説明

真空冷却装置

【課題】減圧手段として蒸気エゼクタを使用した真空冷却装置と同等の冷却能力を発揮し、小型化,省スペース化が図れ、蒸気設備が無い場所においても使用可能であり、凝縮水の凍結による障害を起こさない真空冷却装置を得る。
【解決手段】被冷却物を収容する冷却槽1と冷却槽1内を減圧する減圧手段2を備える真空冷却装置において、減圧手段2を凝縮用熱交換器3と空気エゼクタ4と真空ポンプ5とで構成し、凝縮用熱交換器3の下流側に気液分離器8を設け、気液分離器8の気体を空気エゼクタ4で吸引するように気体吸引路9を介して気液分離器8と空気エゼクタ4を接続するとともに、気液分離器8の凝縮液を真空ポンプ5で吸引するように凝縮液吸引路10を介して気液分離器8と真空ポンプ5を接続し、空気エゼクタ4の吐出側と真空ポンプ5の吸引側を接続し、凝縮液吸引路10には空気エゼクタ4の運転時に凝縮液吸引路10を閉じるバイパス弁16を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被冷却物に含まれる水分を減圧下で蒸発させ、その際の気化潜熱を利用して冷却する真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、真空冷却装置は、被冷却物を収容した冷却槽を真空吸引し、減圧することによって、飽和蒸気温度を低下させ、被冷却物に含まれる水分を蒸発させることにより、その際の気化潜熱を利用して被冷却物を冷却するものである。
この真空冷却装置は、例えば、食品業界において、加熱調理された食品を容器詰めする工程で、細菌が繁殖し易い50℃〜20℃の危険温度帯域を短時間で通過させることで菌の増殖を抑制するために使用される。ここでの食品の冷却は病原菌の増殖を抑制するために10℃以下で管理することが望ましいとされており、コンビニエンスストアに弁当などの調理食品を供給している食品加工会社では独自の安全基準として、さらに低い温度での冷却を実施している。
【0003】
このような低温度領域まで冷却する真空冷却装置として、一般に蒸気エゼクタと真空ポンプとを組み合わせた減圧手段が採用されている。蒸気エゼクタを使用した真空冷却装置では、蒸気エゼクタは熱交換器の上流に配置されており、熱交換器では、食品等の被冷却物から生じる蒸気だけでなく蒸気エゼクタで使用した蒸気をも凝縮させるため、凝縮に用いる冷水等の冷媒の容量も大きく、真空冷却装置の小型化の障害となっており、また、蒸気が得られない場所では使用することができないといった問題を抱えている。
【0004】
この問題を解決するために、蒸気エゼクタに代わる減圧手段として空気エゼクタを使用することが考えられるが、空気エゼクタは、吸引する能力が蒸気エゼクタの1/10以下しかない。そこで、空気エゼクタを熱交換器の下流側に配置して、被冷却物から発生する蒸気を熱交換器で凝縮させ、空気エゼクタが吸引する体積を小さくすることにより、空気エゼクタの吸引能力を補えるようにした真空冷却装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−196529号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の真空冷却装置にあっては、空気エゼクタが熱交換器の下流側に設けられているため、気体とともに熱交換器で凝縮された凝縮水が空気エゼクタへ流入することになり、この流入した凝縮水が低圧のために空気エゼクタのエゼクタノズル部で凍結してしまい、詰まりを起こすといった問題があった。
【0007】
本発明の目的は、減圧手段として蒸気エゼクタを使用した真空冷却装置と同等の冷却能力を発揮し、小型化,省スペース化が図れ、蒸気設備が無い場所においても使用可能であり、凝縮水の凍結による障害を起こさない真空冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被冷却物を収容する冷却槽と、前記冷却槽内を減圧する減圧手段とを備え、前記冷却槽内を前記減圧手段で減圧することにより被冷却物を冷却する真空冷却装置において、前記減圧手段は、凝縮用熱交換器と空気エゼクタと真空ポンプとから構成され、前記凝縮用熱交換器の下流側に気液分離器を設け、前記気液分離器の気体を前記空気エゼクタで吸引するように気体吸引路を介して前記気液分離器と前記空気エゼクタを接続するとともに、前記気液分離器の凝縮液を前記