形成し、形成したインキ被膜の特定部位の表面抵抗値に変化をもたせた真偽判別媒体が提案されている。しかし、特許文献1に記載の真偽判別媒体では、金属コロイド粒子含有インキが有色であるため、インキ被膜が媒体上で印刷文字、図柄として視認してもよいようにデザインを考慮する必要があり、媒体のデザインが制限されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を解決するため、媒体のデザインを損なうことなく、真偽判別が可能となる真偽判別媒体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の真偽判別媒体は、基体と上記基体上に形成された導電膜とを含む真偽判別媒体であって、上記導電膜は、透明導電膜であり、上記透明導電膜は、第一の導電性領域と第二の導電性領域とを含み、上記第二の導電性領域の表面抵抗値が、上記第一の導電性領域の表面抵抗値より小さいことを特徴とする。
【0006】
本発明の真偽判別媒体の製造方法は、基体と導電膜とを含む真偽判別媒体の製造方法であって、上記導電膜は、透明導電膜であり、透明導電性粒子とバインダ樹脂を含むコーティング組成物で透明導電膜を形成する工程と、上記透明導電膜上に、第一の導電性領域と、第二の導電性領域とを形成する工程とを含み、上記第二の導電性領域の表面抵抗値が、上記第一の導電性領域の表面抵抗値より小さく、上記第二の導電性領域は、上記透明導電膜上の所定の領域をエネルギー線で照射して表面抵抗値を下げることにより形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、導電膜が透明導電膜であり、第一の導電性領域と、上記第一の導電性領域の表面抵抗値より表面抵抗値が小さい第二の導電性領域とを含むことにより、媒体のデザインを損なうことなく、真偽判別が可能となる真偽判別媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例1で作製した支持体付き透明導電膜の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明者らは、エネルギー線を短時間照射すると、特に高輝度の光を短時間照射すれば、ITO粒子などの透明導電性粒子を含む透明導電膜の表面抵抗値が低減することを見出し、本発明に至った。本発明の基体上に形成された透明導電膜を含む真偽判別媒体によれば、透明導電膜上に形成された表面抵抗値が低減した領域、即ち表面抵抗値が相対的に小さい導電性領域により真偽判別が可能である。その上、透明導電膜の色合いが淡色であるため、透明導電膜が媒体の表面に配置されても基体表面に印刷された文字、図柄などのデザイン印刷を透かして確認することが可能となり、媒体のデザイン範囲が限定されないことになる。また、デザイン印刷を施した基体を媒体の表面に配置しても、下地となる透明導電膜の色合いが淡いので、デザイン範囲が限定されないことになる。
【0010】
本発明の真偽判別媒体は基体と基体上に形成された導電膜とを含む。上記真偽判別媒体の形態としては、例えば銀行カードなどのカード、香粧品などのパッケージ、及び有価証券などの貴重文書などが挙げられる。
【0011】
(導電膜)
本発明において、導電膜は透明導電膜であり、上記透明導電膜は、JIS K7161:1997に準拠して測定した全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。上記全光線透過率は、透明性の尺度の一つであり、値が高いほど、透明性が高く、淡色であることを示す。
【0012】
上記透明導電膜は、第一の導電性領域と第二の導電性領域とを含み、上記第二の導電性領域の表面抵抗値が、上記第一の導電性領域の表面抵抗値より小さい。上記透明導電膜において、第一の導電性領域の表面抵抗値は、500〜10000Ω/スクエアであることが好ましく、1000〜5000Ω/スクエアであることがより好ましい。上記第一の導電性領域の表面抵抗値が10000Ω/スクエアを超える場合、第一の導電性領域と第二の導電性領域の表面抵抗値の差の検出が困難となり、ひいては真偽判別が困難になることがある。また、上記第一の導電性領域の表面抵抗値が500Ω/スクエア未満の場合、第二の導電性領域の形成時に、塗膜にヤケ、ハクリなどの欠陥が生じ、当初の色合い、形状から変化を生じ、目的としたデザインを確保できないことがある。また、真偽判別をより簡便かつ効率よくするという観点から、第二の導電性領域の表面抵抗値は、上記第一の導電性領域の表面抵抗値の95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
【0013】
上記透明導電膜は、透明導電性粒子とバインダ樹脂を含む塗膜であってもよく、支持体上に形成された塗膜(以下において、支持体付き透明導電膜と記す。)であってもよい。以下において、特に指定がない場合、「透明導電膜」は、塗膜部分のみを意味する。
