説明

真空コンデンサ

【課題】真空コンデンサが適用される高周波機器の高周波電流,該真空コンデンサの真空容器内の引張力を考慮し、該真空コンデンサの小型化を図る。
【解決手段】真空容器1内に配置された固定電極4と、固定電極4との間に静電容量を形成するように配置された可動電極5と、その可動電極5の背面より真空容器1外に延びる可動ロッド6と、真空容器1内の通電路の一部であって真空室と大気室とを隔離するベローズ9と、により真空コンデンサを構成する。前記の可動ロッド6と該可動ロッド6の軸受部材6aとの間には、可動ロッドに対して付勢する手段であって、真空容器1内の引張力に対抗した方向へ付勢する付勢手段11が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空コンデンサであって、例えば半導体設備の高周波電源、大電力発信回路等の高周波機器におけるインピーダンス調整に使用される真空コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般的な半導体設備の高周波電源や大電力発信回路等の高周波機器において、インピーダンス調整のために種々の真空コンデンサ(例えば、特許文献1)が用いられてきた。
【0003】
図4は、一般的な真空コンデンサ(可変形真空コンデンサ)の一例を示す概略説明図である。図4において、符号1は高耐力真空誘電体を充填するための真空容器を示すものであり、例えば少なくとも一部が絶縁性を有する筒状体2aの両端側に対し金属性(例えば、銅製)のフランジ2b,2cが設けられた真空容器本体2と、その真空容器本体2の両端側を閉塞するように設けられ外部端子としての機能を兼ねた金属性の端板3a,3b(以下、後述の固定電極側のものを固定側導体、他方のものを可動側導体と称する)と、から構成される。
【0004】
符号4は、内径が異なる複数の略円筒状の電極部材を同心円状に一定間隔を隔てて構成され、固定側導体3aの真空容器1内側に設けられた固定電極を示すものである。符号5は、固定電極4と同様に内径が異なる複数の略円筒状の電極部材を同心円状に一定間隔を隔てて構成され、それら各電極部材が固定電極4と非接触状態で該固定電極4に挿出入(固定電極4の各電極部材間に挿出入して互いに交叉)できるように真空容器1内側に設けられた可動電極を示すものである。この可動電極5は、真空容器1の軸方向に可動(固定電極4に対する挿出入の程度を調整できるように可動)する支持部材(以下、可動支持部材と称する)5aに対して設けられる。
【0005】
符号6は、可動支持部材5aの背面側(固定電極4が設けられていない面側)から真空容器1の軸方向に延設(図4中では真空容器1の可動側導体3b側を突出するように延設)された可動ロッド(図4中では中空形状の可動ロッド)を示すものであり、例えば真空容器1に設けられた(図4中では可動側導体3bの略中央部に固設された)軸受部材6aを介して、摺動自在(可動ロッド6の外周面が軸受部材6aを摺動自在(真空容器1の軸方向に摺動自在))に支持される。
【0006】
符号7は、可動ロッド6を軸受部材6aによって真空容器1の軸方向に案内されながら移動し、真空コンデンサにおける静電容量を調整して絶縁操作するためのロッド(以下、絶縁操作ロッドと称する)を示すものであり、その一端側(図4中では雄螺子部7bが形成された側)は可動ロッド6の一端側に螺合(図4中では絶縁操作ロッド7に形成された雄螺子部7cが、可動ロッドの一端側内壁に形成された雌螺子部6bに螺合)され、他端側(図4中では例えば絶縁材料から成る頭部7aが形成された側)は真空コンデンサの駆動源(モータ等)が接合される。また、絶縁操作ロッド7は、例えば真空容器1に設けられた(図4中では可動側導体3bから突出して軸受部材6aを覆うように固設された)支持体(図4中では螺子受け部8aと回転トルクを低減するためのスラストベアリング8bとから成る支持体;以下、操作ロッド支持体と称する)8により回動自在に支持される。
【0007】
符号9は、真空コンデンサの通電路の一部として、軟質金属製で例えば蛇腹状のベローズを示すものであり、真空容器1内における固定電極4,可動電極5,ベローズ9で囲まれた空間(以下、真空室と称する)9aを気密(真空状態にできるように気密)に保持しながら可動電極5,可動支持部材5a,可動ロッド6が真空容器1の軸方向へ移動できるように構成され、その一端側の縁は軸受部材6aにおける可動側導体3bの内壁側に接合され、他端側の縁は可動支持部材5aに接合される。真空容器1内におけるベローズ9の可動ロッド6側には、大気圧状態の空間(以下、大気室と称する)9bが形成される。
