説明

真性糖尿病の検出および予防のための炎症性マーカー

【課題】将来の糖尿病または糖尿病性合併症を発症する個体について危険性を評価する試験を開発すること。
【解決手段】本発明は、将来の糖尿病または糖尿病性合併症を発症する個体の危険性プロフィールを特徴づける方法に関し、この方法は、個体における炎症性マーカーのレベルを得る工程を、包含する。本発明に従う好ましい炎症性マーカーとしては、C反応性タンパク質およびインターロイキン−6が挙げられる。本発明はまた、個体が将来の糖尿病の危険性を軽減させるための他の薬剤による処置から利益を受ける可能性を、評価するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府援助)
本発明に導く研究は、the United States National Heart,Lung,and Blood Instituteによる契約/助成番号HL58755、HL43851、HL07575、およびHL63293、ならびにthe United States National Cancer Instituteによる契約/助成番号CA47988によって一部資金提供された。従って、合衆国政府は、本発明に対する特定の権利を有し得る。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、真性糖尿病(特に、現在の疾患に何の徴候または症状も伴わない個体に共通する)の危険性を決定するための診断試験の新しい用途を記載する。さらに、本発明は、危険な状態にあるどの個体が、糖尿病の予防または処置のいずれかのために設計された特定の処置から優先的に利益を受けるのかを決定するにおいて医師を補助するための診断試験の新しい用途を記載する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
治療における有意な進歩にもかかわらず、糖尿病は、依然として先進国における罹患率および死亡率の主な要因であり、そして糖尿病の早期検出は、主要な公衆衛生重点の1分野である。しかし、糖尿病を有する個体の50%ほどの多くが、診断されていないと推定されている。この理由は、「新しく診断された」II型糖尿病を有する患者の30%までが、診断の時点において既に全身性合併症の徴候を有するからであり、このデータは、この疾患が既に5年から10年存在していることを示唆する。
【0004】
糖尿病をスクリーニングするための現在の技術は、2回の140mg/dL以上の空腹時グルコース、または200mg/dL過剰のランダムな血中グルコースを有する制御されない糖尿病の徴候、または陽性の経口グルコース耐性試験を含む。加えて、グリコシル化ヘモグロビンレベルの使用が、近年、提唱されており、ここでは、7%を超えるレベルを有する個体が、疾患の早期証拠を有しているとみなされ、それゆえ、個体は、食事、運動または薬理学的介入に対する潜在的候補である。
【0005】
不幸なことに、これらの試験のいずれもが、糖尿病の全ての発生症例を検出しないことが見出されており、そして経口グルコース耐性試験の乏しい再現性および臨床的な不便さが、その適用を制限してきた。さらに、蓄積しているデータは、糖尿病に対する危険性のある患者または糖尿病を有することが知られている患者に対する、特定の予防的処置および治療的処置の有用な効果が、異なる患者グループ間において程度が異なるということを示唆する。しかし、現時点において、特定の治療が、糖尿病の予防および処置において多かれ少なかれ効果があると予測され得るか否かを決定するための診断試験を記載するデータは、不足している。
【0006】
C反応性タンパク質は、全身性炎症の基礎となる公知のマーカーである。C反応性タンパク質の上昇したレベルは、糖尿病の顕性の臨床証拠を有する患者間で、およびグルコース不耐性の証拠を有する個体間で、記載されている。しかし、これら顕性の疾患を有する患者のこれらの先行研究において観察された統計的関連性が、因果関係を示すか否か、短期間の炎症性変化に起因するか否か、または肥満症および高脂質血症などの他の危険因子との相互関係に起因するか否かは、不確かであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
将来の糖尿病または糖尿病性合併症を発症する個体について危険性を評価する試験の開発の必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、個体における糖尿病または糖尿病性合併症の将来の発症に対する危険性を評価するための新しい診断試験を記載する。これらの新しい試験は、広範に以下を含む:(1)臨床的に明らかな糖尿病を発症する危険性の予測;および(2)特定の個体が糖尿病を予防および/または処置するために設計された特定の処置から多大なれ少なかれ利益を受ける可能性の決定。これらの新しい試験は、以下の発見に一部基づく。全身性炎症の特定のマーカーの上昇したレベルは、糖尿病または糖尿病性合併症の将来の発症を予測することが発見されている。例えば、見かけ上健康な、中年個体におけるC反応性タンパク質および/またはインターロイキン−6の上昇したレベルは、糖尿病または糖尿病性合併症の危険性の増加を予測する。別の例としては、先行技術における提案とは対照的に、別の健康な男性および女性における全身性炎症の特定のマーカーの上昇したレベルが、肥満症、高血圧症、高脂質血症、および糖尿病の家族歴などの他の要因に対する制御の後でさえ、糖尿病または糖尿病性合併症の危険性の増加を予測する。さらに別の例としては、全身性炎症の特定のマーカーの上昇したレベルは、7.0%、6.5%および6.0%さえ下回るグリコシル化ヘモグロビン(HbAlc)レベルを有する、見かけ上健康な個体間においてでさえ、糖尿病または糖尿病性合併症を発症する可能性の増加を予測し、これらを十分下回るレベルが、現在において、この糖尿病または糖尿病性合併症を発症する将来の危険性を示すとみなされる。
【0009】
特定の個体が将来の糖尿病または糖尿病性合併症の危険性を軽減させるための特定の治療剤の使用から多大なれ少なかれ利益を受ける可能性が、個体における全身性炎症の特定のマーカーの基線レベルから決定され得るということも、発見されている。
【0010】
さらに、全身性炎症の特定のマーカーの予測値が、他の予測因子とは独立しており、そして、例えば、グリコシル化ヘモグロビンスクリーニングのような危険因子と少なくとも相加的であることが、発見されている。それゆえ、全身性炎症のマーカーのレベルは、第2の危険因子(例えば、グリコシル化ヘモグロビン)のレベルが得られる場合に測定されるレベルを単に再現しない。従って、早期検出のこれら2つの方法の組み合わせは、現行の方法に関連する組み合わせより実質的に良好である。
【0011】
上記のように、これらの発見は、新しい診断試験を導いた。
【0012】
それゆえ、本発明の1つの局面に従って、個体が、糖尿病の危険性を軽減するための薬剤または糖尿病性合併症の危険性を軽減するための薬剤による処置から利益を受ける可能性を評価するための方法が、提供される。薬剤は、インスリン、血糖降下剤、抗炎症性薬剤、脂質低下薬剤、カルシウムチャネルブロッカー、β−アドレナリン作用性レセプターブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター、およびアンギオテンシン系インヒビターからなる群より選択され得る。本方法を実行するためには、個体における全身性炎症の特定のマーカーのレベルが得られる。次いで、このレベルは、糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な予め決定された値と比べられ、ここで、この予め決定された値と比較した全身性炎症のマーカーのレベルが、その個体がその薬剤による処置からの利益を受けるか否かを示す。次いで、その個体は、その薬剤による処置によって得られると思われる正味の利益の点から特徴づけられ得る。
【0013】
糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な予め決定された値は、単一の値、複数の値、単一の範囲または複数の範囲であり得る。それゆえ、1つの実施形態において、予め決定された値は、複数の予め決定されたマーカーレベル範囲であり、そして比較工程は、個体のレベルが予め決定されたマーカーレベル範囲のいずれに当てはまるかを決定することを包含する。好ましい実施形態において、個体は、見かけ上健康的である。特定の実施形態において、個体はまた、非喫煙者である。好ましい実施形態において、全身性炎症のマーカーは、C反応性タンパク質(CRP)およびサイトカインからなる群より選択される。最も好ましい実施形態において、全身性炎症のマーカーは、C反応性タンパク質である。さらに重要な実施形態において、全身性炎症のマーカーは、インターロイキン−6(IL−6、サイトカイン)である。特に有用な結果が、前述の全身性炎症のマーカーを用いて得られている。特定の実施形態においては、本発明は、白血球数、アルブミン、フィブリノーゲン、血清シアリン酸、オロソムコイド、ハプトグロビン、およびα−アンチトリプシンからなる群より選択される炎症性マーカーを包含しない。
【0014】
全身性炎症のマーカーがC反応性タンパク質である場合、好ましい予め決定された値は、約0.30mg/dL血液である。別の好ましい予め決定された値は、約0.60mg/dL血液である。範囲が使用される場合、複数の範囲のうちの1つの範囲が、約0.30mg/dL血液未満であり、そして別の範囲が、血液約0.30mg/mL血液より高いことが好ましい。全身性炎症のマーカーがインターロイキン−6である場合、好ましい予め決定された値は、約1.39pg/mL血液以上である。全身性炎症のマーカーがインターロイキン−6である場合、別の好ましい予め決定された値は、約2.05pg/dL血液である。当然、予め決定された値は、選択される特定のマーカー、および個体が存在する患者集団の特徴にさえも依存する(以下により詳細に記載する)。
【0015】
上記のように、本発明は、特に、どの個体が、糖尿病または糖尿病性合併症を発症する個体における危険性を軽減させるための薬剤による処置から優先的に利益を受けるのかを決定することに適応される。本発明はまた、例えば、新しい処置または有害な副作用の高い危険性プロフィール(risk profile)を伴う公知の処置から利益を受ける可能性が最も高い個体を同定することによって、臨床試験および候補薬剤による処置のための候補集団の選択も可能にする。それゆえ、本発明は、候補患者に対する特定処置の見込みのある正味の利益を評価するための情報を提供する。
【0016】
本発明の別の局面に従って、将来の糖尿病または糖尿病性合併症を発症する個体の危険性プロフィールを特徴づけるための方法が、提供される。本方法は、個体における全身性炎症のマーカーのレベルを得る工程を包含する。次に、そのマーカーのレベルは、糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な予め決定された値と比較され、次いで、将来の糖尿病または糖尿病性合併症を発症する個体の危険性プロフィールが、その予め決定された値と比較したマーカーのレベルに基づいて特徴づけられる。本発明のこれまでの局面にあるように、糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な予め決定された値は、単一の値、複数の値、単一の範囲または複数の範囲であり得る。1つの実施形態において、予め決定された値は、複数の予め決定されたマーカーレベル範囲であり、比較工程は、個体のレベルがその予め決定されたマーカーレベル範囲のいずれに当てはまるかを決定することを包含する。特徴づけられる個体は、任意の個体であり得るが、好ましくは、見かけ上健康な個体である。見かけ上健康な個体は、喫煙者または非喫煙者であり得る。
【0017】
本発明のさらに別の局面に従って、将来の糖尿病および糖尿病性合併症を発症する個体の危険性プロフィールを特徴づけるために、「公知の糖尿病マーカー/試験」と共に炎症性マーカーを使用する方法が提供される。「公知の糖尿病マーカー/試験」とは、本明細書中に使用される場合、糖尿病を検出するために当業者によって用いられる公知のマーカーおよび方法をいい、グリコシル化ヘモグロビンおよび/または経口グルコース耐性試験を含む。重要な実施形態において、個体における全身性炎症のマーカーのレベルが得られる。このマーカーのレベルは、第1の危険性値を確立するために、糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な予め決定された値と比較される。個体におけるグリコシル化ヘモグロビンのレベルなどの公知の糖尿病マーカー/試験のレベルもまた得られる。個体におけるグリコシル化ヘモグロビンのレベルは、第2の危険性値を確立するために、糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な第2の予め決定された値と比較される。次に、糖尿病または糖尿病性合併症を発症する個体の危険性プロフィールは、第1の危険性値および第2の危険性値の組み合わせに基づいて特徴づけられ、ここで、第1の危険性値および第2の危険性値の組み合わせは、第1の危険性値および第2の危険性値とは異なる第3の危険性値を確立する。特に重要な実施形態において、第3の危険性値は、第1の危険性値および第2の危険性値のいずれよりも大きい。試験、マーカー、および予め決定された値のための好ましい個体は、上記のとおりである。
【0018】
本発明はまた、キットを意図し、このキットは、全身性炎症のマーカーについてのアッセイおよび指示書を備えるパッケージ、および必要に応じて、アッセイによって決定されたマーカーのレベルと、糖尿病もしくは糖尿病性合併症を発症する将来の危険性または上記以外の患者基準を関係付けるための、数字またはカラーチャート(color chart)などの関連する材料を含む。重要な実施形態において、キットはまた、グリコシル化ヘモグロビンに対するアッセイを備える。
【0019】