真空ポンプで吸引するように凝縮液吸引路を介して前記気液分離器と前記真空ポンプを接続し、前記空気エゼクタの吐出側と前記真空ポンプの吸引側を接続し、さらに、前記凝縮液吸引路には前記空気エゼクタの運転時に前記凝縮液吸引路を閉じるバイパス弁を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、冷却槽内の減圧により吸引されて前記凝縮用熱交換器に流入した被冷却物から蒸発する蒸気が前記凝縮用熱交換器で凝縮させることにより体積を減少させて前記気液分離器へ流入させ、気相部分から空気エゼクタで吸引するので、空気エゼクタの吸引力でも、蒸気エゼクタを使用した真空冷却装置と同等の冷却能力を発揮することができ、また、気体部分のみを吸引するようにしているので、空気エゼクタのエゼクタノズル内での凝縮水の凍結を防止できる。さらに、蒸気エゼクタを使用した真空冷却装置に比して、小型化,省スペース化を図ることができ、また、蒸気が得られない場所においても使用可能となる。
また、前記空気エゼクタの運転時には前記バイパス弁により前記凝縮液吸引路を閉じているので、前記空気エゼクタは前記冷却槽を目標の圧力まで確実に減圧することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記気液分離器に、前記気液分離器内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設け、前記凝縮液吸引路に、前記凝縮液吸引路内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記気液分離器に、前記気液分離器内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設けたので、前記空気エゼクタの吸引によりさらに圧力が低下して貯留された凝縮液が蒸発することを防止することができ、前記空気エゼクタが吸引する気体量が増加することを防止し、前記冷却槽の圧力を確実に低下させることができる。
また、前記凝縮液吸引路に、前記凝縮液吸引路内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設けたので、前記空気エゼクタの吸引によりさらに圧力が低下して貯留された凝縮液が蒸発することを防止することができ、前記空気エゼクタが吸引する気体量が増加することを防止し、前記冷却槽の圧力を確実に低下させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、被冷却物を収容する冷却槽と、前記冷却槽内を減圧する減圧手段とを備え、前記冷却槽内を前記減圧手段で減圧することにより被冷却物を冷却する真空冷却装置において、前記減圧手段は、気液分離機能を備えた凝縮用熱交換器と空気エゼクタと真空ポンプとから構成され、前記凝縮用熱交換器内の気体を前記空気エゼクタで吸引するように気体吸引路を介して前記凝縮用熱交換器と前記空気エゼクタを接続するとともに、前記凝縮用熱交換器内の凝縮液を前記真空ポンプで吸引するように凝縮液吸引路を介して前記凝縮用熱交換器と前記真空ポンプを接続し、前記空気エゼクタの吐出側と前記真空ポンプの吸引側を接続し、さらに、前記凝縮液吸引路には前記空気エゼクタの運転時に前記凝縮液吸引路を閉じるバイパス弁を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、冷却槽内の減圧により吸引されて前記凝縮用熱交換器に流入した被冷却物から蒸発する蒸気が前記凝縮用熱交換器で凝縮させることにより体積を減少させ、前記凝縮用熱交換器の凝縮器下流で気体と凝縮液に分離され、気相部分から空気エゼクタで吸引するので、空気エゼクタの吸引力でも、蒸気エゼクタを使用した真空冷却装置と同等の冷却能力を発揮することができ、また、気体部分のみを吸引するようにしているので、空気エゼクタのエゼクタノズル内での凝縮水の凍結を防止できる。さらに、蒸気エゼクタを使用した真空冷却装置に比して、小型化,省スペース化を図ることができ、また、蒸気が得られない場所においても使用可能となる。