【0008】
なお、ベローズ9においては種々の形状のものが知られており、例えばベローズ9の他端側の縁を可動ロッド6の表面に接合する構造や、該ベローズ9自体を二重にした構造(例えば、ステンレス製ベローズと銅製ベローズとを組み合わせた構造)のものもある。
【0009】
以上示したように構成された真空コンデンサにおいて、モータ等の駆動源により絶縁操作ロッド7を回動することにより、その回動に伴って可動ロッド6が真空容器1の軸方向へ移動し、固定電極4と可動電極5との交叉面積が変化する。これにより、両電極4,5にそれぞれ異なる極性の電圧が印加された際には、該両電極4,5間に生じる静電容量の値が連続的に加減され、インピーダンス調整が行われるものとされている。このような真空コンデンサを用いた場合の高周波機器に対する高周波電流に関しては、固定側導体3aからベローズ9および対向電極間(固定電極4と可動電極5との間)の静電容量を介し、可動側導体3bより流れる。
【0010】
近年、高周波機器に係る負荷は徐々に増大し、その高周波機器に流れる高周波電流が増大しているため、該高周波機器の真空コンデンサには大型のものが適用される傾向にある。
【特許文献1】特開平7―78729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図4に示すような構成の真空コンデンサの場合、真空容器内に存在する真空圧(図4中では真空室9aの真空圧)により可動ロッドに対して引張力(該可動ロッドを真空容器内方向(図4中では矢印Yで示す方向)へ引き込む力)が作用する。
【0012】
このため、可動ロッドを移動するための駆動源には、前記の引張力を考慮したもの、例えば固定電極と可動電極との間の面積(図4中では、固定電極4と可動電極5との交叉面積)を減少させてインピーダンス調整する場合において前記の引張力に対抗して該可動ロッドを移動できるもの(十分大きな駆動エネルギーを有する駆動源)を適用する必要がある。
【0013】
したがって、真空コンデンサは、単に高周波機器の高周波電流に応じたものではなく、十分大きな駆動エネルギーを有する駆動源が構成されたものを適用する必要があるため、該真空コンデンサの形状が更に大型化する恐れがあった。
【0014】
本発明は前記課題に基づいてなされたものであり、真空コンデンサが適用される高周波機器の高周波電流,該真空コンデンサの真空容器内の引張力を考慮し、小型化を図ることが可能な真空コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記課題の解決を図るために、請求項1記載の発明は、少なくとも一部が絶縁性を有する筒状体の両端をそれぞれ金属部材により閉塞して形成された真空容器と、前記の真空容器内の一方の金属部材側に配置された固定電極と、前記真空容器内の他方の金属部材側で固定電極との間に静電容量を形成するように配置された可動電極と、前記可動電極の背面側から真空容器外方向に延設された可動ロッドと、前記真空容器内の通電路の一部であって、固定電極および可動電極側の真空室と可動ロッド側の大気室とを隔離するベローズと、前記可動電極と固定電極との間の静電容量を変化させるように可動ロッドを移動するための駆動源と、前記可動ロッドに対し真空容器内の引張力に対抗した方向へ付勢する付勢手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の発明において、前記付勢手段は、真空コンデンサの開状態から閉状態に近づくに連れて付勢力が大きくなる弾性手段から成ることを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記弾性手段は、前記の可動ロッドと、前記の真空容器に設けられ該可動ロッドを摺動自在に支持する軸受部材と、の間に設け(例えば、後述の図1,2に示す固定台座部材,可動台座部材を介して設け)たことを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の発明は、前記請求項2または3記載の発明において、前記付勢手段は、前記の弾性手段を2つ以上構成したことを特徴とする。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記の2つ以上の弾性手段は、可動ロッドの外周側に対し付勢力の小さい順に配置したことを特徴とする。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項4または5記載の発明において、前記の付勢手段の付勢力は、それぞれベローズの弾性力以下であることを特徴とする。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項2〜6記載の発明において、前記の弾性手段は、金属弾性部材またはゴム部材から成ることを特徴とする。