また別の局面に従って、被験体における糖尿病または糖尿病性合併症の危険性を軽減させるために被験体を処置するための方法が提供される。本方法は、糖尿病または糖尿病性合併症を発症する被験体の危険性を低下させるために有効量の、糖尿病の危険性を減少させるための薬剤を、このような処置を必要とする被験体に選択および投与する工程を包含し、ここで、その薬剤は、インスリン、血糖降下剤、抗炎症性薬剤、脂質低下薬剤、カルシウムチャネルブロッカー、β−アドレナリン作用性レセプターブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター、およびアンギオテンシン系インヒビターからなる群より選択される。好ましい被験体は、前述の薬剤のいずれでの処置も現在必要としない、見かけ上健康的な被験体である。
【0020】
重要な治療的実施形態において、抗炎症性薬剤は、好ましくは、被験体における糖尿病または糖尿病性合併症の発症の危険性を減少させるために被験体に投与される薬剤である。特定の実施形態において、炎症性薬剤は、サイトカインインヒビターである。いくつかの実施形態において、炎症性薬剤は腫瘍壊死因子−α(TNF−α)インヒビターである。好ましいTNF−αインヒビターとしては、エタネルセプト(Etanercept)およびインフリキシマブ(Infliximab)が挙げられる。
【0021】
それゆえ、本発明は、糖尿病または糖尿病性合併症の検出のより早い方法を提供する点、また、サーベイランスの増加および/または糖尿病スクリーニングのために現在利用可能な方法の使用頻度の増加を導く点において、有用である。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1) 将来の糖尿病または糖尿病性合併症を発症する見かけ上健康な個体の危険性プロフィールを特徴づけるための方法であって、以下:
該個体における全身性炎症のマーカーのレベルを得る工程、
該マーカーのレベルを糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な予め決定された値と比較する工程、および
該予め決定された値と比較した該マーカーのレベルに基づいて、将来の糖尿病を発症する該個体の危険性プロフィールを特徴づける工程、
を包含する、方法。
(項目2) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記予め決定された値が、複数の予め決定されたマーカーレベル範囲であり、前記比較工程が、前記個体のレベルが該予め決定されたマーカーレベル範囲のいずれに当てはまるかを決定することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記全身性炎症のマーカーが、C反応性タンパク質およびサイトカインからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目4) 前記全身性炎症のマーカーが、C反応性タンパク質である、項目1に記載の方法。
(項目5) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記予め決定された値が、約0.30mg/dL血液以上である、項目4に記載の方法。
(項目6) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記予め決定された値が、約0.60mg/dL血液である、項目4に記載の方法。
(項目7) 前記予め決定されたマーカーレベルが、複数の前記予め決定されたマーカーレベル範囲であり、該複数のうちの1つが、約0.30mg/dL血液を下回り、そして該範囲の別のマーカーレベルが、約0.30mg/dL血液であり、ここで、前記比較工程が、前記個体のレベルが該複数の予め決定されたマーカーレベル範囲のいずれに当てはまるかを決定することを包含する、項目4に記載の方法。
(項目8) 前記全身性炎症のマーカーが、インターロイキン−6である、項目1に記載の方法。
(項目9) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記予め決定された値が、約1.39pg/mL血液以上である、項目8に記載の方法。
(項目10) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記予め決定された値が、約2.05pg/mL血液である、項目8に記載の方法。
(項目11) 将来の糖尿病または糖尿病性合併症を発症する個体の危険性プロフィールを特徴づける方法であって、以下:
該個体における全身性炎症のマーカーのレベルを得る工程、
該全身性炎症のマーカーのレベルを糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な第一の予め決定された値と比較して、第一の危険性値を確立する、工程、
該個体におけるグリコシル化ヘモグロビンのレベルを得る工程、
該グリコシル化ヘモグロビンのレベルを糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な第二の予め決定された値と比較して、第二の危険性値を確立する、工程、および
該第一の危険性値と該第二の危険性値との組み合わせに基づいて糖尿病または糖尿病性合併症を発症する該個体の危険性プロフィールを特徴づける工程であって、ここで、該第一の危険性値と該第二の危険性値との組み合わせが、該第一の危険性値および該第二の危険性値とは異なる第三の危険性値を確立する、工程
を包含する、方法。
(項目12) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記第一の予め決定された値が、第一の複数の予め決定されたマーカーレベル範囲であり、前記比較工程が、前記個体レベルが該第一の予め決定されたマーカーレベル範囲のいずれに当てはまるかを決定することを包含する、項目11に記載の方法。
(項目13) 前記全身性炎症のマーカーが、C反応性タンパク質およびサイトカインからなる群より選択される、項目11に記載の方法。
(項目14) 前記全身性炎症のマーカーが、C反応性タンパク質である、項目11に記載の方法。
(項目15) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記第一の予め決定された値が、約0.30mg/dL血液以上である、項目14に記載の方法。
(項目16) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記第一の予め決定された値が、約0.60mg/dL血液である、項目14に記載の方法。
(項目17) 前記予め決定されたマーカーレベルが、複数のマーカーレベル範囲であり、該複数のマーカーレベルのうちの1つが、約0.30mg/dL血液を下回り、該範囲の別のマーカーレベルが、約0.30mg/dL血液であり、ここで、前記比較工程が、前記個体のレベルが該複数の予め決定されたマーカーレベル範囲のいずれに当てはまるかを決定することを含む、項目14に記載の方法。
(項目18) 前記全身性炎症のマーカーが、インターロイキン−6である、項目11に記載の方法。
(項目19) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記第一の予め決定された値が、約1.39pg/mL血液以上である、項目18に記載の方法。
(項目20) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記第一の予予め決定された値が、約2.05pg/mL血液である、項目18に記載の方法。
(項目21) 個体が糖尿病の危険性を軽減するかまたは糖尿病性合併症の危険性を軽減するための薬剤による処置から利益を受ける可能性を評価するための方法であって、該薬剤は、インスリン、血糖降下剤、抗炎症性薬剤、脂質低下薬剤、カルシウムチャネルブロッカー、β−アドレナリン作用性レセプターブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター、およびアンギオテンシン系インヒビターからなる群より選択され、該方法は、以下:
該個体における全身性炎症のマーカーのレベルを得る工程、および
該マーカーのレベルを糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な予め決定された値と比較する工程であって、ここで、該予め決定された値と比較した該全身性炎症のマーカーのレベルが、該個体が該薬剤による処置からの利益を受けるか否かを示す、工程
を包含する、方法。
(項目22) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記予め決定された値が、複数の予め決定されたマーカーレベル範囲であり、比較工程が、前記個体レベルが該予め決定されたマーカーレベル範囲のいずれに当てはまるかを決定することを包含する、項目21に記載の方法。
(項目23) 前記全身性炎症のマーカーが、C反応性タンパク質およびサイトカインからなる群より選択される、項目21に記載の方法。
(項目24) 前記全身性炎症のマーカーが、C反応性タンパク質である項目21に記載の方法。
(項目25) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記予め決定された値が、約0.30mg/dL血液以上である、項目24に記載の方法。
(項目26) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記予め決定された値が、約0.60mg/dL血液以上である、項目24に記載の方法。
(項目27) 前記予め決定されたマーカーレベルが、複数の予め決定されマーカーレベル範囲であり、該複数のマーカーレベルのうちの1つが、約0.30mg/dL血液を下回り、そして該範囲の別のマーカーレベルが、約0.30mg/dL血液であり、ここで、前記比較工程が、前記個体のレベルが該複数の予め決定されたマーカーレベル範囲のいずれに当てはまるかを決定することを包含する、項目24に記載の方法。
(項目28) 前記全身性炎症のマーカーが、インターロイキン−6である、項目21に記載の方法。
(項目29) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記予め決定された値が、約1.39pg/mL血液以上である、項目28に記載の方法。
(項目30) 糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な前記予め決定された値が、約2.05pg/mL血液以上である、項目28に記載の方法。
(項目31) 前記薬剤が、インスリンである、項目21〜30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32) 前記薬剤が、抗炎症性薬剤である、項目21〜30のいずれか1項に記載の方法。
(項目33) 前記炎症性薬剤が、サイトカインインヒビターである、項目32に記載の方法。
(項目34) 前記炎症性薬剤が、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)インヒビターである、項目32に記載の方法。
(項目35) 前記腫瘍壊死因子−α(TNF−α)インヒビターが、エタネルセプトおよびインフレキシマブからなる群より選択される、項目34に記載の方法。
(項目36) 前記薬剤が、血糖降下剤である、項目21〜30のいずれか1項に記載の方法。
(項目37) 前記薬剤が、脂質低下薬剤である、項目21〜30のいずれか1項に記載の方法。
(項目38) 糖尿病または糖尿病性合併症の危険性を軽減させるために被験体を処置するための方法であって、糖尿病または糖尿病性合併症を発症する被験体の危険性を低下させるために有効量の、糖尿病の危険性を軽減させるための薬剤を、このような処置を必要とする被験体に選択および投与する工程を包含し、ここで、該薬剤が、インスリン、血糖降下剤、抗炎症性薬剤、脂質低下薬剤、カルシウムチャネルブロッカー、β−アドレナリン作用性レセプターブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビターおよびアンギオテンシン系インヒビターからなる群より選択される、方法。
(項目39) 前記被験体が、前記薬剤による処置を必要とする他の症状を有しない、項目38に記載の方法。
(項目40) 前記被験体が、見かけ上健康である、項目38に記載の方法。
(項目41) 前記被験体が、非高脂質血症患者である、項目38に記載の方法。
(項目42) 前記薬剤が、インスリンである、項目38〜41のいずれか1項に記載の方法。
(項目43) 前記薬剤が、血糖降下剤である、項目38〜41のいずれか1項に記載の方法。
(項目44) 前記薬剤が、抗炎症性薬剤である、項目38〜41のいずれか1項に記載の方法。
(項目45) 前記抗炎症性薬剤が、サイトカインインヒビターである、項目44に記載の方法。
(項目46) 前記抗炎症性薬剤が、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)インヒビターである、項目44に記載の方法。
(項目47) 前記腫瘍壊死因子−α(TNF−α)インヒビターが、エタネルセプトおよびインフレキシマブからなる群より選択される、項目46に記載の方法。
(項目48) 前記薬剤が、脂質低下薬剤ある、項目38〜41のいずれか1つの方法。
(項目49) 前記薬剤が、カルシウムチャネルブロッカーである、項目38〜41のいずれか1項に記載の方法。
(項目50) 前記薬剤が、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビターである、項目38〜41のいずれか1項に記載の方法。
(項目51) 前記薬剤が、アンギオテンシン系インヒビターである、項目38〜41のいずれか1項に記載の方法。
