説明

真空スイッチ

【課題】
電極からのアークの発生に伴って金属蒸気がアークシールドの隙間から飛散し、接地された真空容器または接地電位の箇所に付着することにより地絡現象が生じるのを防止する真空スイッチを得る。
【解決手段】
接地された真空容器の内面に絶縁物のコーティングを施し、接地開閉器を絶縁物で覆う構造によって接地電位の露出をなくし、電極からのアークの発生に伴って金属蒸着の飛散があっても接地電位の金属にアークが付着しない構造とすることで、地絡に至らない真空スイッチを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空スイッチに係り、特に、真空容器内に複数の主回路開閉部と接地回路開閉部を備え、電力系統の受配電設備として用いる真空スイッチギヤに使用するに好適な真空スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
都市部の消費電力集中地域が増加する需要に対して、6kV供給での配電用変電所の立地困難、及び6kV供給設備の稼働率の高まり等により、配電電圧の昇圧、すなわち6
kVより回線当たりの容量が大きい22kV系統の推進が効率的な電力供給設備の形成に繋がるが、これに伴い配電機材のコンパクト化を図る必要がある。
【0003】
コンパクト化を図る受配電機器としては、絶縁媒体としてSF6 ガスを用いたガス絶縁スイッチギヤが考えられる。しかし、絶縁媒体にSF6 ガスを用いることは、環境に悪影響を与える恐れがあるため、近年、絶縁媒体として真空絶縁を用いた真空絶縁方式のスイッチギヤが提案されている。
【0004】
真空絶縁方式のスイッチギヤは、真空容器内に固定電極と可動電極が向き合うように配置された主回路開閉部が複数対収納され、各主回路開閉部はアークシ−ルドで覆われ、各母線側導体がフレキシブル導体を介して接続されている。また、同一真空容器内に固定電極と可動電極が向き合うように配置された接地回路開閉部が収納され、主回路開閉部の接地回路開閉部がフレキシブル導体を介して電気的に接続されている。この真空絶縁方式のスイッチギヤによると、ガス絶縁方式よりも絶縁距離を短くすることができるため、コンパクト化が図れる利点を有する。
【0005】
尚、真空容器の内面に絶縁コーティング(セラミック)を施し、真空容器内面を絶縁する真空スイッチとしては、国際公開第00/021107号パンフレット等に開示されている。
【0006】
【特許文献1】国際公開第00/021107号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載の真空スイッチでは、各主回路開閉部はアークシ−ルドで覆われているため、短絡事故時などが生じてトリップ動作が実行され、可動電極と固定電極が離れたときに各電極からアークが発生し金属蒸気が生じても、この金属蒸気をアークシールドによって遮断することができるようになっている。
【0008】
しかしながら、真空容器が接地されているときに、上記金属蒸気の一部がアークシールドの隙間から飛散して真空容器、又は接地回路開閉部に付着すると、電極から金属蒸気,真空容器、又は接地回路開閉部を介して接地点に電流が流れ、地絡が生じるという問題がある。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的は、アークの発生に伴って金属蒸気がアークシールドの隙間から飛散し、接地された真空容器又は接地回路開閉部に付着することにより生じる地絡現象を防止できる真空スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の目的を達成するために、接地された真空容器の内面が絶縁物で覆われ、かつ、前記真空容器内に固定電極と可動電極が対向して配置された接地回路開閉部の少なくとも電極の周囲が絶縁物で覆われているか、もしくは、接地された真空容器の内面が絶縁物で覆われ、かつ、該真空容器内に固定電極と可動電極が対向して配置された複数の主回路開閉部及び前記真空容器内に固定電極と可動電極が対向して配置された接地回路開閉部の間に絶縁物を設け、該主回路開閉部と接地回路開閉部を前記真空容器内で仕切ったことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明した本発明によれば、接地された真空容器の内面を絶縁物で覆い、かつ、接地回路開閉部の少なくとも電極の周囲を絶縁物で覆うものであるから、接地電位の露出箇所をなくすことができるので、電極からのアークの発生に伴って金属蒸着の飛散があっても、接地電位の露出がないため地絡に至ることのない真空スイッチを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の真空スイッチの実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1乃至図3に本発明の真空スイッチの第1の実施例を示す。