また、前記空気エゼクタの運転時には前記バイパス弁により前記凝縮液吸引路を閉じているので、前記空気エゼクタは前記冷却槽を目標の圧力まで確実に減圧することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の、前記凝縮用熱交換器に、前記凝縮用熱交換器内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設け、前記凝縮液吸引路に、前記凝縮液吸引路内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、前記凝縮用熱交換器に、前記凝縮用熱交換器内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設けたので、前記空気エゼクタの吸引によりさらに圧力が低下して貯留された凝縮液が蒸発することを防止することができ、前記空気エゼクタが吸引する気体量が増加することを防止し、前記冷却槽の圧力を確実に低下させることができる。
また、前記凝縮液吸引路に、前記凝縮液吸引路内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設けたので、前記空気エゼクタの吸引によりさらに圧力が低下して貯留された凝縮液が蒸発することを防止することができ、前記空気エゼクタが吸引する気体量が増加することを防止し、前記冷却槽の圧力を確実に低下させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る真空冷却装置によれば、冷却槽内の減圧により吸引された蒸気を凝縮用熱交換器で凝縮してその体積を小さくし、体積が小さくなった気体を前記空気エゼクタで吸引するので、前記空気エゼクタを真空冷却装置に用いても蒸気エゼクタを使用した真空冷却装置と同等の冷却能力を発揮することができるとともに、蒸気エゼクタを使用した真空冷却装置に比して、小型化,省スペース化、低コストを図ることができる。また、蒸気が得られない場所においても、真空冷却装置を使用することができる。
また、分離した凝縮液を前記空気エゼクタで吸引することがないので、前記空気エゼクタに流入した凝縮液が低圧のために前記空気エゼクタのエゼクタノズル部で凍結してしまい、詰まりを起こすといった障害を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る真空冷却装置の実施の形態の第1例の概略構成図である。
【図2】気液分離器と凝縮液吸引路に設けた冷却手段の他例を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る真空冷却装置の実施の形態の第2例で概略構成図である。
【図4】凝縮用熱交換器と凝縮液吸引路に設けた冷却手段の他例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る真空冷却装置を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る真空冷却装置の実施の形態の第1例を示す概略構成図、図2は気液分離器と凝縮液吸引路に設けた冷却手段の他例を示す概略構成図である。
【0019】
本例の真空冷却装置は、被冷却物を気密に収容する冷却槽1と、冷却槽1内を減圧する減圧手段2とで構成されている。
冷却槽1は、被冷却物の出し入れ等の作業用の開閉扉(図示省略)を備えており、この開閉扉を閉じることで冷却槽1が密閉されるようになっている。
【0020】
減圧手段2にあっては、凝縮用熱交換器3と空気エゼクタ4と真空ポンプ5とから構成されている。さらに、詳細には、凝縮用熱交換器3は減圧路6を介して冷却槽1に接続されており、凝縮用熱交換器3の下流側に凝縮流体流路7を介して気液分離器8が設けられ、気液分離器8には、気液分離器8で分離された気体を吸引するように気体吸引路9を介して空気エゼクタ4が接続され、空気エゼクタ4の吐出側は排気路11を介して真空ポンプ5の吸引側と接続されている。
また、気液分離器8には、後述するように、真空冷却装置の冷却運転を開始し、冷却槽1内が所定の圧力(或いは、所定の温度。)となるまでは、気液分離器8に流入する全ての流体は凝縮液吸引路10とバイパス弁16を介して真空ポンプ5で吸引して排出路21から排出されるように接続されている。バイパス弁16は、冷却槽1内が所定の圧力(或いは、所定の温度。)となり空気エゼクタ4が作動した時点から、気液分離器8で分離された凝縮液がバイパス弁16より上流側の凝縮液吸引路10および気液分離器8内の下部に貯留できるよう凝縮液吸引路10に設けられている。
【0021】