本発明のこれらおよび他の局面は、発明の詳細な説明に関連して、以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、IL−6およびCRPの基線レベルに従って、被験体に発症する真性糖尿病の相対的危険性を示している棒グラフであり;グループを、研究集団におけるコントロール被験体の分布を用いて、IL−6および/またはCRPの各々の75番目の百分位数カットオフ値に基づいて形成した。
【図2】図2は、IL−6の基線レベル(図2A)およびCRP(図2B)の基線レベル、ならびにボディマス指数(kg/m)に従う、真性糖尿病の相対的危険性を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明に対する第1の基礎は、女性健康調査(Woman’s Health Study)、つまり、見かけ上健康な女性28,000人内で実施された、アスピリンおよびビタミンEの心臓血管疾患試行の、大規模で、無作為化された、二重盲式の、プラシーボ制御された一次予防からの証拠である。その試行において、潜在的な全身性炎症に対するマーカーであるC反応性タンパク質の基線レベルが、一連の他の危険因子とは独立して、糖尿病または糖尿病性合併症を発症する将来の危険性を決定することが見出された。特に、基線のグリコシル化ヘモグロビンレベルが6.0を下回る場合でさえ、C反応性タンパク質の最も高い基線レベルを有する個体が、将来の糖尿病を発症する危険性において10倍を超える増加を有することが判明した;このような個体においては、最小四分位数から最大四分位数のC反応性タンパク質の基線レベルを有する個体に対する将来の糖尿病を発症する粗の相対的危険性は、1.0、2.2、8.7、および15.7(P−傾向<0.001)であった。本分析において、C反応性タンパク質に対する四分位数切捨て値は、それぞれ以下であった:0.10mg/dL以下、0.11〜0.26mg/dL、0.27〜0.61mg/dL、および0.61mg/dLより高い。
さらに、この効果は、ボディマス指数、高血圧症、糖尿病の家族歴、運動頻度、アルコール消費、高脂質血症、喫煙、および閉経期の状態について調整した後で、統計学的に有意なままであった。6.0%を下回るグリコシル化ヘモグロビンレベル有する見かけ上健康な女性に再度限定された、この完全に調整された分析において、最小四分位数から最大四分位数のC反応性タンパク質の基線レベルを有する個体について将来の糖尿病を発症する相対的危険性は、1.0、1.3、4.1および4.2(P−傾向<0.001)であった(例えば、表3参照)。
さらに、前記の女性健康調査によるデータは、将来の糖尿病の危険性が、例えば、グリコシル化ヘモグロビンなどの公知の糖尿病試験/マーカーの通常の評価によって別に決定され得た危険性に対して相加的であるようであるということを示す。これらのデータはまた、C反応性タンパク質産生を増強する薬剤が、糖尿病の危険性を決定する際における重要な役割を有し得る可能性も提起した。この仮説が試験され;肝臓におけるC反応性タンパク質産生を大いに担うサイトカインであるインターロイキン−6(IL−6)に関する本調査に由来するデータは、この炎症性マーカーもまた糖尿病の危険性を予測し得るということを確認した。女性健康調査における個体において、最小四分位数から最大四分位数のIL−6の基線レベルを有する個体について将来の糖尿病を発症する粗の相対的危険性は、1.0、2.5、4.1、および7.5(P−傾向<0.001)であった。本分析において、IL−6に対する四分位数切捨て値は、それぞれ以下であった:0.91pg/mL以下、0.92〜1.38pg/mL、1.39〜2.05pg/mL、および2.05pg/mL以上(表2参照)。
【0024】
その上、本効果は、ボディマス指数、高血圧症、糖尿病の家族歴、運動頻度、アルコール消費、高脂質血症、喫煙、および閉経期の状態について調整させた後で、統計学的に有意なままであった。6.0%を下回るグリコシル化ヘモグロビンレベルを有する見かけ上健康な女性の個体に再度限定された、この完全に調整された本分析において、最小四分位数から最大四分位数のIL−6の基線レベルを有する個体について将来の糖尿病を発症する相対的危険性は、1.0、1.4、1.3および2.3(P−傾向 0.001)であった(例えば、表2参照)。
【0025】
1つの局面において、本発明は、疾患の以前の徴候を有しない見かけ上健康な個体における糖尿病の危険性を予測するための、炎症性マーカーであるC反応性タンパク質の使用を記載する。それゆえ、これらのデータは、C反応性タンパク質レベルが、既に本疾患を有することが知られている個体においては増加されるということ示唆した以前の観察を、大いに拡張する。実際、既知の糖尿病を有する個体の先行研究において観察された統計学的関連性は、因果関係を示すか否か、または短期間の炎症性変化に起因するか否かもしくは他の危険因子(特に肥満症および高脂質血症)との相互関係に起因するか否かは不確かなままであった。
【0026】
顕著な対照として、女性健康調査によるデータは、現在においては健康である個体、およびそうでなくても糖尿病の危険性の低い個体における、将来の糖尿病の危険性を予測するため、ならびにグリコシル化ヘモグロビンおよび経口ブドウ糖耐性などの他の公知の糖尿病マーカー/試験に対する以上にスクリーニングに関連する以上に危険性を予測するための、C反応性タンパク質および他の炎症性マーカーの有用性を初めて示す。女性健康調査によるデータはまた、健康な個体におけるC反応性タンパク質レベルが、糖尿病に対する他のスクリーニング技術を用いるサーベイランスの頻度を増加させるために用いられ得ること(他の公知の糖尿病マーカー/試験については、以前の議論を参照)、ならびに糖尿病の発症を予防するためまたは糖尿病性合併症の重症度を軽減させるために設計された処置の有効性およびタイミングが、潜在的な全身性炎症の程度の測定に基づいて規模の点で異なり得ることを、初めて示唆する。
【0027】
本発明は、以下の用語の簡単な説明を参照して良好に理解される。
【0028】
本明細書中に使用される場合、「糖尿病」とは、真性糖尿病(I型:インスリン依存性真性糖尿病、およびII型:インスリン非依存性真性糖尿病の両方)をいい、レセプター前抵抗性(変異型インスリン、抗インスリン抗体)、ならびにレセプター抵抗性およびレセプター後抵抗性(肥満症、欠損性または機能不全性レセプター、インスリンレセプターに対する抗体、脂肪異栄養症状態、妖精症、毛細血管拡張性運動失調、ラブソン−メンデンホール(Rabson−Mendenhall)症候群、ヴェルナー症候群、アルストレーム症候群、松果体過形成症候群)などのインスリン抵抗性症候群を含む。
本明細書中に使用される場合、「糖尿病性合併症」とは、急性代謝性合併症(糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧性昏睡、および遅発型の合併症(循環異常、網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性足潰瘍)をいう。
【0029】
前記の用語のより詳細な説明は、当該分野において公知の数多くの供給源から得られ得る(例えば、Harrison’s Principles of Experimental Medicine、第13版、McGraw−Hill、Inc.、N.Y参照)。
【0030】
本明細書中に使用される場合、「見かけ上健康」とは、以前においては糖尿病の臨床的証拠のいずれも有しなかった個体、およびさもなければ疾患の徴候を示さない個体を意味する。言い換えれば、このような個体は、医療専門家によって診察される場合、健康的で疾患の徴候を有しないとみなされる。
【0031】
本明細書中に使用される場合、「非喫煙」とは、評価の時点において、喫煙者でない個体を意味する。このことは、喫煙していたことのない個体および過去において喫煙していたが現在においてもはや喫煙していない個体を含む。
【0032】
糖尿病または糖尿病性合併症の危険性を軽減させるための薬剤としては、インスリン、血糖降下剤、抗炎症性薬剤、脂質低下薬剤、カルシウムチャネルブロッカー、β−アドレナリン作用性レセプターブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター、およびアンギオテンシン系インヒビターからなる群より選択される薬剤が挙げられる。
【0033】
「インスリン」とは、インスリンリスプロ(lispro)rDNA起源:HUMALOG(登録商標)(1.5mL、10mL、Eli Lilly and Company、Indianapolis、IN)、インスリン投入(標準のインスリン)形態ウシおよびブタ(標準のILETIN(登録商標)I、Eli Lilly)、ヒト:rDNA:HUMULIN(登録商標)R(Eli Lilly)、NOVOLIN(登録商標)R(Novo Nordisk、New York、NY)、半合成:VELOSULIN(登録商標)ヒト(Novo Nordisk)、rDNA、ヒト、緩衝化:VELOSULIN(登録商標)BR、ブタ:標準インスリン(Novo Nordisk)、精製ブタ:ブタ標準ILETIN(登録商標)II(Eli Lilly)、標準精製ブタインスリン(Novo Nordisk)、および標準(濃縮)ILETIN(登録商標)II U−500(500ユニット/mL,Eli Lilly)などの迅速作用形態;インスリン亜鉛懸濁液、ウシおよびブタ:LENTE(登録商標)ILETIN(登録商標)I(Eli Lilly)、ヒト、rDNA:HUMULIN(登録商標)L(Eli Lilly)、NOVOLIN(登録商標)L(Novo Nordisk)、精製ブタ:LENTE(登録商標)ILETIN(登録商標)II(Eli Lilly)、イソフェンインスリン懸濁液(NPH):ウシおよびブタ:NPH ILETIN(登録商標)I(Eli Lilly)、ヒト:rDNA:HUMULIN(登録商標)N(Eli Lilly)、Novolin(登録商標)N(Novo Nordisk)、精製ブタ:ブタ NPH Iletin(登録商標)II(Eli Lilly)、NPH−N(Novo Nordisk)などの中間的作用形態;および、インスリン亜鉛懸濁液、長期(ULTRALENTE(登録商標)、Eli Lilly)、ヒト:rDNA:HUMULIN(登録商標)U(Eli Lilly)などの長期作用形態を含む。
【0034】
「血糖降下」剤は、好ましくは、経口血糖降下剤であり、これらには、以下が挙げられる;第一世代スルホニル尿素:アセトヘキサミド(Dymelor)、クロルプロマジン(Diabinese)、トルブタミド(Orinase);第二世代スルホニル尿素:グリピジド(Glucotrol,Glucotrol XL)、グリブリド(Diabeta;Micronase;Glynase),グリメピリド(Glimepiride)(Amaryl);ビグアナイド(Biguanide):メトホルミン(Glucophage);α−グリコシダーゼインヒビター:アカルボース(Precose)、ミグリトール(Miglitol)(Glyset)、チアゾリジンジオン:ロシグリタゾン(Rosiglitazone)(Avandia)、ピオグリタゾン(Pioglitazone)(Actos)、トログリタゾン(Troglitazone)(Rezulin);メグリチニド(Meglitinide):レパグリニド(Repaglinide)(Prandin);およびアカルボースなどの他の血糖降下剤;ブホルミン;塩酸ブトキサミン;キャミグリボース(Camiglibose);シグリタゾン(Ciglitazone);イングリタゾンナトリウム(Englitazone Sodium);ダルグリタゾンナトリウム(Darglitazone Sodium);塩酸エトホルミン(Etoformin Hydrochloride);グリアミリド(Gliamilide);グリボルヌリド(Glibornuride);グリセタニル(Glicetanile);グリクラジドナトリウム;グリフルミド(Gliflumide);グルカゴン;グリヘキサミド(Glyhexamide);グリシニンナトリウム;グリオクタミド(Glyoctamide);グリパラミド(Glyparamide);リノグリライド(Linogliride);フマル酸リノグリライド(Linogliride Fumarate);パルモキシ酸メチル(Methyl Palmoxirate);パルモキシ酸ナトリウム(Palmoxirate Sodium);酒石酸ピログリライド(Pirogliride Tartrate);ヒトプロインスリン(Proinsulin Human);酢酸セグリタイド(Seglitide Acetate);トラザミド;トルピラミド(Tolpyrramide);ゾポルレスタット(Zopolrestat)。さらなる血糖降下剤は、以下の米国特許:
【0035】
【化1】

(これらの特許の開示は、本明細書中に参考として援用される)に詳細に記載される。
【0036】