【0014】
該図において、真空容器1は導電性材料、例えばステンレススチールで製造されており、高真空圧に耐えられるようになっており、しかも、設備本体とともに接地されている。また、真空容器1の内面には、絶縁物であるセラミックが溶射されており、真空容器1内面の金属の露出はなくなっている。
【0015】
この真空容器1からは2本の接続導体2,3が引き出されており、各接続導体2,3を覆うように、表面にメタライズがコーティングされているアルミナセラミックスからなる絶縁ブッシング4,5が配置され、各絶縁ブッシング4,5がアルミナセラミックスのメタライズ層を介して真空容器1の壁面にロー付けされている。
【0016】
接続導体2,3の上部には円盤状導体6,7が固定され、円盤状導体6,7には固定導体8,10が固定されており、その固定導体8,10には、それぞれ固定電極9,11が固定されている。各固定電極9,11の上方には、各固定電極9,11と対向して可動電極12,13が往復動自在に配置されている。この対向する固定電極9と可動電極12で1つの主回路開閉部を構成し、本実施例では、固定電極11と可動電極13からなる主回路開閉部と2つ真空容器1内に配置されている。
【0017】
各可動電極12,13は、それぞれ可動導体14,15と一体となって形成され、可動導体14,15は、それぞれ円柱状の絶縁物16,17を介して可動ロッド18,19に接続されている。各可動ロッド18,19の周囲には、ベローズ20,21が装着されており、各可動ロッド18,19は、それぞれベローズ20,21によって真空容器1に対して機密に密封されている。また、各可動ロッド18,19は、その一部が真空容器1の外部に突出しており、各可動ロッド18,19は、操作ロッド(図示せず)によって軸方向に操作されるようになっている。また、各主回路開閉部の電極の周囲は、従来と同様にアークシールド22,23で覆われている。
【0018】
可動導体14,15は、それぞれフレキシブル導体24を介して電気的に接続されており、可動ロッド18が下方に操作されたときには固定電極9と可動電極12とが互いに接触し、可動ロッド19が下方に操作されたときには固定電極11と可動電極13とが互いに接触し、これら主回路開閉部が互いにフレキシブル導体24を介して電気的に接続されると共に、接続導体2と接続導体3とが主回路開閉部を介して電気的に接続されるようになっている。
【0019】
一方、可動ロッド18が上方に操作されたときには、固定電極9と可動電極12とが切り離され、可動ロッド19が上方に操作されたときには、固定電極11と可動電極13が切り離される。これにより接続導体2と接続導体3とは切り離された状態となる。即ち、主回路開閉部は遮断された状態となる。また、それぞれの主回路開閉部の可動電極12と固定電極9及び可動電極13と固定電極11は、上述した如く、アークシールド22,
23で覆われており、固定電極と可動電極を切り離した際に生じる金属蒸気をアークシールド22,23で遮蔽するようになっている。
【0020】
図3は真空スイッチの接地回路開閉部を示すものである。
【0021】
該図に示す如く、上述と同様に形成されている真空容器1内に配置されている円盤状導体6には固定導体25が固定されており、この固定導体25には固定電極26が固定されている。固定電極26の上方には、この固定電極26と対向して可動電極27が往復動自在に配置されている。可動電極27は可動導体28と一体となって形成されている。この対向する固定電極26と可動電極27で接地回路開閉部を構成している。そして、本実施例では、固定電極26と可動電極27の周囲を覆うようにセラミックで形成された筒29が設けられており、主回路開閉部に対する接地回路開閉部の電極部の露出をなくしている。これによって、真空容器1内部の充電部に対して接地回路開閉部を露出させない構造としている。
【0022】
また、可動導体28は、円柱状の絶縁物30を介して可動ロッド31に接続され、この可動ロッド31の周囲にはベローズ32が装着されており、可動ロッド31は、ベローズ32によって真空容器1に対して気密に封止されている。更に、可動導体28は、フレキシブル導体33を介して接地端子34に接続され、接地端子34は真空容器1の外部で接地されるようになっており、可動導体28が下方に操作されたときは可動電極27と固定電極26が接触し、固定導体25を介して接続導体2が接地される。これにより接続導体2にケーブル等の外部部品を接続、もしくは接続状態を点検する際、接地電位で作業することができ、作業の安全性を確保することができる。
【0023】
このような本実施例の構成とすることにより、真空容器1の内面をセラミックでコーティングするのに加え、接地回路開閉部の固定電極26と可動電極27の周囲をセラミックで形成された筒29で覆い、接地電位の露出箇所をなくすことができるので、可動電極
