説明

真空スイッチギヤ

【課題】対地絶縁信頼性を向上させた多回路形の真空スイッチギヤを提供することを目的とする。
【解決手段】非接地型真空容器と、該非接地型真空容器内に収納され、可動電極および固定電極を含む複数の主回路開閉器と、該主回路開閉器のそれぞれの該固定電極に接続され、該非接地型真空容器から外方に延びたブッシング導体と、該主回路開閉器に対応して接地開閉器用真空容器または接地開閉器用気中容器内に収納された接点を有する接地開閉器と、該主回路開閉器のそれぞれの該可動電極に操作機構の運動を伝達するために接続された気中絶縁体と、該非接地型真空容器、該ブッシング導体および該接地開閉器用真空容器の外周を一体的に気密に絶縁モールドする接地樹脂モールド容器と、該接地樹脂モールド容器の一端に気密に取付けられた蓋体とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空スイッチギヤに係り、特に、容器内に複数の開閉器を備えた多回路形の真空スイッチギヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多回路形の真空スイッチギヤは、例えば、需要側への配電のために、配電系統中に設置し使用される。この種の真空スイッチギヤとしては、容器内に複数の開閉器を備えた構成となっている。
【0003】
特許文献1には、スイッチの固定電極側に接続する導体を樹脂でモールドしたモールド部と、前記固定電極とこれに接離可能な可動電極とを有するスイッチを収納し前記モールド部上に設置した真空容器とを備えた真空スイッチギヤが開示されている。
【0004】
特許文献2には、夫々が異なる外部導体に繋がる固定電極と可動電極とを接離する開閉器を1または複数収納し、絶縁物によりモールドされており、外部導体に接続するための複数の端子がモールド部から突出している真空容器を備えたスイッチギヤが開示されている。
【0005】
特許文献3には、真空容器と当該真空容器内に設置される所要数の開閉器とを備えた真空絶縁スイッチギヤにおいて、上記真空容器は金属材にて成形され絶縁物によりモールドされた真空絶縁スイッチギヤが開示されている。
【0006】
特許文献4には、固定側および可動側からなる主回路接点が真空容器内に設けられ、これらの両接点にそれぞれ接続された各主回路導体が上記真空容器の壁を貫通して配設されたスイッチギヤにおいて、上記真空容器の壁を貫通して一端が上記真空容器内の上記主回路導体の少なくとも一方に接離可能に配設された接地導体と、絶縁部材を介して上記真空容器から延出する上記接地導体の他端に連結された操作機構と、上記真空容器から延出する上記接地導体の他端側に相対的に変位可能に連結された接地兼試験用端子とを備えているスイッチギヤが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−238522号公報
【特許文献2】特開2000−306474号公報
【特許文献3】特開2001−126595号公報
【特許文献4】特開2001−135207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した多回路形の真空スイッチギヤは、需要側の容量変更等に伴う、接続替えを可能にする機能を有しているものであるが、この真空スイッチギヤの耐電圧性能が低下すると、その下流側の機器への影響が多大となる。このため、この真空スイッチギヤの信頼性の向上が要求されているとともに、安価で小形であることも要求されている。特に、近年においては、対地絶縁に対する信頼性が、強く要請されている。
【0009】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、対地絶縁に対する信頼性を向上させた多回路形の真空スイッチギヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の真空スイッチギヤは、1つまたは複数の非接地型真空容器と、該1つの非接地型真空容器内に収納され、可動電極および固定電極を含む複数の主回路開閉器、または該複数の非接地型真空容器内のそれぞれに収納され、可動電極および固定電極を含み、隣接する可動電極に電気的に接続された該可動電極を有する複数の主回路開閉器と、該主回路開閉器のそれぞれの該固定電極に接続され、該非接地型真空容器から外方に延びたブッシング導体と、該主回路開閉器に対応して接地開閉器用真空容器または接地開閉器用気中容器内に収納された接点を有