説明

真空バルブ

【課題】 近年における高電圧大容量のVSTでは、ベローズの大形化、電極棒の径の増大により、接点部だけでなくベローズカバーやアークシールドの電界も高くなる。そこで、真空バルブの大型化を抑制しつつ耐電圧性能をさらに高める技術が求められている。
【解決手段】この発明に係る真空バルブにおいては、真空容器は絶縁筒2及び端板1a、1bで構成され、絶縁筒2の外周を囲む金属製のシールド部14bと、絶縁筒2の外周を囲み、シールド部14bから離れるように絶縁筒2の軸方向に可動な絶縁材料製の絶縁リング13bとを備えたことで、コンディショニング工程の効率を改善し、真空バルブの耐電圧性能を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空バルブ、特に、真空容器の内部にシールドを備えた真空バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空遮断器の高電圧化に伴い、密閉タンク内に絶縁ガスと共に収納するタイプの真空遮断器が増えている。また、真空バルブの耐電圧性能の向上と小型化を両立するため、電界緩和シールドを設置する技術が開発されている。
【0003】
アース電位の密閉タンク内に絶縁媒体と共に収納される真空バルブでは、浮遊電位のアークシールドの電位がアース側に引かれて印加電圧の50%より下がるため、高電圧印加側の電極、スタッド、内部補助シールドとアークシールドの間に等電位線が集中する。
【0004】
そこで従来から、真空バルブの中には、アークシールド(内部主シールド)近傍や内部補助シールド近傍の電解緩和のために、真空容器の外部に外部主シールドおよび外部補助シールドを設けているものがある(例えば特許文献1参照)。この結果、真空バルブの内部のシールド近傍の電界が緩和されるので、内部のシールドに金属微細粒子が付着しても電界によって遊離することが防止され真空容器内の耐電圧性能が安定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−252024号公報(第2−4頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年における高電圧大容量のVSTでは、ベローズの大形化、電極棒の径の増大により、接点部近傍だけでなくベローズ支持板近傍やアークシールド近傍の電界も高くなる。そこで、真空バルブの大型化を抑制しつつ耐電圧性能をさらに高める技術が求められている。
【0007】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、真空バルブの耐電圧性能をさらに高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る真空バルブにおいては、真空容器を構成する絶縁筒の外周を囲む金属製のシールド部と、絶縁筒の外周を囲み、絶縁筒の軸方向に可動な絶縁材料製の絶縁リングとを備えた。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、コンディショニング工程の効率を改善し、真空バルブの耐電圧性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る真空バルブを示す側面断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る真空バルブにおける電界緩和シールドユニットの構造の一部を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るコンディショニング工程における真空バルブを示す側面断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る電界緩和シールド11b付近のコンディショニング工程における等電位線を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る真空バルブにおける絶縁リングの形状とシールドの電界の関係を示すグラフである。
【図6】この発明の実施の形態1に係る真空バルブにおける絶縁リングの形状とシールドの電界の関係を示すグラフである。