【0014】
<透明導電性粒子>
上記透明導電性粒子としては、透明性と導電性を兼ね備えた粒子であればよく、特に限定されず、例えば、導電性金属酸化物粒子、導電性窒化物粒子などを用いることができる。上記導電性金属酸化物粒子としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化カドミウムなどの金属酸化物粒子が挙げられる。また、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛及び酸化カドミウムからなる群から選ばれる1種類以上の金属酸化物を主成分として、さらにスズ、アンチモン、アルミニウム、ガリウムがドープされた導電性金属酸化物粒子、例えば、アンチモン含有酸化スズ(ATO)粒子、スズ含有酸化インジウム(ITO)粒子、アルミニウム含有酸化亜鉛(AZO)粒子、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)粒子、ITOをアルミニウム置換した導電性金属酸化物粒子などが挙げられる。ここで、主成分とは、導電性金属酸化物粒子において、結晶母体となる金属酸化物のことである。中でも、透明性、導電性及び化学特性に優れている点から、ITO粒子が特に好ましい。また、導電性の観点から、上記ITO粒子において、ITO全体に対してスズの添加量は酸化スズ換算で1〜20重量%が好ましい。ITOへのスズの添加により導電性が改善されるが、スズの添加量が1重量%より少ない場合は導電性の改善が乏しい傾向があり、20重量%を超えても導電性向上の効果は少ない傾向がある。
【0015】
上記透明導電性粒子は、平均一次粒子径が10〜200nmの範囲にあることが好ましい。10nmより小さい場合、分散処理が困難になり粒子同士が凝集しやすくなるためか、曇りが大きくなり、光学特性が劣る傾向がある。また、200nmより大きい場合、粒子による可視光線の散乱によるためか、曇りが大きくなる傾向がある。ここで、平均一次粒子径は、例えば、塗膜の表面又は断面において、個々の粒子の粒子径を電子顕微鏡を用いて観察・測定した後、少なくとも100個の粒子の粒子径を平均した平均粒子径をいう。
【0016】
<バインダ樹脂>
バインダ樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂など、従来公知のバインダ樹脂を使用してもよい。また、アクリル系モノマーなどの放射線硬化性樹脂を用いてもよい。また、上記バインダ樹脂としては、透明導電膜に適度な柔軟性を付与することができるという観点から、ガラス転移温度が30〜90℃である樹脂が好ましい。例えば、ガラス転移温度が30〜90℃である熱可塑性樹脂又はガラス転移温度が30〜90℃である放射線硬化性樹脂などを用いることが好ましい。上記バインダ樹脂は、単独又は二種以上を組合せて用いてもよい。ここで、ガラス転移温度の測定は、いわゆる熱分析でDSC法を用いてJISK7121に準拠して行うことができる。
【0017】
上記ガラス転移温度が30〜90℃である熱可塑性樹脂としては、例えばアクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂を用いることができる。
【0018】
上記アクリル系樹脂としては、例えば、三菱レイヨン社製の“ダイヤナールBR−60”、“ダイヤナールBR−64”、“ダイヤナールBR−75”、“ダイヤナールBR−77”、“ダイヤナールBR−90”、“ダイヤナールBR−95”、“ダイヤナールBR−96”、“ダイヤナールBR−101”、“ダイヤナールBR−105”、“ダイヤナールBR−106”、“ダイヤナールBR−107”、“ダイヤナールBR−108”、“ダイヤナールBR−110”、“ダイヤナールBR−113”、“ダイヤナールBR−122”、“ダイヤナールBR−605”、“ダイヤナールMB−2539”、“ダイヤナールMB−2389”、“ダイヤナールMB−2487”、“ダイヤナールMB−2660”、“ダイヤナールMB−2952”、“ダイヤナールMB−3015”、“ダイヤナールMB−7033”などが挙げられる。
【0019】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、東洋紡社製の“バイロン200”、“バイロン220”、“バイロン226”、“バイロン240”、“バイロン245”、“バイロン270”、“バイロン280”、“バイロン290”、“バイロン296”、“バイロン660”、“バイロン885”、“バイロンGK110”、“バイロンGK250”、“バイロンGK360”、“バイロンGK640”、“バイロンGK880”などが挙げられる。
【0020】