する接地開閉器と、該主回路開閉器のそれぞれの該可動電極に操作機構の運動を伝達するために接続された気中絶縁体と、該非接地型真空容器、該ブッシング導体および該接地開閉器用真空容器の外周を一体的に気密に絶縁モールドする接地樹脂モールド容器と、該接地樹脂モールド容器の一端に気密に取付けられた蓋体とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価で小形であることは勿論のこと、多回路形の真空スイッチギヤにおける対地絶縁性能が向上し、その信頼性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の真空スイッチギヤは、1つまたは複数の非接地型真空容器と、該1つの非接地型真空容器内に収納され、可動電極および固定電極を含む複数の主回路開閉器、または該複数の非接地型真空容器内のそれぞれに収納され、可動電極および固定電極を含み、隣接する可動電極に電気的に接続された該可動電極を有する複数の主回路開閉器と、該主回路開閉器のそれぞれの該固定電極に接続され、該非接地型真空容器から外方に延びたブッシング導体と、該主回路開閉器に対応して接地開閉器用真空容器または接地開閉器用気中容器内に収納された接点を有する接地開閉器と、該主回路開閉器のそれぞれの該可動電極に操作機構の運動を伝達するために接続された気中絶縁体と、該非接地型真空容器、該ブッシング導体および該接地開閉器用真空容器の外周を一体的に気密に絶縁モールドする接地樹脂モールド容器と、該接地樹脂モールド容器の一端に気密に取付けられた蓋体とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の真空スイッチギヤは、単一の容器内に複数の主回路開閉器を備えた多回路形の真空スイッチギヤであって、前記各主回路開閉器における固定電極とこれに接離する可動電極とを含む各主回路開閉部を、非接地型真空容器内にそれぞれ収納し、前記各可動電極を可撓性導体で連結し、かつ可動側操作ロッドを前記非接地型真空容器内に導入し絶縁体を介して前記各可動電極にそれぞれ連結し、前記主回路開閉部及び前記固定電極に接続するブッシング導体を絶縁する第1の絶縁部と、この第1の絶縁部と一体に形成され前記可動電極側及び前記可動側操作ロッド側を絶縁する第2の絶縁部とを、前記真空容器の外周に具備するモールド部を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の真空スイッチギヤは、絶縁樹脂モールド容器内に複数の主回路開閉器を備えた多回路形の真空スイッチギヤであって、前記各主回路開閉器における固定電極とこれに接離する可動電極とを含む主回路開閉部を、各真空容器内にそれぞれ収納し、前記各可動電極を可撓性導体で連結し、かつ可動側操作ロッドを前記各可動電極にそれぞれ連結し、前記主回路開閉部及び前記固定電極に接続するブッシング導体を絶縁する第1の絶縁部と、前記可撓性導体及び前記操作ロッド側を絶縁するように前記第1の絶縁部と一体に形成された第2の絶縁部とを含むモールド部を備えたことを特徴とする。
【0015】
以下、本発明による真空スイッチギヤの実施例を、図面を用いて説明する。
【0016】
図1及び図2は、本発明の真空スイッチギヤの全体構成の一例で、変圧器が接続された例を示している。図1は正面図、図2は図1の平面図である。図1において、70は本発明の係る開閉器、71は操作器室、72はケーブル室、73はヒューズ室、74は変圧器室、75は低圧室である。図2において、70U、70V、70Wは、三相の電源それぞれの相に対応する開閉器を表している。
【0017】
図3は、本発明の真空スイッチギヤの一例を示す結線図で、この例では3回路切り替えの例を示しており、この図3において、103A、103B、103Cは主回路開閉部、104A、104B、104Cは接地装置、105A、105B、105Cはブッシング、106A、106B、106Cはケーブルである。
【0018】
図4及び図5は、本発明による真空スイッチギヤの一実施例を示すもので、図4は縦断正面図、図5は図4の縦断側面図である。これらの図において、本実施例では、固定電極9A、9B、9Cと、この固定電極9A、9B、9Cにそれぞれに接離する可動電極5A、5B、5Cとを含む3つの主回路開閉部(電流遮断部)を備えている。これらの主回路開閉部は、非接地型真空容器1内に収納されている。非接地型真空容器1の内部は、減圧状態が保たれている。
【0019】