【図7】この発明の実施の形態1に係る真空バルブにおける絶縁リング13bの高さとシールド16bの最大電界の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図8】この発明の実施の形態1に係る真空バルブにおけるは絶縁リング13bの幅とシールド16bの最大電界の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図9】この発明の実施の形態2に係る真空バルブにおける電界緩和シールドの絶縁リングを示す上面図である。
【図10】図9の破線ABで切り取った断面図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る真空バルブにおける電界緩和シールドユニットの構造の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る真空バルブを示す側面断面図である。以下、図1に基づき、本発明の実施の形態1に係る真空バルブの構成を説明する。絶縁筒2は、円筒形状の絶縁筒2a及び絶縁筒2bが薄い輪状の金属部材6のそれぞれ表面と裏面に接合されることで構成されている。金属部材6の絶縁筒2内部側にはアークシールド7が固定され、外部側にはシールド部14cが固定される。このため、アークシールド7とシールド部14cとは導通している。
【0012】
固定側端板1a及び可動側端板1bがフランジ4a及びフランジ4bをそれぞれ介して絶縁筒2の両端に気密に固定され、真空容器が形成される。固定側端板1aには固定電極棒3aが、可動側端板1bには可動電極棒3bがそれぞれ貫通している。固定電極棒3aの先端には接点10が、可動電極棒3bの先端には接点30が、互いに対向するように取り付けられている。可動電極棒3bはベローズ8及び金属製のベローズ支持板9を介して可動側端板1bに取り付けられ、可動電極棒3bが図1中上下方向(絶縁筒2の軸方向)へ直動することで、接点10及び接点30は接離可能となっている。
【0013】
遮断(接点10及び接点30を離間させる)時には接点10及び接点30から金属蒸気が発生する。金属蒸気が絶縁筒2の内壁に付着すると、絶縁性が劣化してしまう。そこで、金属蒸気を補足するために、接点10及び接点30の周囲を覆うように、SUS製のアークシールド7が設けられている。
【0014】
絶縁筒2のフランジ4aとの接合部5a、フランジ4bとの接合部5b及び金属部材6との接合部には、金属との接合のためメタライズ層が形成されている。メタライズ層は薄い金属で端部が尖っているため、接合部5a、5b及び金属部材6の近傍は高電界部となる。定格電圧の高い真空バルブでは、これらの部分から沿面放電が発生する可能性があるため、真空容器内部の両端にそれぞれ金属製の電界緩和シールド11a及び11bを設ける。なお、アークシールド7は、絶縁筒2の金属部材6との接合面に形成されたメタライズ層近傍の電界緩和の役割も果たす。
【0015】
真空容器内部の電界緩和シールド11aは先端に一定の曲率を持たせて近傍の電界緩和を図っているが、曲率を大きくすると厚みが増し大きなスペースが必要になる。そこで、固定側電極棒3aに金属製の電界緩和シールド16aを設けて、これによっても電界緩和シールド11a近傍の電界緩和を図り、電界緩和シールド11aを厚くする必要性をなくした。
【0016】
シールド16aは、固定側電極棒3aから電界緩和シールド11aに向って伸び、先端に屈曲部を設けR加工を施してある。また、シールド16aの根元から屈曲部にかけては図1のように傾斜を設けると、90度に曲げた場合より電界緩和効果が大きくなり耐電圧性能が高くなる。
【0017】
同様に、電界緩和シールド11b近傍やベローズ支持板9近傍の電界緩和効果のために、シールド16bを設ける。ベローズカバー16bは、可動電極棒3bからベローズ支持板9や電界緩和シールド11bに向かって伸び、先端に屈曲部を設けR加工を施してある。なお、ベローズカバー16bはベローズ支持板9と一体化させてもよい。
【0018】
真空容器外部の両端及び中央には電界緩和シールドユニット12a、12b及び12cをそれぞれ設ける。真空容器外部の電界緩和シールドユニット12a及び12bは、金属製のシールド部14a及び14bと絶縁材料製の絶縁リング13a及び13bとをそれぞれ有している。電界緩和シールドユニット12cは、シールド部14cとその両端にそれぞれ設けられる絶縁リング13c及び13dとを有している。シールド部14a、14b及び14cと、絶縁リング13a、13b、13c及び13dとの間には絶縁材料製のカバー15a、15b、15c及び15dがそれぞれ設けられている。