上記ガラス転移温度が30〜90℃である放射線硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルオリゴマーなどが挙げられる。具体的には、イソボルニルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコ−ルジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどを用いることができる。ここで、放射線硬化性樹脂のガラス転移温度は、例えば、樹脂100重量部に対し紫外線重合開始剤、例えば2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンを5重量部添加し、紫外線を500mJ/cm2照射して得られた放射線硬化処理後の測定値を用いることが好ましい。
【0021】
また、上記ガラス転移温度が30〜90℃である樹脂として、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0022】
上記透明導電膜は、バインダ樹脂として、上記ガラス転移温度が30〜90℃である樹脂に加えて、アニオン性官能基を含む熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。透明導電膜がアニオン性官能基を含む熱可塑性樹脂を含むことにより、透明導電性粒子のいわゆる分散性が向上するためか、光学特性が向上する。例えば、カルボン酸含有アクリル系樹脂、酸及び塩基含有ポリエステル系樹脂などを用いることが好ましい。上記カルボン酸含有アクリル系樹脂としては、例えば三菱レイヨン社製の“ダイヤナールMR−2539”、“ダイヤナールMB−2389”、“ダイヤナールMB−2660”、“ダイヤナールMB−3015”、“ダイヤナールBR−60”、“ダイヤナールBR−64”、“ダイヤナールBR−77”、“ダイヤナールBR−83”、“ダイヤナールBR−84”、 “ダイヤナールBR−106”、“ダイヤナールBR−113”などが挙げられる。また、上記酸及び塩基含有ポリエステル系樹脂としては、アビシア社製の“ソルスパーズ3000”、“ソルスパーズ21000”、“ソルスパーズ26000”、“ソルスパーズ32000”、“ソルスパーズ36000”、“ソルスパーズ41000”、“ソルスパーズ43000”、“ソルスパーズ44000”、“ソルスパーズ45000”、“ソルスパーズ56000”などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく二種以上を組合せて用いてもよい。
【0023】
上記透明導電膜は、圧縮層であることが好ましい。圧縮層は、例えば下記のとおり、透明導電性粒子とバインダ樹脂を含むコーティング組成物を塗布・乾燥した塗膜をカレンダ処理して得られる。また、透明導電膜の厚みは、0.1〜10μmが好ましい。0.1μmより薄い場合、カレンダ処理の効果を得ることが困難となり、10μmより厚い場合、透光性が劣る傾向がある。
【0024】
<支持体>
上記支持体としては、透明なものであればよく、特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルムなどのポリエステル系樹脂フィルム、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アラミドフィルムなどのアミド系樹脂フィルム、ポリフェニレンエーテルフィルム、ポリスルホンエーテルフィルムなどのポリエーテル系樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを用いることができる。上記支持体の厚みは、本発明の真偽判別媒体の形態に併せて適宜選択することができ、特に限定されないが、3〜200μmであることが好ましい。また、最終的に剥離することもあるので、ハンドリング性を考慮し、厚み10〜100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合、表面にシリコン系剥離層を設けたフィルムを用いてもよい。なお、上記真偽判別媒体がカードの場合は、支持体は、基体と同様にカード基材を用いた方が好ましい。
【0025】
(基体)
基体としては、上記真偽判別媒体の形態に併せて適宜選択することができ、上記真偽判別媒体がカードの場合は、塩ビ樹脂、PET−Gなどのカード基材を用いることができ、上記真偽判別媒体が有価証券の場合は、上質紙などを用いることができる。
【0026】
以下、本発明の真偽判別媒体の製造方法について詳細に説明する。
【0027】
まず、上述の透明導電性粒子とバインダ樹脂とを含むコーティング組成物で透明導電膜を形成する。
【0028】
上記コーティング組成物において、上記バインダ樹脂の含有量は、透明導電性粒子100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。0.1重量部より少ない場合、分散効果が得られない傾向がある。また、20重量部を超える場合、塗膜強度が劣る傾向がある。
【0029】