「抗炎症性」薬剤としては、以下が挙げられる;アルクロフェナック;ニプロピオン酸アルクロメタゾン;アルゲストンアセトニド;αアミラーゼ;アムシナファル(Amcinafal);アムシナヒイド;アンフェナックナトリウム;塩酸アシプリロース(Amiprilose Hydrochloride;アナキンラ(Anakinra);アニロラック(Anirolac);アニトラザフェン(Anitrazafen);アパゾン;バルサラジドニナトリウム(Balsalazide Disodium);ベンダザック;ベノキサプロフェン;塩酸ベンジダミン;ブロメライン;ブロペラモール(Broperamole);ブデソニド;カルプロフェン(Carprofen);シクロプロフェン(Cicloprofen);シンタゾン(Cintazone);クリプロフェン(Cliprofen);プロピオン酸クロβゾール;酪酸クロβゾン;クロピラック(Clopirac);プロピオン酸クロチカゾン(Cloticasone Propionate);酢酸コルメタゾン(Cormethasone Acetate);コルトドキソン(Cortodoxone);デフラザコート(Deflazacort);デソニド;デスオキシメタゾン;二プロピオン酸デキサメタゾン;ジクロフェナクカリウム;ジクロフェナクナトリウム;酢酸ジフロラゾン;ジフルミドンナトリウム(Diflumidone Sodium);ジフルニサル;ジフルプレドナート;ジフタロン(Diftalone);ジメチルスルホキシド;ドロシノイド(Drocinonide);エンドリソン(Endrysone);エンリモマブ(Enlimomab);エンリカムナトリウム(Enolicam Sodium);エピリゾール(Epirizole);エトドラック(Etodolac);エトフェナメート(Etofenamate);フェルビナク;フェナモーレ(Fenamole);フェンブフェン;フェンクロフェナク;フェンクロラック(Fenclorac);フェンドサル(Fendosal);フェンピパロン(Fenpipalone);フェンチアザック(Fentiazac);フラザロン(Flazalone);フルアザコート(Fluazacort);フルフェナム酸;フルミゾール(Flumizole);酢酸フルニソリド;フルニキシン(Flunixin);フルニキシンメグルミン(Flunixin Meglumine);フルオコルチンブチル(Fluocortin Butyl);酢酸フルオロメトロン;フルクアゾン(Fluquazone);フルルビプロフェン;フルレトフェン(Fluretofen);プロピオン酸フルチカゾン(Fluticasone Propionate);フラプロフェン(Furaprofen);フロブフェン(Furobufen);ハルシノニド;プロピオン酸ハロβゾール(Halobetasol Propionate);酢酸ハロプレドン;イブフェナク(Ibufenac);イブプロフェン;イブプロフェンアルミニウム;イブプロフェンピコノール;イロニダップ(Ilonidap);インドメタシン;インドメタシンナトリウム;インドプロフェン;インドキソール(Indoxole);イントラゾール(Intrazole);酢酸イソフラプレドン(Isoflupredone Acetate);イソキセパック(Isoxepac);イソキシカム;ケトプロフェン;塩酸フェミゾール;ロルノキシカム(Lornoxicam);ロテプレドールエタボネート(Loteprednol Etabonate);メクロフェナム酸ナトリウム;メクロフェナム酸;酢酸メクロリゾンジブテレート(Meclorisone Dibutyrate);メフェナム酸;メサラミン;メセクラゾン(Meseclazone);メチルプレドニゾロンサレプタネート(Methylprednisolone Suleptanate);モルニフラメート(Morniflumate);ナブメトン;ナプロキセン;ナプロキセンナトリウム;ナプロキソール(Naproxol);ニマゾン(Nimazone);オルサラジンナトリウム(Olsalazine Sodium);オルゴテイン(Orgotein);オルパノキシン(Orpanoxin);オキサプロジン;オキシフェンブタゾン;塩酸ポリパラニリン(Paranyline Hydrochloride);ペントサン硫酸ナトリウム(Pentosan Polysulfate Sodium);フェンブタゾングリセリン酸ナトリウム(Phenbutazone Sodium Glycerate);ピルフェニドン(Pirfenidone);ピロキシカム;桂皮酸ピロキシカム;ピロキシカムオラミン(Piroxicam Olamine);ピルプロフェン;プレドナゼート(Prednazate);プリフェロン(Prifelone);プロドリン酸(Prodolic Acid);プロクアゾン(Proquazone);プロキサゾール(Proxazole);クエン酸プロキサゾール(Proxazole Citrate);リメキソロン(Rimexolone);ロマザリット(Romazarit);サルコレックス(Salcolex);サルナセジン(Salnacedin);サルサラート;サリシレート(Salycilate);塩化サンギナリウム(Sanguinarium Chloride);セクラゾン(Seclazone);セルメタシン(Sermetacin);サドキシカム(Sudoxicam);スリンダク;スプロフェン;タルメタシン(Talmetacin);タルニフルメート(Talniflumate);タロサレート(Talosalate);テブフェロン(Tebufelone);テニダップ(Tenidap);テニダップナトリウム(Tenidap Sodium);テノキシカム;テシカム(Tesicam);テシミド(Tesimide);テトリダミン(Tetrydamine);チオピナック(Tiopinac);チキソコルトールビバレート(Tixocortol Pivalate);トルメチン;トルメチンナトリウム;トリクロニド(Triclonide);トリフルミデート(Triflumidate);ジドメタシン(Zidometacin);グルココルチコイド;ゾメピラックナトリウム。重要な抗炎症性薬剤はアスピリンである。
【0037】
好ましい抗炎症性薬剤は、サイトカインインヒビターである。重要なサイトカインインヒビターとしては、以下が挙げられる:サイトカインアンタゴニスト(例えば、IL−6レセプターアンタゴニスト)、アザ−アルキルリゾリン脂質(AALP)、および腫瘍壊死因子−α(TNF−α)インヒビター(例えば、抗TNF−α抗体、可溶性TNFレセプター、TNF−α−アンチ−センス核酸分子、多価グアニリルヒドラゾン(CNI−1493)、N‐アセチルシステイン、ペントキシフィリン、オキシペンティフィリン(oxpentifylline)、炭素環式ヌクレオシドアナログ、小分子S9a、RP 55778(TNF−α合成インヒビター)、デキサナビノール(Dexanabinol)(HU−211(これは、カンナビノイド模倣効果(cannabimimetic effects)を欠く合成カンナビノイドである)は、転写後段階においてTNF−α生産を阻害する)、MDL201,449A(9−[(1R,3R)−トランス−シクロペンタン−3−オール]アデニン)、およびトリコジメロール(trichodimerol)(BMS−182123)。好ましいTNF−αインヒビターは、Etanercept(ENBREL(登録商標)、Immunex、Seattle)およびInfliximab(REMICADE(登録商標)、Centocor、Malvern、PA)である。さらにTNF−αインヒビターは、米国特許:第6,143,866号、第6,127,378号、第6,103,702号、第5,998,378号、第5,985,592号、第5,972,928号、第5,877,180号、第5,853,977号、第5,849,501号、第5,846,755号、第5,843,675号、第5,830,742号、第5,820,858号、第5,795,574号、第5,762,921号、第5,747,532号、第5,691,382号、第5,660,826号、第5,654,312号、および第5,091,511号に詳細に記載される。
【0038】
「脂質低下薬剤」としては、ゲムフィブロジル、コレスチラミン、コレスチポール、ニコチン酸、およびHMG−CoAリダクターゼインヒビターが挙げられる。HMG−CoA(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A)リダクターゼは、ミクロソーム酵素であり、コレステロール(HMG−CoAメバロネート)生合成における律速反応を触媒する。HMG−CoAリダクターゼインヒビターは、HMG−CoAリダクターゼを阻害し、結果としてコレステロールの合成を阻害する。多くのHMG−CoAリダクターゼインヒビターは、高コレステロール血症を有する個体を処置するために用いられている。より最近では、HMG−CoAリダクターゼインヒビターが発作の処置において有効であることが示されている(Endres Mら、Proc Natl Acad Sci USA、1998、95:8880−5)。
【0039】
本発明に従う投与または他の薬剤との共投与に有用なHMG−CoAリダクターゼインヒビターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。シンバスタチン(米国特許第4,444,784号)、ロバスタチン(米国特許第4,231,938号)、プラバスタチンナトリウム(米国特許第4,346,227号)、フラバスタチン(fluvastatin)(米国特許第4,739,073号)、アトルバスタチン(atorvastatin)(米国特許第5,273,995号)、セリバスタチン(cerivastatin)、ならびに米国特許第5,622,985号、同第5,135,935号、同第5,356,896号、同第4,920,109号、同第5,286,895号、同第5,262,435号、同第5,260,332号、同第5,317,031号、同第5,283,256号、同第5,256,689号、同第5,182,298号、同第5,369,125号、同第5,302,604号、同第5,166,171号、同第5,202,327号、同第5,276,021号、同第5,196,440号、同第5,091,386号、同第5,091,378号、同第4,904,646号、同第5,385,932号、同第5,250,435号、同第5,132,312号、同第5,130,306号、同第5,116,870号、同第5,112,857号、同第5,102,911号、同第5,098,931号、同第5,081,136、同第5,025,000号、同第5,021,453号、同第5,017,716号、同第5,001,144号、同第5,001,128号、同第4,997,837号、同第4,996,234号、同第4,994,494号、同第4,992,429号、同第4,970,231号、同第4,968,693号、同第4,963,538号、同第4,957,940号、同第4,950,675号、同第4,946,864号、同第4,946,860号、同第4,940,800号、同第4,940,727号、同第4,939,143号、同第4,929,620号、同第4,923,861号、同第4,906,657号、同第4,906,624号および同第4,897,402号(これらの特許の開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載される多数の他のHMG−CoAリダクターゼインヒビター。
【0040】
「カルシウムチャネルブロッカー」とは、高血圧症、アンギナおよび心律動異常などのいくつかの心臓血管の障害を含む、様々な疾患の制御における重要な治療的価値を有する化学的に多様な化合物のクラスである(Fleckenstein、Cir.Res.52巻(補遺1)、13−16項(1983);Fleckenstein、Experimental Facts and Therapeutic Prospects、John Wiley、New York(1983);McCall,D.、Curr Pract Cardiol、10巻、1−11項(1985))。カルシウムチャネルブロッカーは、細胞のカルシウムチャネルを調節することによって細胞内のカルシウムの流入を妨害または遅延する薬物の異なる群である(Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Mack Publishing Company、Eaton、PA、963項(1995))。現在利用可能な、そして本発明に従って有用なカルシウムチャネルブロッカーの多くは、薬物の3つの主要な化学グループ(ニフェジピンなどのジヒドロキシピリジン、ベラパミルなどのフェニルアルキルアミン、およびジルチアゼムなどのベンゾチアゼピン(benzothiazepine))の1つに属する。本発明に従って有用な他のカルシウムチャネルブロッカーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アムリノン、アムロジピン、ベンシクラン、フェロジピン、フェンジリン、フルナリジン、イスラティピン(isradipine)、ニカルジピン、ニモジピン、ペルヘキシリン、ガロパミル(gallopamil)、チアパミル(tiapamil)およびチアパミルアナログ(1993RO−11−2933などの)、フェニトイン、バルビツレートおよびペプチドダイノルフィン、ω−コノトキシン、およびω−アガトキシンなど、および/または薬学的に受容可能なそれらの塩。
【0041】
「β−アドレナリン作用性レセプター遮断剤」とは、狭心症、高血圧症、心律動異常におけるカテコールアミンの心臓血管作用を拮抗する薬物のクラスである。βドレナリン作用性レセプターブロッカーはとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アテノロール、アセブトロール、アルプレノロール、ベフノロール、β−キソロール、ブニトロロール、カルテオロール、セリプロロール(celiprolol)、ヘドロキサロール(hedroxalol)、インデノロール、ラベタロール、レボブノロール、メピンドロール(mepindolol)、メチルプラノール(methypranol)、メチンドール(metindol)、メトプロロール、メトリゾラノール(metrizoranolol)、オクスプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール、プラクトロール、プラクトロール、ソタロールナドロール(sotalolnadolol)、チプレノール、トマロロール(tomalolol)、チモロール、ブプラノロール、ペンブトロール、トリメプラノール(trimepranol)、2−(3−(1,1−ジメチルエチル)−アミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3−ピリデンカルボニトリルHCl、1−ブチルアミノ−3−(2,5−ジクロロフェノキシ)−2−プロパノール、1−イソプロピルアミノ−3−(4−(2−シクロプロピルメトキシエチル)フェノキシ)−2−プロパノール、3−イソプロピルアミノ−1−(7−メチルインダン−4−イルキシ)−2−ブタノール、2−(3−t−ブチルアミノ−2−ヒドロキシプロピルチオ)−4−(5−カルバモイル−2−チエニル)チアゾール、7−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチルアミンプロポキシ)フタリド(7−(2−hydroxy−3−t−butylaminpropoxy)phthalide)を含む。上記の化合物は、異性体混合物として、またはそれらの各々の右旋性体もしくは左旋性体いずれかにおいて用いられ得る。