【0019】
図2はこの発明の実施の形態1に係る真空バルブにおける電界緩和シールドユニット12bの構造の一部を示す断面図である。以下、図2に基づき、電界緩和シールドユニット12bの構成を説明する。カバー15bはシールド部14bに固着し、動かないようになっている。図2(a)は絶縁リング13bとカバー15bとが接触している状態を示している。この状態においては、絶縁リング13bとカバー15bとは面接触している。
【0020】
一方、絶縁リング13bとカバー15bとは離間させることもできる。図2(b)は絶縁リング13bとカバー15bとが離間した状態を示している。なお、カバー15bと絶縁リング13bを離した時に、カバー15bの露出する部分の隅は、電界緩和のためR加工を施してある。
【0021】
シールド部14bに絶縁リング13bを直接接触させる構造とすると、シールド部14bと絶縁リング13bとの接触部が金属(シールド部14b)、絶縁材料(絶縁リング13b)、絶縁ガス(真空バルブの外部)が接する所謂トリプルジャンクションとなり、高電界部位が発生する。そこで、絶縁材料製のカバー15bを挟むことでトリプルジャンクションを無くし、高電界部位が発生しないようにしている。
【0022】
絶縁リング13bとカバー15bとを接離可能とするため、これらは以下のような可変支持構造を取る。図2のように、絶縁リング13bに取っ手19bを設け、その先端に内向きの突起20bを設ける。カバー15bには絶縁筒2の軸方向に沿って複数の係止孔を設け、係止孔と突起20bとの形状は互いに嵌め合わせ可能なような形状とする。突起20bは各係止孔に嵌って固定されるが、絶縁リング13bは、取っ手19の弾性によって、突起20bがある係止孔から別の係止孔に嵌る位置まで移動させることができる。この例において係止孔は2箇所にあり、嵌め合わせの位置を変えると絶縁リングとカバーが接離可能である。係止孔は2箇所以上設けてもよい。取っ手19bは絶縁リング13bの周方向に沿って数箇所設ける。
【0023】
以上の構造は、絶縁リング13a、13c及び13d、シールド部14a及び14c、カバー15a、15c及び15dでも同様である。
【0024】
次に、本構造が解決する従来技術の問題点について説明する。真空容器内の各箇所に金属微粒子が付着していると、真空バルブの耐電圧性能を劣化させる原因となる。そこでコンディショニング工程において、真空バルブの各箇所間に高電圧を印加して金属微粒子を除去する(コンディショニング)。しかし従来は、どの箇所にどの程度の電圧をかければ効率的に耐電圧性能を確保できるのかはあまり検証されておらず、よく分かっていなかった。また、耐電圧性能を十分確保するためには、コンディショニング電圧を高く、また電圧印加時間を長くせざるを得ないという問題点があった。
【0025】
そこで、発明者らがコンディショニング後の真空バルブの詳細な分解調査と分析を行った結果、以下のことが明らかとなった。つまり、ベローズカバー16bや電界緩和シールド11a及び11bという、通常、近傍の電界が低いために耐電圧性能では問題が起こりにくいと考えられていた部位が、逆に近傍の電界が低いことでコンディショニング時の放電が少ない部位となり、当該部位に耐電圧性能を低下させる金属微粒子が残ることが分かった。
【0026】
発明者らは、この新たな知見に基づいて研究を進め、これらの部位近傍の電界を高めて放電させると、表面改質され耐電圧性能が向上することを確認した。つまり、これまでの常識、すなわち電界緩和した構造にすることで耐電圧性能を確保するという通常の考え方に反して、コンディショニング工程においてはベローズカバー16bや電界緩和シールド11a及び11bの近傍の電界を上昇させることが結果として耐電圧性能を上昇させることを見出し、それを具体的な構成としたのがこの発明である。
【0027】
図3は、この発明の実施の形態1に係るコンディショニング工程における真空バルブを示す側面断面図である。図3に示すように、コンディショニング工程においては、絶縁リング13a、13b、13c及び13dとシールド部14a、14b及び14cとの間にそれぞれ隙間をあけた状態とする。
【0028】