また、バインダ樹脂として放射線硬化性樹脂を用いる場合、透明導電膜は紫外線、電子線、β線などの放射線により硬化処理をされた塗膜であってもよい。これらのうち紫外線を用いることが簡便であり、この場合、上記コーティング組成物はさらに紫外線重合開始剤を含んでもよい。上記紫外線重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4−ジエチルチオキサントン、o−ヘンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェン、ベンジル、2−クロロチオキサントン、ジイソプロピルチオザンソン、9,10−アントラキノン、ベンソイン、ベンソインメチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトンなどを用いることができる。上記紫外線重合開始剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0030】
上記紫外線重合開始剤は、放射線硬化性樹脂100重量部に対し、1〜20重量部の範囲で添加することが好ましい。1重量部より少ない場合、樹脂の硬化性が劣るためか、塗膜強度が劣る傾向にある。また、20重量部を超える場合、架橋が十分に発達しないためか、塗膜強度が劣る傾向にある。
【0031】
上記コーティング組成物は、透明導電性粒子を分散させる溶剤を含んでよい。上記溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステル系溶剤、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、テトラヒドロフランなどの環状エーテル系溶剤などの有機溶剤が挙げられる。上記コーティング組成物における溶剤の含有量は、透明導電性粒子を分散させることができればよく、特に限定されない。
【0032】
上記コーティング組成物において、溶剤を除く固形分における透明導電性粒子の含有量は、3〜40重量%であることが好ましい。上記範囲を満たすことにより、透明性及び導電性に優れる透明導電膜を形成できる。
【0033】
上記透明導電膜を基体上に形成する場合は、上述の基体上に上記コーティング組成物を塗布して塗膜を形成すればよく、塗膜に対して必要に応じてカレンダ処理してもよい。例えば、透明性を向上させる又は抵抗を低減させるなど必要に応じて、カレンダ処理を行えばよい。また、上記透明導電膜は基体上の全面に形成されてもよく、部分に形成されてもよい。
【0034】
上記透明導電膜が支持体付き透明導電膜である場合は、上述の支持体上に上記コーティング組成物を塗布して塗膜を形成すればよく、塗膜に対して必要に応じてカレンダ処理してもよい。例えば、透明性を向上させる又は抵抗を低減させるなど必要に応じて、カレンダ処理を行えばよい。
【0035】
上記において、基体上又は支持体上に上記コーティング組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコートなどの塗工法、又はグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法などを用いることができる。
【0036】
カレンダ処理する場合において、塗布・乾燥後の塗膜を、カレンダロールを用いて処理することが好ましい。上記カレンダロールは、少なくとも金属ロールを1本含むことが好ましい。上記金属ロールとしては、ロール表面にクロムメッキなどの金属メッキを施したロールを用いればよい。また、ロール表面の粗度(Ry)が1.0μm以下のものを用いることが好ましい。ロール表面を研磨することなどにより、ロール表面の粗度(Ry)を1.0μm以下にすることができる。また、上記塗膜の部分が金属ロールに接触するように原反ロールをセットして、カレンダ処理することが好ましい。カレンダ処理の温度、すなわちカレンダロールの温度は、基体又は支持体の変形などを考慮して決めることが必要であるが、50〜200℃の範囲が好ましい。また、カレンダ処理の線圧力は1000N/cm以上が好ましい。
【0037】
次に、上記透明導電膜上に、第一の導電性領域と第二の導電性領域を形成する。具体的には、上記第二の導電性領域の表面抵抗値が、上記第一の導電性領域の表面抵抗値より小さくなるように、上記透明導電膜上の所定の領域をエネルギー線で照射して表面抵抗値を下げる(以下において、照射処理と記す。)ことにより、上記第二の導電性領域を形成する。即ち、照射処理されていない領域は第一の導電性領域となり、照射処理されている領域は第二の導電性領域となる。
【0038】
上記エネルギー線としては、フラッシュ光などの低エネルギー線を用いることができる。また、上記エネルギー線としてフラッシュ光を用いる場合は、所定領域のみを照射できるように、透明導電膜において上記所定領域以外の領域をマスク処理し、フラッシュ光を照射する。また、上記フラッシュ光の照射領域及び照射形状は、目的により選択することができる。なお、上記フラッシュ光の照射形状が矩形の場合、矩形の両端部、又は矩形の対角部の抵抗により、真偽判別を行うことができる。また、全面に透明導電膜を有する媒体の場合、マスクを用いて、好適な形状にフラッシュ光照射を行い、照射処理された領域の抵抗により真偽判定を行えばよい。