【0022】
請求項1記載の発明のような構成によれば、可動ロッドに対し引張力に対抗する方向に付勢力が作用するため、該引張力に対抗する方向へ可動ロッドを移動する際に要する力が減少する。
【0023】
請求項2記載の発明のような構成によれば、真空コンデンサの動作状態に応じて、可動ロッドに対して付勢することができる。
【0024】
請求項3記載の発明のような構成によれば、可動ロッドに起こり得る揺動が軸受部材により抑制されると共に、引張力に対抗する方向へ可動ロッドを移動する際に要する力が低減する。
【0025】
請求項4記載の発明のような構成によれば、種々の弾性手段によって、引張力に対抗する方向へ可動ロッドを移動する際に要する力が低減する。
【0026】
請求項5記載の発明のような構成によれば、弾性手段の劣化を抑制することができる。
【0027】
請求項6記載の発明のような構成によれば、該引張力に十分対抗し得る付勢手段を構成できる。
【0028】
請求項7記載の発明のような構成によれば、金属弾性部材またはゴム部材によって、引張力に対抗する方向へ可動ロッドを移動する際に要する力が低減する。
【発明の効果】
【0029】
以上示したように本発明によれば、真空コンデンサが適用される高周波機器の高周波電流,該真空コンデンサの真空容器内の引張力を考慮して、該真空コンデンサの小型化を図ることが可能になる。これにより、例えば半導体設備の高周波電源、大電力発信回路等の高周波機器におけるインピーダンス調整に係る技術分野において貢献することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に実施の形態における真空コンデンサを図面等に基づいて詳細に説明する。
【0031】
本実施の形態では、真空容器内に配置された固定電極と、前記固定電極との間に静電容量を形成するように配置された可動電極と、その可動電極の背面より真空容器外に延びる可動ロッドと、真空容器内の通電路の一部で真空室と大気室とを隔離するベローズと、を備えた真空コンデンサであって、前記の真空容器内の引張力に対抗し得るように付勢することが可能な付勢手段を該真空容器に構成することを特徴とする。
【0032】
これにより、真空コンデンサの真空容器内に存在する引張力が可動ロッドに作用していても、その可動ロッドを該引張力に対抗した方向へ移動する際に要する力(モータ等の駆動源の場合は駆動力)は、付勢手段の付勢力の大きさに応じて小さくなる(すなわち、引張力の少なくとも一部が、付勢力によって相殺される)。このため、真空コンデンサの駆動源には、例えば該真空コンデンサが適用される高周波機器の高周波電流等を考慮した程度のもので十分であり、真空コンデンサの小型化(例えば、従来のように真空容器内の引張力に対抗し得る付勢手段等を構成していないもの(例えば、大型の駆動源を用いたもの)と比較して小型化)を図ることが可能となる。
【0033】
前記の付勢手段には、真空容器内の引張力に対抗し得るように付勢することが可能な構造であれば種々のもの(例えば、金属弾性部材(後述の構成例ではコイル状のバネ等)やゴム等から成る弾性手段)を適用することができる。
【0034】
[本実施の形態の構成例および動作例]
図1(閉状態),2(開状態)は、本実施の形態における真空コンデンサの構成例および該構成の動作例を説明するための概略図である。なお、図4に示したものと同様なものについては、同一符号等を用いて詳細な説明を適宜省略する。
【0035】
図1,2の真空容器1においては、図4に示したようなフランジ2b,2cを用いずに、絶縁性を有する筒状体の真空容器本体2と、その真空容器本体2の両端側を封止(閉塞)するように設けられ外部端子としての機能を兼ねた金属性の固定導体3a,封止端板3bと、によって構成されている。
【0036】
真空容器1の軸方向(図1,2中ではY1,Y2方向)に対して可動する可動ロッド6は、可動支持部材5aおよび可動側導体3bの各中央部を貫通するように延設される。可動ロッド6の可動側導体3b側には、絶縁操作ロッド(図1,2中では中空形状の絶縁操作ロッド)7の一端側内周部に形成された雌螺子部7dに対して螺合するための、雄螺子部6dが形成される。