固定電極9A、9B、9Cと可動電極5A、5B、5Cとの接点の近傍部分は、高導電性金属の銅(Cu)と低融点金属のテルル(Te)、ビスマス(Bi)またはスズ(Sn)との合金をマトリックスとし、耐火性金属のクロム(Cr)の粉末を分散した材料で形成されている。固定電極9A、9B、9Cおよび可動電極5A、5B、5Cの他の部分、すなわち電極棒は無酸素銅(純銅)で形成されている。上記合金と無酸素銅とは、ロウ付けにより接合されている。
【0020】
各主回路開閉部に対応する部分には、アークシールド7A、7B、7Cがそれぞれ設けられている。これらのアークシールド7A、7B、7Cの外周には、上側セラミック筒6A、6B、6Cと下側セラミック筒8A、8B、8Cとがそれぞれ配置されている。上側セラミック筒6A、6B、6Cは、その上部に可動電極5A、5B、5Cの貫通を許容する蓋部を有する構成となっている。下側セラミック筒8A、8B、8Cは、その下部に固定電極9A、9B、9Cの貫通を許容する蓋部を有する構成となっている。これらの下側セラミック筒8A、8B、8Cにおける固定電極9A、9B、9Cの貫通部分には、固定側シールリング10A、10B、10Cがそれぞれ設けられている。
【0021】
固定電極9A、9B、9Cには、ブッシング導体12A、12B、12Cがそれぞれ一体的に連結されている。可動電極5A、5B、5C間は、表面側がベローズで覆われた可撓性導体20、21によって電気的に接続されている。この可撓性導体20、21により、可動電極5A、5B、5Cの電位が、電源の電位と等しくなっている。各可動電極5A、5B、5Cには、絶縁物4A、4B、4Cを介して可動操作ロッド3A、3B、3Cの一端がそれぞれ連結されている。可動操作ロッド3A、3B、3Cは、真空容器1の上部面に設けたガイド13A、13B、13Cを通して真空容器1外に導出され、その絶縁物4A、4B、4Cと接続している側とは反対側の端部は、気中絶縁操作ロッド14A、14B、14Cにそれぞれ連結されている。ガイド13A、13B、13Cが配置されている真空容器1の内側には、一端が真空容器1に、他端が可動操作ロッド3A、3B、3Cに接続されたベローズ2A、2B、2Cが、可動操作ロッド3A、3B、3Cが上下動できるように、それぞれ設けられており、このベローズ2A、2B、2Cで真空容器1内を気密保持している。
【0022】
ここで、気中絶縁操作ロッド14A、14B、14Cを気中絶縁体と呼ぶことにする。気中絶縁体は、主回路開閉器のそれぞれの該可動電極に操作機構の運動を伝達するために接続されている。
【0023】
各主回路開閉部の固定電極9A、9B、9Cには、接地装置が接続されている。この接地装置を主回路開閉部の固定電極9Cに接続した例を、図5を用いて説明する。この図5において、図4と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。接地装置は、接地装置固定電極37Cと接地装置可動電極31Cとを備えている。接地装置可動電極31Cには、接地装置用の気中絶縁操作ロッド30Cが連結されている。接地装置固定電極37Cは、導体38Cによって主回路開閉部の固定電極9Cに接続されている。接地装置固定電極37Cと接地装置可動電極31Cとの対向する部分には、接地装置アークシールド34Cが設けられている。
【0024】
この接地装置アークシールド34Cの外周には、接地装置上側セラミック筒33Cと接地装置下側セラミック筒35Cとがそれぞれ配置されている。接地装置上側セラミック筒33Cは、その上部に接地装置可動電極31Cの貫通を許容する蓋部を有する構成となっている。この接地装置上側セラミック筒33Cの蓋と接地装置可動電極31Cとの間には、接地装置ベローズ32Cが設けられている。
【0025】
接地装置下側セラミック筒35Cは、その下部に接地装置固定電極37Cの貫通を許容する蓋部を有する構成となっている。この接地装置下側セラミック筒35Cにおける接地装置固定電極37Cの貫通部分には、接地装置固定側シールリング36Cが設けられている。
【0026】
そして、本実施例では、非接地の前記真空容器1の外周に、モールド部22が形成されている。このモールド部22は、図4に示すように、主回路開閉部の固定電極9A、9B、9C側及び固定電極側のブッシング導体12A、12B、12Cを絶縁する第1の絶縁部22Aと、この第1の絶縁部22Aと一体に形成され、可動電極5A、5B、5C側及び可動操作ロッド3A、3B、3C側を絶縁する第2の絶縁部22Bとで構成されている。
【0027】