【0042】
シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)は、シクロオキシゲナーゼの近年同定された形態である。「シクロオキシゲナーゼ」とは、ほとんどの組織において存在する酵素複合体であり、アラキドン酸から様々なプロスタグランジンおよびトロンボキサン類を産生する。非ステロイド性の抗炎症性薬物は、それらの抗炎症性、鎮痛性、および解毒性の活性を働かせ、シクロオキシゲナーゼ(プロスタグランジンG/Hシンターゼおよび/またはプロスタグランジンエンドペルオキシダーゼシンターゼとしても公知である)の阻害を通して、ホルモンによって誘導される子宮収縮および癌増殖の特定の型を阻害する。当初は、シクロオキシゲナーゼの1つの形態である「構成的酵素」つまりシクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)のみが、公知であった。シクロオキシゲナーゼ−1は、元々、ウシの精嚢において同定された。
【0043】
シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)は、最初は、ニワトリ、マウス、およびヒトの供給源よりクローニングされ、配列決定され、そして特徴付けられた(例えば、Cromlishらに対して1996年8月6日に発行され、Merck Frosst Canada、Inc.、Kirkland、CAに譲渡された、「Human cyclooxygenase−2 cDNA and assays for evaluating cyclooxygenase−2 activity」という発明の名称の、米国特許第5,543,297号を参照のこと)。本酵素は、COX−1とは異なる。COX−2は、有糸分裂促進剤、内毒素、ホルモン、サイトカインおよび増殖因子を含む多くの因子によって、迅速かつ容易に誘導され得る。プロスタグランジンは、生理学的役割および病理学的役割の両方を有するので、構成的酵素であるCOX−1は、大部分において、プロスタグランジンの内因性の基礎的な放出を担い、そしてそれ故、胃腸の健全性および腎臓の血流の維持などの生理学的機能において重要である。対照的に、誘導性形態COX−2は、主に、プロスタグランジンの病理学的効果を担い、この酵素の迅速な誘導が炎症性因子、ホルモン、増殖因子、およびサイトカインなどの因子に応答して生じると考えられている。従って、COX−2の選択的インヒビターは、従来の非ステロイド性抗炎症性薬剤に相似する、抗炎症性、解熱性および鎮痛性特性を有し、加えて、副作用を軽減しながら、ホルモン誘導性の子宮収縮を阻害し、そしてまた、潜在的な抗癌作用を有すると考えられている。特に、このようなCOX−2インヒビターは、胃腸毒性に関する可能性、腎臓の副作用に関する可能性、出血時間に対する効果が減少されており、そしておそらくアスピリン感受性ぜん息性被験体におけるぜん息発作の誘導の可能性を軽減されていると考えられており、それゆえ、本発明に従って有用である。
【0044】
多くの選択的「COX−2インヒビター」が、当該技術分野において公知である。これらとしては、以下に記載されるCOX−2インヒビターが挙げられるが、これらに限定されない:米国特許第5,474,995号「Phenyl heterocycles as COX−2 inhibitors;米国特許第5,521,213号「Diaryl bicyclic heterocycles as inhibitors of cyclooxygenase−2」;米国特許第5,536,752号「Phenyl heterocycles as COX−2 inhibitors」;米国特許第5,550,142号「Phenyl heterocycles as COX−2 inhibitors」;米国特許第5,552,422号「Aryl substituted 5,5 fused aromatic nitrogen compounds as anti−inflammatory agents」;米国特許第5,604,253号「N−benzylindol−3−yl propanoic acid derivatives as cyclooxygenase inhibitors」;米国特許第5,604,260号「5−methanesulfonamido−1−indanones as an inhibitor of cyclooxygenase−2」;米国特許第5,639,780号「N−benzyl indol−3−yl butanoic acid derivatives as cyclooxygenase inhibitors」;米国特許第5,677,318号「Diphenyl−1,2−3−thiadiazoles as anti−inflammatory agents」;米国特許第5,691,374号「Diaryl−5−oxygenated−2−(5H)−furanones as COX−2 inhibitors」;米国特許第5,698,584号「3,4−diaryl−2−hydroxy−2,5−dihydrofurans as prodrugs to COX−2 inhibitors」;米国特許第5,710,140号「Phenyl heterocycles as COX−2 inhibitors」;米国特許第5,733,909号「Diphenyl stilbenes as prodrugs to COX−2 inhibitors」;米国特許第5,789,413号「Alkylated styrenes as prodrugs to COX−2 inhibitors」;米国特許第5,817,700号「Bisaryl cyclobutenes derivatives as cyclooxygenase inhibitors」;米国特許第5,849,943号「Stilbene derivatives useful as cyclooxygenase−2 inhibitors」;米国特許第5,861,419号「Substituted pyridines as selective cyclooxygenase−2inhibitors」;米国特許第5,922,742号「Pyridinyl−2−cyclopenten−1−ones as selective cyclooxygenase−2 inhibitors」;米国特許第5,925,631号「Alkylated styrenes as prodrugs to COX−2 inhibitors」(これらの全ては、Merck Frosst Canada、Inc.(Kirkland,CA)に対して、同一人に譲渡されている。)。さらなるCOX−2インヒビターもまた、G.D.Searle & Co.(Skokie、IL)に譲渡された「Substituted sulfonylphenylheterocycles as cyclooxygenase−2 and 5−lipoxygenase inhibitors」という発明の名称の、米国特許第5,643,933号に記載される。
【0045】
上記の多くのCOX−2インヒビターは、選択的COX−2インヒビターのプロドラッグであり、そしてインビボにおける活性かつ選択的なCOX−2インヒビターへの変換によってその作用を発揮する。上記のCOX−2インヒビタープロドラッグから形成される活性かつ選択的なCOX−2インヒビターは、詳細には、1995年1月5日に公開されたWO 95/00501、1995年7月13日に公開されたWO 95/18799および1995年12月12日に発行された米国特許第5,474,995号に記載される。「Human cyclooxygenase−2 cDNA and assays for evaluating cyclooxygenase−2 activity」という発明の名称の米国特許第5,543,297号の教示によって、当業者は、
薬剤が選択的COX−2インヒビターまたはCOX−2インヒビターの前躯体であるか否かを、そしてそれゆえ、本発明の一部分であるか否かを決定し得る。
【0046】
「アンギオテンシン系インヒビター」は、アンギオテンシンIIの機能、合成または異化を干渉する薬剤である。これらの薬剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、アンギオテンシンIIレセプターアンタゴニスト、アンギオテンシンIIの異化を活性化する薬剤、およびアンギオテンシンIIが最終的に誘導されるアンギオテンシンIの合成を妨げる薬剤。レニン−アンギオテンシン系は、血行力学ならびに水および電解質平衡の制御に関与する。血液量、腎臓の灌流圧、または血漿におけるNaの濃度を低下させる因子は、この系を活性化する傾向にあり、一方で、これらのパラメータを増大させる因子は、その機能を抑制する傾向にある。
【0047】
アンギオテンシンIおよびアンギオテンシンIIは、酵素的レニン−アンギオテンシン経路によって合成される。合成過程は、酵素レニンが、アンギオテンシノゲンである、血漿中における偽性グロブリンに作用する場合に開始され、デカペプチドアンギオテンシンIを産生する。アンギオテンシンIは、アンギオテンシン変換酵素(ACE)によってアンギオテンシンII(アンギオテンシン−[1−8]オクタペプチド)に変換される。後者は、活性な昇圧物質であり、様々な哺乳動物(例えば、ヒト)における高血圧症のいくつかの形態における原因物質として示唆されている。
【0048】
アンギオテンシン(レニン−アンギオテンシン)系インヒビターは、アンギオテンシノゲンまたはアンギオテンシンIからアンギオテンシンIIの産生を干渉するか、あるいはアンギオテンシンIIの活性を干渉するように作用する化合物である。このようなインヒビターは、当業者に周知であり、そしてこれらとしては、レニンおよびACEを含む、アンギオテンシンIIの最終生成に関与する酵素を阻害するように作用する化合物が挙げられる。それらにはまた、一旦産生されたアンギオテンシンIIの活性を干渉する化合物も含まれる。このような化合物のクラスの例としては、抗体(例えば、レニンに対する抗体)、アミノ酸およびそのアナログ(より大きい分子に結合体化されたものを含む)、ペプチド(アンギオテンシンおよびアンギオテンシンIのペプチドアナログを含む)、プロ−レニン(pro−renin)に関連するアナログなどが挙げられる。最も強力かつ有用なレニン−アンギオテンシン系インヒビターは、レニンインヒビター、ACEインヒビター、およびアンギオテンシンIIアンタゴニストである。本発明の好ましい実施形態においては、レニン−アンギオテンシン系インヒビターは、レニンインヒビター、ACEインヒビター、およびアンギオテンシンIIアンタゴニストである。
【0049】
「アンギオテンシンIIアンタゴニスト」とは、アンギオテンシンIIレセプターへ結合し、その活性を干渉することによってアンギオテンシンIIの活性を干渉する化合物である。アンギオテンシンIIアンタゴニストは周知であり、そしてこれらには、ペプチド化合物および非ペプチド化合物が含まれる。多くのアンギオテンシンIIアンタゴニストは、わずかに修飾された同属種であり、アゴニスト活性は、第8位のフェニルアラニンの他のいくつかのアミノ酸での置換によって減衰され;安定性は、インビボにおいて変性を遅くさせる他の置換によって増強され得る。アンギオテンシンIIアンタゴニストの例としては:ペプチド性化合物(例えば、サララシン、[(San)(Val)(Ala)]アンギオテンシン−(1−8)オクタペプチドおよび関連したアナログ);N−置換イミダゾール−2−オン(米国特許第5,087,634号);2ーN−ブチル−4−クロロ−1−(2−クロロベンジル)イミダゾール−5−酢酸(Longら、J.Pharmacol Exp.Ther.247(1)、1−7(1988))を含む、イミダゾール誘導体;4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−6−カルボン酸およびアナログ誘導体(米国特許第4,816,463号);N2−テトラゾール−グルクロニドアナログ(米国特許第5,085,992号);置換されたピロール、ピラゾール、およびトリアゾール(米国特許第5,081,127号);1,3−イミダゾール(米国特許第5,073,566号)などのフェノールおよび複素環式誘導体;イミダゾ−縮合7員環複素環(米国特許第5,064,825号);ペプチド(例えば、米国特許第4,772,684号);アンギオテンシンIIに対する抗体(例えば、米国特許第4,302,386号);およびビフェニルメチル置換イミダゾール(例えば、EP253,310、1988年1月20日)などのアラルキルイミダゾール化合物;ES8891(N−モルフォリノアセチル−(−1−ナフチル)−L−アラニル−(4,チアゾリル)−L−アラニル(35,45)−4アミノ−3−ヒドロキシ−5−シクロ−ヘキサペンタノイル−N−ヘキシルアミド、Sankyo Company、Ltd.、Tokyo、Japan);SKF108566(E−α−2−[2−ブチル−1−(カルボキシフェニル)メチル]lH−イミダゾール−5−イル[メチレン]−2−チオフェンプロパン酸、Smith Kline Beecham Pharmaceuticals,PA);ロサルタン(Losartan)(DUP753/MK954、DuPont Merck Pharmaceutical Company);レミキリン(Remikirin)(RO42−5892、F.Hoffman LaRoche AG);Aアゴニスト(Marion Merrill Dow)および特定の非ペプチド複素環(G.D.Searle and Company)が挙げられる。