【0037】
可動ロッド6の可動側導体3b側の先端部には、駆動源であるモータ10の回転軸10aが接続され、そのモータ10と高周波機器(図示省略)との間には制御手段(図示省略)が接続される。この制御手段においては、高周波機器のインピーダンス調整を必要とする際に、真空コンデンサの投入指令(静電容量を増加させる投入指令)や解放指令(静電容量を減少させる解放指令)が設定され、モータ10に対して駆動指令信号(投入指令や解放指令に応じた駆動指令信号)が入力される。
【0038】
なお、モータ10と可動ロッド6とを直接接続することにより、絶縁操作ロッド7等を適宜省略しても良く、真空コンデンサの部品数を少なくすることができる。また、モータ10を用いなくとも、例えば油圧,手動等による駆動手段を用いて絶縁操作ロッド7の回転等を行っても良い。
【0039】
可動ロッド6の可動支持部材5a側の端部には、真空室9aを気密にするための封止部材6cが設けられる。なお、封止部材6cは、可動支持部材5aと一体成形された構成(すなわち、図4に示すような可動支持部材5aの背面側から可動ロッド6を延設し、封止部材6cを省略した構成)であっても良く、真空コンデンサの部品数を少なくすることができる。
【0040】
ベローズ9は、柔軟性(および弾性),導電性を有する非磁性材料から成るもの(例えば、真空高温蝋付けした際に非磁性を惹起できるSUS308,SUS310S等から成る部材)が用いられ、該ベローズ9の両端部がそれぞれ可動支持部材5a,可動側導体3bに対して、例えば真空高温蝋付け等の方法によって接合される。このベローズ9には、真空室9aによる引張力が作用し、その引張力に応じて弾性変形、すなわち弾性力が生じる。
【0041】
なお、ベローズ9によって可動電極5と可動側導体3bとを接続し通電路が形成され、真空室9a,大気室9bが形成されている構成であれば、可動支持部材5aは省略しても良く、真空コンデンサの部品数を少なくすることができる。また、前記のように、ベローズ9の両端部がそれぞれ可動支持部材5a,可動側導体3bに対して接続されていることにより、図4に示した真空コンデンサのようにベローズ9の一端側の縁が軸受部材6aに接合された構造と比較して、真空室9aを容易に形成することができる。
【0042】
符号11は、ベローズ9の内周側で可動ロッド6の外周側を巻回するように配置されたコイル状の部材であって、真空容器1内の引張力に対抗し得るように該可動ロッド6に対して付勢することが可能な弾性手段11(図1,2中では、詳細を後述する外周側弾性手段11a、内周側弾性手段11b)を示すものである。この弾性手段11は、真空容器1に対して支持された台座部材(以下、固定台座部材と称する)12aと、可動ロッド6に対して支持された台座部材(以下、可動台座部材と称する)12bと、の間に挟持されている。
【0043】
固定台座部材12aは、可動側導体3bに固設(図1,2中では螺子部材13aによって固設)された支持部材13と、弾性手段11外周側を覆うように支持部材13に支持された略筒状の被覆部材14(図1,2中では2つの被覆部材14a,14b)と、を介して真空容器1に支持されている。また、固定台座部材12aによって、可動ロッド6用の軸受部材6aが支持されている。可動台座部材12bにおいては、可動ロッド6外周面に形成(図1中では軸受部材6aと雄螺子部6dとの間に形成)された段差部6eに対して、該可動台座部材12bの内周側が係合し、締結部材6fによって締結し固定されている。
【0044】
前記のように、可動ロッド6の外周側およびベローズ9の内周側に弾性手段11,固定台座部材12a,可動台座部材12b等を構成したことにより、ベローズ9の径を大きく確保でき、大きな高周波電流を流すことが可能となる。また、可動ロッド6の略中央部を軸受部材6aによって支持すると共に、モータ10側を操作ロッド支持体8によって支持(図1,2中では絶縁操作ロッド7を介して支持)、すなわち該可動ロッド6を2箇所にて移動自在に支持することができる。このため、可動ロッド6に起こり得る揺動を抑制でき、該可動ロッド6を設定(解放指令,投入指令)どおりに移動させることができるため、固定電極4,可動電極5間の静電容量を精度良く調整することができる。なお、前記のように可動ロッド6を支持する箇所は、2以上の複数であっても良い。
【0045】