非接地型真空容器1、ブッシング導体12A、12B、12Cおよび接地開閉器用真空容器の外周は、一体的に気密に絶縁モールドされ、モールド部22が形成される。このモールド部22の一部である第2の絶縁部22Bの一端には、モールド蓋23、すなわち蓋体が気密に取付けられている。ここで、モールド部22とモールド蓋23とで仕切られた空間は、乾燥空気が封入されている。また、モールド部22を形成するエポキシ樹脂モールドの外面には、導電性ペースト、導電性塗料等を塗布し、外面の電位が等しくなるようにしてある。すなわち、モールド部22の外面は、接地装置を介して接地可能となっている。このモールド部22を接地樹脂モールド容器と呼ぶことにする。
【0028】
ここで、非接地型真空容器1と接地開閉器用真空容器とを別々の真空容器としたのは、前者の真空容器内の真空度が低下した場合に、後者の真空容器が影響を受けないようにするためである。
【0029】
具体的には、第1の絶縁部22Aは、固定電極9A、9B、9Cに対応する真空容器1の外周及び固定電極側のブッシング導体12A、12B、12Cの外周面を覆うエポキシ樹脂モールドであり、第2の絶縁部22Bは、第1の絶縁部22Aであるエポキシ樹脂モールドと一体に形成され、可動電極5A、5B、5C側及び可動操作ロッド3A、3B、3C側に対応する真空容器1の外周を覆うエポキシ樹脂モールドである。また、接地装置は、図5に示すように、非接地型真空容器1とは別区画になっており、第1の絶縁部22Aによって非接地型真空容器1と一体的にモールドされている。更に、ブッシング導体12A、12B、12Cも、第1の絶縁部22Aであるエポキシ樹脂モールドと一体になって覆われ、絶縁ブッシング11A、11B、11Cをそれぞれ形成している。
【0030】
上述したように、この実施例においては、3つの主回路開閉部、可撓性導体20、21及び可動操作ロッド3A、3B、3Cの可動電極側の一部は、1つの非接地型真空容器1内に収納されるとともに、非接地型真空容器1外周面及び固定電極側のブッシング導体12A、12B、12Cの外周面を覆う第1の絶縁部22A、及び第2の絶縁部22Bによって絶縁され、可動操作ロッド3A、3B、3Cは、ベローズ2A、2B、2Cを介して真空容器1外に導出されて、気中絶縁される構成となっている。
【0031】
図5においては、可動電極5Cおよび固定電極9Cの接点、すなわち主回路開閉器の可動接点および固定接点を、モールド部22の一領域に形成した接点収納部内に設置してある。可動接点および固定接点とは、固定電極9Cと可動電極5Cとの接点の近傍部分であり、無酸素銅で形成されている電極棒の端部にロウ付けされた銅合金で形成されている。この銅合金の構成は上述の通りである。
【0032】
接点収納部は、モールド部22の内側の非接地型真空容器1が設置されている部分の最奥部に形成した、第1の絶縁部22Aの凹部に設置されている。この接点収納部は、上側セラミック筒6C、下側セラミック筒8Cおよび固定側シールリング10Cで構成されている。また、接点収納部の内部には、アークシールド7Cが設置されている。本実施例では、接点収納部が、第1の絶縁部22Aの凹部に設置してあり、下側セラミック筒8Cおよび固定側シールリング10Cがモールド部22で覆われているが、必ずしも第1の絶縁部22Aの凹部である必要はなく、下側セラミック筒8Cおよび固定側シールリング10Cがモールド部22で覆われていなくてもよい。すなわち、下側セラミック筒8Cが非接地型真空容器1内に露出していてもよいし、または、下側セラミック筒8Cおよび固定側シールリング10Cが非接地型真空容器1内に露出していてもよい。
【0033】
本図のように、上側セラミック筒6Cの平面部に可動電極5Cの直径と同程度か若干大きめの穴を設けて可動電極5Cを貫通させた構造とすることにより、接点収納部の内部で可動電極5Cと固定電極9Cとが接離する際に放電等により発生する金属蒸気が真空容器1内の他の領域に拡散することを抑制することができる。
【0034】
また、接地装置可動電極31Cおよび接地装置固定電極37Cの接点、すなわち接地開閉器の可動接点および固定接点を、モールド部22で覆われた接点収納部内に設置してある。この接点収納部は、上側セラミック筒33C、下側セラミック筒35Cおよび固定側シールリング36Cで構成されている。また、接点収納部の内部には、アークシールド34Cが設置されている。
【0035】