【0050】
「アンギオテンシン変換酵素(ACE)」とは、アンギオテンシンIIへのアンギオテンシンIへの変換を触媒する酵素である。ACEインヒビターとしては、アミノ酸およびその誘導体、ペプチド(ジペプチドおよびトリペプチドを含む)、ならびにACEに対する抗体が挙げられ、それらは、ACEの活性を阻害し、それによって、前駆体物質アンギオテンシンIIの形成を軽減または排除することによって、レニン−アンギオテンシン系に干渉する。ACEインヒビターは、高血圧症、うっ血性心不全、心筋梗塞、および腎臓疾患を処置するために医学的に用いられている。ACEインヒビターとして有用であることが知られている化合物のクラスとしては、カプトプリル(米国特許第4,105,776号)およびゾフェノプリル(zofenopril)(米国特許第4,316,906号)などのアシルメルカプトおよびメルカプトアルカノイルプロリン、エナラプリル(米国特許第4,374,829号)、リジノプリル(米国特許第4,374,829号)、キナプリル(quinapril)(米国特許第4,344,949号)、ラミプリル(ramipril)(米国特許第4,587,258号)、およびペリンドプリル(perindopril)(米国特許第4,508,729号)などのカルボキシアルキルジペプチド、シラザプリル(米国特許第4,512,924号)およびベナザプリル(benazapril)(米国特許第4,410,520号)などのカルボキシアルキルジペプチド模倣物、およびフォシノプリル(fosinopril)(米国特許第4,337,201号)およびトランドロプリル(trandolopril)などの、ホスフィニルアルカノイルプロリンが挙げられる。
【0051】
「レニンインヒビター」とは、レニンの活性を干渉する化合物である。レニンインヒビターとしては、アミノ酸およびその誘導体、ペプチドおよびその誘導体、ならびにレニンに対する抗体が挙げられる。以下の米国特許の主題であるレニンインヒビターの例が存在する:ペプチドの尿素誘導体(米国特許第5,116,835号);非ペプチド結合により連結されたアミノ酸(米国特許第5,114,937号);ジペプチドおよびトリペプチド誘導体(米国特許第5,106,835号);アミノ酸およびその誘導体(米国特許第5,104,869号および同第5,095,119号);ジオールスルホンアミドおよびスルフィニル(米国特許第5,098,924号);修飾されたペプチド(米国特許第5,095,006号);ペプチジルβ−アミノアシルアミノジオールカルバメート(米国特許第5,089,471号);ピロールイミダゾロン(米国特許第5,075,451号);フッ化および塩化スタチン(statine)またはスタトン(statone)を含むペプチド(米国特許第5,066,643号);ペプチジルアミノジオール(米国特許第5,063,208号および同第4,845,079号);N−モルフォリノ誘導体(米国特許第5,055,466号);ペプスタチン誘導体(米国特許第4,980,283号);N−複素環式アルコール(米国特許第4,885,292号);レニンに対するモノクローナル抗体(米国特許第4,780,401号);ならびに種々の他のペプチドおよびそのアナログ(米国特許第5,071,837号、同第5,064,965号、同第5,063,207号、同第5,036,054号、同第5,036,053号、同第5,034,512号,および同第4,894,437号)。
【0052】
本発明の方法の実施においては、個体における全身性炎症のマーカーのレベルを得ることが必要である。全身性炎症のマーカーは、当業者に周知である。全身性炎症のマーカーは、C反応性タンパク質およびサイトカインからなる群より選択されることが好ましい。サイトカインは、当業者に周知であり、これらとしては、ヒトインターロイキン1〜17が挙げられる。C反応性タンパク質のレベルは、任意の当該分野で認識されている方法によって得られ得るが、本願については、高感度のアッセイが必要とされる。代表的に、そのレベルは、体液、例えば、血液、リンパ、唾液、尿などにおけるC反応性タンパク質を測定することによって決定される。そのレベルは、ELISA、イムノアッセイ、またはC反応性タンパク質の存在を決定するため他の従来技術によって決定され得る。従来の方法には、測定のために患者の体液のサンプルを商業用研究室に送ることを含む。
【0053】
本発明はまた、C反応性タンパク質のレベルと糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な予め決定された値を比較することを含む。予め決定された値は様々な形を取り得る。予め決定された値は、中央値または平均値などの単一のカットオフ値であり得る。予め決定された値は、定義された1つのグループにおける危険性が、別の定義されたグループにおける危険性の2倍であるというような、比較グループに基づいて確立され得る。予め決定された値は、ある範囲であり得、例えば、試験される集団が、均等に(または不均等に)、低危険性グループ、中間危険性グループおよび高危険性グループなどのグループに分割されるか、あるいは4区分(quadrant)(最も低い区分が最も低い危険性を有する個体であり、そして最も高い区分が、最も高い危険性を有する個体である)に分割される。
【0054】
糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な予め決定された値は、選択される特定の集団に依存し得る。例えば、見かけ上健康な、非喫煙者集団(検出可能な疾患がなく、かつ糖尿病の病歴を有さない)は、喫煙の集団または肥満症に基づいて選択された集団が有するのとは異なる、例えば、C反応性タンパク質の「標準の」範囲を有する。従って、選択される予め決定された値は、個体が当てはまるカテゴリーを考慮し得る。適切な範囲およびカテゴリーは、当業者によって単なる慣用的な実験を用いて選択され得る。
【0055】
好ましい体液は、血液であり、そして好ましいマーカーは、C反応性タンパク質である。C反応性タンパク質に関して、見かけ上健康な個体の集団に対する1つの重要なカットオフ値は、0.30mg/dL(中央値)である。C反応性タンパク質に関する別の重要なカットオフ値は、0.60mg/dL(最も高い危険性の区分)である。危険性を特徴づける際において、多くの予め決定された値が確立され得る。好ましい実施形態において、上記のカットオフ値は、先行技術(ここでは、C反応性タンパク質レベルは、重篤な糖尿病を有することが既に知られている個体または本疾患の全身性合併症に既に罹患している個体において調査される)において示されたカットオフ値よりも驚くほど低い。「糖尿病または糖尿病性合併症の診断に特異的な予め決定された値」とは、本明細書中に使用される場合、糖尿病または糖尿病性合併症に関連し得る、これまでには公知でなかった値をいい、炎症性マーカーとしてのC反応性タンパク質の場合には、約0.20mg/dL未満、および約0.25mg/dL未満の値でさえ、明確に除外する。
【0056】
C反応性タンパク質に関するアッセイのための試薬を生産する商業供給源が、現在存在する。これらとしては、Dade−Behring(Newark,DE)、Abbott Pharmaceuticals(Abbott Park、Illinois)、CalBiochem(San Diego、CA)、Kamiya Diagnsotics(Japan)、およびBehringwerke(Marburg、Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明に基づいて選択された予め決定された値に特異的であり、かつその予め決定された値に関して適切な感度を有する、新しいキットまたはアッセイを提供する。それゆえ、好ましいキットは、例えば、異なるカットオフ値、特定のカットオフ値での異なる感度、ならびにアッセイの結果に基づいて危険性を特徴付けるための説明書または他の印刷物を含むことによって、現在商業的に利用可能なキットとは異なる。
【0058】
先に議論したように、本発明は、個体が将来の糖尿病の危険性を軽減させるための薬剤または糖尿病性合併症の危険性を軽減させるための薬剤による早期処置からの利益を受ける可能性を評価するための方法を提供する。本方法は、患者の処置に対して、そしてまた新しい治療剤の臨床開発に対して、重要な示唆を有する。医師は、患者に対する予測される正味の利益に基づいて、その患者の処置に関する治療計画を選択する。正味の利益は、危険性対利益の比から導かれる。本発明は、介入による利益をより受ける可能性を有する個体の選択を可能にし、それによって、医師の治療計画の選択を補助する。このことは、予測される利益の可能性が増加した、より高い危険性プロフィールを有する薬物を用いることを含み得る。同様に、臨床研究者は、臨床試行に関して、正味の利益を得る高い可能性を有する集団を選択することを所望する。本発明は、臨床研究者がこのような個体を選択することを助け得る。ここで、臨床研究者は、臨床試行に関する入口基準を決定するために本発明を使用することが期待される。
【0059】
本発明の別の驚くべき局面においては、C反応性タンパク質および/またはIL−6が、糖尿病の将来の危険性の他の公知の予測因子とは独立の予測的な値を有するということが発見されている。それゆえ、本発明は、以前において他の予測因子を用いて作成され得た測定を単に再現することを含まない。代わりに、糖尿病の危険性を決定するためのC反応性タンパク質および/またはIL−6の使用は、グリコシル化ヘモグロビンを含む、先行技術の予測因子に対して相加的である。さらに、低レベルのグリコシル化ヘモグロビン(6.5%未満または6.0%未満)を有する見かけ上健康な個体においてでさえ、C反応性タンパク質および/またはIL−6の上昇したレベルは、糖尿病の発症を予測することが見出された。それゆえ、例えば、糖尿病の家族歴に属する個体における、C反応性タンパク質および/またはIL−6スクリーニングの使用は、経口グルコース耐性試験のグリコシル化ヘモグロビンなどの糖尿病に対する基準試験に伴うサーベイランスの頻度を増加させるために用いられ得る。女性健康調査(実施例を参照)において発見されたデータからも非常に明らかなように、将来の糖尿病の危険性は、グリコシル化ヘモグロビンの上昇したレベルの危険性に関連した危険性に少なくとも相加的である。
【0060】
本発明はまた、被験体における糖尿病または糖尿病性合併症の危険性を軽減させるために被験体を処置するための方法を含む。本方法は、被験体の糖尿病または糖尿病性合併症を発症する危険性を低下させるために有効量の、糖尿病の危険性を軽減させるための薬剤を、このような処置を必要とする被験体に対して選択(炎症性マーカーのレベルに基づいて、本発明の任意の方法に従って)および投与することを含む。薬剤は、インスリン、血糖降下剤、抗炎症性薬剤、脂質低下薬剤、カルシウムチャネルブロッカー、β−アドレナリン作用性レセプターブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター、およびアンギオテンシン系インヒビターからなる群より選択される。好ましくは、被験体は、前述の任意の薬剤による処置を必要とするいかなる症状も有さない。薬剤は、有効量において投与される。
【0061】
有効量は、医学的に望ましい結果を提供するために十分な、抗炎症性薬剤の投薬量である。有効量は、処置される特定の条件、処置される被験体の年齢および身体状態、状態の重篤度、処置の期間、現行の治療(もしあれば)の性質、投与の特定の経路、ならびに医師の知識ならびに技術内の同様の要因に伴って変化する。例えば、有効量は、個体が全身性炎症のマーカーの異常に上昇したレベルを有する程度に依存し得る。本発明の薬剤が、糖尿病または糖尿病性合併症を予防するために用いられる、つまり、本発明の薬剤が、糖尿病または糖尿病性合併症を発症する危険性を有する被験体において予防的に用いられるということは理解されるべきである。それゆえ、有効量は、糖尿病または糖尿病性合併症の発症の危険性を低下し得るか、その発症を遅らせ得るか、またはおそらく予防し得る量である。薬剤が急性の状況において用いられる場合、それが、概してこのような有害な事象に由来する1以上の医学的に望ましくない結果を予防するために用いられることが認識される。糖尿病の場合において、薬剤(例えば、血糖降下剤)は、ケトアシドーシスを制限するために用いられ得る。一般に、活性化合物の用量は、一日あたり約0.01mg/kgから1000mg/kgである。50〜500mg/kgの範囲の用量が適切であり、好ましくは、経口的に、かつ一日あたり1回または何回かの投与が期待される。より低い用量は、静脈内投与などの他の投与の形態に由来する。適用された開始用量において被験体における応答が十分でないという事象においては、より高い用量(または異なった、より局在化した送達経路による、効果的に高い用量)が、患者耐性が許容する程度において使用され得る。一日あたりの複数回の用量が、化合物の適切な全身レベルを達成することが意図される。
【0062】
投与される場合、本発明の薬学的調製物は、薬学的に受容可能な量および薬学的に受容可能な組成において適用される。このような調製物は、通常、塩、緩衝剤、保存料、適合性のキャリア、および必要に応じて他の治療剤を含み得る。医薬に用いられる場合、塩は、薬学的に受容可能であるが、薬学的に受容可能でない塩は、その薬学的に受容可能な塩を調製するために慣用的に用いられ得、そして本発明の範囲から除外されない。このような薬理学的および薬学的に受容可能な塩としては、以下の酸から調製される塩が挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。また、薬学的に受容可能な塩は、ナトリウム塩、カリウム円、またはカルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製され得る。
【0063】