前記の可動台座部材12bは可動ロッド6と共に移動し、この移動によって弾性手段11が弾性変形する。すなわち、固定台座部材12aと可動台座部材12bとの間の距離(以下、台座間距離と称する)が短くなると弾性部材11にかかる弾性力(引張力に対抗する付勢力)は大きくなり、その台座間距離が長くなると該弾性力は小さくなる。なお、前記の固定台座部材12aと軸受部材6aとを一体成形したり、被覆部材14を真空容器1に対して直接支持した構成であっても良く、真空コンデンサの部品数を少なくすることができる。
【0046】
符号15は、支持部材13を介して真空容器1に固定された蓋部材を示すものであり、その蓋部材15中央部に穿設された貫通孔15aに対して、操作ロッド支持体8が支持されている。なお、貫通孔15aの内径(図1,2中では、支持部材13、被覆部材14a,14b、貫通孔15aの内径)よりも可動台座部材12bの外径が小さい場合には、可動台座部材12bを該貫通孔15aから真空容器1内へ導入でき、その可動台座部材12bの可動ロッド6に対する取付けが容易になる。
【0047】
符号16は、可動ロッド6において真空容器1の軸方向に対する移動を制限(図1,2中では可動台座部材12bを介して制限)するための手段(以下、移動制限手段と称する)を示すものであり、例えば操作ロッド支持体8に設けられる。
【0048】
次に、以上示したように構成された真空コンデンサの動作例を説明する。まず、図1に示すように開状態の真空コンデンサにおいて、図2に示すように閉状態に移行する場合には、制御手段により真空コンデンサの投入指令が設定され、モータ10に対して駆動指令信号が出力される。この駆動指令信号に応じて駆動するモータ10により、回転軸10aを介して絶縁操作ロッド7が回動し、絶縁操作ロッド7に螺合されている可動ロッド6がY1方向に移動する。また、可動ロッド6のY1方向の移動と共に、該可動ロッド6に支持されている可動台座部材12bがY1方向に移動(すなわち、台座間距離が縮小)し、固定台座部材12aと可動台座部材12bとの間の弾性手段11が圧縮され、弾性変形する。
【0049】
そして、固定電極4,可動電極5間の静電容量が目的とする値に至るまで(いわゆる投入位置に至るまで)、可動ロッド6がY1方向に対して所定量移動した後、モータ10の駆動が停止される。この際、前記のように弾性変形した弾性手段11の弾性力は、可動ロッド6に作用する付勢力としてモータ10により保持(弾性エネルギーとして保持)される。前記の付勢力は、弾性手段の弾性変形の大きさに応じて大きくなる。
【0050】
一方、図2に示すように閉状態の真空コンデンサにおいて、図1に示すように開状態に移行する場合には、制御手段により真空コンデンサの解放指令が設定され、モータ10に対して駆動指令信号が出力される。この駆動指令信号に応じて駆動するモータ10により、回転軸10aを介して絶縁操作ロッド7が回動し、絶縁操作ロッド7に螺合されている可動ロッド6がY2方向に移動する。また、可動ロッド6のY2方向の移動と共に、該可動ロッド6に支持されている可動台座部材12bがY2方向に移動(すなわち、台座間距離が拡大)し、弾性手段11の弾性変形が解放される。
【0051】
そして、固定電極4,可動電極5間の静電容量が目的とする値に至るまで(いわゆる解放位置に至るまで)、可動ロッド6がY2方向に対して所定量移動した後、モータ10の駆動が停止される。この際、モータ10による可動ロッド6の移動方向と同一方向に対して、前記の保持されていた付勢力が作用し、その付勢力は可動ロッド6の移動に応じて変化する(例えば、弾性回復に応じて小さくなる)。前記の可動ロッド6の移動可能範囲においては、移動制限手段16によって制限される。
【0052】
以上示した図1,図2のような構成の真空コンデンサによれば、真空圧による引張力がY1方向に作用している可動ロッド6を該Y1方向に移動し、開状態の真空コンデンサを閉状態に移行する場合、弾性手段11を弾性変形することにより、可動ロッド6に対する付勢力(応力の大きさに応じた付勢力)を発生させることができる。
【0053】
また、閉状態の真空コンデンサを開状態に移行する場合には、前記のように弾性変形した弾性手段による弾性力が、可動ロッド6に対し付勢力として作用するため、たとえ真空圧による引張力が可動ロッド6に対して作用していても、図4に示すような真空コンデンサと比較して、容易(弾性手段11に蓄積された応力に応じて容易)に可動ロッド6を移動させることが可能となる。
【0054】
したがって、図1,図2のような構成の真空コンデンサによれば、図4に示すような真空コンデンサと比較して、可動ロッド6の移動に要するモータ10の駆動力を縮小(モータ10の小型化)でき、真空コンデンサの小型化を図ることが可能となる。