凝縮用熱交換器3は、被冷却物から発生する蒸気を凝縮させるものであり、本例では冷媒として冷却水が用いられ、冷却水が冷却水循環路12を介して凝縮用熱交換器3に送られるようになっている。凝縮用熱交換器3にあっては、シェルアンドチューブ型の熱交換器や単に管の内部に冷却コイルを設けた構造の熱交換器など、特に限定されない。冷却水の供給源としては、チラー、蓄氷型冷水供給装置、クーリングタワー(図示せず)などが用いられ、チラー、蓄氷型冷水供給装置、クーリングタワーなどと冷却水循環路12とを接続して冷却水を循環させるようになっている。冷却水の供給源にあっては、前記以外に、冷却槽1の冷却目標温度以下まで貯留した凝縮水を冷却できる能力を持つものであればよく、特に限定されない。
【0022】
前記空気エゼクタ4にあっては、空気を導入する空気導入路13が接続されており、空気導入路13には、空気の導入を調節する空気導入弁14が設けられている。また、凝縮用熱交換器3と空気エゼクタ4とを接続する気体吸引路9には、エゼクタ弁15が設けられている。また、凝縮用熱交換器3と真空ポンプ5とを接続する凝縮液吸引路10にはバイパス弁16が設けられている。また、凝縮用熱交換器3と気液分離器8の間にある凝縮流体流路7には逆止弁17が設けられている。
【0023】
また、本例では、気液分離器8に、気液分離器8内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段18が設けられ、また、気液分離器8と真空ポンプ5とを接続する凝縮液吸引路10に、凝縮液吸引路10内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段19が設けられている。冷却手段18,19にあっては、本例では、気液分離器8と凝縮液吸引路10の外周に、それぞれ冷却管20を巻き付け、冷却管20に冷却水を送り込む構成となっている。この冷却水の供給源にあっては、凝縮用熱交換器3の冷却水の供給源として用いられているチラーや蓄氷型冷水供給装置(図示せず)が用いられ、チラーや蓄氷型冷水供給装置と冷却管20とを接続して冷却水を循環させるようになっている。
本例では、冷却手段18,19は、気液分離器8と凝縮液吸引路10の外周に、それぞれ冷却管20を巻き付け、冷却管20に冷却水を送り込む構成となっているが、図2に示すように、気液分離器8及び凝縮液吸引路10をそれぞれ二重管に構成し、内外管の間に送水管30から冷却水を送り込む構成としてもよく、冷却槽1の冷却目標温度以下まで貯留した凝縮水を冷却できる能力を持つものであれば、特に限定されない。
【0024】
また、前記真空ポンプ5には、吸引した気体及び凝縮液を排出する排出路21と封水を供給するための封水路22が接続されている。
また、冷却槽1には、冷却槽1内に空気を導入して、冷却後に冷却槽1内を元の圧力に復帰させる外気導入路23が接続されており、外気導入路23には、冷却槽1内の圧力を徐々に復圧させる復圧弁24とフィルター25が設けられている。
さらに、本例の真空冷却装置には、空気導入弁14、エゼクタ弁15、真空ポンプ5、バイパス弁16、復圧弁24を制御する制御器26が設けられている。
【0025】
このように構成された本例の真空冷却装置の冷却運転動作について説明する。
まず、冷却槽1内に被冷却物を収容し、作業用の開閉扉(図示省略)を閉鎖し、密閉し、運転を開始する。運転開始と同時に、制御器26は、空気導入弁14、エゼクタ弁15、復圧弁24を閉状態とし、バイパス弁16を開状態としている。
【0026】
つぎに、凝縮用熱交換器3の2次側に冷却水を流し、真空ポンプ5を起動させる。真空ポンプ5の起動により、冷却槽1内の空気が吸引され減圧されることにより、冷却槽1内の被冷却物から蒸発する蒸気が減圧路6を通って凝縮用熱交換器3内に流入し、凝縮用熱交換器3内で凝縮された凝縮液と、凝縮されないで残った蒸気および気体の混合流体が気液分離器8へ流入し、気液分離器8で気体と凝縮液に分離されるが、気体を吸引する手段である空気エゼクタ4はこの時点では未だ作動させず、このため混合流体は分離されつつ凝縮液吸引路10を通って真空ポンプ5で吸引され排出路21から排出される。
【0027】
冷却槽1内が所定の圧力(或いは、所定の温度。)となった時点で、空気導入弁14、エゼクタ弁15を開き、凝縮液吸引路10に設けられているバイパス弁16を閉じ、空気エゼクタ4を作動させる。この空気エゼクタ4の作動により、気液分離器8で分離した気体が空気エゼクタ4で吸引され、吸引された気体は、さらに排気路11を通って真空ポンプ5で吸引され排出路21から排出される。