例えば絶縁リング13bとシールド部14bとに着目すると、絶縁リング13bとシールド部14bとの間に隙間17bを開けることでこの隙間17bの等電位線が密となり、その結果、コンディショニング時に、この隙間17bの近くに位置する電界緩和シールド11bやベローズカバー16bの近傍の電界が高くなる。同様に、コンディショニング時において、絶縁リング13aとシールド部14aとの間の隙間17aは電界緩和シールド11a及び電界緩和シールド16aの端部近傍の電界を、絶縁リング13c及び13dとシールド部14cとの間の隙間17c及び17dはアークシールド7の両端部近傍の電界を、それぞれ高める。
【0029】
この状況をモデルで再現し、シミュレーションした結果の例を図4に示す。図4は、この発明の実施の形態1に係る電界緩和シールド11b付近のコンディショニング工程における等電位線を示す図である。ただし、図4のモデルにおいては、図1のベローズ支持板9とベローズカバー16bを一体とし、ベローズカバー90としている。また、図1のベローズカバー16bには傾斜が設けられているのに対して図4のモデルではベローズカバー90には傾斜が設けられていない。図4に示されるように、絶縁リング13bとシールド部14bとの間に等電位線が集中し、電界緩和シールド11b近傍やベローズカバー90近傍の電界を選択的に高めることができている。
【0030】
次に、この発明に関して発明者が行ったシミュレーションの結果についていくつか説明する。図5は絶縁リング13bとカバー15bとの隙間の大きさと電界緩和シールド11b表面の最大電界との関係をシミュレーションした結果を示したグラフである。図5において、横軸は絶縁リング13bとカバー15bとの隙間の大きさ(mm)、縦軸は隙間がないときを1とした電界緩和シールド11b表面の最大電界の大きさの相対値を示す。なお、絶縁リング13bの材料として、エポキシ樹脂を想定したもの(比誘電率εr=4.2)とセラミックを想定したもの(比誘電率εr=8)の両方について示した。
【0031】
図6は絶縁リング13bとカバー15bとの隙間の大きさとベローズカバー90表面の最大電界との関係をシミュレーションした結果を示したグラフである。図6において、横軸は絶縁リング13bとカバー15bとの隙間の大きさ(mm)、縦軸は隙間がないときを1としたベローズカバー90表面の最大電界の大きさの相対値を示す。絶縁リング13bの比誘電率がεr=4.2の場合とεr=8の場合の両方について示した。
【0032】
これらの結果によると、絶縁リング13bとカバー15bとの隙間17bを広げることで、その隙間17b付近にある電界緩和シールド11b近傍やベローズカバー90近傍等、コンディショニング工程において電界を高めたい箇所の電界を高めることができることが分かった。なお、先に説明したように図4のモデルにおいてはベローズ支持板9とベローズカバー16bを一体としてベローズカバー90とし、ベローズカバー90には傾斜が設けられていない。しかし、図1のようにベローズ支持板9とベローズカバー16bとを別体として用いたり、ベローズカバー16bに傾斜を設けた場合においても、ベローズカバー90を用いた場合と同様に、ベローズカバー16bの電界を選択的に高めることができ、本発明がもたらす効果に違いはない。
【0033】
また、これらの結果からも分かるように、絶縁リングの材料としては、比誘電率が高い材料が適している。例えば、エポキシ樹脂、セラミック、ジュラコン、フッ素樹脂、PVC、ケイ素樹脂などの材料である。
【0034】
以上のように、真空バルブは図3に示した状態でコンディショニングを行い、その後、出荷の際には、図1に示したように絶縁リングとカバーを接触させてメタライズ層やシールド16a及びベローズカバー16b(ベローズカバー90)等の近傍を電界緩和する形態とする。
【0035】
出荷の際にはコンディショニング工程とは逆に、電界を低くするために電界緩和効果を高めたい。そこで発明者らは、電界緩和効果を最適にするには絶縁リング13bの大きさはどれくらいが適当かを調べるため、電界が高くなりがちなベローズカバー90の電界について、絶縁リング13bとカバー15bとを接触させた状態のモデルでシミュレーションを行った。
【0036】