ベローズ32C、上側セラミック筒33C、下側セラミック筒35Cおよび固定側シールリング36Cなどで仕切られた部分は真空(減圧状態)が保たれるようになっている。これを接地開閉器用真空容器と呼ぶことにする。また、接地開閉器は、主回路開閉器に対応して接地開閉器用真空容器内に収納された接点を有する。
【0036】
また、図5においては、モールド蓋23を示していないが、図4と同様に、モールド蓋23を設置してもよい。
【0037】
上述した本発明による真空スイッチギヤの一実施例によれば、1つの非接地型真空容器1内に、3つの主回路開閉部、可撓性導体20、21及び可動操作ロッド3A、3B、3Cの可動電極側の一部を収納し、ブッシング導体12A、12B、12Cの外周面を含む非接地型真空容器1の外周面にエポキシ樹脂モールドによる絶縁部を形成したので、対地絶縁信頼性を更に向上させた多回路形の真空スイッチギヤを提供することができる。
【0038】
また、この実施例においては、真空容器1を非接地としたので、絶縁性能が安定化し、構成が簡単となる。更に、各主回路開閉部におけるアークシールド7A、7B、7Cを、真空容器1に予め組み付けているので、その組み立て性が向上する。なお、各主回路開閉部は実使用時には、独立に操作されるため、電流をそれぞれの主回路開閉部で遮断または投入する際に、アークシールド7A、7B、7Cへの分流を生じることはない。
【0039】
図6は、本発明による真空スイッチギヤの他の実施例を示す縦断正面図で、この図6において、図4及び図5に示す符号と同符号のものは、同一部分または相当する部分であるので、その詳細な説明を省略する。この実施例は、主回路開閉部における上側セラミック筒6A、6B、6Cおよび下側セラミック筒8A、8B、8Cを、円筒形にしたものである。
【0040】
本図においては、図4、5の場合と異なり、上側セラミック筒6Cは平面部を有さず、円筒の側面部だけで構成されている。しかし、接点収納部を、モールド部22の内側の非接地型真空容器1が設置されている部分の最奥部に形成した、第1の絶縁部22Aの凹部に収納した構造とすることにより、接点収納部の内部で可動電極5Cと固定電極9Cとが接離する際に放電等により発生する金属蒸気が真空容器1内の他の領域に拡散することを抑制することができる。
【0041】
また、図4と同様に、モールド部22の一部である第2の絶縁部22Bの一端には、モールド蓋23、すなわち蓋体が気密に取付けられている。ここで、モールド部22とモールド蓋23とで仕切られた空間は、乾燥空気が封入されている。また、モールド部22を形成するエポキシ樹脂モールドの外面には、導電性ペースト、導電性塗料等を塗布し、外面の電位が等しくなるようにしてある。
【0042】
この実施例によれば、前述した実施例と同様に、異物による地絡発生を抑え、信頼性を更に向上させた多回路形の真空スイッチギヤを提供することができる。また、主回路開閉部における上側セラミック筒6A、6B、6Cおよび下側セラミック筒8A、8B、8Cを、蓋部を持たない円筒形にしたことにより、上側セラミック筒6A、6B、6Cおよび下側セラミック筒8A、8B、8Cの構造が簡単化するので、コスト低減を図ることができる。
【0043】
図7は、本発明の真空スイッチギヤの更に他の実施例を示す縦断正面図で、この図7において、図4乃至図6に示す符号と同符号のものは、同一部分または相当する部分であるので、その詳細な説明を省略する。この実施例は、図6に示した実施例における可撓性導体20、21を覆うベローズを取り除いて、可撓性導体20、21を単体のものとして、その構造を簡略化したものである。また、図6に示した真空容器1のガイド13A、13B、13C部分における気密保持のためのベローズ2A、2B、2Cを、真空容器1の上外側に配置して、真空容器1内の真空容積の低減を図るために、ベローズ2A、2B、2Cの下方部を真空容器1の外側上面に気密に取付け、その上方部を真空容器1外に導出した可動操作ロッド3A、3B、3Cに気密に取付けたものである。この場合、図示しないガイドを気中絶縁操作ロッド14A、14B、14Cに当接させることによって、可動側の上下運動方向を規定することができる。更に、図7中の右側の主回路開閉部に示すように、例えば、アークシールド7Aを真空容器1と一体にすれば、部品数を低減することも可能である。
【0044】
この実施例によれば、前述した実施例と同様に、対地絶縁信頼性を更に向上させた多回路形の真空スイッチギヤを提供することができる。また、真空容器1内の真空容積、部品数の低減が可能となり、更なるコスト低減を図ることができる。