一方、分離した凝縮液は凝縮液吸引路10へ流れ、凝縮液吸引路10および/あるいは気液分離器8内の下部に、冷却運転が終了し、冷却槽1内の圧力が大気圧に復圧する運転完了まで貯留される。
【0028】
以上のようにして、冷却槽1内の圧力が低下し、所定の温度まで低下したら、空気導入弁14、エゼクタ弁15を閉じて空気エゼクタ4を停止させるとともに、真空ポンプ5を停止する。そして、外気導入路23に設けられている復圧弁24を開き、冷却槽1内を大気圧に復圧させる。冷却槽1内が大気圧に復圧したらバイパス弁16を開く。これにより、凝縮液吸引路10内に貯留していた被冷却物から蒸発した蒸気が凝縮した凝縮液は、ヘッド差によって真空ポンプ5を通り、排出路21から排出される。このとき、より確実に貯留した凝縮液を排出するため、復圧弁24を開いた状態で、真空ポンプ5を所定時間稼動させてもよい。
このようにして、本例の真空冷却装置の冷却運転が終了する。
【0029】
以上のように、本例の真空冷却装置によれば、被冷却物から蒸発する蒸気が凝縮用熱交換器3内で凝縮されて体積を減少させて気液分離器8へ流入させ、気相部分から空気エゼクタ4で吸引するので、空気エゼクタ4の吸引力でも、蒸気エゼクタを使用した真空冷却装置と同等の冷却能力を発揮することができ、気相部分のみ吸引することから、空気エゼクタ4のエゼクタノズル内での凝縮水の凍結を防止できる。
また、空気エゼクタ4の運転時にはバイパス弁16により凝縮液吸引路10を閉じているので、空気エゼクタ4は冷却槽1を目標の圧力まで確実に減圧することができる。
また、本例では、気液分離器8に、気液分離器8内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段18を設けたので、空気エゼクタ4の吸引によりさらに圧力が低下して貯留された凝縮液が蒸発することを防止することができ、空気エゼクタ4が吸引する気体量が増加することを防止し、冷却槽1の圧力を確実に低下させることができる。
また、凝縮液吸引路10に、凝縮液吸引路10内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段19を設けたので、空気エゼクタ4の吸引によりさらに圧力が低下して貯留された凝縮液が蒸発することを防止することができ、空気エゼクタ4が吸引する気体量が増加することを防止し、冷却槽1の圧力を確実に低下させることができる。
【0030】
図3は本発明に係る真空冷却装置の実施の形態の第2例を示す概略構成図、図4は凝縮用熱交換器と凝縮液吸引路に設けた冷却手段の他例を示す概略構成図である。
本例の真空冷却装置について、前記第1例と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、第1例と異なる構成についてのみ説明する。
【0031】
本例の真空冷却装置は、第1例と同様に、減圧手段2が凝縮用熱交換器3と空気エゼクタ4と真空ポンプ5とから構成されている。減圧手段2にあっては、本例では、気液分離機能を備えた凝縮用熱交換器3に、凝縮用熱交換器3内で分離した気体を吸引するように気体吸引路9を介して空気エゼクタ4が接続され、また、凝縮用熱交換器3内で凝縮した凝縮液を吸引するように凝縮液吸引路10を介して真空ポンプ5が接続されている。
【0032】
気液分離機能を備えた凝縮用熱交換器3にあっては、本例では、凝縮用熱交換器3の管状筐体3aの下流側に、凝縮した凝縮液と気体に分離する気液分離空間27が形成されている。そして、凝縮用熱交換器3内に開口する気体吸引路9の吸引口は、管状筐体3aの下流側上方に気液分離空間27と連通するように開口し、また、凝縮用熱交換器3内に開口する凝縮液吸引路10の吸引口は、管状筐体3aの下流側下方に気液分離空間27と連通するように開口している。この凝縮用熱交換器3の設置にあっては、図3に示すように、下流側が低くなるように傾斜させることが好ましい。
また、本例では、冷却槽1と凝縮用熱交換器3とを接続する減圧路6に逆止弁28が設けられており、また、凝縮用熱交換器3と真空ポンプ5とを接続する凝縮液吸引路10に逆止弁29が設けられている。
【0033】