図7は絶縁リング13bの高さとベローズカバー90表面の最大電界の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。図7において、横軸は絶縁リング13bの高さ、縦軸は絶縁リング13bなしの場合を1としたベローズカバー90表面の最大電界の相対値である。ここで、絶縁リング13bの高さとは、図2でいえば図中上下方向の長さのことを示している。また、横軸0mmは絶縁リング13bなしの場合を示している。なお、絶縁リング13bは比誘電率εr=4.2とした。絶縁リング13bの高さ(mm)については、絶縁リング13bの高さは29.5mmの時に絶縁リング13bの上端とベローズカバー90の屈曲部とが同じ高さとなる。図7から分かるように、絶縁リング13bの高さが高いほど電界緩和効果は高まり、絶縁リングの上端とベローズカバー90の屈曲部とがほぼ同じ高さになった25mm程度で電界緩和効果が飽和する。
【0037】
図8は絶縁リングの幅とベローズカバー90表面の最大電界の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。図7において、横軸は絶縁リング13bの幅、縦軸は絶縁リング13bなしの場合を1としたベローズカバー90表面の最大電界の相対値である。ここで、絶縁リング13bの幅とは、図2でいえば図中左右方向の長さのことを示している。また、横軸0mmは絶縁リング13bなしの場合を示している。なお、絶縁リング13bは比誘電率εr=4.2とした。図8に示したように、幅については一定の大きさ(20mm程度)で電界緩和効果は飽和し、さらに幅を大きくしてもほとんど効果はないことが分かる。
【0038】
以上、本実施の形態に係る真空バルブにおいては、コンディショニング時に、シールド部から離れるように絶縁筒の軸方向に絶縁リングを移動させることにより、真空容器内部のシールドであるアークシールド7や電界緩和シールド11a及び11bの近傍の電界を選択的に高め、これらの部分の金属微粒子を効率的に除去する。これによりシールドの表面改質がなされ、真空バルブの耐電圧性能を向上させることができる。
【0039】
また、コンディショニング工程において印加電圧を極端に高くする必要がなくなる。
【0040】
また、コンディショニング工程の効率が上がり、コンディショニング工程の時間短縮を図ることができる。
【0041】
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2に係る真空バルブにおける電界緩和シールドユニットの絶縁リングを示す上面図である。図10は図9の破線ABで切り取った断面図である。
【0042】
本実施の形態においても、基本的な構成は実施の形態1と同様である。相違点は、電界緩和シールドユニットの絶縁リングの構成である。
【0043】
図9に示すように、本実施の形態における絶縁リング40は略半円形状の第1の部材41及び第2の部材42の2つの部材を有しており、この2つの部材は、互いに嵌め合わせ可能な形状に形成された嵌め合せ部23と、ねじで固定された支点22の2箇所で固定される。嵌め合わせ部23は外せるようになっており、支点22を中心に2つの部材が開くようになっている。コンディショニング工程等において、絶縁リング40を真空バルブの軸方向に動かすときには2つの部材を開いて動かし、2つの部材を固定するときには嵌め合わせ部23を嵌め合わせるようにする。
【0044】
なお、嵌め合せ部23には、嵌め合せ部23を嵌め合わせた時に2つの部材を締結するためのねじ孔が設けられている。これにより、絶縁リング40とカバーとを接触させる出荷時には、嵌め合わせ部23を絶縁ボルト50で締結して2つの部材を強固に固定できるようになっている。これにより、遮断器の開閉衝撃で2つの部材が開くことを防ぎ、出荷形態での信頼性を確保することができる。ここで、絶縁ボルト50の材料としてはポリカーボネイト、FRPなどが適している。
【0045】
また、図10に示すように、絶縁リング40には取っ手51が設けられている。実施の形態1においては、絶縁リング13b等の複数個所に取っ手を設けたが、本実施の形態では絶縁リング40の取っ手51は絶縁リング40の全周にわたって一つだけ設けられている。なお、取っ手の厚みは他の部分と比較して薄く形成されているため、電界分布に与える影響は無視できるほど小さい。
【0046】
以上、本実施の形態の真空バルブによれば、絶縁リング40を真空バルブの軸方向に動かす操作が容易になる。また、絶縁ボルト50により絶縁リング40の嵌め合わせ部23を強固に固定できるので、遮断器の開閉衝撃で2つの部材が開くことを防ぎ、信頼性を確保できる。
【0047】
実施の形態3.