【0039】
上記フラッシュ光としては、例えばカメラ用フラッシュランプを用いてもよい。発光エネルギーの実測は困難であり、発光エネルギーは理論上フラッシュランプにかかる電圧と発光エネルギーを蓄えるコンデンサー容量で決まる。しかし、実際の発光エネルギーは、例えばフラッシュランプの発熱などによるロスのため、上記の理論上のように求めたものと必ずしも一致しない。このため、カメラ用フラッシュランプの場合、発光エネルギーの目安としてガイドナンバーがよく用いられる。上記フラッシュ光のガイドナンバーはISO100のガイドナンバー(以下において、単にガイドナンバーと記す。)で示した場合、5〜30であることが好ましく、7〜15であることがより好ましい。また、上記フラッシュ光の照射時間は、1×10-3〜5×10-2秒であることが好ましい。また、上記フラッシュ光は、透明導電膜に密着又は5mm程度離して照射することが好ましい。ガイドナンバーを発光エネルギーに換算することは困難であるが、一般的にはガイドナンバー5ではカメラ用フラッシュランプの発光エネルギーは1[W・S]程度であり、ガイドナンバー30では約44[W・S]程度であるといわれている。上記フラッシュ光のガイドナンバーが5未満であると、透明導電膜の表面抵抗低減効果が現れにくい傾向がある。一方、上記フラッシュ光のガイドナンバーが30を超えると、透明導電膜の変色又は導電膜にクラックが生じるなどの問題が起こる傾向がある。本発明において、フラッシュ光照射により抵抗値が変化する原因は、十分に解明されていないが、ITO粒子などの透明導電性粒子の酸化又は還元による電子状態の変化、光照射に伴う輻射熱による透明導電塗膜の微小な寸法変化などによるものであると推測される。
【0040】
上記照射処理する前の透明導電膜の表面抵抗値は、500〜10000Ω/スクエアであることが好ましく、1000〜5000Ω/スクエアであることがより好ましい。上記照射処理前の透明導電膜の表面抵抗値が10000Ω/スクエアより高い場合、照射処理による表面抵抗値の変化を検出することが困難になり、ひいては真偽判別が困難になる傾向がある。一方、上記照射処理前の透明導電膜の表面抵抗値が500Ω/スクエアより低い場合、第二の導電性領域の形成時に、塗膜にヤケ、ハクリなどの欠陥が生じ、当初の色合い、形状から変化を生じ、目的としたデザインを確保できない傾向がある。また、真偽判別をより簡便かつ効率よくするという観点から、照射処理により形成した第二の導電性領域の表面抵抗値は、照射処理されていない上記第一の導電性領域の表面抵抗値の95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
【0041】
上記透明導電膜が支持体付き透明導電膜の場合は、上述のように第一の導電性領域と第二の導電性領域を形成した後、接着剤又は粘着剤で基体上に貼付することにより基体上に透明導電膜を形成する。上記接着剤又は粘着剤は、基体及び透明導電膜の材質などにより適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、ポリエステル系接着剤、アクリル系粘着剤などを用いることができる。また、上記透明導電膜は基体上の全面に形成されてもよく、部分に形成されてもよい。
【0042】
本発明において、上記透明導電膜は基体上に形成されていればよく、真偽判別媒体の最表面に配置される必要はない。
【0043】
上記真偽判別媒体においては、好適な方法で表面抵抗値の評価を行うことにより、簡便に真偽判別を行うことができる。例えば、テスターなどの抵抗測定器で直接検出する方法、電磁波の反射率が抵抗値によって変化することを利用して非接触で検出する方法などにより表面抵抗値の評価を行うことで、真偽判別ができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基いて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。特に指摘がない場合、下記において、「部」は「重量部」を意味する。
【0045】
(実施例1)
<コーティング組成物の調製>
先ず、以下の組成の混合物を、分散メディアとして直径0.3mmのジルコニアビーズを用い、ペイントコンディショナーを用いて分散処理した。
(1)ITO粒子(平均一次粒子径:30nm、酸化スズ含有率:10重量%、比重:7.32) 97部
(2)アニオン性官能基を含む熱可塑性樹脂(アビシア社製“ソルスパーズ32000”、比重:1.13) 3部
(3)メチルエチルケトン 75部
(4)トルエン 75部
【0046】