【0045】
図8乃至図11は、本発明による真空スイッチギヤの他の実施例を示すもので、図8は縦断正面図、図9は図8の平面図、図10は図8の縦断側面図、図11は図8の縦断背面図である。これらの図8乃至図11において、この例では、固定電極9A、9B、9Cと、この固定電極9A、9B、9Cにそれぞれに接離する可動電極5A、5B、5Cとを含む3つの主回路開閉部(電流遮断部)を備えている。固定電極9A、9B、9Cには、ブッシング導体12A、12B、12Cがそれぞれ一体的に連結されている。
【0046】
前述した各主回路開閉部は、真空容器1内にそれぞれ収納されている。真空容器1A、1B、1Cは、それぞれ上側セラミック筒6A、6B、6Cと、下側セラミック筒8A、8B、8Cと、上側セラミック筒6A、6B、6Cの上側に設けられ、可動電極5A、5B、5Cの導出部を有する可動側シールリング15A、15B、15Cと、下側セラミック筒8A、8B、8Cの下側に設けた固定側シールリング10A、10B、10Cと、可動側シールリング15A、15B、15C内側に配置され、一端が真空容器1A、1B、1C内の可動電極5A、5B、5Cに、他端が可動側シールリング15A、15B、15Cに気密に接続されたベローズ2A、2B、2Cで構成されている。すなわち、1つの非接地型真空容器が、主回路開閉器の固定電極および可動電極の一対を収納している。
【0047】
可動電極5A、5B、5Cにそれぞれ接続したベローズ2A、2B、2Cは、可動電極5A、5B、5Cが上下動を可能にするとともに、真空容器1内を気密保持している。各真空容器1A、1B、1C内の各主回路開閉部に対応する部分には、アークシールド7A、7B、7Cがそれぞれ設けられている。可動側シールリング15A、15B、15Cの上面には、真空容器1外に導出される可動電極5A、5B、5Cを案内するガイド13A、13B、13Cが設けてある。可動電極5A、5B、5Cの真空容器1外に導出された端部には、絶縁物14A、14B、14Cが設けられている。これらの絶縁物14A、14B、14Cに可動操作ロッド16A、16B、16Cがそれぞれ連結されている。
【0048】
また、可動電極5A、5B、5Cの真空容器1A、1B、1C外に導出された端部は、導体25によって電気的に接続されているが、この接続は、導体25における可動電極5A、5B、5Cの貫通孔に設けたマルチコンタクト(集電子)41と、可動電極5A、5B、5Cとの接触により可能にしている。導体25は、ボルト26によって、後述するモールド部22に固定される。
【0049】
各主回路開閉部の固定電極9B、9Cには、図10及び図11に示すように、接地装置が接続されている。主回路開閉器の固定電極9Cについては、これに対応する接地装置は、図10及び図11に示すように、固定側コンタクト台39Cとこれに接離する接地装置可動電極31Cとを備えている。固定側コンタクト台39Cは、導体38Cによって固定電極9Cにそれぞれ接続されている。接地装置可動電極31Cは、マルチコンタクト(集電子)41を有するコンタクト台40Cによって案内される。なお、主回路開閉部の固定電極9Bについても、固定電極9Cと同様に接続される。
【0050】
そして、本実施例では、前記各真空容器1の外周に、モールド部22が形成されている。このモールド部22は、図8に示すように、主回路開閉部の固定電極9A、9B、9C側及び固定電極側のブッシング導体12A、12B、12Cを絶縁する第1の絶縁部22Aと、この第1の絶縁部22Aと一体に形成され、各真空容器1外の可動電極5A、5B、5C側、導体25、絶縁物14A、14B、14C、可動操作ロッド16A、16B、16C側を絶縁する第2の絶縁部22Bとで構成されている。
【0051】
具体的には、モールド部22の第1の絶縁部22Aは、各真空容器の下側外周及び固定電極側のブッシング導体12A、12B、12Cの外周面を覆うエポキシ樹脂モールドであり、第2の絶縁部22Bは、導体25、絶縁物14A、14B、14Cを介して可動操作ロッド16A、16B、16C側を取り囲むように第1の絶縁部22Aであるエポキシ樹脂モールドと一体に形成されたエポキシ樹脂モールドである。モールド部22の外周面には、接地層が形成されている。
【0052】
また、接地装置におけるコンタクト台40C及び固定側コンタクト台39Cも、前述したモールド部22の第1の絶縁部22Aによって一体的にモールドされている。
【0053】
