説明

真空バルブ

【課題】金属蒸気による生成物が付着する真空絶縁容器内面の沿面絶縁特性を向上させる。
【解決手段】セラミックスからなる筒状の真空絶縁容器1と、真空絶縁容器1の両端開口部にそれぞれ封着された封着金具2、3と、真空絶縁容器1内に収納された接離自在の一対の接点5、6とを備え、少なくとも開離した一対の接点5、6の外周部間と対向する真空絶縁容器1内面に、環状の凸凹部9を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接離自在の一対の接点を有する真空バルブに係り、特に、真空中の沿面絶縁特性を向上し得る真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状の真空絶縁容器内に接離自在の一対の接点を収納した真空バルブは、真空が持つ優れた絶縁耐力やアーク消弧性などにより外形形状の小型化が図られている。真空絶縁容器には、絶縁特性や機械的特性の優れたアルミナ磁器などのセラミックスが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−319151号公報 (第3ページ、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の真空バルブにおいては、次のような問題がある。
接点間で電流遮断を行うと、金属蒸気が真空絶縁容器内に拡散し、真空絶縁容器の内面に金属蒸気による生成物が付着する。生成物が付着すると、絶縁抵抗が低下し、電界分布を乱し、沿面絶縁破壊を招くことがある。このため、接点間で金属蒸気が発生し、その生成物が真空絶縁容器の内面に付着しても、真空中の沿面の絶縁抵抗が大きく低下しないものが望まれていた。
【0005】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、真空絶縁容器に金属蒸気による生成物が付着しても、優れた沿面絶縁特性を保ち得る真空バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の真空バルブは、セラミックスからなる筒状の真空絶縁容器と、前記真空絶縁容器の両端開口部にそれぞれ封着された封着金具と、前記真空絶縁容器内に収納された接離自在の一対の接点とを備え、少なくとも開離した前記一対の接点の外周部間と対向する前記真空絶縁容器内面に、環状の凸凹部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接点の外周部と対向する真空絶縁容器の内面に凸凹部を設けているので、金属蒸気による生成物が付着し易い部分の沿面距離が増大し、絶縁抵抗の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1に係る真空バルブの構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例2に係る真空バルブの構成を示す要部拡大半断面図。
【図3】本発明の実施例3に係る真空バルブの構成を示す要部拡大半断面図。
【図4】本発明の実施例3に係る真空バルブの凸凹部を説明する拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0010】
先ず、本発明の実施例1に係る真空バルブを図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る真空バルブの構成を示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、アルミナ磁器などのセラミックスからなる筒状の真空絶縁容器1の両端開口部には、固定側封着金具2と可動側封着金具3が封着されている。固定側封着金具2の中央部には、固定側通電軸4が貫通固定され、真空絶縁容器1内の端部に固定側接点5が固着されている。
【0012】
固定側接点5に対向して可動側接点6が、可動側封着金具3の開口部を移動自在に貫通する可動側通電軸7の端部に固着されている。可動側通電軸7の軸方向中間部と可動側封着金具3の開口部間には、伸縮自在の筒状のベローズ8が封着されている。これにより、真空絶縁容器1内の真空を保ちながら、可動側通電軸7を軸方向に移動させることができる。
【0013】
ここで、真空絶縁容器1内面には、軸方向と直交する対向面に、例えば機械加工により環状で断面三角形状の凸凹部9を設けている。即ち、凸凹部9は、接点5、6の外周部と対向する内周面であって、少なくとも開離したときの接点5、6の間を包囲する範囲に設けられている。凸凹部9の山部、谷部の大きさにより、沿面距離を調整することができるが、凸凹部9の大きさや加工性などを考慮すると、沿面距離を2倍程度に増大させるものが好ましい。
【0014】
これにより、接点5、6間で電流遮断を行うと、金属蒸気が放射状に拡散し、その生成物の大部分が凸凹部9に付着される。しかしながら、凸凹部9により沿面距離を増大させているので、生成物の付着により付着部分では絶縁抵抗が低下しても、沿面全体の絶縁抵抗を大きく低下させることはない。即ち、生成物が最も付着する部分の沿面距離を増大させているので、生成物が付着したとしても、局部的に絶縁抵抗を低下させるだけであり、真空絶縁容器1内の沿面となる封着金具2、3間全体の沿面絶縁特性の低下を防ぐことができる。
【0015】
上記実施例1の真空バルブによれば、金属蒸気による生成物が付着し易い接点5、6の外周部と対向する真空絶縁容器1内面に、凸凹部9を設けて沿面距離を増大させているので、生成物が付着したとしても、局部的に絶縁抵抗を低下させるだけであり、封着金具2、3間全体の沿面絶縁特性を向上させることができる。