本発明の薬剤は、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わされ得る。用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、本明細書中に使用される場合、ヒトに投与するのに適切な1以上の適合性の固体または液体のフィラー、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。用語「キャリア」は、活性成分が適用を促進するために組み合わされる有機成分または無機成分(天然物または合成物質)を示す。薬学的組成物の構成要素はまた、所望の薬学的効力を実質的に害する相互作用が存在しない様式で、本発明の分子と互いに混合し得る。
【0064】
薬学的組成物は、酢酸塩;クエン酸塩;ホウ酸塩;およびリン酸塩を含む適切な緩衝剤を含み得る。
【0065】
薬学的組成物はまた、必要に応じて、塩化ベンザルコニウム;クロロブタノール;パラベンおよびチメロサールなどの適切な保存料を含み得る。
【0066】
非経口投与に適切な組成物は、都合よくは、好ましくはレシピエントの血液と等張である、選択された薬剤の滅菌水性調製物を含む。この水性調製物は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用する公知の方法に従って処方され得る。滅菌性の注射可能な調製物はまた、例えば、1,3−ブタンジオールにおける溶液として、非毒性で、非経口に受容可能な希釈剤または溶媒における滅菌性の注射可能溶液または懸濁液であり得る。使用され得る、受容可能な媒体および溶媒としては、水、リンガー溶液(Ringer’s solution)、および塩化ナトリウム等張溶液がある。加えて、滅菌した不揮発性油は、旧来どおり、溶媒または懸濁媒体として使用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の不揮発性油もまた、使用され得る。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注射可能な調製物において用いられ得る。経口投与、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与などの投与に適切なキャリア処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PA.において見出され得る。
種々の投与経路が利用可能である。当然、選択される特定の様式は、選択される特定の薬物、処置される疾患の重篤度、および治療効果に必要な投薬量に依存する。本発明の方法は、一般的に言えば、医学的に受容可能な投与の任意の様式(臨床的に受容可能でない副作用を引き起こすことなく、活性化合物の効果レベルを生成する任意の様式も意味する)を用いて実施され得る。このような投与の様式は、経口経路、直腸経路、局所性経路、鼻経路、皮内経路または非経口経路を含む。用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、または注入を含む。静脈内または筋肉内経路は、特に、長期治療法および予防法に適切ではない。しかし、それらは緊急事態において好ましい。経口投与は、患者および投薬スケジュールにとっての便宜のために、予防の処置に好ましい。
【0067】
薬学的組成物は、従来どおり、単位投薬形態において提示され得、そして薬学分野において周知の任意の方法によって調製され得る。全ての方法は、薬剤を、1以上の補助的な成分を構成するキャリアと合わせる工程を含む。一般に、これらの組成物は、一様におよび密接に、抗炎症性薬剤を、液体キャリア、精巧に分割された固体キャリア、またはその両方と合わせることによって、そして次に必要であれば、製品を成形することによって、調製される。
【0068】
経口投与に適切な組成物は、カプセル、錠剤、舐剤(各々は、あらかじめ決定された量の抗炎症性薬剤を含む)などの別々の単位として提示され得る。他の組成物は、シロップ、エリキシル(elixir)またはエマルジョンなどの水性液体または非水性液体における懸濁液を含む。
【0069】
他の送達系は、時限放出性、遅延放出性または持続放出性の送達系を含み得る。これらの系は、本発明の薬剤の繰り返しの投与を回避し得、そして被験体および医師に対する利便性を増加する。多くの型の放出送達系が、利用可能であり、当業者に公知である。それらは、ポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキザレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルソエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ無水物などのポリマー基剤系を含む。薬物を含む前記ポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載される。送達系としてはまた、非ポリマー系が挙げられ、これらは、以下である:コレステロールのようなステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸またはモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドなどの中性脂肪を含む、脂質;ヒドロゲル放出系;サイラスティック系(sylastic systems);ペプチド基剤系;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を用いる圧縮錠剤;部分的に融合されたインプラント;など。特定の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(a)侵食系(ここで、本発明の薬剤は、マトリクス内にある形態で含まれる)(例えば、米国特許第4,452,775号、同第4,675,189号、および同第5,736,152号に記載される侵食系)、および(b)拡散系(ここで、活性成分が、ポリマーから制御された速度で透過する)(例えば、米国特許第3,854,480号、同第5,133,974号および同第5,407,686号に記載される拡散系)。加えて、ポンプベースのハードウェア送達系が用いられ得、そのいくらかは移植に適合される。
【0070】
長期間の持続放出性のインプラントの使用が望ましくあり得る。長期間の放出は、本明細書中に使用される場合、インプラントが、少なくとも30日間、そして好ましくは60日間、活性成分の治療的レベルを送達するように構築および配置されることを意味する。長期間の持続放出性のインプラントは、当業者に周知であり、これらには、上記の放出系のいくつかが含まれる。特定の例としては、限定されないが、米国特許第4,748,024号およびカナダ国特許第1330939号に記載される長期間の持続放出性のインプラントが挙げられる。
【0071】
本発明の薬剤は、それ自体で投与され得るか、または、本発明の他の薬剤と組み合わせて同時投与され得る。「同時投与」とは、本明細書中に使用される場合、本発明の2以上の化合物(例えば、インスリンおよび血糖降下剤)を単一の組成物中の混合物として同時に投与することをいうか、または、これらの化合物が、相加効果または相乗効果(すなわち、糖尿病または糖尿病性合併症を発症する危険性の軽減に対する)を発揮し得るように、十分に接近した時間内で連続的に投与することをいう。
【0072】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解される。しかし、これらの実施例は、単に本発明の実施形態を例示することを意図されており、本発明の範囲を限定すると解釈されることを意図されない。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
(方法)
(研究参加者)
本発明者らは、女性健康調査(WHS)(45才以上の女性の健康専門家間の心臓血管疾患および癌の一次予防における低用量のアスピリンおよびビタミンEの利益および危険性のバランスを評価する継続試験)16の参加者を含む、予測的な入れ子症例コントロール研究を設計した。WHS参加者の71%が、登録時に、全血サンプルを提供した。これらを、遠心分離し、そして実験分析まで液体窒素中で保存した。EDTA血漿サンプルを、IL−6、CRPおよびインスリンの測定のために用いた。パック入りの赤血球サンプルを、ヘモグロビンA1cの測定のために用いた。
【0074】
症例被験体は、登録時に糖尿病が報告されず、そしてその後、4年間の観察において新規に診断された糖尿病を発症しない、血液検体を提供するWHS参加者であった。候補者症例を、毎年の経過観察質問表への自己報告によって最初に同定し、その後、医師(ADP)によって行う電話インタビューによって確認した。改訂ADA診断基準17に基づいて、事例が、以下の条件の1つ以上に適合するか否かを確かめた:(1)高血糖症の1より多い典型的症状(多尿症、多渇症、多食症を伴うまたは伴わない体重減少、および視力障害)+126mg/dl([7.0mmol/1])より高い空腹時グルコースまたは200mg/dl([11.1mmol/1])より高いランダム血漿グルコースのいずれか、の存在、または(2)症状の非存在下での、2より多い上昇した血漿グルコース濃度(126mg/dl([7.0mmol/1])より高い空腹時グルコース、200mg/dl([11.1mmol/1])より高いランダムグルコース、経口グルコース耐性試験中の200mg/dl([11.1mmol/1])より高い2時間多い血漿グルコース)、または(3)インスリンまたは経口血糖降下剤の使用。一次看護医師のオフィスを、必要に応じて、文書化を支持するために連絡させた。いずれの診断基準にも適合しない候補症例は、登録時に継続中の糖尿病を有することが見出されたか、あるいは死亡したかまたはさもなくとも経過観察を行えなかった候補事例を、考慮から除外した。加えて、研究エントリー時に診断されなかった糖尿病に起因する誤分類の傾向を減少させるために、初年の経過観察において診断された個体(n=69)を除外した。
【0075】
確認された糖尿病を発症する各女性について、2つのコントロール被験体を、その症例が彼女の事象を報告した時点で自己報告された真性糖尿病を有さなかった被験体間で、無作為に選択した。コントロールを、年齢(1年以内)および提出された血液検体の空腹時状態によって合わせた。空腹時を、サンプル収集の前の最後の食事から10時間以上として定義した。実験調査を受けている研究群は、288人の確認された症例および576人の適合コントロールを含んだ。
【0076】
中年の米国人間の診断されていない糖尿病の高い罹患率に起因し、そして本研究が将来の糖尿病の決定因子としての炎症の役割を評価するように設計されたので、本発明者らは、本発明者らのサンプルを、6.5%(臨床実務において一般に用いられている参照値)より低い基線ヘモグロビンA1cを有する個体にさらに限定した。目的の基線の臨床的共分散に関する欠測値を有する参加者もまた、分析から排除した(ボディマス指数、症例の3%およびコントロールの1.5%;高血圧症の病歴、症例の0.5%およびコントロールの0.7%;高脂質血症の病歴、コントロールの0.5%;およびホルモン置換治療の使用、コントロールの0.3%)。それゆえ、一次サンプルは、コホートへのエントリー時に6.5%未満のHbA1cを有する、188の症例および362の年齢低号コントロールを含んだ。空腹時検体を提供する女性のサブグループにおいて、本発明者らはまた、潜在的なインスリン抵抗性の指標として特異的インスリンを測定した。
【0077】
(手順)
基線血漿サンプルを、解凍し、そしてIL−6、CRPおよび特異的インスリン(本明細書中以後「インスリン」と呼ぶ)についてアッセイした。HbAlcを、免疫アッセイ(Hitachi 911 Analyzer)によって測定した。インターロイキン−6は、市販のELISA(R&D Systems、Minneapolis、MN)によって測定した。C反応性タンパク質を、BN II analyzer(Dade Behring,Newark,DE)18による高感度ラテックス増強免疫比濁アッセイを介して測定した。インスリンとその前駆体との間で0.2%未満の交差反応性を有する二重抗体系(Linco Research,St.Louis,MO)を使用して、血漿インスリンの特異的濃度を測定した。加えて、インスリンレベルは溶血存在下で誤って低下され得るので19、50mg/dl(分光光度測定法、Hitachi 911 Analyzer)未満の遊離ヘモグロビン値を有する検体を、空腹時サブグループ研究から排除した。サンプルを、系統的偏りおよびアッセイ間変動を減少させるために、ランダムに並べた3つ組みの症例コントロールで分析した。
【0078】
(統計的分析)
本発明者らは、スチューデントt検定を使用して、一次研究集団を含む症例被験体およびコントロール被験体間の平均における差異およびそれらの間の割合における差異についてのχ統計量を評価した。IL−6、CRPおよびインスリンの分布に歪みがあるので、中央値における差異を、ウィルコクソン順位和検定によって試験した。サンプルを、コントロールの分布に基づいて4区分に分割した後、線形トレンドの分析を使用して、各生体マーカーのレベルと将来の糖尿病の危険性の増加間の関係を評価した。4区分に特異的な危険性評価を、ボディマス指数(BMI、kg/mで定義する)、一等親血縁者における糖尿病の家族歴、喫煙、身体活動度、アルコール消費、およびホルモン置換治療の使用に対して調整する、条件的ロジスティック回帰から得た。連続変数およびカテゴリー的変数を、条件的ロジスティック回帰モデルの比較を介する適合度に従って特定した。詳細には、BMIを、連続線形目盛上で制御し、そしてインスリンを、二次形式で表した。
【0079】