27が固定電極26から離れることにより両者間にアークが発生して金属蒸気の一部が飛散しても、接地電位の露出がないため地絡に至ることはない。
【0024】
図4及び図5に上述した構成の真空スイッチ100を用いた真空スイッチギヤを示し、真空スイッチ100の上方に、開閉機構部が操作部(図示せず)を含めて設置されている状態である。
【0025】
該図に示す如く、真空スイッチ100の上方に設置した開閉機構部と操作部は連結部材45によって連結されている。真空スイッチ100は、3相に対応して3個備え、支持フレーム40に3個並べて収納されている。支持フレーム40は、真空スイッチギヤ支持体に固定されている。各真空スイッチ100は、上述した実施例のような接地された真空容器と、この真空容器内に設けた遮断器,断路器の固定電極(図示せず)と、これに接離する遮断器,断路器の可動電極(図示せず)とを備えている。固定電極には導体が接続し、遮断器,断路器の可動電極はフレキシブル導体で接続されると共に、ベローズを介して真空容器内/外の接続部となる操作ロッド41に連結されている。
【0026】
真空スイッチ100の支持フレーム40上には、開閉機構部の支持フレーム44が設けられている。この支持フレーム44間には、各真空スイッチ100の操作ロッド41に対応するL字形のレバー43が、ピン軸42によってそれぞれ回動可能に設けられている。各L字形のレバー43の一端側が、ばね51を介して各真空スイッチ100の操作ロッド41にそれぞれ連結され、その他端側は、三相連結リンク52に連結している。これにより、左側のL字形レバー43がピン軸42回りに回動すると、三相連結リンク52により他のL字形のレバー43がそれぞれピン軸42回りに回動する。
【0027】
一方、ばね51は、電流通過時に必要な接触圧を固定電極と可動電極との間に与えると共に、可動電極に必要な開路速度を与える機能を有している。前記した図4上、左側のL字形レバー43の一方側には、リンク50の一方端が連結されている。リンク50の他方端には、ばね受け部49が回動可能に設けられている。このばね受け部49に対向するばね受け部47が回動可能に設けられており、これらのばね受け部47,49間にばね48が装着されている。ばね受け部47の他端にハンドル挿入口45がピン軸46によって回動可能に設けられており、ハンドル挿入口45に操作ハンドル(図示無し)を挿入し操作することで開閉器を動作させることができる。
【0028】
真空スイッチ上部に取り付けられた操作器35により、各真空スイッチは三相同時に可動ロッドが操作され、各真空スイッチは三相同時に接続または遮断が行われる。接続導体2,3には、それぞれケーブルブッシング36あるいは機器のブッシング37が接続されている。
【実施例2】
【0029】
上述した実施例1では、接地回路開閉部を構成する固定導体25,固定電極26,可動電極27,可動導体28の周囲を覆っている筒29自体を絶縁物であるセラミックで構成したが、本実施例では、筒29をステンレス又は銅から成る金属で形成し、その筒29の表面にセラミック等の絶縁物をコーティングしている。他の構成は、実施例1と同様であり説明は省略する。
【0030】
このような本実施例の構成とすることにより、真空容器1内部の充電電位への接地電位の露出がなくなり、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【実施例3】
【0031】
図6及び図7に本発明の第3の実施例を示す。
【0032】
上述した実施例1では、接地回路開閉部を構成する固定導体25,固定電極26,可動電極27,可動導体28の周囲を覆っている筒29自体を絶縁物であるセラミックで構成したが、本実施例では、筒29を円盤状導体6にセラミック26aを介して接続され円盤状導体7とは接続されないステンレス又は銅から成る金属で形成している。他の構成は実施例1と同様であり説明は省略する。
【0033】
このような本実施例の構成とすることにより、セラミック26aを介して円盤状導体6に接続され円盤状導体7とは接続されない金属で形成された筒29は電位が浮いた状態となる。これにより、真空容器1内部の充電電位への接地電位の露出がなくなり、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【実施例4】
【0034】
図8及び図9に本発明の第4の実施例を示す。
【0035】
上述した実施例では、いずれも接地回路開閉部の電極部近傍を筒で覆っているが、本実施例では、内面がセラミックでコーティングされた真空容器1内をセラミックからなる絶縁物で構成されたシールド板38で仕切り、主回路開閉部の電極部分を収納する部屋と接地回路開閉部の電極部分を収納する部屋に分けたものである。即ち、主回路開閉部を構成する可動電極12,13及び固定電極9,11がシールド板38で仕切られた一方の部屋に収納され、接地回路開閉部を構成する可動電極27及び固定電極26がシールド板38で仕切られた他方の部屋に収納されて構成される。他の構成は、接地回路開閉部の電極部を覆って配置される筒を除いては実施例1と同様であり説明は省略する。