【0055】
なお、図1,2に示したように、弾性手段11を大気室9bに配置したことにより、該弾性手段11を真空室9aに配置した場合と比較して、該真空室9aの大きさを縮小でき、引張力が小さくなるため、可動ロッド6の移動に要するモータ10の駆動力をより縮小できると共に、真空コンデンサの更なる小型化を図ることが可能となる。
【0056】
[弾性手段]
次に、真空コンデンサの付勢手段として、図1,2に示したように引張力に対抗し得る複数個のコイル状の弾性手段、すなわち外周側弾性手段11a,内周側弾性手段11bを組み合わせて成る弾性手段11を用いた場合と、単に引張力に対抗し得るように長尺のコイル状の弾性手段(以下、長尺弾性手段と称する)11xを一つ用いた場合とについて、可動ロッド6をY1,Y2方向に移動させた際(開状態,閉状態)の付勢力変化を、図3の付勢力(またはベローズ9の弾性力)特性図に基づいて説明する。
【0057】
なお、図3においては、外周側弾性手段11aの開状態,閉状態における付勢力(図3中では、符号11aP)はベローズ9の弾性力(図3中では符号9P)よりも小さく、内周側弾性手段11bの開状態,閉状態における付勢力(図3中では、符号11bP)は該外周側弾性手段11aの付勢力よりも小さいものとする。また、単体弾性手段11xの弾性力(図3中では、符号11xP)は、ベローズ9の弾性力と比較して、閉状態の場合は大きく開状態の場合は小さいものとする。さらに、外周側弾性手段11a,内周側弾性手段11bを組み合わせた弾性手段11の付勢力(図3中では、符号11P)は、閉状態の場合はベローズ9の弾性力よりも大きく単体弾性手段11xの付勢力よりも小さいものとし、開状態の場合はベローズ9の弾性力よりも小さく単体弾性手段11xの付勢力よりも大きいものとする。さらにまた、ベローズ9の弾性力は略一定のものとする。
【0058】
まず、長尺弾性手段11xは、外周側弾性手段11a,内周側弾性手段11bと比較して、該長尺弾性手段11x自体をより大きく圧縮した状態で真空容器1内に構成されるため、開状態の可動ロッド6をY1方向に移動し閉状態に移行する場合には、長尺弾性手段11xを大きな圧縮力によって弾性変形する必要がある。すなわち、モータ10には、可動ロッド6を移動させる際に前記の大きな圧縮力を発生し、その圧縮によって生じる大きな付勢力(すなわち、弾性エネルギー)を保持できるもの(駆動力の大きいもの)を適用する必要がある。また、閉状態時,開状態時における長尺弾性手段11xの各付勢力とベローズ9の弾性力との差が大きい場合には、該ベローズ9に大きな負荷(急激な衝撃力等)がかかる可能性(すなわち、ベローズ9の破損,寿命短縮の可能性)があり、制御手段による制御範囲が拡大(すなわち、制御が困難化)し誤動作する可能性もある。
【0059】
一方、外周側弾性手段11a,内周側弾性手段11bを組み合わせて成る弾性手段11は、長尺弾性手段11xのように大きな圧縮力を要せずに、真空容器1内に構成することができる。また、長尺弾性手段11xを用いた場合と比較して、可動ロッド6を移動させる際に発生し得る付勢力は小さく、開状態の可動ロッド6をY1方向に移動し閉状態に移行することが容易であり、モータ10には駆動力の小さいものを適用(電器消費量を縮小)することができる。さらに、閉状態時,開状態時における弾性手段11の付勢力とベローズ9の弾性力との差が小さいため、該ベローズ9にかかる負荷が小さく(すなわち、ベローズ9の寿命が長く)なり、制御手段による制御範囲も縮小(すなわち、制御が容易化)し動作精度が高くなる。さらにまた、弾性手段11自体は、弾性変形が小さいため該弾性手段11にかかる負荷が小さく(すなわち、弾性手段11の寿命が長く)なる。
【0060】
以上示したことから、弾性手段には、ベローズの弾性力と同様(あるいは、近似)の付勢力であって引張力に対抗し得るものを適用することにより、モータの小型化、ベローズや弾性手段自体の長寿命化、動作精度の向上が可能となる。このようにベローズ9を考慮した弾性手段として、付勢力がベローズの弾性力よりも小さい弾性手段を複数個入手することは、該ベローズを考慮した長尺弾性手段を入手するよりも容易である。
【0061】
なお、前記のように複数個の弾性手段を用いる場合、それら各弾性手段のうち比較的付勢力の小さいもの(図1,2中では、内周側弾性手段11b)を内周側(例えば、図1,2中では外周側弾性手段11aの内周側)に構成することにより、外周側(例えば、図1,2中では、外周側弾性手段11aの外周側)に構成した場合と比較して、弾性手段(特に、該付勢力の小さい弾性手段)の寿命がより長くなる。