モールド部22の第2の絶縁部22Bの上部には、モールド蓋23がシール24を介して取付けられている。このモールド蓋23は、可動操作ロッド16A、16B、16の貫通孔を有している。この貫通孔には、シール24を設けている。
【0054】
なお、この実施例においては、接地装置は、固定電極9B、9Cにそれぞれ接続した例を示している。
【0055】
上述したように、この実施例においては、各主回路開閉部をそれぞれ個別の真空容器内に収納するとともに、これらの真空容器をエポキシ樹脂モールドによる第1の絶縁部22Aによって一体的にモールドし、可動電極5A、5B、5C側、導体25、絶縁物14A、14B、14C及び可動操作ロッド16A、16B、16C側に、これらを取り囲むように、第1の絶縁部22Aであるエポキシ樹脂モールドと一体に形成された第2の絶縁部22Bを設けて、可動電極5A、5B、5C側、導体25及び可動操作ロッド16A、16B、16C側を気中絶縁する構成となっている。
【0056】
上述した本発明による真空スイッチギヤの他の実施例によれば、各主回路開閉部をそれぞれ個別の真空容器内に収納するとともに、これらの真空容器をエポキシ樹脂モールドによる第1の絶縁部22Aによって一体的にモールドし、可動電極5A、5B、5C側、導体25及び可動操作ロッド16A、16B、16C側に、これらを取り囲むように第1の絶縁部22Aであるエポキシ樹脂モールドと一体に形成された第2の絶縁部22Bを設けて、可動電極5A、5B、5C側、導体25及び可動操作ロッド16A、16B、16C側を気中絶縁する構成となっているので、対地絶縁信頼性を更に向上させた多回路形の真空スイッチギヤを提供することができる。
【0057】
また、この実施例においては、可導側に、マルチコンタクト(集電子)41を有する導体25を配置固定したので、導体25に作用する磁気反発力が、可動電極5A、5B、5Cに伝達されないため、可動電極5A、5B、5Cに作用する電磁反発力を低減できる。更に、複数の開閉器を1つの真空容器内に収納する形式に比べて、真空容器が小形化になる。その結果、部品単価及び製作費が低減し、そのコストを大きく低減させることができるという利点を有する。
【0058】
更に、この実施例においては、図11に示すように、接地装置における接地装置室42と接地装置室43とを近接するように、モールドすることも可能である。このように構成することにより、接地装置室の空間を小さくすることができるので、モールド使用量が少なくなり、原価低減を図ることができる。
【0059】
図12は、図8乃至図11に示す本発明による真空スイッチギヤの他の実施例を示す縦断背面図である。この図12において、図4乃至図11に示す符号と同符号のものは、同一部分または相当する部分であるので、その詳細な説明を省略する。この実施例は、接地装置における接地装置室43を広く構成したものである。
【0060】
この実施例によれば、接地装置可動電極31を上下動させたときに生じる接地装置室43内の圧力変化を抑えることができるので、シール24による封止性が良好となり、信頼性を向上させることができる。
【0061】
図13は、図8乃至図11に示す本発明の真空スイッチギヤの更に他の実施例を示す縦断背面図である。この図13において、図4乃至図12に示す符号と同符号のものは、同一部分または相当する部分であるので、その詳細な説明を省略する。この実施例は、接地装置可動電極31B、31Cの側面に、接地装置室を外気側に連通させるための連通用の溝44B、44Cをそれぞれ設けたものである。この連通用の溝44B、44Cは、接地装置の遮断動作時及び投入動作時のみ、接地装置室を外気側に連通することによって、接地装置室内の結露を防止するものである。
【0062】
なお、図8乃至図13に示す実施例では、気中絶縁形の接地装置を示したが、図5に示す真空絶縁形の接地装置を適用することも可能である。また、これとは逆に図5に示す実施例における真空絶縁形の接地装置を、気中絶縁形の接地装置にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による真空スイッチギヤを用いた開閉装置の全体構成の一例を示す正面図である。
【図2】図1に示す本発明の真空スイッチギヤを用いた開閉装置の全体構成の一例の上面図である。
【図3】本発明による真空スイッチギヤを用いた開閉装置の一例を示す結線図である。
【図4】本発明による真空スイッチギヤの一実施例を示す縦断正面図である。
【図5】図4に示す真空スイッチギヤの一実施例の縦断側面図である。
【図6】本発明による真空スイッチギヤの他の実施例を示す縦断正面図である。