次に、分散処理した上記の混合物に、以下の組成を添加・混合した。その後、フィルターを通してジルコニアビーズを取り除いて、コーティング組成物を得た。
(5)放射線硬化性樹脂(日本化薬社製UVモノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ガラス転移温度:90℃) 2部
(6)重合開始剤(チバスペシャリティーケミカル社製“イルガキュア907”) 0.5部
(7)シクロヘキサノン 42.5部
(8)トルエン 42.5部
【0047】
<支持体付き透明導電膜の作製>
上記コーティング組成物をマイクログラビアコータを用いて支持体(東レ社製PETフィルム、厚み:25μm)に塗布して塗膜を形成し、乾燥して原反ロールを得た。得られた原反ロールに500mJ/cm2の紫外線照射を行った後、カレンダ処理を行った。カレンダ処理は、1対の金属ロール(表面ハードクロムメッキ、Ry:0.8μm)を有するロール処理機を用い、ロール温度90℃、線圧力1000N/cm、搬送速度5m/分の条件で行った。なお、コーティング組成物の塗布量は、カレンダ処理後の厚みが1.0μmになるように調整した。カレンダ処理後の原反ロールを幅75mm、長さ110mmサイズにカットした。図1に示しているように、カットしたカレンダ処理後の原反ロールにおいて、幅3mm、長さ20mmの矩形状のマスクを所定領域にかぶせた後、ガイドナンバー10の光量でフラッシュ光を照射することにより、矩形部からなる第一の導電性領域1と、矩形部の周囲に上記第一の導電性領域の表面抵抗値より小さい第二の導電性領域2を形成した。矩形部からなる第一の導電性領域1の表面抵抗は照射前後とも2600Ωであり、矩形部の周囲に形成された第二の導電性領域2の表面抵抗値は、照射前は2600Ω、照射後は2350Ωであった。なお、表面抵抗値の測定は、市販のテスター(カスタム社製デジタルマルチメータCDM-5000E)を用いて行った。また、紫外可視近赤外分光光度計“V−570”(日本分光社製)を用い、透明導電膜の380〜780nmの波長領域における全光線透過率を測定した結果、86%であった。
【0048】
<真偽判別媒体の作成>
基体(PETフィルム、厚み100μm)上に、下記組成のポリエステル系接着剤を塗布し、乾燥させた後、接着剤の塗布面に透明導電膜側が接するように上記で得られた支持体付き透明導電膜を重ねて、100℃でラミネートし、真偽判別媒体を作成した。なお、上記接着剤の塗布量は、乾燥後の厚みが5μmになるように調整した。
【0049】
<ポリエステル系接着剤組成>
ポリエステル系樹脂(東洋紡績社製“バイロン500”) 30部
シクロヘキサノン 20部
キシレン 50部
【0050】
真偽判別媒体の表面抵抗を市販のテスターを用いて測定した結果、相対的に小さい表面抵抗を有する導電性領域が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、導電性即ち表面抵抗値を評価することにより真偽を判別できる真偽判別媒体として用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 第一の導電性領域
2 第二の導電性領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と前記基体上に形成された導電膜とを含む真偽判別媒体であって、
前記導電膜は、透明導電膜であり、
前記透明導電膜は第一の導電性領域と第二の導電性領域とを含み、
前記第二の導電性領域の表面抵抗値が、前記第一の導電性領域の表面抵抗値より小さいことを特徴とする真偽判別媒体。
【請求項2】
前記透明導電膜が、透明導電性粒子とバインダ樹脂を含む塗膜である請求項1に記載の真偽判別媒体。
【請求項3】
前記透明導電膜が、支持体上に形成されている塗膜である請求項1又は2に記載の真偽判別媒体。
【請求項4】
前記透明導電性粒子が、スズ含有酸化インジウム、アンチモン含有酸化スズ、アルミニウム含有酸化亜鉛、ガリウム含有酸化亜鉛及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の透明導電性粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の真偽判別媒体。
【請求項5】
基体と導電膜とを含む真偽判別媒体の製造方法であって、
前記導電膜は透明導電膜であり、
透明導電性粒子とバインダ樹脂を含むコーティング組成物で透明導電膜を形成する工程と、
前記透明導電膜上に、第一の導電性領域と、第二の導電性領域を形成する工程とを含み、
前記第二の導電性領域の表面抵抗値が、前記第一の導電性領域の表面抵抗値より小さくなるように、前記透明導電膜上の所定の領域をエネルギー線で照射して表面抵抗値を下げることにより前記第二の導電性領域を形成することを特徴とする真偽判別媒体の製造方法。
【請求項6】
前記エネルギー線がフラッシュ光である請求項5に記載の真偽判別媒体の製造方法。

【図1】
image rotate