また、本例では、凝縮用熱交換器3に、凝縮用熱交換器3内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段30が設けられ、凝縮液吸引路10には、第1例と同様に、凝縮液吸引路10内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段19が設けられている。
冷却手段19,30にあっては、本例では、凝縮用熱交換器3と凝縮液吸引路10の外周に、それぞれ冷却管20を巻き付け、冷却管20に冷却水を送り込む構成となっている。この冷却水の供給源にあっては、第1例と同様に、凝縮用熱交換器3の冷却水の供給源として用いられているチラー、蓄氷型冷水供給装置、クーリングタワーなど(図示せず)が用いられ、チラー、蓄氷型冷水供給装置、クーリングタワーなどと冷却管20とを接続して冷却水を循環させるようになっている。
本例では、冷却手段19,30は、凝縮用熱交換器3と凝縮液吸引路10の外周に、それぞれ冷却管20を巻き付け、冷却管20に冷却水を送り込む構成となっているが、図4に示すように、凝縮用熱交換器3の管状筐体3a及び凝縮液吸引路10をそれぞれ二重管に構成し、内外管の間に送水管31から冷却水を送り込む構成としてもよく、特に限定されない。
その他の構成は前記第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、その説明を省略する。
【0034】
このように構成された本例の真空冷却装置の冷却運転動作について説明する。
まず、第1例と同様に、冷却槽1内に被冷却物を収容し、作業用の開閉扉(図示省略)を閉鎖し、密閉し、運転を開始する。運転開始と同時に、制御器26は、空気導入弁14、エゼクタ弁15、復圧弁24を閉状態とし、バイパス弁16を開状態とする。
【0035】
つぎに、凝縮用熱交換器3の2次側に冷却水を流し、真空ポンプ5を起動させる。真空ポンプ5の起動により、冷却槽1内の空気が吸引され減圧されることにより、冷却槽1内の被冷却物から蒸発する蒸気が減圧路6を通って凝縮用熱交換器3内に流入し、凝縮用熱交換器3内に流入した蒸気は冷却されて、凝縮用熱交換器3の管状筐体3aの下流側に形成されている気液分離空間27で気体と凝縮した凝縮液とに分離される。この時点では気体を吸引する手段である空気エゼクタ4は未だ作動させず、このため凝縮用熱交換器3内の気液分離空間27で分離した気体と凝縮された凝縮液は混合流体となって凝縮液吸引路10を通って真空ポンプ5で吸引され排出路21から排出される。
【0036】
冷却槽1内が所定の圧力(或いは、所定の温度。)となった時点で、空気導入弁14、エゼクタ弁15を開き、凝縮液吸引路10に設けられているバイパス弁16を閉じ、空気エゼクタ4を作動させる。この空気エゼクタ4の作動により、凝縮用熱交換器3内の気液分離空間27で分離した気体が空気エゼクタ4で吸引され、吸引された気体は、さらに排気路11を通って真空ポンプ5で吸引され排出路21から排出される。
一方、分離した凝縮液は凝縮液吸引路10へ流れ、凝縮液吸引路10内の下部に、冷却運転が終了し、冷却槽1内の圧力が大気圧に復圧する運転完了まで貯留される。
【0037】
以上のようにして、冷却槽1内の圧力が低下し、所定の温度まで低下したら、第1例と同様に、空気導入弁14、エゼクタ弁15を閉じて空気エゼクタ4を停止させるとともに、真空ポンプ5を停止する。そして、外気導入路23に設けられている復圧弁24を開き、冷却槽1内を大気圧に復圧させる。冷却槽1内が大気圧に復圧したらバイパス弁16を開く。これにより、凝縮液吸引路10内に貯留していた被冷却物から蒸発した蒸気が凝縮した凝縮液は、ヘッド差によって真空ポンプ5を通り、排出路21から排出される。このとき、より確実に貯留した凝縮液を排出するため、復圧弁24を開いた状態で、真空ポンプ5を所定時間稼動させてもよい。その他の動作は、第1例と同様である。
このようにして、本例の真空冷却装置の冷却運転が終了する。
【0038】
以上のように、本例の真空冷却装置によれば、被冷却物から蒸発する蒸気が凝縮用熱交換器3で凝縮されて体積を減少させ、凝縮用熱交換器3の凝縮器下流で気体と凝縮液に分離され、気相部分から空気エゼクタ4で吸引するので、空気エゼクタ4の吸引力でも、蒸気エゼクタを使用した真空冷却装置と同等の冷却能力を発揮することができ、また、気体部分のみを吸引するようにしているので、空気エゼクタ4のエゼクタノズル内での凝縮水の凍結を防止でき、気相部分のみ吸引することから、空気エゼクタ4のエゼクタノズル内での凝縮水の凍結を防止できる。