【0062】
また、前記のように長尺弾性手段を一つ用いる場合であっても、ベローズの弾性力と同一あるいは近似したものであれば、モータの小型化、ベローズや弾性手段自体の長寿命化、動作精度の向上が可能となると共に、弾性手段自体の小型化を図ることも可能となる。
【0063】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0064】
例えば、モータによる可動ロッドの移動に応じて固定電極と可動電極との間の静電容量を変化させることができる構造であれば、固定電極,可動電極,可動ロッド,絶縁操作ロッド,支持部材等はそれぞれ種々の形状のものを適用することができると共に、適宜省略(例えば、支持部材や絶縁操作ロッド等を適宜省略)しても良い。
【0065】
また、付勢手段は、真空容器内の引張力に対抗し得るように付勢することが可能な付勢手段であれば、例えば真空容器の外周側と可動ロッドとの間で支持部材等を介して設けた構成であっても良い。付勢手段やベローズは、真空コンデンサを使用した場合の伸縮し得る程度,設けられる位置,発生し得る引張力の大きさ等に応じたもの(バネ定数等の特性や個数)を適用することが好ましい。
【0066】
さらに、本発明は、本実施の形態のように可変型の真空コンデンサに限らず、固定型の真空コンデンサにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施の形態における真空コンデンサの一例を示す概略説明図(開状態)。
【図2】本実施の形態における真空コンデンサの一例を示す概略説明図(閉状態)。
【図3】本実施の形態における弾性手段の付勢力特性図。
【図4】一般的な真空コンデンサの概略説明図。
【符号の説明】
【0068】
1…真空容器
3a…固定側導体
3b…可動側導体
4…固定電極
5…可動電極
6…可動ロッド
7…絶縁操作ロッド
9…ベローズ
9a…真空室
9b…大気室
10…モータ
11…弾性手段
11a…外周側弾性手段
11b…内周側弾性手段
12a…固定台座部材
12b…可動台座部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が絶縁性を有する筒状体の両端をそれぞれ金属部材により閉塞して形成された真空容器と、
前記の真空容器内の一方の金属部材側に配置された固定電極と、
前記真空容器内の他方の金属部材側で固定電極との間に静電容量を形成するように配置された可動電極と、
前記可動電極の背面側から真空容器外方向に延設された可動ロッドと、
前記真空容器内の通電路の一部であって、固定電極および可動電極側の真空室と可動ロッド側の大気室とを隔離するベローズと、
前記可動電極と固定電極との間の静電容量を変化させるように可動ロッドを移動するための駆動源と、
前記可動ロッドに対し真空容器内の引張力に対抗した方向へ付勢する付勢手段と、を備えたことを特徴とする真空コンデンサ。
【請求項2】
前記付勢手段は、真空コンデンサの開状態から閉状態に近づくに連れて付勢力が大きくなる弾性手段から成ることを特徴とする請求項1記載の真空コンデンサ。
【請求項3】
前記弾性手段は、前記の可動ロッドと、前記の真空容器に設けられ該可動ロッドを摺動自在に支持する軸受部材と、の間に設けたことを特徴とする請求項2記載の真空コンデンサ。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記の弾性手段を2つ以上構成したことを特徴とする請求項2または3記載の真空コンデンサ。
【請求項5】
前記の2つ以上の弾性手段は、可動ロッドの外周側に対し付勢力の小さい順に配置したことを特徴とする請求項4記載の真空コンデンサ。
【請求項6】
前記の2つ以上の弾性手段の付勢力は、それぞれベローズの弾性力以下であることを特徴とする請求項4または5記載の真空コンデンサ。
【請求項7】
前記の弾性手段は、金属弾性部材またはゴム部材から成ることを特徴とする請求項2〜6の何れかに記載の真空コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−116025(P2007−116025A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308228(P2005−308228)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)