【図7】本発明による真空スイッチギヤの更に他の実施例を示す縦断正面図である。
【図8】本発明による真空スイッチギヤの他の実施例を示す縦断正面図である。
【図9】図8に示す真空スイッチギヤの他の実施例の平面図である。
【図10】図8に示す真空スイッチギヤの他の実施例の縦断側面図である。
【図11】図8に示す真空スイッチギヤの他の実施例を示す縦断背面図である。
【図12】図9に示す真空スイッチギヤの更に他の実施例を示す縦断背面図である。
【図13】図10に示す真空スイッチギヤの他の実施例を示す縦断背面図である。
【符号の説明】
【0064】
1:真空容器、2A、2B、2C:ベローズ、3A、3B、3C:可動操作ロッド、4A、4B、4C:絶縁物、5A、5B、5C:可動電極、6A、6B、6C:上側セラミック筒、7A、7B、7C:アークシールド、8A、8B、8C:下側セラミック筒、9A、9B、9C:固定電極、10A、10B、10C:固定側シールリング、11A、11B、11C:エポキシブッシング、12A、12B、12C:ブッシング導体、13A、13B、13C:ガイド、14A、14B、14C:気中絶縁操作ロッド、15A、15B、15C:可動側シールリング、16A、16B、16C:操作ロッド、20、21:可撓性導体、22:モールド部、22A:第1の絶縁部、22B:第2の絶縁部、23:モールド蓋、24:シール、25:導体、28:導体、31C:接地装置可動電極、32C:接地装置ベローズ、33C:接地装置上側セラミック筒、34C:接地装置アークシールド、35C:接地装置下側セラミック筒、36C:接地装置固定側シールリング、37C:接地装置固定電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の非接地型真空容器と、該1つの非接地型真空容器内に収納され、可動電極および固定電極を含む複数の主回路開閉器、または該複数の非接地型真空容器内のそれぞれに収納され、可動電極および固定電極を含み、隣接する可動電極に電気的に接続された該可動電極を有する複数の主回路開閉器と、該主回路開閉器のそれぞれの該固定電極に接続され、該非接地型真空容器から外方に延びたブッシング導体と、該主回路開閉器に対応して接地開閉器用真空容器または接地開閉器用気中容器内に収納された接点を有する接地開閉器と、該主回路開閉器のそれぞれの該可動電極に操作機構の運動を伝達するために接続された気中絶縁体と、該非接地型真空容器、該ブッシング導体および該接地開閉器用真空容器の外周を一体的に気密に絶縁モールドする接地樹脂モールド容器と、該接地樹脂モールド容器の一端に気密に取付けられた蓋体とを備えたことを特徴とする真空スイッチギヤ。
【請求項2】
前記接地樹脂モールド容器と蓋体とで構成された空間に乾燥空気を封入したことを特徴とする請求項1記載の真空スイッチギヤ。
【請求項3】
前記主回路開閉器および/または前記接地開閉器の可動接点および固定接点が、前記接地樹脂モールド容器の最奥部に設置した接点収納部内に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の真空スイッチギヤ。
【請求項4】
前記接点収納部が、上側セラミック筒、下側セラミック筒および固定側シールリングを含む構成であることを特徴とする請求項3記載の真空スイッチギヤ。
【請求項5】
隣接する前記可動電極を前記非接地型真空容器の内部で可撓性導体を用いて連結したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の真空スイッチギヤ。
【請求項6】
前記接地開閉器の前記可動電極側面に、遮断動作、投入動作中だけ外気連通する溝を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の真空スイッチギヤ。
【請求項7】
前記主回路開閉器が三相であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の真空スイッチギヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−226830(P2008−226830A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26260(P2008−26260)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】