基線での継続中の糖尿病の排除について6.0%のHbAlc切点を使用して、感度分析を、本発明者らのモデルの正確性(robustness)を確認するために行った。加えて、空腹時インスリンにおける基線の異常が、原因経路における中間因子とみなされ得るが、本発明者らは、研究下の炎症性マーカーの残存する予測的役割を評価するために、この代謝パラメーターについて二次分析で調整した。スピアマン偏相関係数を、年齢およびBMIを制御しながら、インスリンレベルに対して、および他の連続代謝変数に対して、各生体マーカーについて計算した。
【0080】
本発明者らは、各バイオマーカーについて75番目の百分位数切点に基づいて一次サンプルを4つのグループに分割した後、条件的ロジスティック回帰を使用して、糖尿病の予測におけるIL−6およびCRPの共同的役割を試験した。最後に、肥満個体および非肥満個体間の危険相関性の適合性を評価するために、研究サンプルを、29kg/mのBMI切点(本発明者らの集団についてBMIの上位三分位数)ならびに炎症性マーカーの下位、中位および上位三分位数に基づいて、6つのグループに分割した。
【0081】
(結果)
糖尿病を有すると実質的に診断された女性(症例被験体)および糖尿病を依然として有していない女性(コントロール被験体)の基線特性を、表1に示す。予測されたように、実質的に糖尿病を発症した女性は、より肥満症であり、一等親血縁者において糖尿病の家族歴を有する可能性が高く、高血圧症または高脂質血症の病歴を有する可能性が高く、さほど頻繁には運動せず、そしてアルコールをさほど消費していなかった。民族性、喫煙、またはホルモン置換治療の使用において、統計的に有意な差はなかった。
【0082】
IL−6およびCRPの基線レベルは、コントロールよりも症例間で有意に高かった(表1)。さらに、両方の炎症性マーカーの上昇するレベルは、将来の糖尿病を発症するより高い危険性に関連し;年齢適合分析において、IL−6の漸増四分位についての発症するDMの相対的危険性は、それぞれ、1.0、2.5、4.1および7.5(P−傾向<0.001)であり、一方、CPRの漸増四分位についての相対的危険性は、それぞれ、1.0、2.2、8.7、および15.7(P−傾向<0.001)であった(表2および3)。BMI調整は、これらの関係を顕著に減じたが、IL−6(P傾向=0.008)およびCRP(P−傾向<0.001)の持続性の陽性効果が観察された。実際、CRPは、BMI、糖尿病の家族歴、喫煙、身体活動性、アルコール消費、およびホルモン置換治療の使用を含む、完全調整モデルにおいて、有意な予測因子のままであった。全体として、将来の糖尿病についての相対的危険性は、基線IL−6における1四分位増加あたり28%増加し(95%CI、−1〜65%;P=0.066)、CRPにおける1四分位増加あたり64%増加した(95%CI、22〜218%;P=0.001)。同様の結果が、基線において6.0%以下のHbA1cを有する個体に限定した分析において得られた。例えば、このサブセットにおいて、CRPの四分位を跨ぐ、発症する糖尿病の完全に調整した相対的危険性は、それぞれ、1.0、1.8、3.8および4.9(P−傾向=0.015)であった。
【0083】
空腹時検体を提供する参加者のサブグループにおいて、中央値インスリンレベルもまた、コントロールと比較して症例被験体において有意に上昇した(77.5対39.3pmol/L、P<0.001)。従って、本発明者らは、IL−6、CRPと、DMの将来の危険性との間の相関性が、空腹時インスリンと独立しているか否かを決定することを試みた。表4に示されるように、基線空腹時インスリンに対する調整は、IL−6の効果をさらに減じた。しかし、CRPに対する危険相関性は、この因子に対する適合後に、実質的に変化しなかった。加えて、このサブグループにおいて、炎症性マーカーと空腹時インスリンおよびBMIの両方との間のスピアマン偏相関係数は、統計的に有意であった(表5)。CRPは、IL−6よりも、試験された各パラメーターとより強く相関した。ヘモグロビンA1cは、いずれの生体マーカーとも強く関連しなかった。
【0084】
潜在的な共同効果を評価するために、本発明者らは、元のサンプルをIL−6およびCRPに対するコントロール分布の75番目の百分位数に基づく4つのグループに分割した後、真性糖尿病の相対的危険性を算定した(図1)。示されるように、II型糖尿病の相対的危険性は、高いIL−6レベルおよびCRPレベルの両方を有する女性間で最も高く、このことは、高いIL−6または高いCRPのいずれか単独について観察された効果以上の相乗効果を示唆する。
【0085】
ボディマス指数による効果修正を研究するために、本発明者らは、29kg/m未満または29kg/m以上のBMIを有する女性間の発症する糖尿病の相対的危険性を決定した(図2)。両方の階層において、IL−6およびCRPについてのより高い基線血漿レベルは、発症する疾患の危険性の増加に関連した。特に、肥満症の女性間でさえ、上昇CRPレベルは、危険性における増強された段階的増加を与えた。
【0086】
(考察)
見かけ上健康な中年女性のこの予測的研究において、全身性炎症の2つのマーカーである、C反応性タンパク質およびインターロイキン−6は、将来の糖尿病に対する危険性の予測因子(predictor)であることが見出された。詳細には、CRPは、ボディマス指数、臨床的な危険因子、および空腹時インスリンレベルに対する調整後、強力な独立した予測因子である。並行する関連性は、IL−6について見出されたが、多変量調整後のその程度およびボーダーラインの統計的有意性は低かった。これらの知見は、6%以下のHbA1cを有する個体に限定した感度分析において確かめられ、そして非肥満症個体および肥満症個体の両方において、一貫して示された。
【0087】
本発明者らの認識まで、基線CRPおよびIL−6を発症する真性糖尿病と関連付けるのに利用可能な、先行の疫学的証拠は存在しなかった。本発明者らのデータはまた、他の炎症性マーカー(例えば、白血球数、フィブリノーゲン、および低血清アルブミン20)および炎症性に関連する止血変数(例えば、第VIII因子およびフォン・ビルブラント因子21)を、糖尿病の将来の危険性に関連させた先行技術に拡がるが、これらの後者の研究では、危険相関性は、肥満症に対する調整後に大いに減少した。
【0088】
現在の予測的データは、糖尿病発症における炎症の役割を支持し、そしてII型糖尿病が、身体の先天性免疫系によって惹起される継続中のサイトカイン媒介急性相応答の徴候であり得るという、PickupおよびCrookによって提唱された以前の仮説に一致する。現在の知見に対する特定の関連性のうち、C反応性タンパク質は、自然の宿主防御における基本的役割を示唆するいくつかの特徴を示すと考えられる。特に、CPRは、先天性免疫におけるパターン認識に関連するペントラキシンファミリーのオリゴマータンパク質のメンバーである22〜24。報告されているCRPの免疫調節機能としては、白血球反応性の増強、補体結合、血小板活性の調節、および活性炎症部位からの細胞細片のクリアランスが挙げられる22、25、26。組み合わせにおいて、急性期刺激中のCPR誘導の程度および迅速性ならびに先天性免疫反応における協調的役割は、宿主防御におけるC反応性タンパク質の初期関与を示唆する25。II型糖尿病の発症に特に関連して、急性期応答の内因性刺激(例えば、肥満症、遺伝的プログラミング、または他の構成的因子)は、慢性炎症、最終的なインスリン抵抗性および損傷膵臓β細胞機能を促進すると仮定される。本発明者らのデータは、病因的関連性を支持するが、この時点では、明確な気候は、依然として推測的であり、そしてさらなる研究を必要とする。
【0089】
本発明者らの結果に対するいくつか代替的な(そして、おそらく協調的な)説明が、さらなる議論を保証する。第一に、糖尿病のこの研究において観察された関連性は、症例被験体における潜在的なアテローム性動脈硬化症または内皮機能不全を反映する可能性があるl3〜15、27〜29。しかし、これに関して、本発明者らの研究集団間の4年間の心臓血管事象率が、IL−6またはCRPのいずれか最も高い基線上昇を有する個体間でさえ、低かった(発作の発症、心筋梗塞、冠動脈造影またはバイパス手術を有する、1症例および1コントロール)ことは価値ある注目点である。
【0090】
上昇した炎症性マーカー、インスリン抵抗性、と初期の糖尿病との間の関連性についての別の説明は、肝性急性相タンパク質生合成におけるインスリンの効果に関連する。インスリンは、いくつかの炎症性タンパク質のサイトカインによる誘導を阻害することが示されている30、31。従って、おそらく、インスリン抵抗性は、CRP産生の下流の増強を導き得る。実際、本分析において、CRPは、空腹時因する因に有意に相関することが見出されたが、この相関の程度は、弱かった(スピアマン偏相関係数、0.19;P<0.001)。さらに、空腹時インスリンについてのコントロールが主要関連性に対して最小限の影響を有するという本発明者の知見は、一変量の関連性が存在するが、基礎となるインスリン耐性のこのマーカーは、CRP上昇に起因し得る危険性を説明しないことを示唆する。
【0091】
肥満症媒介サイトカイン産生は、内因性のCPR上昇に対する別の重要な機構である。肝性のCRP合成に関与する主要サイトカインは、インターロイキン−6であり、これはまた、内臓脂肪および皮下脂肪の貯蔵の両方から放出される、重要な脂肪細胞シグナル伝達分子である。実際、インビボの全身性のIL−6の約25%は、皮下の脂肪組織に由来し32、脂肪細胞グルコースならびに死病代謝および体重を変更すると考えられている33〜37。さらに、大網の脂肪細胞は、皮下貯蔵から誘導される細胞より、インビトロにて、2〜3倍多くのIL−6を分泌することが示され38、大網脂肪からの静脈ドレナージが、門脈系への直接のアクセスを提供し、腹部肥満症は、インスリン抵抗性の強く関連するという、興味深い知見である39〜42。本分析において、ボディマス指数を、肥満症の尺度として使用し、予測されたように、有意な減少された相対的危険性は、IL−6およびCRPの両方について評価した。しかし、にもかかわらず、CRPに起因する非常に有意な残存する効果が、この因子の調整する多変量モデルにおいて観察された。さらに、段階的な相対的危険性の購買が、肥満症個体間でさえ明らかであった(図2)。
【0092】
本発明者らのコホートは、主に健康な中年女性からなり、そして、それゆえ、本発明者らの結果は、II型糖尿病に対する危険性があり得る、他の年齢群または男性に対して一般化されないかもしれない。加えて、本発明者らは、懸念旧エントリー時に炎症生体マーカーを測定し、従って、これらの生体マーカーの血漿レベルにおける変化の効果を経時的に評価し得なかった。しかし、いくつかの縦断的分析は、測定が急性感染の2週間以内になされない限り、CRPのレベルが、長期間の結果観察中で安定であることを見出している43、44
【0093】
結論として、発症する糖尿病の2つの炎症マーカーのこの予測的効果において、CRPが、強力な危険性決定因子であることを見出した。インターロイキン−6もまた、危険性のある個体間で上昇されたが、これらの関連性は、多変量分析において減少された。本発明者らの疫学的観察は、出現している実験的証拠と組み合わせて、II型糖尿病の病理における炎症の役割を支持する。本発明者らのデータはまた、CRPなどの炎症性マーカーが、この疾患の危険性の初期検出のための付加的な方法を提供し得る可能性を提起する。
【0094】
【化2】




【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
【表5】

(実施例2)
C反応性タンパク質(CRP)およびインターロイキン−6(IL−6)の上昇したレベルが、非糖尿病の女性間の空腹時インスリンレベルに独立して関連するか否かを決定するために、第2の研究を行った。この研究において、45歳以上の349人の健康な非糖尿病性女性が、空腹時血液検体を提供し、そして彼女らは、初期生体マーカー評価から4年間の期間中、臨床的に診断されたII型糖尿病を有さなかった。
【0100】
(結果)
空腹時インスリンは、ボディマス指数(BMI)(r=0.53、P<0.001)、CRP(r=0.38、P<0.001)およびIL−6(r=0.33、P<0.001)と強く関連した。空腹時インスリンの他の臨床的相関性としては、身体活動性、アルコール消費、およびホルモン置換治療の使用のレベルが含まれた。多変量の線形回帰モデルにおいて、BMIおよびCRPのみが、対数正規化した空腹時インスリンの有意な独立した予測因子であった。全体として、最終モデルは、対数インスリンレベルにおける32%の分散を説明した。多変量ロジスティック回帰において、上昇した空腹時インスリン(51.6pmol/L以上)に対する完全に調整されたオッズ比(OR)は、BMI、CRP、およびIL−6の三分位の増加と共に増加し、その結果、各パラメーターの最も高い三分位対最も低い三分位におけるORは、それぞれ、9.0(95%CI 4.4〜18.7)、4.4(95%CI 1.9〜10.1)、および2.0(95%CI 0.9〜4.2)であった。さらに、CRPの上昇レベルは、痩せ型の女性および過体重の女性の両方における上昇した空腹時インスリンに関するオッズにおける段階的勾配に関連した。従って、C反応性タンパク質は、非糖尿病女性における空腹時高インスリン血症に独立して関連する。
【0101】
本明細書中に公開される全ての引用文献は、それら全体が参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−19851(P2010−19851A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229080(P2009−229080)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【分割の表示】特願2002−549969(P2002−549969)の分割
【原出願日】平成13年12月14日(2001.12.14)
【出願人】(504412945)ザ ブライハム アンド ウイメンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (54)
【Fターム(参考)】