また、本例では、凝縮用熱交換器3は、下流側が低くなるように傾斜させて設置しているので、凝縮用熱交換器3内で分離した凝縮液をより効果的に凝縮液吸引路10へ流出させることができる。
また、本例では、凝縮用熱交換器3に、凝縮用熱交換器3内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段30を設けたので、空気エゼクタ4の吸引によりさらに圧力が低下して貯留された凝縮液が蒸発することを防止することができ、空気エゼクタ4が吸引する気体量が増加することを防止し、冷却槽1の圧力を確実に低下させることができる。
また、凝縮液吸引路10に、凝縮液吸引路10内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段19を設けたので、空気エゼクタ4の吸引によりさらに圧力が低下して貯留された凝縮液が蒸発することを防止することができ、空気エゼクタ4が吸引する気体量が増加することを防止し、冷却槽1の圧力を確実に低下させることができる。
その他の作用は、前記第1例と同様なので、第1例を援用し、その説明を省略する。
【符号の説明】
【0039】
1 冷却槽
2 減圧手段
3 凝縮用熱交換器
4 空気エゼクタ
5 真空ポンプ
8 気液分離器
9 気体吸引路
10 凝縮液吸引路
16 バイパス弁
18、19 冷却手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する冷却槽と、前記冷却槽内を減圧する減圧手段とを備え、前記冷却槽内を前記減圧手段で減圧することにより被冷却物を冷却する真空冷却装置において、
前記減圧手段は、凝縮用熱交換器と空気エゼクタと真空ポンプとから構成され、前記凝縮用熱交換器の下流側に気液分離器を設け、前記気液分離器の気体を前記空気エゼクタで吸引するように気体吸引路を介して前記気液分離器と前記空気エゼクタを接続するとともに、前記気液分離器の凝縮液を前記真空ポンプで吸引するように凝縮液吸引路を介して前記気液分離器と前記真空ポンプを接続し、前記空気エゼクタの吐出側と前記真空ポンプの吸引側を接続し、さらに、前記凝縮液吸引路には前記空気エゼクタの運転時に前記凝縮液吸引路を閉じるバイパス弁を設けたことを特徴とする真空冷却装置。
【請求項2】
前記気液分離器に、前記気液分離器内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設け、前記凝縮液吸引路に、前記凝縮液吸引路内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の真空冷却装置。
【請求項3】
被冷却物を収容する冷却槽と、前記冷却槽内を減圧する減圧手段とを備え、前記冷却槽内を前記減圧手段で減圧することにより被冷却物を冷却する真空冷却装置において、
前記減圧手段は、気液分離機能を備えた凝縮用熱交換器と空気エゼクタと真空ポンプとから構成され、前記凝縮用熱交換器内の気体を前記空気エゼクタで吸引するように気体吸引路を介して前記凝縮用熱交換器と前記空気エゼクタを接続するとともに、前記凝縮用熱交換器内の凝縮液を前記真空ポンプで吸引するように凝縮液吸引路を介して前記凝縮用熱交換器と前記真空ポンプを接続し、前記空気エゼクタの吐出側と前記真空ポンプの吸引側を接続し、さらに、前記凝縮液吸引路には前記空気エゼクタの運転時に前記凝縮液吸引路を閉じるバイパス弁を設けたことを特徴とする真空冷却装置。
【請求項4】
前記凝縮用熱交換器に、前記凝縮用熱交換器内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設け、前記凝縮液吸引路に、前記凝縮液吸引路内に貯留する凝縮液を冷却する冷却手段を設けたことを特徴とする請求項3に記載の真空冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−7526(P2013−7526A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140284(P2011−140284)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)