図11はこの発明の実施の形態3に係る真空バルブにおける電界緩和シールドユニットの構造の一部を示す断面図である。
【0048】
図11に示すように、本実施の形態における電界緩和シールドユニットにおいては、絶縁リング33bとカバー35bとの間にチューブ24を設ける。チューブ24は柔らかい絶縁材料製であり、内部に絶縁性液体を注入可能になっている。図11(a)はチューブ24の内部に絶縁性液体を注入する前の状態を、(b)はチューブ24の内部に絶縁性液体を注入した後の状態をそれぞれ示している。チューブ24に絶縁性液体を注入するとチューブ24が膨らんで図11(a)の状態から(b)の状態となり、絶縁リング33bとカバー35bとの間に隙間ができる。チューブ24から絶縁性液体を排出するとチューブ24は縮んで絶縁リング33bとカバー35bとが接触して図11(a)の状態に戻る。
【0049】
チューブ24に絶縁性液体を注入/排出可能とするためには、例えば、図には示していないが、チューブ24に注入口とそれを塞ぐキャップを設ける。絶縁性液体の注入/排出を行う際には、キャップを開いて絶縁性液体を出し入れするための小さいチューブ(不図示)を注入口に挿入し、絶縁性液体の注入/排出を行う。
【0050】
なお、絶縁性液体としてはフロリナート、フルオロカーボン液体、シリコーン油、エステル系油などが適している。
【0051】
以上、本実施の形態の真空バルブによれば、絶縁リング33bを移動させる作業を簡易化することができる。
【0052】
なお、実施の形態2及び3の構成は、真空バルブのすべての電界緩和シールドユニットに適用してもよいし、一部の電界緩和シールドにのみ適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1a 固定側端板、1b 可動側端板、2 絶縁筒、3a 固定側電極棒、3b 可動側電極棒、4a 固定側フランジ、4b 可動側フランジ、7 アークシールド、8 ベローズ、9 ベローズ支持板、10 接点、11a 電界緩和シールド、11b 電界緩和シールド、12a 電界緩和シールドユニット、12b 電界緩和シールドユニット、12c 電界緩和シールドユニット、13a 絶縁リング、13b 絶縁リング、13c 絶縁リング、13d 絶縁リング、14a シールド部、14b シールド部、14c シールド部、15a カバー、15b カバー、15c カバー、15d カバー、16a 電界緩和シールド、16b ベローズカバー、19b 取っ手、20b 突起、22 支点、23 嵌め合せ部、24 チューブ、30 接点、33b 絶縁リング、 35b カバー、90 ベローズカバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁筒と端板とで構成された真空容器と、
この真空容器の内部に設けられた接離可能な1対の接点と、
前記真空容器の内部に設けられた金属製のシールドと、
前記絶縁筒の外周を囲む金属製のシールド部と、
前記絶縁筒の外周を囲み、前記絶縁筒の軸方向に可動な絶縁材料製の絶縁リングと、
を備えた真空バルブ。
【請求項2】
前記絶縁リングは、互いに嵌め合わせ可能な形状に形成された嵌め合せ部を設けた2つの部材から構成され、前記嵌め合わせ部は絶縁ボルトで締結可能なことを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
前記シールド部と前記絶縁リングとの間に絶縁材料製のカバーを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の真空バルブ。
【請求項4】
前記カバーに複数の係止孔を設け、前記絶縁リングに前記複数の係止孔に嵌め合わせ可能な形状の突起を設けたことを特徴とする請求項2に記載の真空バルブ。
【請求項5】
前記カバーの前記絶縁リングとの間に、内部に液体を注入可能なチューブを設けたことを特徴とする請求項2に記載の真空バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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