【0036】
このように接地電位部を充電電位部と別室とすることにより、真空容器内部の充電電位への接地電位の露出をなくすことができ、他の実施例と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の真空スイッチの第1の実施例を示し、図2のA−A断面図である。
【図2】本発明の真空スイッチの第1の実施例を示す断面平面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】本発明の真空スイッチを採用した真空スイッチギヤを示す正面図である。
【図5】本発明の真空スイッチを採用した真空スイッチギヤを示す側面図である。
【図6】本発明の真空スイッチの第3の実施例を示し、図7のD−D断面図である。
【図7】本発明の真空スイッチの第3の実施例を示す断面平面図である。
【図8】本発明の真空スイッチの第4の実施例を示し、図9のE−E断面図である。
【図9】本発明の真空スイッチの第4の実施例を示す断面平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…真空容器、2,3…接続導体、4,5…絶縁ブッシング、6,7…円盤状導体、8,10,25…固定導体、9,11,26…固定電極、12,13,27…可動電極、
14,15,28…可動導体、16,17,30…絶縁物、18,19,31…可動ロッド、20,21,32…ベローズ、22,23…アークシールド、24,33…フレキシブル導体、29…筒、34…接地端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地された真空容器と、該真空容器内に固定電極と可動電極が対向して配置された複数の主回路開閉部と、前記真空容器内に固定電極と可動電極が対向して配置された接地回路開閉部と、前記主回路開閉部の電極の周囲を覆うアークシールドとを備えた真空スイッチにおいて、
前記真空容器の内面が絶縁物で覆われ、かつ、前記接地回路開閉部の少なくとも電極の周囲が絶縁物で覆われていることを特徴とする真空スイッチ。
【請求項2】
前記真空容器の内面を覆う絶縁物は、セラミックが溶射されて形成され、かつ、前記接地回路開閉部の電極の周囲を覆う絶縁物は、セラミック製の筒から成ることを特徴とする請求項1記載の真空スイッチ。
【請求項3】
接地された真空容器と、該真空容器内に固定電極と可動電極が対向して配置された複数の主回路開閉部と、前記真空容器内に固定電極と可動電極が対向して配置された接地回路開閉部と、前記主回路開閉部の電極の周囲を覆うアークシールドとを備えた真空スイッチにおいて、
前記真空容器の内面が絶縁物で覆われ、かつ、前記接地回路開閉部の少なくとも電極の周囲が、表面に絶縁物がコーティングされている金属製の筒で覆われていることを特徴とする真空スイッチ。
【請求項4】
接地された真空容器と、該真空容器内に固定電極と可動電極が対向して配置された複数の主回路開閉部と、前記真空容器内に固定電極と可動電極が対向して配置された接地回路開閉部と、前記主回路開閉部の電極の周囲を覆うアークシールドとを備えた真空スイッチにおいて、
前記真空容器の内面が絶縁物で覆われ、かつ、前記接地回路開閉部の少なくとも電極の周囲が、金属製の筒と、該筒を電位が浮いた状態にするセラミックで覆われていることを特徴とする真空スイッチ。
【請求項5】
接地された真空容器と、該真空容器内に固定電極と可動電極が対向して配置された複数の主回路開閉部と、前記真空容器内に固定電極と可動電極が対向して配置された接地回路開閉部と、前記主回路開閉部の電極の周囲を覆うアークシールドとを備えた真空スイッチにおいて、
前記真空容器の内面が絶縁物で覆われていると共に、前記主回路開閉部と接地回路開閉部の間に絶縁物を設け、該主回路開閉部と接地回路開閉部を前記真空容器内で仕切ったことを特徴とする真空スイッチ。
【請求項6】
前記主回路開閉部と接地回路開閉部の間に設けられた絶縁物は、表面に絶縁物がコーティングされている金属製のシールドであることを特徴とする請求項5記載の真空スイッチ。
【請求項7】
前記絶縁物は、セラミックであることを特徴とする請求項3又は4記載の真空スイッチ。
【請求項8】
前記金属は、ステンレス又は銅であることを特徴とする請求項4,5、又は6記載の真空スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−309944(P2006−309944A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127283(P2005−127283)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】