【0016】
上記実施例1では、凸凹部9を断面三角形状で説明したが、断面矩形状、断面台形状、断面半円状などで形成しても沿面距離を増大させることができる。
【0017】
また、接点5、6を包囲するアークシールドを用いた真空バルブでも、アークシールド端部と対向する真空絶縁容器内面に凸凹部9を設ければ、沿面絶縁特性を向上させることができる。
【実施例2】
【0018】
次に、本発明の実施例2に係る真空バルブを図2を参照して説明する。図2は、本発明の実施例2に係る真空バルブの構成を示す要部拡大半断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、真空絶縁容器内面に抵抗層を設けたことである。図2において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0019】
図2に示すように、凸凹部9を含む真空絶縁容器1の内面には、厚さ数10nm〜数μmで、抵抗率10〜1014Ω・cmの抵抗層10を設けている。抵抗層10の端部は、封着金具2、(3)と接触している。抵抗層10は、例えばダイヤモンドライクカーボンで構成され、アセチレンなどの炭化水素ガスをプラズマ化し、炭化水素を蒸着するプラズマCVC法により設けることができる。蒸着時間と、蒸着後の熱処理温度を制御すれば、抵抗率を制御することができる。また、抵抗層10は、銅酸化膜などで形成することもできる。
【0020】
これにより、セラミックスの抵抗率約1015Ω・cmに対し、抵抗層10の抵抗率が低いので、真空絶縁容器1の帯電を防止することができる。更に、抵抗層10表面に金属蒸気による生成物が付着しても、抵抗層10の抵抗率が低く、生成物との抵抗率の差異が小さくなるので、電界分布を大きく乱すことがなくなる。即ち、生成物の付着の影響を受け難くなる。
【0021】
上記実施例2の真空バルブによれば、実施例1による効果のほかに、真空絶縁容器1の帯電を防止でき、更に生成物の付着による影響を抑制することができ、沿面絶縁特性の更なる改善をすることができる。
【実施例3】
【0022】
次に、本発明の実施例3に係る真空バルブを図3、図4を参照して説明する。図3は、本発明の実施例3に係る真空バルブの構成を示す要部拡大半断面図、図4は、本発明の実施例3に係る真空バルブの凸凹部を説明する拡大断面図である。なお、この実施例3が実施例2と異なる点は、凸凹部の形状である。図3、図4において、実施例2と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0023】
図3に示すように、接点5、6の外周部と対向する真空絶縁容器1内面には、実施例2とは異なる断面三角形状の凸凹部11が設けられている。凸凹部11は、接点5、6間の中間部を境として、図示上下方向が対称となっている。そして、金属蒸気が図中点線の矢印で示すように、接点5、6間から外周方向に向かって放射状に拡散するので、金属蒸気が直接到達する面と、金属蒸気が直接到達しない面とが設けられるようになっている。
【0024】
即ち、固定側の拡大図である図4に示すように、凸凹部11の一つの山部の断面三角形状が、少なくとも直角三角形であり、底辺の角度θが90度以上となっている。このような断面三角形状においては、接点5と対向し、金属蒸気が直接到達する面(辺)11aと、接点5と対向せず、金属蒸気が直接到達しない面(辺)11bとが形成される。ここで、11aを接点対向面、11bを接点非対向面と称する。
【0025】
これにより、接点対向面11aには金属蒸気による生成物が付着し易くなるものの、接点非対向面11bには生成物が付着し難い。このため、真空絶縁容器1全体を見ると、絶縁抵抗の低下し難い接点非対向面11bが円周方向に存在することになるので、全体の沿面絶縁特性の低下を防止することができる。なお、抵抗層10を設けていないときに、この効果が大きく現れる。
【0026】
上記実施例3の真空バルブによれば、実施例2による効果のほかに、金属蒸気による生成物の付着し難い接点非対向面11bを設けているので、真空絶縁容器1の沿面絶縁特性を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 真空絶縁容器
2 固定側封着金具
3 可動側封着金具
4 固定側通電軸
5 固定側接点
6 可動側接点
7 可動側通電軸
8 ベローズ
9、11 凸凹部
10 抵抗層
11a 接点対向面
11b 接点非対向面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスからなる筒状の真空絶縁容器と、
前記真空絶縁容器の両端開口部にそれぞれ封着された封着金具と、
前記真空絶縁容器内に収納された接離自在の一対の接点とを備え、
少なくとも開離した前記一対の接点の外周部間と対向する前記真空絶縁容器内面に、環状の凸凹部を設けたことを特徴とする真空バルブ。
【請求項2】
前記凸凹部の山部を、接点対向面と接点非対向面とが形成されるように断面三角形状にしたことを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
前記真空絶縁容器の内面に、前記封着金具にその端部が接触する前記真空絶縁容器よりも低い抵抗率を有する抵抗層を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空バルブ。
【請求項4】
前記抵抗層をダイヤモンドライクカーボンで形成したことを特徴とする請求項3に記載の真空バルブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate